(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数個直列に接続されて組電池を構成する充放電可能な電池セルに対応して、各電池セルのセル電圧を検出すると共に、前記各電池セルのセル電圧を放電するセル電圧監視回路と、
前記各電池セルの正極、負極に接続される接続ラインと、
前記接続ラインから分岐し、前記各電池セルのセル電圧を検出するために前記セル電圧監視回路に接続されるセル電圧検出ラインと、
前記接続ラインから分岐し、前記各電池セルのセル電圧を放電するために前記セル電圧監視回路に接続されるセル電圧放電ラインと、
複数の前記セル電圧検出ラインの少なくとも一つのラインおよび複数の前記セル電圧放電ラインの少なくとも一つのラインに前記各電池セルの使用未使用に応じて実装もしく非実装される第1のジャンパー抵抗と、
を備える電池システム監視装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
−電池システム監視装置−
まず、本実施形態の説明に先立って一般的な電池システム監視装置について説明する。
なお、本実施形態による電池システム監視装置は、ハイブリッド自動車(HEV)に搭載される電池システムを監視するものに限定されない。例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)や電気自動車(EV)、鉄道車両などに搭載される電池システムを監視する電池システム監視装置に対しても、幅広く適用可能である。
【0012】
また、本実施形態による電池システム監視装置が制御および監視の対象とする電池システムの最小単位として、所定の出力電圧範囲、たとえば3.0V〜4.2V(平均出力電圧:3.6V)の出力電圧範囲を有するリチウムイオン電池を想定している。しかし、電池システム監視装置は、リチウムイオン電池以外の蓄電・放電デバイスを用いて構成された電池システムを制御および監視の対象としてもよい。すなわち、SOC(State Of Charge)が高すぎる場合(過充電)や低すぎる場合(過放電)にその使用を制限する必要があれば、どのような蓄電・放電デバイスを用いて電池システムを構成してもよい。以下の説明では、このような電池システムの構成要素としての蓄電・放電デバイスを、電池セルと総称する。また、この電池セルを複数個直列に接続したものを組電池と呼ぶ。
【0013】
以下、図面を参照して電池システム監視装置の一例を説明する。
図1は、電池システム監視装置2の構成を示す図である。電池システム監視装置2は、組電池1と接続されており、フィルタ回路3、放電抵抗4、セル電圧監視IC5を有している。セル電圧監視IC5は、セル電圧検出部6、セル放電スイッチ7、セル放電制御部8を備えている。
【0014】
組電池1は、n−1個の電池セルが直列に接続されており、電池システム監視装置2が制御および監視の対象とする電池システムである。組電池1の各電池セルの正極、負極に接続されるn個のセル電圧検出・放電ラインCL1〜CLnは、n個のセル電圧検出ラインSL1〜SLnとn個のセル電圧放電ラインBL1〜BLnとにそれぞれ分岐される。セル電圧検出ラインSL1〜SLnはフィルタ回路3を介して、セル電圧放電ラインBL1〜BLnは放電抵抗4を介してセル電圧監視IC5に接続される。
【0015】
フィルタ回路3は、セル電圧検出ラインSL1〜SLnからセル電圧監視IC5に入力される各電池セルの電圧信号に重畳された高周波ノイズを除去するためのフィルタ回路であり、セル電圧検出ラインSL1〜SLnの各々に対して設けられた抵抗とコンデンサにより構成されている。このフィルタ回路3はセル電圧検出ラインSL1〜SLnにおいてセル電圧検出ラインSL1〜SLnとセル電圧放電ラインBL1〜BLnの分岐点とセル電圧監視IC5の間にそれぞれ設けられる。
【0016】
放電抵抗4は、放電時に放電ラインBL1〜BLnに流れる放電電流を調整するための抵抗素子であり、セル電圧放電ラインBL1〜BLnにおいてセル電圧検出ラインSL1〜SLnとセル電圧放電ラインBL1〜BLnとの分岐点とセル電圧監視IC5の間にそれぞれ設けられる。
【0017】
またセル電圧監視IC5の電源端子VCCはセル電圧監視IC5の電源ラインPLにより組電池1の最上位、すなわち最も高電位側に配置されている電池セルの正極側に接続される。セル電圧監視IC5のGND端子はセル電圧監視IC5のGNDラインGLにより組電池1の最下位、すなわち最も低電位側に配置されている電池セルの負極側に接続される。
【0018】
なお、
図1では、組電池1においてn−1個の電池セルが直列に接続されている例を示しているが、組電池1の構成は、電池セルを並列に接続したものをさらに直列に接続にするなど、他の構成であってもよく、電池セルの個数も限定されない。
【0019】
セル電圧監視IC5はn個のセル電圧検出・放電ラインCL1〜CLnから分岐されたn個のセル電圧検出ラインSL1〜SLnにより電池セルの電圧を検出する。電池システム監視装置2は、セル電圧監視IC5による各電池セルの電圧検出結果に基づいて、組電池1を制御および監視するための所定の動作を実行する。例えば、各電池セルの充電状態(SOC)を推定し、電池セル間で充電状態にばらつきが生じている場合は、セル電圧放電ラインBL1〜BLnのうち、放電対象の電池セルに対応するセル放電スイッチ7を制御する。そして、セル電圧放電ラインBL1〜BLnを介してセル放電電流を流すことにより、各電池セルの充電状態を均一化するための放電を行う。この他にも、電池システム監視装置2は、セル電圧監視IC5により検出された各電池セルの電圧に基づいて、様々な処理や制御を行う。
【0020】
以上説明した電池システム監視装置は、以下に説明する比較例や実施形態においても同様な処理や制御を行う。
【0021】
−比較例−
電池システム監視装置において、任意のセル数に対応するにはセル数毎に別々の電池制御基板で対応することが考えられるが別々の電池制御基板とした場合、生産コスト、開発コストが高くなる。コスト削減のためにはセル数に依らない電池制御基板の実現、つまり任意のセル数に対して回路部品の実装変更で対応できるように電池制御基板の共通化が求められる。電池制御基板を共通化するには、回路部品の実装変更によりセル数に応じた回路構成をとる必要がある。
【0022】
図2(a)、(b)は、比較例における共通電池制御基板を用いた電池システム監視装置の回路構成である。共通電池制御基板として、12セル用のセル電圧監視IC5を2個用いた例で説明する。
図2(a)は、共通電池制御基板を用いて24セル用とした回路構成図である。
図2(b)は、共通電池制御基板を用いて20セル用とした回路構成図である。
図2(b)の20セル組電池は、セル1、2、13、14がなく、セル1、2、13、14に相当するセル部は短絡されている組電池とする。
【0023】
共通電池制御基板上のジャンパー抵抗40a、40b、40c、40dは後述する電池セルの短絡対策となるセル切り替え用ジャンパー抵抗である。ジャンパー抵抗40e、40fは20セルの場合に上側のセル電圧監視IC5の電源を供給するための電源ラインPLを構成するジャンパー抵抗であり、ジャンパー抵抗40g、40hは20セルの場合に下側のセル電圧監視IC5のセル電圧検出・放電ラインCLを構成するジャンパー抵抗である。
【0024】
図2(a)に示す24セル用の回路構成は、ジャンパー抵抗40a、40b、40c、40dを実装し、ジャンパー抵抗40e、40f、40g、40hを非実装とする構成である。
【0025】
図2(b)に示す20セル用の回路構成は、ジャンパー抵抗40e、40f、40g、40hを実装し、ジャンパー抵抗40a、40b、40c、40dを非実装とする構成である。
【0026】
ここでジャンパー抵抗40a、40b、40c、40dについて説明する。電池システム監視装置2の電池制御基板を共通化する場合に問題となるのが組電池1と電池システム監視装置2との誤接続による電池制御基板上での電池セルの短絡である。
【0027】
共通電池制御基板において対応している回路構成のセル数より組電池のセル数が少ない場合には組電池1が誤接続されても電池セルの短絡の問題は生じないが共通電池制御基板の対応している回路構成のセル数より組電池1のセル数が多い場合は電池制御基板上で電池セルが短絡してしまう。
図2(b)を例に説明するとジャンパー抵抗40a、40b、40c、40dが配線で繋がれている場合(ジャンパー抵抗40a、40b、40c、40dが実装されている場合)、20セル用の回路構成の電池制御基板に誤って24セルの組電池1が接続されてしまうと、ジャンパー抵抗40e、40f、40g、40hを通して電池制御基板上で電池セルが短絡してしまう。電池制御基板上で電池セルの短絡を防ぐためには誤接続により電池未使用部に電池セルが接続されても電池セルの短絡が起きないようにジャンパー抵抗で配線を切り離す必要がある。
【0028】
以上説明したようにジャンパー抵抗40a、40b、40c、40dは電池制御基板の対応しているセル数より組電池1のセル数が多い場合、電池セルが接続されても電池セルの短絡のないように配線を切り離すことが目的のジャンパー抵抗である。20セル用電池制御基板に誤って24セルの組電池1が接続されたとしてもジャンパー抵抗40a、40b、40c、40dを非実装とすることで配線を切り離しているため電池セルの短絡は起きない。
【0029】
また一方で電池制御基板を共通化した場合の電池システム監視装置で問題となるのがセル電圧の検出精度である。セル電圧の検出精度は電池システム監視装置2において電気的特性の重要な要素であるが、上述の電池セルの短絡対策となるセル切り替え用ジャンパー抵抗がセル電圧の検出精度に大きく影響してしまう。
【0030】
セル電圧の検出精度は、セル電圧検出ラインSLとセル電圧放電ラインBLの分岐部前の共通経路部(セル電圧検出・放電ラインCL)のインピーダンス(例えば、図示省略した過電流保護ヒューズ抵抗、ワイヤーハーネス抵抗、コネクタ接触抵抗、基板配線抵抗)に流れる電流による電圧降下により悪化してしまう。
【0031】
セル非放電時はセル電圧監視IC5に流れるリーク電流は数μAのため電圧降下の影響は小さいが、セル放電時は放電電流が数十mA流れるためセル電圧検出ラインSLとセル電圧放電ラインBLの分岐部前の共通経路部の抵抗による電圧降下は大きくなり、電圧検出誤差は数十mVになる。セル放電電流の仕様が大きくなるにつれこの影響は大きくなる。一般的なジャンパー抵抗は50〜100mΩの抵抗値をもっており、セル切り替え用ジャンパー抵抗はセル電圧検出・放電ラインCLに実装された場合は、セル電圧検出・放電ラインCLのインピーダンスが上がってしまい、電池システム監視装置の電気的特性の重要な要素であるセル電圧の検出精度が悪化する。
【0032】
比較例では、以上説明したようにセル電圧の検出精度が悪化するが、以下に述べる各実施形態ではセル電圧の検出精度を高めることができる。
【0033】
−第1の実施形態−
図3(a)、(b)は、本発明の第1の実施形態における電池システム監視装置の回路構成である。共通電池制御基板として、12セル用のセル電圧監視ICを2個用いた例で説明する。
図3(a)は、共通電池制御基板を用いて24セル用とした回路構成図である。
図3(b)は、共通電池制御基板を用いて20セル用とした回路構成図である。
【0034】
図3(a)、(b)に示す回路構成において、各電池セルの正極、負極に接続されるセル電圧検出・放電ラインCL1〜CLnは、セル電圧検出ラインSL1〜SLnとセル電圧放電ラインBL1〜BLnとに分岐される。セル電圧検出ラインSL1〜SLnはフィルタ回路3を介してセル電圧監視IC5U,Lのセル電圧検出部6に接続される。セル電圧放電ラインBL1〜BLnは放電抵抗4を介してセル放電スイッチ7(セル放電回路)に接続される。
【0035】
ジャンパー抵抗10i、10k、10m、10oは、セル電圧検出ラインSLとセル電圧放電ラインBLとの分岐部以降のセル電圧検出ラインSLに実装され、ジャンパー抵抗10j、10l、10n、10pは、セル電圧検出ラインSLとセル電圧放電ラインBLとの分岐部以降のセル電圧放電ラインBLに実装される。ジャンパー抵抗10i、10k、10m、10o、およびジャンパー抵抗10j、10l、10n、10pは、第1のジャンバー抵抗である。
【0036】
ジャンパー抵抗10q、10rは、20セル用の回路構成の上側セル電圧監視IC5Uの電源供給用のジャンパー抵抗であり、上側セル電圧監視IC5Uの電源端子VCCは電源ラインPLにより最上位セルのセル電圧検出ラインSLに接続される。ジャンパー抵抗10q、10rは、隣接するセル電圧検出ラインSLの間の接続ラインに実装される。
図3(a)、(b)では、ジャンパー抵抗10q、10rをセル電圧検出ラインSLの間の接続ラインに実装しているが上側セル電圧監視IC5Uの電源をセル電圧放電ラインBLにより供給する場合にはセル電圧放電ラインBLの間の接続ラインに実装してもよい。
【0037】
また、
図3(a)、(b)に示す回路構成では、下側セル電圧監視IC5Lの最上位セルの正極側のセル電圧検出・放電ラインCLは上側セル電圧監視IC5Uの最下位セルの負極側と共通のセル電圧検出・放電ラインCLとしている。ジャンパー抵抗10s、10tは、この下側セル電圧監視IC5Lの最上位セルのセル電圧検出ラインSLとセル電圧放電ラインBLとの分岐部以降のセル電圧検出ラインSLの間の接続ラインに実装される。ジャンパー抵抗10u、10vはこの下側セル電圧監視IC5Lの最上位セルのセル電圧検出ラインSLとセル電圧放電ラインBLとの分岐部以降のセル電圧放電ラインBLの間の接続ラインに実装される。ジャンパー抵抗10q、10r、10s、10t、10u、10vが第2のジャンパー抵抗である。
【0038】
図3(a)に示す24セル用の回路構成では、第1のジャンパー抵抗10i、10j、10k、10l、10m、10n、10o、10pを実装し、第2のジャンパー抵抗10q、10r、10s、10t、10u、10vを非実装とする。
【0039】
図3(b)に示す20セル用の回路構成では、セル1、2、13、14が未使用であり、セル1、2、13、14のセル部は短絡されている組電池とする。更に、第2のジャンパー抵抗10q、10r、10s、10t、10u、10vを実装し、第1のジャンパー抵抗10i、10j、10k、10l、10m、10n、10o、10pを非実装とする。
【0040】
例えば
図3(b)に示す20セル用の回路構成の電池制御基板に、誤って24セルの組電池が接続されたとしても、第1のジャンパー抵抗10i、10j、10k、10l、10m、10n、10o、10pにより配線を切り離しているため電池セルの短絡は生じない。
【0041】
なお、ジャンパー抵抗の実装変更で、20セル用から24セル用の回路構成に対応することができる。例えば、22セル用の回路構成とするためには、ジャンパー抵抗10i、10j、10m、10nを非実装とし、10k、10l、10o、10pを実装し、ジャンパー抵抗10q、10s、10uを実装し、ジャンパー抵抗10r、10t、10vを非実装とする。
【0042】
第1のジャンパー抵抗は、2本のセル電圧検出ラインおよびセル電圧放電ラインに実装もしく非実装される例で説明した。しかし、第1のジャンパー抵抗は、複数のセル電圧検出ラインの少なくとも一つのラインおよび前記複数のセル電圧放電ラインの少なくとも一つのラインに各電池セルの使用未使用に応じて実装もしく非実装されるものであってもよい。
【0043】
電池パック50は、第1の実施形態で説明した電池システム監視装置2と、電池セルを複数個直列に接続して組電池1を構成する電池群とを同一のパッケージに実装する。
【0044】
以上、
図3を用いて最大24セルの組電池に対応する共通電池制御基板の回路構成について説明したが、セル電圧監視IC5のチャネル数、セル電圧監視IC5の数を同様に増やすことにより24セル以上の組電池にも対応できる。この場合、ジャンパー抵抗は、セル電圧監視IC5が管理している組電池の高電位側であって、セル電圧検出ラインSLおよびセル電圧放電ラインBLに実装される。
【0045】
次に電池システム監視装置において電気的特性の重要な要素であるセル電圧の検出精度について説明する。
【0046】
図2の比較例で示した共通電池制御基板のように、セル切り替え用ジャンパー抵抗がセル電圧検出ラインSLとセル電圧放電ラインBL分岐部前のセル電圧検出・放電ラインCL上に実装される場合は、セル非放電時はセル電圧監視IC5に流れるリーク電流は数μAのため電圧降下の影響は小さい。しかし、セル放電時は放電電流が数十mA流れるためセル電圧検出・放電ラインCLのインピーダンスによる電圧降下は大きくなってしまう。一般的なジャンパー抵抗は50〜100mΩの抵抗値をもっており、ジャンパー抵抗によるセル電圧の検出誤差は数mVになる。セル放電電流の仕様が大きくなるにつれてこの影響は大きくなってしまう問題がある。
【0047】
具体的にセル放電時のセル電圧の検出精度の悪化について述べる。例えば放電抵抗4の抵抗値を30Ω、セル電圧を3.6V、セル電圧検出・放電ラインCLの抵抗値を100mΩ、セル電圧検出・放電ラインCLに実装されたジャンパー抵抗を50mΩ、セル放電スイッチ7のオン抵抗を2Ωとした場合、セル放電電流Iは、式(1)により、57.78mAとなり、セル電圧検出値Vは、式(2)により、17.34mVとなる。
I=3.6/((30+0.1+0.05)×2+2)=0.05778 ・・(1)
V=0.05778×(0.1+0.05)×2=0.01734 ・・(2)
【0048】
一方、セル電圧検出・放電ラインCLにジャンパー抵抗がない場合、セル放電電流Iは、式(3)により、57.78mAとなり、セル電圧検出値Vは、式(4)により、11.58mVとなる。
I=3.6/((30+0.1)×2+2)=0.05788 ・・(3)
V=0.05788×(0.1)×2=0.01158 ・・(4)
すなわち、セル電圧検出・放電ラインCL上のジャンパー抵抗によりセル放電時のセル電圧の検出精度に5.76mVの誤差が生じて、検出精度が悪化する。
【0049】
本実施形態では、第1のジャンパー抵抗10i、10j、10k、10l、10m、10n、10o、10pが、セル電圧検出ラインSLとセル電圧放電ラインBLとの分岐部の後に設けられている。このためセル放電時にセル電圧放電ラインBLのジャンパー抵抗10j、10l、10n、10pには放電電流が流れるが、セル電圧検出ラインSLのジャンパー抵抗10i、10k、10m、10oには放電電流は流れないため電池短絡対策のため実装したセル切り替え用ジャンパー抵抗でのセル電圧の検出精度の悪化は原理的に生じない。本実施形態では比較例で示したセル電圧検出・放電ラインCL上のジャンパー抵抗による影響をなくしてセル電圧の検出精度を高めることができる。
【0050】
−第2の実施形態−
図4(a)、(b)は、第2の実施形態における電池システム監視装置の回路構成である。 第1の実施形態では、
図3(b)の20セル用の回路構成図に示すように、セル電圧監視IC5U,Lの高電位側の電池セルを未使用とし、ジャンパー抵抗もセル電圧監視IC5U,Lの高電位側に集約していた。本実施形態では、
図4に示すように、セル電圧監視IC5U,Lの低電位側の電池セルを未使用とし、ジャンパー抵抗をセル電圧監視IC5U,Lの低電位側に集約する回路構成である。
【0051】
図4(a)、(b)は、共通電池制御基板として、12セル用のセル電圧監視ICを2個用いた例で説明する。
図4(a)は、共通電池制御基板を用いて24セル用とした回路構成図である。
図4(b)は、共通電池制御基板を用いて20セル用とした回路構成図である。これらの図において、第1の実施形態で示した
図3(a)、(b)と同じ個所には、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0052】
図4(b)に示す20セル用の回路構成では、セル11、12、23、24を未使用とし、セル11、12、23、24のセル部は短絡されている組電池とする。
【0053】
ジャンパー抵抗20i、20k、20m、20oは、セル電圧検出ラインSLとセル電圧放電ラインBLとの分岐部以降のセル電圧検出ラインSLに実装され、ジャンパー抵抗20j、20l、20n、20pは、セル電圧検出ラインSLとセル電圧放電ラインBLとの分岐部以降のセル電圧放電ラインBLに実装される。ジャンパー抵抗20i、20k、20m、20o、およびジャンパー抵抗20j、20l、20n、20pは第1のジャンパー抵抗である。
【0054】
ジャンパー抵抗20t、20uは20セル用の回路構成の下側セル電圧監視IC5LのGND供給用のジャンパー抵抗である。下側セル電圧監視IC5LのGND端子はGNDラインGLから最下位セルのセル電圧検出ラインSLに接続される。ジャンパー抵抗20t、20uは隣接するセル電圧検出ラインSLの間の接続ラインに実装される。
図4ではセル電圧検出ラインSLの間に実装しているが下側セル電圧監視IC5LのGNDをセル電圧放電ラインBLから供給する場合にはセル電圧放電ラインBLの間に接続してもよい。
【0055】
また、
図4(a)、(b)に示す回路構成では、下側セル電圧監視IC5Lの最上位セルの正極側のセル電圧検出・放電ラインCLは上側セル電圧監視IC5Uの最下位セルの負極側と共通のセル電圧検出・放電ラインCLとしている。ジャンパー抵抗20q、20r、20sは、下側セル電圧監視IC5Lの最上位セルのセル電圧検出ラインSLとセル電圧放電ラインBLとの分岐部以降の隣接するセル電圧検出ラインSLの間の接続ラインに実装される。ジャンパー抵抗20v、20w、20xは、下側セル電圧監視IC5Lの最上位セルのセル電圧検出ラインSLとセル電圧放電ラインBLとの分岐部以降の隣接するセル電圧放電ラインBLの間の接続ラインに実装される。ジャンパー抵抗20q、20r、20s、20t、20u、20v、20w、20xは第2のジャンパー抵抗である。
【0056】
図4(a)に示す24セル用の回路構成では、第1のジャンパー抵抗20i、20j、20k、20l、20m、20n、20o、20pを実装し、第2のジャンパー抵抗20q、20r、20s、20t、20u、20v、20w、20xを非実装とする。
【0057】
図4(b)に示す20セル用の回路構成では、第2のジャンパー抵抗20q、20r、20s、20t、20u、20v、20w、20xを実装し、第1のジャンパー抵抗20i、20j、20k、20l、20m、20n、20o、20pを非実装とする。
【0058】
電池パック50は、第2の実施形態で説明した電池システム監視装置2と、電池セルを複数個直列に接続して組電池1を構成する電池群とを同一のパッケージに実装する。
【0059】
以上、
図4を参照して最大24セルの組電池に対応する共通電池制御基板の回路構成について説明したが、セル電圧監視IC5のチャネル数、セル電圧監視IC5の数を増減することにより任意の数のセルよりなる組電池に対応できる。この場合、ジャンパー抵抗は、セル電圧監視IC5が管理している組電池の低電位側であって、セル電圧検出ラインSLおよびセル電圧放電ラインBLに実装される。
【0060】
本実施形態によれば、セル電圧検出・放電ラインCLからセル電圧検出ラインSLとセル電圧放電ラインBLに分岐され、分岐されたセル電圧検出ラインSLとセル電圧放電ラインBLにセル切り替え用ジャンパー抵抗を実装しているので、セル放電時のセル電圧の検出精度を高めることができる。
【0061】
−第3の実施形態−
図5(a)、(b)は、第3の実施形態における電池システム監視装置の回路構成である。 第1の実施形態では、
図3(b)の20セル用の回路構成図に示すように、セル電圧監視IC5U,Lの高電位側の電池セルを未使用とし、ジャンパー抵抗もセル電圧監視IC5U,Lの上側に集約していた。本実施形態では、
図5に示すようにセル電圧監視IC5U,Lの中間電位側の電池セルを未使用とし、ジャンパー抵抗をセル電圧監視IC5U,Lの中間電位側に集約する構成である。
【0062】
図5(a)、(b)は、共通電池制御基板として、12セル用のセル電圧監視ICを2個用いた例で説明する。
図5(a)は、共通電池制御基板を用いて24セル用とした回路構成図である。
図5(b)は、共通電池制御基板を用いて20セル用とした回路構成図である。これらの図において、第1の実施形態で示した
図3(a)、(b)と同じ個所には、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0063】
図5(b)に示す20セル用の回路構成では、セル3、4、15、16を未使用とし、セル3、4、15、16のセル部は短絡されている組電池とする。
【0064】
ジャンパー抵抗30i、30k、30m、30oはセル電圧検出ラインSLと、セル電圧放電ラインBLとの分岐部以降のセル電圧検出ラインSLに実装され、ジャンパー抵抗30j、30l、30n、30pは、セル電圧検出ラインSLとセル電圧放電ラインBLとの分岐部以降のセル電圧放電ラインBLに実装される。ジャンパー抵抗30i、30k、30m、30o、およびジャンパー抵抗30j、30l、30n、30pは第1のジャンパー抵抗である。
【0065】
また、
図5(a)、(b)に示す回路構成では、ジャンパー抵抗30q、30r、30s、30tは、セル電圧監視IC5U,Lの中間電位側セルのセル電圧検出ラインSLと、セル電圧放電ラインBLとの分岐部以降のセル電圧検出ラインSLの間の接続ラインに実装される。ジャンパー抵抗30u、30v、30w、30xは、セル電圧監視IC5U,Lの中間電位側セルのセル電圧検出ラインSLと、セル電圧放電ラインBLとの分岐部以降のセル電圧放電ラインBLの間の接続ラインに実装される。ジャンパー抵抗30q、30r、30s、30t、およびジャンパー抵抗30u、30v、30w、30xは第2のジャンパー抵抗である。
【0066】
図5(a)に示す24セル用の回路構成では、第1のジャンパー抵抗30i、30j、30k、30l、30m、30n、30o、30pを実装し、第2のジャンパー抵抗30q、30r、30s、30t、30u、30v、30w、30xを非実装とする。
【0067】
図5(b)に示す20セル用の回路構成では、第2のジャンパー抵抗30q、30r、30s、30t、30u、30v、30w、30xを実装し、第1のジャンパー抵抗30i、30j、30k、30l、30m、30n、30o、30pを非実装とする。
【0068】
電池パック50は、第3の実施形態で説明した電池システム監視装置2と、電池セルを複数個直列に接続して組電池1を構成する電池群とを同一のパッケージに実装する。
【0069】
以上、
図5を参照して最大24セルの組電池に対応する共通電池制御基板の回路構成について説明したが、セル電圧監視IC5のチャネル数、セル電圧監視IC5の数を増減することにより任意の数のセルよりなる組電池に対応できる。この場合、ジャンパー抵抗は、セル電圧監視IC5が管理している組電池の中電位側であって、セル電圧検出ラインSLおよびセル電圧放電ラインBLに実装される。
【0070】
本実施形態によれば、セル電圧検出・放電ラインCLからセル電圧検出ラインSLとセル電圧放電ラインBLとに分岐され、分岐されたセル電圧検出ラインSLとセル電圧放電ラインBLにセル切り替え用ジャンパー抵抗を実装しているので、セル放電時のセル電圧の検出精度を高めることができる。
【0071】
以上説明した実施形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)電池システム監視装置2は、複数個直列に接続されて組電池を構成する充放電可能な電池セルに対応して、各電池セルのセル電圧を検出すると共に、各電池セルのセル電圧を放電するセル電圧監視IC5と、各電池セルの正極、負極に接続される接続ラインCL1〜nと、接続ラインCL1〜nから分岐し、各電池セルのセル電圧を検出するためにセル電圧監視IC5に接続されるセル電圧検出ラインSL1〜nと、接続ラインCL1〜nから分岐し、各電池セルのセル電圧を放電するためにセル電圧監視IC5に接続されるセル電圧放電ラインBL1〜nと、複数のセル電圧検出ラインSL1〜nの少なくとも一つのラインおよび複数のセル電圧放電ラインBL1〜nの少なくとも一つのラインに各電池セルの使用未使用に応じて実装もしく非実装される第1のジャンパー抵抗10i〜pと、を備える。これにより、セル放電時において、セル電圧の検出精度を高めることができる。
【0072】
(2)電池システム監視装置2において、電池セルが未使用の場合に、隣接するセル電圧検出ラインSL1〜nまたは隣接するセル電圧放電ラインBL1〜nを相互に接続するラインに実装される第2のジャンパー抵抗10q〜vをさらに備える。これにより、電池制御基板を共通化して、セル放電時において、セル電圧の検出精度を高めることができる。
【0073】
(3)電池システム監視装置2において、第1および第2のジャンパー抵抗10i〜p、10q〜vは、セル1〜セル12を備える組電池、およびセル13〜セル24を備える組電池の高電位側であって、セル電圧検出ラインSL1〜nおよびセル電圧放電ラインBL1〜nに実装される。これにより、組電池の高電位側の電池制御基板を共通化して、セル放電時において、セル電圧の検出精度を高めることができる。
【0074】
(4)電池システム監視装置2において、第1および第2のジャンパー抵抗10i〜p、10q〜vは、セル1〜セル12を備える組電池、およびセル13〜セル24を備える組電池の低電位側であって、セル電圧検出ラインSL1〜nおよびセル電圧放電ラインBL1〜nに実装される。これにより、組電池の低電位側の電池制御基板を共通化して、セル放電時において、セル電圧の検出精度を高めることができる。
【0075】
(5)電池システム監視装置2において、第1および第2のジャンパー抵抗10i〜p、10q〜vは、セル1〜セル12を備える組電池、およびセル13〜セル24を備える組電池の中電位側であって、セル電圧検出ラインSL1〜nおよびセル電圧放電ラインBL1〜nに実装される。これにより、組電池の中電位側の電池制御基板を共通化して、セル放電時において、セル電圧の検出精度を高めることができる。
【0076】
(6)電池パックは、(1)から(5)のいずれかの電池システム監視装置2と、電池セルを複数個直列に接続されて組電池1を構成する電池群と、を備えた。これにより、セル放電時において、セル電圧の検出精度を高めた電池パックを提供することができる。
【0077】
(変形例)
本発明は、以上説明した第1〜第3の実施形態を次のように変形して実施することができる。
(1)セル電圧監視ICは、2個の場合を例に説明したが、この個数は組電池のセル数に応じて、1個でも、また3個以上であってもよい。
【0078】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限り、本発明の技術思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。また、上述の実施形態と変形例を組み合わせた構成としてもよい。