(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6788360
(24)【登録日】2020年11月4日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】柱脚防水工法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/66 20060101AFI20201116BHJP
E04B 1/98 20060101ALI20201116BHJP
E04D 5/00 20060101ALI20201116BHJP
E04D 11/00 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
E04B1/66 B
E04B1/98 V
E04D5/00 D
E04D11/00 Q
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-44012(P2016-44012)
(22)【出願日】2016年3月8日
(65)【公開番号】特開2017-160621(P2017-160621A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2018年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼倉 通
(72)【発明者】
【氏名】松塚 弘文
(72)【発明者】
【氏名】穐山 和生
(72)【発明者】
【氏名】川端 稔
【審査官】
須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−248491(JP,A)
【文献】
特開2001−207558(JP,A)
【文献】
特開平07−207904(JP,A)
【文献】
実開平06−020974(JP,U)
【文献】
特開平06−200577(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0175342(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00
E04B 1/62−1/99
E04B 5/00
E04B 7/00
E04D 5/00
E04D 7/00
E04D 11/00
E04F 17/00
E04H 6/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水対象床に立設された柱の柱脚に防水措置を施す柱脚防水工法であって、
前記防水対象床から立ち上げた防水層立上部にて前記柱脚の外周囲を被覆して前記防水層立上部を前記柱脚に接着する第1ステップと、
前記柱脚を被覆した前記防水層立上部の外周囲にプレキャストコンクリート製の保護部材を配置する第2ステップと、
前記防水層立上部の外周囲に配置した前記保護部材を固定する第3ステップを備える柱脚防水工法。
【請求項2】
前記第1ステップにおいて、前記防水対象床の上面における前記柱脚の外周囲に面取り用の充填部材を配置し、前記防水対象床に接着される防水層及び前記柱脚に接着される前記防水層立上部を、前記充填部材に対して接着せずに無接着状態とし、
前記第2ステップにおいて、前記保護部材を前記充填部材の外周囲に配置する請求項1記載の柱脚防水工法。
【請求項3】
前記第3ステップにおいて、前記防水対象床に施された防水層の上に、前記保護部材の下端側を埋め込み固定する状態でコンクリートを打設して保護層を形成する請求項1または2に記載の柱脚防水工法。
【請求項4】
前記柱脚の断面形状が矩形状であるのに対し、前記保護部材として、平面視コの字状または平面視Lの字状に構成された複数の分割保護部材を使用し、
前記第2ステップにおいて、前記柱脚を被覆した前記防水層立上部の外周囲を囲い込む状態で複数の前記分割保護部材を配置する請求項1〜3のいずれか1項に記載の柱脚防水工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水対象床に立設された柱の柱脚に防水措置を施す柱脚防水工法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、雨水に曝される駐車場の床には防水措置を施す必要がある。従来、駐車場の防水対象床の防水措置としては、コンクリート製の床スラブ等からなる防水対象床の上に防水層を設け、この防水層の上に押えコンクリート層等からなる保護層を設けた構造のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような防水対象床に立設された柱の柱脚に関しては、従来、柱脚の外周囲を現場打ちのコンクリートで被覆し、そのコンクリート被覆層の外周囲を防水層となる防水シートで覆った後、防水シートの外周囲を保護パネルで覆う柱脚防水工法が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−125801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の柱脚防水工法では、柱脚の外周囲にコンクリートを現場打ちするため、そのコンクリートの外周囲を防水シートで被覆するに当たり、コンクリートが硬化するまでの養生期間を待って被覆しなければならず、そのため、施工性に難点があり、かつ、工期の面でも問題がある。
更に、防水シートの外周囲を保護パネルで覆う必要があるため、施工性が悪く、かつ、最終的には、内側のコンクリート被覆層と外側の保護パネルとの間に防水層としての防水シートを挟み込んだ構造となる。そのため、平面視において、柱脚の防水部分の占有面積が比較的大きくなって、防水対象床の使用可能域が制限されるという問題もある。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に着目したもので、その目的は、施工性が良く、かつ、工期の短縮化と占有面積の縮小化を図ることの可能な柱脚防水工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、防水対象床に立設された柱の柱脚に防水措置を施す柱脚防水工法であって、
前記防水対象床から立ち上げ
た防水層立上部にて前記柱脚の外周囲を被覆して前記防水層立上部を前記柱脚に接着する第1ステップと、
前記柱脚を被覆した前記防水層立上部の外周囲にプレキャストコンクリート製の保護部材を配置する第2ステップと、
前記防水層立上部の外周囲に配置した前記保護部材を固定する第3ステップを備える点にある。
【0007】
本構成によれば、第1ステップにおいて、防水対象床から立ち上げた防水層立上部にて柱脚の外周囲を被覆するので、上述した従来工法のように、コンクリートの養生期間を待つ必要はなく、直ちに防水層立上部によって柱脚の外周囲を被覆することができる。
そして、第2ステップにおいて、その防水層立上部の外周囲にプレキャストコンクリート製の保護部材を配置し、第3ステップにおいて、その保護部材を固定するだけで済むので、施工性が大幅に向上し、工期も大幅に短縮することができる。
更に、柱脚の防水部分は、柱脚を被覆する防水層立上部とその外側に配置の保護部材だけとなり、平面視において、柱脚防水部分の占有面積が比較的小さくなって、防水対象床の使用可能域が拡大される。
【0008】
本発明の第2特徴構成は、
前記第1ステップにおいて、前記防水対象床の上面における前記柱脚の外周囲に面取り用の充填部材を配置し、前記防水対象床に接着される防水層及び前記柱脚に接着される前記防水層立上部を、前記充填部材に対して接着せずに無接着状態とし、
前記第2ステップにおいて、前記保護部材を前記充填部材の外周囲に配置する点にある。
また、前記第2ステップにおいて、前記保護部材を自立状態で配置する
と好適である。
【0009】
本構成によれば、保護部材を防水層立上部の外周囲に自立状態で配置するので、第2ステップにおいて、保護部材を自立させるための大掛かりなサポート部材やサポート工程が不要となり、更なる施工性の向上と工期の短縮を図ることができる。
【0010】
本発明の第3特徴構成は、前記第3ステップにおいて、前記防水対象床に施された防水層の上に、前記保護部材の下端側を埋め込み固定する状態で
コンクリートを打設して保護層を形成する点にある。
【0011】
本構成によれば、第3ステップにおいて、防水対象床に施された防水層の上に保護層を形成するに際し、その保護層により保護部材の下端側を埋め込み固定する状態で形成するので、保護層形成時に保護部材の固定も一挙に行うことができ、更なる施工性の向上を図ることができる。
【0012】
本発明の第4特徴構成は、前記柱脚の断面形状が矩形状であるのに対し、前記保護部材として、平面視コの字状または平面視Lの字状に構成された複数の分割保護部材を使用し、
前記第2ステップにおいて、前記柱脚を被覆した前記防水層立上部の外周囲を囲い込む状態で複数の前記分割保護部材を配置する点にある。
【0013】
本構成によれば、保護部材として、平面視コの字状または平面視Lの字状に構成された複数の分割保護部材を使用する、つまり、自立させ易く、かつ、断面形状が矩形状の柱脚に対して姿勢や位置決めが容易な形状の分割保護部材を使用する。よって、第2ステップにおいて、防水層立上部の外周囲を囲い込む状態で複数の分割保護部材を配置するに当たり、各分割保護部材を簡単かつ確実に所望の位置に配置することができ、より一層の施工性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図4】柱脚防水工法に使用する分割保護部材の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明による柱脚防水工法の実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明の柱脚防水工法は、例えば、雨水に曝される駐車場などの床に立設された柱の柱脚を対象とし、
図1〜
図3に示すように、コンクリート製の床スラブからなる防水対象床1に立設された鉄骨製の柱2の柱脚3に対して防水措置を施すための工法である。
【0016】
本発明の工法では、
図1に示すように、防水対象床1の上面における柱脚3の周囲に断面形状が直角三角形の面取り用の充填部材4を配置し、必要に応じて充填部材4を防水対象床1の上面や柱脚3の外周面に接着する。
その後、防水対象床1の上面に防水層としての防水シート5を敷設して防水対象床1の上面に接着する。柱脚3の外周囲部分においては、防水シート5を柱脚3の外周囲に沿って立ち上げ、その立ち上げた防水層立上部としての防水シート立上部6により柱脚3の外周囲を被覆して接着剤により柱脚3に接着する。ただし、防水シート5や防水シート立上部6は、充填部材4に対して接着せずに、無接着状態とする。すなわち、防水シート5や防水シート立上部6を充填部材4に対して無接着状態にすることで、防水対象床1と柱2または柱脚3との相対的な挙動のズレを積極的に許容、吸収して、防水シート5や防水シート立上部6の損傷を防止するのである。
このようにして、柱脚防水工法の第1ステップでは、
図1に示すように、防水対象床1から立ち上げた防水シート立上部6にて柱脚3の外周囲を被覆する。
【0017】
第1ステップ終了後の第2ステップでは、
図2に示すように、柱脚3を被覆した防水シート立上部6の外周囲にプレキャストコンクリート製の保護部材7を配置する。この保護部材7は、
図4を参照して、断面形状が矩形状の柱脚3に対して、例えば、
図4(a)に示すように、平面視でコの字状の2つの分割保護部材7a、または、
図4(b)に示すように、平面視でLの字状の2つの分割保護部材7bで構成され、これら分割保護部材7a、7bは、図示のように自立可能である。
すなわち、柱脚防水工法の第2ステップでは、
図2に示すように、柱脚3を被覆した防水シート立上部6の外周囲に、その防水シート立上部6の外周囲を囲い込むように複数の分割保護部材7aまたは7bからなるプレキャストコンクリート製の保護部材7を自立状態で配置し、必要に応じてバンド8などで締め付けて固定する。
【0018】
第2ステップ終了後の第3ステップでは、
図3に示すように、防水対象床1の上面に敷設した防水シート5の上に、保護部材7の下端側を埋め込む状態でアスファルトコンクリートまたはシンダーコンクリートを打設して保護層9を形成し、保護層9により防水シート立上部6の外周囲に配置した保護部材7を固定する。
その後、必要な場合には、柱脚3と保護部材7との間にモルタルなどの充填材を挿入し、更に、保護部材7の上方に化粧板10を配置して柱2の外周囲を覆う。なお、柱2と化粧板10との間には、必要に応じて断熱材や耐火材などの充填材を挿入する。
【0019】
なお、本実施形態では、プレキャストコンクリート製の保護部材7は、鉄筋を不存とした安価で製作容易な無筋コンクリート造にて構成されている。更に、このプレキャストコンクリート製の保護部材7は、躯体コンクリート工事等で頻繁に発生する生コンクリートの余剰分を利用し、余剰分が発生する都度、建築現場内の製作スペースにて製作されている。このようにすることで、プレキャストコンクリート製の保護部材7を非常に安価で製作することが可能となり、本柱脚防水工法で構築する柱脚防水構造の大幅な低コスト化を図ることができる。
【0020】
〔別実施形態〕
(1)先の実施形態では、防水対象床1の一例として駐車場の床を示したが、駐車場の床以外にも、防水を必要とする各種の床に適用することができ、また、防水層の一例として防水シート5を示したが、防水シート5以外にも、例えば、防水材を塗布または吹き付けて防水層とすることもできる。
【0021】
(2)先の実施形態では、自立可能な平面視コの字状または平面視Lの字状の2つの分割保護部材7a、7bにより保護部材7を構成した例を示したが、自立不可能な分割保護部材により保護部材7を構成することもでき、また、3つ以上の分割保護部材により保護部材7を構成することもできる。
【0022】
(3)先の実施形態では、断面形状が矩形状の柱脚3の外周囲に断面形状が矩形状の保護部材7を配置した例を示したが、矩形状の柱脚3の外周囲に円形状の保護部材7を配置することも可能であり、また、円形状の柱脚3の外周囲に円形状または矩形状の保護部材7を配置することも可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 防水対象床
2 柱
3 柱脚
5 防水層
6 防水層立上部
7 保護部材
7a 平面視コの字状の分割保護部材
7b 平面視Lの字状の分割保護部材
9 保護層