(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一端部に弁座(27)を有する弁ハウジング(9)と、該弁ハウジング(9)の他端に連設される中空の固定コア(14)と、該固定コア(14)の外周に配設されるコイル(32)と、前記弁座(27)と協働する弁部(42)にロッド(43)が連設されて成る弁体(40)と、前記固定コア(14)の吸引面(37)に対向すると共に前記ロッド(43)に摺動可能に嵌装される可動コア(41)と、前記ロッド(43)に固定され、前記コイル(32)の通電時に前記吸引面(37)に吸引される前記可動コア(41)と当接して前記弁体(40)を開弁作動させる開弁側ストッパ(48)と、前記開弁側ストッパ(48)よりも前記弁座(27)側で前記ロッド(43)に固定される閉弁側ストッパ(49)と、前記弁体(40)を閉弁方向に付勢する弁ばね(54)と、前記コイル(32)の非通電時に前記可動コア(41)を前記開弁側ストッパ(48)から離反させて前記閉弁側ストッパ(49)に当接させるばね力を発揮する補助ばね(55)とを備える電磁式燃料噴射弁において、
前記固定コア(14)の、前記可動コア(41)との対向面には、該可動コア(41)に当接可能な横断面円弧状の第1曲面部(14a)が突設され、前記開弁側ストッパ(48)の、前記可動コア(41)との対向面の外周部には、該可動コア(41)に当接可能な横断面円弧状の第2曲面部(48r)が設けられ、更に前記可動コア(41)の、前記固定コア(14)との対向面は、該固定コア(14)から離れるにつれて大径となるテーパ面(41t)に形成されると共に、前記可動コア(41)の、前記開弁側ストッパ(48)との対向面は、前記ロッド(43)の軸線と直交する平坦面(41f)に形成されることを特徴とする電磁式燃料噴射弁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような電磁式燃料噴射弁では、その開弁時に先ず可動コアのみが弁体のロッド上を摺動して固定コア側に引き寄せられ、加速した後、ロッドに固定された開弁側ストッパを弁ばねのセット荷重に抗して可動コアが押し上げることで弁体を迅速に開弁することができ、弁体の開弁応答性を高めることができる。また閉弁時には、補助ばねで付勢された可動コアが閉弁側ストッパに当接することで、弁体が弁座に最初に着座したときの着座衝撃による弁体の後方への跳ね返り量を最小限に抑えることが可能である。
【0005】
ところで内燃機関の燃焼効率を高めるために、[1]燃料噴射弁をより高精度に開閉制御することと、[2]燃料を高圧化することが求められている。
【0006】
そして、特に[1]の要求、即ち燃料噴射弁の高精度な制御に対応するためには燃料噴射弁の応答性を更に向上させる必要がある。また[2]の要求、即ち燃料を高圧化するためには弁体に対する電磁吸引力を増加させる必要があるが、その場合には、電磁吸引力の増加に応じて可動コアの開弁側ストッパへの衝突力が高まることが想定され、その可動コアの摩耗対策も必要となる。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、燃料噴射弁の応答性、特に閉弁応答性を高めて内燃機関の燃焼効率を高めることができ、また可動コアの開弁側ストッパへの衝突力を軽減して可動コアの摩耗低減や損傷防止が図られる電磁式燃料噴射弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、一端部に弁座を有する弁ハウジングと、該弁ハウジングの他端に連設される中空の固定コアと、該固定コアの外周に配設されるコイルと、前記弁座と協働する弁部にロッドが連設されて成る弁体と、前記固定コアの吸引面に対向すると共に前記ロッドに摺動可能に嵌装される可動コアと、前記ロッドに固定され、前記コイルの通電時に前記吸引面に吸引される前記可動コアと当接して前記弁体を開弁作動させる開弁側ストッパと、前記開弁側ストッパよりも前記弁座側で前記ロッドに固定される閉弁側ストッパと、前記弁体を閉弁方向に付勢する弁ばねと、前記コイルの非通電時に前記可動コアを前記開弁側ストッパから離反させて前記閉弁側ストッパに当接させるばね力を発揮する補助ばねとを備える電磁式燃料噴射弁において、前記固定コアの、前記可動コアとの対向面には、該可動コアに当接可能な横断面円弧状の第1曲面部が突設され、前記開弁側ストッパの、前記可動コアとの対向面の外周部には、該可動コアに当接可能な横断面円弧状の第2曲面部が設けられ
、更に前記可動コアの、前記固定コアとの対向面は、該固定コアから離れるにつれて大径となるテーパ面に形成されると共に、前記可動コアの、前記開弁側ストッパとの対向面は、前記ロッドの軸線と直交する平坦面に形成されることを第
1の特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の特徴によれば、固定コアの、可動コアとの対向面には、可動コアに当接可能な横断面円弧状の第1曲面部が突設されるので、開弁状態で可動コアは、固定コアとの対向面に対し第1曲面部で局所的に当接し、即ち相対向面の全面が当接状態にはないことから、閉弁過程で可動コアに及ぼす残留磁気の影響を効果的に低減できる。これにより、可動コアは、スムーズに固定コアを離れることから、閉弁応答性の向上、延いては内燃機関の燃焼効率アップに寄与することができる。また開弁側ストッパの、可動コアとの対向面の外周部には、可動コアに当接可能な横断面円弧状の第2曲面部が設けられるので、開弁過程で可動コアが、これとロッドとの間の摺動クリアランスにより多少とも傾きながらロッド上を摺動して開弁側ストッパに衝突しても、その衝突部位は、開弁側ストッパの外周部の第2曲面部となり、これにより、その衝突荷重が開弁側ストッパの一点に集中して可動コアが早期に摩耗したり損傷したりするのを効果的に防止可能となるから、燃料の高圧化のために可動コアへの吸引力を増加させた場合でも、可動コアの耐久性向上に寄与することができる。
【0010】
ま
た、可動コアの、固定コアとの対向面は、固定コアから離れるにつれて大径となるテーパ面に形成されるので、開弁過程で可動コアが上記摺動クリアランスにより多少とも傾きながらロッド上を摺動して固定コアに当接する際に、可動コアの上記テーパ面が固定コアの第1曲面部の比較的内側(即ちロッド側)寄りの部位に当接することとなり、これにより、その当接部を揺動支点とする可動コアの揺動量を比較的小さくできるため、可動コアの揺動が収まり易くなって、開弁応答性の向上に寄与することができる。また、このように可動コアの、固定コアとの対向面をテーパ面としても、その可動コアの中央部(即ち開弁側ストッパとの対向面)は、ロッドの軸線と直交する平坦面に形成されるので、可動コアが上記摺動クリアランスにより多少とも傾きながらロッド上を摺動して開弁側ストッパに衝突する際に、最終的には上記平坦面で開弁側ストッパに衝接することとなり、これにより、テーパ面の一部(例えばエッジ状の先細り部分)に局部的に衝突力が作用するのを回避できるから、可動コアの摩耗損傷を効果的に防止可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1実施形態について添付の
図1〜
図3を参照しながら説明すると、先ず
図1および
図2において、内燃機関Eのシリンダヘッド5には、燃焼室6に開口する装着孔7が設けられており、燃焼室6に向かって燃料を噴射し得る電磁式燃料噴射弁8が装着孔7に装着される。
【0013】
電磁式燃料噴射弁8の弁ハウジング9は、中空円筒状のハウジングボディ10と、このハウジングボディ10の一端部内周に嵌合して溶接される弁座部材11と、ハウジングボディ10の他端部外周に一端部を嵌合させてハウジングボディ10に溶接される磁性円筒体12と、磁性円筒体12の他端部に一端部が同軸に結合される非磁性円筒体13とで構成される。非磁性円筒体13の他端部には、中空部15を有する固定コア14の一端部が同軸に結合され、この固定コア14の他端部に、前記中空部15に通じる燃料供給筒16が一体にかつ同軸に連設される。
【0014】
磁性円筒体12は、その軸方向中間部にフランジ状のヨーク部12aを一体に有しており、装着孔7の外端を囲繞するようにしてシリンダヘッド5に設けられる環状凹部17に収容されるクッション材18が、シリンダヘッド5およびヨーク部12a間に介装されている。
【0015】
燃料供給筒16の他端部すなわち入口には燃料フィルタ19が装着され、燃料分配管20に設けられる燃料供給キャップ21に燃料供給筒16が環状のシール部材22を介して嵌合される。燃料供給キャップ21の頂部にはブラケット23が係止され、このブラケット23は、シリンダヘッド5に立設した不図示の支柱に適当な固定手段(例えばボルト)を以てシリンダヘッド5に着脱可能に締結される。
【0016】
燃料供給キャップ21と、燃料供給筒16の中間部に設けられて燃料供給キャップ21側に臨む環状段部25との間には、板ばねから成る弾性部材26が介装される。そして、この弾性部材26が発揮する弾発力で燃料供給筒16すなわち電磁式燃料噴射弁8が、シリンダヘッド5および弾性部材26間に挟持される。
【0017】
弁座部材11は、端壁部11aを一端部に有して有底円筒状に形成されており、前記端壁部11aには、円錐状の弁座27が形成されるとともに、その弁座27の中心近傍に開口する複数の燃料噴孔28が設けられる。この弁座部材11は、燃料噴孔28を燃焼室6に向けて開口するようにしてハウジングボディ10の一端部に嵌合、溶接される。すなわち弁ハウジング9が、その一端部に弁座27を有するように構成される。
【0018】
磁性円筒体12の他端部から固定コア14に至る外周面にはコイル組立体30が嵌装される。このコイル組立体30は、上記外周面に嵌合するボビン31と、このボビン31に巻装されるコイル32とから成り、このコイル組立体30を囲繞するコイルハウジング33の一端部が磁性円筒体12におけるヨーク部12aの外周に結合される。
【0019】
固定コア14の他端部外周は、コイルハウジング33の他端部に連なってモールド成形される合成樹脂製の被覆層34で被覆されており、この被覆層34には、コイル32に連なる端子35を保持するカプラ34aが電磁式燃料噴射弁8の一側方に突出するようにして一体に形成される。
【0020】
図3を併せて参照して、固定コア14の一端部外周には環状凹部36が形成されており、この環状凹部36に、固定コア14に外周面を連ならせるようにして非磁性円筒体13の他端部が嵌合され、液密に溶接される。
【0021】
固定コア14の一端部内周面には、その一端の吸引面37に開口する嵌合凹部38が形成され、この嵌合凹部38に、円筒状のガイドブッシュ39が、その一端部を固定コア14の吸引面37と面一又は略面一として圧入により固設され、このガイドブッシュ39の内周面は固定コア14の内周面に連続する。
【0022】
弁座部材11から非磁性円筒体13に至る弁ハウジング9内には、弁体40の一部と、可動コア41とが収容される。弁体40は、弁座27と協働して燃料噴孔28を開閉する弁部42に、ガイドブッシュ39内まで延びるロッド43が連設されて成る。そして、弁部42は、弁座部材11内で摺動するようにして球状に形成され、ロッド43は弁部42よりも小径に形成される。弁座部材11およびロッド43間には環状の燃料流路44が画成され、弁部42の外周面には、弁座部材11との間に燃料流路となる複数の平面部45が形成される。したがって弁座部材11は、弁体40の開閉動作を案内しながら燃料の通過を許容する。
【0023】
ロッド43には、固定コア14の吸引面37に対置される可動コア41が摺動可能に嵌装される。そして、コイル32の通電時に固定コア14の吸引面37に吸引される可動コア41を当接させる開弁側ストッパ48が、可動コア41の当接によって弁体40が開弁作動するようにしてロッド43に固定される。更にロッド43には、開弁側ストッパ48及び
固定コア
14よりも弁座27側に間隔をおいて閉弁側ストッパ49が配置、固定される。そして、この閉弁側ストッパ49と開弁側ストッパ48との間で可動コア4
1の、ロッド43に沿う摺動ストロークが、制限された一定範囲に規定される。
【0024】
開弁側ストッパ48は、ガイドブッシュ39の内周面に摺動自在に嵌合するフランジ部48aと、このフランジ部48aから可動コア41側に突出する円筒状の軸部48bとで構成される。そして、フランジ部48aの内周部が溶接ビード50によってロッド43に溶接され、弁体40の閉弁位置では軸部48bの一部が吸引面37及びガイドブッシュ39の一端面よりも可動コア41側に突出するように配置される。一方、閉弁側ストッパ49の外周には環状溝51が形成されており、その環状溝51の溝底51aを貫通する溶接ビード52によって、閉弁側ストッパ49がロッド43に固定される。
【0025】
ガイドブッシュ39および開弁側ストッパ48は、固定コア14より硬度が高い非磁性又は弱磁性材料、たとえばマルテンサイト系のステンレス鋼で構成され、ほぼ同等の硬度を有する。
【0026】
再び
図2において、固定コア14の中空部15にはパイプ状のリテーナ53が嵌挿されてかしめ固定される。このリテーナ53と、開弁側ストッパ48のフランジ部48aとの間には弁体40を弁座27への着座方向、すなわち閉弁方向へ付勢する弁ばね54が縮設される。
【0027】
また開弁側ストッパ48のフランジ部48aと、可動コア41との間には、開弁側ストッパ48の軸部48bを囲繞する補助ばね55が縮設される。この補助ばね55は、弁ばね54のセット荷重よりも小さいセット荷重を有しており、可動コア41を開弁側ストッパ48から離反させて閉弁側ストッパ49に当接させる側に常時付勢するばね力を発揮する。
【0028】
ロッド43の他端部は、開弁側ストッパ48のフランジ部48aよりも突出し、弁ばね54の可動端部の内周面に嵌合して、その位置決めの役割を果たしている。また開弁側ストッパ48の軸部48bは、補助ばね55の内周面に嵌合して、その位置決めの役割を果たしている。
【0029】
可動コア41の外周面と、磁性円筒体12および非磁性円筒体13の内周面との間には、環状の間隙56が確保される。開弁側ストッパ48のフランジ部48aの外周の複数箇所には、燃料流路となる平面部57が設けられ、また可動コア41には、燃料流路となる複数の通孔58が設けられる。
【0030】
このような電磁式燃料噴射弁8において、コイル32の非通電状態では、弁体40は、弁ばね54のセット荷重によって押されることで弁座27に着座して燃料噴孔28を閉鎖する。すなわち閉弁状態にあり、可動コア41は、補助ばね55のセット荷重によって閉弁側ストッパ49との当接状態に保持され、固定コア14との間に所定の間隙を保っている。
【0031】
このような閉弁状態でコイル32に通電すると、それによって生じる磁力によって先ず可動コア41が固定コア14に吸引され、補助ばね55を圧縮しながら開弁側ストッパ48に当接する。すなわち可動コア41は、その初動時、弁ばね54より弱い補助ばね55のセット荷重に抗して摺動するので、固定コア14から吸引力を受けると速やかに摺動し、加速しながら開弁側ストッパ48に当接する。
【0032】
可動コア41が開弁側ストッパ48に当接すると、開弁側ストッパ48を弁ばね54のセット荷重に抗して速やかに押圧移動させ、吸引面37に可動コア41が衝突して停止する。その間、押圧移動する開弁側ストッパ48はロッド43に固定されているので、弁部42が弁座27から離座し、開弁状態となる。
【0033】
可動コア41が衝撃的に吸引面37に当接すると、弁部42およびロッド43から成る弁体40が、その慣性によりオーバーシュートするが、その弁体40と一体化された閉弁側ストッパ49が可動コア41に衝突することで、オーバーシュートは停止する。その間に、弁体40のオーバーシュート分だけ開弁側ストッパ48が可動コア41から離れながら、弁ばね54の圧縮変形を増加させることになるので、この弁ばね54の反発力によっても弁体40のオーバーシュートは抑えられる。
【0034】
オーバーシュートが停止すると、弁ばね54の反発力により、開弁側ストッパ48が、吸引面37との当接状態にある可動コア41に当接する位置まで戻ることで、弁体40は所定の開弁位置に保持される。その際、補助ばね55のセット荷重は、弁体40を閉弁方向に付勢する弁ばね54のセット荷重より小さく設定されているので、補助ばね55は、コイル32の通電時、固定コア14の可動コア41に対する吸引と、弁ばね54による開弁側ストッパ48の可動コア41に対する当接には干渉せず、弁体40の所定位置への開弁を阻害しない。
【0035】
このように、弁体40の開弁過程において、可動コア41が吸引面37に与える衝撃力は、可動コア41のみが吸引面37に最初に衝突したときの衝撃力と、その後で閉弁側ストッパ49が可動コア41に衝突したときの衝撃力とに分けられるので、それぞれの衝突エネルギは比較的小さくなり、吸引面37および可動コア41相互の当接部の摩耗を防ぐと共に、衝突騒音を小さく抑えることができる。しかも閉弁側ストッパ49の可動コア41に対する衝突時には、弁ばね54を、通常の開弁時の圧縮変形量より多く変形させるので、弁ばね54が閉弁側ストッパ49の可動コア41に対する衝突エネルギを吸収し、その衝撃力を緩和することになる。
【0036】
弁体40が開弁すると、図示しない燃料ポンプから燃料供給筒16に圧送された燃料は、パイプ状のリテーナ53の内部、固定コア14の中空部15、開弁側ストッパ48周りの平面部57、可動コア41の通孔58、弁ハウジング9の内部、弁部42周りの平面部45を順次経て燃料噴孔28から内燃機関Eの燃焼室6に直接噴射される。
【0037】
次にコイル32への通電を遮断すると、弁ばね54の反発力により開弁側ストッパ48が押動されるので、開弁側ストッパ48は可動コア41および弁体40を伴なって弁座27側に移動し、弁部42を弁座27に着座させる。このとき可動コア41は、固定コア14の間の残留磁気の影響と、可動コア41を前方へ下降させる補助ばね55のセット荷重が比較的小さいことにより、弁部42の弁座27への着座から僅かに遅れて移動する。
【0038】
ところで、弁体40は、弁座27に最初に着座したとき、その着座衝撃によって跳ね返るが、遅れて下降する可動コア41が跳ね返る弁体40に固定された閉弁側ストッパ49に当接することで、弁体40の跳ね返り量を最小限に抑えることができる。
【0039】
弁体40の跳ね返りが抑えられると、弁体40は弁ばね54の反発力により閉弁状態に保持されて燃料噴射を停止し、可動コア41は補助ばね55の反発力により閉弁側ストッパ49への当接状態に保持される。
【0040】
上記のように、弁体40の閉弁過程において、弁体40が弁座27に与える衝撃力は、弁体40のみが弁座27に最初に着座したときの衝撃力と、次いで可動コア41が閉弁側ストッパ49に衝突したときの衝撃力とに分けられるので、それぞれの衝突エネルギは比較的小さい。また弁体40は、弁座27に最初に着座したときは、その着座衝撃により跳ね返り、その後で再び弁座27に着座して衝撃を与えるが、弁体40の跳ね返り後の閉弁ストロークは、弁体40の通常の開弁位置からの閉弁ストロークより極めて小さいから、弁座27に及ぼす衝撃力は極めて小さい。これにより弁部42および弁座27相互の着座部の摩耗を防ぐととともに、着座騒音を小さく抑えることができる。
【0041】
以上説明した燃料噴射弁8には、本発明に従い、更に次のような特徴的な構造が付加されている。その特徴的な構造を
図4も併せて参照して、次に説明する。
【0042】
先ず、
図4(A)(B)の左側図面には、第1実施形態の要部が示される。即ち、固定コア14の、可動コア41との対向面(即ち吸引面37)には、可動コア41の平坦な上面に当接可能な横断面円弧状の第1曲面部14aが一体に突設される。第1曲面部14aは、本実施形態ではロッド43を同心状に囲繞する横断面円弧状の環状突起部で構成される。従って、開弁状態で可動コア41は、固定コア14の吸引面37に対し第1曲面部14aで局所的に当接(より具体的には線接触)するから、閉弁過程で可動コア41に及ぼす残留磁気の影響を効果的に低減可能となる。
【0043】
尚、第1曲面部14aを、吸引面37にその周方向に間隔をおいて突設した複数の半球面状の突起部で構成してもよく、その場合は、開弁状態で可動コア41は、固定コア14の吸引面37に対し第1曲面部14aで点接触する。或いはまた、第1曲面部14aを、吸引面37に突設されてその周方向に延びる複数の円弧状の突起部で構成してもよい。
【0044】
また開弁側ストッパ48の、可動コア41との対向面の外周部には、横断面円弧状の面取り加工が施されており、その面取り部が、可動コア41に当接可能な第2曲面部48rを構成する。
【0045】
次に第1実施形態の作用について、主として
図2〜
図4を参照して説明する。
【0046】
上記した第1実施形態によれば、固定コア14の、可動コア41との対向面、即ち吸引面37には、可動コア41に当接可能な横断面円弧状の第1曲面部14aが突設される。そのため、開弁状態で可動コア41は、
これの固定コア14との対向面
が第1曲面部14aで局所的に当接(
図4(A)左側図面を参照)することから、閉弁過程で可動コア41に及ぼす残留磁気の影響を効果的に低減できる。これにより、コイル32への通電が遮断されて電磁吸引力が消失したときに、可動コア41は、残留磁気の影響を受けずにスムーズに固定コア14を離れることができるから、閉弁応答性の向上、延いては内燃機関の燃焼効率アップに寄与することができる。
【0047】
これに対し、
図4(A)の右側図面に示した比較例1では、固定コア14の吸引面37に第1曲面部14aが突設されないため、開弁状態で可動コア41は吸引面37に対し広範囲に面接触状態となる。そのため、コイル32への通電が遮断されたときに、可動コア41は、残留磁気の影響を受け易くなって固定コア14から迅速には離れることができなくなるから、閉弁応答性が相対的に低下する可能性がある。
【0048】
ところで可動コア41とロッド43との嵌合面間には摺動クリアランス70が存在する。そのため、開弁過程で可動コア41が、上記摺動クリアランス70により多少とも傾きながらロッド43上を摺動して開弁側ストッパ48に衝突する可能性があり、この衝突態様の一例を
図4(B)に示す。尚、
図4は、摺動クリアランス70を誇張(後述する
図5も同様に誇張)して描いているが、実際の摺動クリアランス70は、例えば20μm以下程度の大きさに設定される。
【0049】
そして、本実施形態の開弁側ストッパ48の、可動コア41との対向面の外周部には、可動コア41に当接可能な横断面円弧状の第2曲面部48rが設けられるため、
図4(B)の左側図面でも明らかなように、傾斜姿勢の可動コア41が開弁側ストッパ48と衝突する部位は、開弁側ストッパ48の外周部の第2曲面部48rとなる。これにより、その衝突荷重が開弁側ストッパ48の一点に集中して可動コア41が早期に摩耗したり損傷したりするのを効果的に防止可能となるから、燃料の高圧化のために可動コア41への吸引力を増加させた場合でも、可動コア41の耐久性向上が図られる。
【0050】
これに対して、
図4(B)の右側図面に示した比較例2では、開弁側ストッパ48の、可動コア41との対向面の外周部に第2曲面部48rが設けられていないため、開弁過程で上記した衝突荷重が開弁側ストッパ48の外周部のエッジ状の一点に集中して、可動コア41が早期に摩耗したり損傷したりする可能性がある。そして、この不都合は、特に燃料の高圧化のために可動コア41への吸引力を増加させた場合には顕著に現れる可能性がある。
【0051】
また
図5(C)の左側図面には、本発明の第2実施形態が示される。
【0052】
即ち、第2実施形態では、可動コア41の、固定コア14との対向面は、固定コア14から離れるにつれて大径となるテーパ面41tに形成される。第2実施形態のその他の構成は、第1実施形態と同様であるので、各構成要素には、第1実施形態の対応する構成要素と同じ参照符号を付すに止め、これ以上の説明は省略する。而して、第2実施形態でも、第1実施形態と基本的に同様の作用効果が達成可能である。
【0053】
さらに第2実施形態によれば、開弁過程で可動コア41が上記摺動クリアランス
70により多少とも傾きながらロッド43上を摺動して固定コア14に当接する際に、
図5(C)の左側図面からも明らかなように、可動コア41の上記テーパ面41tが固定コア14の第1曲面部14aの比較的内側(即ちロッド43側)寄りの部位に当接する。これにより、その当接部を揺動支点とする可動コア41の揺動量を比較的小さくできるため、それだけ可動コア41の揺動が収まり易くなって、可動コア41の作動が安定し、延いては燃料噴射弁8の開弁応答性が高められる。
【0054】
これに対し、
図5(C)の右側図面に示す比較例3では、可動コア41の、固定コア14との対向面がロッド43の軸線と直交する平坦面である(即ちテーパ面41tでない)ため、開弁過程で可動コア41が上記摺動クリアランス70により多少とも傾きながらロッド43上を摺動して固定コア14に当接する際に、可動コア41の上記平坦面が固定コア14の第1曲面部14aの比較的外側(即ちロッド43と反対側)寄りの部位に当接する。これにより、その当接部を揺動支点とする可動コア41の揺動量が比較的大きくなって、可動コア41の揺動が収まりにくくなり、開弁応答性が相対的に低下する。
【0055】
また、
図5(D)の左側図面には、本発明の第3実施形態が示される。
【0056】
即ち、第3実施形態では、第2実施形態と同様に、可動コア41の、固定コア14との対向面をテーパ面41tとしているが、その可動コア41の中央部(即ち開弁側ストッパ48との対向面)は、ロッド43の軸線と直交する平坦面41fに形成されており、この平坦面41fの外周端がテーパ面41tの内周端と連続する。そして、この平坦面41fを特設した点だけが第2実施形態とは異なる。
【0057】
而して、第3実施形態では、第2実施形態と基本的に同様の作用効果が達成される。更に第3実施形態では、可動コア41の、固定コア14との対向面をテーパ面41tとする一方で、可動コア41の中央部(即ち開弁側ストッパ48との対向面)は、ロッド43の軸線と直交する平坦面41fに形成されるので、開弁過程で可動コア41が上記摺動クリアランス70により多少とも傾きながらロッド43上を摺動して開弁側ストッパ48に衝突する際に、最終的には平坦面41fで開弁側ストッパ48に衝接することになる。従って、テーパ面41tの一部に局部的に衝突力が作用するのを回避できるから、可動コア41の摩耗損傷を効果的に防止可能となる。
【0058】
これに対し、
図5(D)の右側図面に示す比較例4では、可動コア41の、固定コア14との対向面がテーパ面のみで形成(即ち平坦面無し)されていて、そのテーパ面の小径端は、エッジ状の先細り形状となっている。そのため、開弁過程で可動コア41が上記摺動クリアランス70により多少とも傾きながらロッド上43を摺動して開弁側ストッパ48に衝突する際に、最終的には上記テーパ面のエッジ状の小径端
で衝接するため、テーパ面の一部(即ちエッジ状の小径端)に衝突力が局部的に作用し、可動コア41が摩耗損傷する可能性がある。
【0059】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0060】
例えば、前記実施形態では、開弁側ストッパ48の、可動コア41との対向面の外周部に設けられる第2曲面部48rを、その対向面の外周端に形成した面取り部で構成したものを示したが、第2曲面部48rを上記対向面の外周部に突設した横断面円弧状の環状突起部で構成してもよい。
【0061】
また前記実施形態では、開弁側ストッパ48を摺動可能に嵌合、支持するガイドブッシュ39を固定コア14とは別部材として、後付けで固定コア14に固定(圧入)するものを示したが、本発明では、ガイドブッシュ39を省略して、固定コア14の一部(即ち内周面)に、開弁側ストッパ48を摺動案内するガイド機能を果たさせるようにしてもよい。
【課題】弁体が連設されるロッドと、ロッド上を嵌装されて開弁側ストッパ及び閉弁側ストッパ間で摺動可能な可動コアと、可動コアに吸引面を対向させる固定コアと、弁体を閉弁方向に付勢する弁ばねと、コイルの非通電時に可動コアを開弁側ストッパから離反させて閉弁側ストッパに当接させるばね力を発揮する補助ばねとを備えた燃料噴射弁において、弁の閉弁応答性を高めて内燃機関の燃焼効率を高め、しかも可動コアの開弁側ストッパへの衝突力を軽減して可動コアの摩耗、損傷を低減可能とする。
【解決手段】固定コア14の、可動コア41との対向面には、可動コア41に当接可能な横断面円弧状の第1曲面部14aが突設され、また開弁側ストッパ48の、可動コア41との対向面の外周部には、可動コア41に当接可能な横断面円弧状の第2曲面部48rが設けられる。