特許第6788170号(P6788170)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6788170二酸化炭素の固定方法、固定化二酸化炭素の製造方法、および固定化二酸化炭素の製造装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6788170
(24)【登録日】2020年11月4日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】二酸化炭素の固定方法、固定化二酸化炭素の製造方法、および固定化二酸化炭素の製造装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20201116BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20201116BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20201116BHJP
   C01F 11/18 20060101ALI20201116BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20201116BHJP
【FI】
   B01J19/00 A
   B01D53/14 200
   B01D53/62
   C01F11/18 B
   C01B32/50
【請求項の数】6
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2019-568416(P2019-568416)
(86)(22)【出願日】2019年11月20日
(86)【国際出願番号】JP2019045389
【審査請求日】2019年12月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501111728
【氏名又は名称】反町 健司
(73)【特許権者】
【識別番号】517344848
【氏名又は名称】株式会社親広産業
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(72)【発明者】
【氏名】反町 健司
【審査官】 壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】 特表2019−527178(JP,A)
【文献】 特表平08−503884(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0271440(US,A1)
【文献】 特開2019−048270(JP,A)
【文献】 特表2010−502420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J10/00−12/02,14/00−19/32
B01D53/34−53/85,53/92,53/96
B01D53/14−53/18
C01B32/00−32/991
C01F1/00−17/00
C01G1/00−23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の接触工程、希釈工程、および第2の接触工程を含み、
前記第1の接触工程は、水酸化ナトリウムを含む溶液と、二酸化炭素を含む気体とを接触させ、
前記希釈工程は、前記第1の接触工程後、前記溶液における水酸化ナトリウムの濃度を0.01N以上0.2N以下に希釈し、
前記第2の接触工程は、前記第1の接触工程後、前記溶液に、塩化カルシウムを添加
前記添加後の混合液における前記塩化カルシウムの濃度が、0.05mol/L以上0.5mol/L以下である、
二酸化炭素の固定方法。
【請求項2】
前記溶液における前記水酸化ナトリウムの濃度が、0.05N以上である、請求項1記載の固定方法。
【請求項3】
前記第1の接触工程および前記第2の接触工程の少なくとも一方において、前記溶液および前記添加後の混合液中に前記気体を送入することにより、前記溶液および前記混合液と前記気体とを接触させる、請求項1または2記載の固定方法。
【請求項4】
前記第1の接触工程および前記第2の接触工程の少なくとも一方において、前記溶液および前記添加後の混合液の温度が、70℃以上である、請求項1からのいずれか一項に記載の固定方法。
【請求項5】
さらに、冷却工程を含み、
前記冷却工程は、前記第2の接触工程後、前記添加後の混合液を冷却する、請求項1からのいずれか一項に記載の固定方法。
【請求項6】
二酸化炭素を固定化する固定化工程を含み、
前記固定化工程が、請求項1からのいずれか一項に記載の二酸化炭素の固定方法により実施される、固定化二酸化炭素の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素の固定方法、固定化二酸化炭素の製造方法、および固定化二酸化炭素の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素の固定方法として、例えば、特許文献1には、水酸化ナトリウム水溶液に二酸化炭素を含む燃焼排ガスを反応させることにより、炭酸ナトリウムを生成させる方法が記載されている。しかし、新たな、二酸化炭素の固定方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−263433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、新たな、二酸化炭素の固定方法、固定化二酸化炭素の製造方法、および固定化二酸化炭素の製造装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明の二酸化炭素の固定方法は、
第1の接触工程および第2の接触工程を含み、
前記第1の接触工程は、水酸化ナトリウムを含む溶液と、二酸化炭素を含む気体とを接触させ、
前記第2の接触工程は、前記第1の接触工程後、前記溶液に、第2族元素の塩化物、および2価の金属元素の塩化物の少なくとも一方を添加する。
【0006】
本発明の固定化二酸化炭素の製造方法は、二酸化炭素を固定化する固定化工程を含み、
前記固定化工程が、本発明の二酸化炭素の固定方法により実施される。
【0007】
本発明の固定化二酸化炭素の製造装置は、
接触手段、および添加手段を含み、
前記接触手段は、水酸化ナトリウムを含む溶液と、二酸化炭素を含む気体とを接触させ、
前記添加手段は、前記溶液に、さらに、第2族元素の塩化物、および2価の金属元素の塩化物の少なくとも一方を添加する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、新たな、二酸化炭素の固定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、参考例1における、二酸化炭素との接触前および接触後における、水酸化ナトリウムと塩化カルシウムとを含む混合液の写真である。
図2図2は、参考例1における、二酸化炭素との接触により、混合液において生じた沈殿の重さを示すグラフである。
図3図3は、参考例1における、二酸化炭素との接触により、混合液において生じた沈殿の重さを示すグラフである。
図4図4は、参考例2における、接触後の容器内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。
図5図5は、参考例2における、八角柱プラスチックボトルの形状を示す図である。
図6図6は、参考例2における、接触後の容器内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。
図7図7は、参考例2における、接触後の容器内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。
図8図8は、参考例3における、噴霧による接触を行っている様子を示す図である。
図9図9は、参考例3における、接触後の容器内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。
図10図10は、参考例3における、接触手段を示す図である。
図11図11は、参考例3における、接触後の容器内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。
図12図12は、接触手段の一例を示す概略図である。
図13図13は、容器の一例を示す図である。
図14図14は、気体送入手段の一例を示す概略図である。
図15図15は、実施例1における、二酸化炭素との接触により、混合液において生じた沈殿の重さを示すグラフである。
図16図16は、実施例1における、二酸化炭素との接触により、混合液において生じた沈殿の重さを示すグラフである。
図17図17は、実施例2における、二酸化炭素との接触により、混合液において生じた沈殿の重さを示すグラフである。
図18図18は、実施例3における、二酸化炭素との接触により、混合液において生じた沈殿の重さを示すグラフである。
図19図19は、参考例2における、振とうによる接触を行っている様子を示す図である。
図20図20は、参考例2における、接触後の容器内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。
図21図21は、参考例4における、バブリングによる接触を行っている様子を示す図である。
図22図22は、参考例4における、二酸化炭素との接触により、混合液において生じた沈殿の重さを示すグラフである。
図23図23は、参考例4における、パイプの形態を説明する概略図である。
図24図24は、参考例4における、接触後の容器内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。
図25図25は、参考例4における、接触後の容器内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。
図26図26は、参考例4における、接触後の容器内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。
図27図27は、参考例4における、接触後の容器内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。
図28図28は、参考例5における、接触後の容器内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。
図29図29は、参考例5における、バブリングによる接触を行っている様子を示す図である。
図30図30は、参考例5における、接触後の容器内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。
図31図31は、参考例5における、接触後の容器内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。
図32図32は、参考例6における、二酸化炭素との接触により、混合液において生じた沈殿の重さを示すグラフである。
図33図33は、参考例6における、接触後の容器内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。
図34図34は、参考例7における、二酸化炭素との接触により、混合液において生じた沈殿の重さを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の二酸化炭素の固定方法は、例えば、前記第2族元素の塩化物、および前記2価の金属元素の塩化物の少なくとも一方が、塩化カルシウムである。
【0011】
本発明の二酸化炭素の固定方法は、例えば、前記溶液における前記水酸化ナトリウムの濃度が、0.05N以上である。
【0012】
本発明の二酸化炭素の固定方法は、例えば、前記添加後の混合液における前記塩化カルシウムの濃度が、0.05mol/L以上である。
【0013】
本発明の二酸化炭素の固定方法は、例えば、前記第1の接触工程および前記第2の接触工程の少なくとも一方において、前記溶液および前記添加後の混合液中に前記気体を送入することにより、前記溶液および前記混合液と前記気体とを接触させる。
【0014】
本発明の二酸化炭素の固定方法は、例えば、前記第1の接触工程および前記第2の接触工程の少なくとも一方において、前記溶液および前記添加後の混合液の温度が、70℃以上である。
【0015】
本発明の二酸化炭素の固定方法は、例えば、さらに、冷却工程を含み、前記冷却工程は、前記第2の接触工程後、前記添加後の混合液を冷却する。
【0016】
本発明の固定化二酸化炭素の製造装置は、例えば、前記第2族元素の塩化物、および前記2価の金属元素の塩化物の少なくとも一方が、塩化カルシウムである。
【0017】
本発明の固定化二酸化炭素の製造装置は、例えば、前記接触手段が、容器および気体送入手段を含み、前記容器は、前記溶液を収容可能であり、前記気体送入手段は、前記溶液中に前記気体を送入可能である。
【0018】
本発明の固定化二酸化炭素の製造装置は、例えば、さらに、冷却手段を含み、前記冷却手段は、前記気体との反応後の前記溶液を冷却する。
【0019】
本明細書で使用する用語は、特に言及しない限り、当該技術分野で通常用いられる意味で用いることができる。
【0020】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
(二酸化炭素の固定方法)
本発明の二酸化炭素の固定方法は、第1の接触工程および第2の接触工程を含み、前記第1の接触工程は、水酸化ナトリウム(NaOH)を含む溶液と、二酸化炭素(CO)を含む気体とを接触させ、前記第2の接触工程は、前記第1の接触工程後、前記溶液に、第2族元素(アルカリ土類金属)の塩化物、および2価の金属元素の塩化物の少なくとも一方を添加する。本発明の二酸化炭素の固定方法において、その他の構成及び条件は、特に制限されない。
【0022】
本発明において、「二酸化炭素の固定(固定化ともいう。)」は、例えば、二酸化炭素を含む気体から、二酸化炭素を除去することにより、前記気体中の二酸化炭素濃度を低減させることをいう。
【0023】
前記第2族元素は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウムがあげられ、中でも、例えば、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウムがあげられる。前記第2族元素の塩化物は、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウムがあげられる。
【0024】
前記2価の金属元素は、特に制限されず、例えば、亜鉛があげられる。前記2価の金属元素の塩化物は、例えば、塩化亜鉛があげられる。
【0025】
以下の説明において、前記第2の接触工程において、前記第2族元素(アルカリ土類金属)の塩化物として、塩化カルシウムを添加する場合を例にあげて、説明を行う。ただし、本発明は、これには制限されない。
【0026】
本発明の二酸化炭素の固定方法は、前述のように、第1の接触工程および第2の接触工程を含み、前記第1の接触工程は、水酸化ナトリウム(NaOH)を含む溶液と、二酸化炭素(CO)を含む気体とを接触させ、前記第2の接触工程は、前記第1の接触工程後、前記溶液に、塩化カルシウム(CaCl)を添加する。
【0027】
本発明の二酸化炭素の固定方法によれば、水酸化ナトリウムおよび塩化カルシウムと、二酸化炭素とを反応させ、炭酸カルシウム(CaCO)を生じさせることで、二酸化炭素を固定することができる。本発明によれば、例えば、固体の状態で、二酸化炭素を固定することができる。これにより、例えば、より安定性の高い状態で、二酸化炭素を固定することができる。また、例えば、取扱いが容易になる。
【0028】
前記第1の接触工程は、水酸化ナトリウムを含む溶液と、二酸化炭素を含む気体とを接触させる。前記第1の接触工程により、水酸化ナトリウムと二酸化炭素との反応により、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)や炭酸ナトリウム(NaCO)が生じ、二酸化炭素を固定(吸収)することができる。
【0029】
前記第1の接触工程において、塩化カルシウムは未添加である。このため、本発明によれば、前記第1の接触工程において、例えば、高濃度(例えば、0.2N以上)の水酸化ナトリウムを用いた場合でも、塩化カルシウムとの反応により水酸化カルシウムが生じない。このため、続く前記第2の接触工程において、塩化カルシウムと高濃度の水酸化ナトリウムとの反応により水酸化カルシウムが生じることを防ぐことができ、より多くの二酸化炭素を固定できる。
【0030】
前記二酸化炭素を含む気体は、特に制限されず、例えば、燃焼排ガス、室内空気、および大気等があげられる。
【0031】
前記二酸化炭素を含む気体における二酸化炭素の濃度は、特に制限されず、例えば、0〜100%である。なお、後述するように、本発明によれば、低濃度の二酸化炭素であっても、固定することができる。また、100%の二酸化炭素のバブリングにより、前記溶液において、白色沈殿が形成されることから、本発明は、高濃度の二酸化炭素固定においても、効果を得ることができる。
【0032】
前記二酸化炭素を含む気体の温度は、特に制限されず、例えば、0℃以下の低温、大気中の気温や室温の一般的な温度、100℃未満、および120〜200℃の高温でもよい。なお、前記気体の温度は、水の蒸発を防ぐ観点から、低温であってもよい。ただし、本発明は、例えば、前記二酸化炭素を含む気体が高熱であっても、適用することができる。
【0033】
前記二酸化炭素を含む気体は、例えば、二酸化炭素以外の物質を含んでいてもよい。前記二酸化炭素以外の物質は、特に制限されず、例えば、SOx、NOx、O、ダスト等があげられる。なお、本発明において、前記溶液は、例えば、基本的に、アルカリ性であることから、前記溶液と酸性の前記物質等とにおいて、中和反応が起こると考えられる。ただし、本発明はこれには制限されない。
【0034】
前記水酸化ナトリウムを含む溶液における前記水酸化ナトリウムの濃度は、特に制限されず、例えば、0.01N以上、および0.05N以上である。なお、前記濃度の単位「N」は、規定度を示し、水酸化ナトリウムの場合、0.01Nは、0.01mol/Lである。前記水酸化ナトリウムの濃度が、0.01N以上、および0.05N以上であることにより、例えば、より多くの二酸化炭素を固定できる。本発明によれば、前述のように、高濃度(例えば、0.2N以上)の水酸化ナトリウムを用いることができる。このため、本発明は、例えば、前記水酸化ナトリウムを含む溶液が、高温の排気ガスとの接触により濃縮された場合であっても、適用することができる。
【0035】
前記溶液、および後述する前記添加後の混合液の温度は、特に制限されず、例えば、30〜100℃、70℃以上、70℃〜80℃、70℃である。なお、本発明によれば、前述のように、例えば、高熱による、高濃度(例えば、0.2N以上)の水酸化ナトリウムが発生した場合でも、その濃度を低下させることができる。このため、本発明は、例えば、前記溶液が高熱であっても、適用することができる。
【0036】
前記第1の接触工程によれば、例えば、水酸化ナトリウムの濃度を、0.2N以下、0.2N未満、および0.1N以下にすることができる。これにより、例えば、前記第2の接触工程において、水酸化カルシウムの形成を抑制でき、より多くの二酸化炭素を固定できる。
【0037】
前記第1の接触工程(以後、単に「接触工程」ともいう。)において、前記溶液と、前記二酸化炭素を含む気体とを接触させる方法は、特に制限されず、例えば、前記溶液中に前記気体を送入することにより、前記溶液と前記気体とを接触させる、前記溶液を静置または前記溶液に流れを発生させた状態で、前記溶液と前記気体とを接触させる、前記溶液を霧状にした状態で、前記溶液と前記気体とを接触させる等の方法があげられる。また、前記気体を還流させた状態で、前記溶液と前記気体とを接触させてもよい。
【0038】
前記接触工程において、前記溶液中に前記気体を送入することにより、前記溶液と前記気体とを接触させる場合としては、例えば、バブリングがあげられる。前記バブリングの条件は、特に制限されず、例えば、10mLの試験管に、3mLの0.1Nの水酸化ナトリウム溶液と、3mLの0.1mol/Lの前記塩化カルシウム溶液とを入れて混合し、前記溶液に、二酸化炭素(小池工業社製)を用いて、10秒間(約20cm)、バブリングをすることができる。なお、前記バブリングは、例えば、パスツールピペットの先端から、二酸化炭素を噴出させることができる。また、例えば、水槽生物用のバブリング装置(製品名:ブクブク、コトブキ工芸株式会社製)を用いることができる。また、例えば、バブリング装置(製品名:Micro bubbler(F-1056-002)、フロント工業株式会社製)を用いることができる。前記バブリングを行う時間は、例えば、形成された沈殿が、さらなる反応により消失しない範囲で、適宜設定することができ、例えば、5秒〜60秒間、5秒〜40秒間、5秒〜30秒間、および1〜2分間、ならびに、1.5時間、9時間、および12時間等とすることができる。
【0039】
前記接触工程において、前記溶液中に前記気体を送入することにより、前記気体を、バブルにして前記混合液中に送入することができる。前記バブルのサイズ(直径)は、例えば、前記気体を送入する送入口の大きさに応じて決まる。例えば、前記気体を、多孔質構造体から送入する場合、前記バブルのサイズは、前記多孔質構造体の細孔の大きさに応じて決まる。
【0040】
前記バブル(泡、気泡)のサイズ、および個数濃度等は、適宜設定でき、特に制限されない。前記バブルのサイズは、例えば、センチメートル、ミリメートル、マイクロメートル、ナノメートルのオーダーにすることができる。前記バブルは、例えば、ファインバブルを含む。前記ファインバブルは、球相当直径が100μm以下のバブルである。前記ファインバブルは、その内訳として、直径が1〜100μmのバブルであるマイクロバブル、および、直径が1μm以下のバブルであるウルトラファインバブル(ナノバブルともいう。)を含む。前記バブルを、ファインバブル等の小さいサイズに設定することにより、例えば、バブルの表面積をより大きくすることができ、前記接触工程における反応を促進することができる。前記バブルを、ファインバブルより大きいサイズに設定することにより、例えば、前記気体の送入に必要なガス圧を低減することができる。
【0041】
前記バブルのサイズは、例えば、一般的な方法により測定できる。具体的には、例えば、前記バブルおよび所定のスケールを含む写真を撮影し、前記写真における前記バブルのサイズと前記スケールとを比較することにより、前記バブルのサイズを測定することができる。また、レーザ回折・散乱法、動的光散乱法、粒子軌跡解析法、共振式質量測定法、電気的検知帯法、動的画像解析法、および遮光法等の、粒子径分布測定手法を利用することができる。
【0042】
前記接触工程において、前記溶液を静置させた状態で、前記溶液と前記気体とを接触させる場合、前記接触させる条件は、特に制限されず、例えば、容積2Lの一般的な形状のペットボトル(市販のもの)内を大気と平衡にした後、前記ペットボトルに、10mLの前記溶液を入れ、前記ペットボトルを、底面が下になるようにして立てて静置することができる。前記接触時間は、例えば、前記接触後、15分、30分、および60分、ならびにオーバーナイトでの接触とすることができる。
【0043】
前記接触工程において、「前記溶液に流れを発生させた状態で、前記溶液と前記気体とを接触させる」とは、例えば、前記溶液を振とうさせた状態で、前記溶液と前記気体とを接触させてもよいし、容器内において、前記溶液を流すことにより、前記溶液と前記気体とを接触させてもよいし、容器内の空間に、前記容器の上部(天井等)等から、前記溶液を添加する(例えば、シャワー状または霧状に添加する)ことにより、前記混合液と前記気体とを接触させてもよい。
【0044】
前記接触工程において、前記溶液を振とうさせた状態で、前記溶液と前記気体とを接触させる場合、前記振とうの条件は、特に制限されず、例えば、10mLの前記溶液を入れた八角柱プラスチックボトル(市販のもの)を、シェイカー(BR-21UM、TAITEK製)を用いて、120rpmの条件で、振とうすることができる。また、前記振とうの条件は、例えば、50mLの前記溶液を入れた容積2Lの容器を、30秒間の振とうを1回として、1〜4回、成人男性の手で、激しく振とうすることができる。前記1〜4回の振とうは、例えば、それぞれ、前記接触直後、30秒後、2分後、5分後、4時間後に行うことができる。
【0045】
前記接触工程において、前記溶液を霧状にした状態で、前記溶液と前記気体とを接触させる場合、前記接触させる条件は、特に制限されず、例えば、前記気体を入れた容積2Lの容器に、約4mLの前記溶液を、噴霧器(市販のもの)を用いて、5秒間隔で10回噴霧することができる。前記霧状の前記溶液は、例えば、容器の上部から、前記容器内の空間に、シャワー状または霧状に添加してもよい。
【0046】
前記接触工程において、前記溶液と、二酸化炭素を含む気体とを接触させるための接触手段は、特に制限されず、後述する、固定化二酸化炭素の製造装置の記載を援用することができる。
【0047】
前記第2の接触工程は、前記第1の接触工程後、前記溶液に、塩化カルシウムを添加する。前記第2の接触工程により、前記第1の接触工程により生成した炭酸水素ナトリウムや炭酸ナトリウムと塩化カルシウムとを反応させることにより、炭酸カルシウムを生じさせ、二酸化炭素を固定することができる。
【0048】
前記第2の接触工程において、前記二酸化炭素を含む気体との接触を終了させてもよい。また、前記二酸化炭素を含む気体と接触させながら、前記第2の接触工程を行ってもよい。
【0049】
前記第2の接触工程において、前記添加後の混合液における、前記塩化カルシウムの濃度は、特に制限されず、例えば、0.005mol/L以上、および0.05mol/L以上、ならびに、0.5mol/L以下、0.5mol/L未満、および0.1mol/L以下である。前記塩化カルシウムの濃度が、前記範囲内であることにより、例えば、より多くの二酸化炭素を固定できる。
【0050】
前記第2の接触工程において、前記添加後の混合液のpHは、特に制限されず、例えば、0.05Nの水酸化ナトリウムと0.05mol/Lの塩化カルシウムとを含む前記混合液のpHは、約12である。
【0051】
本発明の二酸化炭素の固定方法は、例えば、さらに、希釈工程を含み、前記希釈工程は、前記第1の接触工程後、前記溶液を希釈してもよい。前記希釈する方法は、特に制限されず、例えば、蒸留水を添加することができる。前記希釈の割合は、適宜設定でき、例えば、1/10に希釈することができる。前記希釈工程により、例えば、水酸化ナトリウムの濃度を、0.2N以下、0.2N未満、および0.1N以下にすることができる。
【0052】
本発明の二酸化炭素の固定方法は、例えば、さらに、冷却工程を含み、前記冷却工程は、前記第2の接触工程後、前記添加後の混合液を冷却してもよい。前記冷却工程において、例えば、70℃以上の前記混合液を、冷却することができる。
【0053】
(固定化二酸化炭素の製造方法)
本発明の固定化二酸化炭素の製造方法は、前述のように、二酸化炭素を固定化する固定化工程を含み、前記固定化工程が、本発明の二酸化炭素の固定方法により実施される。本発明の固定化二酸化炭素の製造方法は、前記固定化工程を含むことが特徴であって、その他の工程および条件は、特に制限されない。本発明の二酸化炭素の固定方法は、前述の通りである。前記固定化工程の条件等は、特に制限されず、例えば、本発明の二酸化炭素の固定方法における記載と同様である。
【0054】
(固定化二酸化炭素の製造装置)
本発明の固定化二酸化炭素の製造装置は、前述のように、接触手段、および添加手段を含み、前記接触手段は、水酸化ナトリウムを含む溶液と、二酸化炭素を含む気体とを接触させ、前記添加手段は、前記溶液に、さらに、第2族元素の塩化物、および2価の金属元素の塩化物の少なくとも一方を添加する。前記溶液、および前記二酸化炭素を含む気体は、例えば、本発明の二酸化炭素の固定方法における記載と同様である。
【0055】
前記接触手段は、水酸化ナトリウムを含む溶液と、二酸化炭素を含む気体とを接触させることができればよく、特に制限されない。図12に、前記接触手段の一例を示す概略図を示す。図12に示すように、固定化二酸化炭素の製造装置1は、接触手段10を含み、接触手段10は、例えば、前記溶液を投入するための溶液投入手段11、前記二酸化炭素を含む気体を送入するための気体送入手段12、および前記溶液と二酸化炭素を含む気体との接触を行うための容器13を含む。容器13は、前記溶液を収容可能である。また、固定化二酸化炭素の製造装置1は、添加手段20を含み、添加手段20は、例えば、前記溶液に、さらに、塩化カルシウムを添加する。
【0056】
接触手段10は、例えば、前記溶液を静置または前記溶液に流れを発生させた状態で、前記溶液と前記気体とを接触させる手段があげられる。「前記溶液に流れを発生させた状態で、前記溶液と前記気体とを接触させる」とは、例えば、前述のように、前記溶液を振とうさせた状態で、前記溶液と前記気体とを接触させてもよいし、容器内において、前記溶液を流すことにより、前記溶液と前記気体とを接触させてもよい。前記溶液を流す場合、前記溶液を一方向に流してもよいし、還流させてもよい。
【0057】
接触手段10は、例えば、前記溶液を霧状にした状態で、前記溶液と前記気体とを接触させる手段があげられる。
【0058】
接触手段10は、例えば、前記気体を還流させた状態で、前記溶液と前記気体とを接触させる手段があげられる。
【0059】
接触手段10は、例えば、閉鎖系でもよいし、前記気体等が外界へ移動可能な、開放系でもよい。
【0060】
溶液投入手段11は、前記溶液を投入することができればよく、特に制限されず、例えば、噴霧器等があげられる。
【0061】
気体送入手段12は、例えば、前記溶液中に前記気体を送入可能である。前記気体の送入は、例えば、前述の通りである。
【0062】
気体送入手段12は、前記二酸化炭素を含む気体を送入することができればよく、特に制限されず、例えば、エアストーン、ホース(チューブ)、およびパスツールピペット等があげられる。前記エアストーンは、例えば、多孔質構造を有し、その細孔から、前記気体を送入することができる。これらの大きさ、形状および材質は、特に制限されず、例えば、前記エアストーンの材質は、セラミック等があげられ、前記ホース(チューブ)の材質は、シリコン等があげられる。前記エアストーンの表面積は、例えば、球状の場合、1個あたり21cmである。気体送入手段12は、具体的には、前述の、前記バブリング装置等があげられる。
【0063】
気体送入手段12は、例えば、複数のエアストーンからなる構造があげられる。具体的には、例えば、図14に示すように、前記気体を挿入するチューブ、および複数の前記エアストーンを、ブドウの房状に配置してもよい。前記「ブドウの房状」とは、図14に示すように、1本の前記チューブが分岐しており、分岐したそれぞれの前記チューブの先端に前記エアストーンが接続された構造でもよいし、複数の前記チューブを束ねておき、それぞれの前記チューブの先端に前記エアストーンが接続された構造でもよい。また、例えば、複数の前記エアストーン(例えば、球状、および筒状等)を容器内に充填してもよい。これらにより、例えば、前述のように、前記溶液中に前記気体を送入することにより、前記溶液と前記気体とを接触させる場合、前記溶液に接する前記気体の表面積が大きくなり、好ましい。
【0064】
容器13は、前記溶液と二酸化炭素を含む気体との接触を行うことができればよく、特に制限されない。容器13の大きさは、例えば、前記二酸化炭素を含む気体の量に応じて、適宜設定することができる。容器13の素材は、例えば、プラスチック、ガラス、セラミックス等があげられる。
【0065】
容器13の形状は、例えば、前記溶液と、前記二酸化炭素を含む気体との接触の態様に応じて、適宜設定することができる。具体的には、例えば、前述のように、前記溶液中に前記気体を送入することにより、前記溶液と前記気体とを接触させる場合、容器13の形状は、円筒形等の筒形の形状があげられる。これにより、例えば、容器13を、前記筒型の長軸方向が重力方向となるように設置し、容器13の下部から前記気体を送入することにより、容器13の上部に向かって前記気体を移動させることができるため、前記接触工程における接触時間がより長くなり、好ましい。容器13は、例えば、図23に示すパイプがあげられる。
【0066】
また、例えば、前述のように、前記溶液を振とうさせた状態で、前記溶液と前記気体とを接触させる場合、容器13の形状は、底面の断面が、多角形状であることが好ましい。前記多角形状は、例えば、非正多角形状である。前記多角形状は、例えば、八角形状である。容器13の形状は、具体的には、例えば、多角柱の形状、および、図5に示すような八角柱の形状があげられる。容器13の底面の断面が、多角形状であることにより、後述するように、より多くの二酸化炭素を固定できる。これは、例えば、前記振とうにおいて、前記溶液の表面積が増加し、より多くの前記二酸化炭素を含む気体と接触できるようになるためと考えられる。ただし、本発明は、これには制限されない。
【0067】
また、例えば、前述のように、容器13内において、前記溶液を静置または前記溶液に流れを発生させた状態で、前記溶液と前記気体とを接触させる場合、容器13は、複数の二次容器を含んでもよい。そして、例えば、前記溶液が、前記複数の二次容器内を、順次、流れることで、前記溶液と前記気体との接触が可能であってもよい。前記二次容器は、例えば、図13(A)に示すように、水深の浅い、水盤状の構造とすることができる。前記複数の二次容器は、例えば、上下方向に間隔をあけて、それぞれを重ねた構造とすることができる。これにより、例えば、上側の前記二次容器から下側の前記二次容器に、前記溶液が、順次、流れることができる。
【0068】
また、例えば、前述のように、前記溶液を静置または前記溶液に流れを発生させた状態で、前記溶液と前記気体とを接触させる場合、容器13は、例えば、網目状構造体を含んでもよい。そして、例えば、前記溶液が、前記網目状構造体を、流れることで、前記溶液と前記気体との接触が可能であってもよい。前記網目状構造体は、例えば、メッシュ状構造、および、図13(B)に示すような、杉の葉状等の分岐構造等があげられる。前記網目状構造の大きさ、細かさ等は、適宜設定できる。前記網目状構造は、例えば、複数の、板状、粒状または棒状構造の集合体として形成することができる。前記網目状構造の形成材料は、特に制限されず、例えば、プラスチックがあげられる。
【0069】
固定化二酸化炭素の製造装置1は、例えば、さらに、冷却手段を含み、前記冷却手段は、前記気体との反応後の前記溶液を冷却してもよい。
【実施例】
【0070】
つぎに、本発明の実施例および参考例について説明する。ただし、本発明は、下記実施例および参考例により制限されない。市販の試薬は、特に示さない限り、それらのプロトコルに基づいて使用した。
【0071】
[実施例1]
水酸化ナトリウム(NaOH)を含む溶液と、二酸化炭素(CO)を含む気体とを接触させる第1の接触工程、および前記第1の接触工程後、前記溶液に、塩化カルシウム(CaCl)を添加する第2の接触工程により、二酸化炭素を固定できることを確認した。
【0072】
水酸化ナトリウムを含む溶液として、1Nの水酸化ナトリウム溶液(和光純薬工業社製)を用いた。また、1mol/Lの塩化カルシウム溶液(和光純薬工業社製)を、蒸留水で希釈し、0.1mol/Lの塩化カルシウム溶液を作製した。
【0073】
10mLの試験管に、5mlの1Nの前記水酸化ナトリウム溶液を入れ、前記溶液に、二酸化炭素(CO100%、小池工業社製)をバブリングすることにより、接触させた(第1の接触工程)。前記バブリングは、パスツールピペットの先端から、二酸化炭素を噴出させた。前記バブリングの条件は、2cm/秒、40秒間とした。前記バブリングにおけるバブルのサイズを、スケールと比較することにより目視で測定した結果、ミリメートル〜センチメートルのオーダーであった。
【0074】
つぎに、前記第1の接触後の前記溶液を、所定の濃度(0.1Nおよび0.05N)となるように蒸留水で希釈した。10mLの試験管に、3mLの前記希釈後の前記溶液を入れ、前記溶液に、3mlの0.1mol/Lの前記塩化カルシウム溶液を添加した(第2の接触工程)。前記接触後、前記添加後の混合液を3,000rpm、10分間の条件で遠心した。そして、前記接触前および後に、前記試験管の重量を測定し、前記接触前および後における前記重量の差を、沈殿量として算出した。
【0075】
また、二酸化炭素の吸収に対する水酸化ナトリウムの濃度効果をみるため、以下の実験を行った。1Nの前記水酸化ナトリウム溶液を、前記所定の濃度(0.1Nおよび0.05N)となるように、蒸留水で希釈した。10mLの試験管に、3mlの前記所定の濃度の水酸化ナトリウム溶液を入れ、前記溶液に、二酸化炭素をバブリングすることにより、接触させた(第1の接触工程)。前記バブリングの条件は、2cm/秒、20秒間とした。そして、前記溶液に、3mlの0.1mol/Lの前記塩化カルシウム溶液を添加した(第2の接触工程)。前記添加後、同様にして、沈殿量を算出した。
【0076】
これらの結果を、図15に示す。図15は、前記二酸化炭素との接触により、前記混合液において生じた沈殿の重さを示すグラフである。図15において、縦軸は、試験管あたりの前記沈殿の重さ(g)を示し、横軸は、各実験条件を示し、左のグラフは、前記第1工程を1Nの前記水酸化ナトリウム溶液を用いて行った結果(「High Concentration」)を示し、右のグラフは、前記第1工程を前記希釈後の前記水酸化ナトリウム溶液を用いて行った結果(「Low Concentration」)を示す。なお、前記沈殿の重さの値は、4サンプルの測定値の平均値とした。図15に示すように、前記第1の接触工程および前記第2の接触工程を行った結果、前記第1の接触工程をいずれの濃度で行った場合も、前記沈殿が生じた。また、前記第1の接触工程を高濃度で行った場合、前記沈殿の量がより多かった。
【0077】
さらに、前記第1工程で生成した炭酸水素ナトリウム(NaHCO)および炭酸ナトリウム(NaCO)が、前記第2工程において塩化カルシウムと反応し、沈殿を生じることを確認した。
【0078】
前述と同様にして、0.5mol/Lの塩化カルシウム溶液を作製した。10mLの試験管に、1mlの1Nの炭酸水素ナトリウム溶液(和光純薬工業社製)、1mlの蒸留水、2mlの0.5mol/Lの前記塩化カルシウム溶液を入れ、ボルテックスミキサーを用いて混合した。その後、生成した沈殿について、前述と同様にして、沈殿量を算出した。
【0079】
また、同様にして、2mlの0.5mol/Lの炭酸ナトリウム溶液(和光純薬工業製)、2mlの0.5mol/Lの前記塩化カルシウム溶液を混合し、生成した沈殿について、沈殿量を算出した。
【0080】
この結果を、図16に示す。図16は、前記二酸化炭素との接触により、前記混合液において生じた沈殿の重さを示すグラフである。図16において、縦軸は、試験管あたりの前記沈殿の重さ(g)を示し、横軸は、各実験条件を示す。なお、前記沈殿の重さの値は、前記各サンプルについて、合計4サンプルの測定値の平均値とした。図16に示すように、前記炭酸水素ナトリウム溶液および前記炭酸ナトリウム溶液は、それぞれ、前記塩化カルシウム溶液との反応により、沈殿を生じた。
【0081】
以上から、水酸化ナトリウムを含む溶液と、二酸化炭素を含む気体とを接触させる第1の接触工程、および前記第1の接触工程後、前記溶液に、塩化カルシウムを添加し、さらに、前記添加後の混合液と、前記二酸化炭素を含む気体とを接触させる第2の接触工程により、二酸化炭素を固定できることが確認できた。また、前記第1工程で生成した炭酸水素ナトリウムおよび炭酸ナトリウムが、前記第2工程において塩化カルシウムと反応し、沈殿を生じることが確認できた。
【0082】
[実施例2]
前記水酸化ナトリウム溶液および前記塩化カルシウム溶液の濃度を変えても、二酸化炭素を固定できることを確認した。
【0083】
実施例1と同様にして、1Nの水酸化ナトリウム溶液を用いた。さらに、前記水酸化ナトリウムを含む溶液として、5Nの水酸化ナトリウム溶液(和光純薬工業社製)を用いた。また、実施例1と同様にして、0.1mol/Lおよび0.5mol/Lの前記塩化カルシウム溶液を作製した。
【0084】
1Nおよび5Nの前記水酸化ナトリウム溶液、ならびに、0.1mol/Lおよび0.5mol/Lの前記塩化カルシウム溶液を用いて、実施例1と同様にして、前記第1の接触工程、および前記第2の接触工程を行った。ただし、5Nの前記水酸化ナトリウム溶液を用いた場合のみ、前記第1の接触工程における前記バブリング時間を、20秒間に代えて、50秒間とした。そして、実施例1と同様にして、沈殿量を算出した。
【0085】
この結果を、図17に示す。図17は、前記二酸化炭素との接触により、前記混合液において生じた沈殿の重さを示すグラフである。図17において、縦軸は、試験管あたりの前記沈殿の重さ(g)を示し、横軸は、各実験条件を示し、左のグラフは、前記第1工程を1Nの前記水酸化ナトリウム溶液を用いて行った結果を示し、右のグラフは、前記第1工程を5Nの前記水酸化ナトリウム溶液を用いて行った結果を示し、それぞれにおいて、左は、0.1mol/L前記塩化カルシウム溶液を用いて行った結果、右は、0.5mol/Lの前記塩化カルシウム溶液を用いて行った結果を示す。なお、前記沈殿の重さの値は、前記各サンプルについて、合計5サンプルの測定値の平均値とした。図17に示すように、前記水酸化ナトリウム溶液および前記塩化カルシウム溶液をいずれの濃度にした場合も、前記沈殿が生じた。前記水酸化ナトリウム溶液の濃度を、1Nおよび5Nにした結果、両者間でほぼ同じ値が得られた。前記塩化カルシウム溶液の濃度を、0.1mol/Lおよび0.5mol/Lにした結果、0.5mol/Lでは、0.1mol/Lにした場合と比較して、いずれの前記水酸化ナトリウム溶液の濃度においても、前記沈殿量が約半分の値であった。0.1mol/Lの前記塩化カルシウム溶液を用いることにより、より多くの二酸化炭素を固定できることが確認できた。
【0086】
以上から、前記水酸化ナトリウム溶液および前記塩化カルシウム溶液の濃度を変えても、二酸化炭素を固定できることが確認できた。
【0087】
[実施例3]
前記第1の接触工程における二酸化炭素を含む気体との接触時間を変えても、二酸化炭素を固定できることを確認した。また、前記第1の接触工程および前記第2の接触工程を行わずに、水酸化ナトリウムおよび塩化カルシウムを含む混合液と、二酸化炭素を含む気体とを接触させ、結果を比較した。
【0088】
実施例1と同様にして、1Nの水酸化ナトリウム溶液を用いた。また、0.1mol/Lの前記塩化カルシウム溶液を作製した。
【0089】
前記バブリングの条件を、5、10、20、30、60秒間とした以外は実施例1と同様にして、前記第1の接触工程を行った。
【0090】
つぎに、前記第1の接触後の前記溶液に、濃度が約0.1N(初濃度を基準にした概算値)となるように、9mLの蒸留水を加えて希釈した。10mLの試験管に、3mLの前記希釈後の前記溶液を入れ、前記溶液に、3mlの0.1mol/Lの前記塩化カルシウム溶液を添加した(第2の接触工程)。前記接触後、実施例1と同様にして、前記混合液を遠心した。そして、実施例1と同様にして、沈殿量を算出した。
【0091】
また、比較例として、以下の実験を行った。1Nの前記水酸化ナトリウム溶液を、0.1Nとなるように、蒸留水で希釈した。10mLの試験管に、3mlの0.1Nの前記水酸化ナトリウム溶液と、3mlの0.1Nの前記塩化カルシウム溶液とを入れて混合し、前記混合液に、前述と同様にして、二酸化炭素をバブリングすることにより、接触させた。前記添加後、同様にして、沈殿量を算出した。
【0092】
これらの結果を、図18に示す。図18は、前記二酸化炭素との接触により、前記混合液において生じた沈殿の重さを示すグラフである。図18において、縦軸は、試験管あたりの前記沈殿の重さ(g)を示し、横軸は、バブリング時間を示し、それぞれ、左のグラフは、前記第1の接触工程および前記第2の接触工程を行った結果を示し、右のグラフは、比較例の結果を示す。なお、前記沈殿の重さの値は、合計3回の測定値の平均値とした。図18に示すように、前記第1の接触工程および前記第2の接触工程を行った結果、いずれのバブリング時間においても、前記沈殿が生じた。5秒〜30秒間のバブリングにおいて、ほぼ同程度の沈殿量が得られた。60秒間のバブリングを行っても、やや減少したものの、十分な量の沈殿量が得られた。前記比較例の場合、5秒〜10秒間のバブリングにおいて、前記沈殿が生じたが、前記第1の接触工程および前記第2の接触工程を行った結果と比較して、沈殿量は半分以下であった。さらに、20秒以上のバブリングを行うと、沈殿量は大きく減少した。
【0093】
以上から、前記第1の接触工程における二酸化炭素を含む気体との接触時間を変えても、二酸化炭素を固定できることを確認できた。また、前記第1の接触工程および前記第2の接触工程を行った場合、前記第1の接触工程および前記第2の接触工程を行わずに、水酸化ナトリウムおよび塩化カルシウムを含む混合液と、二酸化炭素を含む気体とを接触させた場合と比較して、より効率よく二酸化炭素を固定できることが分かった。
【0094】
[参考例1]
容器内において、水酸化ナトリウム(NaOH)、および塩化カルシウム(CaCl)を含む混合液と、二酸化炭素(CO)を含む気体とを、前記気体を前記混合液中にバブリングすることにより接触させることにより、二酸化炭素を固定できることを確認した。
【0095】
1Nの水酸化ナトリウム溶液(和光純薬工業社製)を、それぞれ、0.01、0.02、0.1、0.2、および0.4Nとなるように蒸留水で希釈し、前記各濃度の水酸化ナトリウム溶液を作製した。また、1mol/Lの塩化カルシウム溶液(和光純薬工業社製)を、それぞれ、0.01、0.02、0.1、0.2、および1(無希釈)mol/Lとなるように蒸留水で希釈し、前記各濃度の塩化カルシウム溶液を作製した。
【0096】
10mLの試験管に、3mLの前記各濃度の水酸化ナトリウム溶液と、3mLの0.1mol/Lの前記塩化カルシウム溶液とを入れて混合し、前記混合液に、二酸化炭素(CO100%、小池工業社製)をバブリングすることにより、接触させた。前記バブリングは、パスツールピペットの先端から、二酸化炭素を噴出させた。前記バブリングの条件は、10秒間(約20cm)とした。前記接触後、前記混合液を3,000rpm、10分間の条件で遠心した。そして、前記接触前および後に、前記試験管の重量を測定し、前記接触前および後における前記重量の差を、沈殿量として算出した。なお、後述するように、前記二酸化炭素との接触を行うよりも前に沈殿が生じた場合は、前記沈殿を除去した後、前記接触を行った。
【0097】
この結果を、図1および図2に示す。図1は、前記二酸化炭素との接触前および接触後における、0.05Nの水酸化ナトリウムと0.05mol/Lの塩化カルシウムとを含む混合液の写真であり、図中、左が、前記接触前、右が、前記接触後の試験管の様子を示す。図1に示すように、二酸化炭素を接触させることにより、前記混合液において、炭酸カルシウム(CaCO)の白色沈殿が生じた。なお、前記混合液において、10秒間の前記バブリングが終了するよりも前に、白濁が生じていた。
【0098】
図2は、前記二酸化炭素との接触により、前記混合液において生じた沈殿の重さを示すグラフである。図2において、縦軸は、試験管あたりの前記沈殿の重さ(g)を示し、横軸は、前記混合液における水酸化ナトリウム濃度(N)を示す。なお、前記沈殿の重さの値は、前記各混合液のサンプルについて、合計5サンプルの測定値の平均値とした。図2に示すように、水酸化ナトリウム濃度が0.01N以上において、二酸化炭素を接触させた結果、前記沈殿が生じた。そして、前記濃度が0.05Nにおいて、前記沈殿の量が大きく増加し、0.1Nにおいて、前記沈殿の量が最大であった。一方、前記濃度が0.2Nにおいて、前記0.1Nにおける値と比較して、前記沈殿の量が減少した。前記濃度が0.05〜0.2N、および0.05〜0.1Nにおいて、より多くの二酸化炭素を固定できることが確認できた。
【0099】
なお、水酸化ナトリウム濃度が0.2Nの場合、二酸化炭素との前記接触前において、前記混合液中に白色沈殿の形成がみられた。この白色沈殿は、塩化カルシウムと高濃度の水酸化ナトリウムとの反応により生じた、水酸化カルシウム(Ca(OH))であると考えられる。このため、前記濃度が0.2Nにおいて、前記沈殿の量が減少した理由としては、塩化カルシウムと高濃度の水酸化ナトリウムとの反応により水酸化カルシウムが生じたことで、前記接触による炭酸カルシウムの合成量が減少したためと考えられる。
【0100】
つぎに、3mLの0.1Nの前記水酸化ナトリウム溶液と、3mLの前記各濃度の前記塩化カルシウム溶液とを入れて混合し、前記混合液を作製した以外は同様にして、前記接触を行った。
【0101】
この結果を、図3に示す。図3は、前記二酸化炭素との接触により、前記混合液において生じた沈殿の重さを示すグラフである。図3において、縦軸は、試験管あたりの前記沈殿の重さ(g)を示し、横軸は、前記混合液における塩化カルシウム濃度(mol/L)を示す。なお、前記沈殿の重さの値は、前記各混合液のサンプルについて、合計5サンプルの測定値の平均値とした。図3に示すように、全ての塩化カルシウム濃度において、二酸化炭素を接触させた結果、前記沈殿が生じた。そして、前記濃度が0.05mol/Lにおいて、前記沈殿の量が大きく増加し、0.1mol/Lにおいて、前記沈殿の量が最大であった。前記塩化カルシウム濃度が0.05〜0.5mol/Lにおいて、より多くの二酸化炭素を固定できることが確認できた。
【0102】
なお、前記塩化カルシウム濃度が0.2〜0.5mol/Lの場合、二酸化炭素との前記接触前において、前記混合液中に白色沈殿の形成がみられた。そして、この白色沈殿は、前記接触において、二酸化炭素を添加することにより、消失した。一方、前記塩化カルシウム濃度が、0.1mol/Lおよび0.05mol/Lの場合、前記混合液中に沈殿の形成がみられ、且つ、前記接触を行っても、前記沈殿は消失しなかった。
【0103】
以上のように、容器内において、水酸化ナトリウム、および塩化カルシウムを含む混合液と、二酸化炭素を含む気体とを、前記気体を前記混合液中にバブリングすることにより接触させることにより、二酸化炭素を固定できることが確認できた。
【0104】
[参考例2]
容器内において、水酸化ナトリウム、および塩化カルシウムを含む混合液と、二酸化炭素を含む気体とを、前記混合液を静置または振とうさせた状態で接触させることにより、二酸化炭素を固定できることを確認した。
【0105】
等量の0.1Nの前記水酸化ナトリウム溶液と、0.1mol/Lの前記塩化カルシウム溶液とを混合し、混合液を作製した。容積2Lの一般的な形状のペットボトル(市販のもの)内を大気と平衡にした後、前記ペットボトルに、10mLの前記混合液を入れた。前記ペットボトルを、底面が下になるようにして立てて静置し、前記混合液と二酸化炭素とを接触させた。前記接触後、0分(前記接触直後)、15分、30分、および60分後、ならびにオーバーナイトでの接触後に、二酸化炭素モニター(RI-85、RIKEN KEIKI製)を用いて、前記ペットボトル内の二酸化炭素濃度を測定した。
【0106】
この結果を、図4に示す。図4は、前記接触後の前記ペットボトル内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。図4において、縦軸は、二酸化炭素濃度(PPM)を示し、横軸は、前記接触後の経過時間(分)を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、前記接触後、0分(前記接触直後)、15分、30分、および60分後については、合計4サンプルの測定値の平均値とした。なお、前記オーバーナイトでの接触後においては、合計6サンプルの測定値が、いずれも0PPMであった。図4に示すように、前記接触により、前記接触後の経過時間に応じて、前記ペットボトル内の二酸化炭素濃度が減少した。また、前記オーバーナイトでの接触後、前記二酸化炭素濃度の値が、0PPMとなったことから、本発明によれば、低濃度の二酸化炭素であっても、固定できることがわかった。
【0107】
つぎに、前記ペットボトルに代えて、図5に示す形状の八角柱プラスチックボトルを用いた点、および、前記八角柱プラスチックボトルを、側面が下になるようにして横倒しにして静置した、または、前記八角柱プラスチックボトルを前記横倒しにした状態で振とうした点以外は同様にして、5分間、前記接触を行った。図5(A)は、前記八角柱プラスチックボトルを側面から見た図であり、(B)は、前記八角柱プラスチックボトルを底面から見た図である。前記振とうは、シェイカー(BR-21UM、TAITEK製)を用いて、120rpmの条件で振とうした。
【0108】
この結果を、図6に示す。図6は、前記接触後の前記八角柱プラスチックボトル内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。図6において、縦軸は、二酸化炭素濃度(PPM)を示し、横軸は、左から、前記接触直後(0分)、前記静置による接触後、前記振とうによる接触後を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計4サンプルの測定値の平均値とした。図6に示すように、前記振とうによる接触により、前記接触直後と比較して、前記八角柱プラスチックボトル内の二酸化炭素濃度が減少した。特に、前記振とうによる接触により、前記接触直後と比較して、前記八角柱プラスチックボトル内の二酸化炭素濃度が1/6程度まで大きく減少しており、より多くの二酸化炭素を固定できることが確認できた。
【0109】
なお、前述のように、前記振とうによる接触により、前記静置による接触を行った場合と比較して、前記二酸化炭素濃度がより大きく減少した。この理由としては、前記振とうにより、前記混合液の表面積が増加し、より多くの前記二酸化炭素を含む気体と接触できるようになったためと考えられる。また、前記八角柱プラスチックボトルは、一般的な形状のペットボトルとの比較において、底部がより平面的であり、且つ短寸であるため、より前記混合液の表面積が増加したと考えられる。
【0110】
つぎに、前記振とうの条件を変えて、前記接触を行った。前記八角柱プラスチックボトルに代えて、容積2Lの前記一般的な形状のペットボトルを用いた。前記接触の12時間前に、前記ペットボトルのふたを開け、前記ぺットボトルの口部にパスツールピぺットの先端を挿入し、前記先端から二酸化炭素を注入した。そして、前記ペットボトルに、50mLの前記混合液を入れた後、30秒間の振とうを1回として、1〜6回、成人男性の手で、激しく振とうした。なお、前記1回目の前記振とうによる接触は、前記接触直後に行い、前記2〜6回目の前記振とうによる接触は、それぞれ、前記接触直後から2分経過後、5分経過後、15分経過後、30分経過後、および60分経過後に行った。そして、前記1〜6回の前記接触後に、それぞれ、二酸化炭素検出器(XP-3140、COSMO製)を用いて、二酸化炭素濃度を測定した。
【0111】
また、前記6回目の接触後、さらに、50mLの前記混合液を加え、30秒間激しく振とうした後、二酸化炭素の濃度を測定した。その後、さらに、24時間静置した後、二酸化炭素の濃度を測定した。また、前記24時間静置後、さらに、50mLの前記混合液を加え、30秒間激しく振とうした後、二酸化炭素の濃度を測定した。
【0112】
この結果を、図7に示す。図7は、前記接触後の前記ペットボトル内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。図7において、縦軸は、二酸化炭素濃度(%)を示し、横軸は、左から、前記接触直後(0分)、1回目の前記振とうによる接触後(30秒)、2回目の前記振とうによる接触後(2分)、3回目の前記振とうによる接触後(5分)、4回目の前記振とうによる接触後(15分)、5回目の前記振とう後(30分)、6回目の前記振とう後(60分)、混合液追加後、24時間静置後、混合液再追加後を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計5サンプルの測定値の平均値とした。図7に示すように、1回目の前記接触後(30秒)において、前記接触直後(0分)と比較して、二酸化炭素の濃度は大きく減少した。その後、2〜6回目の前記接触後において、二酸化炭素の濃度は緩やかに減少した。一方、前記混合液の追加により、急激な更なる二酸化炭素濃度の減少を引き起こした。前記混合液の再追加においても、二酸化炭素濃度の顕著な減少が見られた。このように、高濃度の二酸化炭素濃度の状態であっても、前記混合液を再度添加することにより、二酸化炭素濃度の減少を引き起こすことが確認された。
【0113】
さらに、前記振とうの条件を変えて、前記接触を行った。前記ペットボトルに代えて、図19に示す、容積1.85Lのプラスチックボックス(市販のもの)を用いた。なお、図19において、前記プラスチックボックスの内部を透視的に図示している。前記プラスチックボックスに、500mLの0.1Nの前記水酸化ナトリウム溶液と、500mLの0.1mol/Lの前記塩化カルシウム溶液とを入れた後、ハンドミキサー(HM-20,60W、TOSHIBA製)を用いて、フル回転(数字3、「あわだてる−卵白をきめこまかくあわだてる」モード)させることにより、前記接触を行った。そして、前記プラスチックボックス内の二酸化炭素濃度を、前記二酸化炭素モニターを用いて測定した。前記接触開始から約2分後に、二酸化炭素濃度がほぼ一定になったことを確認し、前記接触を終了した。前記接触終了時の二酸化炭素濃度の測定値を取得した。また、コントロールとして、前記プラスチックボックス外の空気の二酸化炭素濃度を測定した。
【0114】
この結果を、図20に示す。図20は、前記接触後の前記プラスチックボックス内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。図20において、縦軸は、二酸化炭素濃度(PPM)を示し、横軸は、左から、コントロール、および前記接触終了時を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計3サンプルの測定値の平均値とした。図20に示すように、前記接触後において、コントロールと比較して、二酸化炭素の濃度は大きく減少した。
【0115】
以上のように、容器内において、水酸化ナトリウム、および塩化カルシウムを含む混合液と、二酸化炭素を含む気体とを、前記混合液を静置または振とうさせた状態で接触させることにより、二酸化炭素を固定できることが確認できた。
【0116】
[参考例3]
容器内において、水酸化ナトリウム、および塩化カルシウムを含む混合液と、二酸化炭素を含む気体とを、前記混合液を霧状にした状態で接触させることにより、二酸化炭素を固定できることを確認した。
【0117】
参考例2と同様にして、前記水酸化ナトリウムと前記塩化カルシウムとを含む混合液を作製した。前記容積2Lの一般的な形状のペットボトルを用い、参考例2と同様にして、前記ペットボトル内を大気と平衡にした。その後、前記ペットボトルに、約4mLの前記混合液を、噴霧器(市販のもの)を用いて、5秒間隔で10回噴霧することにより、前記混合液と二酸化炭素とを接触させた。前記接触は、図8に示すように、前記ペットボトルを、側面が下になるようにして横向きにして使用し、水平方向に前記噴霧を行った。前記接触後直ちに、参考例2と同様にして、前記ペットボトル内の二酸化炭素濃度を測定した。
【0118】
この結果を、図9に示す。図9は、前記接触後の前記ペットボトル内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。図9において、縦軸は、二酸化炭素濃度(PPM)を示し、横軸は、左から、前記接触直後(0分)、前記噴霧による接触後を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計4サンプルの測定値の平均値とした。図9に示すように、前記噴霧による接触により、前記接触直後と比較して、前記ペットボトル内の二酸化炭素濃度が1/6程度まで大きく減少した。
【0119】
このように、前記噴霧による接触により、短時間で、前記二酸化炭素濃度が大きく減少した。この理由としては、前記混合液を霧状にした状態で接触させることにより、前記混合液の表面積が大きく増加し、より多くの前記二酸化炭素を含む気体と接触できるようになったためと考えられる。
【0120】
つぎに、前記噴霧の条件を変えて、前記接触を行った。前記接触を行うための接触手段は、以下のようにして作製した。図10に示すように、牛乳パックである箱(市販のもの)2個をL字型に連結し、下部の前記箱の側面の2箇所に、部分的に切取ることにより孔を開け、前記孔からシリコンチューブを挿入することにより、空気注入部、および二酸化炭素注入部をそれぞれ設けた。また、下部の前記箱の上面に、同様にして孔を開け、前記噴霧器から、前記箱の内部に前記混合液を噴霧できるようにした。上部および下部の前記箱の連結部は、それぞれ、大きな切り口を開けることで、下部の箱から上部の箱に二酸化炭素が上昇できるようにした。前記連結部には、4重のガーゼ(市販のもの)により、ガーゼ層を設けた。上部の前記箱の上面は、開放させた。また、上部の前記箱の側面に、同様にして孔を開け、二酸化炭素濃度検出器(XP-3140、COSMO製)のノズルを設置した。
【0121】
前記空気注入部からの空気の流量を、約100cm/秒、前記二酸化炭素注入部からの二酸化炭素の流量を、10cm/秒として、二酸化炭素濃度の測定値が一定になるまで、注入を行った。その後、前記噴霧器から、前記混合液を、10回連続で噴霧した。前記混合液の噴霧量は、10回で合計約4mLであった。前記噴霧後、約20秒後に、二酸化炭素濃度の測定値が最低値となった。
【0122】
この結果を、図11に示す。図11は、前記接触後約20秒後に、前記二酸化炭素の測定値が最低値となった時の、前記箱内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。図11において、縦軸は、二酸化炭素濃度(%)を示し、横軸は、左から、前記接触前、前記噴霧による接触後を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計10サンプルの測定値の平均値とした。図11に示すように、前記噴霧による接触により、前記接触直後と比較して、前記箱内の二酸化炭素濃度が減少した。
【0123】
このように、前記接触手段が開放系である場合においても、前記混合液により、二酸化炭素を吸収できることが確認できた。さらに、噴霧した前記混合液の量が、約4mLという少量であったことから、前記混合液の量が少量であっても、高濃度の二酸化炭素濃度を十分に下げることができることがわかった。このことから、本発明の反応系は、反応効率が極めて優れているといえる。
【0124】
以上のように、容器内において、水酸化ナトリウム、および塩化カルシウムを含む混合液と、二酸化炭素を含む気体とを、前記混合液を霧状にした状態で接触させることにより、二酸化炭素を固定できることが確認できた。
【0125】
[参考例4]
水酸化ナトリウム、および塩化カルシウムを含む混合液と、二酸化炭素を含む気体とを、前記気体を前記混合液中にバブリングすることにより接触させることにより、二酸化炭素を固定できることを確認した。
【0126】
参考例2と同様にして、0.05Nの前記水酸化ナトリウムと0.05mol/Lの前記塩化カルシウムとを含む混合液を作製した。500mlの前記混合液を、プラスチックボトル(市販のもの、幅7.5cm、奥行7.5cm、高さ12cm)に入れ、図21に示すように、前記混合液に、水槽生物用のバブリング装置(製品名:ブクブク(セットに含まれるエアポンプ、ホース、およびエアストーンを組立てたもの)、コトブキ工芸株式会社製)を用いて、空気をバブリングすることにより接触させた。なお、図21において、前記プラスチックボトルの内部を透視的に図示している。前記バブリングは、20cm/秒の条件で、9時間、および12時間行った。前記バブリングにおけるバブルのサイズを、スケールと比較することにより目視で測定した結果、マイクロメートル〜ミリメートルのオーダーであった。前記接触後、5mLの前記混合液を取得し、3,000rpm、10分間の条件で遠心した後、沈殿物を秤量した。また、前記空気に代えて、前記空気に前記二酸化炭素を混合することにより二酸化炭素濃度を15%にした混合空気を用い、前記バブリングを1.5時間行った以外は同様にして、実験を行った。
【0127】
この結果を、図22に示す。図22は、前記二酸化炭素との接触により、前記混合液において生じた沈殿の重さを示すグラフである。図22において、縦軸は、前記沈殿の重さ(g)を示し、横軸は、各実験条件を示す。なお、前記沈殿の重さの値は、前記各混合液のサンプルについて、合計4サンプルの測定値の平均値とした。図22に示すように、前記空気、および前記混合空気のバブリングにより、沈殿が生じた。前記空気のバブリングにおいて、時間経過に応じて、沈殿量が増加していた。
【0128】
つぎに、容器の形態を変えて、実験を行った。前記容器として、前記プラスチックボトルに代えて、直径40mm、高さ50cmの塩化ビニル製のパイプ(市販のもの)を用いた。前記パイプは、底部となる一端にパイプキャップ(市販のもの)を取付けた。図23は、前記パイプの形態を説明する概略図である。なお、図23において、前記パイプの内部を透視的に図示している。また、参考例1と同様にして、0.1Nの前記水酸化ナトリウム溶液および0.1mol/Lの前記塩化カルシウム溶液を作製した。250mlの前記水酸化ナトリウム溶液および250mlの前記塩化カルシウム溶液を、前記パイプに入れ、前記混合液に、前述と同様にして、約1分間、空気をバブリングすることにより接触させた。前記接触後、前記パイプの上部空間(高さ約14cm)における気体について、参考例2と同様にして、二酸化炭素濃度を測定した。また、前記空気の二酸化炭素濃度を、同様にして測定した。
【0129】
この結果を、図24に示す。図24は、前記接触後の前記パイプ内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。図24において、縦軸は、二酸化炭素濃度(PPM)を示し、横軸は、左から、前記空気(Air)、および前記パイプの上部空間における気体(Inner Pipe)を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計9サンプルの測定値の平均値とした。図24に示すように、前記接触により、前記パイプ内の二酸化炭素濃度が大きく減少した。
【0130】
つぎに、前記空気に代えて、前記空気に前記二酸化炭素を混合することにより二酸化炭素濃度を10%にした混合空気を用いた以外は同様にして、実験を行った。
【0131】
この結果を、図25に示す。図25は、前記接触後の前記パイプ内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。図25において、縦軸は、二酸化炭素濃度(%)を示し、横軸は、左から、各実験条件を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計3サンプルの測定値の平均値とした。図25に示すように、前記接触により、前記パイプ内の二酸化炭素濃度が減少した。
【0132】
つぎに、前記混合液の量を変えて、実験を行った。参考例2と同様にして、0.05Nの前記水酸化ナトリウムと0.05mol/Lの前記塩化カルシウムとを含む混合液を作製した。前記パイプに、100、200、300、400、および500mlの前記混合液を入れ、前記混合液に、前述と同様にして、1〜2分間、空気をバブリングすることにより接触させた。なお、前記各条件において、前記パイプの底面からの前記混合液の液面の高さは、それぞれ、7、14、22、29、36cmであった。前記接触後、前記パイプの上部空間(前記パイプの上端から約10cmの位置)における気体について、参考例2と同様にして、二酸化炭素濃度を測定した。また、前記空気の二酸化炭素濃度を、同様にして測定した。
【0133】
この結果を、図26に示す。図26は、前記接触後の前記パイプ内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。図26において、縦軸は、二酸化炭素濃度(PPM)を示し、横軸は、左から、前記空気(Control)、および前記液面の高さを示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計3サンプルの測定値の平均値とした。図26に示すように、前記接触により、前記液面の高さが、7cmであっても、前記パイプ内の二酸化炭素濃度が大きく減少した。また、前記液面の高さ(前記混合液の量)が大きくなるに従って、二酸化炭素濃度はより減少した。
【0134】
つぎに、前記接触の形態を変えて、実験を行った。参考例2と同様にして、0.05Nの前記水酸化ナトリウムと0.05mol/Lの前記塩化カルシウムとを含む混合液を作製した。前記パイプに、500mlの前記混合液を入れ、前述と同様にして、1〜2分間、空気をバブリングすることにより接触させた。一方、前記接触において、前記バブリング装置の前記ホースの先端に接続した前記エアストーンを取り外して、前記ホース(直径約5mm、シリコン製)から直接空気をバブリングすることにより接触させた以外は同様にして、実験を行った。前記バブリングにおけるバブルのサイズを、スケールと比較することにより目視で測定した結果、ミリメートル〜センチメートルのオーダーであった。前記接触後、前述と同様にして、二酸化炭素濃度を測定した。また、前記空気の二酸化炭素濃度を、同様にして測定した。
【0135】
この結果を、図27に示す。図27は、前記接触後の前記パイプ内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。図27において、縦軸は、二酸化炭素濃度(PPM)を示し、横軸は、左から、前記空気(Control)、前記エアストーンからバブリングした場合(Ball)、および前記ホースからバブリングした場合(Tube)を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計4サンプルの測定値の平均値とした。図27に示すように、前記エアストーンからバブリングすることにより、前記パイプ内の二酸化炭素濃度が大きく減少した(4.27%まで減少)。一方、前記ホースからバブリングした場合、二酸化炭素濃度は減少した(69.49%まで減少)が、前記エアストーンからバブリングした場合と比較して、減少量は少なかった。このことから、前記バブリングにおけるバブルのサイズが小さいことが、二酸化炭素の吸収において重要であることがわかった。
【0136】
以上のように、水酸化ナトリウム、および塩化カルシウムを含む混合液と、二酸化炭素を含む気体とを、前記気体を前記混合液中にバブリングすることにより接触させることにより、二酸化炭素を固定できることを確認できた。
【0137】
[参考例5]
水酸化ナトリウムを含む溶液と二酸化炭素を含む気体とを接触させることにより、二酸化炭素を吸収できることを確認した。
【0138】
参考例1と同様にして、0.05Nの前記水酸化ナトリウム溶液を作製した。前記容積2Lの一般的な形状のペットボトルを用い、参考例2と同様にして、前記ペットボトル内を大気と平衡にした。その後、前記ペットボトルに、10mLの前記水酸化ナトリウム溶液を入れ、静置することにより、前記溶液と大気中の二酸化炭素とを接触させた。前記接触後、0分(接触直後)、15分、30分、60分後に、参考例2と同様にして、前記ペットボトル内の二酸化炭素濃度を測定した。
【0139】
この結果を、図28に示す。図28は、前記接触後の前記ペットボトル内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。図28において、縦軸は、二酸化炭素濃度(PPM)を示し、横軸は、前記接触後の経過時間(分)を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計3サンプルの測定値の平均値とした。図28に示すように、前記接触により、前記接触直後と比較して、15分、30分、60分後に、前記ペットボトル内の二酸化炭素濃度が減少した。
【0140】
つぎに、前記接触の形態を変えて、前記接触を行った。前記ペットボトルに代えて、図29に示す、容積2Lのプラスチックボックス(市販のもの)を用いた。なお、図29において、前記プラスチックボックスの内部を透視的に図示している。前記プラスチックボックスに、500mLの0.1Nの前記水酸化ナトリウム溶液を入れた後、図29に示すように、前記プラスチックボックスの上面をプラスチック製のプレートで覆った。前記溶液に、バブリング装置(製品名:Micro bubbler(F-1056-002)、フロント工業株式会社製)を用いて、空気をバブリングすることにより接触させた。前記バブリングは、20cm/秒の条件で行った。前記バブリングにおけるバブルのサイズを、スケールと比較することにより目視で測定した結果、マイクロメートル〜ミリメートルのオーダーであった。そして、前記接触開始直後(0分)、5分後、10分後、および15分後に、前記プラスチックボックス内の上部空間の二酸化炭素濃度を、前記二酸化炭素モニターを用いて測定した。
【0141】
この結果を、図30に示す。図30は、前記接触後の前記プラスチックボックス内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。図30において、縦軸は、二酸化炭素濃度(PPM)を示し、横軸は、左から、前記接触開始直後(0 time)、5分後(5 min)、10分後(10 min)、および15分後(15 min)を示す。図30に示すように、前記接触開始から5分後には、前記プラスチックボックス内の二酸化炭素濃度が大きく減少した。その後、前記接触後の経過時間に応じて、二酸化炭素濃度は徐々に減少した。
【0142】
つぎに、容器の形態を変えて、実験を行った。前記容器として、前記プラスチックボトルに代えて、参考例4に記載の前記パイプを用いた。前記パイプに、200mlの0.1Nの前記水酸化ナトリウム溶液を入れ、前記溶液に、前述と同様にして、二酸化炭素濃度を10%にした前記混合空気をバブリングすることにより接触させた。そして、前記接触開始から5分後まで継続して、前記パイプ内の上部空間の二酸化炭素濃度を、前記二酸化炭素モニターを用いて測定した。また、1Nの前記水酸化ナトリウム溶液を用いた以外は同様にして、2分後まで二酸化炭素濃度を測定した。
【0143】
この結果を、図31に示す。図31は、前記接触開始から2分後の前記パイプ内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。図31において、縦軸は、二酸化炭素濃度(PPM)を示し、横軸は、前記水酸化ナトリウム溶液の濃度を示す。図31に示すように、0.1Nの前記水酸化ナトリウム溶液を用いた場合、前記パイプ内の二酸化炭素濃度が、前記接触開始直後から急速に減少し、2分後において、前記接触開始直後の値と比較して、7.5%まで減少した。その後、前記接触開始から5分後まで、前記濃度はほぼ一定の値であった。また、1Nの前記水酸化ナトリウム溶液を用いた場合、同様に、前記パイプ内の二酸化炭素濃度が、前記接触開始直後から急速に減少し、2分後において、「0」になった。
【0144】
以上のように、水酸化ナトリウムを含む溶液と二酸化炭素を含む気体とを接触させることにより、二酸化炭素を吸収できることを確認できた。
【0145】
[参考例6]
水酸化ナトリウムを含み、さらに、第2族元素の塩化物、および2価の金属元素の塩化物を含む混合液と、二酸化炭素を含む気体とを接触させることにより、二酸化炭素を固定できることを確認した。
【0146】
第2族元素の塩化物、および2価の金属元素の塩化物として、塩化マグネシウム(MgCl、和光純薬工業社製)、塩化亜鉛(ZnCl、和光純薬工業社製)、塩化ストロンチウム(SrCl、和光純薬工業社製)、塩化バリウム(BaCl、和光純薬工業社製)を用いた。前記塩化物を、それぞれ、蒸留水で希釈し、0.1mol/Lの各金属塩化物溶液を作製した。また、参考例1と同様にして、0.1Nの前記水酸化ナトリウム溶液を作製した。
【0147】
2mLの前記各金属塩化物溶液と、1mLの前記水酸化ナトリウム溶液を混合した。前記混合液に、参考例1と同様にして、二酸化炭素をバブリングすることにより、接触させた。前記混合後、および前記二酸化炭素との接触後、参考例1と同様にして、沈殿量を算出した。
【0148】
この結果を、図32に示す。図32は、前記二酸化炭素との接触により、前記混合液において生じた沈殿の重さを示すグラフである。図32において、縦軸は、試験管あたりの前記沈殿の重さ(g)を示し、横軸は、前記混合液に含まれる各金属塩化物を示し、それぞれ、左のグラフが前記混合後、右のグラフが前記二酸化炭素との接触後を示す。なお、前記沈殿の重さの値は、前記各混合液のサンプルについて、合計4サンプルの測定値の平均値とした。図32に示すように、前記塩化マグネシウム溶液および前記塩化亜鉛溶液を用いた場合、前記混合後、沈殿量が大きく増加し、前記二酸化炭素との接触後、沈殿量が減少した。また、前記塩化ストロンチウム溶液および前記塩化バリウム溶液を用いた場合、前記混合後、沈殿量が増加し、前記二酸化炭素との接触後、沈殿量がさらに増加した。
【0149】
つぎに、前記第2族元素の塩化物、および前記2価の金属元素の塩化物を用いて、前記接触後の二酸化炭素濃度を測定した。
【0150】
前記容器として、参考例4に記載の前記パイプを使用した。50mlの0.1Nの前記水酸化ナトリウム溶液および50mlの0.1mol/Lの各金属塩化物溶液を、前記パイプに入れ、前記混合液に、前記参考例4と同様にして、空気をバブリングすることにより接触させた。前記接触後、前記パイプの上部空間(高さ約14cm)における気体について、参考例2と同様にして、二酸化炭素濃度を測定した。前記測定において、前記接触から2〜3分後に、二酸化炭素濃度の値がほぼ一定になったことを確認し、この値を測定値とした。また、コントロールとして、前記空気の二酸化炭素濃度を、同様にして測定した。
【0151】
この結果を、図33に示す。図33は、前記接触後の前記パイプ内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。図33において、縦軸は、二酸化炭素濃度(PPM)を示し、横軸は、各金属塩化物を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計3サンプルの測定値の平均値とした。図33に示すように、前記接触により、いずれの金属塩化物を用いた場合においても、コントロールの値と比較して、前記パイプ内の二酸化炭素濃度が減少した。特に、前記塩化ストロンチウム溶液および前記塩化バリウム溶液を用いた場合、前記二酸化炭素濃度が大きく減少した。
【0152】
以上のように、水酸化ナトリウムを含み、さらに、第2族元素の塩化物、および2価の金属元素の塩化物を含む混合液と、二酸化炭素を含む気体とを接触させることにより、二酸化炭素を固定できることを確認できた。
【0153】
[参考例7]
水酸化ナトリウム、および塩化カルシウムを含む混合液と、二酸化炭素を含む気体とを、所定の温度条件下で接触させることにより、二酸化炭素を固定できることを確認した。
【0154】
参考例2と同様にして、0.05Nの前記水酸化ナトリウムと0.05mol/Lの前記塩化カルシウムとを含む混合液を作製した。10mLの試験管に、3mLの前記各濃度の水酸化ナトリウム溶液と、3mLの0.1mol/Lの前記塩化カルシウム溶液とを入れて混合し、前記混合液に、参考例1と同様にして、二酸化炭素をバブリングすることにより接触させた。前記バブリングは、2cm/秒の条件で、10秒間行った。前記接触において、前記混合液の温度を、Unithermo Shaker NTS-120, EYLEA, (Tokyo Rikakikai Co., Ltd.)を用いて、それぞれ、5℃、20℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃に保持した。前記接触後、参考例1と同様にして、沈殿量を算出した。
【0155】
この結果を、図34に示す。図34は、前記二酸化炭素との接触により、前記混合液において生じた沈殿の重さを示すグラフである。図34において、縦軸は、試験管あたりの前記沈殿の重さ(g)を示し、横軸は、温度を示す。なお、前記沈殿の重さの値は、前記温度ごとに、実験を3〜5回行い、各実験において4〜8サンプルの測定値を取得し、これらの測定値の平均値とした。図34に示すように、いずれの温度条件下においても、前記二酸化炭素との接触後、沈殿が生成した。前記沈殿量は、前記混合液の温度が5℃から60℃の間では、ほぼ一定の値であり、70℃において大きく増加した。前記混合液の温度が80℃においても、5℃から60℃の間における前記一定の値よりも大きい値が得られた。
【0156】
以上のように、水酸化ナトリウム、および塩化カルシウムを含む混合液と、二酸化炭素を含む気体とを、所定の温度条件下で接触させることにより、二酸化炭素を固定できることを確認できた。特に、前記二酸化炭素の固定が、高温での処理に適していることを確認できた。
【0157】
以上、実施形態および実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0158】
以上のように、本発明によれば、新たな、二酸化炭素の固定方法を提供することができる。このため、本発明は、二酸化炭素を含む燃焼排ガスの処理等において、極めて有用といえる。
【要約】
新たな、二酸化炭素の固定方法を提供する。
本発明の二酸化炭素の固定方法は、第1の接触工程および第2の接触工程を含み、前記第1の接触工程は、水酸化ナトリウムを含む溶液と、二酸化炭素を含む気体とを接触させ、前記第2の接触工程は、前記第1の接触工程後、前記溶液に、第2族元素の塩化物、および2価の金属元素の塩化物の少なくとも一方を添加する。
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