(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図15に示す車椅子用の車輪80は、車輪80の外側に固定している円盤81の凸条85を手で掴んで駆動する。この構造の車輪80は、円盤81の凸条85を、上下から手で挟むように掴んで回転させるのでスリップしやすく、またスリップしないように強く掴むと手が疲れやすい欠点がある。さらに、この構造の車輪80は、リム82に円盤81を固定し、この円盤81から外側に凸条85を突出させているので、車輪全体が厚くなって狭い室内等をスムーズに移動できない欠点もある。また、
図14に示すように、従来のハンドリム95を固定している駆動車輪90も、ハンドリム95が外側に突出するので駆動車輪90の幅が広くなって、狭い室内をスムーズに移動できない欠点がある。
【0007】
本発明は、以上のような欠点を解決することを目的に開発されたもので、本発明の目的の一は、駆動車輪の構造を簡単にして多量生産しながら、駆動車輪を回転させるときに、手の指を痛めるのを防止して快適に使用できる車椅子を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、駆動車輪の幅を小さくして、狭い室内をスムーズに移動できる車椅子を提供することにある。
【0008】
本発明の
一実施形態に係る車椅子は、車椅子本体10の座部5に座って、両側に設けている駆動車輪3を手で回転させて移動するようにしてなる車椅子であって、駆動車輪3が、外周部にタイヤ31が装着されたリム部32と、リム部32の中心に連結部材34を介して連結されて、車椅子本体10に回転できるように連結されてなるハブ部33と、リム部32の外側に、リム部32に沿って配置された環状のハンドリム35と、ハンドリム35をリム部32に固定する連結具50とを備え、ハンドリム35を手で駆動して駆動車輪3を回転させるようにしている。
連結具50は、リム部32の内周面から中心方向に突出して設けられた固定片51と、固定片51とハンドリム35との間に配置されて、全体がリム部32の内周面側に配置されたスペーサー筒部53とを備えている。さらに、車椅子は、ハンドリム35をリム部32に接近させて、リム部32とハンドリム35との間に親指Sを通過できない幅の非通過隙間36を形成している。
【0009】
上記構成により、駆動車輪に固定されるハンドリムの連結位置をリム部に接近させて、リム部とハンドリムとの間に親指を通過できない幅の非通過隙間を形成するので、ハンドリムを手で駆動して駆動車輪を回転させるときに、リム部とハンドリムとの間に手の親指が挿入されるのを確実に阻止して、手指を痛めるのを防止して快適に使用できる。とくに、この駆動車輪は、リム部に対してハンドリムを接触させることなく、非通過隙間が形成されるように所定の間隔を離して配置するので、使用者がハンドリムを掴み難くなるのを有効に防止しながら、安全に、しかも安心してハンドリムを掴んで操作することができる。
【0010】
また、以上の車椅子は、駆動車輪の外側に連結されるハンドリムの位置をリム部に接近させるので、駆動車輪の外側方向へのハンドリムの突出量を小さくして、車椅子の幅を小さくでき、狭い室内をスムーズに移動できる特徴が実現できる。また、リム部とハンドリムとを短い距離で連結できるので、これらを連結する連結具にかかる負荷を小さくしながら、ハンドリムに加えられた駆動力を確実に駆動車輪に伝達することができ、操作性を向上することができる。
【0011】
さらに、以上の車椅子は、小さな力で駆動車輪を回転させて楽に移動できる特徴も実現できる。それは、駆動車輪に固定するハンドリムの位置をリム部に接近させることで、座部に座る使用者の手の位置に近づけることができるからである。一般に、体の周辺にある部材に、手を使って力を加える場合、体に近いほど力を伝達し易く、体から離れるほど力を伝達するのが難しくなる。車椅子では、車椅子本体の座部に座った使用者が両側に配置された駆動車輪のハンドリムを手で掴んで駆動するが、本発明の
一実施形態に係る車椅子では、ハンドリムの位置をリム部に接近させて配置するので、ハンドリムを駆動する際に力を加える位置が使用者の体に近くなる。このため、使用者は、ハンドリムへの力を伝達しやすくでき、小さな力で駆動車輪を回転させて車椅子を楽に移動できる。とくに、車椅子を使用する障害者や高齢者にとっては、少しでも小さな力で楽に駆動車輪を駆動できることは極めて重要であり、以上の車椅子のように、ハンドリムを安全にしかも楽に駆動できる構造は有効である。
また本発明の他の実施形態に係る車椅子は、上記構成に加えて、前記連結具が、さらに、前記固定片を貫通して駆動車輪の外側方向に挿通されると共に、前記スペーサー筒部に挿通される固定ネジと、前記ハンドリムの内側に固定されて、前記固定ネジがねじ込まれるナット部54とを備え、前記スペーサー筒部の長さを調整して前記ハンドリムの連結位置を当該車椅子の幅方向に調整して、前記非通過隙間の幅を調整するようにしている。
さらに本発明の他の実施形態に係る車椅子は、車椅子本体10の座部5に座って、両側に設けている駆動車輪3を手で回転させて移動するようにしてなる車椅子であって、駆動車輪3が、外周部にタイヤ31が装着されたリム部32と、リム部32の中心に連結部材34を介して連結されて、車椅子本体10に回転できるように連結されてなるハブ部33と、リム部32の外側に、リム部32に沿って配置された環状のハンドリム35と、ハンドリム35をリム部32に固定する連結具50とを備え、ハンドリム35を手で駆動して駆動車輪3を回転させるようにしている。連結具50は、一端がハンドリム35に連結され、他端がリム部32の内周面側に連結される固定アーム57と、固定アーム57の他端部をリム部32の内周面に固定する固定具56と、固定アーム57とリム部32の内周面との間に介在される、所定の厚さを有するスペーサー58とを備えている。車椅子は、スペーサー58の厚さでもって、ハンドリム35をリム部32から半径方向に離間させて、リム部32とハンドリム35との間に親指を通過できない幅の非通過隙間36を形成している。
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る車椅子は、上記構成に加えて、前記固定アームが、他端部に複数の貫通孔を開口すると共に、前記貫通孔を貫通する固定具を介して該固定アームを前記リム部に固定するようにしており、前記固定具が挿通される前記貫通孔の位置を変更して前記ハンドリムの連結位置を当該車椅子の幅方向に調整して、前記非通過隙間の幅を調整するようにしている。
【0012】
さらにまた、本発明の
他の実施形態に係る車椅子は、ハンドリム35とリム部32の幅方向の間隔(k)を手指Fの太さよりも小さくすることができる。
【0013】
上記構成により、使用者がハンドリムの上部を不意に握りしめようとして、親指以外の手指がハンドリムの内側に下側から挿入される状態においても、手指の先端部が直接に非通過隙間に案内されるのを有効に防止できる。とくに、ハンドリムとリム部の幅方向の間隔を狭くすることで、
図8に示すように、ハンドリムの下側から挿入される手指は、その先端がリム部の内面に当接しやすくなるため、下側から挿入された手指の勢いをリム部で抑制して、これにより、手指の先端部が直接に非通過隙間に挿入されるのが有効に防止される。すなわち、ハンドリムを不意に握ろうとした場合に、親指以外の手指が非通過隙間に挿入されるのを未然に防止できる。このため、非通過隙間の幅を、手指の太さよりも大きくする構造としても、ハンドリムの下側から挿入される手指が非通過隙間を通過するのを有効に防止できる。
【0014】
また、本発明の
他の実施形態に係る車椅子は、非通過隙間36の幅(d)を、手指Fを通過できない幅とすることができる。
【0015】
上記構成により、使用者がハンドリムを不意に握りしめようとして、親指以外の手指がハンドリムの内側に下側から挿入される状態においても、手指の先端部が非通過隙間に挿入されるのを確実に防止できる。このため、使用者はハンドリムを強く握り込んでしまうことがなく、回転する駆動車輪の連結具により手指が損傷を受けるのを確実に阻止して安全性を向上できる。
【0016】
また、本発明の
他の実施形態に係る車椅子は、非通過隙間36の幅(d)を
3mm以上であって15mm以下とすることができる。上記構成により、多くの使用者が使用する状態においても、手指を安全に保護できる。
【0017】
また、本発明の
他の実施形態に係る車椅子は、ハンドリム35の平均径(Da)をリム部32の内径(R)よりも小さく形成することができる。
とくに、ハンドリム35の外径(Do)をリム部32の内径(R)以下とすることができる。
なお、本明細書において、ハンドリム35の平均径(Da)とは、ハンドリム35の外径(Do)と内径(Di)の平均を意味するものとするとする。すなわち、
平均径(Da)=[外径(Do)+内径(Di)]/2
とする。
【0018】
上記構成により、ハンドリムの平均径をリム部の内径よりも小さくするので、リム部とハンドリムとの間に非通過隙間を形成しながら、ハンドリムをより内側に接近させて、車椅子の幅を理想的に小さくできる。また、ハンドリムの平均径を小さくすることで、ハンドリムの位置を駆動車輪の中心側に配置できるので、ハンドリムをタイヤから離して配置でき、ハンドリムを駆動する手が直接タイヤに接触するのを有効に防止できる特徴もある。
【0019】
また、本発明の
他の実施形態に係る車椅子は、連結具50が略水平姿勢であって、一端をハンドリム35の内側面に固定すると共に、他端をリム部32の内周面に固定することができる。
なお、本明細書において、駆動車輪及びハンドリムの内側とは、車椅子の幅方向における座部側を意味し、駆動車輪及びハンドリムの外側とは、車椅子の幅方向における座部側との反対側を意味するものとする。
【0020】
上記構成により、略水平姿勢で配置される連結具の一端をハンドリムの内側面に、他端をリム部の内周面に固定することで、ハンドリムとリム部とを連結具を介して最短距離で連結できる。このため、連結具にかかる負荷を小さくしながら、ハンドリムをリム部に理想的に接近させて、ハンドリムとリム部との間に非通過隙間を形成できる。また、複数の連結具を水平姿勢で配置することで、ハンドリムをリム部に対して正確な位置に配置して、非通過隙間の幅をハンドリムの外周に沿って均一にできる特徴もある。
【0021】
また、本発明の
他の実施形態に係る車椅子は、連結具50が、ハンドリム35の連結位置を車椅子の幅方向に調整可能とすることができる。
【0022】
上記構成により、リム部に対するハンドリムの連結位置を車椅子の幅方向に調整することで、リム部とハンドリムとの間に形成される非通過隙間の幅を種々に変更することができる。これにより、非通過隙間の幅を使用者に最適な間隔に調整して使用者が安全かつ便利に使用することができる。
【0023】
さらに、本発明の
他の実施形態に係る車椅子は、連結具50が、リム部32の内周面から中心方向に突出して設けられた固定片51と、この固定片51を貫通して駆動車輪3の外側方向に挿通される固定ネジ52と、固定片51とハンドリム35との間に配置されて固定ネジ52のネジ部52aが挿通されるスペーサー筒部53と、ハンドリム35の内側に固定されて、固定ネジ52がねじ込まれるナット部54とを備え、スペーサー筒部53の長さを調整してハンドリム35の連結位置を調整することができる。
【0024】
上記構成により、リム部の内周面から中心方向に突出する固定片を貫通する固定ネジをハンドリムの内側面に固定されたナット部にねじ込むことで、ハンドリムを簡単かつ容易にリム部に連結できる。とくに、固定ネジの締め付け方向がハンドリムとリム部との連結方向となるので、固定ネジのハンドリムを強くねじ込むことで、ハンドリムを強固に連結できる。また、ハンドリムと固定片との間に配置されて、固定ネジのネジ部が挿通されるスペーサー筒部の長さを種々に変更することで、簡単にハンドリムの連結位置を調整できる。また、以上の車椅子は、連結具を外すことで、ハンドリムを簡単に駆動車輪から取り外すこともできる。この車椅子は、ハンドリムを取り外してメンテナンスし、また交換し、あるいはまた、ハンドリムを外した状態で車椅子を移動させることもできる。
【0025】
また、本発明の
他の実施形態に係る車椅子は、連結具50が、一端をハンドリム35に固定して、他端部をリム部32の内周面側に固定した固定アーム57と、この固定アーム57の他端部をリム部32の内周面に固定する固定具56とを備えて、固定アーム57が、他端部に複数の貫通孔57aを開口すると共に、この貫通孔57aを貫通する固定具56を介して固定アーム57をリム部32に固定するようにし、固定具56が挿通される貫通孔57aの位置を変更してハンドリム35の連結位置を調整することができる。
【0026】
上記構成により、簡単な構造でハンドリムを駆動車輪の定位置に配置しながら、固定アームに固定具が挿通される貫通孔の位置を変更することでハンドリムの位置を調整することができる。また、以上の車椅子は、連結具を外すことで、ハンドリムを簡単に駆動車輪から取り外すこともできる。この車椅子は、ハンドリムを取り外してメンテナンスし、また交換し、あるいはまた、ハンドリムを外した状態で車椅子を移動させることもできる。
【0027】
さらに、本発明の
他の実施形態に係る車椅子は、車椅子本体10が、駆動車輪3を外側に連結している一対の両側フレーム1と、一対の両側フレーム1を下端に連結すると共に、上端に座部フレーム6を連結している折畳リンク2と、折畳リンク2の左右の座部フレーム6に連結している可撓性の座部シート7とを備え、一対の両側フレーム1を垂直な姿勢で互いに接近させて車椅子本体10を折り畳み、また、互いに離して車椅子本体10を展開させて左右の座部フレーム6に連結している座部シート7を張設して座部5を形成することができる。
【0028】
上記構成により、車椅子本体を幅方向に折り畳むことで、車椅子をコンパクトにして便利に持ち運びできる。とくに、駆動車輪に固定されるハンドリムの連結位置をリム部に接近させることで駆動車輪の幅を小さくできるので、車椅子本体を幅方向に折り畳んだ状態での全体の幅をさらに小さくしてコンパクトにできる。
【0029】
さらに、本発明の
他の実施形態に係る車椅子は、連結部材34を複数のスポーク34Xとして、リム部32の内周面とハブ部33との間に複数のスポーク34Xを等間隔で連結し、リム部32の内周面において、隣接するスポーク34Xの中間に位置して連結具50を配置することができる。
【0030】
上記構成により、リム部の内周面において、隣接するスポークの中間に配置された連結具を介してハンドリムをリム部に固定するので、ハンドリムをリム部に連結する作業においてスポークが邪魔になるのを防止して効率よく作業できる。また、ハンドリムを連結する連結具を、隣接するスポークの中間に配置するので、ハンドリムに加えられた駆動力をバランス良く駆動車輪に伝達することができる。
【0031】
さらにまた、本発明の
他の実施形態に係る車椅子は、ハブ部33が、複数のスポーク34が連結される一対のフランジ部37を駆動車輪3の内側と外側に備え、駆動車輪3の内側に配置される第1フランジ部37Aに連結される第1スポーク34Cと、駆動車輪3の外側に配置される第2フランジ部37Bに連結される第2スポーク34Dとを交互に配置すると共に、第1スポーク34Cを第2スポーク34Dよりも短くして、リム部32をハブ部33のセンター面Pよりも内側に偏心して配置することができる。
【0032】
上記構成により、駆動車輪のリム部をハブ部のセンター面よりも内側に偏心して配置するので、駆動車輪の外側に配置されるハンドリムの位置を車椅子本体の内側に移行させて、車椅子全体の横幅をさらに小さくできる。とくに、車椅子本体を幅方向に折り畳みできる車椅子においては、折り畳まれた車椅子の幅をさらに小さくして便利に持ち運びできる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体的に示すための車椅子を例示するものであって、本発明は車椅子を以下のものに限定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部品を示しており、詳細な説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0035】
本発明の一実施形態にかかる車椅子を
図1〜
図5に示す。
図1は車椅子の斜視図を、
図2〜
図4は
図1に示す車椅子の側面図、正面図、及び平面図を、
図5は
図3に示す車椅子を折り畳んだ状態を示す正面図をそれぞれ示している。
図1から
図4に示す車椅子は、
図5に示すように、車椅子本体10を幅方向に折り畳みできる構造としている。この車椅子本体10は、両側に設けた駆動車輪3を互いに接近させる方向に折り畳んで便利に持ち運びできる構造としている。以下、本発明の一実施形態の車椅子として車椅子本体を幅方向に折り畳みできる車椅子について詳述する。ただ、本発明の車椅子は、必ずしも折り畳みできる構造とする必要はなく、車椅子本体を折り畳みできない車椅子とすることもできる。
【0036】
図1から
図5に示す車椅子は、車椅子本体10の両側に駆動車輪3を備えており、車椅子本体10の座部5にユーザーが座る状態で両側に設けている駆動車輪3を手で回転させて車椅子を移動させる構造としている。駆動車輪3は、外周部にタイヤ31が装着されたリム部32と、このリム部32の中心に連結部材34を介して連結されて、車椅子本体10に回転できるように連結されるハブ部33と、リム部32の外側に、リム部32に沿って配置された環状のハンドリム35と、ハンドリム35をリム部32に固定する連結具50とを備えており、ハンドリム35を手で駆動して駆動車輪3を回転させるようにしている。さらに、駆動車輪3は、ハンドリム35をリム部32に接近させて、リム部32とハンドリム35との間に親指を通過できない幅の非通過隙間36を形成している。
【0037】
(車椅子本体10)
車椅子本体10は、外側に駆動車輪3を連結している一対の両側フレーム1と、一対の両側フレーム1を下端部で連結すると共に、上端に座部フレーム6を連結している折畳リンク2と、この折畳リンク2の座部フレーム6に連結している可撓性の座部シート7とを備えている。さらに、図に示す車椅子は、両側フレーム1の前部に連結されて、水平面内で方向を変化できる自在小車輪4と、両側フレーム1に連結している足載台8とを備えている。
【0038】
以上の車椅子本体10は、一対の両側フレーム1を折畳リンク2で折り畳みできるように連結している。この車椅子本体10は、
図5に示すように、両側の両側フレーム1を互いに接近させるように折畳リンク2を折り畳みして、横幅を狭くできるようにしている。さらに、車椅子本体10は、左右の両側フレーム1の間に、折畳リンク2と座部シート7からなる座部5を設けている。この座部5は、折畳リンク2のXリンク21の上端に連結している座部フレーム6に可撓性の座部シート7を連結して設けている。この車椅子は、
図5に示すように、左右の両側フレーム1を接近させて折り畳む状態では、座部シート7も折り畳まれ、
図5に示すように、左右の両側フレーム1を離して展開する状態では、座部シート7が張設されて座部5となる。
【0039】
(両側フレーム1)
両側フレーム1は、上面に肘当て20を有する水平姿勢の肘当てフレーム12と、この肘当てフレーム12の後端部に連結している上下フレーム14と、この上下フレーム14の下端部に連結している水平姿勢の下フレーム11と、肘当てフレーム12と下フレーム11の中間に配置された水平姿勢の中間フレーム15と、この中間フレーム15の前端を下フレーム11に連結する前フレーム13と、中間フレーム15の前端部を肘当てフレーム12の前端部に連結する連結フレーム16とを備えている。両側フレーム1を構成するそれぞれのフレームは金属パイプで、これらの金属パイプを溶接などの方法で連結している。さらに、両側フレーム1は、駆動車輪3を連結する固定部19を、上下フレーム14の下端部に設けている。固定部19は、図示しないが、駆動車輪3を回転できるように連結する車軸を外側に突出して連結している。
【0040】
(肘当てフレーム12)
肘当てフレーム12は、座部5の両側の上方であって、中間フレーム15のほぼ真上に位置して、略水平な姿勢で配置されている。この肘当てフレーム12は、座部5に座るユーザーの肘当て20を上面に備えている。
【0041】
(下フレーム11)
下フレーム11は、座部5の両側部の下方に位置して配置される。下フレーム11は、後端部に上下フレーム14の下端が連結されて、前端に前フレーム13の下端が連結されている。
図2の下フレーム11は、水平姿勢で前後方向に配置されると共に、前端部を前方に向かって上り勾配で傾斜させて、前フレーム13に連結している。これにより、前端部の下方に、自在小車輪4を配置するスペースを形成している。この構造は、前フレーム13に固定される自在小車輪4の車輪の動きを制限することなく、自在小車輪4を自由に首振りできる。
【0042】
(中間フレーム15)
中間フレーム15は、後端を上下フレーム14の中間に連結すると共に、前端を下方向に延長された前フレーム13に連結して、この前フレーム13を下フレーム11に連結している。
図2に示す中間フレーム15は、1本の金属パイプの前端部を下方に折曲して前フレーム13としている。図の前フレーム13は、垂直姿勢で配設されており、下端を下フレーム11の前端に連結している。この中間フレーム15の上方には、座部フレーム6が平行姿勢で位置している。中間フレーム15には支持部27が設けられており、座部フレーム6を上方で支持している。中間フレーム15は、折畳リンク2を開いて座部シート7を開く状態で、座部フレーム6が位置する高さに配置されている。
【0043】
(連結フレーム16)
連結フレーム16は、肘当てフレーム12の先端部から後退する位置に上端を連結して、中間フレーム15の前部から後退する位置に下端を連結している。さらに、両側フレーム1は、
図2に示すように、連結フレーム16の前方であって、肘当てフレーム12と中間フレーム15との間の領域に、両側フレーム1に対して折り畳まれる足載台8を収納するための収納スペース18を設けている。図に示す連結フレーム16は、中間部を後方へ向けて折曲することで、前方に形成される収納スペース18を広くしている。
【0044】
(前フレーム13)
前フレーム13は、座部5の前端の両側に位置して、ほぼ垂直な姿勢で配置されて、中間フレーム15の前端を下フレーム11の前端に連結している。図の前フレーム13は、座部5の前方に配置される足載台8を連結している。図に示す車椅子は、座部5の前方であって、両側フレーム1の外側に一対の足載台8を備えており、左右の前フレーム13にそれぞれ足載台8を連結している。
【0045】
(上下フレーム14)
上下フレーム14は、座部5の後端の両側に位置して、ほぼ垂直な姿勢で配置している。
図1と
図2に示す上下フレーム14は、中間部に、肘当てフレーム12及び中間フレーム15の後端を連結している。さらに、上下フレーム14は、下端に下フレーム11の後端部を連結すると共に、下端部には、駆動車輪3の車軸(図示せず)を連結する固定部19を設けている。
【0046】
(固定部19)
固定部19は、
図1に示すように、その外形を上下方向に伸びる角柱状としている。四角柱状の固定部19は、外側面を両側フレーム1と平行な姿勢となるように配置している。この固定部19は、左右の両面を貫通して挿通された車軸を外側面に対して垂直姿勢で突出させて固定している。
【0047】
(ハンドル部9)
さらに、
図1と
図2に示す車椅子は、上下フレーム14の上端に、折り畳みできるハンドル部9を連結している。ハンドル部9は、金属パイプを中間で折曲したもので、先端部にグリップ49が固定されている。ハンドル部9は、上下フレーム14の上端に折曲連結具28を介して連結している。折曲連結具28は、ハンドル部9を上下フレーム14に対して回動できるように連結している。
【0048】
(側面プレート48)
さらに、
図1と
図2に示す両側フレーム1は、肘当てフレーム12と中間フレーム15の間であって、連結フレーム16と上下フレーム14の間のスペースを閉塞する側面プレート48を配設している。図に示す側面プレート48は、前後の端縁を連結フレーム16と上下フレーム14に接近させると共に、下端縁を中間フレーム15に接近させる状態で配置している。
【0049】
(折畳リンク2)
折畳リンク2は、
図5に示すように、左右の両側フレーム1を垂直な姿勢で互いに接近させて車椅子を折り畳み、また、
図3に示すように、左右の両側フレーム1を互いに離して車椅子を開いた状態とする。折畳リンク2は、
図1〜
図3に示すように、両側フレーム1に連結される前後のXリンク21と、このXリンク21の中間を両側フレーム1に連結している一対のサブリンク22とを備えている。
【0050】
(Xリンク21)
Xリンク21は、
図3に示すように、2本のリンクロッド23を、垂直面内で回動できるように、回転軸24を介してX字状に連結している。2本のリンクロッド23は、中間の交差部分を回転軸24で連結している。Xリンク21は、垂直面内にあって、下端を下フレーム11に回動できるように連結し、上端に座部フレーム6を連結している。前後のXリンク21は、下フレーム11と座部フレーム6に、前後方向に離して連結される。同一の下フレーム11に連結される前後のXリンク21の下端は、
図1と
図2に示すように、回動筒25に固定すると共に、この回動筒25を回転できるように下フレーム14の中間部に連結して、Xリンク21を下フレーム11に回動できるように連結している。さらに、同一の座部フレーム6に連結される前後のXリンク21の上端には、座部フレーム6を固定している。このXリンク21は、下フレーム11と座部フレーム6を平行な姿勢に保持して、左右の両側フレーム1を互いに接近させて車椅子を折り畳み状態とし、また両側フレーム1を互いに離して展開する状態とする。
【0051】
さらに、折畳リンク2は、Xリンク21を折り畳んで、一対の両側フレーム1を互いに接近させる状態で、
図5に示すように、座部フレーム6を、対向する両側フレーム1の上面に設けた肘当て20の間に位置させる構造としている。すなわち、両側フレーム1が互いに接近されて折り畳まれた状態では、座部フレーム6が肘当てフレーム12に接近して、肘当てフレーム12とほぼ同じ高さとなるようにリンクロッド23の長さを調整している。さらに、この折畳リンク2は、
図3に示すように、両側フレーム1を互いに離して開く状態、すなわち、座部フレーム6を左右に開いて、座部シート7を開く状態で、座部フレーム6を中間フレーム15の上側に配置して、座部フレーム6を中間フレーム15から上方に突出して設けた支持部27で支持する構造としている。
【0052】
(サブリンク22)
サブリンク22は、Xリンク21と両側フレーム1に連結されて、両側フレーム1を垂直姿勢に保持する。折畳リンク2は、後方に位置するXリンク21に左右のサブリンク22を連結している。左右のサブリンク22は、Xリンク21を構成する一対のリンクロッド23のそれぞれを一対の両側フレーム1に連結している。図のサブリンク22は、一端をXリンク21の上側の中間、すなわち、回転軸24よりも上方に位置して、垂直面内で回動できるように連結している。さらに、サブリンク22の他端は、両側フレーム1に回動できるように連結している。図に示す車椅子は、上下フレーム14に設けた固定部19に、サブリンク22の他端を、垂直面内で回動できるようにピン26で連結している。以上の構造のサブリンク22は、両側フレーム1を垂直な姿勢に保持しながら、互いに接近させ、あるいは離すように移動させる。図に示す折畳リンク2は、左右に一対のサブリンク22を備えているので、車椅子を開いた状態で、左右の両側フレーム1を安定して垂直な姿勢に保持できる。
【0053】
(座部5)
さらに、車椅子は、左右の両側フレーム1の間に、折畳リンク2と座部シート7からなる座部5を設けている。この座部5は、折畳リンク2のXリンク21の上端に連結している座部フレーム6に可撓性の座部シート7の両側部を連結して設けている。この車椅子は、
図5に示すように、左右の両側フレーム1を接近させて折り畳む状態では、座部シート7も折り畳まれ、
図3に示すように、左右の両側フレーム1を離して展開する状態では、座部シート7が張設されて座部5となる。
【0054】
(背もたれシート29)
さらに、
図1〜
図3に示す車椅子は、座部5の背面に位置して、背もたれシート29を配設している。この背もたれシート29は、左右の上下フレーム14とハンドル部9に両端部を連結している。これ等の図に示す背もたれシート29は、上部の両端部をハンドル部9に連結すると共に、下部の両端部を上下フレーム14に連結している。以上の背もたれシート29は、左右の両側フレーム1が開かれる状態で、平面状に拡開されて、座部5に座るユーザーの背もたれとなる。さらに、背もたれシート29は、一対の両側フレーム1を互いに接近させる状態では、折り畳まれるようにしている。なお、
図2に示す車椅子は、上下フレーム14及びハンドル部9を上端側が後方に傾斜する姿勢として、背もたれ面を多少傾斜する面としている。この構造は、座部5に座るユーザーが、背もたれシート29にもたれかかる楽な姿勢で座ることができる。
【0055】
(足載台8)
さらに、
図1〜
図5示す車椅子は、座部5の前方に一対の足載台8を備えている。足載台8は、車椅子のユーザーが座部5に座って足を載せる台である。この足載台8は、両側フレーム1の前方部の外側に連結された足載アーム41と、足載アーム41の先端部に取り付けられた足載プレート42を備えている。
図1と
図2に示す足載アーム41は、前後方向を含む垂直面内で折り畳みできるように傾動可能に連結されており、その後端を傾動軸43を介して前フレーム13に連結している。図に示す足載台8は、この傾動軸43を中心として後方へ傾動することで垂直に立てて折り畳みできる。
【0056】
また、足載プレート42は、上面に足を載せることができる水平姿勢と、上面が足載アーム41に当接する垂直姿勢とに回動することができるように、回動軸46を介して足載アーム41の先端部に連結されている。この足載台8は、足載プレート42を垂直姿勢にし、足載アーム41を後方へ傾動すると、足載プレート42が収納スペース18に位置する状態に折り畳むことができる。さらに、この足載台8は、足載アーム41を前方に傾動し、足載プレート42を展開した状態において、一対の足載プレート42の上面に足を載せることができるようにしている。
なお、本発明の車椅子は、必ずしも足載台を折り畳みできる構造とする必要はなく、足載台8を折り畳みできない構造で両側フレームに固定することもできる。
【0057】
(駆動車輪3)
駆動車輪3は、両側フレーム1の外側面に回転できるように固定される。
図1の車椅子は、駆動車輪3の回転軸である車軸(図示せず)を両側フレーム1の上下フレーム14の下部に連結している。両側フレーム1は、上下フレーム14の下部に固定部19を固定し、この固定部19に車軸を固定している。左右の両側フレーム1に固定される車軸は、直線状に配置される。一対の駆動車輪3を両側フレーム1の外側の同じ位置に配置するためである。
【0058】
駆動車輪3は、
図6〜
図9に示すように、外周側にタイヤ31が装着されたリム部32と、このリム部32の中心に連結部材34を介して連結しているハブ部33と、両側フレーム1と反対側であって、リム部2の外側に配置しているハンドリム35と、このハンドリム35をリム部32に固定する連結具50とを備えている。
【0059】
(リム部32)
リム部32は、外周側に溝部32Aを有する環状に形成されている。図に示すリム部32は金属製としている。ただ、リム部は硬質のプラスチック製とすることもできる。リム部32は、溝部32Aにタイヤ31の内周部を嵌着させて、タイヤ31を外れないように連結している。タイヤ31は、たとえばゴム製のチューブ状で、内部には空気が充填されている。ただ、タイヤは、必ずしも内部に空気を入れる構造とする必要はなく、ゴムやプラスチック等で製作されるクッションリングとしてリム部の溝部に嵌着させることもできる。
【0060】
(ハブ部33)
ハブ部33は、駆動車輪3の中心に配置されており、連結部材34を介して環状のリム部32に連結されている。図に示す連結部材34は、金属製のスポーク34Xとしている。
図6と
図7に示すハブ部33は、複数本のスポーク34Xを介してリム部32に連結している。ハブ部33は、両端に一対のフランジ部37を有しており、このフランジ部37にスポーク34Xの一端を連結して、複数本のスポーク34Xを放射状に配置している。ハブ部33から放射状に延びるスポーク34Xの他端は、リム部32の内周面に連結している。
【0061】
図7に示すハブ部33は、駆動車輪3の内側に配置された第1フランジ部37Aと、駆動車輪3の外側に配置された第2フランジ部37Bとを互いに平行に配置している。複数本のスポーク34は、ハブ部33の第1フランジ部37Aに連結される第1スポーク34Aと、ハブ部33の第2フランジ部37Bに連結される第2スポーク34Bとを交互に配置している。この駆動車輪3は、第1スポーク34Aと第2スポーク34Bの長さを等しくして、ハブ部33における幅方向の中心を通る垂直面であるセンター面と、リム部32における幅方向の中心を通る垂直面とを同一面としている。
【0062】
また、ハブ部33は、車椅子本体10に回転できるように連結されている。ハブ部33は、内側に配設されるベアリング(図示せず)を介して、両側フレーム1の固定部19に固定された車軸(図示せず)に回転自在に連結している。このハブ部33は、ベアリングを介して、車軸に外れないように連結している。さらに、図に示すハブ部33は、内側と外側とで太さの異なるドラム状としており、内側部の内径を外側部の内径よりも大きくしている。このハブ部33は、内側部の内部に、後述する介助用ブレーキ65のブレーキ機構(図示せず)を内蔵している。
【0063】
なお、リム部32とハブ部33とを連結する連結部材34は、必ずしも複数本のスポーク34Xとする必要はなく、ハブ部に連結された1枚のプレートや複数のアームとすることもできる。この駆動車輪は、ハブ部と連結部材とリム部とでホイール部を形成して外周部にタイヤを装着することもできる。このホイール部は、リム部と連結部材とハブ部とをプラスチックや金属で一体的に成形することができる。
【0064】
さらに、
図6と
図7に示す駆動車輪3は、ハブ33の外側面に、ゴム製の車軸カバー38を設けている。これにより、車軸の先端に連結された固定部材(図示せず)を保護して、固定部材の緩みや脱落を防止することができ、長期的な利用による固定部材の緩みを解消し、車椅子の操作性を安定させることができる。さらに、この車軸カバー38は車軸の固定部材を隠して美観を向上させると共に、突起した固定部材に対してユーザーや介助者が直接に体をぶつけるのを効果的に阻止している。また、車軸カバー38は黒色のゴムやプラスチックにより形成されている。これにより、車軸カバー38をアクセントとして車椅子全体の美観をさらに向上させることができる。
【0065】
(ハンドリム35)
ハンドリム35は、座部5に座った状態で、駆動車輪3を回転させるための手動リングで、車椅子の両外側面であって、駆動車輪3の外側に配設されている。
図7〜
図9のハンドリム35は金属製で、中空の金属管を環状に形成している。このように、中空の金属管とすることで、優れた強度を実現しながら、全体の重量を軽くできる。環状に形成されるハンドリム35は、その外形を駆動車輪3のリム部32に沿う円形状としている。図のハンドリム35は、その外形を凹凸のない円形状としており、リム部32に沿って配置された状態で、リム部32との隙間を一定の間隔に保持している。
【0066】
また、
図8に示すハンドリム35は、金属管の横断面形状を円形としている。この形状のハンドリム35は、外観を良くしながら、外側への突出量を小さくできる。ただ。ハンドリムは、横断面形状を円形には限定せず、楕円形状や長円形状、あるいは、真円から多少変形してなる略円形状とすることもできる。
【0067】
(非通過隙間36)
駆動車輪3は、ハンドリム35をリム部32に接近させて配置しており、リム部32とハンドリム35との間に親指Sを通過できない幅の非通過隙間36を形成している。本発明の車椅子は、ハンドリム35を駆動車輪3のリム部32の接近して配置するが、ハンドリム35をリム部32に接触させることなく、使用者の親指Sを通過できない幅の非通過隙間36を形成するように所定の間隔を設けて配置している。この非通過隙間36は、使用者がハンドリム35を掴んで駆動させるときに、ハンドリム35を掴む手の親指Sが、リム部32とハンドリム35との間から内側に挿入されない間隔としている。ハンドリム35とリム部32との間隔は、全体にわたってほぼ等しい幅であって、使用者がハンドリム35を駆動する際に、使用者の親指Sを通過できない幅の隙間としている。
【0068】
なお、本明細書において、「親指を通過できない幅」とは、使用者がハンドリム35を掴む状態で、親指Sが不意に通過しない幅であって、親指Sを無理矢理に押し込むことで通過するような幅を含有するものとする。したがって、非通過隙間36の幅(d)は、親指Sの太さと等しくし、あるいは多少は大きくすることもできる。ここで、非通過隙間36の幅(d)は、25mm以下であって、好ましくは20mm以下、さらに好ましくは18mm以下とする。以上のように、リム部32とハンドリム35との間に親指Sを通過できない幅の非通過隙間36を形成する構造は、使用者がハンドリム35を不意に握ろうとした場合に、親指Sが非通過隙間36に挿入されるのを確実に防止できる。したがって、ハンドリム35の操作中に親指Sが負傷するのを確実に防止して安全に使用できる。
【0069】
さらに、駆動車輪3は、非通過隙間36の幅(d)を、親指以外の手指Fを通過できない幅として、親指以外の手指Fを保護することもできる。たとえば、
図8に示すように、ハンドリム35の上部を手で握る際には、ハンドリブ35の下側に回した手指Fがハンドリム35の内側まで挿入されることがあるが、このとき、非通過隙間36の幅(d)を、親指以外の手指Fを通過できない幅とすることで、手指Fが非通過隙間36を通過するのを阻止して、ハンドリム35を手で強く握り込む状態となるのを有効に防止できる。
【0070】
ここで、「手指を通過できない幅」とは、前述と同様に、使用者がハンドリム35を掴む状態で、親指以外の手指Fが不意に通過しない幅であって、手指Fを無理矢理に押し込むことで通過するような幅を含有するものとする。したがって、非通過隙間36の幅(d)は、親指以外の手指Fの太さと等しくし、あるいは多少は大きくすることもできる。また、使用者が親指以外の手指Fでハンドリム35を握る場合には、指の長さの関係から、人差し指、中指、薬指のうちのいずれかの指の先端が非通過隙間36に接近することになるので、非通過隙間36の幅(d)は、小指を除く手指Fの太さと等しくし、あるいは多少は大きくすることができる。したがって、手指Fの通過を防止する非通過隙間36の幅(d)は、15mm以下であって、好ましくは12mm以下、さらに好ましくは10mm以下とする。以上のように、リム部32とハンドリム35との間に親指以外の手指Fを通過できない幅の非通過隙間36を形成する構造は、使用者がハンドリム35を不意に握ろうとした場合に、手指Fが非通過隙間36に挿入されるのを確実に防止できる。したがって、ハンドリム35の操作中に全ての手指が負傷するのを確実に防止して安全に使用できる。
【0071】
なお、一般的に人間の手指の形状は、先端部が細くなっているので、非通過隙間36の幅(d)を手指の太さよりも小さくしても、手指の先端部がリム部32とハンドリム35との間に部分的に挿入される状態となることもある。ただ、手指の先端部がわずかに挿入される程度では、ハンドリム35を手で強く握り込むことができず、回転する駆動車輪3によって手指は損傷を受け難くなる。したがって、本明細書において、手指(親指)が非通過隙間36を通過するか否かは、手指(親指)の第1関節が通過するか否かにより判定することとする。すなわち、本明細書において、手指(親指)を通過できない幅とは、手指(親指)の第1関節が通過できない幅とする。
【0072】
さらに、駆動車輪3は、リム部32とハンドリム35との間に形成される非通過隙間36の幅だけでなく、リム部32とハンドリム35との位置関係によっても、非通過隙間36に対して手指Fが挿入されるのを抑制することができる。たとえば、駆動車輪3は、ハンドリム35とリム部32の幅方向の間隔(k)を小さくすることで、親指以外の手指Fがリム部32とハンドリム35との間に挿入されるのを抑制することができる。ここで、ハンドリム35とリム部32の幅方向の間隔(k)とは、
図8に示すように、ハンドリム35の内側面とリム部32の外側面との間隔を意味するものとする。
【0073】
図8に示す駆動車輪3は、ハンドリム35とリム部32の幅方向の間隔(k)を手指Fの太さよりも小さくしている。この駆動車輪3は、使用者がハンドリム35の上部を不意に握りしめようとして、親指以外の手指Fがハンドリム35の内側に下側から挿入される状態においても、手指Fの先端部が直接に非通過隙間36に挿入されるのを有効に防止できる。それは、ハンドリム35とリム部32との間隔(k)を狭くすることで、
図8に示すように、ハンドリム35の内側に下側から挿入される手指Fの先端がリム部32の内面に当接しやすくなり、下側から挿入された手指Fの先端部が直接に非通過隙間36に挿入されるのが阻止されるからである。したがって、この駆動車輪3は、非通過隙間36の幅(d)を、手指Fの太さよりも多少大きい幅とする状態においても、ハンドリム35の下側から挿入される手指Fが非通過隙間36を通過するのを有効に防止できる。ここで、ハンドリム35とリム部32の幅方向の間隔(k)は、20mm以下であって、好ましくは15mm以下、さらに好ましくは10mm以下とする。とくに、ハンドリム35とリム部32との間隔(k)を小さくすることで、車椅子の左右の幅を小さくできる特徴も実現できる。
【0074】
また、ハンドリム35は、リム部32に対して接触させることなく所定の間隔を離して配置される。それは、ハンドリム35がリム部32に接近しすぎると、使用者がハンドリム35を掴み難くなるからである。したがって、非通過隙間36の幅(d)は、1mm以上であって、好ましくは3mm以上とする。
【0075】
非通過隙間36は、狭くすると、ハンドリム35の外側への突出量を小さくして車椅子の横幅を小さくできると共に、使用者の手指が誤って挿入されるのを確実に阻止できるが、非通過隙間36が狭すぎると、ハンドリム35を駆動する際に、ハンドリム35を掴み難くなる。これに対して、非通過隙間36を広くすると、ハンドリム35の外側への突出量を大きくしてハンドリム35を駆動する際にハンドリム35を掴み易くなるが、使用者の手指が誤って挿入され易くなり損傷を受ける虞が生じる。したがって、非通過隙間36は、これらのことを考慮して、使用者がハンドリムを掴む状態で、使用者の手指が不意に通過しない程度の幅を有する隙間となるように前述の範囲とする。
【0076】
なお、リム部32とハンドリム35との間に形成される隙間を手指が通過するかどうかは、使用者の手の大きさ、指の太さや形状等によっても変化する。すなわち、車椅子を使用する使用者の性別や年齢、体型等によっても変化する。したがって、非通過隙間36の幅(d)、及びハンドリム35とリム部32の幅方向の間隔(k)は、車椅子を使用する使用者に応じて種々に変更することもできる。
【0077】
さらに、ハンドリム35は、
図7に示すように、その平均径(Da)を駆動車輪3のリム部32の内径(R)よりも小さくしている。ここで、ハンドリム35の平均径(Da)とは、ハンドリム35の外径(Do)と内径(Di)の平均であって、
図7に示すように、断面形状を円形とする管状のハンドリム35においては、円形の管の中心における中心径に相当する。このように、ハンドリム35の平均径(Da)をリム部32の内径(R)よりも小さくする構造は、リム部32とハンドリム35との間に非通過隙間36を形成しながら、ハンドリム35をより内側に接近させて、車椅子の幅を小さくできる。また、ハンドリム35の平均径を小さくすることで、ハンドリム35の位置を駆動車輪3の中心側に配置でき、ハンドリム35を駆動する手が直接タイヤ31に接触するのを有効に防止できる。
【0078】
図7〜
図9のハンドリム35は、その外径(Do)が駆動車輪3のリム部32の内径(R)とほぼ等しくなるように設けている。すなわち、ハンドリム35の外周面と、駆動車輪3のリム32の内周面とがほぼ同一面上に位置するようにしている。ただ、ハンドリム35は、その外径(Do)がリム部32の内径(R)より多少大きくすることも、反対に多少小さくすることもできる。
【0079】
(連結具50)
以上のハンドリム35は、複数の連結具50を介してリム部32の定位置に連結される。
図6に示す駆動車輪3は、リム部32の内周面に沿って、6個の連結具50を等間隔で配置している。ただ、連結具50の数は3〜8個とすることができる。
図6に示す連結具50は、隣接するスポーク34Xの中間に位置して配置されている。
図7と
図9に示す連結具50は、略水平姿勢であって、一端をハンドリム35の内側面に固定すると共に、他端をリム部32の内周面に固定している。この連結具50は、ハンドリム35とリム部32とを最短距離で連結できる。また、複数の連結具50を水平姿勢で配置することで、ハンドリム35をリム部32に対して正確な位置に配置できる。ただ、連結具は、多少傾斜する姿勢で配置することもできる。
【0080】
連結具50は、ハンドリム35をリム部32から所定の間隔(k)だけ離れた定位置に配置する。連結具50は、リム部32とハンドリム35との間に所定の幅(d)の非通過隙間36が形成されるようにハンドリム35をリム部32の定位置に連結する。ここで、連結具50は、ハンドリム35を特定の位置のみに配置する構造とすることもできるが、
図9と
図10に示すように、ハンドリム35の連結位置を車椅子の幅方向に調整可能とすることもできる。
【0081】
図9と
図10に示す連結具50は、リム部32の内周面から中心方向に突出して設けられた固定片51と、この固定片51を貫通して駆動車輪3の外側方向に挿通される固定ネジ52と、固定片51とハンドリム35との間に配置されて固定ネジ52のネジ部52aが挿通されるスペーサー筒部53と、ハンドリム35の内側に固定されて、固定ネジ52がねじ込まれるナット部54とを備えている。
【0082】
リム部32は、内周面の中心部から中心方向に突出する固定片51を備えている。
図9に示す固定片51は、断面形状を逆T字状とする金属板または金属ブロックで、貫通孔51aが開口された本体部をリム部32の内周面に開口した挿通孔32Cから突出させている。図のリム部32は、内周面の中央部に中央凸の湾曲凸条32Bを設けており、この湾曲凸条32Bの中心部に挿通孔32Cを開口して固定片51を挿通している。固定ネジ52は、この固定片51を駆動車輪3の内側から外側に向かって挿通される。
【0083】
固定ネジ52は、ワッシャ55、固定片51、スペーサー筒部53を貫通する状態で挿通されて、先端がハンドリム35にねじ込まれる。図のハンドリム35は内周面にナット部材54を固定しており、このナット部材54に固定ネジ52がねじ込まれてハンドリム35がリム部32に連結される。ナット部材54は、固定ネジ51がねじ込まれる雌ネジ孔を開口しており、ハンドリム35の内側面に埋め込まれた状態で固定されている。
【0084】
スペーサー筒部53は、固定ネジ52のネジ部52aが挿通される中心孔53aを軸方向に開口している。スペーサー筒部53は、固定片51とハンドリム35との間に配置されており、中心孔53aに挿通される固定ネジ52の先端をハンドリム35のナット部54にねじ込むことで、ハンドリム35の連結位置を特定している。この連結具は、
図10に示すように、固定ネジ52に挿通するスペーサー筒部53A、53B、53Cの長さを調整することで、リム部32に対するハンドリム35の連結位置を簡単に変更することができる。
【0085】
(連結具の他の例)
さらに、連結具50は、
図11に示す構造とすることもできる。この図に示す連結具50Bは、一端をハンドリム35に固定して、他端部をリム部32の内周面側に固定した固定アーム57と、この固定アーム57の他端部をリム部32の内周面に固定する固定具56とを備えている。図に示す固定アーム57は、所定の厚さを有する細長い板状で、一端が溶着によりハンドリム35に固定されている。さらに、固定アーム57は、他端部に複数の貫通孔57aを直線状に開口している。この連結具50Bは、固定アーム57に開口された貫通孔57aに挿通される固定具56を介して、リム部32の内周面に固定される。図に示す固定具56は、リム部32の湾曲凸条32Bの中心部に開口された挿通孔32Cに挿通された固定ネジ56Aと、この固定ネジ56Aにねじ込まれるナット部材56Bとで構成している。この固定具56は、リム部32の湾曲凸条32Bを外周方向から中心に向かって貫通して挿入される固定ネジ56Aが、固定アーム57の貫通孔57aに挿入されると共に、貫通孔57aから突出する先端部分にナット部材56Bがねじ込まれて、固定アーム57をリム部32の定位置に固定する。
【0086】
この連結具50Bは、固定ネジ56Aが挿通される固定アーム57の貫通孔57aの位置を変更することで、リム部32とハンドリム35との距離を種々に変更しながら、ハンドリム35がリム部32に対して所定の非通過隙間36を形成するように配置できる。ここで、
図11に示す連結具50Bは、固定アーム57をリム部32の内周面に当接させる状態で固定しているのに対し、
図12に示す例では、固定アーム57とリム部32の内周面との間には、所定の厚さを有するスペーサー58を配置している。
図12に示すスペーサー58は、リム部32の内周面と対向する面を、リム部32の湾曲凸条32Bの表面に沿う凹部形状としている。このように、固定アーム57とリム部32の内周面との間にスペーサー58を配置する構造は、ハンドリム35を駆動車輪3の中心方向に移動させる状態で配置できるので、
図11の例に比べて、ハンドリム35の外径を小さくして、ハンドリム35をより内側に配置することが可能となる。
【0087】
以上の実施形態の車椅子は、駆動車輪3のハンドリム35として、金属パイプを環状に成形している。ただ、ハンドリムは、必ずしも金属製とする必要はなく、樹脂製とすることもできる。樹脂製のハンドリムは、全体を環状とすると共に、連結具の一部を共有することもできる。たとえば、
図9と
図10に示すように、固定ネジの先端部がねじ込まれる構造においては、樹脂で成形されるハンドリムの内側に雌ネジ孔を設けてナット部を設けることができる。また、
図11と
図12に示すように、連結アームがハンドリムに連結される構造においては、樹脂成形されるハンドリムに連結アームを一体成形して設けることもできる。
【0088】
(駆動車輪の他の例)
さらに、駆動車輪3は、
図13に示す構造とすることもできる。この図に示す駆動車輪3は、ハブ部33の第1フランジ部37Aに連結される第1スポーク34Cと、第2フランジ部37Bに連結される第2スポーク34Dとを交互に配置すると共に、第1スポーク34Cを第2スポーク34Dよりも短くしている。これにより、リム部32における幅方向の中心を通る垂直面を、ハブ部33における幅方向の中心を通る垂直面であるセンター面Pよりも内側に偏心して配置している。なお、
図13では、第1スポーク34Cと第2スポーク34Dの長さの違いをわかりやすくするために、第1スポーク34Cと第2スポーク34Dとをリム部32の同じ部分からフランジ部37に向かって配置している。ただ、実際には第1スポーク34Cと第2スポーク34Dとがリム部32の同じ箇所に連結されることはなく、所定の間隔で交互に配置されてリム部32に連結される。
【0089】
以上の駆動車輪3は、リム部32をハブ部33のセンター面Pよりも内側に偏心して配置するので、リム部32の外側に連結されるハンドリム35を車椅子本体の内側に移行させて配置することができる。このため、車椅子全体の横幅をさらに小さくできる。とくに、
図5に示すように、車椅子本体を幅方向に折り畳みする状態では、折り畳まれた車椅子の幅をさらに小さくして便利に持ち運びできる。
【0090】
(介助用ブレーキ65)
さらに、以上の車椅子は、駆動車輪3を制動するために介助者が使用するための介助用ブレーキ65を備えている。
図1〜
図4に示す車椅子は、介助用ブレーキ65のブレーキ機構を駆動車輪3のハブ部33に内蔵している。図に示す介助用ブレーキ65は、上下フレーム14の下端部に配置された四角柱状の固定部19の外側面に固定すると共に、ブレーキ機構をハブ部33の内部に配置している。このように、介助用ブレーキ65をハブ部33に内蔵する構造は、介助用ブレーキ65を省スペースに配置しながら車椅子の横幅を小さくできる。この介助用ブレーキ65は、車椅子のハンドル部9のグリップ49の下方に設けられたブレーキレバー66にブレーキワイヤ67を介して連結され、このブレーキレバー66を引くことによって介助用ブレーキ65が作動する。この介助用ブレーキ65は、介助者等が車椅子を後方から押して操作する際に利用する。
【0091】
(パーキングブレーキ60)
さらに、
図1と
図2に示す車椅子は、両側フレーム1の外側面に駆動車輪3を停止させるパーキングブレーキ60を備えている。パーキングブレーキ60は、座部5に座って操作できる位置に配設している。図に示すパーキングブレーキ60は、両側フレーム1に設けたブレーキフレーム17に固定されて、駆動車輪3よりも前方側に配置されている。パーキングブレーキ17は、両側フレーム1に前後に傾動できるように連結された操作レバー61と、この操作レバー61を操作して駆動車輪3の表面に押圧される制動用の押圧部62とを備える。このパーキングブレーキ60は、操作レバー61を傾動させると、押圧部62が駆動車輪3のタイヤ31の表面を押圧して、駆動車輪3の回転を停止させる。
【0092】
(自在小車輪4)
自在小車輪4は、自由に首振りできる車輪で、両側フレーム1の前端部の下方に固定されている。図の車椅子は、左右に一対の自在小車
輪4を備えている。この自在小車輪4は、ユーザーが座部5に座ってハンドリム35を駆動し、あるいは介助者がグリップ49で移動方向を変更するときに首振りして、車椅子を行きたい方向に走行可能とする。