特許第6788107号(P6788107)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

特許6788107電池セルのための電極ユニットの製造方法、及び、電極ユニット
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6788107
(24)【登録日】2020年11月2日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】電池セルのための電極ユニットの製造方法、及び、電極ユニット
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20201109BHJP
   H01M 2/26 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
   H01M10/04 Z
   H01M2/26 A
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-516502(P2019-516502)
(86)(22)【出願日】2017年9月15日
(65)【公表番号】特表2019-530176(P2019-530176A)
(43)【公表日】2019年10月17日
(86)【国際出願番号】EP2017073316
(87)【国際公開番号】WO2018059972
(87)【国際公開日】20180405
【審査請求日】2019年5月20日
(31)【優先権主張番号】102016218496.2
(32)【優先日】2016年9月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ザオアータイク,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ヘロルト,ユールゲン
(72)【発明者】
【氏名】デラ,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ポラー,ジルバン
【審査官】 守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−074402(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/136550(WO,A1)
【文献】 特表2013−507732(JP,A)
【文献】 特表2010−529617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 10/058
H01M 2/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セル(2)のための電極ユニット(10)を製造する方法であって、以下の工程、即ち、
第1の電極(22)の複数の板状のセグメントが有する接触タブ(36)を、帯状の第1のセパレータ層(18)と材料結合により結合する工程と、
帯状の第2のセパレータ層(19)を、前記第1の電極(22)の前記セグメントの前記接触タブ(36)又は前記第1のセパレータ層(18)と材料結合により結合する工程であって、結果的に、帯状の結合体要素(50)が生じ、前記第1の電極(22)の前記セグメントの活物質(42)が、前記第1のセパレータ層(18)及び前記第2のセパレータ層(19)によって囲まれる、前記材料結合により結合する工程と、
前記結合体要素(50)に第2の電極(21)の複数の板状のセグメントを載置する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記結合体要素(50)が、前記第1の電極(22)の前記セグメントの間で交互方向に折り畳まれ、前記第2の電極(21)の前記セグメントが、前記第1のセパレータ層(18)と前記第2のセパレータ層(19)とに交互に載置される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記結合体要素(50)が、前記第1の電極(22)の前記セグメントの間で同じ方向に折り畳まれ、前記第2の電極(21)の前記セグメントが、前記第1のセパレータ層(18)又は前記第2のセパレータ層(19)に載置される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記結合体要素(50)が、前記第1の電極(22)の前記セグメントの間で分離され、その結果、結合体セグメント(52)が生じ、前記結合体セグメント(52)と、前記第2の電極(21)の前記セグメントと、が交互に積層される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ストリップ状の第1の接着膜(61)が、前記第1のセパレータ層(18)に施され、
前記第1の電極(22)の前記セグメントの前記接触タブ(36)が、前記第1の接着膜(61)によって、前記第1のセパレータ層(18)に接着され、
前記第2のセパレータ層(19)が、前記第1の接着膜(61)によって、前記第1のセパレータ層(18)に接着される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の電極(22)の前記セグメントの前記接触タブ(36)の両側に、ストリップ状の第3の接着膜(63)が1つずつ施され、
前記第1の電極(22)の前記セグメントの前記接触タブ(36)は、前記第3の接着膜(63)によって、前記第1のセパレータ層(18)に接着され、
前記第2のセパレータ層(19)は、前記第3の接着膜(63)によって、前記第1の電極(22)の前記セグメントの前記接触タブ(36)に接着される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の電極(21)の前記セグメントの接触タブ(35)は、前記結合体要素(50)と材料結合により結合される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の電極(21)の前記セグメントの前記接触タブ(35)は、前記結合体要素(50)と接着される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ストリップ状の第2の接着膜(62)が、前記第2のセパレータ層(19)に施され、前記第2の電極(21)の前記セグメントの前記接触タブ(35)が、前記第2の接着膜(62)によって前記第2のセパレータ層(19)に接着される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ストリップ状の第4の接着膜(64)が、前記第2の電極(21)の前記セグメントの前記接触タブ(35)に施され、前記第2の電極(21)の前記セグメントの前記接触タブ(35)は、前記第4の接着膜(64)により前記第2のセパレータ層(19)に接着される、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気セルのための電極ユニットを製造する方法であって、第1の電極の複数の板状セグメントが、帯状の第1のセパレータ層と材料結合により(stoffschluessig)結合され、特に接着される、上記方法に関する。さらに、本発明は、本発明に係る方法に従って製造された、電池セルのための電極ユニットにも関する。
【背景技術】
【0002】
電気エネルギーは、電池を用いて貯蔵することが可能である。電池は、化学的な反応エネルギーを電気エネルギーに変換することが可能である。ここで、一次電池と二次電池とが区別される。一次電池は1度しか稼働しえないが、蓄電池とも呼ばれる二次電池は再充電が可能である。蓄電池では、特に、所謂リチウムイオン電池セルが利用される。このリチウムイオン電池セルは、特に、高いエネルギー密度と、熱安定性と、非常に少ない自己放電と、によって卓越している。
【0003】
リチウムイオン電池セルは、カソードとも呼ばれる正の電極と、アノードとも呼ばれる負の電極と、を有する。カソード及びアノードは、集電体を1つずつ含み、この集電体に活物質が塗布されている。電池セルの電極はフィルム状に形成されており、アノードとカソードとを分離するセパレータを間に挟んだ状態で巻回されて、巻回電極体となる。このような巻回電極体は、ジェリーロール(Jelly‐Roll)とも称される。電極は、互いに積層されて電極スタックを成してもよく、又は、他の形態により電極ユニットを形成してもよい。
【0004】
電極ユニットの2つの電極は、端子とも呼ばれる電池セルの極と電気的に接続されている。電極及びセパレータは、通常は液状の電解質によって囲まれている。電池セルは、例えばアルミニウムで製造されたセルハウジングを更に有する。セルハウジングは、通常では角柱形状に、特に直方体形状に形成され、耐圧性を備えて構成される。しかしながら、他のハウジング形状、例えば円柱状も公知であり、又は、柔軟なポーチセル(Pouchzelle)も公知である。
【0005】
新しい電池セルを開発する際の基本的な試みは、セルの電気化学的な有効容量を増やすことである。この有効容量を最大化するための、電極ユニットの最適な構造形態は電極スタックであるということが判明している。なぜならば、電極スタックは、理想的には角柱形状にも、任意の他の幾何学的形状にも製造されうるからである。
【0006】
電極ユニットの充電状態及び劣化状態に従って、電極の膨張が起きる可能性があり、これにより、完全に巻回された電極ユニットでは、丸みが付いた領域でズレ、層間剥離、及び不均質性が生じうる。電極スタックでは、このような劣化プロセスも同様に最小化される。電極に対して均一な力が作用することによって、電極及びセパレータの接触の消失が防止されるとともに、電極ユニットの最長の寿命が実現されうる。
【0007】
独国特許出願公開第102006054308号明細書には、電極が縁端領域で、材料結合による接着結合によりセパレータに固定された電極構成が開示されている。その際の接着ポイントは、電極の活物質の上に存在する。
【0008】
独国特許出願公開第102009013345号明細書も同様に、電極が縁端領域で、材料結合による接着結合によりセパレータに固定された電極構成について記載している。電極ユニットが、側方をぐるりと囲む接着ストリップによって固定された変形例が示されている。さらに、電極の角に設けられた接着ポイント、及び、長手方向側面に設けられた接着ビードが示されている。
【0009】
国際公開第2001/059870号明細書は、別々の電極及びセパレータからその下位要素が形成された電極ユニットの構造について記載している。上記下位要素は、連続的なセパレータと共にZ字状に折り畳まれることで、完成した電極ユニットとなる。下位要素の製造時には、積層化(Lamination)によりセパレータ層が電極に施される。
【0010】
米国特許出願公開第2013/0059183号明細書には、電極ユニットを含む電池が開示されている。ここでは、電極ユニットは、帯状のアノード及び帯状のカソードを含み、この帯状のアノード及び帯状のカソードは帯状のセパレータに接着されている。この接着は、好適には、電極の集電体の2つのストリップ状領域で行われる。
【0011】
米国特許出願公開第2010/0175245号明細書は、電池セルのための電極スタックを製造する方法を開示している。ここでは、接着剤が、1の電極の集電体に塗布され、この1つの電極はこのようにしてセパレータに接着される。他の電極の集電体にも同様に接着剤が塗布され、この他の電極は別のセパレータに接着される。
【0012】
米国特許出願公開第2010/0196167号明細書から、電池セルのための電極ユニット、及び、電極ユニットを製造する方法が読み取れる。ここでは、カソードが、第1のセパレータに接着され、アノードが、第2のセパレータに接着される。
【0013】
欧州特許出願公開第2958179号明細書は、電池セルのための電極ユニット、及び、電極ユニットを製造する方法を開示している。ここでは、帯状の電極が切断されて板状セグメントとなり、帯状のセパレータに載置される。その後に、2つのセパレータと、電極セグメントと、が互いに接着される。続いて、互いに接着されたセパレータ及び電極セグメントが切断されて、積層される。
【発明の概要】
【0014】
電池セルのための電極ユニットを製造する方法が提案される。本方法は、少なくとも、以下の実行される工程を含む。
【0015】
第1の工程において、第1の電極の複数の板状のセグメントが有する接触タブが、帯状の第1のセパレータ層と材料結合により結合される。第1の電極は、アノードであってもよく、カノードであってもよい。材料結合による結合として、特に接着が考慮の対象となるが、例えば融着も考慮の対象となる。
【0016】
第1のセパレータ層は、平坦かつ帯状に形成されている。このことは本文脈では、縦方向の第1のセパレータ層の長さが、縦方向に対して直交する横方向の第1のセパレータ層の長さよりも遥かに長く、特に、少なくとも10倍長いことを意味している。
【0017】
第1の電極のセグメントは、平坦かつ板状に形成されている。このことは本文脈では、縦方向の第1の電極のセグメントの長さが、横方向の第1の電極のセグメントの長さとほぼ同じ長さであり、特に、最小で、横方向の第1の電極のセグメントの長さの半分の長さであり、最大で、横方向の第1の電極のセグメントの長さの2倍の長さであることを意味している。
【0018】
第1の電極のセグメントは集電体をそれぞれ1つずつ含み、この集電体は、金属箔として形成され、好適にはその両側に活物質が塗布されている。この集電体からは接触タブが突き出ており、この接触タブには活物質が塗布されておらず、即ち活物質が無い。第1の電極のセグメントの接触タブは、第1の電極のセグメント同士を互いに接触させるため、及び、第1の電極のセグメントと電池セルの端子とを接触させるために役立つ。
【0019】
特に、第1の電極のセグメントの接触タブのみが、第1のセパレータ層と材料結合により結合される。即ち、第1の電極のセグメントの活物質と、第1のセパレータ層と、の直接的な接続が設けられていない。
【0020】
第2の工程において、帯状の第2のセパレータ層が、第1の電極のセグメントの接触タブと材料結合により結合され、又は、帯状の第2のセパレータ層が、第1のセパレータ層と材料結合により結合される。第1の電極のセグメントの活物質と、第2のセパレータ層と、の直接的な接続も同様に設けられていない。
【0021】
ここでは、第1のセパレータ層と、第2のセパレータ層と、第1の電極のセグメントと、を含む帯状の結合体要素が生じる。このとき、第1の電極のセグメントは、2つのセパレータ層の間の広範囲に配置されている。また、第1の電極のセグメントの活物質は、第1のセパレータ層及び第2のセパレータ層によって囲まれている。第1の電極のセグメントの接触タブは、上記2つのセパレータ層の間から突出しており、外部から接触可能である。
【0022】
第3の工程において、結合体要素に第2の電極の複数の板状セグメントが載置される。第1の電極がアノードである場合には、第2の電極はカソードである。第1の電極がカソードである場合には、第2の電極はアノードである。
【0023】
第2の電極のセグメントは、第1のセパレータ層又は第2のセパレータ層の、第1の電極のセグメントとは反対の側に載置される。第1の電極のセグメントと、第2の電極のセグメントと、の間には常に上記2つのセパレータ層の一方が存在する。
【0024】
第1のセパレータ層及び第2のセパレータ層は、例えば互いに分離した、別々の膜として形成されうる。しかしながら、第1のセパレータ層と第2のセパレータ層とは、1つの膜としても形成されうる。この場合、第2のセパレータ層は、第1の工程の後に、長軸に沿って、第1のセパレータ層に対して180°折り曲げられ、第2の工程で、第1の電極のセグメントの上に置かれる。
【0025】
本発明の有利な実施形態によれば、第3の工程の間に、結合体要素が、第1の電極のセグメントの間で、交互方向に折り畳まれる。この作業は、「Z字状の折り畳み」とも称される。その後、第3の工程では、第2の電極のセグメントが、第1のセパレータ層と第2のセパレータ層とに交互に載置される。これにより、第2の電極のセグメントはそれぞれ、第1のセパレータ層又は第2のセパレータ層の双方に載置されている。
【0026】
本発明の他の有利な実施形態によれば、第3の工程の間に、結合体要素が、第1の電極のセグメントの間で同じ方向に折り畳まれる。この作業は巻回に似ているが、第1の電極のセグメントは平坦なままであり湾曲しない。その後、第3の工程では、第2の電極のセグメントが、第1のセパレータ層に載置されて、第2のセパレータ層によって覆われ、又は、第2の電極のセグメントが、第2のセパレータ層に載置されて、第1のセパレータ層によって覆われる。これにより、第2の電極のセグメントはそれぞれ、第1のセパレータ層と第2のセパレータ層との間に存在する。
【0027】
本発明の他の有利な実施形態によれば、第3の工程の間に、結合体要素が、第1の電極のセグメントの間で分離される。この作業は「個別化」とも称される。この個別化によって、第1の電極のセグメントをそれぞれが有する個々の結合体セグメントが生じる。その後、第3の工程では、結合体セグメントと、第2の電極のセグメントと、が交互に積層される。これにより、第2の電極のセグメントはそれぞれ、第1のセパレータと第2のセパレータ層との間に存在する。
【0028】
有利な変形例によれば、第1の工程の前に、ストリップ状の第1の接着膜が、第1のセパレータ層の、特に縁端領域に施される。その後に、第1の工程では、第1の電極のセグメントの接触タブが、第1の接着膜によって、第1のセパレータ層に接着される。第2の工程では、第2のセパレータ層が、第1の接着膜によって、第1のセパレータ層に接着される。
【0029】
代替的な有利な変形例によれば、第1の工程の前に、第1の電極のセグメントの接触タブの両側の、特に縁端領域に、ストリップ状の第3の接着膜が1つずつ施される。その後に、第1の工程では、第1の電極のセグメントの接触タブが、第3の接着膜によって、第1のセパレータ層に接着される。第2の工程では、第2のセパレータ層が、第3の接着膜によって、第1の電極のセグメントの接触タブに接着される。
【0030】
好適には、第2の電極のセグメントの接触タブも、結合体要素、即ち特にセパレータ層と材料結合により結合され、好適には接着される。
【0031】
このために、例えば第3の工程の前に、ストリップ状の第2の接着膜が、第2のセパレータ層の、特に縁端領域に施される。その後に、第3の工程では、第2の電極のセグメントの接触タブが、第2の接着膜によって第2のセパレータ層に接着される。
【0032】
代替的に、第3の工程の前に、ストリップ状の第4の接着膜が、第2の電極のセグメントの接触タブの、特に縁端領域に施される。その後、第3の工程において、第2の電極のセグメントの接触タブが、第4の接着膜により第2のセパレータ層に接着される。
【0033】
本発明に係る方法に従って製造された、電池セルのための電極ユニットも提案される。
【0034】
本発明に係る電極ユニットは、有利には、電気自動車(EV:electric vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV:hybrid−electric vehicle)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV:plug−in hybrid electric vehicle)、又は家庭用電化製品における電池セルで利用される。家庭用電化製品とは、特に、携帯電話、タブレットPC、又はノートブック(Notebook)として理解されたい。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る方法によって、セパレータ層に対する電極のセグメントの正確な位置決めが可能となる。これにより、特に、比較的速い処理速度で、かつ小さな製造公差により、連続的な製造プロセスが実現されうる。本発明に係る方法によって、特にZ字状の折り畳み、巻回、又は積層による電極ユニットの製造が可能となる。本発明に係る方法は、様々な種類のセパレータ層にも、特に、セラミック塗布セパレータ、及び、ファイバーセパレータにも適用されうる。
【0036】
有利には、電極の活物質には接着剤が接しておらず、これにより、接着膜の接着剤が、電極ユニットの電気化学的挙動に対して不利な影響を与えない。特に、接着剤によって、電極ユニットの内部抵抗の上昇が引き起こされない。これにより、電極ユニットの性能及び劣化挙動が有利に改善される。
【0037】
さらに、接着膜が、異物、例えば切りくずの進入から電極ユニットを護る。追加的に、接着剤は、セパレータ層の機械的な固定のために寄与し、特に過剰な熱的負荷が掛かった際に、セパレータ層が縮むことを防止する。これにより、電極ユニット及び電池セルの安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本発明の実施形態が、図面及び以下の明細書の記載によって詳細に解説される。
図1】電池セルの概略図を示す。
図2】第1の変形例に係る電極ユニットの製造工程を示す。
図3】第2の変形例に係る電極ユニットの製造工程を示す。
図4】Z字状に折り畳むことで製造された電極ユニットの概略的な断面図を示す。
図5】巻回により製造された電極ユニットの概略的な断面図を示す。
図6】積層により製造された電極ユニットの概略的な断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の実施形態についての以下の記載では、同じ又は類似した構成要素には同じ符号が付され、個別ケースでの上記構成要素の反復説明は省略される。図は、本発明の主題を概略的に示しているにすぎない。
【0040】
図1は、電池セル2の概略図を示している。電池セル2は、角柱形状、ここでは直方体形状に形成されたハウジング3を含む。ハウジング3は、ここでは電導性を有して実現されており、例えばアルミニウムから製造されている。
【0041】
電池セル2は、負の端子11と、正の端子12と、を含む。端子11、12を介して、電池セル2により提供される電圧が取得されうる。さらに、端子11、12を介して電池セル2を充電することも可能である。
【0042】
電池セル2のハウジング3の内部には、ここでは電極スタックとして実現された電極ユニット10が配置されている。電極ユニット10は、2つの電極、即ち、アノード21及びカソード22を有する。アノード21及びカソード22はそれぞれフィルム状に形成されており、少なくとも1つのセパレータ層18、19によって互いに隔てられている。少なくとも1つのセパレータ層18、19は、イオン伝導性を有し、即ちリチウムイオンを透過させる。
【0043】
アノード21は、アノード活物質41と、集電体31と、を含む。アノード21の集電体31は、電導性を有して実現されており、金属、例えば銅から製造されている。アノード21の集電体31は、電池セル2の負の端子11と電気的に接続されている。
【0044】
カソード22は、カソード活物質42と、集電体32と、を含む。カソード22の集電体32は、電導性を有して実現されており、金属、例えばアルミニウムから製造されている。カソード22の集電体32は、電池セル2の正の端子12と電気的に接続されている。
【0045】
図2には、第1の変形例に係る電極ユニット10の製造工程が示されている。部分図2a)に示されるように、第1の接着膜61が、帯状に構成された第1のセパレータ層18の縁端領域に施される。帯状の構成とは、以下では、縦方向xの長さが、縦方向xに対して直交して方向付けられた横方向yの長さよりも遥かに長いことと理解されたい。
【0046】
第1の接着膜61は、例えば、転写法(Transferverfahren)を介して、接着剤ストリップとして、接着テープとして、又はスプレー糊として施されうる。
【0047】
感圧接着剤の他に、様々な形で有効な接着剤を利用することが可能である。他の代替的な実施形態において、第1のセパレータ層18を熱的に融着させ、このようにして同様に、材料結合による結合を形成することが可能である。
【0048】
部分図2b)には、第1の電極としてのカソード22の、板状に構成された複数のセグメントが、どのように第1のセパレータ層18に載置されるのかを示している。板状の構成とは、以下では、縦方向xの長さが、横方向yの長さと近似的に同じ長さであると理解されたい。
【0049】
カソード22のセグメントは、カソード活物質42が塗布された集電体32をそれぞれ1つずつ有する。集電体32から、カソード22の接触タブ36が突出している。この接触タブ36にはコーティングがされておらず、即ちカソード活物質42が無い。カソード22のセグメントは、カソード22の接触タブ36が第1の接着膜61に付着しこれによりカソード22のセグメントが第1のセパレータ層18に接着されるように、第1のセパレータ層18の上に配置される。
【0050】
その際に、カソード22の個々のセグメントの方向付け及び位置は、後に続く巻回、折り畳み、又は積層の後でカソード22の接触タブ36同士が互いに重なるように、電極ユニット10の更なる製造プロセスに対して調整される。本図では、Z字状の折り畳みのために位置及び方向付けが調整されている。
【0051】
続いて、部分図2c)が示すように、帯状の第2のセパレータ層19が、第1のセパレータ層18の上にぴったりと置かれて、第1の接着膜61によって第1のセパレータ18に接着される。これにより、部分的に透明に示された帯状の結合体要素50が生じる。ここでは、カソード22の活物質42は、第1のセパレータ層18及び第2のセパレータ層19によって囲まれており、カソード22の接触タブ36のみが、セパレータ層18、19の間から突き出ている。
【0052】
ここでは、第2の接着膜62が、第2のセパレータ層19の縁端領域に施される。その後で、結合体要素50の第2のセパレータ層19には、第2の電極としてのアノード21の、板状に構成された複数のセグメントが配置される。ここでは、アノード21のセグメントが1つだけ示されている。
【0053】
アノード21のセグメントは、アノード活物質41が塗布された集電体31をそれぞれ1つずつ有する。集電体31から、アノード21の接触タブ35が突出している。この接触タブ35にはコーティングがされておらず、即ちアノード活物質41が無い。アノード21のセグメントは、アノード21の接触タブ35が第2の接着膜62に付着しこれによりアノード21のセグメントが第2のセパレータ層19に接着されるように、第2のセパレータ層19の上に配置される。
【0054】
図3には、第2の変形例に係る電極ユニット10の製造工程が示されている。部分図3a)に示されるように、第3の接着膜63が、帯状のカソード22の、コーティングされていない集電体32の端部の両側に施される。その際に、第3の接着膜63は、例えば、転写法を介して、接着剤ストリップとして、接着テープとして、又は、スプレー糊として施されうる。帯状のカソード22から、個別化によって、カソード22の板状に形成されたセグメントが形成される。ここで、カソード22のセグメントの接触タブ36には、第3の接着膜63が設けられている。
【0055】
カソード22のセグメントは第1の電極として、部分図3b)に示されるように、帯状の第1のセパレータ層18に付着される。その際に、カソード22のセグメントの接着タブ36が、第3の接着膜63によって第1のセパレータ層18に接着される。
【0056】
その際に、カソード22の個々のセグメントの位置及び方向付けは、後に続く巻回、折り畳み、又は積層の後でカソード22の接触タブ36同士が互いに重なるように、電極ユニット10の更なる製造プロセスに対して調整される。本図では、Z字状の折り畳みのために位置及び方向付けが調整されている。
【0057】
続いて、部分図3c)に示されるように、帯状の第2のセパレータ層19が、第1のセパレータ層18の上にぴったりと置かれ、第3の接着膜63によって、カソード22のセグメントの接着タブ36に接着される。これにより、部分的に透明に示された帯状の結合体要素50が生じる。その際に、カソード22の活物質42は、第1のセパレータ層18及び第2のセパレータ層19によって囲まれており、カソード22の接触タブ36のみが、セパレータ層18、19の間から突き出ている。
【0058】
その後、結合体要素50の第2のセパレータ層19の上には、第2の電極としてのアノード21の、板状に形成された複数のセグメントが配置される。ここでは、アノード21のセグメントが1つだけ示されている。その前に、第4の接着膜64が、アノード21のセグメントの接触タブ35の縁端領域に施される。アノード21のセグメントは、アノード21の接触タブ35が第4の接着膜64によって第2のセパレータ層19に接着されるように、第2のセパレータ層19の上に配置される。
【0059】
第1の接着膜61、第2の接着膜62、第3の接着膜63、及び、第4の接着膜64は、第1の変形例及び第2の変形例では、例えば、ポリオレフィンベースのホットメルト接着剤、又は、アクリルベースの接着剤として実現されうる。さらに、接着剤は、セラミックス充填材、例えばAlを含有しうる。
【0060】
第1の接着膜61、第2の接着膜62、第3の接着膜63、及び、第4の接着膜64は、好適には、2mm以下の幅により設けられる。接着膜61、62、63、64の幅は、横方向yの長さに対応する。
【0061】
ストリップ状の接着膜61、62、63、64の代わりに、接着剤ポイントを利用することも考えられる。このような接着剤ポイントは、好適には直径が最大2mmであり、好適には最大20mmの間隔を互いにとって配置されている。このような接着剤ポイントの塗布は、例えば、「噴射法」(Jetten)として公知の方法を利用して行われる。
【0062】
第1の変形例の第2の接着膜62、及び、第2の変形例の第4の接着膜64は設けられなくてもよく、第2の電極としてのアノード21の、板状に形成されたセグメントは、単に、結合体要素50の第2のセパレータ層19の上に配置されてもよい。
【0063】
第1の変形例及び第2の変形例では、第2の電極としてのアノード21のセグメントは、アノード21の接触タブ35がカソード22の接触タブ36と同じ方向を向くように、配置されうる。同様に、第2の電極としてのアノード21のセグメントは、アノード21の接触タブ35がカソード22の接触タブ36とは反対の方向を向くように、配置されうる。
【0064】
図4は、Z字状に折り畳むことで製造された電極ユニット10の概略的な断面図を示す。ここでは、結合体要素50が、カソード22のセグメントの間で交互方向に折り畳まれる。アノード21のセグメントが、第1のセパレータ層18の上と第2のセパレータ層19の上とに交互に配置される。
【0065】
図5は、巻回により製造された電極ユニット10の概略的な断面図を示している。ここでは、結合体要素50が、カソード22のセグメント間で同じ方向に折り畳まれる。アノード21のセグメントは、2つのセパレータ層18、19の一方に載置され、巻回される際には、上記2つのセパレータ層18、19の他方により覆われる。その後で、アノード21のセグメントはそれぞれ、結合体要素50の第1のセパレータ層18と第2のセパレータ層19との間に存在する。アノード21の、中央に配置されたセグメントのみが、第2のセパレータ層19のみによって取り囲まれている。
【0066】
図6は、積層により製造された電極ユニット10の概略的な断面図を示している。結合体要素50は、カソード22のセグメントの間で分離される。この個別化によって、カソード22のセグメントを1つずつ有する結合体セグメント52が生じる。結合体セグメント52と、アノード21のセグメントとが交互に積層される。その後で、アノード21のセグメントはそれぞれ、結合体セグメント52の第1のセパレータ層18と第2のセパレータ層19との間に存在する。
【0067】
本発明は、本明細書に記載される実施例、及び実施例で強調される観点には限定されない。むしろ、特許請求の範囲により示される範囲内で、当業者の業の枠組みに収まる複数の変更が可能である。
図1
図2a)】
図2b)】
図2c)】
図3a)】
図3b)】
図3c)】
図4
図5
図6