特許第6788345号(P6788345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6788345時計カレンダー機構のモバイルを駆動する装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6788345
(24)【登録日】2020年11月4日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】時計カレンダー機構のモバイルを駆動する装置
(51)【国際特許分類】
   G04B 19/247 20060101AFI20201116BHJP
   G04B 19/253 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   G04B19/247 A
   G04B19/253 G
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-255608(P2015-255608)
(22)【出願日】2015年12月28日
(65)【公開番号】特開2016-130729(P2016-130729A)
(43)【公開日】2016年7月21日
【審査請求日】2018年12月3日
(31)【優先権主張番号】15150853.8
(32)【優先日】2015年1月12日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599091346
【氏名又は名称】ロレックス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カレーノ, ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルネイ, フランク
【審査官】 榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−132944(JP,A)
【文献】 米国特許第6108278(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 19/24 − 19/257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計カレンダー機構(110)の日付モバイル(3)を駆動するための装置(100)であって、
第1爪(20a)及び第2爪(20b)を含む、駆動モバイル(2)と、
第1歯群(10a)、第2歯群(10b)、及び第3歯群(10c)を含む、プログラミングモバイル(1)と、
第4歯群(30a)及び第5歯群(30b)を含む、日付モバイル(3)と、
を含み、
前記第1爪は前記第1歯群と協働し、前記第2爪は前記第2歯群と協働し、前記第1歯群は前記第4歯群と協働し、前記第3歯群は前記第5歯群と協働し
前記プログラミングモバイルは、第1車(1a)及び第2車(1b)を含み、前記第1歯群は前記第1車に配置され、前記第2及び第3歯群は前記第2車に配置され
前記第1車及び前記第2車は互いに変位可能である、装置。
【請求項2】
記プログラミングモバイルは、前記第1車と前記第2車の間の相対的な静止位置から相対的な変位が発生した場合に戻りトルクを発生させる要素(1c)を含む、
請求項に記載の装置。
【請求項3】
前記プログラミングモバイル(1)は、第1当接部(1d)を含み、及び第2当接部(1e)を含み、前記第1及び第2当接部は前記第1及び第2車上にそれぞれ配置される、または第2及び第1車上にそれぞれ配置される
請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記プログラミングモバイル(1)は、第3当接部(1g)を含み、及び第4当接部(1h)を含み、前記第3及び第4当接部は前記第1及び第2車にそれぞれ配置される、または第2及び第1車上にそれぞれ配置される
請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記第1及び第2車は、前記第1及び第2車の角ピッチの値で互いに対して変位可能に配置される
請求項から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記装置は、前記第4歯群(30a)または前記第1歯群(10a)と協働するジャンパ(9)を含む
請求項から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記ジャンパ及び前記戻り要素は、前記第1車の回転に対抗し前記ジャンパにより発揮される前記抵抗トルクが、前記第2車の回転に対抗し前記戻り要素により発揮される前記抵抗トルクよりも大きいように配置される
請求項2を引用する請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記第1歯群は12の倍数の本数の歯を有し、及びまたは前記第2歯群は12の倍数の本数の歯を有し、及びまたは前記第3歯群は4の倍数の本数の歯を有し、及びまたは前記第4歯群は31本の歯を有し、及びまたは前記第5歯群は1本の歯を有する
請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記第1歯群は12本の歯を有し、及びまたは前記第2歯群は12本の歯を有し、及びまたは前記第3歯群は4本(102c、103c、104c、105c)の歯を有し、前記第3歯群の歯は30°の角ピッチを有し4つの連続する30°の角度区分の高さで並列され、及びまたは前記第4歯群は31本の歯を有し、及びまたは前記第5歯群は1本の歯を有する、
請求項1からのいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記第1爪(20a)、前記第1歯群(10a)及び前記第4歯群(30a)は第1高さに配置され、及びまたは前記第2爪(20b)及び前記第2歯群(10b)は第2高さに配置され、及びまたは前記第3歯群(10c)及び前記第5歯群(30b)は第3高さに配置される
請求項1からのいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記第2歯群(10b)の歯及び前記第3歯群(10c)の歯は、前記第2車(1b)の共通表面で形成される
請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の装置を含む、カレンダー機構(110)
【請求項13】
瞬時ジャンプ型である、請求項12に記載の機構
【請求項14】
請求項1から11のいずれか一項に記載の装置(100)または請求項12または13に記載の機構を含む、時計ムーブメント(120)
【請求項15】
請求項1から11のいずれか一項に記載の装置(100)または請求項12または13に記載の機構及びまたは請求項14に記載のムーブメントを含む、時計(130)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カレンダー機構のモバイルを駆動する装置に関連する。本発明はまた、当該装置を含む機構に関する。本発明はまた、当該装置または当該機構を含む時計ムーブメントに関する。本発明は最後に、当該装置、当該機構、または当該ムーブメントを含む、時計、特に腕時計に関する。
【0002】
従来から周知の年間カレンダーは、伝統的には、カムまたは補助月車と協働するよう設けられる、1つまたは2つのカレンダー駆動モバイルを有する。当該要素は、月の表示を行い、追加ばねやレバー等を経由して各小の月の月末において二重日付ジャンプ機構を駆動する。このような構造は、動作の順序制御を複雑にする結果をもたらしかねない。エネルギー蓄積器を伴うカレンダー駆動モバイルを採用することにより、31日の月から翌月への移行において瞬時ジャンプを有するカレンダーを設計することが可能となるが、30日の月の月末の二重日付ジャンプは、一方では日車を駆動する2つの別個の連鎖する動作の順序制御のため、他方では当該ジャンプが必要とするエネルギー増加のため、問題となりかねない。
【0003】
特許文献1は、日車を駆動する2つの連鎖が設けられる年間カレンダー機構を開示する。第1カレンダー駆動モバイルは、毎日、日車の第1ジャンプを可能とする。修正モバイルと呼ばれる第2カレンダー駆動モバイルは、30日の月の月末に、日車の追加的なジャンプを可能とする。後者は、月カム及び戻りばねで角度位置が制御されるレバーの上で旋回される。当該構造は、特にばねやレバーといった、著しい数の部品を必要とし、大量のエネルギーを消費する。更に、当該機構の動作の順序制御のために、小の月の月末において、完全に瞬時のカレンダー日付ジャンプを得ることは非常に困難である。
【0004】
特許文献2は、年カムもレバーも必要としない、日車を駆動するための2つの別個の連鎖を有する機構の、半摺動式日付ジャンプを有する年間カレンダーを開示する。第1の従来のカレンダー駆動モバイルは、毎日、日車の第1ジャンプを可能とする。第2モバイルは、30日の月の月末に、日車の追加ジャンプを可能とする。当該モバイルは歯を有し、歯の数及び配置は、当該歯が小の月の月末に日車の追加の歯を作動させることを可能とするよう定義され、これにより従来のカレンダー駆動モバイルと協働して、日車の二重ジャンプを可能とする。当該機構は、カム及びレバー装置に比較して、特に特許文献1に開示の機構に比べて、単純であるという利点を有する。第2モバイルの歯の配置及び数は、他の追加装置なくして、小の月と大の月とを区別することを実際に可能とする。しかしながら、第2モバイルを駆動する連鎖は、日車の伝統的なジャンパに追加される割り出し装置を必要とし、これは第2モバイルの歯を有する星形車と協働するために設けられた追加ばねの設置に反映される。このため、当該機構を元に瞬時日付ジャンプを有する年間カレンダーを実現することは、一方では日車を駆動する2つの連鎖の同時動作のために必要な連携の点から、他方では各モバイルが専用のエネルギー蓄積器を必要とする2つの別個の駆動モバイルの瞬時駆動を許可するために必要なエネルギーの点から、非常に難しい。
【0005】
特許文献3は、単一のカレンダー駆動モバイルが設けられた、摺動式日付ジャンプを有する年間カレンダー機構を開示する。カレンダー駆動モバイルは、2つの駆動爪を有する。第1爪は、毎日、日車の第1ジャンプを許可する。第2爪は、特にムーブメントの中央に位置する月モバイルを通じて、追加ピッチ分日車を駆動するよう設けられる。当該モバイルは、互いに固定される2つの車からなる。31日の月の月末に、30日から31日へ、月モバイルは日車が有する追加歯を通じて第1角ピッチ分駆動され、日車もまたカレンダー駆動モバイルの第1爪により作動される。31日から翌月の1日へ、月モバイルはカレンダーモバイルの第2爪により第2角ピッチ分作動され、これにより日車を、日車の追加歯を通じて追加角ピッチ分駆動する。当該順序制御は、カレンダーが純粋に摺動するという事実により可能となる。各要素、特に日車と月モバイルを同時に駆動することは、装置の不動化につながる。このため、当該機構に基づき、瞬時ジャンプを有する年間カレンダーを実現することは不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0987609号公報
【特許文献2】米国特許第3827234号公報
【特許文献3】欧州特許出願公開第1666991号公報
【特許文献4】欧州特許出願公開第 2428855号公報
【特許文献5】欧州特許出願公開第2428856号公報
【特許文献6】欧州特許出願公開第2624075号公報
【特許文献7】欧州特許出願公開第1596261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述の欠点を解消し、従来から知られている駆動装置を向上する、カレンダーモバイルまたはカレンダー機関を駆動するための装置を提供することにある。特に本発明は、単純で、小型で、信頼性があり、堅牢である、特に瞬時日付ジャンプを有する年間カレンダーを実現するための駆動装置を提供することである。
【0008】
本発明に係る駆動装置は、請求項1により定義される。
【0009】
駆動装置の別の実施形態は、従属請求項2から11により定義される。
【0010】
本発明に係る機構は、請求項12により定義される。
【0011】
機構の実施形態は、従属請求項13により定義される。
【0012】
本発明に係るムーブメントは、請求項14により定義される。
【0013】
本発明に係る時計は、請求項15により定義される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、例として、本発明に係る時計の実施形態を示す。
図2図2は、例として、本発明に係る時計の実施形態を示す。
図3図3は、例として、本発明に係る時計の実施形態を示す。
図4図4は、例として、本発明に係る時計の実施形態を示す。
図5図5は、例として、本発明に係る時計の実施形態を示す。
図6図6は、例として、本発明に係る時計の実施形態を示す。
図7図7は、例として、本発明に係る時計の実施形態を示す。
図8図8は、例として、本発明に係る時計の実施形態を示す。
図9図9は、例として、本発明に係る時計の実施形態を示す。
図10図10は、例として、本発明に係る時計の実施形態を示す。
図11図11は、例として、本発明に係る時計の実施形態を示す。
図12図12は、例として、本発明に係る時計の実施形態を示す。
図13図13は、例として、本発明に係る時計の実施形態を示す。
図14図14は、例として、本発明に係る時計の実施形態を示す。
図15図15は、例として、本発明に係る時計の実施形態を示す。
図16図16は、例として、本発明に係る時計の実施形態を示す。
図17図17は、例として、本発明に係る時計の実施形態を示す。
図18図18は、例として、本発明に係る時計の実施形態を示す。
図19図19は、例として、本発明に係る時計の実施形態を示す。
図20図20は、例として、本発明に係る時計の実施形態を示す。
図21図21は、例として、本発明に係る時計の実施形態を示す。
図22図22は、例として、本発明に係る時計の実施形態を示す。
図23図23は、例として、本発明に係る時計の実施形態を示す。
図24図24は、例として、本発明に係る時計の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
時計130の実施形態を、図1から24を参照して以下に説明する。時計は、例えば、腕時計である。時計は、本発明に係る時計ムーブメント120の実施形態である、特に機械式時計ムーブメントを含む。ムーブメントは、本発明に係るカレンダー機構110の実施形態、特に年間カレンダー機構、とりわけ瞬時ジャンプを有するタイプのカレンダー機構を含む。「瞬時ジャンプを有するカレンダー機構」とは、通常の作動で、2つの連続する日付表示間の移行段階が、典型的には1秒の10分の1未満持続する、カレンダー機構を意味する。カレンダー機構は、例えば1から31の日付を示す印を有する円板3、または日付表示に一致するように動く針、または日付の10の位を表示する印を有する第1の円板と日付の1の位を表示する印を有する第2のディスクからなる2つの円板など、例えば1つ以上の日付表示モバイルを含む。有利には、年間カレンダー機構は、更に、月表示要素を有することもできる。年間カレンダー機構は、典型的には毎年一回の修正のみ、典型的には2月末での修正を、必要とする。
【0016】
カレンダー機構110は、本発明に係る駆動装置100の実施形態を含む。
【0017】
駆動装置100の実施形態を、図1から9を参照して、以下に詳細に説明する。当該装置は、時計カレンダー機構110のモバイル3を、特に日付表示を有する円板3を、駆動することを可能にする。例えば、当該円板は、開口と協働し、当該開口に現在の日付の表示を作成するためのものである。
【0018】
駆動装置は主として以下を含む。
−第1爪20a及び第2爪20bを含む、駆動モバイル2。
−第1歯群10a、第2歯群10bおよび第3歯群10cを含む、プログラミングモバイル1またはプログラミング機構1。
−第4歯群30a及び第5歯群30bを含む、日付表示モバイル3。
【0019】
第1爪は、第1歯群と協働し、第2爪は第2歯群と協働し、第1歯群は第4歯群と協働し、第3歯群は第5歯群と協働するのに適している。
【0020】
このため、第1爪は、特に噛合により第1歯群を作動させ、第2爪は、特に噛合により第2歯群を作動させ、第1歯群は、特に噛合により第4歯群を作動させ、第3歯群は、特に噛合により第5歯群を作動させるのに適している。
【0021】
このため、日車または日付モバイルを駆動するための、特に単純な構造の駆動装置を得ることができる。配置が単純であるため、当該装置は高い信頼性と堅牢性を有する。この信頼性と堅牢性は、瞬時ジャンプを有する種類のカレンダー機構を製造するために有効である。
【0022】
有利には、第2と第3歯群とは異なっており、すなわち第2歯群の歯は第4歯群とも第5歯群とも協働せず、第3歯群の歯は第4歯群と協働することなく第5歯群と協働する。
【0023】
有利には、駆動モバイル2の第1爪20a及び第2爪20bは、互いに変位しない。有利には、日車の第4歯群30a及び第5歯群30bは、互いに変位しない。
【0024】
プログラミングモバイル1は、日車または日付板3とカレンダー駆動モバイル2との境界に配置されるという特徴を有する。プログラミングモバイルは、大の月と小の月とを認識し区別することを可能とする。
【0025】
有利には、第1爪20a、第1歯群10a及び第4歯群30aは第1の高さ、特に図9に部分的に表示される第1平面P1の高さに配置される。これを補足するため、第2爪20b及び第2歯群10bは第2の高さ、特に第2平面P2の高さに配置することができる。さらにこれを補足するため、第3歯群10c及び第5歯群30bは第3の高さ、特に第3平面P3の高さに配置することができる。平面P1及びまたは平面P2及びまたは平面P3は、例えば、プログラミングモバイルと駆動モバイルの回転軸11及び12に対して直角である。
【0026】
特に図2、4、6に示すように、プログラミングモバイル1は第1車1a及び第2車1bを含む。この2つの車は、例えば重なり合う。第1歯群は第1車に位置し、第2及び第3歯群は第2車に位置する。2つの車は有利には、第1及び第2車の相対的運動を可能とする、すなわち第1及び第2車を互いに変位可能に、特に互いに回転変位可能とする、リンク1c、1d、1e、1f、1g、1h、1iにより回転可能に連結される。第1及び第2車はその軸の高さにおいて、互いの上で旋回可能である。第1及び第2車は、第1及び第2車の概略角ピッチの値の分、特に30°、互いに変位可能に配置することができる。リンクは、少なくとも装置の動作の特定の局面において、クラッチに係合可能である。
【0027】
有利には、図5に示すように、プログラミングモバイルは、第1及び第2車を第1の所定相対位置、すなわち静止または戻り位置に戻す、ばね1cなどの戻り要素1cを含む。
【0028】
更に、プログラミングモバイルは、特に例えば車1aに設けられた開口1iの壁1dの一部分からなる第1当接部1dと、特にピン1eである第2当接部1eを含むことができる。第1及び第2当接部は、互いに接触する場合、車1bに対する車1aの所定の第1位置を協働して規定する。第1及び第2当接部は、第1及び第2車1a、1b上にそれぞれ位置してもよく、第2及び第1車1a、1b上にそれぞれ位置してもよい。
【0029】
ばね1c及び当接部1dは、第1車1aの板と一体に作成することができる。ピン1eは、第2車1bの板に打ち込むことができる。第2車1bは、ばね1cの影響により当接部1dに押圧されるピン1eにより、第1車1aに対して角度的に割り出しされる。
【0030】
プログラミングモバイル1は、特に開口のまたは上記開口1iの壁1gである第3当接部1gと、特に戻り要素1cの表面1h、とりわけ戻り要素1cの端部の表面1hである第4当接部1hとを含むことができる。第3及び第4当接部は、第1及び第2車1a、1b上にそれぞれ位置してもよく、第2及び第1車1a、1b上にそれぞれ位置してもよい。
【0031】
駆動モバイルの第1及び第2車1a、1bは、カレンダー駆動モバイル2により、毎日、駆動されるように提供される。このため、上述の通り、駆動モバイルは2つの駆動爪20a、20bを備える。この爪は有利には、重ね合されまたは駆動モバイルの回転軸12に対して2つの高さに位置する。第1及び第2爪はそれぞれ、車1a、1bの第1及び第2歯群10a、10bを専属的に駆動する。このため、好ましくは、第1駆動爪20aは第1高さP1に配置することができ、第2駆動爪20bは第2高さP2に配置することができる。駆動モバイル2はまた、24時間で完全に1回転するカレンダー車5を含む。当該車5は、時計の基本ムーブメントの駆動列4に連結される。駆動モバイル2はまた、エネルギー蓄積器と協働するために提供されるカム6を含み、これにより駆動爪20a及び20bは真夜中の瞬間にプログラミングモバイル1を瞬時に駆動する。つまり第1及び第2爪がプログラミングモバイルの車の歯群との噛合を開始する位置に到達し、歯群と噛合し、これら歯群との噛合の終了の位置から離れるまでを典型的には1秒の10分の1未満の期間で行う。
【0032】
カム6は、第1及び第2駆動爪20a、20bに固定することができる。カレンダー車5及びカム6間のクラッチ(図示せず)は、例えばピンと協働するよう形成される楕円形の切り欠き、または特許文献4の、特に16段落から21段落に記載の戻り止め装置など、従来の手段で実施可能である。
【0033】
エネルギー蓄積器は、ばね8によりカム6の側面に押圧されるランナ7aを有するレバー7を含むことができる。
【0034】
プログラミングモバイル1は、日付板3と継続的に係合する。このため、駆動モバイルの作動、特に1回転にわたる駆動モバイルの作動は、日付板3の回転、特に少なくとも1角ピッチにわたる回転を引き起こす。
【0035】
更に詳しくは、第1車1aの第1歯群10aは、日付板3の第4歯群30aと継続的に係合する。当該第4歯群は、図1に示すように、ジャンパ9の前端9aにより、ムーブメントのフレームに対して角度的に割り出しされる。このため、プログラミングモバイル1もまた、ジャンパ9の前端9aにより、非直接的に、歯群の遊び内に、角度的に位置決めされる。代替的に、ジャンパは第1車の第1歯群1aと直接協働することができる。この場合、ジャンパにより非直接的に角度的に位置決めされるのは、円板3になる。ジャンパ9は第4歯群30aまたは第1歯群10aと協働可能である。
【0036】
有利には、ジャンパと戻り要素は、第1車の回転に対抗しジャンパが発揮する抵抗トルクが、第2車の回転に対抗し戻り要素が発揮する抵抗トルクよりも大きいように、形成され配置される。当該トルクは、同一軸周りで、特にプログラミングモバイルの回転軸11周りで表されるトルクである。
【0037】
第4歯群30aの31本の歯に加え、日付モバイルには、第5歯群30bが設けられる。第5歯群は、特に1本の歯を含むことができる。第5歯群は、図4に示すように、第4歯群30aに重ね合わせることができる。第4及び第5歯群は、例えば重ね合わせられる。第4及び第5歯群は、有利には、重ね合わされ、または日付モバイルの回転軸に対して2つの高さに位置する。
【0038】
第5歯群30bの歯は、小の月(つまり30日の月)の30日に、第3歯群10cにより作動されると見込まれる。このため、日付板3は、2角ピッチにわたり駆動可能である。
【0039】
説明した実施形態において、第1車1aの第1歯群10aは、全て同一の12本の歯からなる。第2車1bの第2歯群10bもまた12本の歯からなる。第3歯群は、日付板を作動するよう配置される4本の歯からなる。当該4本の歯は、2月を除く、一年に4回の小の月に対応する。4本の歯は第2歯群10b内で、歯のうちの1または他方が小の月の30日に、歯30bに対面すると見込まれるように、分布される。歯の分布は、後述する。
【0040】
上述の実施形態において、第2歯群10bの歯と第3歯群10cの歯は、同一の部品上に形成された共通の表面により、特にプログラミングモバイルの回転軸に平行に延長する共通の表面により、形成される。代替的に、第2及び第3歯群の歯を形成する表面は断続的であってもよい、即ち第2及び第3歯群の間に不連続があってもよい。第2及び第3歯群の表面は、例えば機械加工、切削加工、または成形加工により同時に形成されてもよい。代替的に、第2歯群は第1部品上に、第3歯群は第2部品上に、形成されてもよい。第1及び第2部品はその後、第2車を形成するために、組立てあるいは互いに固定されることができる。
【0041】
図示しない他の実施形態において、第1歯群は12の倍数、例えば24または36本の歯数を有することができ、及びまたは第2歯群は12の倍数、例えば24または36本の歯数を有することができ、及びまたは第3歯群は4の倍数、例えば8本または12本の歯数を有することができ、及びまたは第4歯群は31本の歯を有することができ、及びまたは第5歯群は1本の歯を有することができる。
【0042】
駆動装置の動作を以下に詳細に説明する。
【0043】
31日の月末における、例えば1月の月末における、従来の日付ジャンプを説明する。動作は、小の月の30日から翌月の1日への移行を除き、月の他の日においても同一である。図7は、1月30日から31日への日付ジャンプ直前の、1月30日の年間カレンダー機構を示す。
【0044】
一日を通じ、車5はカム6を駆動し、カム6及びレバー7の輪郭経由でばね8を充填することにより、爪20a及び20bの瞬時ジャンプに必要なエネルギーを蓄積する。日付移行の直前に、ランナ7aがカム6の輪郭の頂点に到達する。図7は、このような構成の機構を図示する。歯20a、20bは、歯10a、10bの範囲外にある。
【0045】
図8から図12は、1月30日から1月31日への日付ジャンプ中の装置を図示する。最初に、図8から図10に示すように、駆動モバイル2の歯20bが、車1bの歯群10bの1本の歯を作動させ、これはピン1eの変位の影響下のばね1cの変形による、車1bと車1a間の相対的変位を引き起こす。これは、ばね1cが発生する戻りトルクが日付板のジャンパ9が発生する戻りトルクよりも実質的に小さいという事実により可能となる。日付板の歯30bに対面する歯106bが歯30bを作動させないように形成されていることから、ここでの車1の回転は日付板になんら影響を及ぼさない。更に具体的には、図9に示すように、歯106bの厚さは、歯30bを通過可能なように定義される。換言すれば、当該構成において、第5歯群の歯30bと協働可能な、第3歯群の歯は存在しない。
【0046】
車1bは、爪20bが歯群10bを駆動する間、旋回を続ける。図10は、駆動の最後における爪20bを示す。ばね1cは、図11に示すように、爪20aが車1aの歯群10aの歯の1本を作動させるときに、車1aに対して車1bを再割り出しするために、即ち第1及び第2車をその相対的静止位置に、瞬時にまたは実質的に瞬時に、戻すために、蓄積したエネルギーを復元する準備を整えている。
【0047】
図11は、駆動モバイル2が車1aの歯群10aの歯の1本を作動させる、その瞬間の駆動モバイル2の歯20aを示す。これは、車1a及び車1bの回転を引き起こし、両車は、手段1c、1d、1eの影響下、回転中固定される。車1aの回転は、図9に示すように歯群10aが日付板の歯群30aとの係合を継続することを条件に、日付板の角ピッチにわたる板3のジャンプを引き起こす。図11から図13は、日付板のこうしたジャンプを図示する。図13に示すようにジャンプが終了したとき、カム6の不動化の影響により位置決めされた爪20aは、日付板の追加ジャンプの危険を避けるため、歯群10aの中に位置される。
【0048】
このため、従来の日付ジャンプは、車1aの1角ピッチの回転により発生され、これはまた車1bの1角ピッチの回転を伴う。このため、毎日真夜中に、モバイル1は少なくとも1角ピッチ回転する。
【0049】
以下に、30日の月の月末の、例えば9月の月末の、日付ジャンプについて説明する。図14は、9月30日から10月1日への日付ジャンプ直前の、9月30日の年間カレンダー機構を示す。この構成において、モバイル1は、車1bの歯102cが日付板の歯30bを作動可能なように位置する。このために、図15に示すように、単一の配置102b、102cが第4歯群と、第5歯群の歯30bとの相互作用を可能とする。歯30bの作動は、図16から18に示すように、日付板の第1角ピッチにわたる日付板3の変位を引き起こす。日付板の変位は、継続して係合される第1歯群10aから第4歯群30aまでの車1aの回転をもたらす。このため、日付板の第1ジャンプ時に、モバイル1が第1角ピッチで回転するように、小の月の30日を「31日」に変更するために、車1a及び1bは同期して旋回する。
【0050】
図16から18は、30日から「31日」への日付板の第1ジャンプを可能とする、車1bの歯群10bの作動の過程における、駆動モバイル2の爪20bを示す。
【0051】
図19から21は、「31日」から翌月の1日への日付板の第2ジャンプを可能とする、車1aの歯群10aの作動の過程における、駆動モバイル2の爪20aを示す。
【0052】
図22は、二重日付ジャンプが行われた後の、機構を図示する。上述した通り、カム6が動かないことにより位置を保っている爪20aは、日付板の追加ジャンプの危険を避けるため、歯群10aの中に位置される。
【0053】
日付板の角変位は、モバイル1の角変位の作用、特にムーブメントのフレームに対する車1a及び1bの角変位の作用によるものである。従来の日付ジャンプが車1aの1角ピッチにわたる回転により発生され、これはまた車1bの1角ピッチの回転を伴うのであれば、小の月の月末の二重日付ジャンプは、モバイル1の回転、特にモバイル1の2角ピッチにわたる車1a及び1bの回転を伴う。
【0054】
1年にわたり、車1a及び1bにそれぞれ12本の歯が設けられるモバイル1は、31回の回転を行う。出願人による研究により、小の月の30日のみ作動するよう構成される歯を、日付板3の歯30bを作動させる歯群10c内に配置することが可能なことがわかった。これは、12本歯の車1a及び1bの歯のうちの4本であり、図15から23に示すように、それぞれは2月を除く特定の月に専用に対応する。これらの歯102c、103c、104c、105cは横に並んで配置され、歯群10cの歯付区分を構成する。上述の通り、特定の構造において、配置102b、102c及び103b、103c及び104b、104c及び105b、105cは、第2歯群の歯を形成する配置101b及び106bから112bよりも厚い。このため、配置102b、102c及び103b、103c及び104b、104c及び105b、105cは歯30bに作用できる。代替的に、第3歯群の歯は、第2歯群の歯の形状とは別の形状を有してもよい。例えば、第3歯群は第2歯群とは異なる頭部直径を有していてもよい。第5歯群もまた、第4歯群と異なる頭部直径を有していてもよい。
【0055】
図24の表は、一年にわたる車1bの回転の周期を図示し、毎月の30日に日付板の歯30bに対面するよう存在する、第2及び第3歯群の歯を強調する。欄J、F、M、A、M、J、J、A、S、O、N、Dはそれぞれ一年の12か月(M)を時系列に示す。それぞれの列において、列は一年の月(M)の日(Q)を示す。
【0056】
図において、
歯102b及び102cは、9月の月末に、歯30bに対面するよう存在する。
歯103b及び103cは、4月の月末に、歯30bに対面するよう存在する。
歯104b及び104cは、11月の月末に、歯30bに対面するよう存在する。
歯105b及び105cは、6月の月末に、歯30bに対面するよう存在する。
歯106bから112bはそれぞれ、31日の月の月末に、歯30bに対面するよう存在する。後者は歯30bに作用できない。
【0057】
出願人による研究により、当該原理は、N本の歯が設けられる車1a、1bを有する全てのモバイル1に有効であることを示しており、ここでNは12の倍数である。歯群1cは、モバイル1のN/12区分に分布される、歯30bを作動するよう構成されたn本の歯が設けられており、ここでNは4の倍数でありN/n=3である。
【0058】
明らかに2月は、調整を必要とするものの、30日からなる小の月と見做すことができる。その場合、車1bはn’本の歯が設けられ、ここでn’=n+N/12である。
【0059】
上述の実施形態において、車1a及び1bは、日車3の内部歯群30a、30bと協働するよう設けられた、外部歯群10a、10b、10cが設けられる。代替的に、日付板3の歯群30a、30bは、外部歯群の形態を取ることもできる。代替的に、車1a及び1bは、例えば日車3の外部歯群30a、30bと協働し、特にN=24またはN=36である内部歯群10a、10b、10cが設けられてもよい。これら代替的構成において、モバイル3は例えば日付表示を表示する針を追加された、円板または車の形状を有してもよい。代替的に、プログラミングモバイル1及びまたはモバイル3は、「ラージデイト」を表示する機構を駆動するよう提供されてもよい。
【0060】
上述の実施形態において、歯群10a、10b、及び10cの輪郭は同一である。代替的に、歯群が協働する要素20a、30a、及び20b、30bのそれぞれに関して最適化するよう、輪郭は異なってもよい。
【0061】
上述の実施形態において、角度割出し要素9は、日付板3の歯30aと協働するよう提供される。代替的に、当該角度割出し要素は、車1aと協働するよう提供されてもよい。このような構成は、内部歯群10aが設けられた車1aに対して有利である。
【0062】
月の表示を、例えば日車に運動学的にリンクされた月表示板を含む装置により実施してもよい。これにより、年間カレンダーの特に単純な実施形態を実施することが可能となる。月表示装置は、特許文献5及び特許文献6に記載のものであってもよい。
【0063】
本発明に係る駆動装置は、特許文献7に示す装置のような、特に単純なものである。本発明に係る駆動装置は、部品数が少なく、日付板を駆動する単一の運動学的連鎖のみに依存する。
【0064】
本発明に係る駆動装置はさらに、非常に小型であるという利点と、特に単純な日付板配置を実施するという利点を有する。
【0065】
好ましくは、本書類において、「プログラミングモバイル」における、「モバイル」とは、可動または移動可能な「機関」または「部品の一組」または「機構」を意味し、すなわち、一組の部品またはモバイルの部品は、互いにまたは装置の他の部品に対して可動である。好ましくは、本書類において、「プログラミングモバイル」における「モバイル」の文言は単一の車、板、または円板を指すものではない。
【0066】
好ましくは、日付モバイル3は、単一部品で構成される。
【0067】
好ましくは、駆動モバイル2は、単一部品で構成される。
【符号の説明】
【0068】
1 プログラミングモバイル
1a 第1車
1b 第2車
2 駆動モバイル
3 日付モバイル
6 カム
7 レバー
8 ばね
9 ジャンパ
10a 第1歯群
10b 第2歯群
10c 第3歯群
20a 第1爪
20b 第2爪
30a 第4歯群
30b 第5歯群
110 時計カレンダー機構
120 時計ムーブメント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24