(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車体からドアを取り外してキャリア治具に装着するドア取り外しエリアと、前記ドアをストックするストレージエリアと、前記ドアに各種部品を組み付ける艤装エリアと、各種部品が組み付けられた前記ドアを前記キャリア治具から取り外して前記車体に取り付けるドア取り付けエリアとを有するドア艤装ラインであって、
各エリアに、前記キャリア治具を搭載可能なフレーム台を設け、
各エリアの前記フレーム台の間で前記キャリア治具を移載する移載ロボットを設けたドア艤装ライン。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ドア艤装ラインでは、車体から取り外した全てのドアをライン上にストックする必要がある。このように多数のドアをハンガーコンベアで搬送するためには、レールに沿って走行するキャリアが多数必要となる。各キャリアは、トロリー(滑車)や駆動部を有する比較的高価なものであるため、このようなキャリアを多数設けることで、設備コストが高騰する。
【0006】
また、上記のドア艤装ラインでは、ハンガーコンベアのレールが各エリアを縦断しているため、全てのエリアに要求される条件を満たすようにレールを設計することは容易ではない。特に、上記のドア艤装ラインでは、ドア取り外しエリア及びドア取り付けエリアにそれぞれ昇降装置が設けられているが、このような昇降装置は一旦設置すると容易に移動させることはできないため、昇降装置の設置箇所は慎重に検討する必要がある。以上より、従来のドア艤装ラインは設計に時間がかかるため、設備の立ち上げ時のリードタイムが長くなると共に、設備稼働後のレイアウト変更も容易ではない。
【0007】
例えば、上記のような昇降装置に代えて、ハンガーコンベアに傾斜レールを設けることで、ドアを搭載したキャリアを昇降させることも考えられる。しかし、このような傾斜レールは、キャリアを走行させるために角度を緩やかにせざるを得ず、所定高さ昇降させるために必要な傾斜レールの長さが長くなり、大きな設置スペースを要する。
【0008】
また、上記のドア艤装ラインでは、エリアによってドアの最適な配置が異なる場合がある。例えば、ドア取り外しエリアにおいて車体から取り外したドアをキャリアに搭載しやすいドアの配置と、艤装作業エリアにおいて艤装作業を行いやすいドアの配置とが異なる場合がある。しかし、従来のハンガーコンベアを用いたドア艤装ラインでは、一台のキャリアに複数のドアが所定の配置で搭載された状態で搬送されるため、搬送途中にキャリア上のドアの配置を変えることは容易ではない。キャリアに一旦搭載したドアの配置を変えるためには、そのための付随設備(回転設備等)を設ける必要があるため、設備コストが高くなると共に、このような設備を設置するためのスペースが必要となる。
【0009】
本発明は、以上のようなハンガーコンベアを用いた従来のドア艤装ラインにおける様々な課題を解決することを目的とするものであり、具体的には、ドア艤装ラインの低コスト化及び省スペース化を図ること、ドア艤装ラインの設計を容易化して、立ち上げ時のリードタイムを短縮すると共に、レイアウト変更を容易化すること、及び、エリアごとにドアの配置を容易に変更可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は、車体からドアを取り外してキャリア治具に装着するドア取り外しエリアと、前記ドアをストックするストレージエリアと、前記ドアに各種部品を組み付ける艤装エリアと、各種部品が組み付けられた前記ドアを前記キャリア治具から取り外して前記車体に取り付けるドア取り付けエリアとを有するドア艤装ラインであって、各エリアに、前記キャリア治具を搭載可能なフレーム台を設け、各エリアの前記フレーム台の間で前記キャリア治具を移載する移載ロボットを設けたドア艤装ラインを提供する。
【0011】
このように、本発明は、従来のように各エリアを縦断するハンガーコンベアを設けるのではなく、ドアにキャリア治具を装着して搬送すると共に、各エリアにキャリア治具を搭載可能なフレーム台を設け、各エリアのフレーム台の間でキャリア治具を移載するようにした。これにより、ハンガーコンベアに設けられていた高価なキャリアが不要となるため、低コスト化が図られる。また、各エリアを独立して設計することができるため、各エリアの設計が容易になる。
【0012】
この場合、各エリアのフレーム台の間でキャリア治具(ドア)を移載するために、専用の移載装置を設けると、上記の昇降装置と同様に、設置場所を慎重に検討する必要があるため、かえってドア艤装ラインの設計時間が長くなるおそれがある。そこで、本発明では、各エリアのフレーム台間の移載をロボットで行うようにした。移載ロボットは、設置した後でも、移載ロボットのハンドの設定(ティーチング)を変更することによりフレーム台との間の微妙な位置調整を容易に行うことができるため、設置場所を厳密に設定する必要がなく、ドア艤装ラインの設計時間を短縮できる。以上のように、各エリアの設計を独立して行うと共に、各エリア間のドアの移載をロボットで行うことで、ドア艤装ラインの設計が容易化されるため、設備の立ち上げ時のリードタイムが短縮されると共に、設備稼働後のレイアウト変更にも容易に対応することができる。
【0013】
また、各エリアの間でドアを昇降させる必要がある場合でも、移載ロボットで昇降させることができるため、従来の大掛かりな昇降装置や長い傾斜レールが不要となり、低コスト化及び省スペース化が図られる。
【0014】
また、移載ロボットで、各エリアのフレーム台の間でドアを移載することにより、各エリアにおけるドアの配置を容易に変更することができるため、別途の付随設備を設けることなく、各エリアの作業に適した配列でドアを配置することができる。
【0015】
ところで、上記のストレージエリア及び艤装エリアに従来のハンガーコンベアを適用すると、これらのエリアを縦断するレールが設けられ、このレール上を走行するキャリアでドアが搬送される。この場合、各エリアにおける搬送手段(キャリア)は共通であるため、ドアの搬送手段をエリアごとに異ならせることはできない。
【0016】
一方、上記のように各エリアにフレーム台を設け、ストレージエリア及び艤装エリアに設けられた前記フレーム台を所定の経路に沿って搬送することで、フレーム台及びこれに搭載されたドアの搬送手段をエリアごとに異ならせることができるため、各エリアに適した搬送手段でフレーム台及びドアを搬送することができる。
【0017】
具体的には、例えば艤装エリアにおいて、従来のようにハンガーコンベアでドアを搬送すると、作業者は、搬送されるドアと共に歩いて移動しながら艤装作業を行う必要があるため、作業性が悪い。また、ハンガーコンベアで吊り下げ保持されたキャリアには、複数のドアが搭載されることが多いが、このような複数のドアのうちの一つに対して艤装作業を行うと、キャリア全体が揺れてしまうため、他のドアの艤装作業性が悪くなる。さらに、艤装エリアでは、部品の誤組み付けを防止するために、部品が収容された部品箱を、その部品を組み付けるドアと同期して搬送する必要があり、このための手段を講じる必要が生じる。
【0018】
そこで、艤装エリアにおいて、パレット上にフレーム台を設け、そのパレット上で作業者が艤装作業を行うことで、作業者は、パレット上でドアと共に移動しながら艤装作業を行うことができるため、艤装作業を行いやすくなる。また、ドアを搭載したフレーム台がパレットに固定されているため、ハンガーコンベアのように宙吊り状態のキャリアが艤装作業中に揺れることがないため、艤装作業を行いやすくなる。さらに、パレット上に、当該パレットに搭載されたドアに組み付ける部品箱を搭載するだけで、ドアの近くに部品箱を配置することができる。
【0019】
一方、ストレージエリアでは、上記のように作業者が乗るような大きなパレットは不要であるため、フレーム台及びドアを搬送するために必要最小限の大きさ及び機能を有する台車でフレーム台を搬送することで、さらなる低コスト化及び省スペース化が図られる。
【0020】
以上より、ストレージエリアでは、所定の経路に沿って搬送される複数の台車の上にフレーム台を設け、艤装エリアでは、所定の経路に沿って搬送される複数のパレット上にフレーム台を設け、そのパレット上で作業者が艤装作業を行うようにすることで、これらのエリアに適した状態でフレーム台を搬送することができる。
【0021】
上記の場合、ストレージエリアでは、ドアの密度を高くするために、台車のピッチはなるべく小さい方がよい。一方、艤装エリアでは、作業スペースを確保するために、パレットのピッチ(パレットの大きさ)をある程度確保する必要がある。従って、ストレージエリアにおける台車のピッチを、艤装エリアにおけるパレットのピッチよりも小さくすることで、各エリアに適したピッチでフレーム台を搬送することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明のドア艤装ラインでは、ドアにキャリア治具を装着して搬送すると共に、各エリアに、キャリア治具を搭載可能なフレーム台を設け、各エリアのフレーム台間のキャリア治具の移載をロボットで行うようにした。これにより、従来のハンガーコンベアが不要となるため、低コスト化及び省スペース化が図られる。また、ドア艤装ラインの設計が容易化されるため、立ち上げ時のリードタイムを短縮すると共に、レイアウト変更を容易化することができる。さらに、別途の付随設備を設けることなく、エリアごとにドアの配置を容易に変更することができるため、各エリアにおける作業性が高められる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
図1に示す自動車の組立設備は、車体Bに各種部品を組み付ける車体組立ラインLと、車体Bから取り外したドアに各種部品を組み付けて、再び車体Bに組み付けるドア艤装ラインとを備える。
【0026】
ドア艤装ラインは、車体組立ラインLを搬送される車体Bからドアを取り外すドア取り外しエリア10と、ドアをストックする第1ストレージエリア20と、ドアに各種部品を組み付ける艤装エリア30と、各種部品が組み付けられたドアをストックする第2ストレージエリア40と、各種部品が組み付けられたドアを、車体組立ラインLを搬送される車体Bに再び取り付けるドア取り付けエリア50とを有する。本実施形態のドア艤装ラインは、複数の階に跨って設けられる。図示例では、第1ストレージエリア20、艤装エリア30、及び第2ストレージエリア40が異なる階に設けられ、具体的には、ドア取り外しエリア10が4階(一部は3階)、第1ストレージエリア20が4階、艤装エリア30が3階、第2ストレージエリア40が2階、ドア取り付けエリア50が1階に設けられる。
【0027】
車体Bから取り外されたドアは、キャリア治具60に装着された状態で搬送される。キャリア治具60は、
図2に示すように、フレーム61と、フレーム61の下部に設けられた支持部62と、後述する移載ロボット80のピン81が挿入される搬送用ピン穴63と、後述するフレーム台70のピン73が挿入される載置用ピン穴64と、フレーム61の上部に設けられたクランプ部65a,65bとを備える。図示例では、一対の搬送用ピン穴63が、フレーム61の幅方向{
図2(A)の左右方向}両端に設けられ、一対の載置用ピン穴64が、フレーム61の幅方向両端に設けられる。搬送用ピン穴63と載置用ピン穴64は、上下方向に離間して設けられ、例えば搬送用ピン穴63の下方に載置用ピン穴64が設けられる。ドアDの下部を支持部62の上に載置すると共に、ドアDの上部をクランプ部65a,65bで幅方向両側からクランプすることで、ドアDがキャリア治具60に装着される。図示例では、一方のクランプ部65aがフレーム61に固定され、他方のクランプ部65bが幅方向{
図2(A)の矢印参照}にスライド可能とされる。一方のクランプ部65aの凹溝(図示省略)にドアDの一方の縁を嵌め込んだ状態で、他方のクランプ部65bをスライドさせてその凹溝(図示省略)にドアDの他方の縁を嵌め込むことで、ドアDがクランプ部65a,65bでクランプされる。
【0028】
各エリア10〜50には、キャリア治具60を搭載可能なフレーム台70が設けられる。フレーム台70は、
図3に示すように、フレーム71と、フレーム71の下部に設けられた支持部72と、上方に突出したピン73とを備える。図示例では、フレーム71の幅方向{
図3(A)の左右方向}両端から、一対のピン73が上方に突出している。一対のピン73のピッチ(幅方向間隔)は、キャリア治具60の一対の載置用ピン穴64のピッチと一致している。キャリア治具60の載置用ピン穴64にフレーム台70のピン73を挿入すると共に、キャリア治具60の下部を支持部72の上に載置することで、キャリア治具60がフレーム台70に搭載される。図示例では、キャリア治具60をフレーム台70に搭載した状態で、キャリア治具60とフレーム台70のピン73の台座74とが接触しておらず、キャリア治具60の高さ方向の位置決めは支持部72で行われている。
【0029】
ドア艤装ラインには、各エリア10〜50に設けられたフレーム台70の間でキャリア治具60を移載する移載ロボット80が設けられる(例えば、
図4に示すドア取り外しエリア10の移載ロボット80A参照)。移載ロボット80は、一対のピン81を有するハンド82が設けられる。ハンド82は、図示しないアームにより任意の3次元位置に任意の姿勢で配置可能とされる。一対のピン81のピッチは、キャリア治具60の搬送用ピン穴63(
図2参照)のピッチと一致している。移載ロボット80のハンド82のピン81をキャリア治具60の搬送用ピン穴63に下方から挿入し、ハンド82を上昇させることで、キャリア治具60を持ち上げて搬送することができる。尚、各エリアに設けられる移載ロボット80は、搭載可能なキャリア治具60の数は異なるが、キャリア治具60を搭載するための基本的な構造は同じである。以下では、各移載ロボット80を区別するために、80A,80B・・・の符号を付して説明を進める。
【0030】
図4に示すように、ドア取り外しエリア10には、床面に固定された複数の仮置台11a〜11jと、複数の移載ロボット80A〜80Fと、作業者がドアの取り外し作業を行う架台13とが設けられる。尚、
図4では、4階(第1ストレージエリア20と同じ階)に設けられた仮置台11d,11e,11i,11jを実線で示し、3階(艤装エリア30と同じ階)に設けられ仮置台11a,11b,11c,11f,11g,11hを点線で示している。
【0031】
仮置台11a〜11jは、それぞれ複数のフレーム台70を備える。本実施形態では、仮置台11a,11b,11c,11f,11g,11hはそれぞれ2台のフレーム台70を備え、仮置台11d,11e,11i,11jはそれぞれ1台のフレーム台70を備える。
【0032】
図示例では、移載ロボット80A、80B、80E、80Fのハンド82には二組のピン81が設けられ、2台のキャリア治具60(例えば、フロントドア用のキャリア治具60及びリアドア用のキャリア治具60)を同時に搬送可能とされる。一方、移載ロボット80C、80Dのハンド82には一組のピン81が設けられ、キャリア治具60を一台ずつ搬送可能とされる。
【0033】
第1ストレージエリア20には、所定の経路に沿って閉ループ状に搬送される複数の台車21が設けられる。各台車21には、複数(図示例では4台)のフレーム台70が設けられる。各台車21は、例えば床面に設けられたレール上を走行可能であり、適宜の駆動手段で駆動される。駆動手段は特に限定されず、例えば、各台車21に設けたモータ等の駆動部や、設備側に設けたローラ等の駆動部で台車21を駆動することができる。あるいは、チェーンコンベア等の他の駆動手段で台車21を駆動してもよい。
【0034】
図5に示すように、艤装エリア30には、所定の経路に沿って閉ループ状に搬送される複数のパレット31と、パレット31上に設けられた組付台32と、複数の移載ロボット80G〜80Jと、床面に固定された仮置台33a,33bとが設けられる。パレット31は、レールやローラ等の適宜の搬送手段により搬送される。組付台32及び各仮置台33a,33bは、それぞれ複数(図示例では4台)のフレーム台70を備える。パレット31上には、当該パレット31上のドアに組み付ける部品が収容された部品箱34が搭載される。移載ロボット80G,80Hのハンド82には、2組のピン81が設けられ、2台のキャリア治具60(例えば、左右のフロントドア用のキャリア治具60、あるいは、左右のリアドア用のキャリア治具60)を同時に搬送可能とされる。一方、移載ロボット80I,80Jのハンド82には、4組のピン81が設けられ、4台のキャリア治具60(例えば、左右のフロントドア及びリアドア用のキャリア治具60)を同時に搬送可能とされる。
【0035】
図6に示すように、第2ストレージエリア40には、所定の経路に沿って閉ループ状に搬送される複数の台車41と、床面に固定された複数の仮置台42a,42bと、複数の移載ロボット80K,80Lとが設けられる。各台車41には、複数(図示例では4台)のフレーム台70が設けられる。各台車41の駆動手段の例は、第1ストレージエリア20の台車21と同様であるため、説明を省略する。各仮置台42a,42bは、複数(図示例では2台)のフレーム台70を備える。各移載ロボット80K,80Lのハンド82には、二組のピン81が設けられ、2台のキャリア治具60(例えば、フロントドア用のキャリア治具60及びリアドア用のキャリア治具60)を同時に搬送可能とされる。
【0036】
図7に示すように、ドア取り付けエリア50には、架台51の上に設けられた移載ロボット80M,80Nと、床面上に設けられた移載ロボット80O〜80Rと、各移載ロボット80O〜80Rの周りに設けられた仮置台54a〜54d,55a〜55d,56a〜56dとが設けられる。各移載ロボット80M〜80Rのハンド82には、一組のピン81が設けられ、キャリア治具60を1台ずつ搬送可能とされる。各仮置台54a〜54d,55a〜55d,56a〜56dは、それぞれ1台のフレーム台70を備える。
【0037】
以下、上記のドア艤装ラインの各工程を詳しく説明する。
【0038】
図4に示すように、第1ストレージエリア20の台車21のフレーム台70に搭載された空のキャリア治具60を、ドア取り外しエリア10の移載ロボット80Aが、3階(下階)に設けられた仮置台11aのフレーム台70に2台ずつ移載する(矢印A1参照)。
【0039】
次に、移載ロボット80Bが、3階の仮置台11aに搭載された2台の空のキャリア治具60(右側フロントドア及び右側リアドア)を、3階に設けられた右ドア用の仮置台11cに、他の2台(左側フロントドア及び左側リアドア)を3階に設けられた左ドア用の仮置台11bに移載する(矢印A2参照)。
【0040】
次に、移載ロボット80Cが、左ドア用の仮置台11bに搭載された空のキャリア治具60を、架台13上の左ドア用の仮置台11d,11iに1台ずつ移載する(矢印A3参照)。同様に、移載ロボット80Dが、右ドア用の仮置台11cに搭載された空のキャリア治具60を、架台13上の右ドア用の仮置台11e,11jに1台ずつ移載する(矢印A4参照)。
【0041】
次に、架台13上の作業者が、ハンガーコンベアで搬送された車体Bから左リアドア及び左フロントドアを取り外し、架台13上の左ドア用の仮置台11d,11iに搭載されたキャリア治具60に装着する。同様に、他の作業者が、車体Bから右リアドア及び右フロントドアを取り外し、架台13上の右ドア用の仮置台11e,11jに搭載されたキャリア治具60に装着する。尚、以下では、部品艤装前のドアが装着されたキャリア治具60を「実キャリア治具60’」と言い、図中では一本の対角線を引いた長方形で示す。
【0042】
次に、移載ロボット80Cが、架台13上の左ドア用の仮置台11d,11iに搭載された実キャリア治具60’を、3階に設けられた仮置台11fに移載する(矢印A5参照)。同様に、移載ロボット80Dが、架台13上の右ドア用の仮置台11e,11jに搭載された実キャリア治具60’を、3階に設けられた仮置台11gに移載する(矢印A6参照)。
【0043】
次に、移載ロボット80Eが、3階に設けられた仮置台11f,11gの実キャリア治具60’を、3階に設けられた仮置台11hに移載する(矢印A7参照)。その後、移載ロボット80Fが、仮置台11hに搭載された実キャリア治具60’を、第1ストレージエリア20の台車21のフレーム台70に移載する(矢印A8参照)。以上により、車体Bから取り外された複数のドア(図示例では、左右のフロントドア及びリアドアの計4枚のドア)が、一台の台車21にまとめて搭載される。
【0044】
第1ストレージエリア20では、実キャリア治具60’を搭載した台車21が、閉ループ状の経路に沿って搬送される。台車21が所定の位置まで搬送されたら、この台車21に搭載された実キャリア治具60’が、
図5に示す艤装エリア30の移載ロボット80G,80Hにより、パレット31上の組付台32の各フレーム台70に移載される(
図4及び
図5の矢印B1参照)。そして、パレット31が搬送されながら、パレット31上の作業者により、パレット31に固定された組付台32上の実キャリア治具60’のドアに対して各種部品が組み付けられる。そして、パレット31上のドアに対して全ての部品が組み付けられたら、艤装作業が完了する。尚、部品艤装済みのドアが装着されたキャリア治具60を「実キャリア治具60”」と言い、図中では二本の対角線を引いた長方形で示す。
【0045】
パレット31が所定の位置まで搬送されたら、パレット31上の組付台32の各フレーム台70に搭載された実キャリア治具60”が、移載ロボット80Iにより、仮置台33aに移載される(矢印C1参照)。そして、この仮置台33aに搭載された実キャリア治具60”が、
図6に示す第2ストレージエリア40の移載ロボット80Kにより、第2ストレージエリア40の仮置台42aに移載される(
図5及び
図6の矢印D1参照)。
【0046】
第2ストレージエリア40では、仮置台42aに搭載された実キャリア治具60”が、移載ロボット80Lにより、所定の経路に沿って閉ループ状に搬送される台車41上のフレーム台70に移載される(矢印D2参照)。この台車41が所定の位置まで搬送されたら、台車41に搭載された実キャリア治具60”が、
図7に示すドア取り付けエリア50の移載ロボット80M,80Nにより、ドア取り付けエリア50の仮置台54a〜54dに移載される(
図6及び
図7の矢印E1参照)。
【0047】
そして、仮置台54a〜54dに搭載された実キャリア治具60”を、移載ロボット80O〜80Rが、仮置台55a〜55dに移載する(矢印E2参照)。各作業者は、仮置台55a〜55dの実キャリア治具60”の艤装済みドアを、キャリア治具60から取り外して、車体組立ラインL上を搬送される車体Bに対して組み付ける。図示例では、仮置台55aに右側リアドア、仮置台55bに右側フロントドア、仮置台55cに左側リアドア、仮置台55dに左側フロントドアが搭載され、各仮置台55a〜55dの付近の作業者により、各ドアが車体Bに組み付けられる。
【0048】
そして、仮置台55a〜55dに搭載された空のキャリア治具60は、移載ロボット80O〜80Rにより、仮置台56a〜56dに移載される(矢印E3参照)。そして、仮置台56a〜56dに搭載された空のキャリア治具60が、移載ロボット80M,80Nにより、
図6に示す第2ストレージエリア40の台車41のフレーム台70に移載される(
図6及び
図7の矢印D2参照)。この台車41が所定位置まで搬送されたら、台車41に搭載された空のキャリア治具60が、移載ロボット80Lにより、仮置台42bに移載される(矢印D3参照)。この仮置台42bに搭載された空のキャリア治具60が、移載ロボット80Kにより、
図5に示す艤装エリア30の仮置台33bに移載される(
図5及び
図6の矢印C2参照)。さらに、この仮置台33bに搭載された空のキャリア治具60が、移載ロボット80Jにより、
図4に示す第1ストレージエリア20の台車21上のフレーム台70に移載される(
図4及び
図5の矢印B2参照)。この台車21が、ドア取り外しエリア10付近の所定位置まで搬送されたら、台車21に搭載された空のキャリア治具60が、ドア取り外しエリア10の移載ロボット80Aにより、ドア取り外しエリア10の仮置台11aに移載される。以上を繰り返すことにより、ドアの取り外し、艤装、取り付けが順次行われる。
【0049】
以上のドア艤装ラインにより搬送されるキャリア治具60の流れを、
図1に矢印で示す。尚、
図1では、ドアが装着されたキャリア治具(実キャリア治具60’,60”)の流れを実線矢印で示し、空のキャリア治具60の流れを点線矢印で示す。
【0050】
上記のドア艤装ラインでは、ハンガーコンベアでドアを搬送するのではなく、各エリア10〜50にフレーム台70を設け、各エリア10〜50のフレーム台70の間でキャリア治具60を移載する。これにより、ハンガーコンベアに設けられていた高価なキャリアが不要となるため、低コスト化が図られる。また、各エリア10〜50を独立して設計することができるため、各エリアを縦断するハンガーコンベアを設ける場合と比べて、各エリア10〜50の設計が容易化される。
【0051】
また、各エリア10〜50のフレーム台70の間でのドア(キャリア治具60)の移載を移載ロボット80で行うことで、設備に移載ロボット80を設置した後でも、移載ロボットのティーチングを変更することで、フレーム台70とハンド82との間でのキャリア治具60の受け渡しの調整を行うことができる。従って、移載ロボットの設置場所の精度が緩和されるため、設計(移載ロボットの配置場所の決定)が容易化される。
【0052】
また、本実施形態では、ドア艤装ラインが複数の階に跨って設けられているため、異なる階に設けられたフレーム台70の間でキャリア治具60を昇降させる必要がある。この場合でも、移載ロボット80によりキャリア治具60を昇降させることができるため、従来の大掛かりな昇降装置や長い傾斜レールが不要となり、低コスト化及び省スペース化が図られる。
【0053】
また、上記のドア艤装ラインでは、一台の車体Bから取り外した4枚のドアをまとめた状態で搬送される。このとき、各エリア10〜50において、4枚のドアの最適な配置が異なる場合がある。例えば、ドア取り外しエリア10において、作業者が車体Bから取り外したドアをキャリア治具60に搭載しやすい配置(動線が短くなる配置)と、艤装エリア30において、パレット31上のドアに対して部品を組み付けやすいドアの配置とが異なる場合がある。この場合、ドア取り外しエリア10では、ドアの取り外し作業がしやすい配列で4枚のドアを配置し、ドア取り外しエリア10から第1ストレージエリア20への移載、あるいは、第1ストレージエリア20から艤装エリア30への移載時に、4枚のドアの配列を並べ替えて、艤装エリア30のパレット31上にセットされたときに艤装作業がしやすいように配置することができる。
【0054】
同様に、艤装エリア30に適したドアの配置と、ドア取り付けエリア50に適したドアの配置とが異なる場合がある。この場合、艤装エリア30に適した配列で配置された4枚のドアを、艤装エリア30から第2ストレージエリア40への移載、あるいは、第2ストレージエリア40からドア取り付けエリア50への移載時に並べ替えて、ドア取り付けエリア50に適した配列となるようにすることができる。
【0055】
また、第1ストレージエリア20、艤装エリア30、及び第2ストレージエリア40では、各エリアに適した搬送手段でフレーム台70が搬送される。具体的に、第1ストレージエリア20及び第2ストレージエリア40では、ドアに部品の組み付け作業等は行われないため、ドアを搬送するために必要最小限の大きさ及び機能(駆動力)を有する台車21,41でフレーム台70が搬送される。これにより、第1及び第2ストレージエリア20,40における搬送手段のコストが低減される。また、台車21,41間のピッチを小さくすることができるため、ストレージエリア20,40におけるドアの密度を高めて省スペース化を図ることができる。
【0056】
一方、艤装エリア30では、作業者が乗れる大きさのパレット31によりフレーム台70が搬送される。この場合、パレット31に乗った作業者が艤装作業を行うことで、作業者が、搬送されるドアと共に歩きながら艤装作業を行う必要がないため、作業性が向上する。また、フレーム台70は、床面上を安定して搬送されるパレット31に固定されているため、フレーム台70に搭載された複数のドアに対し同時に艤装作業を行う場合でも、フレーム台70が揺れることはなく、作業性の悪化を防止できる。さらに、パレット31上に、当該パレット31上のドアに組み付ける部品を搭載した部品箱34を載せることで、ドアとこれに組み付ける部品とを簡単に同期搬送することができる。加えて、パレット31のピッチを大きくすることで、パレット31の大きさが確保されるため、パレット31上の組付台32の周囲に作業スペースや部品箱34の配置スペースを十分に確保することができる。
【0057】
本発明は、上記の実施形態に限られない。例えば、上記の実施形態では、第1ストレージエリア20、艤装エリア30、第2ストレージエリア40、及びドア取り付けエリア50が異なる階に設けられた場合を示したが、これらの何れかあるいは全てが同じ階に設けられたドア艤装ラインに本発明を適用してもよい。また、第1ストレージエリア20又は第2ストレージエリア40を省略してもよい。この場合、ドア取り外しエリア10から艤装エリア30、あるいは、艤装エリア30からドア取り付けエリア50に移載ロボット80でキャリア治具60を移載する。