【実施例】
【0051】
(実施例1)
ナノタグ組成物のスペクトル性質
個別に定量化可能である、高弾性散乱能力コアまたは高非弾性散乱(蛍光またはラマン散乱)を伴う成分を含み、それによって、単一の着目エピトープへの結合に基づいて、EVまたは他のナノ材料の検出および選別を可能にする、光学性質を伴う単一分子ナノタグ。部分集合の表現型を決定することは、一度に1つを上回るエピトープの標識化を要求する、強力なツールである。同時に1つを上回るエピトープを標識化するために、それらを相互に区別するための独特の光学性質を伴う第2の、またはさらなるナノタグの使用が、有益であろう。
図23に示されるように、異なる金属が、屈折率および吸光係数に対して紫外線・可視スペクトル内で独特の分散性質を有する。
図24に示されるもの等のこれらの光学性質は、RefractiveIndex.info等のオンラインデータベース内で見出されることができる。
【0052】
分子ナノタグは、種々の組成物を伴うナノ粒子の特徴的な光学性質を使用し、蛍光検出信号ではなく、弾性側方散乱検出信号を用いた単一分子標的の表現型決定を可能にすることができる。異なるナノ粒子直径および組成物の散乱性質が、ミー理論に基づくレーザ散乱物理学モデル化を使用して調査され、予測散乱性質に基づくフローサイトメータを用いた検出のために好適であり得るナノタグ組成物が、選択された。ミー理論を使用して、球体の散乱断面を概算し、したがって、異なる波長においてそれらの散乱プロファイル内に独特のピークまたはトラフを有することに起因して、複数の粒子が同時に区別され得る方法を推定することが可能である。本方法は、異なる直径および組成物の粒子を検出する、Astrios EQ、例えば、405nmのSSC、488nmのSSC、561nmのSSC、640nmのSSC等によって、異なるレーザ波長において、複数の側方散乱(SSC)検出器を伴うフローサイトメータの能力を予測するために有用である。
【0053】
本モデル化技法は、金、銀、ポリスチレン、白金、二酸化チタン、酸化鉄、および銅を含む、異なる材料に適用された(
図15A−15D)。
図15A−15Dに示されるように、より小さい粒子、すなわち、金および銀等の約20〜60nmの球体が、独特のスペクトルピークおよびトラフをもたらした。加えて、金、銅、および銀等の金属は、(例えば、ポリスチレンと比較して)粒子検出を向上させると予測されることが分かり得る。例えば、20nmのAg球体は、380nmの照明波長において約1×10
−16m
2sr
−1の散乱断面を有し、40nmのAu球体は、532nmの照明波長において約1×10
−16m
2sr
−1の散乱断面を有する。
【0054】
異なる組成物を伴う粒子のこれらの固有の散乱性質は、蛍光が使用されるにつれて、しかしながら、代わりに散乱を利用することによって、標識化へのスペクトルアプローチを可能にするであろう。例えば、
図15Bおよび
図16Aでは、405nmの照明波長において、60nmの銀粒子の集光された光散乱は、60nmの金粒子よりも約100倍高い。しかしながら、561nmの照明波長において、60nmの金粒子の集光された光散乱は、60nmの銀粒子よりも5〜10倍高い。本モデル化されたデータは、Astrios EQ計器上で405nm、488nm、561nm、および640nmの照明波長において60nmの銀および金球体を入手し、スペクトル散乱が利用され得る方法への初期洞察を与えることによって正当性を立証された(
図16B)。モデルが予測したように、60nmの銀粒子の集光された散乱(赤色または薄い灰色)は、60nmの金と比較して(青色または濃い灰色)、561nm散乱チャネル上でより少なく、60nmの銀粒子の集光された散乱は、405nm散乱チャネル上で60nmの金よりも多かった。
【0055】
したがって、その計器上で入手可能である特定のSSCに基づいて、本明細書に説明される分子ナノタグを作製する適切な材料を選択することができる。例えば、計器が405nmSSC検出器を有する場合、銀ナノ粒子が使用されることができ、計器が561nmまたは532nmSSC検出器を有する場合、金ナノ粒子が、使用されることができる等である。特定の実施例が、下記の表1に示される。
【表1】
【0056】
図17A−17Bは、金と銀ナノ粒子との間のスペクトルデコンボリューション分析の実装を決定するように、20nmおよび40nmの金および銀粒子からの集光された散乱の関係を示す。金および銀ナノ粒子の集光された散乱が、銀対金散乱の比とともにプロットされた。Ag/Au線は、Ag対Au集光散乱能力の比を表す。黒い鎖線は、Au集光散乱能力を表す。一点鎖線は、Ag集光散乱能力を表す。水平線は、1の金および銀散乱能力比を表す。点線は、100nm金の集光散乱能力を表す。銀対金の散乱の比は、銀粒子からの散乱光が金のものを上回り(Ag/Au=1水平線の上方、350nm〜510nm)、金粒子の集光された散乱が銀粒子のものを上回る(Ag/Au=1水平線の下方、510nm〜800nm)であろう波長を決定するために、使用されることができる。単色レーザ照明波長が、スペクトル散乱検出に使用され得るスペクトル照明の一実装を示すように、垂直線としてグラフとオーバーレイされる。
【0057】
集光光学系の集光角および幾何学形状は、(
図26A−26Bに示されるように)粒子散乱とそれらの直径および組成物との間の関係に影響を及ぼし得る。上記のモデルの第2の変形例(
図18A)が、40nmのAu、40nmのAg、および100nmのポリスチレン(PS)に関して、2度増分で20〜60度の典型的フローサイトメータ集光半角によって、モデル化された粒子を満たすように作成された。特定のスペクトル特性が、
図17Aで見られ得る。
図18Aは、集光半角が光学検出器によって集光される散乱能力に影響を及ぼすことを示す。しかしながら、
図18Bは、集光半角の全てを横断する銀対金の比がオーバーレイされるときに、比が同一のままであることを示す。球体がレイリー範囲内であり、等方的に光を散乱しているため、単一デコンボリューション方法が、異なる集光半角を伴う計器を横断して球体を検出するように適用されることができる。
図21A−21Bは、0〜500nmに及ぶ直径を伴う30度の集光半角においてモデル化される、金と銀との間の散乱関係への側方散乱集光光学系の集光角の影響を示す。
【0058】
Astrios EQ上で405、488、561、および640nm照明波長を使用する、金および銀スペクトルデコンボリューションの方法が、上記のモデルおよび所見に基づいて作成された。
図22Aおよび22Cは、照明波長によって層別化される、異なる直径の金および銀ナノ粒子のモデル化された集光散乱能力を示す。
図22Bおよび22Dは、本明細書のスペクトルモデル化技法の正当性を立証するように、モデル化されたデータと比較して、金および銀ナノ粒子散乱の実際の性能を示す。本データは、再度、予測されたモデル化データおよび入手されたデータが極めて同等であることを示す。いくつかの実施例では、
図22Bおよび22Dに示されるデータは、フローサイトメータ計器較正のための異なる分子ナノタグコア材料から成る代表的基準ビーズセットとして、かつデコンボリューションアルゴリズムのための基準値を取得するために、使用されることができる。デコンボリューションアルゴリズムは、入手された基準ビーズデータを使用し、計器を較正し、波長毎に粒子散乱モデル化(
図20A−20B)を可能にすることができる。較正後に入手された信号は、入手された信号のスペクトル散乱特性および計器の散乱モデル化に基づいて、デコンボリューションされることができる。例えば、入手された信号hは、フローサイトメトリ標的内の他の粒子からの散乱、計器特有の応答特性、および雑音を含む、散乱スペクトルプロファイルfを覆うように動作する、種々の関数成分を有し得る、関数gを用いてコンボリューションされる(※)、散乱粒子スペクトルプロファイルfに対応することができる。いくつかの実施例では、計器特有の応答特性は、検出感度がミー共鳴に合致される、または具体的に合致されないように、構成要素選択(例えば、広帯域またはスーパーコンティニウム照明源、フローサイトメトリ標的が流動しているキュベット幾何学形状、NA等の集光レンズ特性、スリット開口幾何学形状、検出器および/またはフィルタ選択を伴う検出器感度調節)によって調節されることができる。実施形態では、複数の検出ユニットが、検出中にミー共鳴を活用するように、異なる所定の集光角を伴う集光レンズをそれぞれ用いて、側方散乱を検出するように配置される。さらなる実施形態では、単一の検出ユニットは、検出中にミー共鳴を活用するように構成されることができる。代表的実施例では、フローサイトメトリ集光光学系は、実際の集光角に対応するように検証され得る、集光光学系の集光角の予測を提供するようにモデル化されることができる。代表的計器は、既知のサイズおよび屈折率のビーズを用いて較正されることができる。検出された粒子の直径または屈折率は、検出された散乱性質および集光角に基づいて推測されることができる。散乱性質および集光角はまた、異なるスペクトル散乱特性を有する複数の異なる粒子についての情報を含有する、検出された信号のデコンボリューションを支援するために使用されることもできる。異なる実施例では、異なるサイズのナノタグが、検出されることができる、または同一のサイズであるが異なるスペクトル特性のナノタグ、または付着したナノタグを含む、具体的EVが、検出されることができる。
【0059】
単一金および銀ナノ粒子を検出し、検出技法としてのその適用可能性を示す他の市販のフローサイトメータの能力もまた、BD FACS Symphonyフローサイトメータ上で種々の金および銀ナノ粒子を入手することによって示された(
図25)。
【0060】
(実施例2)
ナノタグを検出するための例示的レーザ整合
複数の側方散乱波長における側方散乱検出に基づいて、エピトープ検出のためにナノタグを使用することは、異なる粒子組成物の弾性散乱に依拠することができる。したがって、代表的実施形態は、同時に使用および検出され得るナノタグ組成物の数を増加させるように、紫外線・可視スペクトルを横断する波長または波長範囲を有する、多波長照明入力を使用する。異なる実施例では、ナノタグを検出することが可能な光学デバイスは、ナノタグの広範なスペクトル照明を提供するように、一例として
図1または
図2Aに示されるもの等のスーパーコンティニウム白色レーザ源を使用することができる。付加的実施例では、単色レーザが、使用されることができる。いくつかのフローサイトメトリシステムの実施例では、別個のビームが、共線的に整合された波長として、または他の構成で、空間的に分離された波長に配列されることができる。フローサイトメータ照明ビーム入力の実施例は、波長特有の焦点距離の差を考慮し、例えば、
図2A−4Aに示されるように、レーザビームの最高強度部分がフローサイトメトリ標的のコア流上に集束されることを確実にすることができる。いくつかの実施例では、フィルタもまた、異なる波長のためのレーザビームを空間的に分離するために使用されてもよい。いくつかの実施例では、白色光スーパーコンティニウム光源を用いると、ビーム成形光学系が、フィルタの前、間、または後に含まれることができる。単色レーザ源の場合、ビーム成形光学系自体、またはビーム指向ミラーが、レーザビームを空間的に分離するように移動されることができる。
【0061】
(実施例3)
ナノタグを検出するための白色光の使用
開示される分子ナノタグは、(例えば、単色レーザの代わりに)白色または広帯域光照明を使用して、検出されることができる。単一分子ナノタグスペクトル散乱分析は、波長に基づいて、プリズムアセンブリを通して白色光照明を有する検出ビームを別個の照明に指向することによって、かつマイクロレンズアレイを用いて別個のビームを集束させ、PMT/APD検出器アレイ(32チャネルPMT/APD検出器アレイ等)を用いて集束ビームを検出することによって、達成されることができる。本実施例では、フルスペクトル散乱フローサイトメトリが、全ての紫外線・可視波長において照明を提供する、スーパーコンティニウム白色レーザを使用することができる。白色光は、コア流懸濁粒子上に集束されることができる。粒子光散乱は、高開口数色補正レンズを使用して、照明光と垂直に集光されることができる。本光は、紫外線・可視スペクトル散乱検出を提供するマルチチャネル光検出器上に連続的に集束される、光の波長を分離するように、一連のプリズム上に集束される。帯域通過フィルタが、プリズムとマルチチャネル光検出器との間に配置されることができる。いくつかの実施例では、選択されたチャネルが、より大きい波長範囲を横断して散乱を検出し、検出感度を増加させることができる。ビーム成形光学系またはビーム成形システムが、多波長照明の焦点の変動を殆ど提供しないように、使用されることができる。例えば、白色光源からの多波長照明は、照明の帯域に分割され、複数のビーム成形光学系と共線的に整合されることができる。
【0062】
(実施例4)
ナノ粒子散乱およびフローサイトメータモデル化
光の量をモデル化するために、フローサイトメータは、所定の直径および屈折率の所与の粒子から受け取り、
図20B等の散乱直径曲線を作成するように、HAD(半角決定)モデル化スクリプトが、集光半角を決定するために使用される(
図20A)。本モデル化方法は、本来、散乱直径関係曲線(
図26B)を作成し、既知の直径および屈折率の粒子を使用するフローサイトメトリ計器の集光半角(
図20A)を決定するように設計された、Welsh, Joshua (2016) Flow cytometer optimisation and standardisation for the study of extracellular vesicles as translational biomarkers University of Southampton Doctoral Thesis, 209pp(その全体として参照することによって本明細書に組み込まれる)による研究を基礎とした。光検出器に到達する光の限定的集光角を決定する本方法は、「予測曲線のみ」1000方法または「波走査」2000および「波走査」3000方法等のフローサイトメータのさらなるモデル化を可能にする。
【0063】
図19Aに示されるような「予測曲線のみ」1000方法は、入手されたフローサイトメトリデータを予測粒子散乱データに適合/正規化する必要なく、異なる波長および集光角において種々の直径の粒子の散乱関係を予測するために使用される。AuRI 116およびAgRI 117スクリプトが、金および銀の両方の光学性質をモデルの中に入力するために、「HAD方法」からの以前に開発されたスクリプトのセット(114、115、200、201、202、203、220、221、222、223、2200、2210、2220)に追加された。
【0064】
本方法は、異なる照明波長における異なる組成物を伴うナノタグの散乱能力の集光差を予測するために使用されることができる(
図21A−D)。組成物あたりの集光粒子散乱を理解するための本アプローチは、最適な分離を伴って直径/組成物の識別を可能にし、入手されたデータの区別を可能にする。例えば、散乱集光光学系を伴う405nm照明レーザフローサイトメータ構成を有し、2つの40nmの球体が標識として使用された場合、それらの組成物は、40nmのポリスチレン球体および銀球体が最高分離を示す、
図21Aを使用して決定され得る。
【0065】
「予測曲線のみ」1000方法の外挿は、既知の直径および組成物を伴う粒子のセットのための最適な照明波長を見出し、それによって、粒子ナノタグ組成物のための照明または集光光学系の設計を可能にするように設計される、「波走査」1000および2000方法(
図24H−24I)である。これらの方法はまた、紫外線・可視スペクトル内の複数の波長を横断して(
図19B)、または複数の集光半角を横断する設定された分子ナノタグサイズを横断して(
図19C)、当該フローサイトメータに関して、所定の半角(既知であるか、または「HAD」方法を使用して決定されるかのいずれかである)において異なる分子ナノタグ組成物のスペクトル散乱特性を分析することによって、スペクトルデコンボリューションを補助するために使用されることもできる。
【0066】
スクリプト2000、3000は両方とも、共通サブスクリプトを使用するが、異なる出力を提供するように実装される。そのようなスクリプトに関する図および説明は、2017年10月23日に出願され、「Molecular Nanotags」と題された、関連PCT出願(参照することによって本明細書に組み込まれる)で見出されることができる。スクリプト2000は、紫外線・可視スペクトル内の波長を横断して、所定の直径の種々の粒子組成物の散乱能力をモデル化する。スクリプト2000は、特定の波長のための好適な散乱性質を伴う組成物を決定または選択するように、異なる粒子組成物のスペクトル散乱性質の推定値を提供することができる。また、モデル化方法2000の出力は、スペクトル散乱検出に適用される一般的スペクトルデコンボリューションアルゴリズムの基礎を提供することができる。「波走査」3000は、集光角別に、複数の波長を横断して粒子の散乱能力を層別化する。粒子散乱直径性質への集光角の影響が、したがって、調査され得る。「波走査」3000方法を使用して、金および銀のナノタグ組成物の間の集光散乱能力の比(
図18A−B)が、等方的に光を散乱させる粒子に起因して、集光角にかかわらず維持されることが示され得る。
【0067】
さらに、金および銀等の異なるナノタグ組成物のスペクトル散乱特性を理解することによって、単色レーザダイオード源の場合、最適な照明入力を推定することが可能である(
図17A−17B)。
図17Aには、40nmの金および銀球体、100nmのポリスチレン球体のスペクトル散乱特性、および各波長における銀対金の散乱の比が示される。フローサイトメータがスーパーコンティニウム白色レーザ等の広帯域照明源を使用しなかった場合、いくつかの単色レーザダイオード源の実装は、検出されているナノタグのスペクトル散乱特性への洞察を要求するであろう。
図17Aのように、金および銀の場合、照明波長405nm、445nm、488nm、532nm、561nm(全て市販のレーザ源である)の探査が、金および銀の照明波長依存性散乱におけるピークおよびトラフから十分なデータを提供し、スペクトルデコンボリューションを可能にするであろう。これは、405、488、561、640nmの波長における照明および散乱検出とともに市販のフローサイトメータ(Astrios EQ)をすでに利用している初期的様式で実装されている(
図19A−B)。
【0068】
本明細書に議論される波長モデルはまた、HADスクリプトを基礎とするが、しかしながら、いくつかの粒子組成物の入力を可能にするために、種々の材料の分散性質が、金、AuRI 116、銀、AgRI 117、ポリスチレン、poly RI Calculation 114、白金、PtRI 118、二酸化チタン、TiORI 2010、酸化鉄、Fe3O4 RI 119、銅、CuRI 120、および鉛、PbRI 121を含む、スクリプトへの入力を可能にするように、データベースに入力された。
【0069】
(実施例5)
検出された粒子散乱への光学開口の影響
スリット開口の使用は、分離指数(平均大型ビーズ散乱能力−平均小型ビーズ散乱能力)/(大型ビーズ散乱能力標準偏差+小型ビーズ散乱能力標準偏差)を使用することによって、
図27に示される信号対雑音比を増加させ得ることが実証されている。より大きい分離指数は、より大きい信号対雑音比に対応する。1つの波長において信号対雑音比を増加させている間のスリット開口の適用は、典型的には、他の波長の信号対雑音比を損なわせる。これは、従来のフローサイトメトリ光学系内のその実装が、同一の励起波長を使用して、異なる波長において発光する、異なるフルオロフォアを検出することによって、従来のサイトメータが行うように、同時にいくつかの異なる波長の検出に役立たないことを意味する。さらに、固定された光学系ではなく光ファイバを利用する、フローサイトメータ上の集光光学系は、固定面内で集光し、したがって、1つの散乱波長のためのスリット開口の使用は、典型的には、他のレーザの散乱波長を損なわせるであろう。本明細書の光学画像フィルタ処理ユニット(OIFU)の議論される実装は、レーザあたり異なる集光波長に同調されることができる。さらに、これは、フローセルの反対側に実装され、したがって、蛍光感度を維持しながら高感度散乱検出を可能にすることができる。
【0070】
OIFUの使用は、選択的散乱波長の高感度を提供するが、スペクトル散乱波長検出を利用する構成と比較した、その使用は、デコンボリューションプロセスが適用されるときに限定される。選択的散乱波長検出のみを使用することによって、典型的には、使用され得る分子ナノタグの数を削減し、最終的に、粒子表現型決定においてより少ない能力をもたらす、限定された程度の利用可能であるデコンボリューションが存在する。
【0071】
図20Bに示されるようなフローサイトメトリ散乱モデルの開発と組み合わせられる、光学開口の実装は、さらなる理解がフローサイトメータ集光光学系の設計において獲得されることを可能にする。
図26A−26Bに示されるように、その集光角および開口タイプは、粒子の散乱直径関係に影響を及ぼし得る。円形開口が10度の集光半角を伴う計器上で使用される場合、散乱直径関係曲線内のミー共鳴(トラフ)は、同一の集光半角を使用する正方形集光開口のものよりも深いことが分かり得る。したがって、開口特性(例えば、幾何学形状)を着目粒子の散乱分布に合わせ、検出またはデコンボリューションを補助するであろう一意の散乱直径関係を生成することが可能である。
【0072】
(実施例6)
スペクトルプロファイル比較およびデコンボリューション
Welsh et al.“Prospective Use of High−Refractive Index Materials for Single Molecule Detection in Flow Cytometry,” Sensors 2018, 18, 2461; doi: 10.3390/s18082461(参照することによって本明細書に組み込まれる)に説明されるように、本明細書に説明されるモデル化アプローチが、種々のフローサイトメトリ計器の感度を特性評価し、ナノタグ(または他の粒子)サイズ(典型的には直径)および屈折率に関する検出限定を決定するために、使用されることができる。いったん特性評価されると、いくつかの実施例では、側方散乱検出信号をデコンボリューションし、異なる組成物および/またはサイズの粒子に関して、データを特性スペクトルプロファイルと比較することによって、フローサイトメトリ標的内のナノタグおよび他の粒子の存在を決定するように、既存のフローサイトメトリ計器を改造することによるものを含む、本明細書に説明されるスペクトル分析アプローチが、使用されることができる。代表的実施例では、特徴的なスペクトルプロファイルが、選択されたスペクトル範囲を横断して波長の関数としての強度の変動によって定義されることができ、いくつかの実施例では、そのような比較およびデコンボリューションは、単一粒子検出を提供することができる。
【0073】
Welsh et al.で解説されるように、細胞外小胞(EV)は、大部分は直径が<150nmである、小型(30〜1,000nm)の膜小胞である。それらの小さい表面積に起因して、細胞と比較すると、EV表面マーカの大部分のエピトープ発現は、フローサイトメトリ等の従来の高スループット、マルチパラメータ検出技法の検出可能範囲を下回る。
【0074】
現在のフローサイトメータは、数千から数百個の蛍光分子を区別することが可能である。CD14等の極めて豊富なリンパ球表面マーカの表面発現は、リンパ球あたり100,000個のコピーの領域内にある。本エピトープ密度が100nmのEVまで縮小された場合、小胞あたり<30個のCD14コピーに相当するであろう。したがって、EV分野で満たされていない要求は、理想的には、現在利用可能な検出機器およびフローサイトメータを利用して、単一EV上で単一エピトープ検出を可能にする、標識の開発である。
【0075】
現在の蛍光ベースのフローサイトメトリは、蛍光共役抗体の形態である傾向がある、蛍光プローブを使用して、タンパク質の発現を定量化する。これらは、免疫学分野で細胞分析のための強力なツールであることが証明されているが、それらの現在の形態では、利用可能なフローサイトメータの大部分上のEV表面タンパク質発現を定量化するためには不十分である。QDots等のより新しい世代の蛍光標識が出現しているが、それらは、概して、低表面エピトープ定量化のためには不十分なままである。個々の標的の時限検出のための標識としてのQDotsの使用はまた、一般的に「ブリンキング」と称される、確率的光学変動によって複雑化される。
【0076】
分析の目的が、サンプル内の具体的マーカに関して陽性であるEVの数を計測することであるとき、計測の方法は、1つ以上の具体的表面マーカを伴う各EVを検出することが可能でなければならない。この場合、単一標識感度で単一標識を検出することが可能な標識および計器を使用することが重要である。他方では、目的が、個々のEV上に存在する受容体の数を定量化または比較することであるとき、一定の標識対標的比が存在しなければならず、1価の標的結合部位を伴う標識が、EV上の単一分子検出および表面受容体定量化のために必要とされる。希釈制御、MESFビーズ、および/または散乱モデル化等の他の標準化ステップもまた、EVを計測するときに考慮されるべきである。QDotsを利用する、殆どの市販の技法は、多価形態でこれらの標識を使用するが、他のナノ粒子の共役に直接移入可能であり得る、1価のQDotsを作成しようとした、新しい手段が出現している。
【0077】
本明細書に説明される、新規の部類のナノスケール分子タグ(ナノタグ)は、フローサイトメータを使用する、単一標識、したがって、単一分子検出を可能にすることができる。代表的実施例では、ナノタグは、高い屈折率および/または高い光吸収、および細胞外小胞等の小粒子の低エピトープ数計測およびスペクトル表現型決定の両方を可能にするであろう一意のスペクトル散乱性質を伴う材料から成ることができる。本明細書に説明されるように、ナノタグ組成物が、明白な光学検出のために選択され得、ナノタグ組成物が、粒子表現型決定を可能にするように同時に使用され、依然として、相互と区別され得ることが示される。分析は、ナノ粒子による波長依存性光散乱の数値モデル化およびフローサイトメトリデータとの比較に基づく。
【0078】
最初に、増加した光散乱を補助するであろう有用な光学性質を伴う粒子を識別するために、屈折率および吸光係数が、照合される。波長300〜800nmを横断する粒子屈折率および吸光係数が、以下の組成物、すなわち、金、銀、酸化鉄、二酸化チタン、銅、白金、鉛、およびジルコニウムに関して、文献から集計された。ポリスチレンおよび水の屈折率は、対応するセルマイヤー方程式を使用して、各波長において計算された。組成物選択は、ナノ粒子可用性および高い屈折率(例えば、二酸化チタン)または吸光係数(例えば、鉛)、または中程度の屈折率および吸光係数を有すること(例えば、金、銀、銅)に基づいて、さらに絞られた。
【0079】
フローサイトメトリ測定が、MoFlo Astrios EQ(Beckman Coulter Life Sciences(Indianapolis, IN, USA))およびFACS Symphony(BD Life Sciences(Franklin Lakes, NJ ,USA))フローサイトメータ上で実施された。Astrios EQは、側方散乱集光(SSC)検出が、405、488、561、および640nmにおいて可能である、5つのレーザ(355、405、488、561、および640nm波長)を用いたジェットインエアシステムである。Astrios EQ設定および検出閾値の詳細な説明が、文献で見出されることができる。FACS Symphonyは、SSC検出がデフォルトデバイス構成を用いて488nmのみにおいて可能である、5つのレーザ(355、405、488、532、および640nm)を用いた細胞分析器である。SSCを介した粒子計測のための機器パラメータは、200のトリガ閾値、350の電圧、および低流体率に設定された。散乱パワー対直径の測定に関して、NIST追跡可能ポリスチレンビーズ(100、125、147、203、296、400、600、799、994nm直径)(Thermo Fisher Scientific、E. van der Polからの贈与(Waltham, MA, USA))およびシリカビーズ(182、315、359、405、548、800、1,000nm)(Kisker Biotech、E. van der Polからの贈与(Amsterdam, The Netherlands))が、1mLあたり0.1〜1×10
8個の粒子の濃度において分析され、以前に公開されたフローサイトメータ方法を使用して、予測された散乱対入手された散乱の適合を確認した。
【0080】
高屈折率粒子入手モデル化比較に関して、直径20、40、60、80、および100nmのAg粒子(Cytodiagnostics(Burlington, ON, Canada))、直径20、40、60、および80nmのAu粒子(Cytodiagnostics)、および100nmのポリスチレンNIST追跡可能ビーズ(Thermo FisherScientific)および200nmの蛍光ポリスチレンビーズ(Thermo FisherScientific)が、各計器上の入手の前に、1mLあたり0.1〜1×10
7個の粒子の濃度に希釈された。
図28A−28Fに示されるように、40、60、80nmのAu粒子の線形希釈が、単一粒子検出を維持した、機能するサイトメータ入手濃度を確認するように実施された。すなわち、40nmのAuナノ粒子の連続希釈が、
図28A−28Bに示され、60nmが、
図28C−28Dに示され、80nmが、
図28E−28Fに示される。Auナノ粒子が、1e7粒子mL
−1における200nmの蛍光ポリスチレンビーズにおけるスパイクを伴って、1e7、1e6、および1e5粒子mL
−1まで希釈された。検出されたAu対200nmのポリスチレンの比が、Auの調製濃度に対してプロットされた。調製Au濃度と対比した希釈Au対スパイクビーズの比は、線形減少を取得することが分かり得る。これは、単一粒子検出を示す。さらに、単一粒子検出をさらに示す、種々の希釈における粒子散乱信号の感知できる差がない。粒子濃度が、製造業者割合の固体を使用して決定された。スパイクイン粒子濃度が、ナノ粒子追跡分析を使用して決定された。
【0081】
データが、Astrios EQ上の入手ソフトウェアSummit v6およびFACS Symphony用のDiva v8を使用して、入手された。データ入手の完了に応じて、ファイルが、入手ソフトウェアからエクスポートされ、入手後分析のためにFlowJo v10(TreeStar)の中にインポートされた。フローサイトメトリファイルは、https://flowrepository.org/id/FR−FCM−ZYL7およびhttps://flowrepository.org/id/FR−FCM−ZYL6において見出されることができる。
【0082】
上記で試験されるいくつかの異なるフローサイトメトリ計器は、非常に高い蛍光分子検出感度を有するとされる。しかしながら、同等可溶性フルオロフォアの分子(MESF)検出の概算である、MESF値に関する検出の下限を測定した後、試験される計器のうちの最も敏感なものでさえも、>25個の蛍光分子を伴う物体を検出することのみ可能であることが見出される。そのような感度および蛍光ベースのアプローチは、小胞あたり1つまたは2つの分子と同程度の少ない数で存在し得る、細胞外小胞の成分の構成要素の検出のためには不十分である。本データは、金属等の標識から側方散乱光スペクトルを検出することの重要性へのさらなる支持を提供する。したがって、本明細書の開示される技術の代表的実施例は、蛍光および非蛍光光散乱の両方を分析することが可能であり得る。
【0083】
ナノ粒子検出のためのスペクトルプロファイルを提供するために、フローサイトメータおよび粒子スペクトル散乱が、MATLAB(登録商標) v9.3.0(The Math Works Inc.(Natick, MA, USA))を用いて数値的にモデル化された。検出器に到達する、固定直径(20、40、60、80、100nm)の球形粒子によって散乱される光の累積パワーは、ミー理論を使用して計算され、ミー散乱および吸収に関する関数を説明する、Matzlerからのものを基礎とするスクリプトを用いて、数値的に実装された。使用される計算は、van der Pol et al.およびFattaccioli et al.のものに類似する。本ソフトウェアは、http://www.joshuawelsh.co.uk/scatter−diameter−software/(参照することによって本明細書に組み込まれる)において入手可能である。粒子光散乱モデル化は、側方散乱、すなわち、照明の方向と垂直に集光される光に焦点を当てた。Astrios EQフローサイトメータの側方散乱集光光学系は、29°であるように概算される限定的半角を伴う円形集光開口を有する。粒子懸濁媒体は、水の光学性質を使用してモデル化された。散乱パワー(または同等に散乱断面)対粒子直径の曲線を生成するために、実験データにモデル化されたデータを適合させることが、シミュレートされた散乱断面と実験的に測定されたパワーレベルとの間で変換するように、単一倍率を使用して、van der Pol et al.の方法を使用して実行された。フローサイトメトリデータは、モデル化からの予測対入手された値の線形回帰を使用して、恣意的単位からnm
2単位の散乱断面に変換された。
【0084】
金および銀粒子直径分布および濃度が、405nm LM12モジュールおよびEMCCDカメラ(DL−658−OEM−630,Andor(Belfast, UK))を具備した、NanoSight LM10計器(Malvern, UK)を伴うNTAを使用して測定された。ビデオ入手が、14のカメラレベルを使用して、NTAソフトウェアv3.2を用いて実施された。3つの30秒のビデオが、サンプルあたりで捕捉された。入手後ビデオ分析は、以下の設定、すなわち、最小追跡長=5、検出閾値=4、自動ぼやけサイズ=2パス、最大ジャンプサイズ=12.0を使用した。
【0085】
本明細書に説明されるフローサイトメータ粒子散乱モデル化の方法を使用して、(
図20Bに示されるような)散乱直径関係は、検出可能であり得る粒子直径および組成物を予測するように、文献からの基準屈折率および吸光係数と組み合わせられることができる。Astrios EQサイトメータの側方散乱集光光学系は、
図29に示される(また、
図15A−15Dでも見られ得る)紫外線・可視スペクトルを横断してAuおよびAgナノ粒子の相対的な検出された散乱能力を決定するように、モデル化された。他の組成物(白金、二酸化チタン、酸化鉄、銅、鉛、ジルコニウム)もまた、
図15A−15Dで波長に関して(強度または能力と同様に)断面のスペクトルプロファイルを伴って示されるように、モデル化された。プロファイルのそれぞれにおける組成物とサイズとの間のスペクトル変動の差は、フローサイトメトリ標的内のナノタグおよび他の粒子を識別するために、デコンボリューション中に使用されることができる。一般に、複数の波長において検出することによって、スペクトル検出能力を増加させることは、多波長検出信号のデコンボリューション中に粒子識別の信頼レベルを改良することができる。
【0086】
断面散乱基準として100nmのポリスチレン(PS)ビーズを使用し、それらが種々のフローサイトメトリプラットフォーム上で検出可能であることに起因して、
図29から、約400nmにおいて照明される20nmの銀ナノ粒子が、100nmのPS粒子よりも高い散乱断面を有することが分かり得る。また、40nmのAu粒子は、約532nmの照明波長において100nmのPS球体の散乱断面を超え、40nmのAg粒子は、約350〜450nmに及ぶ照明波長を伴って高い散乱断面を有する。さらに、セレン化カドミウム、酸化鉄、および二酸化チタンを除く全ての組成物の60nm球体は、スペクトルの赤色面積(>700nm)内に落下する前に、紫外線・可視スペクトルの大部分を横断して100nmのPS球体よりも高い散乱断面を有する。
【0087】
図25に示されるように、PS、Au、およびAgナノ粒子が、粒子が488nmの従来の散乱集光波長を使用して検出可能であるかどうかを決定するように、Astrios EQおよびFACS Symphony計器上で分析された。染色されていない100nmのPSビーズが、両方の計器上で分解可能であった。100、80、60、および40nmのAg粒子が、両方の計器上で背景から区別可能であり、40nm集団は、Astrios EQおよびFACS Symphony上で背景雑音から部分的にのみ分解された。20nmのAgまたはAu粒子は、いずれの計器上でも分解されなかった。80、60、および40nmのAu粒子が、両方の計器上で分解され、再度、40nmのAuは、各計器上で部分的にのみ分解された。
【0088】
PS、Au、およびAg粒子は、(
図22Cに示されるように)Astrios EQの多波長モデル化を使用して調査され、それらは、(
図22Dに示されるように)488および561nmSSCチャネルからの入手されたデータと比較された。405、488、561、640nmにおけるモデル化されたデータと入手されたデータとの間の比較もまた、実施された。計器背景雑音を基準として使用して、40nmのAg粒子が、561nm、488nm、および405nmSSCチャネル上で部分的に分解され、640nmSSCチャネル上で分解されなかった。40nmのAu粒子が、561nmおよび488nmSSCチャネル上で完全に分解され、640nmSSCチャネル上で部分的に分解され、405nmSSCチャネル上で分解されなかった。100nmのPS粒子が、488nmおよび561nmSSCチャネル上で完全に分解され、405nmSSCチャネル上で部分的に分解され、640nmSSCチャネル上で分解されなかった。全ての他の粒子が、全てのSSCチャネル上で計器背景雑音から分解可能であった。
【0089】
全てのチャネル上のAu、Ag、およびPS粒子散乱の間の関係は、
図22Cと
図22Dとの間の類似性で見られ得るように、モデルと入手されたデータとの間で良好に維持された。Au粒子は、488nmSSCチャネルと561nmSSCチャネルとの間で散乱の線形増加を示し、PS粒子もまた、線形に増加するが、Auよりも増加した488nm散乱を伴うと考えられ、Agは、60〜80nmの488nm散乱チャネル上の散乱が漸減し始める前に、488nm散乱チャネルと561nm散乱チャネルとの間で線形に散乱するが、561nm散乱で増加し続けると考えられる。
【0090】
フローサイトメトリにおいて即座にいくつかのナノタグの使用を実装するために、粒子が、デコンボリューションを通して信号抽出および識別の基礎を提供するように、区別可能なスペクトル散乱性質に基づいて選択される。明確に異なるスペクトル散乱性質を示す2つの材料の実施例は、
図30Aに示されるように(
図18Bと同様に)60nmのAuおよびAgである。Ag対Au散乱の比をプロットすることによって、殆どの分離が起こる可能性が高い波長が、決定されることができる。60nmのAg粒子は、逆が510nm〜800nmで起こる前に、350〜510nmの波長の間で60nmのAu粒子よりも多く散乱するであろうことが分かり得る。本分離は、(相対パワーの正規化を伴わないが)
図30Bに示されるように、405、488、561、および640nmにおいて散乱を集光する、Astrios EQからの入手されたデータ内で確認される。しかしながら、入手された60nmのAg粒子は、モデル化から予測されるように、561nmおよび640nm波長上で反転する前に、405nmおよび488nmにおける60nmのAuよりも高い散乱強度を有することが分かり得る。したがって、付着したナノタグを有するEVを含有する、フローサイトメトリ標的のための側方散乱検出信号が、付着したナノタグを伴うEVの存在を決定するようにデコンボリューションされることができる。
【0091】
CFSE染色EVの散乱性質が、
図31に示されるように、標識としてのそれらの使用が、エピトープ染色の区別を可能にするであろう方法を示すように、60nmのAuおよび60nmのAg粒子のものと比較された。CFSE染色EVがAgナノタグによって積極的に染色された場合、それらの488nmおよび561nmSSCチャネル強度が増加するであろうことが分かり得る。CFSE染色EVがAuナノタグによって積極的に染色された場合、主に、それらの561nmSSCチャネル強度が増加するであろう。AuおよびAgナノタグを用いて見られる特性チャネル強度は、相互と明確に異なり、これらの差異は、2つの異なるエピトープを標識化する、または1つの検定で2つの異なるEV関連分子を検出するための手段を提供する。これらの結果は、
図29および
図22Dで見られるAuおよびAgの散乱性質に基づいて期待される。
【0092】
開示される技術によると、AgまたはAuから成る、40、60、および80nmの直径を伴う粒子が、Astrios EQおよびFACS Symphonyフローサイトメータを使用して、部分的または完全に分解されることができる。しかしながら、そのようなサイトメータは、より複雑な「高級」機器と見なされ得、全ての従来のフローサイトメータが、(参照標準として使用される)100nmのポリスチレン球体を検出することが可能であるわけではない。複数の散乱検出波長において40nmの粒子を検出する能力が、本明細書の計器を用いて示されるが、同時に、複数の(>3)スペクトル散乱標識の検出および分析を含む、粒子検出の改良(より小さいサイズ、単一の個々の粒子、複数の粒子タイプ)が、取得されることができる。そのような改良を取得するために、スーパーコンティニウム白色レーザおよび複数の散乱検出チャネルを用いるような本明細書に開示されるような例示的計器は、広範囲の照明波長を使用することができる。しかしながら、1つまたは2つだけの標識を使用することは、散乱集光フィルタを伴う既存のフローサイトメータ構成を使用して、実行可能であり得る。
【0093】
限定された表面積、したがって、EV上の表面タンパク質に起因して、立体障害が、直径約15nmである現在の免疫グロブリン標識にとって問題であり得る。これは、特に、現在の計器上で検出不可能である、いくつかのフルオロフォアで標識化される免疫グロブリンにとって、問題であるが、1つだけのナノタグが、それが検出可能であるためにEV表面エピトープに結合する必要がある。100nmのEVは、約20個の緩く充塞された15nmの球形粒子を結合する容量を有することができる。EVに対するナノタグの濃度は、したがって、はるかに低く、EV表面を飽和させず、それによって、異なるタンパク質に標識化される複数のナノタグが結合することを可能にする。標識としてのナノ粒子の使用を考慮するときの別の重要な要因は、それらの共役である。Qdots等の多くの既存のナノ粒子標識は、多価標識をもたらす。EVへの単一ナノタグ結合を確実にするために、1価標識の開発が有用であろう。Qdotsの1価標識化は、DNAでナノ粒子を包被することによって以前に実証された。本方法は、抗体、アプタマー等に結合するために使用され得る、単一官能化末端基を残す。
【0094】
本明細書の実施例によると、単一ナノタグは、EV等の標的粒子に結合されることなく検出されることが可能であるため、標識EVおよび非標識EVを区別する方法が有用であろう。いくつかの実施例では、全てのEVは、挿入膜色素またはCFSE等の非特異的染色を用いて蛍光標識化される。ナノタグの蛍光の偏移が、次いで、EVを標識化したかどうかを決定するように、標識EVに結合されたときに識別されることができる。他の実施例では、具体的タイプのEVが着目され、例えば、ホスファチジルセリン陽性であった場合、ナノタグを着目集団に対して特異的にし、EV部分集合、例えば、CD9陽性において標的化される、第2のナノタグを使用することが可能であろう。一意の散乱分布が、次いで、それらに結合された、明確に異なる散乱性質をそれぞれ伴う2つのナノタグを有した、EVに関して起こるであろう。
【0095】
したがって、代表的実施例では、単一の40、60、および80nmのAuおよびAg粒子は、既存のフローサイトメトリ計器を使用して検出可能であるだけではなく、それらのスペクトル散乱性質を使用することによって、相互および蛍光標識EVと一意に区別可能である。いくつかの実施例では、そのような直径および組成物の粒子は、単一エピトープ検出のための手段として、現在利用可能な標識化方法を使用して、多価またはさらに1価検出標識として使用され、単一エピトープ検出タグとして実装され得る。分子ナノタグを標識として使用することは、高屈折率または高プラズモンナノ材料の光散乱性質を活用し、それによって、現在利用可能な流動方法を使用して、単一分子の検出のために十分に高い信号を提供し、したがって、EV等の低発現、低散乱標的のための標識として有用であり得る。
【0096】
したがって、開示される実施例によると、分子ナノタグが、利用可能な検出方法における既存の間隙を充填するために使用されることができる。例えば、それによって、臨床研究室が血液サンプルを採取し、血液の単位体積あたりの具体的腫瘍マーカに関して陽性であるEVの数を決定することができる、現在利用可能な方法が存在しない。むしろ、現在の方法は、EVをマルチミクロンサイズのビーズに結合し、検出抗体を使用し、より大型のビーズに結合されたEVを検出することのみ可能である。個々の分子ナノタグが、個別に分解され得る標識であるため、わずか1つの分子ナノタグ標識受容体を用いたEVの検出が実行可能である。また、標識が1価であることを確実にする様式での分子ナノタグの組立は、標識分子の数の計測を可能にすることができる。そのような分子計測は、現在のフローサイトメトリ標識および計器の計測能力を超える有意な前進である。
【0097】
図示される実施形態を参照して、開示される技術の原理を説明および図示したが、図示される実施形態は、そのような原理から逸脱することなく配列および詳細を修正され得ることを認識されたい。例えば、ソフトウェアで示される図示される実施形態の要素は、ハードウェアで実装されてもよく、その逆も同様である。また、任意の実施例からの技術は、他の実施例のうちのいずれか1つ以上のものに説明される技術と組み合わせられることができる。図示される実施例を参照して説明されるもの等の手順および機能は、単一ハードウェアまたはソフトウェアモジュールで実装され得る、または別個のモジュールが提供される得ることを理解されたい。上記の特定の配列は、便宜的例証のために提供され、他の配列も使用されることができる。
【0098】
開示される技術の原理が適用され得る、多くの可能性として考えられる実施形態に照らして、図示される実施形態は、代表的実施例にすぎず、本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではないことを認識されたい。これらの節で具体的に対処される代替物は、単に例示的にすぎず、本明細書に説明される実施形態の全ての可能性として考えられる代替物を構成するわけではない。例えば、本明細書に説明されるシステムの種々のコンポーネントは、機能および用途が組み合わせられてもよい。我々は、したがって、添付の請求項の範囲内に入る全てを請求する。