(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、厚さ測定装置100のブロック図である。
【0012】
厚さ測定装置100は、測定対象物9に発生する渦電流を検出するセンサ装置10と、検出された渦電流の過渡変化に基づいて測定対象物9の厚さを求める演算装置40とを備えている。厚さ測定装置100は、パルス渦電流探傷(PEC:Pulsed Eddy Current)によって測定対象物9の厚さを測定する。測定対象物9は、例えば、金属配管である。
【0013】
センサ装置10は、励磁電流による磁束で測定対象物9に渦電流を発生させるコイル11と、コイル11に励磁電流を印加する励磁部2と、測定対象物9の渦電流の過渡変化を検出する検出部3と、外部機器と通信を行う通信部12と、各種情報を記憶する記憶部13と、少なくとも励磁部2、検出部3、通信部12及び記憶部13を制御する制御部14と、少なくとも励磁部2、検出部3、通信部12、記憶部13及び制御部14に電力を供給する電源15とを有している。
【0014】
コイル11は、測定対象物9に近接して配置される。コイル11は、変動磁場を発生させることによって測定対象物9に渦電流を発生させる。例えば、コイル11は、断熱性を有するスペーサを介して測定対象物9に設置される。
【0015】
励磁部2は、パルス状の励磁電流をコイル11に供給する。励磁部2は、パルス信号を発生するパルス発生器21と、パルス発生器21からのパルス信号を増幅して、励磁電流として出力する送信アンプ22とを有している。送信アンプ22は、励磁電流の(最大)電流値を変更可能に構成されている。
【0016】
検出部3は、測定対象物9の渦電流に応じてコイル11に発生する誘導起電力を検出する。コイル11に発生する誘導起電力の過渡変化は、測定対象物9に発生する渦電流の過渡変化と関連している。検出部3は、コイル11に発生する電圧を増幅する受信アンプ31を少なくとも有している。検出部3は、電圧信号にフィルタ処理を施すフィルタをさらに有していてもよい。
【0017】
通信部12は、外部機器と無線通信を行う。例えば、通信部12は、検出部3によって検出された電圧信号を演算装置40に送信する。
【0018】
制御部14は、プロセッサで形成されている。例えば、制御部14は、励磁部2に所定期間だけ励磁電流を出力させる一方、励磁電流の出力停止後に検出部3による検出信号を取得する。制御部14は、取得した検出信号を記憶部13に記憶させ、記憶部13に記憶された検出信号を所定のタイミングで通信部12を介して演算装置40に送信する。
【0019】
電源15は、例えば、電池である。電池は、一次電池あっても、二次電池であってもよい。尚、電源15は、商用電源であってもよい。
【0020】
演算装置40は、コンピュータ又はコンピュータネットワーク(クラウド)で形成されている。演算装置40は、外部機器と通信を行う通信部41と、各種情報を記憶する記憶部42と、検出された渦電流の過渡変化に基づいて測定対象物9の厚さを求める演算部43とを有している。
【0021】
通信部41は、外部機器と無線通信を行う。例えば、通信部41は、センサ装置10からの電圧信号を受信する。
【0022】
記憶部42は、センサ装置10からの電圧信号、及び、測定対象物9の厚さを演算するために必要な情報等を記憶している。
【0023】
演算部43は、プロセッサで形成されている。演算部43は、センサ装置10からの電圧信号(具体的には、電圧信号の過渡変化)に基づいて測定対象物9の厚さを演算する。
【0024】
続いて、厚さ測定装置100による厚さ測定処理について説明する。厚さ測定処理は、センサ装置10による処理と演算装置40による処理とで構成される。
図2は、センサ装置10の厚さ測定処理のフローチャートである。
図3は、演算装置40の厚さ測定処理のフローチャートである。
【0025】
まず、センサ装置10の厚さ測定処理について説明する。制御部14は、ステップSa1において、励磁部2に励磁電流をコイル11へ出力させる際の最大電流値を所定の値に設定する。測定対象物9の厚さに対して最大電流値が小さすぎると、測定対象物9に発生する渦電流の過渡変化が適切に取得できず、測定対象物9の厚さ測定が困難となり得る。一方、測定対象物9の厚さに対して最大電流値が大きすぎると、消費電力が不要に増大してしまう。ステップSa1の処理は、厚さ測定処理を開始直後に行われる。通常、厚さ測定処理の開始時には、測定対象物9の初期厚さは既知であるので、最大電流値は、初期厚さに対応する値に設定される。例えば、制御部14は、ユーザからの入力を受けて、最大電流値を設定する。
【0026】
続いて、制御部14は、ステップSa2において、測定タイミングか否かを判定する。例えば、測定タイミングは、所定の周期(例えば、1時間ごと)の到来、又は所定のイベント(例えば、再始動)の発生である。測定タイミングでない場合には、制御部14は、ステップSa2を繰り返し、測定タイミングとなるまで待機する。
【0027】
測定タイミングの場合には、制御部14は、ステップSa3において、励磁部2に励磁電流をコイル11へ出力させる。このときの励磁電流の最大電流値は、ステップSa1で設定された値である。
【0028】
その後、制御部14は、ステップSa4において、励磁電流の出力を停止させ、測定対象物9に発生する渦電流を検出部3に検出させる。具体的には、検出部3は、コイル11に発生する誘導起電力に対応する電圧信号を検出する。制御部14は、検出部3を介して電圧信号の検出を所定期間継続し、検出された電気信号を記憶部13に記憶していく。これにより、制御部14は、コイル11の誘電起電力の過渡変化、即ち、測定対象物9に発生する渦電流の過渡変化を取得する。
【0029】
次に、制御部14は、ステップSa5において、記憶部13に記憶された電圧信号を演算部43へ通信部12を介して送信する。ステップSa5が完了すると、制御部14は、測定対象物9の渦電流の過渡変化の取得に関する一通りの処理を終了し、ステップSa2の処理へ戻る。このとき、制御部14は、演算装置40から変更通知があったか否かを確認する(ステップSa6)。変更通知及び変更通知があった場合の処理については後述する。変更通知が無い場合には、制御部14は、ステップSa2の処理へ戻る。
【0030】
こうして、制御部14は、測定タイミングが到来する度に、コイル11の励磁及び測定対象物9の渦電流の過渡変化の取得を行う。
【0031】
図4は、電圧信号V(t)の時間変化を示すグラフである。
図4において、電圧信号Vr(t)は、厚さdrを有する測定対象物9の電圧信号であり、電圧信号V1(t)は、厚さdrよりも薄い厚みd1を有する測定対象物9の電圧信号である。尚、コイル11に印加した励磁電流の最大電流値は、電圧信号Vr(t)と電圧信号V1(t)とで同じである。以下、電圧信号V(t)の過渡変化について説明する。
【0032】
渦電流は、測定対象物9に浸透していくのに従って減衰していく。渦電流は、測定対象物9の表面(コイル11が対向している面)から裏面に到達するまでの間は徐々に減衰し、裏面に到達すると急激に減衰する。電圧信号V(t)も渦電流と同様の変化を示す。つまり、電圧信号V(t)の過渡変化は、渦電流の過渡変化に相当する。渦電流が測定対象物9の裏面に達するまでの間の電圧信号V(t)の変化は、両対数グラフ上では直線的(線形的)に表される。その後、電圧信号V(t)は、急激に減衰していく。このように変化する電圧信号V(t)は、以下の式(1)のように表され
【0033】
【数1】
ここで、Aは、受信アンプ31の増幅率である。nは、電圧信号V(t)の減衰に程度に関連する定数であり、−nは、両対数グラフにおける電圧信号V(t)の傾きを表す。
【0034】
式(1)からもわかるように、電圧信号V(t)の変化態様は、時間τにおいて切り替わる。以下、説明の便宜上、τを「減衰時間」と称する。減衰時間τは、以下の式(2)で表わされる。
【0035】
τ=σμd
2 ・・・(2)
ここで、σは、測定対象物9の導電率であり、μは、測定対象物9の透磁率であり、dは、測定対象物9の厚さである。
【0036】
つまり、測定対象物9の厚さdが変化すると、減衰時間τが変化する。この場合、測定対象物9の導電率σ及び透磁率μは一定なので、減衰時間τは、測定対象物9の厚さdのみに依存して変化する。
【0037】
例えば、
図4の電圧信号Vr(t),V1(t)を比較すると、厚さdrの測定対象物9の電圧信号Vr(t)の変化態様は、減衰時間τrで切り替わる。測定対象物9の厚さdがdrからd1に減少すると、減衰時間τは、τrからτ1に減少する。尚、電圧信号V(t)のうち両対数グラフで直線状の部分の変化態様は、式(1)からわかるように厚さdに依存しないので、電圧信号Vr(t),V1(t)で実質的に同じである。
【0038】
測定対象物9の厚さdr及び減衰時間τrと、厚さdが変化した後の減衰時間τ1とがわかれば、変化後の厚さd1を以下の式(3)に基づいて求めることができ
【0039】
【数2】
ただし、電圧信号V(t)のグラフから減衰時間τを正確に求めることは難しい。そこで、減衰時間τに近似した減衰時間τ’が代わりに用いられる。
【0040】
詳しくは、厚さdrが既知である電圧信号Vr(t)の、両対数グラフ上での直線部分(厳密には、直線に近い部分)の近似直線(以下、「第1近似直線L1」という)が求められる。そして、第1近似直線L1の電圧値を0.7倍した直線(以下、「第2近似直線L2」という)が設定される。第2近似直線L2は、両対数グラフ上で第1近似直線L1を下方に平行移動した直線であり、減衰時間τrの直後において電圧信号Vr(t)と必ず交わる。第2近似直線L2と電圧信号Vr(t)との交点の時間が減衰時間τr’である。減衰時間τrを正確に判別することは難しいが、第2近似直線L2と電圧信号Vr(t)との交点は明確である。減衰時間τr’は、減衰時間τrよりも少し遅い時間となる。
図4では、説明の便宜上、減衰時間τr’と減衰時間τrとの差を大きく図示しているが、実際にはその差はわずかである。
【0041】
次に、両対数グラフにおける直線部分の変化態様は、電圧信号Vr(t)と電圧信号V1(t)とで実質的に同じであるので、減衰時間τ1’を求める際も、電圧信号Vr(t)から求めた第2近似直線L2が用いられる。第2近似直線L2と電圧信号V1(t)との交点の時間が減衰時間τ1’とされる。減衰時間τ1’は、減衰時間τ1よりも少し遅い時間となるが、両者の差はわずかである。
【0042】
これら減衰時間τr’,τ1’と厚さdrを式(3)に代入することによって、変化後の厚さd1が求められる。
【0043】
ここで、既知の厚さdを「基準厚さdr」と称し、基準厚さdrに対応する減衰時間τ’を「基準減衰時間τr’」と称する。また、基準厚さdrに対応する電圧信号V(t)を、「基準電圧信号Vr(t)」と称する。変化した厚さdを、「厚さdm」と表わす。mは自然数であり、測定の順番を表わす。また、それぞれの厚さdmに対応する電圧信号V(t)、減衰時間τ’にも厚さdmと同様の添え字を付して表わす。
【0044】
以下、演算装置40の厚さ測定処理について説明する。
【0045】
演算装置40は、基準厚さdrの測定対象物9に対して所定の大きさの励磁電流がコイル11に印加された場合の基準電圧信号Vr(t)の過渡変化を基準過渡変化とし、基準過渡変化のときと同じ大きさの励磁電流がコイル11に印加された場合の電圧信号Vm(t)の過渡変化を基準電圧信号Vr(t)の過渡変化と比較することによって、測定対象物9の厚さdmを求める。具体的には、演算装置40は、基準電圧信号Vr(t)から第2近似直線L2を求め、第2近似直線L2を用いて基準厚さdrに対応する基準減衰時間τr’を求める。その後、第2近似直線L2を用いて、厚さdmの電圧信号Vm(t)から厚さdmに対応する減衰時間τm’を求める。基準厚さdr、基準減衰時間τr’及び減衰時間τm’から、式(3)を用いて、変化後の厚さdmが求められる。
【0046】
演算装置40の厚さ測定処理を
図3のフローチャートを用いてさらに詳細に説明する。
【0047】
演算装置40には、初期設定として、測定対象物9の初期厚さが基準厚さdrとして設定されている。
【0048】
演算部43は、ステップSb1において、前述の電圧信号Vm(t)をセンサ装置10から受信したか否かを判定する。電圧信号Vm(t)を受信していない場合には、演算部43は、ステップSb1を繰り返し、電圧信号Vm(t)を受信するまで待機する。
【0049】
電圧信号Vm(t)を受信した場合には、演算部43は、ステップSb2において、基準減衰時間τr’が設定されているか否かを判定する。基準減衰時間τr’が設定されていない場合には、演算部43は、そのときに受信した電圧信号Vm(t)を基準電圧信号Vr(t)とし、基準電圧信号Vr(t)から基準減衰時間τr’を前述の方法で求める(ステップSb3)。演算部43は、基準減衰時間τr’を求めた後は、ステップSb1に戻って、次の電圧信号Vm(t)の受信を待機する。その後、演算部43が次の電圧信号Vm(t)を受信した場合には、基準減衰時間τr’が既に設定されているので、演算部43は、ステップSb4へ進む。
【0050】
ステップSb4では、演算部43は、受信した電圧信号Vm(t)から減衰時間τm’を求める。続いて、ステップSb5において、演算部43は、求めた減衰時間τm’と基準減衰時間τr’と基準厚さdrとから、式(3)を用いて厚さdmを求める。その後、演算部43は、ステップSb6において、厚さdmが判定閾値α以上か否かを判定する。厚さdmが判定閾値α以上である場合には、演算部43は、ステップSb1に戻って、次の電圧信号Vm(t)の受信を待機する。
【0051】
減衰時間τ’を適切に測定するためには、渦電流が測定対象物9の裏面に到達するように十分な大きさの励磁電流が必要である。逆の見方をすれば、測定対象物9の厚さdが薄い場合には、励磁電流が小さくてもよい。判定閾値αは、励磁電流を小さく切り替えてもよい測定対象物9の厚さに設定されている。つまり、厚さdmが判定閾値α以上である場合には、励磁電流の大きさを維持して厚さdmの算出が繰り返される。
【0052】
一方、厚さdmが判定閾値α未満の場合には、演算部43は、ステップSb7において、測定対象物9の渦電流の過渡変化を取得する際の励磁電流の最大電流値を低減すると共に、最大電流値を変更する旨をセンサ装置10に通知する(この通知が前述の「変更通知」である)。それに加えて、演算部43は、基準減衰時間τr’を消去すると共に(ステップSb8)、判定閾値αを変更する(ステップSb9)。つまり、励磁電流の最大電流値が低減されるので、低減後の励磁電流で基準減衰時間τr’を取得し直すために基準減衰時間τr’が消去される。また、励磁電流が低減されることに伴い、励磁電流をさらに低減するか否かを判定するために用いる判定閾値αもより小さい値に変更される。さらに、演算部43は、このときの測定対象物9の厚さdmを基準厚さdrとして再設定する(ステップSb10)。
【0053】
その後、演算部43は、ステップSb1に戻って、次の電圧信号Vm(t)の受信を待機する。
【0054】
一方、センサ装置10が変更通知を受信すると、
図2に示すように、制御部14は、ステップSa6において変更通知があったと判定し、ステップSa7において励磁電流の最大電流値を低減する。その後、制御部14は、ステップSa3へ進む。つまり、制御部14は、低減後の励磁電流に対応する新たな基準電圧信号Vr(t)を取得するために、測定タイミングか否かにかかわらず、励磁部2に励磁電流をコイル11へ出力させ、コイル11に発生する誘導起電力に対応する電圧信号Vm(t)を検出部3に検出させる。制御部14は、検出した新たな電圧信号Vm(t)を演算装置40へ送信する(ステップSa5)。その後は、制御部14は、測定タイミングが到来する度にコイル11の励磁及び電圧信号Vm(t)の検出を繰り返す。このときの励磁電流の最大電流値は、ステップSa7で設定された値である。
【0055】
この電圧信号Vm(t)が演算装置40に受信されると、演算部43は、ステップSb1を経て、ステップSb2へ進む。先のステップSb8において基準減衰時間τr’が消去されているので、演算部43は、このステップSb2では基準減衰時間τr’が設定されていないと判定する。演算部43は、新たに受信した電圧信号Vm(t)を新たな基準電圧信号Vr(t)に設定し直し、新たな基準電圧信号Vr(t)に基づいて、第2近似直線L2、さらには、基準減衰時間τr’を設定し直す。そして、センサ装置10による低減後の励磁電流を用いた電圧信号Vm(t)の測定、並びに、演算装置40による新たな基準厚さdr、第2近似直線L2及び基準減衰時間τr’を用いた厚さdmの算出が繰り返される。厚さdmが新たな判定閾値αを下回ると、励磁電流の最大電流値がさらに低減される。
【0056】
こうして継続される厚さ測定における電圧信号Vm(t)の変化を
図5を用いて説明する。
【0057】
まず、最初の基準電圧信号Vr(t)に基づいて第1近似直線L1aが求められ、第1近似直線L1aから第2近似直線L2aが設定される。そして、基準電圧信号Vr(t)と第2近似直線L2aとから基準減衰時間τr’が求められる。その後、電圧信号V1(t)が測定されると、電圧信号V1(t)と第2近似直線L2aとから減衰時間τ1’が求められる。そして、基準厚さdr、基準減衰時間τr’及び減衰時間τ1’から、電圧信号V1(t)に対応する厚さd1が求められる。厚さd1が判定閾値α以上の場合には、測定がそのまま継続される。さらに、電圧信号V2(t)が測定されると、電圧信号V2(t)と第2近似直線L2aとから減衰時間τ2’が求められる。そして、基準厚さdr、基準減衰時間τr’及び減衰時間τ2’から、電圧信号V2(t)に対応する厚さd2が求められる。
【0058】
厚さd2が判定閾値α未満である場合には、励磁電流の最大電流値が低減され、低減後の励磁電流で電圧信号V2(t)が取得し直される。このとき、厚さd2が基準厚さdrとして再設定され、取得し直された電圧信号V2(t)が基準電圧信号Vr(t)として再設定される。そして、新たな基準電圧信号Vr(t)に基づいて、第1近似直線L1b及び第2近似直線L2bが再設定され、新たな基準電圧信号Vr(t)と新たな第2近似直線L2bとから新たな減衰時間τ2’が求められる。この新たな減衰時間τ2’が新たな基準減衰時間τr’として再設定される。その後、低減された電磁電流で電圧信号Vm(t)の測定が継続される。
【0059】
その後、電圧信号V3(t)が測定されると、電圧信号V3(t)と第2近似直線L2bとから減衰時間τ3’が求められる。そして、基準厚さdr、基準減衰時間τr’及び減衰時間τ3’から、電圧信号V3(t)に対応する厚さd3が求められる。
【0060】
こうして、厚さdmが減少するに従って励磁電流の最大電流値が低減され、測定対象物9の厚さ測定が継続されていく。その結果、励磁電流が低減されるので、消費電力を低減することができる。特に、電源15が電池の場合には、消費電力の低減は非常に有効である。
【0061】
以上のように、厚さ測定装置100は、励磁電流による磁束で測定対象物9に渦電流を発生させるコイル11と、コイル11に励磁電流を印加する励磁部2と、測定対象物9の渦電流の過渡変化を検出する検出部3と、検出部3によって検出された渦電流の過渡変化に基づいて測定対象物9の厚さを求める演算部43とを備え、励磁部2は、演算部43によって求められた測定対象物9の厚さに基づいてコイル11に印加する励磁電流の大きさを変更する。
【0062】
換言すると、厚さ測定装置100による厚さ測定方法は、コイル11に励磁電流を印加して磁束を発生させることによって、測定対象物9に渦電流を発生させる励磁工程と、測定対象物9の渦電流の過渡変化を検出する検出工程と、検出工程によって検出された渦電流の過渡変化に基づいて測定対象物9の厚さを求める演算工程とを含み、励磁工程では、演算工程によって求められた測定対象物9の厚さに基づいてコイル11に印加する励磁電流の大きさを変更する。ステップSa1,Sa3,Sa7,Sb6,Sb7が励磁工程の一例である。ステップSa4が検出工程の一例である。ステップSb3,Sb4,Sb5が演算工程の一例である。
【0063】
この構成によれば、コイル11に印加する励磁電流が測定対象物9の厚さに応じて変更される。測定対象物9の渦電流の過渡変化に基づいて測定対象物9の厚さを求めるためには、励磁電流に或る程度の大きさが必要である。一方、測定対象物9の厚さが薄い場合には、励磁電流が小さくても、測定対象物9の厚さを求めることができる。つまり、測定対象物9の厚さに応じて励磁電流を変更することによって、厚さ測定における消費電力を低減することができる。
【0064】
演算部43は、基準厚さdrの測定対象物9に対して所定の大きさの励磁電流がコイル11に印加された場合の基準電圧信号Vr(t)(渦電流)の過渡変化を基準過渡変化とし、基準過渡変化のときと同じ大きさの励磁電流がコイル11に印加された場合の電圧信号Vm(t)の過渡変化を基準電圧信号Vr(t)の過渡変化と比較することによって、測定対象物9の厚さdmを求める。
【0065】
この構成によれば、既知の基準厚さdrの測定対象物9の基準電圧信号Vr(t)が基準となって、測定対象物9の厚さdmが求められる。つまり、電圧信号Vm(t)の過渡変化は厚さdmと相関があるので、厚さdrが既知の基準電圧信号Vr(t)の過渡変化と厚さdmが未知の電圧信号Vm(t)の過渡変化とを比較することによって、未知の厚さdmを求めることができる。
【0066】
演算部43は、コイル11に印加する励磁電流の大きさが変更された場合には、変更時における測定対象物9の厚さdmを基準厚さdrとして再設定すると共に、大きさが変更された励磁電流がコイル11に印加された場合の電圧信号Vm(t)の過渡変化を基準過渡変化として再設定する。
【0067】
この構成によれば、コイル11に印加する励磁電流の大きさが変更された場合には、変更時の測定対象物9の厚さdmと電圧信号Vm(t)の過渡変化とが基準として再設定され、これらを基準として、それ以降の厚さdmが求められる。
【0068】
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0069】
前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0070】
例えば、厚さ測定装置100による厚さ測定は、一例に過ぎない。PECによる厚さ測定方法は、様々である。PECによる厚さ測定では、コイルに励磁電流が供給される。この励磁電流を測定対象物9の厚さに応じて変更する限り、任意の測定方法を採用することができる。
【0071】
また、厚さ測定装置100の構成も一例に過ぎない。センサ装置10と演算装置40は、一体的に構成されていてもよい。また、センサ装置10のコイル11、励磁部2及び検出部3を別筐体に収容して分離してもよい。さらに、コイル11だけを別筐体に収容して分離してもよい。
【0072】
第1近似直線L1及び第2近似直線L2の設定、並びに、減衰時間τ’の算出は、演算部43が全部を自動で行ってもよいし、ユーザが一部をサポートしてもよい。例えば、第1近似直線L1の設定をユーザが行い、第2近似直線L2の設定及び減衰時間τ’の算出を演算部43が行ってもよい。