(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6788326
(24)【登録日】2020年11月4日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】住宅
(51)【国際特許分類】
E04H 1/02 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
E04H1/02
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-13235(P2015-13235)
(22)【出願日】2015年1月27日
(65)【公開番号】特開2016-138389(P2016-138389A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2017年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】特許業務法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮田 莉樹
【審査官】
須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−136916(JP,A)
【文献】
特開2010−013875(JP,A)
【文献】
米国特許第04602464(US,A)
【文献】
講談社編,309.居間を2階に配し、日照、採光を十分に,家族の誰もが満足する「間取りと外観デザイン」900例,日本,株式会社講談社,1999年 8月20日,第1刷,p.421
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/02
E04B 1/348
E04B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に互いに隣接する下階および上階を含む住宅であって、
前記住宅の正面視において前記下階および前記上階に跨って配置される第1の外壁部と、
前記第1の外壁部のうち前記上階の外壁部の面を基準面とし、当該基準面から屋外方向へ突出し、前記下階の天井レベルおよび前記上階の床レベルにおいて前記第1の外壁部の横幅方向一方端側から途中位置まで延びる第1庇部と、
前記基準面となる前記上階の外壁部の横幅方向他方端側から途中位置まで同一の厚みで延び、下面が前記基準面よりも屋内方向へ後退している上階外壁帯状部とを備え、
前記第1の外壁部のうち、前記上階外壁帯状部の下方に位置する下方空間に隣接する下階の後退壁部には、前記下階の屋内空間に繋がる開口部が設けられ、
前記第1庇部と前記上階外壁帯状部は、前記下階の天井レベル、かつ、前記上階の床レベルにおいて、同一の高さで、かつ同一の厚みで延び、
前記第1庇部の屋外側端面は、前記上階外壁帯状部よりも屋外側に位置し、
前記基準面と前記第1庇部の屋外側端面と前記上階外壁帯状部は、同一の屋外側方向へ向いている、住宅。
【請求項2】
前記開口部は、前記後退壁部の全横幅にわたって設けられた掃出し窓である、請求項1に記載の住宅。
【請求項3】
前記第1の外壁部の横幅方向他方端部に直交する第2の外壁部をさらに備え、
前記上階外壁帯状部が前記第2の外壁部にまで回り込むことで、前記下方空間が平面視においてL字状に延在しており、
前記第2の外壁部にも、前記下階の屋内空間に繋がる開口部が設けられている、請求項1または2に記載の住宅。
【請求項4】
前記上階外壁帯状部の上には、上階のバルコニーが設けられており、
前記バルコニーの天井部を構成し、かつ、前記第1の外壁部の横幅方向他方端側から同一の厚みで途中位置まで延びる第2外壁帯状部をさらに備える、請求項3に記載の住宅。
【請求項5】
前記上階外壁帯状部を貫通するように前記下方空間および前記バルコニーに立設された化粧柱をさらに備える、請求項4に記載の住宅。
【請求項6】
陸屋根をさらに備え、
前記第2外壁帯状部が前記陸屋根の軒部により形成されている、請求項4または5に記載の住宅。
【請求項7】
前記第1庇部の横幅方向一方端部から下方に延びる支持部をさらに備える、請求項1〜6のいずれかに記載の住宅。
【請求項8】
前記第1庇部における横幅方向一方端部以外の厚みは、前記上階外壁帯状部と略同じ厚みである、請求項7に記載の住宅。
【請求項9】
前記第1庇部と前記支持部とで囲まれた空間に、玄関ポーチが配置されている、請求項7または8に記載の住宅。
【請求項10】
前記第1庇部の横幅方向一方端部は、前記第1の外壁部よりも屋外方向へ突出しており、
前記第1庇部と前記支持部で囲まれた空間に、駐車スペースが配置されている、請求項7〜9のいずれかに記載の住宅。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅に関し、特に、戸建住宅に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、外観の意匠性を高めるために、次のような住宅が提案されている。特開2013−127181号公報(特許文献1)では、2階の正面外壁に片持ちのオーバーハング部およびキャンティバルコニーが設けられ、1階部分と2階部分との境界付近に、外方向に向かって水平に突出するフラット庇が設けられた戸建住宅が開示されている。このフラット庇は、正面側から見て左側に突出し、住宅の側面にも一部が回り込んで形成されている。キャンティバルコニーは、オーバーハング部に隣接し、かつ、正面側から見て正面外壁の右側に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−127181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された住宅は、正面外壁に、オーバーハング部、キャンティバルコニー、およびフラット庇を設けることで、正面外壁の単調さを解消するようにしている。しかしながら、特許文献1の住宅の外観は、コンパクトにまとまった印象となっており、建物全体のインパクトに欠ける。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、外観意匠性をさらに向上させることのできる住宅を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のある局面に従う住宅は、上下方向に互いに隣接する下階および上階を含む住宅であって、下階および上階に跨って配置される第1の外壁部と、第1庇部と、第2庇部とを備える。第1庇部は、第1の外壁部における基準面から屋外方向へ突出し、下階の天井レベルにおいて第1の外壁部の横幅方向一方端側から途中位置まで延びる。第2庇部は、第1庇部と同じ高さにおいて、第1の外壁部の横幅方向他方端側から同一の厚みで途中位置まで延び、基準面よりも屋内方向へ後退することによって形成される。第1の外壁部のうち、第2庇部の下方に位置する庇下空間に隣接する後退壁部には、下階の屋内空間に繋がる開口部が設けられている。
【0007】
好ましくは、開口部は、後退壁部の全横幅にわたって設けられた掃出し窓である。
【0008】
好ましくは、住宅は、第1の外壁部の横幅方向他方端部に直交する第2の外壁部をさらに備え、第2庇部が第2の外壁部側にまで回り込むことで、庇下空間が平面視においてL字状に延在している。この場合、第2の外壁部にも、下階の屋内空間に繋がる開口部が設けられていることが望ましい。
【0009】
好ましくは、第2庇部の上には、上階のバルコニーが設けられている。この場合、当該住宅は、バルコニーの天井部を構成し、かつ、第1の外壁部の横幅方向他方端側から同一の厚みで途中位置まで延びる第3庇部をさらに備えることが望ましい。
【0010】
好ましくは、第2庇部を貫通するように庇下空間およびバルコニーに立設された化粧柱をさらに備える。
【0011】
当該住宅は、陸屋根をさらに備え、第3庇部が陸屋根の軒部により形成されていてもよい。
【0012】
好ましくは、第1庇部の幅方向一方端部から下方に延びる支持部をさらに備える。
【0013】
その場合、第1庇部における横幅方向一方端部以外の厚みは、第2庇部と略同じ厚みである。
【0014】
第1庇部と後退壁部とで囲まれた空間に、玄関ポーチが配置されていてもよい。
【0015】
あるいは、第1庇部の横幅方向一方端部が、第1の外壁部よりも屋外方向へ突出している場合、第1庇部と後退壁部で囲まれた空間に、駐車スペースが配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、外観意匠性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態に係る住宅の正面側の外観を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る住宅の1階の構成を示した平面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る住宅の2階の構成を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0019】
図1〜
図3を参照して、本実施の形態に係る住宅10ついて説明する。
図1には、住宅10の外観斜視図が示されている。以下の説明において、住宅10の正面側を前方、裏面側を後方という。なお、住宅10の正面側とは、たとえば、玄関扉61が設けられる側か、屋外の通路に面する側を表わしている。
【0020】
住宅10は、一戸建ての住宅であり、居住空間を形成する建物である。住宅10は、複数階建て、たとえば2階建ての住宅である。
【0021】
住宅10は、屋内空間を取り囲むように配置された外壁2と、屋根3とを有している。外壁2は、典型的には、住宅10の正面側、裏面側、および左右の側面側にそれぞれ配置された4つの外壁部を含む。各外壁部は、平面視において住宅10の一辺を構成しており、外壁面の一部が後退または突出させられることによる凹凸を有していても良い。各外壁部は、住宅10の1階および2階に跨って配置されている。
【0022】
住宅10の正面側の外壁部(以下、「正面外壁」という)21は、ある部分の外壁面(表面)を基準として、前後方向に凹凸が形成されている。このことについて具体的に説明する。なお、正面外壁21の凹凸の基準となる外壁面を、基準面210という。また、本実施の形態では、正面外壁21の横幅方向一方側が正面から見て左側、横幅方向他方側が正面から見て右側であるものとするが、これらは逆であってもよい。
図2には、正面外壁21の横幅方向が矢印A1にて示されている。
【0023】
図1および
図2に示されるように、住宅10の1階の正面外壁21は、基準面210よりも後退した後退壁部212a,212bと、基準面210よりも前方へ突出した突出壁部213とを有している。2つの後退壁部212a,212bは、突出壁部213を挟んで左右に配置されている。住宅10の玄関扉61は、たとえば左側の後退壁部212aに設けられている。
【0024】
図1および
図3に示されるように、住宅10の2階の正面外壁21は、基準面210を構成する基準外壁部211と、基準面210よりも後退した後退壁部214a,214bとを有している。2つの後退壁部214a,214bは、基準外壁部211を挟んで左右に配置されている。
【0025】
2階の基準外壁部211と1階の突出壁部213とは、横幅方向位置が少なくとも部分的に重なっている。つまり、これらは、少なくとも部分的に上下方向に重なっている。本実施の形態では、基準外壁部211の幅寸法の方が、突出壁部213の幅寸法よりも大きく、基準外壁部211が突出壁部213よりも右方向に長い。
【0026】
住宅10の正面から見て左側に位置する1階の後退壁部212aおよび2階の後退壁部214aは、基準面210から同じ距離だけ後退していることが望ましい。同様に、住宅10の正面から見て右側に位置する1階の後退壁部212bおよび2階の後退壁部214bは、基準面210から同じ距離だけ後退していることが望ましい。なお、左側の後退壁部212a,214aと、右側の後退壁部212b,214bとは、基準面210からの後退距離が異なっていてもよい。
【0027】
なお、住宅10の右側面を構成する外壁部(右側壁)22の屋外側の面は、1階および2階ともに平坦である。また、住宅10の左側面を構成する外壁部(左側壁)23の屋外側の面も、1階および2階ともに平坦である。
【0028】
ここで、住宅10には、正面外壁21の基準面210から前方(屋外方向)へ突出する第1庇部41と、正面外壁21の基準面210から屋内方向へ後退することによって形成された第2庇部42とが設けられている。
【0029】
第1庇部41は、住宅10の1階の天井レベル(つまり、2階の床レベル)において、正面外壁21の左端部側から正面外壁21の途中位置まで延びている。具体的には、第1庇部41の始端位置は、正面外壁21の左端位置よりも左側(屋外方向)に突出した位置であり、第1庇部41の終端位置は、1階の突出壁部213とその右側の後退壁部212bとの境界位置である。
【0030】
突出壁部213は、その上の階の基準外壁部211よりも前方へ突出しているため、第1庇部41は、突出壁部213の屋根部411を含んでいる。また、第1庇部41は、基準外壁部211よりも左側の部分において、基準面210から後退壁部214aに向かって後方に延在する拡張部412を有していてもよい。これにより、第1庇部41の下方に位置する庇下空間82のうち、後退壁部212aの前方に位置する空間を、玄関ポーチとすることができる。
【0031】
第1庇部41の前端位置は、それが取付けられている正面外壁21の凹凸に追従することなく、横幅方向一端から他端まで均一である。第1庇部41の前端位置と基準面210との距離は、たとえば900mm以上である。第1庇部41の前端位置と突出壁部213の外壁面との距離は、たとえば400mm以上である。
【0032】
第1庇部41の左端部(横幅方向一方端部)は、袖壁71に連結されている。そのため、第1庇部41と袖壁71とによって、前方から見てL字が形成されている。第1庇部41は、袖壁71との連結部を除き、同一の厚みで水平方向に延在している。第1庇部41の厚みは、袖壁71と略同じ厚みか、あるいは、袖壁71の厚み以上である。第1庇部41の前端面410は、袖壁71の端面710と面一状となっていることが望ましい。
【0033】
袖壁71は、たとえば、第1庇部41の左端部全体に連結されている。つまり、袖壁71の後端は、正面外壁21の後退壁部212a,214aの壁面ライン上に位置していてもよい。なお、袖壁71が、正面外壁21の左端縁よりも屋外方向(左方向)に十分に突出した位置に設けられている場合、袖壁71と第1庇部41とで囲まれた庇下空間82の一部を、駐車スペースとしてもよい。
【0034】
第2庇部42は、第1庇部41と同じ高さにおいて、正面外壁21の右端部側から同一の厚みで正面外壁21の途中位置まで延びている。具体的には、第2庇部42の始端位置は、正面外壁21の右端位置よりも右側(屋外方向)に突出した位置であり、第2庇部42の終端位置は、2階の右側の後退壁部214bと基準外壁部211の境界位置である。第2庇部42の
後端位置と基準面210との距離は、たとえば400mm以上である。
【0035】
このように、住宅10の正面に、基準面210から前方へ突出する第1庇部41と、基準面210から後退することによって形成された第2庇部42とが、同一高さにおいて、左右並べて配置されている。また、これにより、第1庇部41の庇下空間82と、第2庇部42の庇下空間83とが、前後方向にずれて設けられる。したがって、本実施の形態によれば、住宅10の外観意匠性を向上させることができる。
【0036】
本実施の形態では、第1庇部41の終端位置と第2庇部42の終端位置とに隔たりがある。つまり、1階の突出壁部213の右端位置と2階の後退壁部214bの左端位置との間の領域内には、中継部51が設けられている。この場合、中継部51の下面510は、第2庇部42の裏面(天井面)420と面一であることが望ましい。これにより、第2庇部42の天井面が第1庇部41の終端位置まで延びているような印象を与えることができる。また、庇部41,42が、正面外壁21の横幅方向に沿って、同一の厚みで連続して延びているような印象とすることができる。なお、中継部51の表面は、基準面210を構成しているが、後退壁部214bの外壁面を基準と仮定すれば、中継部51は、後退壁部214bより前方に張り出したオーバーハング部と見做すこともできる。
【0037】
第2庇部42が取り付く1階の後退壁部212bには、その全横幅にわたって、1階の屋内空間81に繋がる開口部62が設けられている。開口部62は、たとえば掃き出し窓である。このように、掃き出し窓が正面外壁21に設けられていても、掃き出し窓は第2庇部42の奥に位置するため、屋内空間81への十分な採光を可能としながら、他人の視線からプライバシーを保護することができる。
【0038】
さらに、本実施の形態では、第2庇部42は、正面外壁21に直交する外壁部である右側壁22側にまで回り込んでいる。つまり、第2庇部42は、平面視においてL字状に延在し、正面側に位置する部分421と、側面側に位置する部分422とを有している。これにより、平面視においてL字状に延在する庇下空間83が形成されている。この場合、第2庇部42のうち側面側に位置する部分422は、右側壁22の全横幅にわたって延びていてもよい。
図2には、右側壁22の横幅方向が矢印A2にて示されている。
【0039】
右側壁22のうち庇下空間83に隣接する部分にも、1階の屋内空間81に繋がる開口部62が設けられていることが望ましい。これにより、外壁2のコーナー部に沿って、開口部62もL字状に配置される。したがって、1階の屋内空間81が庇下空間83にまで広がっているような開放感と、第2庇部42の存在による落ち着き感とを、居住者に与えることができる。
【0040】
本実施の形態では、第2庇部42の上方空間は、バルコニー84として利用されている。つまり、第2庇部42の天井面が、2階のバルコニー84の床面として利用されている。この場合、2階の後退壁部214bおよびそれに直交する右側壁22には、開口部(掃き出し窓)63が設けられている。
【0041】
バルコニー84の屋外側端縁に沿って、手摺枠73が設けられている。手摺枠73には、透明または半透明のパネルが嵌められている。そのため、第2庇部42上にバルコニー84が設けられる場合であっても、第2庇部42の水平ラインを際立たせることができる。
【0042】
バルコニー84は、その天井部を構成する第3庇部43の下方に位置している。本実施の形態の住宅10は2階建てであるため、第3庇部43は、陸屋根3の軒部により形成されている。第3庇部43は、第2庇部42と平行に配置され、正面外壁21の右端側から同一の厚みで途中位置まで延びている。具体的には、第3庇部43の始端位置および終端位置は、第2庇部42の始端位置および終端位置とそれぞれ同じである。また、第3庇部43の厚みは、第2庇部42の厚みと略同一である。
【0043】
なお、第3庇部43と2階の後退壁部214bとの位置関係は、第2庇部42と1階の後退壁部212bとの位置関係と同様である。そのため、これらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0044】
陸屋根3は、左側の後退壁部214aに隣接する部分に軒部を有している。これに対し、陸屋根3は、基準外壁部211と隣接する部分においては軒部を有していない。そのため、第3庇部43の前端面は、基準外壁部211の外壁面(基準面210)と面一状に形成される。これにより、2階の基準外壁部211の右側部分を中央部だけ切り取ったような、斬新なデザインとすることができる。
【0045】
また、住宅10の右端には、第2庇部42を貫通するように、庇下空間83およびバルコニー84に設けられた化粧柱72が立設されている。化粧柱72は、基準面210よりも後方位置、すなわち第2庇部42および第3庇部43の前端面よりも後方位置に配置されている。これにより、住宅10を正面側から見た場合に、第2庇部42および第3庇部43が、空中に向かって飛び出しているような印象を与えることができる。
【0046】
一方、第1庇部41は、左端部全体が袖壁71によって支持されている。また、住宅10の正面中央に位置する基準外壁部211および突出壁部213は、開口部を有していないか、小窓64しか有していない。したがって、本実施の形態によれば、住宅10の重厚感を失うことなく意匠性を向上させることができる。
【0047】
なお、本実施の形態では、基準外壁部211は、2階にのみ設けられることとしたが、1階にも設けられていてもよい。たとえば、1階の突出壁部213に代えて、その部分に基準外壁部211が設けられてもよい。その場合、第1庇部41は、突出壁部213の屋根部411を含まず、純粋な庇として機能する。
【0048】
また、本実施の形態では、第1庇部41と第2庇部42とが、中継部51を挟んで左右に配置されることとしたが、このような構成に限定されない。すなわち、第1庇部41の終端位置と第2庇部42の終端位置とが、一致または近接していてもよい。その場合、住宅10を正面から見た場合、庇部41,42が、正面外壁21の横幅方向に沿って、同一の厚みで継ぎ目なく延びているような印象を与えることもできる。
【0049】
また、第1庇部41の左側端部は、袖壁71によって支持されることとしたが、1以上の化粧柱など、他の支持部によって支持されてもよい。あるいは、第2庇部42の右側端部は、化粧柱72によって支持されることとしたが、袖壁など、他の支持部によって支持されてもよい。
【0050】
また、バルコニー84は、その上方に軒部、すなわち第3庇部43を有さないベランダであってもよい。
【0051】
また、本実施の形態の住宅10は、2階建てである例を示したが、3階以上を有していてもよい。この場合、第1庇部41および第2庇部42は、上下方向に隣接する下階および上階の間に配置されればよい。つまり、たとえば下階が2階、上階が3階に相当し、これらの庇部41,42は、住宅10の2階の天井レベル(3階の床レベル)に設けられてもよい。
【0052】
あるいは、住宅10は、1階建てであってもよい。つまり、第1庇部41および第2庇部42は、建物の屋根(陸屋根)の軒部によって構成されてもよい。
【0053】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0054】
2 外壁、3 屋根、10 住宅、21 正面外壁、22 右側壁、23 左側壁、41 第1庇部、42 第2庇部、43 第3庇部、51 中継部、61 玄関扉、62 開口部、64 小窓、71 袖壁、72 化粧柱、73 手摺枠、81 屋内空間、82,83 庇下空間、84 バルコニー、210 基準面、211 基準外壁部、212a,212b,214a,214b 後退壁部、213 突出壁部。