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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6788246
(24)【登録日】2020年11月4日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】操作装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/22 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
   E03C1/22 C
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-229644(P2016-229644)
(22)【出願日】2016年11月28日
(65)【公開番号】特開2018-87408(P2018-87408A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2019年11月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】392028767
【氏名又は名称】株式会社日本アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】香坂 幸史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 弘貴
(72)【発明者】
【氏名】相原 雅俊
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−224433(JP,A)
【文献】 特開2011−174346(JP,A)
【文献】 特開2008−038573(JP,A)
【文献】 特開2016−142052(JP,A)
【文献】 特開2014−148830(JP,A)
【文献】 実開平05−096171(JP,U)
【文献】 国際公開第2011/117825(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/22
A47K 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のガイド本体部、及び、当該ガイド本体部の一端部において外側に突出し槽体又はこの近傍の構造物である取付対象物の表面上に配置される鍔部を有し、前記ガイド本体部が前記取付対象物の貫通孔に挿通された筒状のガイド部材と、
前記ガイド本体部の内周に配置され、前記ガイド本体部の内周面に沿って往復移動可能な操作ボタンと、
前記操作ボタンを往復移動可能な状態で支持する操作軸を有してなる操作側機構部と、
前記操作ボタンの変位による駆動力を前記槽体の排水口に設けられた栓蓋側へと伝達する伝達部材とを備える操作装置であって、
一端部において開口し、前記ガイド本体部が内周に配置される筒状のガイド被挿通部、及び、当該ガイド被挿通部よりも当該ガイド被挿通部の中心軸側に形成されるとともに、当該中心軸方向に沿って延びるねじ穴を有し、当該ねじ穴が自身の内部において前記ガイド被挿通部の一端部開口側に向けて開口する継手部材と、
前記操作側機構部を保持する機構保持部、当該機構保持部よりも外側において貫通形成された透孔、及び、当該透孔よりも外側に位置する係止部を有するとともに、前記継手部材の内部に配置された保持部材とを具備し、
前記ガイド部材は、その全体が薄肉の高剛性材料からなるとともに、前記ガイド本体部の他端部において内側に突出形成された被係止部を有し、
前記ガイド本体部内に配置された前記係止部が前記被係止部に係止され、かつ、前記鍔部及び前記継手部材の端部により前記取付対象物が挟み込まれた状態で、所定の雄ねじが前記透孔を通して前記ねじ穴に螺合された状態とされていることを特徴とする操作装置。
【請求項2】
前記ガイド部材及び前記保持部材の少なくとも一方は、前記ガイド本体部内に配置された前記係止部が前記被係止部に接触又は接近した状態において、当該係止部の前記ガイド本体部の一端部側に向けた相対移動を規制し、前記ガイド部材の軸方向に沿った前記ガイド部材に対する前記保持部材の相対位置を一定位置にて維持可能な軸方向位置維持手段を有することを特徴とする請求項1に記載の操作装置。
【請求項3】
前記ガイド部材の軸と直交する方向に沿った前記ガイド本体部に対する前記係止部の相対移動を規制し、前記直交する方向に沿った前記ガイド部材に対する前記保持部材の相対位置を一定位置にて維持可能な直交方向位置維持手段を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の操作装置。
【請求項4】
前記ガイド本体部の中心軸は、水平方向又は前記ガイド本体部の一端部から他端部に向けて徐々に下がる斜め水平方向に延びるとともに、
前記操作ボタンは、前記中心軸方向に往復移動可能に構成され、
前記保持部材は、前記ガイド本体部の内部に浸入し前記ガイド本体部の内側面下部を伝わって流れる水を通すための隙間部を備えるとともに、
前記ガイド部材は、前記隙間部を通過した水を前記ガイド本体部の外部へと流出させるための通水用の流出部を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の操作装置。
【請求項5】
前記保持部材及び前記ガイド部材は、前記ガイド本体部の中心軸の周方向に沿った前記ガイド本体部及び前記保持部材の相対位置関係を正規の相対位置関係とは異なる誤った相対位置関係とした状態であっても、前記係止部を、前記ガイド本体部の一端部開口から前記ガイド本体部内へと挿通可能に構成されており、
前記ガイド部材は、所定の第一誤取付防止部を有するとともに、
前記保持部材は、所定の第二誤取付防止部を有し、
前記ガイド本体部及び前記保持部材を前記誤った相対位置関係とした状態で、前記係止部を、前記ガイド本体部の一端部開口から前記ガイド本体部内へと挿通したとき、前記第一誤取付防止部及び前記第二誤取付防止部が接触することで、前記被係止部に対し前記係止部が係止された状態とならないように構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の操作装置。
【請求項6】
前記操作ボタンは、往動に伴い前記ガイド本体部の他端部に接近するように構成され、
前記保持部材は、通常使用の際に想定される前記操作ボタンの往復移動範囲内において前記操作ボタンを最も往動させた位置に配置したときに、当該操作ボタンと接触し、当該操作ボタンのそれ以上の往動を規制する保護部を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水口に設けられた栓蓋を操作するための操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、栓蓋を遠隔操作し、排水口を開閉させるための操作装置として、往復移動可能な操作ボタンを用いたものが知られている。
【0003】
このような操作装置としては、操作ボタンと、当該操作ボタンを往復移動可能な状態で支持する操作軸を有してなる操作側機構部と、操作ボタンが内周に配置され、操作ボタンの移動をガイドする筒状のガイド部材とを備えたものが提案されている。尚、ガイド部材は、自身の一端部に外側に突出形成された鍔部を備えており、当該鍔部と所定の取付用の部材との間で所定の取付対象物(例えば、浴槽などの槽体やその近傍の構造物)を挟み込んだ状態とすることにより、前記取付対象物に取付けられるのが一般的である。
【0004】
ところで、一般に鍔部は、強度等を考慮して厚肉に形成される。そのため、鍔部の外周に水が溜まりやすく、汚れが付着してしまいやすい。また、前記取付対象物の表面から鍔部が突出した状態となり、見栄えが悪くなってしまうおそれがある。そこで近年では、鍔部に相当する部分を金属板からなる金属板製フランジにより構成することで、鍔部を薄肉とし、清掃性や外観品質の向上を図る技術が提案されている(例えば、特許文献1等参照)。当該技術において、前記ガイド部材に相当する部分は、外周に雄ねじ部を有するガイド筒体と、当該ガイド筒体に固定された金属板製フランジとによって構成されている。そして、金属板製フランジに設けられた掛穴を通して、ガイド筒体に設けられた爪部を金属製板フランジへと係止することで、ガイド筒体に対し金属板製フランジが固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−172512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記技術では、ガイド部材を得るにあたって、ガイド筒体や金属製板フランジに固定用の構造(掛穴や爪部)を設ける必要があり、また、製造工程においては、両者を固定するための工程(例えば、組立工程やインサート成形工程など)を設ける必要がある。そのため、製造コストの増大や生産性の低下を招いてしまうおそれがある。
【0007】
さらに、ガイド筒体に対して金属製板フランジを強固に固定することは容易ではなく、ガイド部材の耐久性を十分に確保することができないおそれがある。万が一耐久性が不十分であると、例えば、取付対象物へとガイド部材を取付けた際などに、ガイド筒体から金属製板フランジが脱落してしまい、装置(ガイド部材)の破損を招いてしまうおそれがある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、清掃性や外観品質の向上を図りつつ、製造コストの低減、生産性の向上、及び、ガイド部材の耐久性向上等をより確実に図ることができる操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0010】
手段1.筒状のガイド本体部、及び、当該ガイド本体部の一端部において外側に突出し槽体又はこの近傍の構造物である取付対象物の表面上に配置される鍔部を有し、前記ガイド本体部が前記取付対象物の貫通孔に挿通された筒状のガイド部材と、
前記ガイド本体部の内周に配置され、前記ガイド本体部の内周面に沿って往復移動可能な操作ボタンと、
前記操作ボタンを往復移動可能な状態で支持する操作軸を有してなる操作側機構部と、
前記操作ボタンの変位による駆動力を前記槽体の排水口に設けられた栓蓋側へと伝達する伝達部材とを備える操作装置であって、
一端部において開口し、前記ガイド本体部が内周に配置される筒状のガイド被挿通部、及び、当該ガイド被挿通部よりも当該ガイド被挿通部の中心軸側に形成されるとともに、当該中心軸方向に沿って延びるねじ穴を有し、当該ねじ穴が自身の内部において前記ガイド被挿通部の一端部開口側に向けて開口する継手部材と、
前記操作側機構部を保持する機構保持部、当該機構保持部よりも外側において貫通形成された透孔、及び、当該透孔よりも外側に位置する係止部を有するとともに、前記継手部材の内部に配置された保持部材とを具備し、
前記ガイド部材は、その全体が薄肉の高剛性材料からなるとともに、前記ガイド本体部の他端部において内側に突出形成された被係止部を有し、
前記ガイド本体部内に配置された前記係止部が前記被係止部に係止され、かつ、前記鍔部及び前記継手部材の端部により前記取付対象物が挟み込まれた状態で、所定の雄ねじが前記透孔を通して前記ねじ穴に螺合された状態とされていることを特徴とする操作装置。
【0011】
尚、「薄肉」とあるのは、例えば、厚さが1.5mm以下であることを意味する。また、「高剛性材料」としては、ステンレスや真鍮などの金属、PPSなどの樹脂材料、及び、セラミック材料等を挙げることができる。
【0012】
上記手段1によれば、ガイド部材の全体は薄肉の高剛性材料により形成されているため、鍔部についても薄肉とすることができる。従って、清掃性や外観品質の向上を図ることができる。
【0013】
また、上記手段1によれば、ガイド部材はその全体が薄肉の高剛性材料からなるため、鍔部に相当する部位を別体とした場合に必要となる、鍔部に相当する部位とその他の部位とを固定するための構造や、両者を固定するための工程は不要となる。そのため、製造コストの低減や生産性の向上を図ることができる。
【0014】
さらに、上記手段1によれば、鍔部に相当する部位を別体とした場合に懸念される、ガイド部材の耐久性低下といった事態は生じることなく、ガイド部材において十分な耐久性をより確実に確保することができる。
【0015】
加えて、上記手段1によれば、ガイド本体部内に保持部材の係止部を配置して当該係止部がガイド部材の被係止部へと係止され得る状態とし、かつ、ガイド本体部の外側に継手部材のガイド被挿通部を配置した上で、所定の雄ねじを保持部材に形成された透孔を通して継手部材のねじ穴に螺合することで、ガイド部材や継手部材等を取付対象物へと取付けることができる。従って、比較的簡便な手法によって、取付対象物に対しガイド部材や継手部材等を取付けることができ、良好な取付作業性を得ることができる。
【0016】
また、取付後においては、被係止部に対し鍔部から遠ざかる方向の引っ張り力が加わった状態となる。そのため、取付対象物側に対し鍔部を強く押付けた状態とすることができ、取付対象物に対しガイド部材を強固かつ安定した状態で固定することができる。
【0017】
さらに、上記手段1によれば、取付対象物や、取付対象物及び継手部材間に配置されるシール部材の厚さの変化によって、取付対象物の表面に対する継手部材の相対位置が変化する一方、取付対象物などの厚さが変わったとしても、取付対象物の表面に対するガイド部材やこれに係止される保持部材の相対位置は変化せず一定とされる。従って、保持部材に保持される操作側機構部や操作側機構部により支持される操作ボタンについても、取付対象物の表面に対する相対位置を一定とすることができる。これにより、特段の対処を行うことなく、各種取付対象物に対し、その表面に対する相対位置が一定となった状態で操作ボタンを配置することができる。
【0018】
手段2.前記ガイド部材及び前記保持部材の少なくとも一方は、前記ガイド本体部内に配置された前記係止部が前記被係止部に接触又は接近した状態において、当該係止部の前記ガイド本体部の一端部側に向けた相対移動を規制し、前記ガイド部材の軸方向に沿った前記ガイド部材に対する前記保持部材の相対位置を一定位置にて維持可能な軸方向位置維持手段を有することを特徴とする手段1に記載の操作装置。
【0019】
上記手段2によれば、軸方向位置維持手段によって、保持部材の係止部がガイド部材の被係止部に接触又は接近した状態〔すなわち、被係止部へと係止部が係止又はほぼ係止され、保持部材及びガイド部材がガイド部材の軸(ガイド本体部の中心軸)方向に沿って適切な位置関係でセットされた状態〕で、両部材の相対移動を規制することができ、ガイド部材の軸(ガイド本体部の中心軸)方向に沿った両部材の相対位置を一定位置にて維持することができる。従って、操作装置の取付時などにおいて、ガイド部材に対して保持部材が容易に動いてしまったり、ガイド部材から保持部材が抜けてしまったりすることをより確実に防止できる。その結果、より良好な取付作業性を得ることができる。
【0020】
手段3.前記ガイド部材の軸と直交する方向に沿った前記ガイド本体部に対する前記係止部の相対移動を規制し、前記直交する方向に沿った前記ガイド部材に対する前記保持部材の相対位置を一定位置にて維持可能な直交方向位置維持手段を有することを特徴とする手段1又は2に記載の操作装置。
【0021】
上記手段3によれば、直交方向位置維持手段により、ガイド部材の軸(ガイド本体部の中心軸)と直交する方向に沿ったガイド部材及び保持部材の相対位置を一定に保つことができる。これにより、操作装置の取付やメンテナンス時などにおいて、前記直交方向に沿った、保持部材により支持される操作側機構部とガイド部材との相対位置を容易に一定に保つことができ、ひいては、前記直交方向に沿った、ガイド部材と操作ボタンとの相対位置についても容易に一定に保つことができる。従って、取付後の操作装置において、ガイド部材に対する操作ボタンの位置ずれが生じてしまうことをより確実に防止できる。その結果、良好な美観をより確実に得ることができるとともに、ガイド部材によって操作ボタンをより適切にガイドすることが可能となる。
【0022】
また、上記手段3によれば、操作装置の取付時などにおいて、前記直交方向に沿ったガイド部材に対する保持部材の位置を特に調節する必要がなくなり、また、保持部材の透孔を通したねじ穴に対する雄ねじの螺合などを容易に行うことができる。これにより、取付作業性を一層向上させることができる。
【0023】
尚、例えば、ガイド本体部の外側面とガイド被挿通部の内側面とを接触又は近接させることで、前記直交方向に沿ったガイド部材に対する継手部材の相対移動を規制することとしてもよい。この場合には、前記直交方向に沿った保持部材や操作ボタン、継手部材等の相対位置は、ガイド部材を基準とした一定位置に定まることとなる。従って、操作装置の取付時において部材の位置調節を特に行うことなく、各部材をより正確に一定位置に配置することができる。その結果、良好な美観をより一層確実に得ることができるとともに、取付作業性の一段の向上を図ることができる。
【0024】
手段4.前記ガイド本体部の中心軸は、水平方向又は前記ガイド本体部の一端部から他端部に向けて徐々に下がる斜め水平方向に延びるとともに、
前記操作ボタンは、前記中心軸方向に往復移動可能に構成され、
前記保持部材は、前記ガイド本体部の内部に浸入し前記ガイド本体部の内側面下部を伝わって流れる水を通すための隙間部を備えるとともに、
前記ガイド部材は、前記隙間部を通過した水を前記ガイド本体部の外部へと流出させるための通水用の流出部を備えることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の操作装置。
【0025】
上記手段4によれば、ガイド本体部の内部に浸入した水〔通常、重力によってガイド本体部の内側面下部に付着した(溜まった)状態となる〕を、ガイド本体部の内側面下部を伝わせつつ、隙間部及び流出部を通して、ガイド本体部の外部へと流出させることができる。従って、ガイド本体部の内部(例えば、ガイド本体部の内側面下部とこれに接触する保持部材とで形成された凹み状の角部分など)において水が溜まってしまうことをより確実に防止できる。その結果、ガイド本体部や保持部材に対する汚れの付着を抑制することができ、衛生性や清掃性を高めることができる。
【0026】
手段5.前記保持部材及び前記ガイド部材は、前記ガイド本体部の中心軸の周方向に沿った前記ガイド本体部及び前記保持部材の相対位置関係を正規の相対位置関係とは異なる誤った相対位置関係とした状態であっても、前記係止部を、前記ガイド本体部の一端部開口から前記ガイド本体部内へと挿通可能に構成されており、
前記ガイド部材は、所定の第一誤取付防止部を有するとともに、
前記保持部材は、所定の第二誤取付防止部を有し、
前記ガイド本体部及び前記保持部材を前記誤った相対位置関係とした状態で、前記係止部を、前記ガイド本体部の一端部開口から前記ガイド本体部内へと挿通したとき、前記第一誤取付防止部及び前記第二誤取付防止部が接触することで、前記被係止部に対し前記係止部が係止された状態とならないように構成されていることを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載の操作装置。
【0027】
尚、「ガイド本体部の中心軸の周方向に沿ったガイド本体部及び保持部材の相対位置関係」とあるのは、換言すれば、ガイド本体部の一端側からガイド本体部及び保持部材を見たときにおける両者の相対位置関係ということもできる。また、「被係止部に対し係止部が係止された状態とならない」とあるのは、被係止部に対し係止部が全く係止されない場合のみならず、設計上係止部が係止されるべき被係止部に対し、少なくとも一部の係止部が係止されない場合も含む。
【0028】
上記手段5によれば、仮にガイド本体部及び保持部材を誤った相対位置関係とした状態で、係止部をガイド本体部内へと挿通してしまった場合であっても、第一誤取付防止部及び第二誤取付防止部が接触することで、係止部のそれ以上の挿通を規制することができ、ひいては被係止部に対し係止部が係止された状態となってしまうことを防止できる。例えば、第一誤取付防止部及び第二誤取付防止部が接触することで、保持部材が本来配置されるべき位置の手前までしか挿通されないようにすることができる。従って、取付作業者が細心の注意を払わずとも、誤った相対位置関係でガイド部材や保持部材が取付けられてしまうことをより確実に防止できる。これにより、取付作業性の向上をより図ることができるとともに、取付られた操作装置において、想定した機能を十分に発揮させることができる。
【0029】
手段6.前記操作ボタンは、往動に伴い前記ガイド本体部の他端部に接近するように構成され、
前記保持部材は、通常使用の際に想定される前記操作ボタンの往復移動範囲内において前記操作ボタンを最も往動させた位置に配置したときに、当該操作ボタンと接触し、当該操作ボタンのそれ以上の往動を規制する保護部を有することを特徴とする手段1乃至5のいずれかに記載の操作装置。
【0030】
尚、「通常使用の際」とあるのは、換言すれば、適正な使用方法を用いたときということもできる。
【0031】
上記手段6によれば、操作ボタンが保持部材に設けられた保護部と接触することで、操作ボタンにおける過度の往動を規制することができる。これにより、例えば操作ボタンに対し過度の押圧力が加えられること等によって、操作側機構部やこれを保持する機構保持部に対し、過度に大きな力が加わってしまうことを抑制できる。そのため、機構保持部から操作側機構部が外れてしまったり、操作側機構部や機構保持部に破損が生じてしまったりすることをより確実に防止できる。その結果、装置の耐久性を効果的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】操作装置の斜視図である。
図2図1におけるJ−J線において操作装置等の一部を破断した状態を示す一部破断側面図である。
図3図1におけるK−K線において操作装置等の一部を破断した状態を示す一部破断平面図である。
図4】操作装置1の断面斜視図である。
図5図1のL−L線における操作装置等の断面底面図である。
図6】ガイド部材をその一端部側から見たときにおけるガイド部材の斜視図である。
図7】ガイド部材をその他端部側から見たときにおけるガイド部材の斜視図である。
図8】ガイド部材とこれの内側にセットされた保持部材とを示す一部破断側面図である。
図9】保持部材の正面図である。
図10】保持部材の側面図である。
図11図8における第一仮想円内を示す拡大図である。
図12図8における第二仮想円内を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態において、操作装置1は、図1図5に示すように、槽体及び取付対象物としての洗面ボール100(図1及び図4では不図示)に取付けられている。尚、図2は、図1におけるJ−J線において操作装置1等の一部を破断した状態を示す一部破断側面図である。図3は、図1におけるK−K線において操作装置1等の一部を破断した状態を示す一部破断平面図である。図4は、操作装置1の断面斜視図である。図5は、図1のL−L線における操作装置1等の断面底面図である。
【0034】
洗面ボール100は、上下方向に延びる側壁部101を備えており、当該側壁部101の上部には、洗面ボール100からの水の溢れ出しを防止するための貫通孔としてのオーバーフロー口102が貫通形成されている。本実施形態において、少なくとも側壁部101のうち操作装置1の取付けられる部位は、ほぼ鉛直方向に延びる形状とされている。
【0035】
操作装置1は、ガイド部材2、継手部材3、保持部材4、操作側機構部5(図4及び図5では不図示)、操作ボタン6及び伝達部材7を備えている。
【0036】
ガイド部材2は、図6及び図7に示すように、その全体が薄肉(例えば、1.5mm以下)とされている。また、ガイド部材2は、全体が高剛性材料(例えば、ステンレスや真鍮等の金属など)により形成されている。さらに、ガイド部材2は、ガイド本体部21、鍔部22及び被係止部23を備えている。
【0037】
ガイド本体部21は、自身の内周に配置される操作ボタン6の移動をガイドする役割を有する。ガイド本体部21は、矩形筒状をなすとともに、オーバーフロー口102に挿通されている(図2等参照)。本実施形態において、ガイド本体部21の中心軸CL1(ガイド部材2の軸)は、ガイド本体部21の一端部(洗面ボール100の貯水空間側端部)から他端部に向けて徐々に下がる斜め水平方向に延びるものとされている。
【0038】
また、ガイド本体部21は、洗面ボール100の貯水空間側に開口している。そのため、前記貯水空間側に位置するガイド本体部21の一端部開口を通って、ガイド本体部21の内部に対し水が浸入可能となっている。
【0039】
鍔部22は、ガイド本体部21の一端部において外側に突出した形状をなしており、側壁部101の表面上に配置されている。本実施形態において、鍔部22は、側壁部101の表面に接触した状態で配置されている。そのため、側壁部101の表面からの鍔部22の突出量が非常に小さなものとなっており、外観品質や安全性、衛生性などの面において良好な性能を得ることができるようになっている。
【0040】
被係止部23は、保持部材4を支持する部位である。被係止部23は、ガイド本体部21の他端部に設けられ、ガイド本体部21の内側面よりも内側に若干(例えば、数mm)だけ突出した内鍔状をなしている。本実施形態において、被係止部23は、第一対称部23A及び第二対称部23Bと、第一誤取付防止部23Cとを有している。
【0041】
第一対称部23Aは、ガイド本体部21の一端部開口側から見て左に位置し、第二対称部23Bは、前記一端部開口側から見て右に位置している。両対称部23A,23Bは、ガイド本体部21の中心軸CL1を含み鉛直方向に延びる仮想面を対称面とする面対称形状とされている。
【0042】
また、ガイド本体部21の他端部下辺において両対称部23A,23Bは離間しており、この離間した両対称部23A,23B間の隙間によって、流出部23Dが形成されている。流出部23Dは、ガイド本体部21の内側面下部を伝わって流れる水の通水路としての役割を有する。本実施形態において、ガイド本体部21の内側面下部を伝わって流れる水は、流出部23Dを通って、ガイド本体部21の外部へと流出可能となっている。
【0043】
第一誤取付防止部23Cは、ガイド本体部21の他端部上辺中央における両対称部23A,23B間に設けられている。第一誤取付防止部23Cは、基本的には、被係止部23の一部として保持部材4を支持するものであるが、操作装置1の取付時には、後述する第二誤取付防止部411Aと対になることで、誤った状態での取付を防止するように機能する。誤取付の防止に関しては、後に説明する。
【0044】
尚、ガイド本体部21は、自身の他端部上辺における両対称部23A,23Bと第一誤取付防止部23Cとの間に位置する部位によって構成された一対の上側掛かり部21Aと、自身の他端部下辺における両対称部23A,23B間に位置する部位によって構成された下側掛かり部21Bとを備えている。両掛かり部21A,21Bは、前記中心軸CL1方向に沿ったガイド部材2に対する保持部材4の相対位置を一定に維持するために用いられる。この点については、後に詳述する。
【0045】
図1図5に戻り、継手部材3は、ほぼ直角に屈曲する筒状をなしており、第一筒状部31及び第二筒状部32を備えている。
【0046】
第一筒状部31は、一体的に形成されたガイド被挿通部311及び雌ねじ部配設部312を備えている(図3〜5参照)。
【0047】
ガイド被挿通部311は、一端部(洗面ボール100の貯水空間側)において開口した矩形筒状をなしており、ガイド本体部21が内周に配置されている。本実施形態において、ガイド被挿通部311の中心軸CL2は、ガイド本体部21の中心軸CL1と同軸とされている(図2等参照)。そして、ガイド被挿通部311の内側面形状は、ガイド本体部21の外側面形状に対応するものとなっており、ガイド被挿通部311の内側面は、ガイド本体部21の外側面と接触又は近接した状態となっている。これにより、前記中心軸CL1と直交する方向に沿ったガイド被挿通部311及びガイド本体部21の相対移動が規制されるようになっている。
【0048】
雌ねじ部配設部312は、ガイド被挿通部311の他端部に連なった状態で設けられており、ガイド被挿通部311の延びる方向と同一方向に沿って延びる筒状をなしている。雌ねじ部配設部312は、基本的には、自身の一端部から自身の他端部側(ガイド被挿通部311とは反対側)に向けて徐々に幅が狭くなる一方、次述するねじ穴312Aの形成部に対応する部分のみが外側に突出した形状をなしている。
【0049】
ねじ穴312Aは、その内周に所定の雌ねじが形成されたものであり、雌ねじ部配設部312の内部においてガイド被挿通部311の内側面よりも前記中心軸CL2側に形成されている。また、ねじ穴312Aは、前記中心軸CL2方向に沿って延びるとともに、ガイド被挿通部311の一端部開口側に向けて開口する形状をなしている。本実施形態において、ねじ穴312Aは、前記中心軸CL2を挟む位置に一対設けられている。
【0050】
第二筒状部32は、雌ねじ部配設部312の他端側(ガイド被挿通部311とは反対側)の下部から下方に向けて延びる円筒状をなしている。第二筒状部32には、図示しない通水管の一端部が接続されており、当該通水管の他端部は、洗面ボール100の排水口から流れ落ちた排水の流路となる排水管(図示せず)と接続されている。これにより、継手部材3の内部に入った水は、前記通水管を通って前記排水管へと流れるようになっている。
【0051】
保持部材4は、継手部材3の内部に配置されており、操作側機構部5を保持するものである。保持部材4は、図8図10に示すように、外環部41、機構保持部42及び連結部43を備えている。
【0052】
外環部41は、保持部材4の外縁側部分を構成する部位である。外環部41は、矩形環状(筒状)をなす基部411と、当該基部411の一端部において外側に突出形成された環状の係止部412とを備えている。
【0053】
係止部412は、ガイド本体部21の内部に配置されており、被係止部23に対し係止された状態となっている。また、係止部412の外側面部分は、次述する隙間部412A、上側突部412B及び下側突部412Cを除いて、ガイド本体部21の内側面に対応する形状の矩形状をなしている。
【0054】
隙間部412Aは、外環部41を構成する2つの長辺部分のうち、下側に位置する長辺部分の外側面を機構保持部42側に向けて窪んだ形状とすることによって形成されている。隙間部412Aは、ガイド本体部21の内部に浸入し、ガイド本体部21の内側面下部を伝わって流れる水を通すための通水路として機能する。隙間部412Aを通過した水は、前記流出部23Dを通ってガイド本体部21の外部(継手部材3の内部)へと流出することとなる。
【0055】
上側突部412Bは、前記2つの長辺部分のうちの上側に対し一対設けられており、下側突部412Cは、前記2つの長辺部分のうちの下側に対し一対設けられている。上側突部412B及び下側突部412Cは、係止部412の外側面から若干だけ外側に突出した形状をなしている。
【0056】
また、図11及び図12に示すように、上側突部412Bは、ガイド部材2における前記両対称部23A,23B及び第一誤取付防止部23C間に位置する上側の隙間に配置されており、下側突部412Cは、ガイド部材2における前記両対称部23A,23B間に位置する下側の隙間に配置されている。尚、図11は、図8における第一仮想円VC1内を拡大した図であり、図12は、図8における第二仮想円VC2内を拡大した図である。
【0057】
保持部材4をガイド本体部21の一端部側に向けて相対移動させようとしたときには、上側掛かり部21Aに対し上側突部412Bが接触したり、下側掛かり部21Bに対し下側突部412Cが接触したりすることで、ガイド部材2に対する、ガイド本体部21の一端部側に向けた係止部412の相対移動が規制される。これにより、ガイド本体部21内に配置された係止部412が被係止部23に接触又は接近した状態で、係止部412のガイド本体部21の一端部側に向けた相対移動を規制し、前記中心軸CL1方向に沿ったガイド部材2に対する保持部材4の相対位置を一定位置にて維持することができるようになっている。すなわち、本実施形態では、両掛かり部21A,21B及び両突部412B,412Cによって軸方向位置維持手段8が構成されている。
【0058】
さらに、係止部412の外側面部分のほぼ全域(隙間部412A等を除いた部位)は、ガイド本体部21の内側面に近接した状態となっている。これにより、前記中心軸CL1と直交する方向に沿ったガイド本体部21に対する係止部412の相対移動を規制し、前記直交する方向に沿ったガイド部材2に対する保持部材4の相対位置を一定位置にて維持することができるようになっている。すなわち、本実施形態では、係止部412の外側面部分と、ガイド本体部21の内側面とによって、直交方向位置維持手段9が構成されている。
【0059】
尚、本実施形態において、ガイド本体部21の内側面及び保持部材4の外縁部分(係止部412)は、それぞれほぼ相似の矩形状をなしているため、仮に保持部材4を上下逆向きにしてしまった場合であっても(前記中心軸CL1を中心に180°回転させてしまった場合であっても)、ガイド本体部21の一端部開口からガイド本体部21内へと係止部412を挿通することができるようになっている。すなわち、本実施形態では、取付作業時などにおいて、前記中心軸CL1の周方向に沿ったガイド本体部21及び保持部材4の相対位置関係を正規の相対位置関係とは異なる誤った相対位置関係とした状態で、係止部412を、ガイド本体部21の一端部開口からガイド本体部21内へと挿通されることが行われ得るようになっている。しかしながら、第一誤取付防止部23C及び次述する第二誤取付防止部411Aの存在により、保持部材4を上下逆にした状態で当該保持部材4をガイド本体部21内へと挿通した場合には、被係止部23に対し係止部412が係止された状態とはならず、ひいては誤った位置関係での組付けが生じないようになっている。
【0060】
図8図10に戻り、基部411は、矩形筒状をなし、被係止部23の内周に挿通されている。また、基部411における外側面部分の下部には、外側に向けて突出する第二誤取付防止部411Aが設けられている。第二誤取付防止部411Aは、ガイド本体部21及び保持部材4の相対位置関係を正規の相対位置関係としたときに、ガイド部材2における前記両対称部23A,23B間の下側の隙間と前記中心軸CL1方向に沿って重なる一方、保持部材4を上下逆にしたときに、ガイド部材2の前記第一誤取付防止部23Cと前記中心軸CL1方向に沿って重なる位置に設けられている。
【0061】
さらに、外環部41の一端側端面には、ガイド本体部21の一端部開口側、すなわち、操作ボタン6側に向けて突出する保護部413が形成されている。保護部413は、外環部41の長辺部分に沿って延びる突条をなしており、外環部41の各長辺部分に対し1つずつ設けられている。
【0062】
また、外環部41を構成する2つの短辺部分は、内側(機構保持部42側)へと膨らんだ膨出部分を備えており、当該膨出部分に対し透孔414が貫通形成されている。透孔414は、機構保持部42を挟む位置に一対設けられており、機構保持部42よりも外側であって、係止部412よりも内側に設けられている。
【0063】
本実施形態において、ガイド部材2、継手部材3及び保持部材4は、ガイド本体部21内に配置された係止部412が被係止部23に係止されるとともに、鍔部22及び継手部材3の一端部により洗面ボール100が挟み込まれた状態で、所定の雄ねじ10(図5参照。図3,4では不図示)が透孔414を通してねじ穴312Aに螺合された状態とされることにより、洗面ボール100へと取付けられている(図5参照)。尚、本実施形態では、継手部材3の一端部に対し、弾性変形可能な材料(例えば、ゴムや樹脂など)からなる環状のシール部材11が取付けられており、当該シール部材11は、洗面ボール100及び継手部材3の一端部で挟み込まれた状態とされている。これにより、洗面ボール100及び継手部材3間からの水の漏出防止が図られている。
【0064】
機構保持部42は、円筒状をなしており、自身の内周において操作側機構部5を保持する部位である。本実施形態において、機構保持部42は、スナップフィットにより、操作側機構部5における後述する保持筒部51の外周に係合されることで、操作側機構部5を保持している。
【0065】
連結部43は、外環部41の内側において機構保持部42を支持する部位であり、機構保持部42の周方向に沿って相互に隙間をあけた状態で複数設けられている。尚、連結部43間の隙間は、ガイド部材2の内部に浸入した水の通水路として機能する。
【0066】
図2及び図3に戻り、操作側機構部5は、円筒状の保持筒部51と、当該保持筒部51の内周に配置された棒状の操作軸52とを備えている。尚、図4,5等では、操作側機構部5を省略している。
【0067】
操作軸52は、保持筒部51の軸方向に沿って往復移動可能であり、本実施形態では、ガイド本体部21の中心軸CL1方向に往復移動可能となっている。尚、操作軸52の往動方向とは、継手部材3の奥側へと操作軸52を押し込むこととなる方向(図2における左から右に向けた方向。図3における下から上に向けた方向)である。
【0068】
また、本実施形態において、操作側機構部5の内部には、操作軸52をロックするための図示しないロック機構と、操作軸52に対しその復動方向に向けた付勢力を付与するための図示しない戻しばねとが設けられている。
【0069】
操作ボタン6は、洗面ボール100の排水口に設けられた栓蓋(図示せず)を上下動させる際に、使用者によって押圧操作される部位である。操作ボタン6は、ガイド本体部21の内周に配置されており、膨出部61、下垂部62及びカバー部63を備えている。
【0070】
膨出部61及び下垂部62は、所定の樹脂により一体形成されており、洗面ボール100の貯水空間側から見たときに、ガイド本体部21の内側面形状に対応する矩形状をなしている。
【0071】
膨出部61は、先端部が閉塞した矩形筒状をなしており、その先端側の部分がガイド部材2から突出している。また、膨出部61における下側壁部には、その厚さ方向に貫通する通水孔が形成されており、当該通水孔を通って前記貯水空間側から水がガイド本体部21内へと浸入可能となっている。さらに、膨出部61の根元側部分(ガイド本体部21内に常に配置される部分)のうちガイド本体部21の内周面に隣接する部位は、外側に向けて若干突出した状態となっている。
【0072】
加えて、膨出部61の裏側に対して操作軸52の一端部が取付けられており、操作ボタン6の押圧に伴い、操作軸52が往動するようになっている。本実施形態では、操作ボタン6を押圧する度に、前記ロック機構によって操作軸52が往動した状態で所定位置においてロックされることと、ロック解除に伴い、前記戻しばねからの付勢力によって操作軸52が復動することとが交互に行われるようになっている。尚、本実施形態において、操作ボタン6は、通常使用の際に想定される自身の往復移動範囲内において最も往動したときの位置から若干だけ復動した位置においてロックされる。
【0073】
下垂部62は、膨出部61の根元側下部から垂れ下がる部分と、この垂れ下がり部分の下部からガイド本体部21の奥側(他端側)に向けて延び、ガイド本体部21の内周面に隣接する平板部分とを備えている。前記垂れ下がり部分には、その厚さ方向に貫通する通水孔が複数設けられており、当該通水孔を通して、前記貯水空間側からガイド本体部21内へと水が浸入可能となっている。
【0074】
カバー部63は、金属製の薄板からなり、膨出部61の表面のうち特に使用者によって視認されやすい部位(先端面や上面、側面など)を覆うものである。カバー部63によって外観品質の向上が図られている。
【0075】
但し、本実施形態において、膨出部61の根元側部分に設けられた前記突出部分は、カバー部63で覆われておらず、カバー部63の表面よりも外側に突出した状態となっている。そして、操作ボタン6の往復移動時には、膨出部61における前記突出部分と下垂部62における前記平板部分とがガイド本体部21の内周面に沿って移動し、操作ボタン6の移動がガイドされるようになっている。これにより、操作ボタン6の往復移動時に、それぞれ金属製のカバー部63とガイド部材2とが接触してしまうことを防止でき、異音の発生防止やカバー部63等の損傷抑制を図ることが可能となっている。
【0076】
また、通常使用の際に想定される操作ボタン6の往復移動範囲内において、操作ボタン6を最も往動させた位置に配置したときには、膨出部61の前記突出部分が上側の保護部413と接触し、下垂部62の前記平板部分が下側の保護部413と接触する。これにより、操作ボタン6のそれ以上の往動が規制されるようになっている。尚、本実施形態では、膨出部61、下垂部62及び保護部413はそれぞれ樹脂製であるため、接触時における異音の発生を効果的に抑制可能となっている。
【0077】
伝達部材7は、例えば、金属製のワイヤー等により構成されている。伝達部材7は、長尺筒状をなすチューブ部材12の内周に配置されており、チューブ部材12に対し相対的に往復移動可能とされている。
【0078】
また、伝達部材7は、その一端部が操作軸52の他端部と接触可能に構成されており、操作ボタン6の押圧に伴い操作軸52が往動することで、チューブ部材12内にて往動する。これにより、操作ボタン6の変位による駆動力が前記栓蓋側へと伝達されるようになっている。
【0079】
尚、操作ボタン6を押圧し、前記ロック機構によって操作軸52をロックした状態においては、伝達部材7が往動した状態で維持される。これにより、伝達部材7によって前記栓蓋が上動した状態で保たれ、ひいては前記排水口が開状態で維持される。
【0080】
一方、前記ロック機構によるロックが解除されると、操作軸52とともに伝達部材7が復動する。これにより、前記栓蓋が下動し、前記排水口が閉状態とされる。
【0081】
次いで、洗面ボール100に対する操作装置1の取付手法について説明する。
【0082】
まず、ガイド本体部21の一端部開口からガイド本体部21の内部へと保持部材4(係止部412)を挿通する。ここで、ガイド本体部21に対し保持部材4を挿通する際に、ガイド本体部21及び保持部材4の相対位置関係が正規の相対位置関となっていれば、第二誤取付防止部411Aは、前記両対称部23A,23B間の下側の隙間を通って、ガイド本体部21の外へと出る。その結果、被係止部23に対し係止部412は接触又は近接した状態となる。また、軸方向位置維持手段8によって、係止部412が被係止部23に接触又は接近した状態(すなわち、被係止部23へと係止部412が係止又はほぼ係止され、保持部材4及びガイド部材2が中心軸CL1方向に沿って適切な位置関係とされた状態)で、ガイド部材2及び保持部材4の相対移動が規制される。
【0083】
一方、本実施形態では、上述の通り、保持部材4を上下逆にした状態で、すなわち、ガイド本体部21及び保持部材4の相対位置関係を誤った相対位置関係とした状態で、ガイド本体部21の一端部開口から保持部材4(係止部412)をガイド本体部21へと挿通することができるような構成となっている。従って、誤った位置関係で保持部材4が取付けられてしまうことが懸念される。しかし、本実施形態では、保持部材4を上下逆にした状態で、保持部材4(係止部412)をガイド本体部21の一端部開口からガイド本体部21内へと挿通していくと、第二誤取付防止部411Aと第一誤取付防止部23Cとが接触する。これにより、保持部材4のそれ以上の移動が規制され、被係止部23に対し係止部412が係止された状態とはならない(例えば、本来係止部412が係止されるべき被係止部23に対し、少なくとも一部の係止部412が係止されない)こととなる。その結果、取付作業者は、通常、ガイド本体部21に対し保持部材4を挿通する段階で、保持部材4がガイド本体部21に対し誤った位置関係になっていることを容易に把握可能となっている。
【0084】
ガイド部材2に対し保持部材4をセットした後、機構保持部42の他端側(ガイド部材2から出ている側)から機構保持部42の内周に操作側機構部5を挿通し、保持部材4に対し操作側機構部5を取付けた状態とする。操作側機構部5には、予めチューブ部材12が接続されており、また、このチューブ部材12の内周には、伝達部材7が挿通された状態となっている。尚、保持部材4に操作側機構部5を取付けた後、ガイド本体部21へと保持部材4を挿通してもよい。
【0085】
次いで、ガイド被挿通部311とオーバーフロー口102とをほぼ同軸とした状態で、側壁部101の裏側に、継手部材3を配置する。尚、継手部材3の一端部には、シール部材11が予め取付けられた状態とされている。
【0086】
その後、伝達部材7を先頭にして、伝達部材7、保持部材4及びガイド部材2を、オーバーフロー口102を通して、継手部材3に挿通する。そして、ガイド部材2の鍔部22を側壁部101に対し近接又は接触した状態とする。
【0087】
次いで、保持部材4の透孔414を通して、前記雄ねじ10をねじ穴312Aに対し螺合する。これにより、係止部412が被係止部23に対し確実に係止されるとともに、鍔部22及び継手部材3によって洗面ボール100(側壁部101)が挟み込まれた状態となり、洗面ボール100に対しガイド部材2、継手部材3、保持部材4及び操作側機構部5が取付けられる。
【0088】
尚、本実施形態では、上記の通り、前記中心軸CL1と直交する方向に沿ったガイド被挿通部311及びガイド本体部21の相対移動が規制されるとともに、前記中心軸CL1と直交する方向に沿ったガイド本体部21に対する係止部412の相対移動が規制される。そのため、中心軸CL1と直交する方向に沿ったガイド部材2、継手部材3及び保持部材4等の相対位置は、ガイド部材2を基準とした一定位置に定まることとなる。従って、部材の位置調節を特に行うことなく、各部材をより正確に一定位置に配置することができる。その結果、良好な美観をより確実に得ることができるとともに、取付作業性の向上を図ることが可能となっている。
【0089】
また、万が一、ガイド本体部21に対し保持部材4を挿通する段階で、両者が誤った相対位置関係となっていることを取付作業者が把握できなかったとしても、保持部材4を上下逆にした状態では、被係止部23に対し係止部412が係止された状態とはならないため、ねじ穴312Aに対する雄ねじ10の螺合に支障が生じたり、また仮にねじ穴312Aへと雄ねじ10を螺合できたとしても、ガイド部材2や保持部材4の取付状態が不安定なものとなったりする。そのため、取付作業者は、保持部材4がガイド本体部21に対し誤った位置関係になっていることを確実に把握可能である。
【0090】
洗面ボール100に対するガイド部材2等の取付後、操作軸52の一端部に操作ボタン6を取付ける。これにより、洗面ボール100に対する操作装置1の取付が完了する。
【0091】
以上詳述したように、本実施形態によれば、ガイド部材2はその全体が薄肉の高剛性材料からなるため、鍔部22に相当する部位を別体とした場合に必要となる、鍔部22に相当する部位とその他の部位とを固定するための構造や、両者を固定するための工程は不要となる。そのため、製造コストの低減や生産性の向上を図ることができる。
【0092】
さらに、鍔部22に相当する部位を別体とした場合に懸念される、ガイド部材2の耐久性低下といった事態は生じることなく、ガイド部材2において十分な耐久性をより確実に確保することができる。
【0093】
加えて、本実施形態によれば、比較的簡便な手法によって、洗面ボール100に対しガイド部材2や継手部材3等を取付けることができ、良好な取付作業性を得ることができる。
【0094】
また、取付後においては、被係止部23に対し鍔部22から遠ざかる方向の引っ張り力が加わった状態となる。そのため、洗面ボール100側に対し鍔部22を強く押付けた状態とすることができ、洗面ボール100に対しガイド部材2を強固かつ安定した状態で固定することができる。
【0095】
さらに、洗面ボール100や、洗面ボール100及び継手部材3間に配置されるシール部材11の厚さの変化によって、洗面ボール100の表面に対する継手部材3の相対位置が変化する一方、洗面ボール100などの厚さが変わったとしても、洗面ボール100の表面に対するガイド部材2やこれに係止される保持部材4の相対位置は変化せず一定とされる。従って、保持部材4に保持される操作側機構部5や操作側機構部5により支持される操作ボタン6についても、洗面ボール100の表面に対する相対位置を一定とすることができる。これにより、特段の対処を行うことなく、様々な取付対象物に対し、その表面に対する相対位置が一定となった状態で操作ボタン6を配置することができる。
【0096】
また、軸方向位置維持手段8によって、保持部材4の係止部412がガイド部材2の被係止部23に接触又は接近した状態で、両部材2,4の相対移動を規制することができ、前記中心軸CL1方向に沿った両部材2,4の相対位置を一定位置にて維持することができる。従って、操作装置1の取付時などにおいて、ガイド部材2に対して保持部材4が容易に動いてしまったり、ガイド部材2から保持部材4が抜けてしまったりすることをより確実に防止できる。その結果、より良好な取付作業性を得ることができる。
【0097】
さらに、直交方向位置維持手段9により、前記中心軸CL1と直交する方向に沿ったガイド部材2及び保持部材4の相対位置を一定に保つことができる。これにより、操作装置1の取付やメンテナンス(交換)時などにおいて、前記直交方向に沿った、保持部材4により支持される操作側機構部5とガイド部材2との相対位置を容易に一定に保つことができ、ひいては、前記直交方向に沿った、ガイド部材2と操作ボタン6との相対位置についても容易に一定に保つことができる。従って、取付後の操作装置1において、ガイド部材2に対する操作ボタン6の位置ずれが生じてしまうことをより確実に防止できる。その結果、良好な美観をより確実に得ることができるとともに、ガイド部材2によって操作ボタン6をより適切にガイドすることが可能となる。
【0098】
また、操作装置1の取付時などにおいて、前記直交方向に沿ったガイド部材2に対する保持部材4の位置を特に調節する必要がなくなり、さらに、保持部材4の透孔414を通したねじ穴312Aに対する雄ねじ10の螺合などを容易に行うことができる。これにより、取付作業性を一層向上させることができる。
【0099】
加えて、ガイド本体部21の内部に浸入した水〔通常、重力によってガイド本体部21の内側面下部に付着した(溜まった)状態となる〕を、ガイド本体部21の内側面下部を伝わせつつ、隙間部412A及び流出部23Dを通して、ガイド本体部21の外部へと流出させることができる。従って、ガイド本体部21の内部(例えば、ガイド本体部21の内側面下部とこれに接触する保持部材4とで形成された凹み状の角部分など)において水が溜まってしまうことをより確実に防止できる。その結果、ガイド本体部21や保持部材4に対する汚れの付着を抑制することができ、衛生性や清掃性を高めることができる。
【0100】
さらに、仮にガイド本体部21及び保持部材4を誤った相対位置関係とした状態で、係止部412をガイド本体部21内へと挿通してしまった場合であっても、第一誤取付防止部23C及び第二誤取付防止部411Aが接触することで、係止部412のそれ以上の挿通が規制され、ひいては被係止部23に対し係止部412が係止された状態となってしまうことを防止できる。従って、取付作業者が細心の注意を払わずとも、誤った相対位置関係でガイド部材2や保持部材4が取付けられてしまうことをより確実に防止できる。これにより、取付作業性の向上をより図ることができるとともに、取付られた操作装置1において、想定した機能を十分に発揮させることができる。
【0101】
また、操作ボタン6が保持部材4に設けられた保護部413と接触することで、操作ボタン6における過度の往動を規制することができる。これにより、例えば操作ボタン6に対し過度の押圧力が加えられること等によって、操作側機構部5やこれを保持する機構保持部42に対し、過度に大きな力が加わってしまうことを抑制できる。そのため、機構保持部42から操作側機構部5が外れてしまったり、操作側機構部5や機構保持部42に破損が生じてしまったりすることをより確実に防止できる。その結果、装置の耐久性を効果的に高めることができる。
【0102】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0103】
(a)上記実施形態において、ガイド本体部21の中心軸CL1は斜め水平方向に延びるものとされているが、中心軸CL1は水平方向に延びるものであってもよい。この場合においても、ガイド本体部21の内部に浸入した水は、ガイド本体部21の内側面下部に付着した(溜まった)状態となるが、隙間部412A及び流出部23Dの存在により、浸入した水をガイド本体部21の外部へと流出させることができる。
【0104】
尚、ガイド本体部21の中心軸CL1が、上述した水平方向や斜め水平方向とは異なる方向(例えば、鉛直方向)に延びるように構成してもよい。
【0105】
(b)上記実施形態において、ガイド本体部21の内側面は、前記中心軸CL1と直交する断面において矩形状をなしているが、この形状については適宜変更可能である。従って、例えば、ガイド本体部の内側面を、前記断面において円形状や楕円形状、正方形状、多角形状などにしてもよい。また、ガイド本体部の形状変更に合わせて、保持部材や操作ボタン等の形状を変更してもよい。
【0106】
尚、ガイド本体部の内側面及び保持部材の外縁部分(係止部)を断面円形状や断面楕円形状などとしたときには、ガイド本体部の中心軸の周方向に沿ったガイド本体部及び保持部材の相対位置関係を正規の相対位置関係とは異なる誤った相対位置関係とした状態で、係止部を、ガイド本体部の一端部開口からガイド本体部内へと挿通可能となることがある。このような場合には、上記実施形態にあるように、第一誤取付防止部及び第二誤取付防止部によって、誤った相対位置関係とした状態で係止部をガイド本体部の一端部開口からガイド本体部内へと挿通したときに、被係止部に対し係止部が係止された状態とならないように構成することが好ましい。
【0107】
(c)上記実施形態において、隙間部412Aは、外環部41に設けられた窪みによって形成されているが、隙間部の構成はこれに限定されるものではない。従って、例えば、外環部における下側の長辺部分をその長手方向に沿って不連続な状態とし(例えば、一部が切断されたような状態とし)、この不連続部分を形成する隙間によって、隙間部を構成してもよい。また、例えば、外環部における下側の長辺部分全域を、ガイド本体部21の内側面下部から離間させた状態とすることで、前記長辺部分とガイド本体部の内側面下部との間に形成された隙間によって、隙間部を構成してもよい。
【0108】
(d)上記実施形態において、操作装置1は、洗面ボール100に取付けられているが、操作装置1の取付対象はこれに限られるものではない。例えば、洗面ボール以外の槽体(例えば、浴槽や流し台など)に操作装置1を取付けることとしてもよい。また、槽体の近傍に設けられた構造物(例えば、洗面ボール近傍に設けられたカウンタや流し台のカウンタ等)に対し操作装置1を取付けることとしてもよい。
【符号の説明】
【0109】
1…操作装置、2…ガイド部材、3…継手部材、4…保持部材、5…操作側機構部、6…操作ボタン、7…伝達部材、8…軸方向位置維持手段、9…直交方向位置維持手段、10…雄ねじ、21…ガイド本体部、22…鍔部、23…被係止部、23C…第一誤取付防止部、23D…流出部、31…ガイド被挿通部、42…機構保持部、52…操作軸、100…洗面ボール(槽体、取付対象物)、102…オーバーフロー口(貫通孔)、312A…ねじ穴、411A…第二誤取付防止部、412…係止部、412A…隙間部、413…保護部、414…透孔、CL1…(ガイド本体部の)中心軸、CL2…(ガイド被挿通部の)中心軸。
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