(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6788396
(24)【登録日】2020年11月4日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】光波距離計
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20201116BHJP
G01S 17/08 20060101ALI20201116BHJP
G01S 7/497 20060101ALI20201116BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G01S17/08
G01S7/497
G01C3/06 120Q
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-133503(P2016-133503)
(22)【出願日】2016年7月5日
(65)【公開番号】特開2018-4514(P2018-4514A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083563
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 祥二
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 彰信
(72)【発明者】
【氏名】大石 政裕
【審査官】
渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−162517(JP,A)
【文献】
特開2012−021949(JP,A)
【文献】
特開2007−093210(JP,A)
【文献】
特開2001−208845(JP,A)
【文献】
特表平08−510324(JP,A)
【文献】
特開平09−236662(JP,A)
【文献】
特開2016−080534(JP,A)
【文献】
特開平05−312951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 − 7/51
17/00 − 17/95
G01C 3/00 − 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測距光を発する光源と、前記測距光を測定対象物に照射し、該測定対象物からの測距光を受光し、受光素子に導く測距光学系と、前記測距光の一部を内部参照光として前記受光素子に導く内部参照光学系と、前記測距光の受光結果と前記内部参照光の受光結果に基づき測距を行う演算処理部とを具備し、前記内部参照光学系は、前記内部参照光を集光する集光レンズと、該集光レンズで集光された前記内部参照光を散乱し二次光源を形成する散乱板と、前記二次光源から発せられた内部参照光を受光し、前記受光素子に導く光ファイバとを具備し、前記二次光源全面の任意の点から発した前記内部参照光の光成分が、前記光ファイバに入射する様に構成され、
前記散乱板上に形成された前記二次光源の半径rd、前記光ファイバ入射端の半径rf、前記散乱板で散乱された光束の広がり角の半角θdと光ファイバ受入れ角のθfの内、小さい方の角度をθとしたとき、前記二次光源と前記光ファイバの間隔dが
d≧(rd+rf)/tanθ
である光波距離計。
【請求項2】
前記光ファイバは、細径の光ファイバ要素が束ねられたバンドル光ファイバである請求項1に記載の光波距離計。
【請求項3】
前記二次光源から発せられる内部参照光を集光して前記光ファイバに入射させる集光レンズを具備する請求項1又は請求項2に記載の光波距離計。
【請求項4】
周方向に減光率が漸次変化する様に形成された円板状の減光フィルタが内部参照光の光路中に回転可能に設けられ、前記受光素子が受光する内部参照光の光量が前記減光フィルタの回転により調整される請求項1〜請求項3のうちいずれか1項に記載の光波距離計。
【請求項5】
周方向に減光率が漸次変化する様に形成された円板状の減光フィルタが前記散乱板と一体に設けられ、該散乱板は回転可能であり、該散乱板の回転により前記受光素子が受光する内部参照光の光量が調整される請求項1〜請求項3のうちいずれか1項に記載の光波距離計。
【請求項6】
前記測距光学系に設けられ、前記測距光から前記内部参照光を分岐し、内部参照光路に向ける分岐ミラーを具備し、該分岐ミラーを測距光路に挿脱可能とした請求項1に記載の光波距離計。
【請求項7】
前記測距光学系に設けられ、前記測距光から前記内部参照光を分岐し、内部参照光路に向ける分岐ミラーと、前記測距光と前記内部参照光とを択一的に遮断するシャッタを有する請求項1に記載の光波距離計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測距光を測定対象物に照射し、測定対象物からの反射測距光を受光し、受光結果に基づき測定対象物迄の距離を測定する光波距離計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光波距離計は、発光素子から発せられる測距光を測距光学系を介して測定対象物に照射し、測定対象物からの測距反射光を測距光学系を介して受光素子で受光し、測距光の発光タイミングと測距反射光の受光タイミングとの時間差に基づき測定対象物迄の距離を測定している。
【0003】
又、発光回路、受光回路、演算回路では温度変化等によるドリフトが生じる為、回路に起因する誤差を抑制する為、測距光学系は内部参照光学系を有している。
【0004】
内部参照光学系は、測距光の一部をハーフミラー等の光学部材により分割し、分割した測距光を内部参照光として受光素子に導いている。内部参照光についても、発光タイミングと内部参照光の受光タイミングとの時間差を求め、測距光で得られる時間差と内部参照光で得られる時間差との差に基づき測距距離が演算されている。
【0005】
測距光で得られる時間差と内部参照光で得られる時間差との差が求められることで、発光回路、受光回路、演算回路の誤差要因が相殺され、高精度の測距が可能となっている。
【0006】
又、受光素子が光を検出する受光タイミングは、受光光の品質(輝度、光量)によって影響を受ける。
【0007】
従って、測距精度を更に向上させる為には、測距光、内部参照光について受光光の品質も同じであることが望まれる。
【0008】
従来、内部参照光は、測距光を分割することで得られており、内部参照光自体は測距光と同品質(輝度分布、輝度斑等が同一)となっている。
【0009】
ところが、測距光を分割した時点では、測距光は直径が数mmの光束となっており、この為、内部参照光も同様の光束となっている。これに対して、受光素子の受光面は直径が数百μmと小さい為、内部参照光の限られた一部の光束が受光される構成となっている。内部参照光の受光光の品質は測距光の品質(輝度分布、輝度斑等)の影響を受け、受光される光束が内部参照光の光束のどの位置にあるかで受光光の品質が変ることになる。
【0010】
従って、内部参照光の受光光の品質と測距光の受光品質とが相違し、測距誤差の原因となる可能性がある。
【0011】
更に、受光素子の光波距離計内での支持位置は、温度変化に対応して変化する可能性があり、受光素子の位置変化は、内部参照光に対する位置変化となるので、やはり温度変化が、測距誤差の原因となる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平4−220585号公報
【特許文献2】特開平5−312951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、内部参照光の受光光の品質を改善し、測距精度の向上を図る光波距離計を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、測距光を発する光源と、前記測距光を測定対象物に照射し、該測定対象物からの測距光を受光し、受光素子に導く測距光学系と、前記測距光の一部を内部参照光として前記受光素子に導く内部参照光学系と、前記測距光の受光結果と前記内部参照光の受光結果に基づき測距を行う演算処理部とを具備し、前記内部参照光学系は、前記内部参照光を集光する集光レンズと、該集光レンズで集光された前記内部参照光を散乱し二次光源を形成する散乱板と、前記二次光源から発せられた内部参照光を受光し、前記受光素子に導く光ファイバとを具備し、前記二次光源全面の任意の点から発した前記内部参照光の光成分が、前記光ファイバに入射する様に構成された光波距離計に係るものである。
【0015】
又本発明は、前記光ファイバが、細径の光ファイバ要素が束ねられたバンドル光ファイバである光波距離計に係るものである。
【0016】
又本発明は、前記二次光源から発せられる内部参照光を集光して前記光ファイバに入射させる集光レンズを具備する光波距離計に係るものである。
【0017】
又本発明は、前記散乱板上に形成された前記二次光源の半径rd、前記光ファイバ入射端の半径rf、前記散乱板で散乱された光束の広がり角の半角θdと光ファイバ受入れ角のθfの内、小さい方の角度をθとしたとき、前記二次光源と前記光ファイバの間隔dが
d≧(rd+rf)/tanθ …(1)
である光波距離計に係るものである。
【0018】
又本発明は、周方向に減光率が漸次変化する様に形成された円板状の減光フィルタが内部参照光の光路中に回転可能に設けられ、前記受光素子が受光する内部参照光の光量が前記減光フィルタの回転により調整される光波距離計に係るものである。
【0019】
又本発明は、周方向に減光率が漸次変化する様に形成された円板状の減光フィルタが前記散乱板と一体に設けられ、該散乱板は回転可能であり、該散乱板の回転により前記受光素子が受光する内部参照光の光量が調整される光波距離計に係るものである。
【0020】
又本発明は、前記測距光学系に設けられ、前記測距光から前記内部参照光を分岐し、内部参照光路に向ける分岐ミラーを具備し、該分岐ミラーを測距光路に挿脱可能とした光波距離計に係るものである。
【0021】
更に又本発明は、前記測距光学系に設けられ、前記測距光から前記内部参照光を分岐し、内部参照光路に向ける分岐ミラーと、前記測距光と前記内部参照光とを択一的に遮断するシャッタを有する光波距離計に係るものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、測距光を発する光源と、前記測距光を測定対象物に照射し、該測定対象物からの測距光を受光し、受光素子に導く測距光学系と、前記測距光の一部を内部参照光として前記受光素子に導く内部参照光学系と、前記測距光の受光結果と前記内部参照光の受光結果に基づき測距を行う演算処理部とを具備し、前記内部参照光学系は、前記内部参照光を集光する集光レンズと、該集光レンズで集光された前記内部参照光を散乱し二次光源を形成する散乱板と、前記二次光源から発せられた内部参照光を受光し、前記受光素子に導く光ファイバとを具備し、前記二次光源全面の任意の点から発した前記内部参照光の光成分が、前記光ファイバに入射する様に構成されたので、内部参照光の光束全範囲に測距光の光成分が含まれ、前記受光素子で受光される反射測距光及び内部参照光は同品質となり、測距精度が向上し、環境変化に対して信頼性が向上するという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1の実施例の光学系の概略図である。
【
図2】該実施例に用いられる光ファイバの断面図である。
【
図3】該実施例に用いられる散乱板の作用を示す説明図である。
【
図4】本発明の第2の実施例の光学系の概略図である。
【
図5】本発明の第2の実施例に於ける散乱板と集光レンズの作用を示す説明図である。
【
図6】本発明の第3の実施例の光学系の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0025】
図1は、本発明の第1の実施例に係る光波距離計の光学系の概略を示している。
【0026】
光学系は、主に投光光学系1、受光光学系2、内部参照光学系3を有している。
【0027】
前記投光光学系1は投光光軸5を有し、前記受光光学系2は受光光軸6を有し、前記内部参照光学系3は内部参照光軸7を有する。
【0028】
前記投光光軸5には測距光10を発する光源9が設けられ、更に前記投光光軸5には物側に向って集光レンズ11、分岐ミラー12、偏向光学部材としての反射鏡13が設けられている。
【0029】
前記投光光軸5は、前記反射鏡13に偏向され、偏向された前記投光光軸5は測定対象物に向う測距光軸8となる。前記集光レンズ11、前記反射鏡13等は前記投光光学系1を構成する。
【0030】
前記受光光軸6は、前記反射鏡13の反射面上で前記投光光軸5と交差し、前記反射鏡13を透過した前記受光光軸6は前記測距光軸8と合致する。
【0031】
前記受光光軸6の前記反射鏡13の像側には結像レンズ14、ビームスプリッタ15が設けられている。該ビームスプリッタ15は波長選択光学部材及び偏向光学部材として機能し、測距光のみを反射する反射面15aを有し、該反射面15aは前記受光光軸6を偏向する。偏向された前記受光光軸6上には受光素子16が設けられる。
【0032】
前記結像レンズ14、前記ビームスプリッタ15等は、前記受光光学系2を構成する。更に、該受光光学系2及び前記投光光学系1は、測距光学系を構成する。
【0033】
前記分岐ミラー12は、前記投光光軸5から前記内部参照光軸7を分岐する光学部材であり、前記分岐ミラー12は光路切替え駆動部18によって前記投光光軸5上に挿入、退出可能となっている。前記分岐ミラー12が前記投光光軸5から退出した状態では、前記測距光10は前記反射鏡13に入射し、更に該反射鏡13で反射され、測定対象物に照射される。
【0034】
前記分岐ミラー12が前記投光光軸5上に挿入された状態では、前記投光光軸5は前記分岐ミラー12によって分岐され、分岐された光軸は前記内部参照光軸7となる。
【0035】
該内部参照光軸7上に集光レンズ19、散乱板20、光ファイバ21、集光レンズ22が設けられている。
【0036】
前記光ファイバ21の入射端面は前記散乱板20と正対した状態に設定され、且つ入射端面は、前記集光レンズ19の光軸上に配置される。前記光ファイバ21の射出端より延出する前記内部参照光軸7上には、前記集光レンズ22、前記受光素子16が配設されている。該受光素子16からの受光信号は演算処理部23に入力される。
【0037】
前記集光レンズ19、前記散乱板20、前記光ファイバ21、前記集光レンズ22等は前記内部参照光学系3を構成する。
【0038】
前記光ファイバ21は、
図2に示される様に、小径の光ファイバ要素21aを束ねたバンドル光ファイバとなっている。
【0039】
以下、第1の実施例の作用について説明する。
【0040】
先ず、前記分岐ミラー12が前記測距光10の光路から退出した状態で、測定対象物(図示せず)に前記測距光10が照射される。
【0041】
前記光源9から前記測距光10が発せられ、前記集光レンズ11で平行光束とされ、前記反射鏡13に入射する。該反射鏡13で前記測距光軸8上に反射され、測定対象物に照射される。
【0042】
測定対象物からの反射測距光10′は、前記結像レンズ14に入射し、前記ビームスプリッタ15の反射面15aで反射され、前記受光素子16に結像される。前記反射面15aは、測距光のみを反射する光学特性を有しており、前記反射面15aの光学作用により、ノイズ光が除去される。
【0043】
尚、前記ビームスプリッタ15と前記受光素子16との間には光量調整手段(図示せず)が設けられてもよい。該光量調整手段は、前記受光素子16に入射する反射測距光10′の光量が同一又は略同一となる様調整する。
【0044】
前記受光素子16は前記反射測距光10′を受光すると、受光信号を演算処理部23に入力する。
【0045】
次に、前記光路切替え駆動部18により前記分岐ミラー12が前記測距光10の光路内に挿入される。前記分岐ミラー12は部分反射鏡(光量分割部材)となっており、前記測距光10は前記分岐ミラー12によって一部が反射される。反射された前記測距光10の一部は内部参照光24として前記集光レンズ19に入射する。ここで、前記分岐ミラー12の反射率は、前記内部参照光24の光強度が、前記受光素子16が飽和しない適切な光強度となる様に設定される。
【0046】
前記集光レンズ19は前記内部参照光24を前記散乱板20に向け集光する。又、前記内部参照光24は前記入射端面に至る過程で前記散乱板20を透過し、該散乱板20によって散乱される。該散乱板20から散乱光の前記内部参照光24が発せられ、前記散乱板20の前記内部参照光24の射出部分は二次光源を形成する。
【0047】
該散乱板20の作用は、
図3に示されている。
【0048】
図3に於いて、前記散乱板20に入射した時の前記内部参照光24の直径(即ち、前記散乱板20上に形成された二次光源)は2rd、前記光ファイバ21の直径は2rf、前記散乱板20と前記光ファイバ21の入射端面間の距離はd、前記散乱板20による散乱角は2θd、前記光ファイバ要素21aの受入れ角(NA)は2θfとして表されている。
【0049】
前記測距光10は、微小な光束の集合とすると、前記測距光10は光強度分布を有し、或は光量斑を有しており、前記光束の個々は、光強度分布、光量斑を反映した特性を持っている。以下は、前記微小の光束について、前記測距光10を構成する光成分と称する。
【0050】
図3に於いて、前記内部参照光24の上端Aに位置する光成分は、散乱角2θdで広がる。上端Aからの光成分が光ファイバ21の入射端面の最下端(一番入射しにくい点)に入射する場合の入射角をθとすると、入射角θが散乱角θd及びθfより小さくなる様に設定する。
【0051】
同様に、下端Cからの光成分が光ファイバ21の入射端面の最下端(一番入射しにくい点)に入射する場合の入射角θが前記散乱角θd及びθfより小さくなる様に設定する。
【0052】
上端A、下端Cからの光成分が、前記光ファイバ要素21aに入射する様に設定すると、全ての前記光ファイバ要素21aのそれぞれには、中点Bからの光成分を含む前記内部参照光24を構成する光成分の全てが入射することになる。
【0053】
全ての前記光ファイバ要素21aのそれぞれに、前記内部参照光24を構成する全ての光成分が入射する条件、即ち前記二次光源全面から光成分が入射する条件は、
前記散乱板20上に形成された二次光源の半径rd、前記光ファイバ入射端の半径rf、前記散乱板20で散乱された光束の広がり角の半角θdと光ファイバ受入れ角の2θfの内、小さい方の角度をθとしたとき、
d≧(rd+rf)/tanθとなる。 …(1)
【0054】
上記式(1)は、前記散乱板20と前記光ファイバ21の入射端面間の距離dの適正の下限値を示しており、上限値は特にないが、距離dが大きくなると前記光ファイバ21に入射する前記内部参照光24の光量が減少し、無駄が多くなる。従って、距離dは製作上最も小さく、或は製作が容易で且つd≧(rd+rf)/tanθとなる。
【0055】
前記光ファイバ要素21aに入射した光成分は、該光ファイバ要素21aの内壁で反射されつつ伝播するので、前記光ファイバ要素21aを通過する過程でも撹拌される。
【0056】
従って、前記集光レンズ22から射出される内部参照光29は、前記散乱板20で撹拌された状態が維持されている。前記集光レンズ22から射出された前記内部参照光29は、前記集光レンズ22で平行光束とされ、前記受光素子16によって受光される。
【0057】
前記内部参照光24は、直径2rfの大きさを有する前記光ファイバ21の射出端面から射出されており、前記集光レンズ22で平行光束とされた前記内部参照光29も広がりを有している。従って、前記受光素子16の受光面は小さいので、前記受光素子16で受光される前記内部参照光29は、極一部に限定される。
【0058】
一方、上記した様に前記光ファイバ要素21aの個々から射出される内部参照光24′は、それぞれが前記内部参照光24の全ての成分を有しているので、前記内部参照光29の成分は前記反射測距光10′の成分と同一となる。
【0059】
前記内部参照光29の受光結果は、前記受光素子16から前記演算処理部23に入力され、該演算処理部23では前記測距光10の受光結果、前記内部参照光29の受光結果に基づき測定対象物迄の測距が行われる。
【0060】
前記内部参照光29の成分と前記反射測距光10′の成分とは同一であるので、前記測距光10、前記内部参照光29により測距した精度の向上が図れる。
【0061】
又、前記集光レンズ22を透過した前記内部参照光29は、前記受光素子16の受光面より充分大きい広がり角を有し、又前記内部参照光24は全光束で同一成分(前記測距光10の全ての成分を含む)なので、前記内部参照光24のどの部分が前記受光素子16に受光されてもよいので、前記光ファイバ21と前記受光素子16の位置合せに精度は要求されなく、組立が容易となる。
【0062】
尚、前記光ファイバ21の射出端面を前記受光素子16の受光面に近接して配置できれば、光量損失は少ないので、前記集光レンズ22は省略することができる。
【0063】
尚、前記散乱板20による均質化状態が、維持される或は大きく崩れない場合は、前記光ファイバ21は細い光ファイバ要素21aの集合ではなく、1本の光ファイバ要素21aによって構成されたものでもよい。
【0064】
図4を参照して本発明の第2の実施例を説明する。
【0065】
尚、
図4中、
図1中で示したものと同等のものには同符号を付しその説明を省略する。
【0066】
第2の実施例では、分岐ミラー12は固定であり、測距光10の一部を内部参照光24として反射し、残部を測距光10として透過するハーフミラーとなっている。又、前記分岐ミラー12の反射率は、前記受光素子16が飽和しない適切な光強度となる様に設定される。
【0067】
光路切替え手段としてシャッタ25が設けられ、該シャッタ25は、投光光軸5と内部参照光軸7間を移動し、前記測距光10と前記内部参照光24とを択一的に遮断する構成となっている。
【0068】
散乱板20と光ファイバ21の入射端面との間には集光レンズ26が設けられる。
【0069】
第2の実施例に於いて、前記測距光10が射出されるときは、前記シャッタ25が前記内部参照光軸7上に位置し、前記内部参照光24の光路を遮断する。
【0070】
又、前記シャッタ25が前記投光光軸5上にあり、前記測距光10の光路を遮断した状態では、前記内部参照光24が分岐ミラー12で反射され、前記散乱板20、前記集光レンズ26を経て前記光ファイバ21の入射端面に入射する。
【0071】
前記集光レンズ26の作用について、
図5を参照して説明する。
【0072】
前記散乱板20のA点を光源として射出された光束は、前記集光レンズ26によって平行光束とされ、照射範囲aで前記光ファイバ21の入射端面を照射する。又、C点を光源として射出された光束は、前記集光レンズ26によって平行光束とされ、照射範囲cで前記光ファイバ21の入射端面を照射する。
【0073】
従って、より多くの光束が前記光ファイバ21の入射端面に入射し、光量損失が減少する。
【0075】
散乱板20の入射側或は射出側(図示では、入射側)に減光フィルタ27が設けられている。
【0076】
該減光フィルタ27は円板状であり、支持軸28を中心に回転可能となっている。前記減光フィルタ27は、周方向に濃度(減光率)が漸次変化する様に形成されている。
【0077】
内部参照光24は、前記減光フィルタ27の周辺を透過する様になっている。従って、前記減光フィルタ27を透過する前記内部参照光24は、前記減光フィルタ27を回転することで、光量が増減する様になっている。
【0078】
前記分岐ミラー12の反射率を設定、管理する代わりに、前記減光フィルタ27の回転位置を選択することで、前記受光素子16が飽和しない適切な光強度となる様に設定できる。
【0079】
而して、前記散乱板20による光成分の均質化と、光量の一致により更に測距精度が向上する。
【0080】
前記散乱板20と前記減光フィルタ27とは一体化してもよい。例えば、前記
散乱板20の一面に減光フィルタ27のフィルムを貼付け、減光フィルタ機能付きの散乱板20とする。
【0081】
前記散乱板20を回転することで、光量調整と光成分均質化が同時に行える。又、部品点数が少なくなり、構成が簡単となる。
【符号の説明】
【0082】
1 投光光学系
2 受光光学系
3 内部参照光学系
5 投光光軸
6 受光光軸
7 内部参照光軸
9 光源
10 測距光
10′ 反射測距光
16 受光素子
19 集光レンズ
20 散乱板
21 光ファイバ
21a 光ファイバ要素
22 集光レンズ
23 演算処理部
24 内部参照光
26 集光レンズ
27 減光フィルタ