(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6788250
(24)【登録日】2020年11月4日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】環境水試料の前処理方法、環境水試料の前処理剤、並びに、生物相又は生物の量の推定方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6806 20180101AFI20201116BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALI20201116BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20201116BHJP
A01N 33/12 20060101ALI20201116BHJP
A01N 25/00 20060101ALI20201116BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20201116BHJP
C02F 1/50 20060101ALI20201116BHJP
C12Q 1/6888 20180101ALN20201116BHJP
【FI】
C12Q1/6806 Z
C12Q1/6851 ZZNA
C12Q1/686 Z
A01N33/12 101
A01N25/00 102
A01P1/00
C02F1/50 510Z
C02F1/50 532D
!C12Q1/6888 Z
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-139423(P2020-139423)
(22)【出願日】2020年8月20日
(62)【分割の表示】特願2016-43495(P2016-43495)の分割
【原出願日】2016年3月7日
【審査請求日】2020年8月21日
(31)【優先権主張番号】特願2015-226878(P2015-226878)
(32)【優先日】2015年11月19日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591237331
【氏名又は名称】株式会社日吉
(73)【特許権者】
【識別番号】597065329
【氏名又は名称】学校法人 龍谷大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100135839
【弁理士】
【氏名又は名称】大南 匡史
(72)【発明者】
【氏名】近藤 昭宏
(72)【発明者】
【氏名】山中 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】源 利文
(72)【発明者】
【氏名】松浦 潤一
【審査官】
藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−135681(JP,A)
【文献】
特開2012−051903(JP,A)
【文献】
特開平10−114604(JP,A)
【文献】
特開2015−174836(JP,A)
【文献】
特表2004−534731(JP,A)
【文献】
特開2000−342259(JP,A)
【文献】
米国特許第6204375(US,B1)
【文献】
FEMS Microbiol. Ecol. (2013) Vol.83, pp.468-477
【文献】
Biotechnol. Lett. (2013) Vol.35, pp.891-900
【文献】
PLoS ONE (2012) Vol.7, No.4, e35868, pp.1-8
【文献】
PLoS ONE (2013) Vol.8, No.2, e56584, pp.1-5
【文献】
Limnology (2012) Vol.13, pp.193-197
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00−3/00
A01N 33/00
A01P 1/00−3/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の環境から採取された環境水試料に含まれる核酸を分析することにより、前記環境水試料の採取場所における微生物以外の生物相又は微生物以外の特定の生物の量を推定するための環境水試料の前処理方法であって、
前記環境水試料から核酸を抽出する前に行われるものであり、
核酸の分析に供する前の前記環境水試料に、4級アンモニウム塩を有効成分とする消毒剤を直接適用するものであり、
前記核酸はDNAであり、
前記4級アンモニウム塩は、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、及び塩化ジデシルジメチルアンモニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする環境水試料の前処理方法。
【請求項2】
所定の環境から採取された環境水試料に含まれる核酸を分析することにより、前記環境水試料の採取場所における微生物以外の生物相又は微生物以外の特定の生物の量を推定するための環境水試料の前処理方法であって、
前記環境水試料から核酸を抽出する前に行われるものであり、
核酸の分析に供する前の前記環境水試料に、4級アンモニウム塩を有効成分とする消毒剤を直接適用するものであり、
前記核酸はDNAであり、
前記4級アンモニウム塩は、塩化ベンザルコニウムであることを特徴とする記載の環境水試料の前処理方法。
【請求項3】
前記環境水試料中における前記4級アンモニウム塩の濃度が0.0005〜0.4w/v%となるように、前記環境水試料に前記消毒剤を添加することを特徴とする請求項1又は2に記載の環境水試料の前処理方法。
【請求項4】
前記環境水試料中における前記4級アンモニウム塩の濃度が0.001〜0.1w/v%となるように、前記環境水試料に前記消毒剤を添加することを特徴とする請求項1又は2に記載の環境水試料の前処理方法。
【請求項5】
前記核酸の分析は、前記核酸を核酸増幅反応に供し、その増幅産物の有無又は量を指標とするものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の環境水試料の前処理方法。
【請求項6】
前記生物は、魚類又は両生類であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の環境水試料の前処理方法。
【請求項7】
所定の環境から採取され且つ請求項1〜6のいずれかに記載の方法によって前処理された環境水試料に含まれる核酸を分析することにより、前記環境水試料の採取場所における微生物以外の生物相又は微生物以外の特定の生物の量を推定することを特徴とする生物相又は生物の量の推定方法。
【請求項8】
前記核酸の分析は、前記核酸を核酸増幅反応に供し、その増幅産物の有無又は量を指標とするものであることを特徴とする請求項7に記載の生物相又は生物の量の推定方法。
【請求項9】
前記核酸増幅反応は、リアルタイムPCRであることを特徴とする請求項8に記載の生物相又は生物の量の推定方法。
【請求項10】
前記生物は、魚類又は両生類であることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の生物相又は生物の量の推定方法。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれかに記載の方法によって前記環境水試料を処理することにより、前記環境水試料の採取場所における微生物以外の生物相又は微生物以外の特定の生物の量を推定するための核酸の分析に供する試料を製造することを特徴とする試料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境水試料の前処理方法、環境水試料の前処理剤、並びに、生物相又は生物の量の推定方法に関する。本発明は、環境DNA分析による生物相又は生物の量の推定に有用なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境中に存在するDNA(環境DNA)を分析することにより、当該環境における生物種の特定等を行う「環境DNA分析」が注目されている。環境DNAは、生物が環境中に放出したDNAで主に構成されている。
【0003】
河川や湖沼等の環境から採取した水試料(環境水試料)を環境DNA分析に供することにより、当該環境における生物種の生息分布を把握できる技術が開発されている。この技術によれば、生物個体の捕獲や目視をすることなく、当該環境における生物の生息分布を把握することができる。
例えば、非特許文献1には、環境DNA分析によって魚類相解析を行うことができる技術が記載されている。また非特許文献2には、ため池から採取した環境水試料に含まれる環境DNAを分析することにより、外来魚の侵入や存在を簡単かつ迅速に調べることができる技術が記載されている。さらに非特許文献3には、環境水試料に含まれる環境DNAを分析することにより、生物の量を推定できることが記載されている。
【0004】
非特許文献1〜3に記載の技術では、環境水試料をフィルターろ過して得られた固形物(捕捉物)から核酸を抽出し、この核酸と生物種特異的プライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行う。そして、増幅産物の有無又は量を指標として、当該環境における生物相の推定あるいは特定の生物の量の推定を行う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Minamoto T., Yamanaka H., Takahara T., Honjo M. N., Kawabata Z. (2012) "Surveillance of fish species composition using environmental DNA" Limnology 13(2), 193-197
【非特許文献2】Takahara T., Minamoto T., Doi H. (2013) "Using environmental DNA to estimate the distribution of an invasive fish species in ponds" PLOS ONE. 8(2): e56584
【非特許文献3】Takahara T., Minamoto T., Yamanaka H., Doi H., Kawabata Z. (2012) "Estimation of fish biomass using environmental DNA" PLOS ONE, 7 (4), e35868
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、環境DNA分析において環境水試料の分析を行う場合には、採取した試料を試験室に移送する必要がある。そのため、試料採取から分析開始まで数時間から数日かかることもあり、移送中の試料の保存管理方法が問題となる。すなわち、環境水試料には自然界由来の夾雑物が多く含まれているので、時間の経過とともに核酸分解酵素による核酸の分解が起こるおそれがある。核酸の分解が移送中にどの程度起こるのかは定かでないが、核酸の分解が環境DNA分析の精度と感度に影響を与える可能性は否定できない。したがって、環境DNA分析においては、試料採取から分析開始までの間に、環境水試料に含まれる核酸の分解を如何にして抑えるかが1つの課題となる。
【0007】
一般に、液体試料に含まれる核酸の分解を抑えるための方策として、液体試料を冷蔵保存又は冷凍保存することが挙げられる。例えば、環境DNA分析の分野では、環境水試料を採取後すみやかに冷蔵することが挙げられる。冷蔵することにより、核酸分解酵素の活性抑制が期待される。しかし、この方策では採取場所に保冷剤等を持ち込む必要があり、操作が煩雑である。別の方策として、環境水試料を採取後ただちにフィルターろ過し、当該フィルターを冷凍することが挙げられる。しかし、この方策では、ドライアイス等の保冷剤に加えてフィルターろ過装置を採取現場に持ち込む必要があり、操作がさらに煩雑となる。
【0008】
そこで本発明は、環境DNA分析によって生物相の推定又は特定の生物の量の推定するにあたり、環境水試料に含まれる核酸の分解を抑えるための新しい技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、4級アンモニウム塩を必須成分とする組成物、具体的には4級アンモニウム塩を有効成分とする消毒剤で環境水試料を予め処理することにより、環境水試料に含まれる核酸の保存安定性が向上し、上記課題を解決できることを見出した。詳細には、通常は固体の消毒対象物に噴霧あるいは塗布し、あるいは固体の消毒対象物を浸漬させて使用される前記消毒剤を、分析対象である環境水試料に直接適用することにより、環境水試料に含まれる核酸の分解が抑えられ、環境水試料の長時間保存が可能となることを見出した。さらに、当該処理を行うことにより、環境DNA分析の感度と精度が格段に向上することを見出した。
【0010】
本発明の1つの様相は、所定の環境から採取された環境水試料に含まれる核酸を分析することにより、前記環境水試料の採取場所における生物相又は特定の生物の量を推定するための環境水試料の前処理方法であって、核酸の分析に供する前の前記環境水試料を、4級アンモニウム塩を有効成分とする消毒剤に接触させることを特徴とする環境水試料の前処理方法である。
【0011】
本様相は環境水試料の前処理方法に係るものである。本様相では、核酸の分析に供する前の前記環境水試料を、4級アンモニウム塩を有効成分とする消毒剤に接触させる。例えば、所定の環境から採取した直後の環境水試料に、4級アンモニウム塩を有効成分とする消毒剤を添加する。本様相の環境水試料の前処理方法によれば、環境水試料に含まれる核酸の分解が抑えられる。そのため、試料採取から核酸分析開始までの時間が長時間となっても、分析の精度や感度への影響が最小限に抑えられる。また、本様相の環境水試料の前処理方法は、環境水試料を上記消毒剤に接触させる(例えば、上記消毒剤を添加する)だけの簡単な構成からなるので、特別の機器類を必要とすることもなく、操作が容易である。
【0012】
好ましくは、前記消毒剤は、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、及び塩化ジデシルジメチルアンモニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種を有効成分とするものである。
【0013】
好ましくは、前記環境水に前記消毒剤を添加する。
【0014】
好ましくは、前記核酸の分析は、前記核酸を核酸増幅反応に供し、その増幅産物の有無又は量を指標とするものである。
【0015】
好ましくは、前記生物は、魚類又は両生類である。
【0016】
本発明の他の様相は、核酸の分析に供する前の前記環境水試料に接触させるものであり、4級アンモニウム塩を有効成分とする消毒剤を含有することを特徴とする環境水試料の前処理剤である。
【0017】
本様相は環境水試料の前処理剤に係るものである。本様相の前処理剤は、4級アンモニウム塩を有効成分とする消毒剤を含有する。本発明の前処理剤を、核酸の分析に供する前の環境水試料(例えば、採取直後の環境水試料)に接触させる(例えば、添加する)ことにより、環境水試料に含まれる核酸の分解が抑えられる。そのため、試料採取から核酸分析開始までの時間が長時間となっても、分析の精度や感度への影響が最小限に抑えられる。また、本様相の前処理剤を用いれば、環境水試料に接触させる(例えば、添加する)だけで核酸の分解が抑えられるので、操作が容易である。
【0018】
好ましくは、前記消毒剤は、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、及び塩化ジデシルジメチルアンモニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種を有効成分とするものである。
【0019】
好ましくは、前記核酸の分析は、前記核酸を核酸増幅反応に供し、その増幅産物の有無又は量を指標とするものである。
【0020】
本発明の他の様相は、所定の環境から採取され且つ上記の方法によって前処理された環境水試料に含まれる核酸を分析することにより、前記環境水試料の採取場所における生物相又は特定の生物の量を推定することを特徴とする生物相又は生物の量の推定方法である。
【0021】
本様相は、生物相又は生物の量の推定方法に係るものである。本様相の生物相又は生物の量の推定方法では、4級アンモニウム塩を有効成分とする消毒剤で処理された環境水試料を用い、環境水試料に含まれる核酸を分析する。本様相の生物相又は生物の量の推定方法では、前処理によって核酸の分解が抑えられた環境水試料を用いるので、より高い精度と感度をもって生物相又は生物の量の推定を行うことができる。
【0022】
好ましくは、前記核酸の分析は、前記核酸を核酸増幅反応に供し、その増幅産物の有無又は量を指標とするものである。
【0023】
好ましくは、前記核酸増幅反応は、リアルタイムPCRである。
【0024】
好ましくは、前記生物は、魚類又は両生類である。
【0025】
かかる構成により、所定の環境における魚類又は両生類の分布や量を、より高精度で推定することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、環境水試料を用いた環境DNA分析による生物相の推定又は特定の生物の量の推定を、より簡便にかつ高精度で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施例1で行ったDNAの定量結果を表すグラフである。
【
図2】実施例2で行ったDNAの定量結果を表すグラフである。
【
図3】実施例3で行ったDNAの定量結果を表すグラフである。
【
図4】実施例4で行ったDNAの定量結果を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の前処理方法及び前処理剤は、所定の環境から採取された環境水試料に含まれる核酸を分析することにより、前記環境水試料の採取場所における生物相又は特定の生物の量を推定するために用いられるものである。典型的には、前記核酸は環境水試料に含まれる固形物から抽出されたものであり、本発明の前処理方法及び前処理剤は前記固形物から核酸を抽出する前の環境水試料に適用される。
【0029】
本発明では、環境水試料に4級アンモニウム塩を有効成分とする消毒剤を接触させることにより、環境水試料の前処理を行う。典型的には、前記消毒剤を環境水試料に添加する。
【0030】
上記4級アンモニウム塩の例としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、等が挙げられる。例えば、市販の10w/v%塩化ベンザルコニウム水溶液、10w/v%塩化ベンゼトニウム水溶液、10w/v%塩化ジデシルジメチルアンモニウム水溶液を用いることができる。これらの4級アンモニウム塩については、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
上記消毒剤の適用量としては、環境水試料に含まれる核酸の分解が抑制され、かつ後に行う環境DNA分析に悪影響を与えない量であれば特に限定はなく、環境水試料の採取場所や環境水試料の性状等によって適宜選択することができる。
塩化ベンザルコニウムを有効成分とする消毒剤を用いる場合には、例えば、環境水試料中における塩化ベンザルコニウムの最終濃度が0.0005〜0.4w/v%、好ましくは0.0008〜0.2w/v%、より好ましくは0.001〜0.1w/v%となるように、前記消毒剤を環境水試料に添加することができる。例えば、消毒剤として10w/v%塩化ベンザルコニウム水溶液を使用するならば、当該消毒剤が20000〜25倍希釈、好ましくは12500〜50倍希釈、より好ましくは10000〜100倍希釈されるように、環境水試料に添加することができる。
【0032】
塩化ベンゼトニウムを有効成分とする消毒剤を用いる場合も同様であり、例えば、環境水試料中における塩化ベンゼトニウムの最終濃度が0.0005〜0.4w/v%、好ましくは0.0008〜0.2w/v%、より好ましくは0.001〜0.1w/v%となるように、前記消毒剤を環境水試料に添加することができる。
塩化ジデシルジメチルアンモニウムを有効成分とする消毒剤を用いる場合も同様であり、例えば、環境水試料中における塩化ジデシルジメチルアンモニウムの最終濃度が0.0005〜0.4w/v%、好ましくは0.0008〜0.2w/v%、より好ましくは0.001〜0.1w/v%となるように、前記消毒剤を環境水試料に添加することができる。
【0033】
本発明による環境水試料の前処理は、試料の採取直後に行うことが好ましい。本発明では4級アンモニウム塩を有効成分とする消毒剤を適用するだけの簡単な構成を採用しているので、試料の採取場所でも容易に前処理を行うことができる。
【0034】
本発明の前処理剤の形態としては特に限定はなく、液状、半固体状、固体状のいずれでもよいが、液状が好ましく採用される。液状の前処理剤であれば、環境水試料への添加と混和を容易に行える。
【0035】
添加以外の方法で環境水試料に消毒剤を接触させる方法としては、例えば、消毒剤を固定化した担体に環境水試料を流して連続的に接触させることが挙げられる。
【0036】
本発明の前処理剤には、4級アンモニウム塩による核酸分解抑制作用を損なわない範囲において、他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、エタノール等のアルコール類、核酸分解酵素の阻害剤(EDTA等)、等が挙げられる。
【0037】
本発明は、所定の環境から採取され且つ上記の方法によって前処理された環境水試料に含まれる核酸を分析することにより、前記環境水試料の採取場所における生物相又は特定の生物の量を推定することを特徴とする生物相又は生物の量の推定方法を包含する。
【0038】
好ましい実施形態では、前記核酸を核酸増幅反応に供し、その増幅産物の有無又は量を指標として生物相又は生物の量を推定する。核酸増幅反応の代表例はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。例えば、生物種特異的なプライマーを用いてPCRを行い、増幅産物の有無や量を調べることにより、試料採取場所における当該生物種の有無や量を推定することができる。特にリアルタイムPCRによればDNAの定量が可能であり、生物の量の推定に特に有用である。
【0039】
核酸増幅反応以外の方法であっても、生物種特異的な配列を検出できる方法であれば採用可能である。例えば、次世代シーケンサーを用いたメタバーコーディング等の手法が採用可能である。
【0040】
環境水試料の前処理から核酸分析を行うまでの時間は、一般的には短い方が好ましいが、本発明では環境水試料に含まれる核酸の分解が抑えられているので、長時間であってもかまわない。少なくとも、3〜10日程度の時間が経過しても特に問題はない。前処理後の環境水試料の保存温度についても、一般的には低温が好ましいが、常温でも特に問題はない。
【0041】
好ましい実施形態では、環境水試料に含まれる核酸は、環境水試料に含まれる固形物から抽出される。当該固形物は、例えば、環境水試料をろ過して得られる捕捉物である。そして、本発明の前処理方法及び前処理剤は、核酸の抽出前の環境水試料に適用されることが好ましく、より好ましくは固形物を単離する前の環境水試料、最も好ましくは、上記したように、採取直後の環境水試料に適用される。
【0042】
本発明における生物相や生物の量の推定の対象となる生物としては、魚類、両生類が挙げられる。その他の例として、水棲昆虫、貝類などの水生無脊椎動物や、水生植物が挙げられる。
【0043】
以下、実施例をもって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0044】
(1)環境水試料の採取
琵琶湖の長命寺港にて湖水を採取し、500mL×9本に分けた。各環境水試料について、C1、C2、C3(Cシリーズ)、CC1、CC2、CC3(CCシリーズ)、B1、B2、B3(Bシリーズ)と命名した。
【0045】
(2)環境水試料の前処理
試料名C1、C2、C3(Cシリーズ)については前処理をせず、そのまま6時間冷蔵保存した。
試料名CC1、CC2、CC3(CCシリーズ)については前処理をせず、そのまま6時間冷蔵保存した後、フィルターろ過まで23℃程度にインキュベートした。
試料名B1、B2、B3(Bシリーズ)については、採取後ただちに10%塩化ベンザルコニウム液(商品名:タケクリーンA−ST、攝津製油社)を1/1000量加えた(塩化ベンザルコニウムの終濃度0.01w/v%)。6時間冷蔵保存した後、フィルターろ過まで23℃程度にインキュベートして保存した。
【0046】
(3)フィルターろ過とDNAの精製
グラスファイバーフィルター(GE社製、ガラス繊維ろ紙(グレードGF/F))を用いて各試料を濾過し、固形分をフィルター上に捕捉した。
試料名C1、C2、C3については、採取後6時間(冷蔵6時間)の時点で濾過した。その他の試料については、採取後78時間(冷蔵6時間+23℃保存72時間)の時点で濾過した。
各試料とも、濾過量は全量(環境水試料500mLを含む)とした。
DNeasy Blood and Tissueキット(Qiagen社)を用いて、フィルター上の固形物からDNAを抽出及び精製した。
【0047】
(4)リアルタイムPCRによるDNAの定量
非特許文献2に記載のブルーギル(Lepomis macrochirus)特異的プライマー(配列番号1,2)を用い、上記(3)で抽出・精製したDNAを鋳型として、リアルタイムPCRによるDNA定量を行った。リアルタイムPCRには、Taqman gene Expression Master Mix及びTaqmanプローブ(配列番号3、Life Technologies社)を用いた。温度サイクルとして、50℃2分、95℃10分の後、95℃15秒−60℃60秒のサイクルを55回行った。各シリーズについて、得られた値(コピー数)の平均値と標準偏差(SD)を算出した。
【0048】
(5)結果
結果を
図1に示す。
図1は各シリーズのコピー数の平均値を示すグラフであり、「C」、「CC」、「B」は、それぞれCシリーズ(試料名C1、C2、C3)、CCシリーズ(試料名CC1、CC2、CC3)、Bシリーズ(試料名B1、B2、B3)のコピー数の平均値を示している。エラーバーは平均値±SDを示している。
図1に示すように、塩化ベンザルコニウム液で前処理したBシリーズは、採取後ただちに冷蔵保存したCシリーズよりも4倍程度高いコピー数を示した。これは、Bシリーズでは塩化ベンザルコニウムの作用によってDNAの分解が抑えられ、採取から3日経過しても分析に必要なDNA量が十分維持されていたことを示していた。なお、CCシリーズでは、リアルタイムPCRによるDNA定量が困難であった。これは、試料採取からフィルターろ過/DNA抽出までの間にDNAが分解されたため、定量が困難になったものと考えられた。
以上より、環境水試料を塩化ベンザルコニウムで前処理することにより、環境水試料中のDNAの分解が抑えられ、環境DNA分析を高感度、高精度かつ簡便に行えることが示された。
【実施例2】
【0049】
(1)環境水試料の採取
滋賀県大津市内の池から水を採取し、500mL×42本に分けた。各環境水試料について、表1に示すように命名した。
【0050】
【表1】
【0051】
(2)環境水試料の前処理
試料名CF1〜CF3(CFシリーズ)については前処理をせず、採水後ただちにグラスファイバーフィルター(GE社製、ガラス繊維ろ紙(グレードGF/F))を用いて各試料500mLを濾過し、固形分をフィルター上に捕捉した。さらに、濾過後のフィルターを直ちに冷凍保存した。
【0052】
試料名CE1〜CE3(CEシリーズ)については前処理をせず、そのまま常温で8時間保存した。
【0053】
試料名BA1−1〜BA3−3(BAシリーズ)については、採取後ただちに10w/v%塩化ベンザルコニウム液(商品名:タケクリーンA−ST、攝津製油社)を所定量加え、そのまま常温で8時間保存した。塩化ベンザルコニウムの終濃度として、BA1−1〜BA1−3(BA1シリーズ)は0.1w/v%、BA2−1〜BA2−3(BA2シリーズ)は0.01w/v%、BA3−1〜BA3−3(BA3シリーズ)は0.001w/v%とした。
【0054】
試料名BE1−1〜BE3−3(BEシリーズ)については、採取後ただちに10w/v%塩化ベンゼトニウム液(商品名:ハイアミン液10%、第一三共エスファ社)を所定量加え、そのまま常温で8時間保存した。塩化ベンゼトニウムの終濃度として、BE1−1〜BE1−3(BE1シリーズ)は0.1w/v%、BE2−1〜BE2−3(BE2シリーズ)は0.01w/v%、BE3−1〜BE3−3(BE3シリーズ)は0.001w/v%とした。
【0055】
試料名D1−1〜D3−3(Dシリーズ)については、採取後ただちに7w/v%塩化ジデシルジメチルアンモニウム液(商品名:カチオーゲンDDM−PG、第一工業製薬社)を所定量加え、そのまま常温で8時間保存した。塩化ジデシルジメチルアンモニウムの終濃度として、D1−1〜D1−3(D1シリーズ)は0.07w/v%、D2−1〜D2−3(D2シリーズ)は0.007w/v%、D3−1〜D3−3(D3シリーズ)は0.0007w/v%とした。
【0056】
試料名S1−1〜S3−3(Sシリーズ)については、採取後ただちに5w/v%次亜塩素酸ナトリウム液(和光純薬工業社)を所定量加え、そのまま常温で8時間保存した。次亜塩素酸ナトリウムの終濃度として、S1−1〜S1−3(S1シリーズ)は0.1w/v%、S2−1〜S2−3(S2シリーズ)は0.01w/v%、S3−1〜S3−3(S3シリーズ)は0.001w/v%とした。
【0057】
(3)フィルターろ過とDNAの精製
CFシリーズ以外の試料について、8時間の常温保存後、グラスファイバーフィルター(GE社製、ガラス繊維ろ紙(グレードGF/F))を用いて各試料を濾過し、固形分をフィルター上に捕捉した。各試料とも、濾過量は全量(環境水試料500mLを含む)とした。
DNeasy Blood and Tissueキット(Qiagen社)を用いて、フィルター上の固形物からDNAを抽出及び精製した。
【0058】
(4)リアルタイムPCRによるDNAの定量
実施例1と同様にして、ブルーギル特異的プライマーを用いたリアルタイムPCRを行った。各シリーズについて、得られた値(コピー数)の平均値と標準偏差(SD)を算出した。
【0059】
(5)結果
結果を
図2に示す。
図2は各シリーズのコピー数の平均値を示すグラフであり、例えば「CF」は、CFシリーズ(試料名CF1、CF2、CF3)のコピー数の平均値を示している。エラーバーは平均値±SDを示している。
図2に示すように、BA1、BA2、BA3シリーズ(塩化ベンザルコニウム処理)、BE1、BE2、BE3シリーズ(塩化ベンゼトニウム処理)、及びD1、D2、D3シリーズ(塩化ジデシルジメチルアンモニウム処理)について、CEシリーズ(無処理)よりも3〜6倍程度高いコピー数を示した。特に、BA1、BA2、BA3シリーズではCFシリーズ(フィルター冷凍保存)と同等の高いコピー数を示した。BE1、BE2、BE3シリーズ、D1、D2、D3シリーズについても、環境DNAを高感度及び高精度で行うのに十分なコピー数を示した。
なお、S1、S2、S3シリーズ(次亜塩素酸ナトリウム処理)ではリアルタイムPCRによるDNA定量が困難であった。これは、次亜塩素酸ナトリウムの作用によって環境水試料中のDNAが分解されたためと考えられた。
以上より、環境水試料を、少なくとも終濃度0.1〜0.001w/v%の塩化ベンザルコニウム若しくは塩化ベンゼトニウム、又は、少なくとも終濃度0.07〜0.0007w/v%の塩化ジデシルジメチルアンモニウムで前処理することにより、環境水試料中のDNAの分解が抑えられ、環境DNA分析を高感度、高精度かつ簡便に行えることが示された。
【実施例3】
【0060】
(1)環境水試料の採取
滋賀県大津市内の河川から水を採取し、500mL×10本に分けた。各環境水試料について、CF4−1、CF4−2、CF4−3、CF4−4、CF4−5(CF4シリーズ)、並びに、BA4−1、BA4−2、BA4−3、BA4−4、BA4−5(BA4シリーズ)と命名した。
【0061】
(2)環境水試料の前処理とフィルターろ過
試料名CF4−1〜CF4−5(CF4シリーズ)については前処理をせず、採水後ただちにグラスファイバーフィルター(GE社製、ガラス繊維ろ紙(グレードGF/F))を用いて各試料を濾過し、固形分をフィルター上に捕捉した。各試料とも、濾過量は全量(環境水試料500mLを含む)とした。さらに、濾過後のフィルターを氷冷して6時間保存した。
【0062】
試料名BA4−1〜BA4−5(BA4シリーズ)については、採取後ただちに10w/v%塩化ベンザルコニウム液(商品名:タケクリーンA−ST、攝津製油社)を1/1000量加えた(塩化ベンザルコニウムの終濃度0.01w/v%)。そのまま常温で6時間保存した。6時間の常温保存後、グラスファイバーフィルター(GE社製、ガラス繊維ろ紙(グレードGF/F))を用いて各試料を濾過し、固形分をフィルター上に捕捉した。各試料とも、濾過量は全量(環境水試料500mLを含む)とした。
【0063】
(3)DNAの精製
DNeasy Blood and Tissueキット(Qiagen社)を用いて、フィルター上の固形物からDNAを抽出及び精製した。
【0064】
(4)リアルタイムPCRによるDNAの定量
アユ(Plecoglossus altivelis)特異的プライマー(配列番号4,5)を用い、上記(3)で抽出・精製したDNAを鋳型として、リアルタイムPCRによるDNA定量を行った。リアルタイムPCRには、Taqman gene Expression Master Mix及びTaqmanプローブ(配列番号6、Life Technologies社)を用いた。温度サイクルとして、実施例1と同様に、50℃2分、95℃10分の後、95℃15秒−60℃60秒のサイクルを55回行った。各シリーズについて、得られた値(コピー数)の平均値と標準偏差(SD)を算出した。
【0065】
(5)結果
結果を
図3に示す。
図3は各シリーズのコピー数の平均値を示すグラフであり、「CF4」、「BA4」は、それぞれCF4シリーズ(試料名CF4−1〜CF4−5)、BA4シリーズ(試料名BA4−1〜BA4−5)のコピー数の平均値を示している。エラーバーは平均値±SDを示している。
図3に示すように、塩化ベンザルコニウム液で前処理したBA4シリーズは、前処理をしなかったCF4シリーズよりも5倍程度高いコピー数を示した。これは、BA4シリーズでは塩化ベンザルコニウムの作用によってDNAの分解が抑えられ、採取から6時間経過しても分析に必要なDNA量が十分維持されていたことを示していた。
以上より、環境水試料を塩化ベンザルコニウムで前処理することにより、環境水試料中のDNAの分解が抑えられ、環境DNA分析を高感度、高精度かつ簡便に行えることが示された。
【実施例4】
【0066】
(1)環境水試料の採取
滋賀県大津市内の池から水を採取し、500mL×30本に分けた。各環境水試料について、表2に示すように命名した。
【0067】
【表2】
【0068】
(2)環境水試料の前処理
試料名CF5−1〜CF5−3(CF5シリーズ)については前処理をせず、採水後ただちにグラスファイバーフィルター(GE社製、ガラス繊維ろ紙(グレードGF/F))を用いて各試料500mLを濾過し、固形分をフィルター上に捕捉した。さらに、濾過後のフィルターを直ちに冷凍保存した。
【0069】
試料名CE6−1〜CE6−3(CE6シリーズ)については前処理をせず、そのまま常温(22℃程度)で1日保存した。
試料名CE7−1〜CE7−3(CE7シリーズ)については前処理をせず、そのまま常温(22℃程度)で3日保存した。
試料名CE8−1〜CE8−3(CE8シリーズ)については前処理をせず、そのまま常温(22℃程度)で5日保存した。
試料名CE9−1〜CE9−3(CE9シリーズ)については前処理をせず、そのまま常温(22℃程度)で10日保存した。
【0070】
試料名BA5−1〜BA5−3(BA5シリーズ)、試料名BA6−1〜BA6−3(BA6シリーズ)、試料名BA7−1〜BA7−3(BA7シリーズ)、試料名BA8−1〜BA8−3(BA8シリーズ)、及び試料名BA9−1〜BA9−3(BA9シリーズ)については、採取後ただちに10w/v%塩化ベンザルコニウム液(商品名:タケクリーンA−ST、攝津製油社)を1/1000量加えた(塩化ベンザルコニウムの終濃度0.01w/v%)。
【0071】
BA5シリーズについては、塩化ベンザルコニウム液の添加後ただちにグラスファイバーフィルター(GE社製、ガラス繊維ろ紙(グレードGF/F))を用いて各試料500mLを濾過し、固形分をフィルター上に捕捉した。さらに、濾過後のフィルターを直ちに冷凍保存した。
【0072】
BA6シリーズについては、塩化ベンザルコニウム液の添加後、そのまま常温(22℃程度)で1日保存した。
BA7シリーズについては、塩化ベンザルコニウム液の添加後、そのまま常温(22℃程度)で3日保存した。
BA8シリーズについては、塩化ベンザルコニウム液の添加後、そのまま常温(22℃程度)で5日保存した。
BA9シリーズについては、塩化ベンザルコニウム液の添加後、そのまま常温(22℃程度)で10日保存した。
【0073】
(3)フィルターろ過とDNAの精製
CF5シリーズとBA5シリーズ以外の試料について、所定日数の常温保存後、グラスファイバーフィルター(GE社製、ガラス繊維ろ紙(グレードGF/F))を用いて各試料を濾過し、固形分をフィルター上に捕捉した。各試料とも、濾過量は全量(環境水試料500mLを含む)とした。
DNeasy Blood and Tissueキット(Qiagen社)を用いて、フィルター上の固形物からDNAを抽出及び精製した。
【0074】
(4)リアルタイムPCRによるDNAの定量
実施例1と同様にして、ブルーギル特異的プライマーを用いたリアルタイムPCRを行った。各シリーズについて、得られた値(コピー数)の平均値と標準偏差(SD)を算出した。
【0075】
(5)結果
結果を
図4に示す。
図4は各シリーズのコピー数の平均値を示すグラフであり、例えば「CF5」は、CF5シリーズ(試料名CF5−1、CF5−2、CF5−3)のコピー数の平均値を示している。エラーバーは平均値±SDを示している。
図4に示すように、BA5シリーズ(塩化ベンザルコニウム処理後ただちに濾過、フィルターを冷凍保存)において、最も高いコピー数が得られた。さらに、塩化ベンザルコニウム処理後に1〜10日常温保存したBA6、BA7、BA8、BA9の各シリーズについて、環境DNAを高感度及び高精度で行うのに十分なコピー数が得られた。
一方、無処理で1〜10日常温保存したCE6、CE7、CE8、CE9の各シリーズでは低いコピー数しか得られなかった。特に、10日常温保存したCE9シリーズではDNA定量ができなかった。
以上より、環境水試料を塩化ベンザルコニウムで前処理することにより、環境水試料中のDNAの分解が抑えられ、環境DNA分析を高感度、高精度かつ簡便に行えることが示された。また環境水試料に当該処理を施すことにより、少なくとも10日間の常温保存が可能であることが示された。
【要約】
【課題】環境DNA分析に供する環境水試料に含まれる核酸の分解を抑えるための技術を提供する。
【解決手段】所定の環境から採取された環境水試料に含まれる核酸を分析することにより、前記環境水試料の採取場所における生物相又は特定の生物の量を推定するための環境水試料の前処理方法であって、核酸の分析に供する前の前記環境水試料を、4級アンモニウム塩を有効成分とする消毒剤に接触させることを特徴とする環境水試料の前処理方法が提供される。4級アンモニウム塩として塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウムが例示される。
【選択図】
図2
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]