特許第6788290号(P6788290)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6788290
(24)【登録日】2020年11月4日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】分電盤
(51)【国際特許分類】
   H02B 1/40 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
   H02B1/40 B
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-72206(P2019-72206)
(22)【出願日】2019年4月4日
(62)【分割の表示】特願2015-67828(P2015-67828)の分割
【原出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2019-115258(P2019-115258A)
(43)【公開日】2019年7月11日
【審査請求日】2019年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109598
【氏名又は名称】テンパール工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 悠磨
(72)【発明者】
【氏名】松本 雄多
(72)【発明者】
【氏名】品田 邦明
【審査官】 関 信之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−332163(JP,A)
【文献】 実開昭53−21329(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の分岐開閉器のそれぞれに設けられた操作のための複数のハンドルを露出させる開口部が形成された樹脂製の本体カバーを備え、
前記本体カバーの外表面が前記分岐開閉器のハンドルの動作範囲の最も高い位置よりも高い位置にあることを特徴とする分電盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分電盤に関する。
【背景技術】
【0002】
分岐開閉器が設けられた分電盤では、分岐開閉器に設けられたハンドルによって該分岐開閉器の開閉を切り替える。通常、分岐開閉器のハンドルは、操作可能なように外部に露出している。
【0003】
特許文献1には、複数の分岐開閉器のハンドルが、カバーにおいてハンドル毎に設けられた突出孔から突出している分電盤が記載されている。特許文献2には、分岐開閉器を配設しない場所に生じる隙間を塞ぐキャップが設けされた分電盤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−65517号公報(1997年3月7日公開)
【特許文献2】特開平10−108319号公報(1998年4月24日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の分電盤では、分岐開閉器のハンドルがカバーから突出しているために、ハンドルが不用意に操作されるおそれがある。このような不都合を回避するために、ハンドルが突出孔で露出しても突出孔から突出しないように、ハンドルをカバー内に配置することが考えられる。このような構成では、ユーザが突出孔に指を差し入れてハンドルを操作する必要がある。しかしながら、突出孔は、通常、ハンドルが移動できる程度の幅に形成されるものの、指を差し入れてハンドルを操作することができる程度の十分広い幅に形成されていない場合があり、このような場合には、ハンドル操作がしづらくなる。
【0006】
一方、特許文献2に記載の分電盤では、全ての分岐開閉器がカバーの窓孔から露出しているため、ハンドルの操作性が上記のように損なわれることはない。しかしながら、カバーが、大きい窓孔を有することにより、カバーを樹脂成型にて作製する場合、金型における樹脂の流動性が良好ではなく、樹脂成型を効率的に行うことが難しい。具体的には、図9に示すように、金型101の注入口101aから注入された樹脂は、窓孔を形成するための凸部101bの両側から破線にて示すように回り込むので、金型101の全体に樹脂が注入されるまでに時間がかかる。
【0007】
本発明は、分岐開閉器のハンドルの操作性を損なわず、かつ、本体カバーの樹脂成型を効率的に行うことができる分電盤を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る分電盤は、複数の分岐開閉器のそれぞれに設けられた操作のためのハンドルを露出させる開口部が形成された樹脂製の本体カバーを備え、前記本体カバーの外表面が前記分岐開閉器のハンドルの動作範囲の最も高い位置よりも高い位置にある。
【0009】
上記の構成によれば、本体カバーが分岐開閉器のハンドルと接触することはない。従って、ハンドルの誤操作を回避することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、分岐開閉器のハンドルの操作性を損なわず、かつ、本体カバーの樹脂成型を効率的に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る分電盤の平面図を示す。
図2】(a)は、主幹ハンドルカバーおよび分岐ハンドルカバーを取り外した状態の分電盤の平面図を示し、(b)は、該状態における分電盤の斜視図を示す。
図3】上記分岐ハンドルカバーの平面図を示す。
図4】分岐開閉器を通る上記分電盤の断面図である。
図5】分岐ハンドルカバーを取り外した(開けた)状態における、分電盤の第2開口窓の箇所を拡大して示す平面図である。
図6】分岐ハンドルカバーを取り付けた(閉めた)状態における、分電盤の第2開口窓の箇所を拡大して示す平面図である。
図7】分岐ハンドルカバーおよび凹部を模式的に示す、図6における切断線A−Aの断面矢視図である。
図8】上記分電盤の本体カバーを樹脂成型するための金型において樹脂が流動する状態を示す図である。
図9】従来の分電盤の本体カバーを樹脂成型するための金型において樹脂が流動する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(分電盤の概略的な構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る分電盤1の平面図を示す。図2の(a)は、主幹ハンドルカバーおよび分岐ハンドルカバーを取り外した状態の分電盤1の平面図を示し、図2の(b)は、該状態における分電盤の斜視図を示す。
【0013】
分電盤1は、基台2、本体カバー3、主開閉器4、複数の分岐開閉器5、主幹ハンドルカバー11、および分岐ハンドルカバー12(ハンドルカバー)を備える。主開閉器4は、開閉(導通/遮断)の切り替え操作を行うための主幹ハンドル4aを備える。分岐開閉器5は、開閉の切り替え操作を行うための分岐ハンドル5a(ハンドル)を備える。主開閉器4および複数の分岐開閉器5は、基台2に取り付けられる。本体カバー3は、分電盤1の内部に設けられた配線(母線等)を覆うように、基台2に対して取り付けられる。本体カバー3は、主幹ハンドル4aに対応する箇所に第1開口窓3aを有し、複数の分岐ハンドル5aに対応する箇所に第2開口窓3b(開口部)を有する。第2開口窓3bには、所定の間隔をおいて複数の架設部16が設けられている。ここでは、基台2、本体カバー3、主幹ハンドルカバー11、および分岐ハンドルカバー12は、樹脂製であるが、これに限らず、本体カバー3を除いて、金属製であってもよい。
【0014】
また、本体カバー3には、2つの取手部6が設けられている。取手部6は、本体カバー3を基台2に固定するための部材であるとともに、本体カバー3を基台2から取り外すための部材である。なお、本体カバー3における互いに対向する2つの側面のそれぞれには、それぞれの取手部6を配置するための凹部の空間が設けられている。取手部6は、当該凹部の空間内において可動であるように配置されている。このように、凹部の空間内に取手部6が設けられることにより、本体カバー3の取り外し作業が容易化される。これにより、分電盤1のメンテナンス作業が容易化される。
【0015】
主幹ハンドルカバー11は、第1開口窓3aを覆うように、本体カバー3に取り付けられる。主幹ハンドルカバー11および本体カバー3の第1開口窓3a周辺には、対応する凸部と凹部が設けられている。凸部と凹部とが係合することにより、主幹ハンドルカバー11が本体カバー3に固定される。主幹ハンドルカバー11は、工具を使用することなく外側からユーザの手によって着脱(開閉)することができる。
【0016】
なお、主幹ハンドルカバー11は、着脱式ではなく、固定された軸を中心に回動して開く構成であってもよい。ただし、回動式に比べて、着脱式の主幹ハンドルカバー11の方が、軸等が壊れることがなく、主幹ハンドルカバー11が前側に回動するスペースが必要ないので、小さいスペースで分電盤1を使用(設置)することができる。
【0017】
(分岐ハンドルカバー)
図3は、分岐ハンドルカバー12の平面図を示す。分岐ハンドルカバー12は、板状の部材であり、長方形状の外形を有する。分岐ハンドルカバー12は、樹脂製であり、かつ、薄い板状であるため、弾性変形可能である。分岐ハンドルカバー12は、複数(ここでは4つ)の切り欠き12aを有する。ここでは、切り欠き12aは、円弧状であるが、三角形状であってもよいし、四角形状であってもよく、任意の形状であってよい。複数の切り欠き12aは、分岐ハンドルカバー12の少なくとも1つの中心軸に対して対称となるように、分岐ハンドルカバー12に形成されてもよい。例えば、複数の切り欠き12aが縦の中心軸に対して対称に形成されている場合、縦の中心軸に対して分岐ハンドルカバー12を180°回転させた状態でも、元の状態と同じように分岐ハンドルカバー12を本体カバー3に取り付けることができる。水平の中心軸に対して対称な場合、および中心に対して対称な場合についても同様である。分岐ハンドルカバー12は、少なくとも部分的に透明または半透明であることが好ましい。これにより、分岐ハンドルカバー12が閉まった(取り付けられた)状態でも、ユーザは外側から分岐ハンドルカバー12を通して分岐ハンドル5aの状態を見ることができる。
【0018】
図4は、分電盤1の、分岐開閉器5を通る断面図である。図4は、(a)から(c)にかけて、分岐ハンドル5aが動く様子を示す。分岐ハンドル5aが動く軌跡と干渉しないように、分岐ハンドルカバー12は配置される。すなわち、分岐ハンドルカバー12は、分岐ハンドル5aの動作範囲より外側、より具体的には、分岐ハンドル5aの動作範囲の最も高い位置よりも高い位置に配置される。各分岐開閉器5は、分電盤1に電源を供給するための3種類の母線17のうちの2つに接続されている。
【0019】
図5は、分岐ハンドルカバー12を取り外した(開けた)状態における、分電盤1の第2開口窓3bの箇所を拡大して示す平面図である。本体カバー3は、第2開口窓3bの周囲に沿って、分岐ハンドルカバー12を支持するためのカバー支持面13(支持面)を有する。カバー支持面13は、分岐ハンドルカバー12の縁を支持するために、第2開口窓3bの略全体の縁に設けられる。本体カバー3は、本体カバー3から突出する突起である複数の爪14を有する。分岐ハンドルカバー12は、カバー支持面13と爪14との間に挟まれることにより保持される。爪14が形成されている箇所に、カバー支持面13が形成されていなくてもよい。このように構成することで、本体カバー3の樹脂成型の際に金型から抜くのが容易となる。なお、爪14は、カバー支持面13との間で溝を形成するようにカバー支持面13に沿って長く延びる突起(突起部)であってもよい。
【0020】
カバー支持面13には、複数の凹部15が設けられている。カバー支持面13は、第2開口窓3bの対向する2辺(長辺)の対向する位置に、それぞれ凹部15を有する。凹部15は、第2開口窓3bの短辺に隣接する位置、または、短辺の近傍に配置される。本実施形態では、凹部15は、第2開口窓3bの短辺に沿って設けられたカバー支持面13に隣接するように配置される。また、凹部15が配置されている側の第2開口窓3bの短辺に、爪14aが設けられている。爪14、14aは、分岐ハンドルカバー12を押さえて固定する。
【0021】
第2開口窓3bは、本体カバー3に設けられた複数の架設部16によって区切られていてもよい。ここでは、複数の架設部16は、第2開口窓3bを横切るように掛け渡されている。複数の架設部16の上面(外表面)は、カバー支持面13と同じ面に揃うとともに、図4の(a)〜(c)にも示すように、分岐ハンドル5aの動作範囲の最も高い位置よりも高い位置にある。複数の架設部16の下面は、隣り合う分岐ハンドル5aの間の隙間に配置されている。複数の架設部16は、カバー支持面13と共に分岐ハンドルカバー12を支持する。架設部16は、平面視したときに(分電盤1の前面から見たときに)分岐ハンドル5aと重ならないように、複数の分岐開閉器5毎に、隣接する分岐開閉器5の間に配置される。架設部16は、その両側に複数の分岐開閉器5が存在する位置に設けられている。また、隣り合う架設部16は、所定数(ここでは3つ)の分岐開閉器5を間において配置されている。
【0022】
図6は、分岐ハンドルカバー12を取り付けた(閉めた)状態における、分電盤1の第2開口窓3bの箇所を拡大して示す平面図である。本体カバー3に分岐ハンドルカバー12を取り付ける際は、カバー支持面13と爪14との間に板状の分岐ハンドルカバー12を差し込み、分岐ハンドルカバー12をスライドさせる。分岐ハンドルカバー12は、本体カバー3に取り付けられた状態では、カバー支持面13上および架設部16上に保持されている。
【0023】
図7は、分岐ハンドルカバー12および凹部15を模式的に示す、図6における切断線A−Aの断面矢視図である。図7の(a)は、本体カバー3に分岐ハンドルカバー12が取り付けられている状態を示し、図7の(b)は、分岐ハンドルカバー12を外側から押し込んだ状態を示す。ここでは、第2開口窓3bはカバー支持面13より突出した矩形の壁で囲まれている。ここでは、凹部15の底面は、側面視で円弧状であるが、これに限らず、側面視において凹部15は(凹部を側面から見た断面形状は)、三角形状または四角形状等の任意の形状であってもよい。分岐ハンドルカバー12が第2開口窓3bに取り付けられた状態において、分岐ハンドルカバー12の短辺の端は、カバー支持面13と爪14aとの間に挿入されている。
【0024】
本体カバー3から分岐ハンドルカバー12を取り外す際は、分岐ハンドルカバー12の凹部15に対応する位置を外側からユーザが指等で押さえる。分岐ハンドルカバー12は、凹部15の曲面に沿って弾性変形するため、分岐ハンドルカバー12の一部(短辺の端)がカバー支持面13から浮き上がる。これにより、分岐ハンドルカバー12の短辺の端は、爪14aから外れる。この状態でユーザは、分岐ハンドルカバー12の浮き上がった端を指等で掴み、分岐ハンドルカバー12を引き出すことができる。また、架設部16が分岐ハンドルカバー12を支持するため、押さえられた分岐ハンドルカバー12が意図しない方向に撓んで分岐ハンドル5aに接触することを防ぐことができる。
【0025】
本体カバー3に分岐ハンドルカバー12を取り付ける際は、分岐ハンドルカバー12の端(短辺)をカバー支持面13上に配置し、カバー支持面13に沿って分岐ハンドルカバー12をスライドさせる。そして、分岐ハンドルカバー12の位置を第2開口窓3bに合わせた後、分岐ハンドルカバー12の凹部15に対応する位置をユーザが指等で一度押さえてから離す。これにより、分岐ハンドルカバー12の端(短辺)が、一旦凹部15側に引き込まれてから、元に戻る。これにより、第2開口窓3bの短辺に位置する爪14aの下に分岐ハンドルカバー12が入り込む。分岐ハンドルカバー12をスライドさせただけでは爪14aの下に分岐ハンドルカバー12が入らない場合であっても、このように、カバー支持面13に凹部15を設けることにより、容易に確実に、分岐ハンドルカバー12を爪14aの下に挿入することができる。分岐ハンドルカバー12は、工具を使用することなく外側からユーザの手によって着脱(開閉)することができる。
【0026】
なお、取り付けるために分岐ハンドルカバー12の端をカバー支持面13上に配置するときに、分岐ハンドルカバー12の切り欠き12aが本体カバー3の爪14に対応するように(切り欠き12aが爪14を避ける位置に)、分岐ハンドルカバー12の位置を合わせてもよい。その位置から、分岐ハンドルカバー12をカバー支持面13に押さえ付けながらスライドさせることにより、容易に分岐ハンドルカバー12をカバー支持面13と爪14との間に挿入することができる。また、切り欠き12aが円弧状(曲線状)にカーブしているため、スライドさせたときに分岐ハンドルカバー12が爪14の下に入り込みやすい。分岐ハンドルカバー12において、切り欠き12aが設けられた辺と、該辺に隣接する切り欠き12aの辺(ここでは円弧)とのなす角θは、90°未満であることが好ましい(図3参照)。それゆえ、切り欠き12aは、円弧状または三角形状であることが特に好ましい。これにより、分岐ハンドルカバー12をスライドさせたときに、切り欠き12aの端が爪14に引っかからないため、分岐ハンドルカバー12を爪14とカバー支持面13との間に挿入しやすい。
【0027】
固定された軸を中心に回動して開く回動式に比べて、着脱式の分岐ハンドルカバー12の方が、軸等が壊れることがなく、分岐ハンドルカバー12が前側に回動するスペースが必要ない。そのため、小さいスペースで分電盤1を使用(設置)することができる。また、本実施形態の分岐ハンドルカバー12は、板状であるため、市販の樹脂板を切り抜くことによって製造することができる。そのため、回動式に比べて製造コストを低く抑えることができる。
【0028】
なお、分岐ハンドルカバー12は、着脱式ではなく、固定された軸を中心に回動して開く構成(回動式)であってもよい。分岐ハンドルカバー12が回動式であっても、分岐ハンドルカバー12は、分岐開閉器5の分岐ハンドル5aに対応した第2開口窓3bを覆う大きさで十分である。そのため、分岐ハンドルカバー12を開けるための前面側のスペースが小さくて済む。
【0029】
なお、本実施形態の分電盤1は、住宅用の分電盤にも適用可能であるが、遊技機(例えば、パチンコ台またはスロット台)向けに特に好適である。その理由について、以下に述べる。
【0030】
一般的に、複数の遊技機は、島と称される複数のグループごとに電気的な制御が行われる。そして、上述の島の電気的な制御を行うための分電盤(制御盤)は、島盤と称される。遊技機がパチンコ台である場合には、島盤は台の上の部分に設置されることが標準的である。他方、遊技機がスロット台である場合には、島盤は台の下の部分に設置されることが標準的である。このように、一般的に島盤の設置位置は制限されることが多い。従って、島盤は、上下左右が壁に密接した狭いスペース内に設置されることとなる。このため、島盤のメンテナンス作業を行う場合には、島盤のカバーを取り付けるための作業スペースも、非常に狭くなる。
【0031】
しかしながら、本実施形態の分電盤1によれば、上述した通り、主開閉器4の主幹ハンドル4aに対応した箇所に主幹ハンドルカバー11を設け、分岐開閉器5の分岐ハンドル5aに対応した箇所に分岐ハンドルカバー12を設けている。そのため、狭いスペース内に分電盤1を配置することができる。また、分電盤1では、主幹ハンドル4aおよび分岐ハンドル5aが、それぞれ主幹ハンドルカバー11および分岐ハンドルカバー12に覆われているため、パチンコ玉またはコイン等の物体が主幹ハンドル4aおよび分岐ハンドル5aに接触することを防ぐことができる。
【0032】
以上のように、本実施形態の分電盤1は、遊技機用の島盤に特に好適な構成である。なお、本実施形態の分電盤1の構成は、遊技機用の島盤のメンテナンス作業の効率化を目的として、本願の発明者によって新たに見出されたものである。
【0033】
(本体カバーの樹脂成型)
図8は、分電盤1の本体カバー3を樹脂成型するための金型において樹脂が流動する状態を示す図である。本体カバー3を樹脂成型にて作製する場合、例えば、図8に示すような金型21を用いる。この金型21は、金型21の一方の長辺側の側壁部における略中央部に、樹脂を注入するための注入口21aが設けられている。また、金型21の内側には、複数の凸部21bが設けられている。これらの凸部21bは、第2開口窓3bにおいて分岐開閉器5が配置される、区画された複数(ここでは3つ)の領域を形成するための部分である。さらに、隣り合う凸部21b同士の対向する側壁の間には、架設部16を形成するための壁間部21cが形成されている。なお、図8においては、便宜上、第1開口窓3aを形成するための部分の図示を省略している。
【0034】
樹脂成型においては、注入口21aから注入された樹脂は、図8に破線にて示すように、両端の凸部21bと金型21の短辺側の側壁部との間を回り込むだけでなく、壁間部21cにも流れ込んで、注入口21aが設けられた側壁部と対向する側壁部側(注入口21aと反対側)に達する。これにより、図9に示す従来の金型101を用いた樹脂成型と比べて、注入口21aと反対側に流れ込む樹脂の量が多くなるので、金型21の全体に樹脂が注入されるまでの時間を短縮することができる。
【0035】
(分電盤の効果)
以上のように、本実施形態の分電盤1によれば、分岐ハンドル5aを露出させる第2開口窓3bに設けられた架設部16は、第2開口窓3bにおける分岐ハンドル5aが移動する領域を除く領域に、架設部16の両側に複数の分岐開閉器5が存在する位置に配置されている。これにより、第2開口窓3bの架設部16により区画された領域には、複数の分岐開閉器5が配置されるので、分岐ハンドル5aを操作するための空間が十分広く確保される。従って、分岐ハンドル5aの操作性が損なわれることはない。しかも、架設部16を複数設けることにより、本体カバー3の第2開口窓3bにおける強度を向上させることができる。各架設部16は、板状に形成されているので、第2開口窓3bにおける強度を高めることができる。
【0036】
また、隣り合う架設部16は、所定数(本実施形態では3個)の分岐開閉器5を間において配置されている。これにより、分電盤1では、第2開口窓3bが3つの架設部16によって区画されることで形成された4つの各領域に3個の分岐開閉器5が配置されるので、12個の分岐開閉器5が4つのグループに分けられる。従って、グループ内の分岐開閉器5の個数とグループ数とを乗算することで分岐開閉器5を数えやすくすることができる。なお、1つのグループに含まれる分岐開閉器5の個数は上記の3個に限定されないのは勿論である。
【0037】
また、分岐ハンドルカバー12を設けていない状態では、作業中に誤って分岐ハンドル5aに触れてしまい、分岐ハンドル5aがオフの状態になることがあったとしても、区画された範囲内で誤当接を食い止めることができ、電気的な影響の波及範囲を所定範囲内に抑制することができる。
【0038】
さらに、架設部16は、架設部16の外表面が分岐ハンドル5aの動作範囲の最も高い位置よりも高い位置にあるように形成されている。これにより、分岐ハンドルカバー12が閉じられた状態でも、分岐ハンドルカバー12が分岐ハンドル5aと接触することはない。しかも、分岐ハンドルカバー12は、押さえられても、架設部16に支持されることで沈み込まないので、分岐ハンドル5aに接触することはない。従って、分岐ハンドル5aの誤操作を回避することができる。
【0039】
(付記事項)
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0040】
なお、本発明に係る分電盤は、以下の(態様1)〜(態様4)のとおり表現することもできる。
【0041】
(態様1)複数の分岐開閉器のそれぞれに設けられた操作のためのハンドルを露出させる開口部が形成された樹脂製の本体カバーを備え、
前記本体カバーは、前記開口部において前記ハンドルが移動する領域を除く領域で前記開口部を横切るように架け渡された少なくとも1つの架設部を有し、
前記架設部は、その両側に複数の前記分岐開閉器が存在する位置に設けられている分電盤。
【0042】
(態様2)前記架設部が複数設けられている前記態様1に記載の分電盤。
【0043】
(態様3)隣り合う前記架設部が所定数の前記分岐開閉器を間において配置されている前記態様2に記載の分電盤。
【0044】
(態様4)前記架設部が、前記架設部の外表面が前記分岐開閉器のハンドルの動作範囲の最も高い位置よりも高い位置にあるように形成されている前記態様1から態様3のいずれか1つに記載の分電盤。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、分電盤に利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 分電盤
3 本体カバー
3b 第2開口窓(開口部)
5 分岐開閉器
5a 分岐ハンドル(ハンドル)
16 架設部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9