【実施例】
【0011】
まず、実施例に係る車両用シートの構造について
図1を用いて説明する。
図1はシートフレームの構成例を説明する左側前方からの斜視図である。車両用シートの構造の理解を容易にするため、図中には、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」および「下」の方向を示し、これらの方向は、以下の説明において相対的な位置関係を表現するのにも用いられる。また、これらの方向は、車両用シートを車両に搭載したときの車両の方向に対応し、例えば、車両用シートの前方向と車両の前方向とは同方向を示す。以下では、左前に位置する運転席に好適な車両用シートの構造について述べるが、右前に位置する運転席にも適用可能である。なお、車両の右側に搭載される車両用シートは左側に搭載される車両用シートの左右を入れ替えた構成になる。
【0012】
実施例に係る車両用シートは、前後移動可能なシートクッションと、シートクッションに対して傾動可能なシートバックと、を備える。シートクッションおよびシートバックには、
図1に示すようなシートフレーム10が内蔵されている。シートフレーム10は、シートクッションのフレームを構成するシートクッションフレーム20と、シートバックのフレームを構成するシートバックフレーム30と、を備える。シートクッションはシートクッションフレーム20にウレタン等のクッション材からなるシートクッションパッドと、合成皮革や布地等からなる表皮材を被せることで構成される。シートバックはシートバックフレーム30にウレタン等のクッション材からなるシートバックパッドと、合成皮革や布地等からなる表皮材を被せることで構成される。
【0013】
シートクッションフレーム20は、略矩形の枠状に形成されるフレームであり、車両のフロアに設けられる左右一対のロアレール42のそれぞれに対して前後移動可能に支持されるアッパーレール41上に設置されている。これにより、車両用シートは、前後位置を調整可能となっている。
【0014】
シートバックフレーム30は、その下部がシートクッションフレーム20の後部にリクライニング機構24を介して回動自在に連結されている。これにより、シートバックは、シートクッションに対し前後に傾動可能となっている。
【0015】
次に、シートクッションフレームについて詳細に説明する。
図1に示すように、シートクッションフレーム20は、左右一対のサイドフレーム21と、左右一対のアッパライザ22と、パンフレーム23と、前後一対の連結パイプ25とを主に備えている。
【0016】
サイドフレーム21は、前後方向に延びる金属製のフレームであり、左右に離間して配置されている。サイドフレーム21は、その前端部が金属製のパンフレーム23や前側の金属製の連結パイプ25で連結され、その後端部が後側の金属製の連結パイプ25で連結されている。
【0017】
シートクッションフレーム20の下側には、シートクッションの車両に対する前後位置を調整するシート位置調整装置40が設けられている。シート位置調整装置40は、シートクッションフレーム20の下側に固定された左右一対のアッパーレール41および車両の床に固定されたロアレール42から構成されている。アッパーレール41はシートクッションフレーム20の下部のアッパライザ22に固定されている。ロアレール42は、アッパーレール41と係合させてアッパーレール41をスライドさせるレール部42aと、レール部42を床に締結する締結部42b、42cを備える。ロアレール42上においてアッパーレール41をスライドさせることにより、シートクッションの車両に対する前後位置すなわち車両用シートの車両に対する前後位置を調整することができる。シート位置調整装置40には、操作レバー43が設けられている。操作レバー43を用いて、ロアレール42上におけるアッパーレール41の前後スライド(前後移動)を操作することができる。また、操作レバー43でロックを解除することにより、ロアレール42上におけるアッパーレール41の前後スライド(前後移動)が可能になる。
【0018】
次に、シート位置調整装置の詳細について
図2〜3を用いて説明する。
図2は
図1の左側のシート位置調整装置の左側前方からの斜視図である。
図3は
図1の左側のシート位置調整装置の下面図である。
【0019】
シート位置調整装置40には、アッパーレール41の前後動を規制するロック機構44と、U字形状の操作レバー43の操作に連動する係合部でアッパーレール41の前後動の規制を解除して、車両用シートの前後位置を所望の位置に設定するロック解除機構45が設けられている。
【0020】
ロック機構44は、アッパーレール41に装着されるストッパ44aと、ストッパ44aに付勢力を付与する板状スプリング(不図示)を備える。
【0021】
ロック解除機構45は、ストッパ44aを動作させる操作レバー43と、操作レバー43を支持するブラケット46と、操作レバー43に付勢力を付与する針金状スプリング47と、を備えている。
【0022】
より具体的には、ロック解除機構45は、通常は、
図2に示すように、針金状スプリング47の付勢力によってブラケット46の操作レバー支持部46d回りに反時計方向に向けて付勢され、操作レバー43が下方に下がった状態になると共に、操作レバー43の端部43aとストッパ44aは離れた状態となるためストッパ44aは力を受けずロック状態を維持する。これらによって、アッパーレール41の前後動が規制された状態になっている。
【0023】
この状態で車両用シートの着座者が、操作レバー43を上方に向けて操作すると、操作レバー43が針金状スプリング47の付勢力に抗して操作レバー支持部46d回りに時計方向に回動し、この回動によって操作レバー43の端部43aが針金状スプリング47の付勢力に抗して、ストッパ44aを下方に向けて移動させることになる。このストッパ44aの下方への移動は、シート位置調整装置40をロック状態から解除し、これによって、アッパーレール41はロアレール42に案内されつつ前後動が可能になる。
【0024】
したがって、着座者は、操作レバー43を上方に向けて操作しながら腰をずらすことによって車両用シート1を所望の前後位置に位置設定することができる。そして、所望の前後位置が決まった状態で操作レバー43から手を離すことにより、針金状スプリング47の付勢力によって操作レバー43が下方位置に移動すると共に、操作レバー43の端部43aが操作レバー支持部46d回りに時計方向に回動することによって前述のとおりアッパーレール41の前後動が再度ロックされた状態になる。
【0025】
次に、ブラケット46について
図4〜6を用いて説明する。
図4は
図2のブラケットの下面図である。
図5は
図1の左側のシート位置調整装置の右側前方からの斜視図である。
図6はブラケットの効果を説明する図であり、
図6(A)は
図1の左側のシート位置調整装置の上面図であり、
図6(B)は比較例に係る車両用シートの左側のシート位置調整装置の上面図である。
【0026】
ブラケット46は金属板で構成されており、
図4に示すように、操作レバー43を支持する第一部46aと、シート位置検出器50を取り付ける第二部46bと、アッパーレール41に締結部材で固定するための二つの孔46cと、を備えている。第一部46aは操作レバー43を挟むように支持する操作レバー支持部46dと第一部46aの剛性を高めるフランジ46eおよびビード46fとを備える。操作レバー支持部46dは上壁と上壁の端部から下方に延びる側壁と側壁の端部からアッパーレール41側に延びる下壁と針金状スプリング47を係止する係止部とを有する。第二部46bは第二部46bの剛性を高めるビード46fとシート位置検出器50を取り付けるための孔46gとを備える。第一部46aと第二部46bはスリット46hで分離されている。一つの孔46cは第一部46aに他の孔46cは第一部46aと第二部46bとの境界付近に位置する。操作レバー支持部46dと孔46gの間にスリット46hが位置する。他の孔46cと操作レバー支持部46dとの距離は、他の孔46cと孔46gとの距離よりも長い。ブラケット46は二つの孔46cを介して締結部材であるボルトによりアッパーレール41に固定される。
スリット46hは、ブラケット46の第一部46aと第二部46bとの間に設けられた隙間であって、ブラケット46がアッパーレール41に固定された際に、その固定された部分を除いて、第一部46aと第二部46bの両者に物理的に繋がったところがないような形状に形成されている。本実施例においては、円弧状の細長いスリットである。ただしスリットの形状はこれに限定されることなく、直線状や折り曲がった矩形状でも良く、またはこれらと曲線の組合せでも良い。スリットの幅は、第一部と第二部とを分離するだけの幅であれば良く、また幅の広さも一様である必要はなく、例えば固定部から離れるにしたがって広がるように形成しても良い。
【0027】
図6(A)に示すように、ロアレール42のレール部42aと操作レバー43との間にシート位置検出器50を配置するため、ブラケット46の操作レバー支持部46dは、
図6(B)に示す比較例のブラケット46Rの操作レバー支持部46dRよりもアッパーレール41から左右方向においてシート内側にdだけオフセットしている。
図5の矢印で示すように、操作レバー43を上下させると、ブラケット46はブラケット46Rよりも捩れ易くなる。しかし、ブラケット46はフランジ46eおよびビード46fを設定しているので剛性を高めることができる。
【0028】
次に、シート位置検出器について
図2、3を用いて説明する。
【0029】
図2に示すように、シート位置検出器50は、ブラケット46を介して、ロアレール42の内側壁面に対向して、取り付けられている。
図3に示すように、シート位置検出器50は、検出器本体50aと、ケーブル接続部50bとを備えている。検出器本体50aは、ブラケット46の第二部46bに取り付けられている。検出器本体50aには、磁石と磁気センサとを備え、シート位置検出器50は、検出器本体50aが前方側の所定の位置に到達することによって、磁気の変化を検知するとともに、検出器本体50aがこの検知信号をケーブル接続部50bに接続されたケーブル(不図示)を通じて出力するように構成されている。
【0030】
ブラケット46の第二部46bは、アッパーレール41から内側の水平方向に延び、それから徐々に前方に延びている。そして、ブラケット46の第二部46bに形成された孔46gに挿通された固定部材によって、ブラケット46の第二部46bにシート位置検出器50が固定されている。
【0031】
シート位置検出器50は、平面視で、ロアレール42と操作レバー43との間に位置し、検知部50bは、平面視で、ロアレール42とブラケット46の第二部46bとの間に位置する。シート位置検出器50の検出器本体50aは、平面視で、第二部46bを挟んでスリット46hと反対側に位置する。
【0032】
次に、このシート位置の検出動作を説明すると、まず、使用者が操作レバー43を引き上げて、ロアレール42に対するアッパーレール41のロックを解除することによって、シートクッションを前後方向にスライドさせることができるようになる。例えば、使用者がシートクッションを最も前方まで移動させて操作レバー43を離すことによって、シートクッションが固定される。このとき、シート位置検出器50では、シートクッションが予め設定された所定の位置に配置されたことが検出される。
【0033】
実施例ではシート位置検出器と操作レバーの組付けを一体化したブラケットで固定している。一体化したブラケットの組付けはアッパーレールに締結部材であるボルトで留めている。用途の異なる部品を一つの部品構造とすることで、部品点数を削減することができる。また、ブラケットにスリットを設定しているため、操作レバーの操作時に発生する歪のシート位置検出装置への伝達を低減することができる。また、ブラケットにフランジおよびビードを設定して剛性を高めているため、操作レバー位置をオフセット化しているが捩れ難くすることができる。
【0034】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【0035】
例えば、実施例では、シート位置検出器50を左側のシート位置調整装置に設けた例を説明したが、シート位置検出器50を右側のシート位置調整装置に設けてもよい。