(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記評価値算出手段は、前記複数の単位時間経路の各々について、当該単位時間経路の先端の地点での前記捕捉対象の存在確率と、当該単位時間経路の先端の地点から前記目的地までの残距離と、当該単位時間経路を移動したときの前記移動体の燃料消費量とに基づいて、前記評価値を算出することを特徴とする請求項4又は5に記載の巡回経路設定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば捕捉対象を探知するセンサが画像センサであったり巡回領域が広大であったりした場合、その区域の付近まで移動しなければ当該区域における捕捉対象の存在を確認することができない。
このような場合には、上記特許文献1に記載のような捕捉対象の出現頻度(存在確率)分布を、好適に生成し、かつ利用することが困難になる。
【0006】
すなわち、効率的な巡回を行うためには、高精度な存在確率分布を利用し、捕捉対象の存在確率が高い地点を重点的に巡回することが求められる。他方、高精度な存在確率分布を生成するためには、その存在確率の高低に関わらず巡回領域全体を巡回する必要がある。
つまり、存在確率分布の生成と利用とは、従来のように単純にこれを行おうとしたのでは、互いに相反してしまい、効率的な巡回を実現させることができない。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、捕捉対象の存在確率分布の生成とその利用とを両立させ、効率的な巡回を実現させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本願の第1の発明は、所定の巡回領域内を巡回して捕捉対象を捉える移動体の移動経路を設定する巡回経路設定装置であって、
前記巡回領域を含む地図情報を水平面内で複数のセルに分割するセル分割手段と、
前記複数のセルの各々に対し、当該セルにおける前記捕捉対象の存在確率の確率分布を設定する確率分布設定手段と、
乱数を生成する乱数生成手段と、
前記複数のセルに設定された前記確率分布に基づいて、当該複数のセルのうち、前記乱数生成手段に生成された乱数に対応する前記存在確率が最大となるセルを目的地に設定する目的地設定手段と、
前記移動体の現在地から前記目的地までの移動経路を設定する経路設定手段と、
前記移動体に搭載され、当該移動体周辺における前記捕捉対象の存否情報を取得する情報取得手段と、
前記経路設定手段により設定された移動経路に沿って前記移動体が移動しているときに前記情報取得手段が取得した前記捕捉対象の存否情報に基づいて、前記セルに設定された前記捕捉対象の存在確率の確率分布を更新する確率分布更新手段と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、
前記確率分布設定手段は、前記複数のセルの各々に対し、前記確率分布として、当該セルにおける前記捕捉対象の存在確率を確率変数とする確率密度関数を設定し、
前記目的地設定手段は、前記複数のセルのうち、当該セルの確率密度関数を積分した累積分布関数の逆関数において、前記乱数生成手段に生成された乱数に対応する前記存在確率が最大となるセルを、目的地に設定することを特徴とする。
【0010】
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明において、
前記目的地設定手段による、前記捕捉対象の存在確率の確率分布に基づく前記目的地の設定と、
前記経路設定手段による当該目的地までの移動経路の設定と、
当該移動経路に沿った前記移動体の移動中における、前記情報取得手段による前記捕捉対象の存否情報の取得と、
前記確率分布更新手段による、当該取得された前記捕捉対象の存否情報に基づく前記捕捉対象の存在確率の確率分布の更新と、
をこの順に繰り返すことを特徴とする。
【0011】
第4の発明は、第1の発明〜第3の発明のいずれか一の発明において、
前記経路設定手段は、
前記移動体の現在地を始点とする単位時間当たりの複数の単位時間経路を設定する単位経路設定手段と、
前記複数の単位時間経路の各々について、巡回経路としての適性に関する評価値を算出する評価値算出手段と、
前記複数の単位時間経路のうち、前記評価値が最も高い一の単位時間経路を選択し、当該一の単位時間経路の先端に前記現在地を移動させる経路選択手段と、
を有し、
前記単位経路設定手段による前記複数の単位時間経路の設定と、前記評価値算出手段による前記評価値の算出と、前記経路選択手段による前記一の単位時間経路の選択及び前記現在地の移動とを、当該現在地が前記目的地に到達するまでこの順に繰り返すことを特徴とする。
【0012】
第5の発明は、第4の発明において、
前記単位経路設定手段は、前記移動体の移動性能に基づいて前記複数の単位時間経路を設定することを特徴とする。
【0013】
第6の発明は、第4の発明又は第5の発明において、
前記評価値算出手段は、前記複数の単位時間経路の各々について、当該単位時間経路の先端の地点での前記捕捉対象の存在確率と、当該単位時間経路の先端の地点から前記目的地までの残距離と、当該単位時間経路を移動したときの前記移動体の燃料消費量とに基づいて、前記評価値を算出することを特徴とする。
【0014】
第7の発明は、第1の発明〜第6の発明のいずれか一の発明において、
前記移動体が航空機であることを特徴とする。
【0015】
第8の発明及び第9の発明は、第1の発明の巡回経路設定装置と同様の特徴を具備する巡回経路設定方法及び巡回経路設定プログラムである。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明によれば、捕捉対象の存在確率の確率分布に基づく目的地設定により、捕捉対象の存在確率の高いセルが目的地として選択されやすいものの、その選択パラメータに乱数を用いることで、存在確率の高いセルばかりが選択されてしまう目的地選択の偏りが抑制される。
そして、存在確率の高いセルへの選択の偏りが抑制された目的地への移動によって、より巡回領域全体が巡回されるようになり、その際に取得した捕捉対象の存否情報が存在確率の確率分布に好適に反映される。
これにより、捕捉対象の存在確率分布を好適に利用して存在確率の高い地点が巡回されやすくするとともに、より巡回領域全体が巡回されるようにして、より高精度な存在確率分布を好適に生成することができる。したがって、捕捉対象の存在確率分布の生成とその利用とを好適に両立させて、効率的な巡回を実現させることができる。
【0017】
第3の発明によれば、目的地の設定と、当該目的地までの移動経路の設定と、当該移動経路に沿った移動体の移動中における捕捉対象の存否情報の取得と、当該取得された捕捉対象の存否情報に基づく存在確率の確率分布の更新とが繰り返される。
これにより、捕捉対象の最新の出現状況を学習させ、当該捕捉対象の存否に関する予測精度を向上させて、好適な目的地及びその移動経路の設定を行うことができる。
【0018】
第4の発明によれば、複数の単位時間経路のうち巡回経路としての適性に関する評価値の最も高いものが順次選択され、これが連なって目的地までの移動経路が形成されるので、巡回経路としての適性に優れた好適な移動経路を設定することができる。
【0019】
第5の発明によれば、移動体の移動性能に基づいて複数の単位時間経路が設定されるので、移動体がその移動性能上無理なく移動できる好適な移動経路を設定することができる。
【0020】
第6の発明によれば、各単位時間経路の評価値が、当該単位時間経路の先端の地点での捕捉対象の存在確率と、当該単位時間経路の先端の地点から目的地までの残距離と、当該単位時間経路を移動したときの移動体の燃料消費量とに基づいて算出される。
これにより、捕捉対象の存在確率、目的地までの残距離及び燃料消費量が考慮された好適な移動経路を設定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る巡回経路設定装置を航空機に適用した場合の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0023】
[構成]
まず、本実施形態における航空機1の構成について、
図1〜
図3を参照して説明する。
図1は、航空機1による海洋パトロールの概念図であり、
図2は、航空機1の機能構成を示すブロック図であり、
図3は、後述する存在確率マップMの一例を示す図である。
【0024】
本実施形態における航空機1は、
図1に示すように、巡回領域PAである所定の海上空域をパトロール(巡回飛行)して特定の船舶Wを捕捉する任務を担うものである。
具体的には、
図2に示すように、航空機1は、当該航空機1を飛行させるための飛行機構11のほか、探知センサ13と、位置センサ14と、記憶部16と、制御部18とを備えて構成されている。
【0025】
このうち、探知センサ13は、本実施形態においては特に船舶Wを探知するためのセンサであり、例えば画像センサやレーダーなどである。この探知センサ13は、制御部18からの制御指令に基づいて船舶Wを探知し、その存否情報を取得して制御部18に出力する。
【0026】
位置センサ14は、自機(航空機1)の位置情報を取得するセンサであり、例えばGPS(Global Positioning System)受信機や慣性航法装置などである。この位置センサ14は、制御部18からの制御指令に基づいて自機の位置情報を取得し、取得した位置情報を制御部18に出力する。
【0027】
記憶部16は、航空機1の各種機能を実現するためのプログラムやデータを記憶するとともに、作業領域としても機能するメモリである。本実施形態においては、記憶部16は、巡回経路設定プログラム160と、地図データ161とを予め記憶している。
巡回経路設定プログラム160は、後述の巡回経路設定処理を制御部18に実行させるためのプログラムである。
地図データ161は、海や河川などの地形情報に加え、道路や鉄道,建造物,田畑,緊要地などの土地の利用状態に関する情報も含めた総合的な地理情報を有するものである。ただし、地図データ161は、少なくとも航空機1の巡回領域PAを含むものであればよい。
【0028】
また、記憶部16は、存在確率マップMを記憶する存在確率マップ記憶領域162を有している。
存在確率マップMは、
図3に示すように、巡回領域PAにおける船舶Wの存在確率分布を表すものであり、巡回領域PAを分割した複数のセルCの各々に、当該セルCにおける船舶Wの存在確率に関する確率密度関数(確率分布)が設定されたものである。この存在確率マップMは、後述の巡回経路設定処理において生成及び更新される。
なお、
図3では、分かりやすさのために、各セルCでの船舶Wの存在確率として、当該セルの確率分布における期待値を示している。
【0029】
制御部18は、
図2に示すように、航空機1の各部を中央制御する。具体的に、制御部18は、飛行機構11を駆動制御して航空機1の飛行を制御したり、探知センサ13や位置センサ14の動作を制御したりする他、記憶部16に記憶されているプログラムを展開し、展開されたプログラムと協働して各種処理を実行する。
【0030】
[動作]
続いて、巡回経路設定処理を実行する際の航空機1の動作について説明する。
図4は、巡回経路設定処理の流れを示すフローチャートであり、
図5は、巡回経路設定処理のうち後述の目的地設定処理の流れを示すフローチャートであり、
図6(a),(b)は、存在確率マップMの各セルCに設定される確率密度関数f(X)の例を示す図であり、
図7(a),(b)は、
図6(a),(b)の確率密度関数f(X)を積分した累積分布関数F(X)を示す図である。
また、
図8は、巡回経路設定処理のうち後述の移動経路設定処理の流れを示すフローチャートであり、
図9は、移動経路設定処理における単位時間経路Ruを示す図であり、
図10は、移動経路設定処理における移動経路Rの設定を説明するための図である。
【0031】
巡回経路設定処理は、巡回領域PA内での航空機1の巡回経路を設定する処理である。この巡回経路設定処理は、当該処理の実行指示が入力されたときに、制御部18が記憶部16から巡回経路設定プログラム160を読み出して展開することで実行される。
なお、ここでは、航空機1が巡回領域PA内を飛行中であるものとする。
【0032】
図4に示すように、巡回経路設定処理が実行されると、まず制御部18は、巡回領域PA内における目的地を設定する(ステップS1)。ここで、「目的地」とは、その設定時点における航空機1の飛行目的地であって、パトロールにおける最終目的地を含む経由地点である。
【0033】
この目的地設定処理では、トンプソンサンプリングを用いた確率的判定手法により、効率的なパトロールを行えるように目的地が設定される。
効率的なパトロールを行うためには、高精度な存在確率マップMを利用し、船舶Wの存在確率が高い地点を重点的に巡回することが求められる。他方、高精度な存在確率マップMを生成するためには、その存在確率の高低に関わらず巡回領域PA全体を巡回する必要がある。
そこで、本実施形態では、この相反する存在確率マップMの利用と生成とを、乱数と確率分布を用いたトンプソンサンプリングによって目的地を設定することで両立させ、効率的なパトロールを実現している。
【0034】
具体的に、この目的地設定処理では、
図5に示すように、まず制御部18は、巡回領域PAを含む地図データ161を、水平面内で格子状の複数のセルCに分割する(ステップS11)。本実施形態では、特に限定はされないが、南北及び東西に沿った各分割線によって区画された正方格子状の複数のセルCが生成される。
【0035】
次に、制御部18は、複数のセルCの各々に、当該セルCの地点における船舶Wの存在確率に関する確率密度関数(確率分布)f(X)を対応付けて、存在確率マップMを生成する(ステップS12)。そして、制御部18は、生成した存在確率マップMを記憶部16の存在確率マップ記憶領域162に記憶させる。
ここで、確率密度関数f(X)は、例えば
図6(a),(b)に示すように、船舶Wの存在確率Xを確率変数(連続確率変数)としてその確率密度(存在確率Xがその値となる確からしさ)を記述する関数である。
【0036】
次に、制御部18は、存在確率マップMの各セルCについて、確率密度関数f(X)を積分した累積分布関数F(X)を算出する(ステップS13)。
【0037】
次に、制御部18は、各セルCの累積分布関数F(X)に基づいて、巡回領域PAの全セルCのうち、所定の乱数に対応する存在確率Xが最大となるセルCを、目的地として設定する(ステップS14)。
具体的に、制御部18は、まず乱数(疑似乱数を含む)を生成する。それから、制御部18は、存在確率マップMの各セルCについて、当該セルCの累積分布関数F(X)の逆関数において、累積(累積分布関数F(X))がこの乱数値となる存在確率Xを算出する。そして、制御部18は、全セルCのうち、算出した存在確率Xが最大となるセルCを、目的地として設定する。
例えば
図7に示すように、(a),(b)の2つの累積分布関数F(X)を有する2つのセルCがある場合、乱数値1に対しては、これに対応する存在確率Xが最大となる(a)のセルCが目的地とされる。一方、乱数値2に対しては、これに対応する存在確率Xが最大となる(b)のセルCが目的地とされる。
【0038】
このように、巡回領域PAにおける船舶Wの存在確率分布を表す存在確率マップMを利用して目的地を設定することにより、船舶Wの存在確率Xの高いセルCが当該目的地として選択されやすい。しかし、その選択パラメータに乱数を用いることで、存在確率Xの高いセルCばかりが選択されてしまう目的地選択の偏りが抑制される。
【0039】
目的地(のセルC)が設定されると、制御部18は、
図4に示すように、この目的地Pd(
図10参照)までの移動経路を設定する(ステップS2)。
この移動経路設定処理では、航空機1の機体性能や船舶Wの存在確率Xを考慮した経路探索が行われる。
【0040】
具体的には、
図8に示すように、まず制御部18は、航空機1の機体性能に基づいて、水平面内における単位時間当たりの経路(以下、「単位時間経路」という。)Ruを複数設定する(ステップS21)。
本実施形態では、
図9に示すように、単位時間経路Ruとして、左右各60deg旋回飛行、左右各30deg旋回飛行、直線飛行を、自機位置Pから各々1分間行ったときの5つの経路が設定される。ここで、「自機位置P」とは、移動経路設定処理上での航空機1の位置であり、当該処理の最初の時点では現在地Pcである(
図10参照)。
なお、単位時間経路Ruにおける旋回飛行のバンク角や時間などの数値は、航空機1の機体性能(機体規模や運動特性等)に基づいて適宜設定される。また、このステップで設定する単位時間経路Ruの数量は特に限定されない。
【0041】
次に、制御部18は、単位時間経路Ruの各々について、巡回経路としての適性に関する評価値を算出する(ステップS22)。
具体的に、この評価値は、各単位時間経路Ruにおける、移動先(当該単位時間経路Ruの先端)のセルCでの船舶の存在確率(期待値)と、移動先の地点から目的地Pdまでの残距離と、航空機1の燃料消費量とを、適宜重み付けして合算した値である。移動先のセルCの存在確率は高いほど、残距離及び燃料消費量はそれぞれ少ないほど、評価値が高くなる。
なお、この評価値には、少なくとも上述の3項目(船舶Wの存在確率、残距離、燃料消費量)が含まれていればよく、例えばさらに、移動先の地点における外囲環境(天候や他機の存在等)の定量化値などを含めてもよい。
【0042】
次に、制御部18は、複数の単位時間経路Ruのうち最も評価値が高いものを選択し、当該選択した単位時間経路Ruの先端の地点に自機位置Pを移動させる(ステップS23)。
【0043】
次に、制御部18は、直前のステップS23での移動によって自機位置Pが目的地Pdに到達したか否かを判定し(ステップS24)、到達したと判定した場合には(ステップS24;Yes)、移動経路設定処理を終了させる。
一方、このステップS24において、自機位置Pが目的地Pdに到達していないと判定した場合には(ステップS24;No)、制御部18は、上述のステップS21へ処理を移行する。そして、ステップS24で自機位置Pが目的地Pdに到達したと判定されるまで、ステップS21〜S23が繰り返される。
こうして、
図10に示すように、現在地Pcから目的地Pdまでの航空機1の移動経路Rが、各自機位置Pにおける最も評価値の高い単位時間経路Ruを連ねたものとして探索・設定される。
【0044】
このように、航空機1の機体性能に基づく複数の単位時間経路Ruの設定と、そのうち巡回経路としての適性に関する評価値が最も高いものの選択とを順次繰り返すことにより、航空機1の機体性能上無理がなく、かつ、船舶Wの存在確率Xや飛行距離といった巡回経路としての適性に優れた移動経路Rが設定される。
【0045】
目的地Pdまでの移動経路Rが設定されると、制御部18は、
図4に示すように、設定された移動経路Rに沿って、目的地Pdに向けた航空機1の飛行を開始させる(ステップS3)。
このとき、制御部18は、移動経路Rに沿った飛行中において、探知センサ13による船舶Wの探知を随時行い、その探知結果(船舶Wの存否情報)を記憶部16に記憶させておく(ステップS4)。
【0046】
そして、目的地Pdに到達した後(ステップS5)、制御部18は、記憶部16に記憶された船舶Wの存否情報に基づいて存在確率マップMを更新する(ステップS6)。具体的に、制御部18は、存在確率マップ記憶領域162に記憶されている存在確率マップMのうち、移動経路R中の各セルCの確率密度関数f(X)を、当該移動経路Rにおける船舶Wの存否情報に基づいて更新する。
こうして、更新された確率密度関数f(X)は分散が減って期待値をとる確度が高まり(
図6(a),(b)参照)、存在確率マップMの精度が向上する。
【0047】
このように、移動中に取得した船舶Wの存否情報に基づいて存在確率マップMを更新させることにより、船舶Wの最新の出現状況を学習させ、船舶Wの存否に関する予測精度を向上させることができる。
【0048】
次に、制御部18は、巡回経路設定処理を終了させるか否かを判定し(ステップS7)、終了させないと判定した場合には(ステップS7;No)、制御部18は、上述のステップS1へ処理を移行し、次の目的地Pdの設定を行う。
こうして、目的地Pd及びそこまでの移動経路Rの設定と、当該移動経路Rに沿った飛行と、この飛行中における船舶Wの存否情報の取得と、当該取得された存否情報に基づく存在確率マップMの更新とが、順次繰り返される。
一方、ステップS7において、例えば所定の巡回時間が経過するなどして巡回経路設定処理を終了させると判定した場合には(ステップS7;Yes)、制御部18は、巡回経路設定処理を終了させる。
【0049】
[効果]
以上のように、本実施形態によれば、船舶Wの存在確率Xの確率分布に基づく目的地設定により、船舶Wの存在確率Xの高いセルCが目的地Pdとして選択されやすいものの、その選択パラメータに乱数を用いることで、存在確率Xの高いセルCばかりが選択されてしまう目的地Pd選択の偏りが抑制される。
そして、存在確率Xの高いセルCへの選択の偏りが抑制された目的地Pdへの移動によって、より巡回領域PA全体が巡回されるようになり、その際に取得した船舶Wの存否情報が存在確率Xの確率分布(確率密度関数f(X))に好適に反映される。
これにより、船舶Wの存在確率マップMを好適に利用して存在確率Xの高い地点が巡回されやすくするとともに、より巡回領域PA全体が巡回されるようにして、より高精度な存在確率マップMを好適に生成することができる。したがって、船舶Wの存在確率マップMの生成とその利用とを好適に両立させて、効率的な巡回を実現させることができる。
【0050】
また、目的地Pdの設定と、当該目的地Pdまでの移動経路Rの設定と、当該移動経路Rに沿った航空機1の移動中における船舶Wの存否情報の取得と、当該取得された船舶Wの存否情報に基づく存在確率Xの確率分布(確率密度関数f(X))の更新とが繰り返される。
これにより、船舶Wの最新の出現状況を学習させ、当該船舶Wの存否に関する予測精度を向上させて、好適な目的地Pd及びその移動経路Rの設定を行うことができる。
【0051】
また、複数の単位時間経路Ruのうち巡回経路としての適性に関する評価値の最も高いものが順次選択され、これが連なって目的地Pdまでの移動経路Rが形成されるので、巡回経路としての適性に優れた好適な移動経路Rを設定することができる。
【0052】
また、航空機1の機体性能に基づいて複数の単位時間経路Ruが設定されるので、航空機1がその機体性能上無理なく移動できる好適な移動経路Rを設定することができる。
【0053】
また、各単位時間経路Ruの評価値が、当該単位時間経路Ruの先端のセルCでの船舶Wの存在確率Xと、当該単位時間経路Ruの先端の地点から目的地Pdまでの残距離と、当該単位時間経路Ruを移動したときの航空機1の燃料消費量とに基づいて算出される。
これにより、船舶Wの存在確率X、目的地Pdまでの残距離及び燃料消費量が考慮された好適な移動経路Rを設定することができる。
【0054】
[変形例]
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0055】
例えば、上記実施形態では、航空機1が目的地Pd及び移動経路Rの設定を行ってから飛行を開始し、目的地Pdに到着した後に存在確率マップMの更新と次の目的地Pd及びその移動経路Rの設定を行うこととした。しかし、目的地Pdまでの飛行中に、存在確率マップMの更新と次の目的地Pd及び移動経路Rの設定を随時行うこととしてもよい。さらに、飛行中に存在確率マップMの更新を随時行うこととし、このマップ更新に伴って、そのときに向かっている目的地Pdを変更可能にしてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、トンプソンサンプリングを用いた確率的判定手法により目的地を設定することとした。しかし、この目的地設定では、捕捉対象の確率分布と乱数とを用いた確率的判定手法によって、目的地選択の偏りが抑制されればよく、その確率的判定手法はトンプソンサンプリングに限定されない。
【0057】
また、上記実施形態では、本発明に係る巡回経路設定装置を航空機1に適用した場合について説明した。しかし、本発明を適用可能な移動体は、所定の巡回領域内を巡回するものであれば航空機でなくともよく、例えば車両や船舶であってもよいし、室内のゴミを探知して掃除するお掃除ロボットなどであってもよい。
【0058】
また、本発明に係る巡回経路設定装置は、移動体に搭載されたものに限定されず、例えば移動体を遠隔操縦する固定設備等に備えられていてもよい。ただし、捕捉対象の存否情報を取得する情報取得手段(上記実施形態における探知センサ13)は移動体に搭載される必要がある。そのため、巡回経路設定装置を移動体と別体とした場合には、移動体に搭載された情報取得手段が取得した存否情報を、通信手段等により巡回経路設定装置が移動体から受信する必要がある。