特許第6788215号(P6788215)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6788215
(24)【登録日】2020年11月4日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】小便器装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 13/00 20060101AFI20201116BHJP
   E03D 9/02 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   E03D13/00
   E03D9/02
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-122813(P2016-122813)
(22)【出願日】2016年6月21日
(65)【公開番号】特開2017-227007(P2017-227007A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2019年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(72)【発明者】
【氏名】諸富 洋
(72)【発明者】
【氏名】原 知弘
【審査官】 七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−069872(JP,A)
【文献】 特開2015−183506(JP,A)
【文献】 特開2014−211034(JP,A)
【文献】 特開2001−132046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00 −13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小便器に設けられたボウル部の表面に対して、液滴化された洗浄水を上方から下方に向かって噴霧する第1の洗浄手段と、
前記第1の洗浄手段に洗浄水を供給する第1の洗浄流路と、
前記第1の洗浄流路への洗浄水の通水を制御する通水制御手段と、
前記通水制御手段を制御する制御部と、
前記通水制御手段の下流に設けられ、前記第1の洗浄流路から分岐した迂回流路と、
前記迂回流路に設けられ、前記第1の洗浄流路内の水圧が高まった際に水圧を逃がすことが可能な安全弁と、
を備えた小便器装置。
【請求項2】
前記ボウル部の前記表面を上方から下方へ向かって洗浄する第2の洗浄手段と、
前記第2の洗浄手段に洗浄水を供給する第2の洗浄流路と、
をさらに備え、
前記通水制御手段は、前記第2の洗浄流路への洗浄水の通水を制御し、
前記迂回流路は、前記第1の洗浄流路と、前記2の洗浄流路の前記通水制御手段の下流と、を連通する請求項1記載の小便器装置。
【請求項3】
前記第1の洗浄流路上に設けられた電解槽をさらに備え、
前記制御部は、前記第1の洗浄流路に洗浄水を通す際に前記電解槽を通電状態とし、
前記迂回流路は、前記第1の洗浄流路の前記電解槽よりも上流から分岐する請求項1または2に記載の小便器装置。
【請求項4】
前記迂回流路の径は、前記第1の洗浄手段の吐水口の径よりも大きい請求項1〜3のいずれか1つに記載の小便器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、小便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
小便器装置において、整流吐水と噴霧吐水とで小便器のボウル部表面を洗浄する技術がある(特許文献1)。特許文献1に開示された技術では、整流吐水を行う第1の洗浄水供給手段と、噴霧吐水を行う第2の洗浄水供給手段と、が設けられており、洗浄水の流路は、第1の洗浄水供給手段へ洗浄水が流れる流路と、第2の洗浄水供給手段へ洗浄水が流れる流路と、に分かれている。噴霧吐水を行う第2の洗浄水供給手段の吐水口は小さいものであるため、例えば使用者のいたずらなどによって、詰まることがありうる。また、第2の洗浄水供給手段の吐水口は、長期間の使用によって、洗浄水中に含まれているカルシウム等に起因する詰まりが発生することもありうる。第2の洗浄水供給手段の吐水口が詰まると、第2の洗浄水供給手段へ洗浄水が流れる流路中において漏水が発生するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−183505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、噴霧吐水を行う洗浄手段を備え、漏水を抑制することができる小便器装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、小便器に設けられたボウル部の表面に対して、上方から下方に向かって液滴化された洗浄水を噴霧する第1の洗浄手段と、前記第1の洗浄手段に洗浄水を供給する第1の洗浄流路と、前記第1の洗浄流路への洗浄水の通水を制御する通水制御手段と、前記通水制御手段を制御する制御部と、前記通水制御手段の下流に設けられ、前記第1の洗浄流路から分岐した迂回流路と、前記迂回流路に設けられ、前記第1の洗浄流路内の水圧が高まった際に水圧を逃がすことが可能な安全弁と、を備えた小便器装置である。
【0006】
この小便器装置によれば、第1の洗浄手段に詰まりが発生し、第1の洗浄流路の水圧が高くなっても、洗浄水は、迂回流路へ流れることができる。これにより、第1の洗浄流路における漏水を抑制することができる。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、前記ボウル部の前記表面を上方から下方へ向かって洗浄する第2の洗浄手段と、前記第2の洗浄手段に洗浄水を供給する第2の洗浄流路と、をさらに備え、前記通水制御手段は、前記第2の洗浄流路への洗浄水の通水を制御し、前記迂回流路は、前記第1の洗浄流路と、前記2の洗浄流路の前記通水制御手段の下流と、を連通する小便器装置である。
【0008】
この小便器装置によれば、第1の洗浄手段に詰まりが発生し、第1の洗浄流路の水圧が高くなっても、洗浄水は、迂回流路を介して第2の洗浄流路へ流れることができる。これにより、第1の洗浄手段における漏水を抑制することができる。
【0009】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記第1の洗浄流路上に設けられた電解槽をさらに備え、前記制御部は、前記第1の洗浄流路に洗浄水を通す際に前記電解槽を通電状態とし、前記迂回流路は、前記第1の洗浄流路の前記電解槽よりも上流から分岐する小便器装置である。
【0010】
この小便器装置によれば、第1の洗浄手段から電解水を噴霧することができ、小便器をよりきれいに洗浄することができる。一方、電解槽では、通電によって洗浄水中のマグネシウムやカルシウムに起因するスケールが発生しやすく、このスケールによって電解槽が詰まる場合がある。これに対して、電解槽よりも上流から迂回流路が分岐することにより、電解槽及びその下流側で詰まりが発生しても、第1の洗浄流路における水圧の上昇を抑制することができる。
【0011】
第4の発明は、第1〜第3のいずれか1つの発明において、前記迂回流路の径は、前記第1の洗浄手段の吐水口の径よりも大きい小便器装置である。
【0012】
この小便器装置によれば、迂回流路は第1の洗浄手段よりも詰まりにくい。したがって、より確実に第1の洗浄流路における水圧の上昇を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の態様によれば、噴霧吐水を行う洗浄手段を備え、漏水を抑制することができる小便器装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る小便器装置の要部構成を表すブロック図である。
図2】本実施形態に係る小便器装置を表す斜視図である。
図3図3(a)及び図3(b)は、ボウル部に供給される洗浄水の領域を表す斜視図である。
図4】本実施形態の第1の洗浄手段の一部を例示する断面図である。
図5図5(a)及び図5(b)は、本実施形態の第1の洗浄手段の特性を例示する図である。
図6図6(a)及び図6(b)は、本実施形態の第1の洗浄手段が噴霧する洗浄水の形状を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る小便器装置の要部構成を表すブロック図である。
なお、図1は、水路系と電気系との要部構成を併せて表している。
本実施形態に係る小便器装置100は、第1の洗浄流路11と、第1の洗浄手段21と、第2の洗浄流路12と、第2の洗浄手段22と、迂回流路40と、安全弁50と、小便器170と、通水制御手段30(電磁弁31及び電磁弁32)と、制御部110と、を備える。また、小便器装置100は、フィルタ付き止水栓60、流量調整弁61、流量調整弁62、フィルタ70、逆止弁71、機能水生成手段150、フィルタ72及び人体検知手段120を備えていてもよい。
【0017】
小便器170は、男子用小便器である。小便器170は、ボウル部(すり鉢状部)171を有する。
【0018】
フィルタ付き止水栓60は、図示しない給水源(例えば水道またはタンク等)に接続されている。これにより、小便器装置100に洗浄水が供給される。洗浄水の流路は、フィルタ付き止水栓60の下流において、第1の洗浄流路11と、第2の洗浄流路12と、に分岐している。
【0019】
第1の洗浄流路11は、その下流に接続された第1の洗浄手段21に洗浄水を供給する流路である。第1の洗浄手段21は、散水ノズルであり、ボウル部171の表面に対して、上方から下方に向かって液滴化された洗浄水(霧状の水)を噴霧する。また、第1の洗浄流路11には、上流から順に、流量調整弁61、フィルタ70、電磁弁31(通水制御手段30)、逆止弁71、機能水生成手段150、フィルタ72が設けられている。
【0020】
電磁弁31は、第1の洗浄流路11への洗浄水の通水を制御する。すなわち、電磁弁31が開状態となることで、洗浄水は、第1の洗浄流路11中を流れて第1の洗浄手段21に供給される。電磁弁31が閉状態の場合は、洗浄水は電磁弁31を通って流れない。
【0021】
機能水生成手段150は、例えば、陽極板及び陰極板を有する電解槽である。電解槽を通電状態とすることで、給水源から供給された洗浄水(水道水)を、陽極板と陰極板との間で電気分解することができる。ここで、水道水は、塩化物イオンを含んでおり、塩化物イオンを電気分解することにより次亜塩素酸が生成される。その結果、機能水生成手段150において電気分解された水(電解水)は、次亜塩素酸を含む洗浄水(機能水)となる。
次亜塩素酸は、消臭成分あるいは除菌(殺菌)成分として機能する。次亜塩素酸を含む液は、アンモニアを溶解したり、分解したり、あるいは一般細菌などを除菌したりすることができる。
【0022】
なお、機能水生成手段150が生成する機能水は、次亜塩素酸を含む液に限定される訳ではない。例えば、機能水は、銀イオンや銅イオンなどの金属イオンを含む液体、電解塩素やオゾンなどを含む液体、酸性水またはアルカリ水などであってもよい。
【0023】
逆止弁71は、生成された機能水が第1の洗浄手段21側へ流れるようにし、上流(給水源側)へ流れることを防ぐ。
【0024】
第2の洗浄流路12は、その下流に接続された第2の洗浄手段22に洗浄水を供給する流路である。第2の洗浄手段22は、整流吐水を実行するスプレッダであり、ボウル部171の表面を上方から下方に向かって洗浄する。また、第2の洗浄流路12には、上流から順に、流量調整弁62、電磁弁32(通水制御手段30)が設けられている。
【0025】
電磁弁32は、第2の洗浄流路12への洗浄水の通水を制御する。すなわち、電磁弁32が開状態となることで、洗浄水は、第2の洗浄流路12中を流れて第2の洗浄手段22に供給される。電磁弁32が閉状態の場合は、洗浄水は電磁弁32を通って流れない。
【0026】
なお、この例では、通水制御手段30として2つの電磁弁31及び32を用いているが、通水制御手段30は、例えば流路切替弁であってもよい。流路切替弁を用いる場合には、流路切替弁は、洗浄水の流路が第1の洗浄流路11と第2の洗浄流路12とに分岐する位置(分岐点74)に設けられる。これにより、供給された水が第1の洗浄流路11へ導かれる状態と、第2の洗浄流路12へ導かれる状態と、が切り替えられる。
【0027】
迂回流路40は、電磁弁31の下流側に設けられ、第1の洗浄流路11から分岐している。具体的には、迂回流路40は、逆止弁71と機能水生成手段150との間において第1の洗浄流路11から分岐した流路である。迂回流路40は、第1の洗浄流路11と、第2の洗浄流路12の電磁弁32の下流と、を連通する。
【0028】
安全弁50は、迂回流路40に設けられている。安全弁50に掛かる水圧が低い場合には、安全弁50は閉状態であり、洗浄水は安全弁50を通って流れない。安全弁50に掛かる水圧が所定の値以上となると、安全弁50は開状態となり、洗浄水は安全弁50を通って流れることができる。
【0029】
制御部110は、例えばマイコンなどの回路であり、電磁弁31、電磁弁32及び機能水生成手段150を制御する。すなわち、電磁弁31及び32は、制御部110から送信される信号に基づいて、開状態又は閉状態となる。また、機能水生成手段150は、制御部110から送信される信号に基づいて、通電状態又は非通電状態となる。
【0030】
人体検知手段120は、小便器170の前方にいる使用者、すなわち小便器170から前方へ離間した位置に存在する使用者を検知することができる。このような人体検知手段120としては、例えば、赤外線投受光式の測距センサや、焦電センサや、ドップラーセンサなどのマイクロ波センサなどを用いることができる。制御部110は、人体検知手段の検知結果に基づいて、電磁弁31、電磁弁32及び機能水生成手段150を制御することができる。
【0031】
このように実施形態に係る小便器装置100は、整流吐水を行うスプレッダ(第2の洗浄手段22)と、噴霧吐水を行う散水ノズル(第1の洗浄手段21)と、を有する。整流吐水によって、使用者の排尿後に、ボウル部171の表面に付着した尿や体毛を洗い流すことができる。そして、噴霧吐水によって、例えば、ボウル部171の表面のうち、整流吐水では洗浄しづらい箇所を洗浄する。
【0032】
また、制御部110は、第1の洗浄流路11に洗浄水を通す際に、電解槽(機能水生成手段150)を通電状態とする。これにより、第1の洗浄手段21から洗浄水として電解水(機能水)が噴霧され、小便器170をよりきれいな状態とすることができる。
【0033】
このような小便器装置において、第1の洗浄手段21の吐水口の径(例えば図4に示す径D)は、洗浄水を霧状とするために比較的小さくされる。また、機能水生成手段150で生成される次亜塩素酸などの濃度を確保する観点からも、第1の洗浄手段21の吐水口の径は小さくされ、第1の洗浄流路11の流量(リットル/分)が抑えられる。例えば、第1の洗浄流路11の流量は、第2の洗浄流路12の流量よりも少ない。一例としては、流量調整弁61は、第1の洗浄流路11の流量を0.45(リットル/分)程度に設定し、流量調整弁62は、第2の洗浄流路12の流量を9(リットル/分)程度に設定する。また、流量の違いにより、第1の洗浄流路11の径、および、第1の洗浄手段21の吐水口の径は、それぞれ、第2の洗浄流路12の径よりも小さい。なお、流路の径とは、その流路の最も狭い部分における内径(最小径)をいうものとする。
【0034】
一方、小さな径を有する散水ノズルの吐水口では、詰まりが発生し易い場合がある。例えば、小便器装置を長期間使用すると、水質によっては、洗浄水中のカルシウムやマグネシウムに起因するスケールの堆積により、散水ノズルの吐水口が閉塞することが考えられる。また、散水ノズルやスプレッダは、小便器の上部に設けられるため、大便器などの噴霧装置とは異なり、使用者の顔に比較的近い。このため、小便器では、使用者のいたずらによって散水ノズルが詰まってしまう恐れがある。散水ノズルが詰まると、第1の洗浄流路内の圧力が上昇し、漏水が引き起こされる恐れがある。
【0035】
これに対して、実施形態に係る小便器装置100には、第1の洗浄流路11から分岐し安全弁50が設けられた迂回流路40が設けられている。第1の洗浄手段21において詰まりが発生しても、第1の洗浄流路11中の水圧が所定値以上となると安全弁50が開き、洗浄水は迂回流路40を介して第2の洗浄流路12へ流れる。このため、第1の洗浄流路11中における水圧が高くなり過ぎることを抑制することができる。これにより、第1の洗浄流路11における漏水を抑制することができる。
【0036】
また、迂回流路40の径は、第1の洗浄手段21の吐水口の径よりも大きい。このため、迂回流路40は、第1の洗浄手段21よりも詰まりにくく、より確実に水圧の上昇を抑制することができる。
【0037】
実施形態においては、迂回流路40を第2の洗浄流路12ではなく、ボウル部171内へ直接接続してもよい。但し、この場合には、迂回流路40の端部(吐水口)がボウル部171内の使用者から見える部分に露出して、意匠性が低下することがある。また、ライニング内に機能部(制御部110や流路の一部など)が設置される場合、迂回流路40をボウル部171に直接接続することは施工性の低下を招くことがある。これに対して、図1に表した例のように迂回流路40を第2の洗浄流路12に接続することで、迂回流路40の端部が使用者の目に見える部分に露出しないため、小便器装置100の意匠性及び施工性の低下を抑制できる。
【0038】
また、機能水生成手段150として電解槽が用いられた場合、通電により電解槽には洗浄水中のマグネシウムやカルシウムなどに起因するスケールが発生し易い。このため、スケールによって電解槽で詰まりが発生する恐れもある。そこで、迂回流路40を、第1の洗浄流路11の電解槽よりも上流から分岐するようにしている。これにより、電解槽やその下流で詰まりが発生しても、第1の洗浄流路11における水圧の上昇を抑制することができる。
【0039】
以下、図2図6を参照して、実施形態に係る小便器装置の一例について説明する。
【0040】
図2は、本実施形態にかかる小便器装置を表す斜視図である。
図2に表したように、小便器170は、ボウル部171を有する。ボウル部171は、立面172と、縁面173と、底面174と、立壁面175と、を有する。
立面172は、ボウル部171の後方部において略鉛直方向に延びている。なお、立面172が湾曲していても全体的にみて略鉛直方向に延びている場合には、立面172は、略鉛直方向に延びているものとする。
縁面173は、右縁面173aと、左縁面173bと、を有し、立面172の左右から前方へ向かって延びている。底面174は、立面172の下方部に接続され、排出部を有する。立壁面175は、右立壁面175aと、左立壁面175bと、を有する。立壁面175は、底面174から上方へ向かって延び、縁面173と接続されている。右立壁面175aと左立壁面175bとが互いに当接した部分であって、立壁面175の上端の部分には、最上端部176が存在する。
【0041】
本願明細書においては、通常使用状態で小便器170の方向を向いた使用者からみて上方を「上方」とし、通常使用状態で小便器170の方向を向いた使用者からみて下方を「下方」とする。また、通常使用状態で小便器170の方向を向いて小便器170の前に立った使用者からみて手前側を「前方」とし、通常使用状態で小便器170の方向を向いて小便器170の前に立った使用者からみて奥側を「後方」とする。また、通常使用状態で小便器170の方向を向いて小便器170の前に立った使用者からみて右側を「右側方」とし、通常使用状態で小便器170の方向を向いて小便器170の前に立った使用者からみて左側を「左側方」とする。
【0042】
図2に表したように、例えば、第1の洗浄手段21(散水ノズル)は、小便器170のボウル部171の上部において、立面172に設けられている。図2に表した矢印のように、第1の洗浄手段21は、ボウル部171の下側へ液滴化された水を散水する。ここでいう「下側」とは、鉛直方向の下向きに限定されず、水平方向から下の方向を含む。つまり、ここでいう「下側」とは、水平方向および水平方向よりも上側の方向を除く方向をいう。
【0043】
図3(a)及び図3(b)は、ボウル部に供給される洗浄水の領域を表す斜視図である。
図3(a)は、第2の洗浄手段22(スプレッダ)からボウル部171に供給される洗浄水の領域を表す。図3(b)は、第1の洗浄手段21(散水ノズル)からボウル部171に供給される洗浄水の領域を表す。なお、この例では、第1の洗浄手段21及び第2の洗浄手段22は、互いに一体化されている。
【0044】
図3(a)に表したように、例えば、第2の洗浄手段22は、ボウル部171の上部に設けられている。なお、第2の洗浄手段22の設置形態は、図3(a)に表した例に限定されるわけではない。図3(a)に表した領域171aのように、第2の洗浄手段22は、立面172および縁面173に水を供給する。第1の領域171aは、第2の洗浄手段22から供給される洗浄水により洗浄されるボウル部171の内部の領域である。
【0045】
ボウル部171の内部において領域171aの左右両側(横側)には、領域171b(不洗部箇所)が存在する。領域171bは、第2の洗浄手段22から供給される洗浄水によっては洗浄されないボウル部171の内部の領域である。ボウル部171の内部において立壁面175には、領域171c(不洗部箇所)が存在する。領域171cは、領域171bと同様に、第2の洗浄手段22から供給される洗浄水によっては洗浄されないボウル部171の内部の領域である。領域171cは、最上端部176を含む。
【0046】
一方、図3(b)に表した例では、領域171dのように、第1の洗浄手段21は、ボウル部171の略全体に水を供給することができる。つまり、領域171dは、すり鉢状部171の内部の領域であって、第1の洗浄手段21から供給される水の散水領域である。領域171dは、領域171bおよび領域171cを含む。言い換えれば、第1の洗浄手段21は、ボウル部171の内部における不洗部箇所を洗浄する。これにより、ボウル部171の略全体を洗浄することができる。
【0047】
また、第1の洗浄手段21から洗浄水を霧状にして噴霧することにより、より少ない流量で、より確実に、ボウル部171の内部における負洗浄箇所を洗浄することができる。なお、第1の洗浄手段21が噴霧する液滴下された水の径は、例えば、約10マイクロメートル(μm)以上1200μm以下である。第1の洗浄手段21から噴霧される水の径は、一般的に一定の範囲を持っている。粒径の積算%の分布曲線が50%の横軸と交差するポイントの粒子径を50%径(一般的にメディアン径と呼ばれる)を、水の径としている。
【0048】
図4は、本実施形態の第1の洗浄手段の一部を例示する断面図である。
図4は、第1の洗浄手段21のうち、本体部202h(散水ノズルの先端部)の断面を例示している。
本体部202hの外面には、雄ネジ202n、凹部202bが形成されている。これにより、本体部202hは、小便器170の上部に着脱可能に保持される。また、本体部202hの先端には外側に広がるフランジ部202fが設けられている。
【0049】
本体部202hは、流入口202cと、吐水口202aと、を有する。洗浄水は、第1の洗浄流路11及び流入口202cを通って本体部202h内に流入する。そして、流入した洗浄水は、吐水口202aから小便器170のボウル部171に向けて、略円錐状の広がりを持って噴霧される。
【0050】
また、本体部202hは、直進流供給流路202dと、一対の旋回流供給流路202eと、を有する。直進流供給流路202dは、流入口202cと吐水口202aとの間を接続する。直進流供給流路202dは、例えば、流入口202cから吐水口202aに向かって直線状に延びる。直進流供給流路202dは、例えば、吐水口202a及び流入口202cの中心軸CAと平行に延びる。これにより、直進流供給流路202dは、流入口202cから流入した機能水の一部を、直進流として吐水口202aに供給する。直進流供給流路202dは、直線状に限ることなく、屈曲又は湾曲した形状などでもよい。直進流供給流路202dの形状は、吐水口202aに直進流を供給可能な任意の形状でよい。
【0051】
各旋回流供給流路202eは、直進流供給流路202dと並行に設けられ、流入口202cと直進流供給流路202dの側方との間を接続する。各旋回流供給流路202eは、例えば、流入口202cから中心軸CAと平行に延び、略垂直に屈曲することにより、直進流供給流路202dの側方に接続される。また、各旋回流供給流路202eの一部は、中心軸CA周りの方向に延びる。各旋回流供給流路202eの一部は、例えば、中心軸CAに対して螺旋状に延びる。これにより、各旋回流供給流路202eは、流入口202cから流入した洗浄水の一部を、中心軸CA周りの旋回流として吐水口202aに供給する。換言すれば、各旋回流供給流路202eは、流入口202cから吐水口202aに流れる洗浄水に対して中心軸CA周りの旋回力を与える。各旋回流供給流路202eの形状は、上記に限ることなく、吐水口202aに旋回流を供給可能な任意の形状でよい。この例では、2つの旋回流供給流路202eが設けられている。旋回流供給流路202eの数は、2つに限ることなく、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
【0052】
直進流と旋回流との比率を調整することにより、吐水時の略円錐状の噴霧状態における洗浄水の粒子PT(水滴)の疎密を、中央部分CPと外側部分EPとで変化させることができる。例えば、直進流の比率を高くすることにより、中央部分CPにおける洗浄水の粒子PTの密度が高くなる。反対に、旋回流の比率を高くすることにより、外側部分EPにおける洗浄水の粒子PTの密度が高くなる。
【0053】
中央部分CPとは、より詳しくは、第1の洗浄手段21の洗浄水の噴霧エリアのうち、吐水口202aの中心軸CAと直交する面内において、中心軸CAに近い部分である。外側部分EPとは、より詳しくは、第1の洗浄手段21の洗浄水の噴霧エリアのうち、吐水口202aの中心軸CAと直交する面内において、中心軸CAから離間した部分である。
【0054】
粒子PTの密度は、上述のように、直進流と旋回流との比率を調整することによって調整することができる。また、直進流と旋回流との比率は、例えば、各流路202d、202eの断面積などを変化させることによって調整することができる。
【0055】
また、吐水時における洗浄水の略円錐状の広がり、及び、粒子PTの大きさは、流入口202cに流入する洗浄水の水圧や流量、吐水口202aの形状や径の大きさによって調整することができる。
【0056】
図5(a)及び図5(b)は、本実施形態の第1の洗浄手段の特性を例示する図である。
図5(a)は、第1の洗浄手段21の散水ノズルから噴霧された洗浄水の分布(広がり)を表すグラフ図である。図5(b)は、図5(a)に示すデータの測定方法を例示する概念図である。
【0057】
図5(a)の横軸は、洗浄水の広がり幅Wd(mm)、すなわち、中心軸CAからの距離を示す。図5(b)に示すように、広がり幅Wd=0は、中心軸CA上の位置に対応する。
【0058】
また、図5(b)に示すように、吐水方向において吐水口202aから所定距離Dh(mm)だけ離れた位置に、複数の部屋Rmを有する容器を設置し、洗浄水を噴霧する。複数の部屋Rmは中心軸CAと直交する平面内において並んでいる。そして、所定時間経過後に各部屋Rmに溜まった洗浄水の量として、各部屋Rmの洗浄水の高さ(水柱高さWh(mm))を測定する。なお、各部屋Rmの底面積は同一とする。図5(a)の縦軸は、この水柱高さWh(mm)を表す。
【0059】
図5(a)には、所定距離Dhを400mmまたは600mmとし、散水ノズルに供給される洗浄水の水圧Pを0.1メガパスカル(MPa)または0.03MPaとした場合のデータを示す。このように、散水ノズルの位置や洗浄水の水圧を調整することによって、小便器170のボウル部171に飛着する洗浄水の量の分布を調整することができる。
【0060】
図6(a)及び図6(b)は、本実施形態の第1の洗浄手段が噴霧する洗浄水の形状を説明する図である。
図6(a)は、本実施形態の小便器装置を側方からみたときの断面図である。
図6(b)は、第1の洗浄手段21が噴霧する洗浄水を中心軸CAと平行な方向(矢印Aの方向)に沿って眺めたときの平面図である。
【0061】
図6(a)および図6(b)に表したように、第1の洗浄手段21から噴霧された洗浄水形状は、円錐形169となる。図6(a)に表したように、第1の洗浄手段21の洗浄水の範囲(散水範囲あるいは噴霧範囲)は、ボウル部171の内部に収まる。つまり、第1の洗浄手段21から噴霧される洗浄水は、ボウル部171の外側へ直接的には進行しない。これにより、洗浄水がボウル部171の外側に付着することが抑制される。そのため、第1の洗浄手段から噴霧された洗浄水により、使用者が濡れたり、小便器170の周りが濡れたりすることを抑制することができる。
【0062】
この例では、第1の洗浄手段21は、ボウル部171の内側へ向かって水を散水する。具体的には、円錐形169の軸(すなわち中心軸CA)は、第1の洗浄手段21からみて後方へ向いている。また、図6(a)に表したように、第1の洗浄手段21から噴霧された洗浄水の前方部は、最上端部176、または、最上端部176からみてボウル部171の側に当たる。
【0063】
このような噴霧吐水によって、尿が不洗部箇所に付着しても、第1の洗浄手段21は、霧状の洗浄水によってボウル部171の表面に付着した尿を洗浄することができる。また、噴霧吐水の範囲を必要以上に広げることなく、不洗部箇所を洗浄することができるため、洗浄水が小便器170の外に飛び散ることを抑制することができる。
【0064】
なお、洗浄水の広がり方(すなわち円錐形169の形状)や、洗浄水の吐水方向は、図6(a)及び図6(b)に表した例に限定されるものではない。例えば、中心軸CAは、第1の洗浄手段21からみたときに、ボウル部171の底面174へ向いていてもよい。また、図6(b)のように中心軸CAに沿って眺めたときの噴霧範囲の平面形状は、円形でなくてもよく、例えば楕円や扁平円であってもよい。
【0065】
既に述べたとおり、このような噴霧吐水を行う第1の洗浄手段21の吐水口202aの径(例えば図4に表す径D)は、小さく構成される。なお、吐水口の径とは、図4のような散水ノズルを先端側から見たときに、外部から見える孔の先端側の径をいう。吐水口202aの径が小さいため、第1の洗浄手段21においては、詰まりが発生してしまうことがある。詰まりが発生すると、第1の洗浄流路11における水圧が高くなり、漏水が発生するおそれがある。
【0066】
これに対して、図1に関して説明した通り、本実施形態に係る小便器装置100は、迂回流路40及び安全弁50によって、第1の洗浄流路11内の水圧を逃がすことができる。これにより、漏水を抑制することが可能である。
【0067】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、第1の洗浄流路11、第1の洗浄手段21、第2の洗浄流路12、第2の洗浄手段22、迂回流路40、安全弁50、小便器170、通水制御手段30などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置、設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0068】
11 第1の洗浄流路、 12 第2の洗浄流路、 21 第1の洗浄手段、 22 第2の洗浄手段、 30 通水制御手段、 31、32 電磁弁、 40 迂回流路、 50 安全弁、 60 フィルタ付き止水栓、 61、62 流量調整弁、 70 フィルタ、 71 逆止弁、 72 フィルタ、 74 分岐点、 100 小便器装置、 110 制御部、 120 人体検知手段、 150 機能水生成手段、 169 円錐形、 170 小便器、 171 ボウル部、 171a、171b、171c、171d 領域、 172 立面、 173 縁面、 173a 右縁面、 173b 左縁面、 174 底面、 175 立壁面、 175a 右立壁面、 175b 左立壁面、 176 最上端部、 202a 吐水口、 202b 凹部、 202c 流入口、 202d 直進流供給流路、 202e 旋回流供給流路、 202f フランジ部、 202h 本体部、 202n 雄ネジ、 A 矢印、 CA 中心軸、 CP 中央部分、 Dh 所定距離、 D 径、 EP 外側部分、 P 水圧、 PT 粒子、 Rm 部屋、 Wd 幅、 Wh 水柱高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6