(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記クリップ胴体部の下部に、前記クリップ胴体部の下部開口から内部へ前記スタッドボルトを誘導するためのスタッドボルトガイド、および、該クリップ胴体部を前記取付け孔に誘導するための取付け孔ガイドが設けられていること
を特徴とする請求項1に記載の自動車用インシュレータ取付けクリップ。
前記スタッドボルトガイドは、前記クリップ胴体部の下部開口縁から下方に向けて円弧状に広がった傘形状になっていて、その傘形状部の内側円弧面がガイド面として機能するように構成してあること
を特徴とする請求項2または4のいずれかに記載の自動車用インシュレータ取付けクリップ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1(a)は本発明を適用した自動車用インシュレータ取付けクリップの正面外観図、同図(b)はその上面図、同図(c)はその下面図である。また、
図2は
図1(b)中のB1矢視断面図、
図3は
図1(b)中のB2矢視断面図であり、
図4は
図1(a)の自動車用インシュレータ取付けクリップの使用説明図(スタットボルトを利用する形式)、
図5は
図1(a)の自動車用インシュレータ取付けクリップの使用説明図(取付け孔を利用する形式)である。
【0018】
《自動車用インシュレータ取付けクリップの概要》
図1(a)の自動車用インシュレータ取付けクリップCP(以下「クリップCP」という)は、
図4または
図5に示したように、車体パネルBPに対してインシュレータISを取付ける手段として使用されるクリップであって、その具体的な構成は、インシュレータISの貫通孔H1に挿入される筒状のクリップ胴体部1と、貫通孔H1の縁部表面に引っ掛かり係合するクリップ頭部2と、クリップ胴体部1の内周面から中心方向に向けて突出した内爪3と、クリップ胴体部2の外周面から外方向に向けて突出した外爪4と、を備えた構成になっている。
【0019】
そして、
図1(a)のクリップCPでは、
図4のように、インシュレータISを取付けるためのスタッドボルトSBが車体パネルBPに存在する場合は、内爪3がスタッドボルトSBの外周ネジ部に係合する手段として機能する。この一方、
図5のように、インシュレータISを取付けるための取付け孔H2が車体パネルBPに存在する場合は、外爪4が取付け孔Hの縁部裏面に係合する手段として機能する。
【0020】
《クリップ胴体部およびクリップ頭部の詳細》
図1(a)のクリップCPでは、クリップ胴体部1の全体形状を円筒形状とし、クリップ頭部2の全体形状を円板形状としているが、これらの形状に限定されることはない。例えば、クリップ胴体部1の全体形状を角筒形状としたり、クリップ頭部2の全体形状を多角板形状としたりする等、クリップ胴体部1やクリップ頭部2の全体形状は必要に応じて適宜変更可能である。
【0021】
クリップ胴体部1の内側空間(筒状の内面側)は、スタッドボルトSBが挿入される空間として利用される。クリップ胴体部1の内側空間へのスタッドボルトSBの挿入作業を目視で確認しながら確実に行えるようにする手段として、
図1(a)のクリップCPではクリップ頭部2に覗き窓21を設けている(
図1(b)、
図2参照)。
【0022】
覗き窓21は、
図2のようにクリップ頭部2の表裏面を貫通してクリップ胴体部1の内側空間に連通する構造になっているので、
図1の取付けクリップCPでは、この覗き窓21からスタッドボルトSBの先端を目視で確認しながら、スタッドボルトSBの挿入作業を行うことができる。
【0023】
クリップ頭部2は、前述のように貫通孔H1の縁部表面に引っ掛かり係合する部位であるため、クリップ胴体部2の外周面より横方向に飛び出た形状とすることで、貫通孔H1を容易に通過できない構造となるように構成してある。
【0024】
《内爪の詳細》
内爪3の具体的な構成として、
図1(a)の取付けクリップCPでは、弾性変形によって撓むことが可能な左右一対の片持ち支持梁31をクリップ胴体部1に形成し、それぞれの片持ち支持梁31の先端部内側に内爪3を設けることで、2つの内爪3が互いに対向するように構成してある(
図3参照)。
【0025】
片持ち支持梁31の具体的な構成として、
図1(a)のクリップCPでは、U字あるいはコ字状のスリット32をクリップ胴体部1に設けることによって、片持ち支持梁31が形成される構成を採用しているが、これに限定されることはない。また、片持ち支持梁31の本数や内爪3の個数は必要に応じて適宜変更することができる。
【0026】
《外爪の詳細》
外爪4、4、4の具体的な構成として、
図1(a)のクリップCPでは、クリップ胴体部1の外周面からクリップ頭部2の方向に反り上がった形状の羽根41、42、43を採用するとともに、そのような形状の羽根41、42、43がクリップ胴体部1の左右両外周面に3段ずつ設けられる構成を採用しているが、これに限定されることはない。前記のような羽根41、42、43からなる外爪4の段数は必要に応じて適宜変更することもでき、また、羽根41、42、43以外の形状を外爪4の形状として採用することも可能である。さらに、羽根41、42、43の大きさは必ずしも同一である必要はなく違ってもよい。
【0027】
《その他の構成》
図1(a)のクリップCPでは、クリップ胴体部1の下部に、クリップ胴体部1の下部開口から内部へ車体パネルBPのスタッドボルトSBを誘導するためのスタッドボルトガイド5と、クリップ胴体部1を車体パネルBPの取付け孔H2に誘導するための取付け孔ガイド6と、を設けている。
【0028】
スタッドボルトガイド5は、
図1(a)のように、クリップ胴体部1の下部開口縁から下方に向けて円弧状に広がった傘形状になっていて、その傘形状部51の内側円弧面がガイド面5Aとして機能するように構成してある。なお、傘形状以外の形状をスタッドボルトガイド5の形状として採用することもできる。
【0029】
取付け孔ガイド6は、先に説明した傘形状部51の裾51Aから下方に向けて内向きにカーブした羽根形状になっていて、その羽根形状部61の外面がガイド面61Aとして機能するように構成してある。
【0030】
図1(a)のクリップCPでは、取付け孔ガイド6の具体的な構成として、図(c)のようにクリップ胴体部1を中心として十字状に羽根形状部61が配置される構成を採用しているが、これに限定されることはない。羽根形状部61の配置形態や配置本数は必要に応じて適宜変更することができる。
【0031】
《クリップの使用説明等》
図1(a)のクリップCPは、車体パネルBPのスタッドボルトSBを利用してインシュレータISを車体パネルBPに取り付ける第1の取付け事例(
図4参照)、および、車体パネルBPの取付け孔H2を利用してインシュレータISを車体パネルBPに取り付ける第2の取付け事例(
図5参照)の双方に対して、柔軟に対応することができる。
【0032】
なお、前記第1および第2の取付け事例とも、インシュレータISにはその表裏面を貫通する貫通孔H1が設けられていることを前提として、以下、取付け事例ごとに、クリップCPによるインシュレータISの取付け作業を説明する。
【0033】
《第1の取付け事例について》
第1の取付け事例、すなわち、車体パネルBPのスタッドボルトSBを利用してインシュレータISを車体パネルBPに取り付ける場合は、最初に、インシュレータISを車体パネルBP上にセットする。このセット作業では、車体パネルBPのスタットボルトSBがインシュレータISの貫通孔H1内に配置されるものとする。
【0034】
以上のセット作業が済んだら、次は、クリップCPの先端CP1(具体的には、スタッドボルトガイド5や取付け孔ガイド6が設けられている側)をスタッドボルトSBの先端に対向させた状態で、当該クリップCPのクリップ頭部2を車体パネルBP方向に所定の力で押圧する。
【0035】
これにより、
図4のように、当該クリップCPのクリップ胴体部1がインシュレータISの貫通孔H1内に嵌った状態、車体パネルBPのスタッドボルトSBがクリップ胴体部2の内側に入り込んだ状態、クリップ頭部2が貫通孔H1の縁部表面に引っ掛かり係合した状態、外爪4が貫通孔H1の内面に当接または食い込んだ状態、および、内爪3がそのスタッドボルトSBの外周ネジ部に係合した状態になることで、車体パネルBPに対するインシュレータISの取り付け作業は完了する。
【0036】
前記第1の取付け事例では、前記のように外爪4が貫通孔H1の内面に当接または食い込んだ状態になることで、インシュレータISに対するクリップCPの位置決め固定がなされる。
【0037】
また、前記第1の取付け事例では、内爪3とスタッドボルトSBの外周ネジ部との係合位置P1を上下方向にずらすことで、インシュレータISの取付け強度を調整することができる。
【0038】
例えば、
図4に示した状態からクリップCPのクリップ頭部2を更に強く押圧した場合は、係合位置P1が下方にずれることにより、インシュレータISの取付け強度が向上する。これとは逆に、係合位置P2を上方にずらした場合、インシュレータISの取付け強度は比較的低めに設定される。
【0039】
ところで、前記第1の取付け事例では、前記のようにクリップCPの先端CP1をスタッドボルトSBの先端に対向させた状態のときに、スタットボルトSBに対してクリップCPが傾斜して配置される場合や、クリップCPとスタッドボルトSBが相対的に横方向にずれて配置される場合もあり得る。
【0040】
この第1の取付け事例において、前記のような傾斜やずれが生じた場合には、スタットボルトSBの先端がスタットボルトガイド5のガイド面5Aに当接し、当接したスタットボルトSBの先端は、ガイド面5Aに沿って摺動することにより、クリップ胴体部1の下部開口から内部の方向へ誘導される。
【0041】
従って、この第1の取付け事例のようなクリップCPによるインシュレータISの取付け作業時において、前記のような傾斜やずれを修正する等の面倒な作業は不要であり、この点において、インシュレータISの取付け作業は容易である。
【0042】
《第2の事例について》
第2の取付け事例、すなわち、車体パネルBPの取付け孔H2を利用してインシュレータISを車体パネルBPに取り付ける場合も、前述の第1の取付け事例と同じく、インシュレータISを車体パネルBP上にセットするが、このセット作業では、車体パネルBPの取付け孔H2がインシュレータISの貫通孔H1の真下に配置されるものとする。
【0043】
以上のセット作業が済んだ後は、クリップCPの先端CP1側を車体パネルBPの取付け孔H2の上端開口に対向させた状態で、当該クリップCPのクリップ頭部2を車体パネルBP方向に所定の力で押圧する。
【0044】
そうすると、最初に、クリップCPの取付け孔ガイド6が車体パネルBPの取付け孔H2に押し込まれる。このとき、取付け孔ガイド6は、取付け孔H2の内縁側から受ける反力によって収縮する方向に弾性変形することで、取付け孔H2を通り抜ける。スタットボルトガイド5も同様に弾性変形することで、取付け孔H2を通り抜ける。また、最下段の外爪4(羽根41)も弾性変形することで、取付け孔H2を通り抜ける。
【0045】
前記のように取付け孔H2を通り抜け後の最下段の外爪4(羽根41)が、その弾性復元能力によって元の状態に戻って、貫通孔H1の縁部表面に引っ掛かり係合した状態になることで、車体パネルBPに対するインシュレータISの取り付け作業は完了する。
【0046】
このとき、最下段の外爪4(羽根41)以外の他の外爪4(羽根42、羽根43)が貫通孔H1の内面に当接または食い込んだ状態になることで、インシュレータISに対するクリップCPの位置決め固定がなされる。
【0047】
前記第2の取付け事例において、クリップCPのクリップ頭部2を更に強く押圧した場合は、下から2段目の外爪4(羽根42)が車体パネルBPの取付け孔H2を抜けて取付け孔Hの縁部裏面に係合した状態になるため、車体パネルBPに対するインシュレータISの取り付け強度は向上する。
【0048】
また、前記第2の取付け事例において、インシュレータISの厚みを薄くした場合は、下から2段目の外爪4(42)あるいは最上段の外爪4(43)が車体パネルBPの取付け孔H2を抜けて取付け孔Hの縁部裏面に係合した状態とすることで、所定の取り付け強度が得られる。
【0049】
ところで、前記第2の取付け事例では、前記のようにクリップCPの先端CP1側を車体パネルBPの取付け孔H2の上端開口に対向させた状態のときに、取付け孔H2の中心軸線に対してクリップCPが傾斜して配置される場合や、クリップCPと取付け孔H2が相対的に横方向にずれて配置される場合もあり得る。
【0050】
この第2の取付け事例において、前記のような傾斜やずれが生じた場合には、前記のようにクリップCPの取付け孔ガイド6が車体パネルBPの取付け孔H2に押し込まれる際に、クリップ胴体部1がその取付け孔ガイド6のガイド面61Aに沿って取付け孔H2の中心方向に誘導される。
【0051】
従って、この第2の取付け事例のようなクリップCPによるインシュレータISの取付け作業において、前記のような傾斜やずれを修正する等の面倒な作業は不要であり、この点において、インシュレータISの取付け作業は容易である。
【0052】
以上説明した第1および第2の取付け事例では、インシュレータISを車体パネルBP上にセットしてから、セットしたインシュレータISの貫通孔H1にクリップCPを嵌めているが、これとは別に、かかるクリップCPを予めインシュレータISの貫通孔H1に嵌めたものを、車体パネルBPにセットしても良い。
【0053】
以上説明した実施形態のクリップCPにあっては、その具体的な構成として、インシュレータISを取付けるためのスタッドボルトSBが車体パネルBPに存在する場合は、内爪3がスタッドボルトSBの外周ネジ部に係合する手段として機能し、インシュレータISを取付けるための取付け孔H2が車体パネルBPに存在する場合は、外爪4が取付け孔H2の縁部裏面に係合する手段として機能するように構成した。このため、本実施形態のクリップCPは、車体パネルBPのスタッドボルトSBを利用してインシュレータISを車体パネルBPに取り付ける第1の取付け事例、および、車体パネルBPの取付け孔H2を利用してインシュレータISを車体パネルBPに取り付ける第2の取付け事例の双方に対して、柔軟に対応でき、この点において、前記のように取付け構造の異なる2種類のクリップを一つにまとめて統一化したものであるから、クリップの取り違いによる誤着や在庫管理の容易化を図るのに好適である。
【0054】
また、以上説明した実施形態のクリップCPによると、前記のように2種類のクリップを一つにまとめて統一化したことにより、クリップの作製に必要な金型も一つで済み、型費削減も図れる。
【0055】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により多くの変形が可能である。