(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記移動機構は、前記軸に巻き掛けられたベルトの外周側から内周側に向けてベルト幅方向の断面幅が広がるように、前記刃を斜め方向に移動自在にすることを特徴とする請求項1に記載のバイアスカット装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記方式の装置では、二本の回転軸間で固定されずフリーな状態のベルト部位にカッター刃を挿入するため、ベルト背面を押圧するプッシュロールや、側面を挟持するガイドロールなどの、ベルト固定手段が必要になる。さらに、これらの固定手段でベルトを固定した場合でも、カッター刃の切リ込みに対して生じる幅方向へ「逃げる」抵抗力を抑制し切れず、その結果、カット後のベルトのバイアスカット面(カットライン)が内側に反った形状になり、ベルト側面が平滑でなくなる場合がある。このようなVベルトは、摩擦伝動面である側面がVプーリと充分に接触できないので、ベルトの伝達効率が低下してしまう場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、刃の切リ込みに対して生じるベルト厚み方向やベルト幅方向への「逃げ」を抑制し、カット時にベルトを強固に固定して、ベルトのバイアスカット後にバイアスカット面(カットライン)が内側に反ることを防止して、平滑なベルト側面を有するVベルトを形成可能なバイアスカット装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ベルトに対して張力を付与しつつ、ベルト周長方向に巻き掛けることが可能な少なくとも2本の軸と、
前記軸の一つを駆動可能な軸駆動部と、
前記軸間に巻き掛けられた前記ベルトの外周空間に配置される刃と、
前記刃を、前記軸間を周動する前記ベルトの、前記軸に巻き掛けられた部位に対して、斜めに進入させる方向に移動自在にする移動機構と、を備えていることを特徴とする、バイアスカット装置である。
【0008】
上記構成によれば、軸に巻き掛けられたベルト部位に対して刃を進入させてバイアスカットすることができる。これによれば、刃が進入するベルト部位は、軸の外周により押圧されるため刃の切リ込みに対して生じるベルト厚み方向への「逃げ」を抑制することができる。また、刃が進入するベルト部位は、軸の外周に対して面接触しているため、摩擦力を高めることができ、刃の斜めの切リ込みに対して生じるベルト幅方向への「逃げ」も抑制することができる。
このように、ベルトをバイアスカットする際にベルトが「逃げ」るのを抑制して強固に固定することにより、バイアスカット面(カットライン)が内側に反ることを防止して、平滑なベルト側面を有するVベルトを形成することができる。
更に、平滑なベルト側面を有するVベルトを形成することができることから、Vベルトの伝達効率を高めることができる。
また、軸の他にベルトを固定する固定手段を別途設ける必要がなくなり、全体として部品点数を減らすことができる。
【0009】
また、本発明は、上記バイアスカット装置であって、前記軸の外周には、巻き掛けられた前記ベルトを幅方向で挟持するフランジが設けられていることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、フランジによって巻き掛けられたベルトを幅方向で挟持することができる。これにより、刃が斜めに進入するベルト部位は、フランジによって挟持されることから、刃の斜めの切リ込みに対して生じるベルト幅方向への「逃げ」をより強固に抑制することができる。
【0011】
また、本発明は、上記バイアスカット装置であって、前記軸の外周には、樹脂体が設けられていることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、軸に巻き掛けられたベルト部位に対して刃を進入させすぎた場合に、樹脂体がクッションになり、刃と軸とが直接接触することを防止し、刃及び軸が損傷することを防止することができる。
【0013】
また、本発明は、上記バイアスカット装置であって、前記移動機構は、前記軸に巻き掛けられたベルトの外周側から内周側に向けてベルト幅方向の断面幅が広がるように、前記刃を斜め方向に移動自在にすることを特徴とする。
【0014】
軸に巻き掛けられたベルトの外周側から内周側に向けてベルト幅方向の断面幅が狭まるようにカットした場合、ベルトの内周側が軸の外周に対して面接触している接触面積が小さくなるため、摩擦力が低くなり、刃の斜めの切リ込みに対して生じるベルト幅方向への「逃げ」に対する防止機能が低下するおそれがある。
しかし、上記構成のように、軸に巻き掛けられたベルトの外周側から内周側に向けてベルト幅方向の断面幅が広がるようにカットした場合、ベルトの内周側が軸の外周に対して面接触している接触面積は変わらないため、摩擦力は維持され、刃の斜めの切リ込みに対して生じるベルト幅方向への「逃げ」に対する防止機能も維持することができる。
【0015】
また、本発明は、上記バイアスカット装置であって、前記刃は、丸刃であり、前記移動機構に対して回転可能に設けられており、
更に、前記刃を回転させる刃駆動部を備えていることを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、軸間を周動するベルトをカットする際に、丸刃を回転させつつカットすることができる。これによれば、刃を固定した構成に比べて、刃の摩耗を抑制し、刃の寿命を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
刃の切リ込みに対して生じるベルト厚み方向やベルト幅方向への「逃げ」を抑制し、カット時にベルトを強固に固定して、ベルトのバイアスカット後にバイアスカット面(カットライン)が内側に反ることを防止して、平滑なベルト側面を有するVベルトを形成可能なバイアスカット装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(Vベルト1)
先ず、本実施形態のバイアスカット装置により製造されるVベルト1の構成について、
図1を参照して説明する。このVベルト1は、繊維コードからなる心線3が接着ゴム層2内に埋め込まれ、この接着ゴム層2の上部には補強布4を含む伸張ゴム層5が、下部には同様に補強布4を含む圧縮ゴム層6が配置されている。圧縮ゴム層6には、一定ピッチでベルト周長方向に沿ってコグ谷部7とコグ山部8とを交互に配したコグ部9が設けられている。
【0020】
ベルト側面10の形状は、伸張ゴム層5の背面12に対して直角である直角カット面13と、後述のバイアスカット装置20で形成されるバイアスカット面15と、を有するものとなっている。具体的には、伸張ゴム層5の背面12から心線3の上端Pまでの距離をLとしたとき、伸張ゴム層5の背面12からLの90〜100%に相当する境界位置Uまでの領域が、前記直角カット面13になっている。一方、上記境界位置Uから圧縮ゴム層6の底面14にかけての領域が、バイアスカット面15になっている。
【0021】
心線3としては、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ガラス繊維が使用され、中でも、エチレン−2,6−ナフタレートを主たる構成単位とするポリエステル繊維フィラメント群を寄り合わせた総デニール数が4,000〜8,000の接着処理したコードが、ベルトスリップ率を低くでき、ベルト寿命を延長させるために好ましい。本実施形態において、コードの上撚り数は10〜23/10cmであり、また下撚り数は17〜38/10cmである。総デニール数が4,000未満の場合には、心線のモジュラス、強力が低くなってしまい、また8,000を超えると、ベルトの厚みが厚くなって、屈曲疲労性が良好でない。
【0022】
上記圧縮ゴム層6及び伸張ゴム層5に使用するゴムとしては、天然ゴム、ブチルゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン・プロピレンゴム(EPM、EPDM)、アルキル変性クロロスルフォン化ポリエチレン、水素化ニトリルゴム、不飽和カルボン酸金属塩を含む水素化ニトリルゴム、等のゴム材の単独、またはこれらの混合物が使用される。
【0023】
そして、上記圧縮ゴム層6に使用される短繊維16としては、アラミド繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、綿等の繊維からなり、繊維の長さは繊維の種類によって異なるが1〜10mm程度であり、例えばアラミド繊維であると3〜5mm程度、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、綿であると5〜10mm程度のものが用いられる。そして、上記圧縮ゴム層6中の短繊維16の方向は、ベルトの周長方向に対して垂直方向を向いているのを90°としたときに、殆どの短繊維が70〜110°の範囲内に配向されていることが好ましい。
【0024】
伸張ゴム層5には、短繊維16を含めなくても良い。また、接着ゴム層2には、上記短繊維を含めても良いが、含めない方が好ましい。
【0025】
補強布4は、綿、ポリエステル繊維、ナイロン等からなり、平織、綾織、朱子織等に製織した布で、経糸と緯糸との交差角を90°〜120°程度に広角度化した織布でもよい。補強布4はRFL処理した後、ゴム組成物のフリクション(すり込み)、積層などの処理をしてゴム付織布とする。RFL液はレゾルシンとホルムアルデヒドとの初期縮合物をラテックスに混合したものであり、ここで使用するラテックスとしてはクロロプレンゴム、スチレン・ブタジエン・ビニルピリジン三元共重合体、水素化ニトリルゴム、ニトリルゴムなどである。
【0026】
(バイアスカット装置20)
次に、上記Vベルト1を製造するためのバイアスカット装置20の構成について、
図2〜
図4を参照しながら説明する。
【0027】
図2に示すように、このバイアスカット装置20は、その本体23に、断面矩形状のベルト40を張架することが可能な、互いに平行な駆動軸21と従動軸22を備えている。この2本の駆動軸21及び従動軸22は、本体23の前面から手前側に向けて突出されている。また、従動軸22は、駆動軸21に対して近接または離間する方向に移動可能であり、様々な周長のベルト40を張架できるようになっている。
【0028】
駆動軸21は、本体23に内蔵されたモータ等の原動機24(軸駆動部)に連結されており、この原動機24からの駆動力を受けて回転して、ベルト40を走行させることができるようになっている。
【0029】
なお、この矩形断面のベルト40は、圧縮ゴム層6と伸張ゴム層5との間に心線3を介在させるようにこれらを積層一体化したベルトスリーブを、所定幅に直角にカットして製造される。
図2ではベルト40のコグ部9を図示していないが、ベルト40はコグ部9を外周側に向けた状態でバイアスカット装置20にセットされる。
【0030】
ここで、
図4に示すように、駆動軸21の外周の両端には、ベルト40を幅方向で挟持するフランジ211・212が設けられている。更に、駆動軸21の外周、及び、フランジ211の内側(ベルト40の収容側)には、駆動軸21の外周に沿ったリング形状のキャストナイロン製のリング213(樹脂体)が設けられている。また、フランジ212の内側にも、リング形状のキャストナイロン製のリング214が設けられている。リング213・214は、後述する第1丸刃416・第2丸刃426と駆動軸21とが直接接触しないように設けるものであり、素材としては樹脂が好ましい(なお、リング213・214は、交換可能とされている)。これにより、
図4に示すように、リング213が設けられたフランジ211とリング214が設けられたフランジ212との間にベルト40を収容することができる。
【0031】
また、フランジ211とフランジ212との幅は図示しないエアシリンダによって変更可能(チャッキング可能)に構成されており、これにより、ベルト40の側面をフランジ211とフランジ212とで挟持した状態で、駆動軸21と従動軸22との間にベルト40を掛け渡すことが可能になっている。
【0032】
従動軸22は、駆動軸21同様に、その外周の両端に、ベルト40を幅方向で挟持するフランジ221・222が設けられている(
図2参照)。また、フランジ221とフランジ222との幅は図示しないエアシリンダによって変更可能(チャッキング可能)に構成されている。また、従動軸22は、駆動軸21に対して近接または離間する方向に移動可能にする駆動機構(図示せず)に連結されている。
【0033】
次に、
図2に示すように、駆動軸21に向かって左斜め上方向には、左カッター部41が設けられている。また、駆動軸21に向かって右斜め上方向には、右カッター部42が設けられている。即ち、左カッター部41及び右カッター部42は、駆動軸21と従動軸22との間に巻き掛けられたベルト40の外周空間側に配置されている。左カッター部41は、ベルト40の一方端(
図2の手前側)をバイアスカット面15に沿って斜めにカットする役割を果たす。右カッター部42は、ベルト40の他端(
図2の奥側)をバイアスカット面15に沿って斜めにカットする役割を果たす。
【0034】
左カッター部41(移動機構)は、第1台座411と、第1台座411上を駆動軸21に対して平行方向にスライド可能であり、駆動軸21に対して45°の傾斜面412aを有する第2台座412と、第2台座412の傾斜面412a上を円弧方向にスライド可能な第3台座413と、第3台座413上を駆動軸21の中心方向にスライド可能な第4台座414と、第4台座414上に配置された、モータ415及びモータ415の駆動により回転駆動可能な第1丸刃416とを備えている。
【0035】
第1台座411は、第2台座412を駆動軸21に対して平行方向に0.01mm単位でスライド可能なサーボ制御器(図示せず)を有している。これにより、第1丸刃416のベルト40の幅方向に対する進入位置を調整することができる。第2台座412では、傾斜面412aに設けられた円弧状のレールに配置された第3台座413をスライドすることができる(なお、円弧状のレールの旋回中心は第1丸刃416の刃の先端に設定している)。これにより、第1丸刃416のベルト40に対する進入角度を調整することができる。第3台座413は、第4台座414を駆動軸21の中心方向に0.01mm単位でスライド可能なサーボ制御器413aを有している。これにより、第1丸刃416のベルト40に対する進入速度を調整することができる。
【0036】
モータ415(刃駆動部)は、固定と駆動とを切替可能とされており、駆動時には、第1丸刃416が回転駆動する。モータ415は、ベルト40の周速5m/secに対し、第1丸刃416の径φ70時に周速比1:2になるように駆動することが好ましい。また、モータ415の駆動が固定されている時は、第1丸刃416は回転せず固定された状態になる。また、第1丸刃416の回転方向は、ベルト40の走行方向と同じ方向になるように設定されている。
【0037】
右カッター部42は、第1台座421と、第1台座421上を駆動軸21に対して平行方向にスライド可能であり、駆動軸21に対して45°の傾斜面422aを有する第2台座422と、第2台座422の傾斜面422a上を円弧方向にスライド可能な第3台座423と、第3台座423上を駆動軸21の中心方向にスライド可能な第4台座424と、第4台座424上に配置された、モータ425及びモータ425の駆動により回転駆動可能な第2丸刃426とを備えている。なお、右カッター部42の各機構は、左カッター部41と同様であるため説明を省略する。
【0038】
本実施形態のバイアスカット装置20は、コンピュータ(制御部)、入力部(操作ボタン、キーボード、タッチパネル等)、記憶装置を備えており、上記の各サーボ制御器やモータ415やモータ425等は、コンピュータによってプログラム制御され、入力部からの情報の入力により駆動制御可能となっている。これにより、バイアスカット装置20では、左カッター部41の第1丸刃416及び右カッター部42の第2丸刃426に対する、ベルト40の厚み方向への移動制御、ベルト40の幅方向への移動制御、ベルト40に対する進入角度の調整制御が可能になっている。
【0039】
(Vベルト1の製造方法)
次に、バイアスカット装置20を使用してV字状のVベルト1を製造する方法について説明する。
【0040】
先ず、矩形断面のベルト40を、駆動軸21のフランジ211とフランジ212との間、及び、従動軸22のフランジ221とフランジ222との間に巻き掛ける。ここで、ベルト40は、コグ部9を外周側に向けた状態で駆動軸21と従動軸22との間に巻き掛けられる。
【0041】
その後、駆動軸21のエアシリンダを駆動すると、ベルト40の側面を駆動軸21のフランジ211とフランジ212とで挟持する。同様に、従動軸22のエアシリンダを駆動すると、ベルト40の側面を従動軸22のフランジ221とフランジ222とで挟持する。これにより、ベルト40を駆動軸21と従動軸22との間に張架することができる。また、従動軸22に連結された駆動機構(図示せず)によって、従動軸22を上下方向に移動調整させることにより、ベルト40の周長に合わせたテンション(張力)に設定することができる。
【0042】
次に、入力部によって、ベルト40の両端に形成するバイアスカット面15の傾斜角度(進入角度)やベルト40の幅方向に対する進入位置を入力する。その他、入力部からは、ベルト40の幅、厚み、周長などのベルト40に関する情報が入力される。なお、入力されたベルト40の情報は記憶装置に記憶される。また、入力部より、第1丸刃416及び第2丸刃426を固定するか回転駆動するかの選択も可能になっている。
【0043】
その後、入力部からのスタート指令により、バイアスカット装置20は、記憶装置に記憶されたベルト40の情報(バイアスカット面15の進入角度、ベルト40の幅方向に対する進入位置、ベルト40の幅・厚み・周長等)に基づき、コンピュータによってプログラム制御される。
【0044】
具体的なプログラム制御として以下の工程を実行する。まず、
図2に示すように、原動機で駆動軸21を回転駆動し、ベルト40に張力を付与しつつ走行させる。
【0045】
次に、左カッター部41に関して、各サーボ制御器により、第1丸刃416のベルト40の幅方向に対する進入位置、及び、ベルト40に対する進入角度が調整された後、モータ415により第1丸刃416が回転駆動される。そして、
図3及び
図4に示すように、サーボ制御器413aにより、第1丸刃416がベルト40の一方端(
図2の手前側)に対して駆動軸21の中心方向に所定の進入速度で進入する。これにより、ベルト40の一端側の側面を斜め(入力した進入角度)にカットして、ベルト40の一端側にバイアスカット面15を形成する。なお、本実施形態では、第1丸刃416を、
図3に示すように、駆動軸21を正面から見て、ベルト40が巻き掛けられた駆動軸21の頂点から左に45°の位置で、ベルト40に進入させている。
【0046】
同様に、右カッター部42に関して、各サーボ制御器により、第2丸刃426のベルト40の幅方向に対する進入位置、及び、ベルト40に対する進入角度が調整された後、モータ425により第2丸刃426が回転駆動される。そして、
図3及び
図4に示すように、サーボ制御器423aにより、第2丸刃426がベルト40の他端(
図2の奥側)に対して駆動軸21の中心方向に所定の進入速度で進入する。これにより、ベルト40の他端側の側面を斜め(入力した進入角度)にカットして、ベルト40の他端側にバイアスカット面15を形成する。なお、本実施形態では、第2丸刃426を、
図3に示すように、駆動軸21を正面から見て、ベルト40が巻き掛けられた駆動軸21の頂点から右に45°の位置で、ベルト40に進入させている。
【0047】
上記のように、左カッター部41及び右カッター部42は、駆動軸21に巻き掛けられたベルト40の外周側から内周側に向けてベルト幅方向の断面幅が広がるように、第1丸刃416及び第2丸刃426刃を斜め方向に作動させてバイアスカットする(
図4参照)。
【0048】
バイアスカット終了後は、ベルト40の掛け外しを阻害しない位置まで左カッター部41及び右カッター部42を退避させる。
【0049】
上記動作がプログラム制御により行われた結果、ベルト40の両端の側面が、それぞれ斜めにカットされ、
図1に示すようにベルト40の両側面にバイアスカット面15・15を形成することができる。こうして、断面V字状のVベルト1が完成する。
【0050】
(効果)
上記バイアスカット装置20によれば、ベルト40の駆動軸21に巻き掛けられた部位に対して左カッター部41の第1丸刃416、及び、右カッター部42の第2丸刃426を進入させてバイアスカットすることができる。これによれば、第1丸刃416及び第2丸刃426が進入するベルト40の部位は、駆動軸21の外周により押圧されるため第1丸刃416及び第2丸刃426の切込(進入)に対して生じるベルト厚み方向への「逃げ」を抑制することができる。また、第1丸刃416及び第2丸刃426が進入するベルト40の部位は、駆動軸21の外周に対して面接触しているため、摩擦力を高めることができ、第1丸刃416及び第2丸刃426のベルト40に対する斜めの切込(バイアスカット)に対して生じるベルト幅方向への「逃げ」も抑制することができる。
【0051】
このように、ベルト40をバイアスカットする際に、ベルト40が「逃げ」るのを抑制して強固に固定することにより、バイアスカット面15(カットライン)が内側に反ることを防止して、平滑なベルト側面を有するVベルト1を形成することができる。
【0052】
更に、平滑なバイアスカット面15を有するVベルト1を形成することができることから、Vベルト1の伝達効率を高めることができる。
【0053】
また、駆動軸21の他にベルト40を固定する固定手段を別途設ける必要がなくなり、全体として部品点数を減らすことができる。
【0054】
また、駆動軸21と従動軸22との間に、刃を備えたカッターヘッドや固定手段などの構成部品を配置していないことから、駆動軸21と従動軸22とを比較的接近させることができ、より周長の短いVベルトに対しても適用可能である。
【0055】
また、上記バイアスカット装置20によれば、フランジ211とフランジ212との間に巻き掛けられたベルト40をベルト幅方向で挟持することができる。これにより、左カッター部41の第1丸刃416、及び、右カッター部42の第2丸刃426が斜めに進入するベルト部位は、フランジ211とフランジ212との間で挟持されることから、第1丸刃416及び第2丸刃426のベルト40に対する斜めの切込みに対して生じるベルト幅方向への「逃げ」をより強固に抑制することができる。
【0056】
また、上記バイアスカット装置20によれば、駆動軸21に巻き掛けられたベルト40に対して第1丸刃416刃及び第2丸刃426を進入させすぎた場合に、キャストナイロン製のリング213・214がクッションになり、第1丸刃416刃及び第2丸刃426と駆動軸21とが直接接触することを防止し、第1丸刃416刃及び第2丸刃426と駆動軸21が損傷することを防止することができる。
【0057】
また、もし、駆動軸21に巻き掛けられたベルト40の外周側から内周側に向けてベルト幅方向の断面幅が狭まるようにカットした場合、ベルト40の内周側が駆動軸21の外周に対して面接触している接触面積が小さくなるため、摩擦力が低くなり、第1丸刃416刃及び第2丸刃426の斜めの切込みに対して生じるベルト幅方向への「逃げ」に対する防止機能が低下するおそれがある。しかし、上記バイアスカット装置20のように、駆動軸21に巻き掛けられたベルト40の外周側から内周側に向けてベルト幅方向の断面幅が広がるようにカットした場合(
図4参照)、ベルト40の内周側が駆動軸21の外周に対して面接触している接触面積は変わらないため、摩擦力は維持され、第1丸刃416刃及び第2丸刃426の斜めの切込みに対して生じるベルト幅方向への「逃げ」に対する防止機能も維持することができる。
【0058】
また、上記バイアスカット装置20によれば、駆動軸21と従動軸22との間を周動するベルト40をバイアスカットする際に、第1丸刃416刃及び第2丸刃426を回転させつつバイアスカットすることができる。これによれば、第1丸刃416刃及び第2丸刃426を固定した構成に比べて、第1丸刃416刃及び第2丸刃426の摩耗を抑制し、第1丸刃416刃及び第2丸刃426の寿命を向上させることができる。
【0059】
(その他の実施形態)
以上に本発明の好適な実施形態を示したが、上記の実施形態は更に以下のように変更することができる。
【0060】
上記実施形態では、バイアスカット装置20は、駆動軸21と従動軸22の2本の軸を備えた構成としたが、これに限らず、例えば3本以上配置しても良い。
【0061】
また、上記実施形態では、駆動軸21に巻き掛けられたベルト40に対して第1丸刃416及び第2丸刃426を進入させてバイアスカットをしているが、従動軸22に巻き掛けられたベルト40に対して第1丸刃416及び第2丸刃426を進入させてバイアスカットする構成にしてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、第1丸刃416及び第2丸刃426が丸刃で回転駆動する場合について説明したが、第1丸刃416及び第2丸刃426を回転させず、固定した状態で、駆動軸21と従動軸22との間を周動するベルト40に進入させ、バイアスカットしてもよい。また、左カッター部41及び右カッター部42に刃を完全に固定させる場合は、丸刃に限らず、矩形状の刃や楕円形状の刃などその刃形状を問わず採用することができる。
【0063】
また、上記実施形態に係るバイアスカット装置20では、
図2に示すように、駆動軸21を上側、従動軸22を下側に配置し、ベルト40を上下方向に巻き掛ける構成をしているが、駆動軸21と従動軸22とを水平方向に配置し、ベルト40を水平方向に巻き掛ける構成にしてもよい。
【0064】
具体的には、
図10に示すように、駆動軸21の中心軸及び従動軸22の中心軸が水平方向に対して垂直になるように配置し、ベルト40の両側面が上下方向を向くように、ベルト40を駆動軸21と従動軸22との間に巻き掛ける。
【0065】
また、
図11に示すように、駆動軸21の中心軸及び従動軸22の中心軸が水平方向になるように配置し、ベルト40の内周側が上下方向を向くように、ベルト40を駆動軸21と従動軸22との間に巻き掛ける。
【0066】
本実施形態のように、駆動軸21を上側、従動軸22を下側に配置し、ベルト40を上下方向に巻き掛ける構成のバイアスカット装置20(
図2参照)では、幅(水平方向)を取らないため設置スペースを最小限にすることができる利点がある。もっとも、設置スペース(工場等の天井など)との関係で、駆動軸21と従動軸22との間の距離(上下方向の距離)について制限が生じる場合がある。即ち、駆動軸21と従動軸22との間に巻き掛けるベルト40の周長に制限が生じることになる。
【0067】
一方、駆動軸21と従動軸22とを水平方向に配置し、ベルト40を水平方向に巻き掛ける構成にした場合(
図10、
図11参照)、工場等では水平方向の設置スペースの確保は上下方向のスペースの確保に比べて容易であるため、水平方向の設置スペースを確保することができれば、駆動軸21と従動軸22との間の距離(水平方向の距離)を比較的大きく設定することが可能となる。これにより、駆動軸21と従動軸22との間に巻き掛けるベルト40を比較的長いものにすることができる(長尺のベルトに最適)。
【実施例】
【0068】
(比較実験)
先行技術文献で挙げた従来の装置でバイアスカットしたVベルト、及び、本願のバイアスカット装置20でバイアスカットしたVベルトに対して、Vベルトの「断面形状」及び「伝達効率」に関する比較実験を行った。
【0069】
図5に示すように、従来の装置は、駆動軸と従動軸との間にベルトを巻き掛けて、駆動軸及び従動軸に巻き掛かっていない位置(駆動軸と従動軸との間の位置)でベルトを2枚の刃物を備えたカッターヘッドにより、側面をV状にバイアスカット(Vカット)する方式の装置である。この従来の装置は、駆動軸と従動軸との間で固定されずフリーな状態のベルトを安定させるため、ベルト背面を押圧する押さえロールや、ベルトの側面を挟持するガイドロールなどのベルト固定手段を備えている。一方、本発明に係る装置は、上述したバイアスカット装置20である。
【0070】
図5に示すように、従来の装置におけるバイアスカット条件としては、ベルト周速3.5m/s、刃物周速(ベルト周速:刃物周速)3.9m/s(1:1.1)、切込速度(進入速度)0.5mm/周、切込角度(進入角度)32°とした。本発明のバイアスカット装置20におけるバイアスカット条件としては、ベルト周速3.5m/s、刃物周速(ベルト周速:刃物周速)4.2m/s(1:1.2)、切込速度(進入速度)0.2mm/周、切込角度(進入角度)32°とした。
【0071】
(断面形状の比較)
上記バイアスカット条件で、従来の装置と本発明のバイアスカット装置20とでバイアスカットしたベルトの断面形状を比較した。ここで、比較の指標として、ベルトの側面平滑度を測定する。ベルトの側面平滑度とは、
図6に示すように、ベルト断面視で、ベルトの角同士を結んだ線Xから、線Xをベルト側面の凹凸の最も大きい箇所まで平行移動させた線Yまでの距離である。そして、判定基準としては、ベルトの左側面(A面)及び右側面(B面)の側面平滑度が共に0.1mm以下であるものを「○」(良好)とした。
【0072】
測定の結果、
図7に示すように、従来の装置では、ベルトの左側面(A面)の側面平滑度が0.20mmであり、ベルトの右側面(B面)の側面平滑度が0.15mmであり、判定基準の0.1mmを超え判定としては「×」(良好ではない)であった。一方、本発明のバイアスカット装置20では、ベルトの左側面(A面)の側面平滑度が0.08mmであり、ベルトの右側面(B面)の側面平滑度が0.07mmであり、判定基準の0.1mm以下で判定としては「○」(良好)であった。
【0073】
(伝達効率の比較)
上記バイアスカット条件で、従来の装置と本発明のバイアスカット装置20とでバイアスカットしたベルトに対して高負荷走行試験を行い、伝達効率を比較した。ここで、伝達効率とは、ベルトが駆動軸からの回転トルクを従動軸に伝える指標であり、この伝達効率が高いほどベルトの伝動ロスが小さく、省燃費性に優れることを意味する。
図8に示す駆動(Dr.)プーリ及び従動(Dn.)プーリの二つのプーリにベルトを掛架した二軸レイアウトにおいて、伝達効率は以下のようにして求めることができる。
【0074】
駆動プーリの回転数をρ
1、プーリ半径をr
1としたとき、駆動プーリの回転トルクT
1は、ρ
1×Te×r
1で表すことができる。Teは張り側張力(ベルトが駆動プーリに向かう側の張力)から緩み側張力(ベルトが従動プーリに向かう側の張力)を差し引いた有効張力である。同様に、従動プーリの回転数をρ
2、プーリ半径をr
2としたとき、従動プーリの回転トルクT
2は、ρ
2×Te×r
2で示される。そして、伝達効率T
2/T
1は、従動プーリの回転トルクT
2を駆動プーリの回転トルクT
1で除して算出され、次式で表すことができる。
【0075】
T
2/T
1=(ρ
2×Te×r
2)/(ρ
1×Te×r
1)×100
=(ρ
2×r
2)/(ρ
1×r
1)×100
なお、実際は伝達効率が100%以上の値になることはないが、100%に近いほどベルトの伝動ロスが小さく、省燃費性に優れていることを表す。
【0076】
本実施例の高負荷走行試験では、
図8に示すように、直径50mmの駆動(Dr.)プーリと、直径125mmの従動(Dn.)プーリとからなる2軸走行試験機を用いて行った。駆動プーリと従動プーリとの間にベルトを掛架し、駆動プーリの回転数3000rpm、4000rpm、5000rpmで、従動プーリに2N・mの負荷を付与し、室温雰囲気下にてベルトを走行させた。そして、走行させて直ちに従動プーリの回転数を検出器より読み取り、伝達効率を求めた。
【0077】
高負荷走行試験の結果を
図9に示す。駆動プーリの回転数が3000rpmの場合、従来の装置でバイアスカットしたVベルトの伝達効率は83.4%であったの対して、本発明のバイアスカット装置20でバイアスカットしたVベルトの伝達効率は87.4%であった。また、駆動プーリの回転数が4000rpmの場合、従来の装置でバイアスカットしたVベルトの伝達効率は83.6%であったの対して、本発明のバイアスカット装置20でバイアスカットしたVベルトの伝達効率は87.6%であった。また、駆動プーリの回転数が5000rpmの場合、従来の装置でバイアスカットしたVベルトの伝達効率は83.0%であったの対して、本発明のバイアスカット装置20でバイアスカットしたVベルトの伝達効率は87.0%であった。このように、駆動プーリの回転数3000rpm、4000rpm、5000rpmのすべてで、本発明のバイアスカット装置20でバイアスカットしたVベルトの方が、従来の装置でバイアスカットしたVベルトよりも伝達効率が約4%高くなった。
【0078】
上記のように、従来の装置でバイアスカットしたVベルト、及び、本願のバイアスカット装置20でバイアスカットしたVベルトに対する、「断面形状」及び「伝達効率」に関する比較実験の結果、本願のバイアスカット装置20でバイアスカットしたVベルトの方が、従来の装置でバイアスカットしたVベルトよりも、バイアスカット後のベルト側面(カットライン)が内側に反ることなく直線状になり、平滑なベルト側面を有しており、ベルトの伝達効率が高くなっていることが分かる。