【実施例】
【0031】
ガラスリボンのウェッジを制御する方法のさまざまな実施形態は、以下の実施例によってさらに明らかになるであろう。
【0032】
実施例1
2週間の期間、厚さゲージを使用して、ガラスリボンにおけるウェッジ変動を測定した。
図4は、時間(x軸)の関数としてのウェッジ厚データ(y軸)のプロットを示している。
図4から得られたデータを、フーリエ変換を使用して変換し、
図5を生成した。さらに具体的には、
図5は、
図4に示される信号の頻度成分のプロットである。
図5のプロットは、ウェッジ変動の大きさ(y軸)及び頻度(x軸)を定量化している。高頻度及び低頻度変動は
図5に見ることができる。
図5に示されるように、ウェッジの乱れは、比較的低頻度(10時間以上の周期)及び比較的高い頻度(例えば3時間以下の周期)の変動を有していた。特に、突出した周期(prominent cycle)は約2時間の周期で生じた。
図5に示されるデータは、ウェッジ変動の高頻度成分及び低頻度成分の決定に使用されうる。
【0033】
例えば、
図5に示されるように、大きいピークは、2時間周期、3〜10時間周期、及び30時間周期に対応する時点で現れる。これらのピーク及び帯域分離に基づいて、2時間周期に対応するピークを高頻度成分として識別するとともに、30時間周期に対応するピークを低頻度成分として識別した。2時間周期に対応するピークと3〜10時間周期に対応するピークとの間には明確に定められた帯域分離が存在しないことから、より高い頻度成分及びより低い頻度成分の制御の関数として制御する場合、頻度成分の識別の目的では、3〜10時間周期は無視される。
【0034】
実施例2
ウェッジ変動におけるチルトの影響を決定するため、チルトの度合いを段階的に変化させ、ウェッジの影響(すなわち、ウェッジの変化)を観察した。これにより、チルト変動に対するシステムの応答を特徴化可能にした。さらに具体的には、チルト角を、0度の開始角度から0.3度だけ(0.3度の最終角度へと)上方に傾動させ(すなわち、第1端部104を第2端部106に対して下降させた)、ウェッジ応答をおよそ40分間、監視した。
図6及び7は、チルト角の0.3度の変化に対する観察されたウェッジ応答を示している。
図6に示されるように、成形容器を上方に0.3度だけ傾動させた。結果として得られたウェッジ応答は、
図7にグラフで示されている。
図7において、増大(又はウェッジの変化)はy軸で表されており、時間(秒)はx軸で表されている。無駄時間を含む一次遅れ(First Order plus Dead Time)モデルを応答に当てはめ、
図7に示されるように、モデルを処理データと相関させた(R
2=0.98)。R
2値は、チルトの段階的変化の結果として、一次遅れモデルが、観察された増大と非常に密接に相関していることを示唆している。応答に当てはめた無駄時間を含む一次遅れモデルは、多変数制御アルゴリズムを生成するために、以下の実施例3から得られるモデルと共に用いられる。
【0035】
図7はさらに、ウェッジ変動におけるチルトの影響が、ウェッジ変動の高頻度成分への対処に有効でありうることを示している。特に、518秒の時間の遅れは、チルト角が変化した時間とウェッジが応答を開始した時間との間の経過時間を表しており、影響が成形容器のチルト調整のおよそ10分以内に観測可能であることを確認するものでる。加えて、モデルは、91秒の時定数を生じ、これは、91秒以内に、チルト角の影響がその最終的な値の約63%に達したことを示唆している。
【0036】
実施例3
ウェッジ変動における温度の影響を決定するため、温度を0.3℃ごとに段階的に変化させ、ウェッジの影響(すなわち、ウェッジの変化)をおよそ90分間、観察した。これにより、熱的変動に対するシステムの応答を特徴化可能にした。
図8は、上部温度における−0.3℃の変化に対する観察されたウェッジ応答を示している。
図8において、y軸は増大(又はウェッジの変化)を表し、x軸はサンプリング時間を表し、各サンプル15秒である。無駄時間を含む一次(すなわち、線形)遅れモデルを応答に当てはめた。無駄時間を含む一次遅れモデルは処理データによく相関し(R
2=0.94)、モデルが良好に当てはまり、熱的変化に基づくウェッジ応答の推定に利用可能であることを示唆している。したがって、ひとたびウェッジが熱的変化に応答を開始すると、熱的変化は、観察されたウェッジ応答に対して直接的かつ直線的に関係する。温度の0.3℃ごとの低下は、結果的に、サンプルに1.18(ウェッジ/℃)のウェッジの増大を生じたことが決定された。およそ1926秒の時定数及びおよそ714秒の時間の遅れが見られた。時定数は、その最終的な値のおよそ63%に達する、熱的変化に要する時間を表している。時間の遅れは、上部温度設定値が変化する時間とウェッジが応答を開始する時間との間の経過時間を表している。
図8のデータと
図7のデータとの比較は、熱調整が、チルト調整と比較してウェッジに対する変化に遅延を生じさせることを実証している。応答に当てはめた無駄時間を含む一次遅れモデルは、上記実施例2から得られたモデルとともに、多変数制御アルゴリズムの生成に用いられる。
【0037】
実施例4
実施例1から得た観察されたウェッジ応答頻度情報、実施例2から得たチルトステップ応答、及び実施例3から得た温度ステップ応答の知見とともに、チルト及び温度の各々を使用する制御の推定限界を、コンピュータ模擬実験及び解析計算を使用して確認した。言い換えれば、
図5に由来する推定された「高頻度」及び「低頻度」の範囲を、それらの頻度にわたる各制御に対するウェッジ衝撃応答を検査することによって確認した。
【0038】
図9は、熱調整及びチルトについての比例積分(PI)制御システムを使用するウェッジ変動の頻度(x軸)に対する利得応答(y軸)のプロットである。PI制御システムは、熱変数及びチルト変数の各々を制御することができ、各変数を互いに独立して制御することができる。加えて、PI制御システムは、多変数ウェッジコントローラに関して説明したように、高頻度ウェッジ成分を無視するとともに、低頻度ウェッジ成分の制御のために熱変数を特に使用しなくてもよく、低頻度ウェッジ成分を無視するとともに、高頻度ウェッジ成分の制御のためにチルト変数を使用しなくてもよい場合がある。
図9において、高頻度成分とは、概して、グラフの右側のことを指し、一方、低頻度成分とは、概して、グラフの左側のことを指す。より具体的には、低頻度成分は、10時間以上の周期を表す、10
−1の頻度マークの左側に表されている。高頻度成分は、x軸上の10
−1の頻度マーキングと10
0の頻度マークとの間に破線で表されている。上述のように、「高頻度」及び「低頻度」に対応する特定の時間周期は、特定の実施形態によって変化しうる。
図9によって、実施例1における
図5の検査によって決定された、高頻度成分及び低頻度成分に対応する周期の推定が、所望のレベルの制御の達成に許容可能であることが確認された。具体的には、
図9によって、「高頻度」及び「低頻度」に応じて選択された時間周期が、対応する変数(例えば、それぞれ、チルト及び温度)によって制御可能な範囲内にあることが確認された。
【0039】
線900は、温度の従来のPI制御を使用する場合に期待されるウェッジの乱れの減衰を示している。線900は、低頻度変動の期待される減衰(0.083時間
−1)が0.2倍(すなわち、80%の低下)であることを示している。しかしながら、高頻度変動(0.5時間
−1)は、2.4倍増幅され、これは許容されないと見なされる。したがって、これは、温度制御は低頻度(周期は約10時間以上である)におけるウェッジの乱れの修正に使用することができるが、高頻度におけるウェッジの乱れの修正には有効ではなく、ウェッジの乱れの影響の大きさは1より大きいことを示唆している。
【0040】
図9の線902は、チルト機構の従来のPI制御が用いられる場合に期待されるウェッジの乱れの減衰を示している。線902は、低頻度変動(0.083時間
−1)が、90%を超えて補償されうることを示している。高頻度変動(0.5時間
−1)の期待されるウェッジの乱れの減衰の増大は、温度の従来のPI制御の使用における増大と比較して、およそ50%の低下である、0.56である。線902の大きさは、より高い頻度において1未満の値を維持し、これは、チルト制御が、より高い頻度におけるウェッジの乱れの制御に有効でありうることを示唆している。加えて、線902は、チルト制御が、高頻度及び低頻度におけるウェッジの乱れの制御に有効でありうることを示唆している。
【0041】
実施例5
10時間以上の周期についてのウェッジ影響の制御に熱制御が用いられ、かつ、実施例4より短い周期についてのウェッジ影響の制御にチルト制御が用いられうるという理論の確認の後、多変数制御アルゴリズムを展開した。
図10〜16は、ウェッジ変動の制御に使用するための実施例2及び3から得られたモデルを組み合わせた模擬的な結果を例証している。特に、実施例2及び3から結果的に得られたモデルを組み合わせ、H無限大制御の取り組みを使用して、温度調整を選択して低頻度変動に対処し、かつ、チルト調整を選択して高頻度変動に対処するアルゴリズムを生成した。さらに具体的には、実施例2及び3のデータに当てはめたモデルを組み合わせて、H無限大制御方法を使用して加工したアルゴリズムを形成した。
【0042】
H無限大制御方法では、温度変数を、高頻度変動を考慮せずに、低頻度変動を最小化するように操作すると同時に、チルト変数を、低頻度変動を考慮せずに、高頻度変動を最小化するように操作した。結果的に得られた多変数制御アルゴリズムを実施例1で収集したデータに適用し、
図10〜16に提示される模擬的なデータを生成した。
【0043】
図10は、従来のPI制御システムに従った経時(x軸)における結果的に得られた温度移動(y軸)のプロットである。
図11は、多変数制御アルゴリズムに従った経時(x軸)における結果的に得られた温度移動(y軸)のプロットである。
図10及び11に見られるように、模擬的なデータは、PI熱制御が、多変数制御アルゴリズムと比較して、より大きい短期的及び長期的変動を有する(例えば、温度は、より多くの回数、変化し、変化はより大きい規模を示す)ことを示唆している。
【0044】
図12は、従来のPI制御システムに従った経時(x軸)における結果的に得られたチルト移動(y軸)のプロットである。
図13は、多変数制御アルゴリズムに従った経時(x軸)における結果的に得られたチルト移動(y軸)のプロットである。
図13に示されるように、模擬的なデータは、多変数制御アルゴリズムが、従来のPI制御システムと比較して非常に小さい長期的変動を有することを示唆している。チルト移動は、高頻度成分に対処するように同調される。これは、標準的なPI制御と比較した場合にはるかに小さい振幅(およそ5倍)を有するチルト移動信号を結果的に生じる。
【0045】
図14、15、及び16は、それぞれ、従来のPI温度制御システム、従来のPIチルト制御システム、及び多変数制御システムを使用する模擬的なウェッジ変動を例証している。
図14〜16の比較から分かるように、多変数制御システムは、チルトのみの使用に対して70%の改善を有する、はるかに小さいウェッジ変動を達成する。したがって、組み合わせた取り組みは、チルト又は熱補償のいずれかを単独で使用するよりも大きい制御をもたらす。
【0046】
実施例6
熱制御のみの使用に対し、チルト制御を使用するウェッジ変動における制御の改善を評価した後、模擬実験の結果を確認するために実験を行った。実験には、実施例2に使用したものと同じパラメータを使用した。特に、実施例2から得られたモデルを使用して、観察されたウェッジに対処するために更新されたチルト設定値を決定した(結果を
図17に示す)。
【0047】
図17及び18はウェッジ変動のチルト制御の達成可能性を決定するための実験結果を示している。特に、
図17は、およそ2.5日間の期間にわたるチルト制御下での時間(x軸)の関数としてのウェッジの量(y軸)を示すプロットである。
図18は、従来の自動厚さ制御システム(ATCS)を使用する熱制御下での時間(x軸)の関数としてのウェッジの量(y軸)を示すプロットである。従来のATCSは、多変数ウェッジコントローラに関して説明したように、高頻度ウェッジ成分を無視するとともに、低頻度ウェッジ成分の制御に熱変数を特に使用しない。
図17及び18の比較から分かるように、チルト制御を行っている間の電力の乱れにもかかわらず、従来のATCSによってもたらされる熱制御を用いたウェッジ変動の制御と比較した場合に、チルト制御を使用してウェッジ変動の改善が達成された。とりわけ、チルト機構に対する角変化の最小量は実験の間に調整され、制御運動の粗さによって、達成可能な帯域幅及び高頻度変動に対処する能力が制限された。それにもかかわらず、実験は、少ない保存運動制御で改善されることが期待される、良好な結果を示した。
【0048】
図19は、ウェッジの制御のためにATCSを使用する熱制御の結果(
図18に示される)と比較したチルト制御結果(
図17に示される)のボックスプロットである。チルト制御は、四分位範囲(すなわち、ミッドスプレッド(midspread)又はミドルフィフティ(middle fifty))において27%の改善を示した。四分位範囲は、データ点の分散の代表であり、四分位範囲における改善は、ばらつきの低下を示す。チルト運動制御システムの制限にもかかわらず、熱制御に対する短期的変動の改善を実現した。
【0049】
図20は、
図17及び18に示されるデータについてのウェッジの時間(x軸)の関数としてのローリング標準偏差(「STD」)(y軸)のプロットを示している。6時間のウィンドウを使用し、全体のデータセット(およそ45時間)に対して10秒間の階段状とした。チルト下でのウェッジの結果は線2000によって示されており、従来のATCSを使用する熱制御下でのウェッジの結果は線2002によって示されている。チルト制御の6時間のローリングSTDデータセットについての平均変動値は線2004で示されており、従来のATCS熱制御の6時間のローリングSTDデータセットについての平均変動値は線2006によって示されている。データは、チルトウェッジ制御システムが、ATCS熱制御と比較して、平均しておよそ15%低い短期的変動(0.0825に対して0.07)を有していたことを示した。この場合もやはり、チルト制御実験の間の温度揺動にもかかわらず、上記改善が観察された。したがって、
図19及び20は、チルトを用いたウェッジの制御が、熱制御のみを使用するウェッジの制御と比較して、より大きい制御とより少ない変動を生じうることを実証している。
【0050】
実施例7
チルト制御を用いたウェッジの制御の達成可能性を確認した後、生成した多変数制御アルゴリズムを試験して、熱制御のみを使用する従来のウェッジ制御方法に対する利益をもたらすか否かを判定した。特に、多変数制御アルゴリズムが熱変数に関して予期された通りに機能したか否かを判定するために、実験の間にチルトの移動はさせなかった。したがって、多変数ウェッジ制御、従来のATCS、及び従来のPI制御システムの指示通りに熱制御を通じてウェッジを制御したシステムについて、数日間にわたってウェッジを測定した。さらに具体的には、従来のPI制御システムについて7日間にわたって、及び、多変数ウェッジ制御システムについては18日間にわたってウェッジを測定した。総合的なウェッジ、短期頻度(1〜3時間)、及び長期(10時間を超える)のウェッジ変動を観察し、比較した。
【0051】
具体的には、
図21は、多変数ウェッジ制御(MWC)、従来のATCS、及び従来のPI制御システムを使用するウェッジ制御の結果を例証している。表1は、追加の比較データを提供している。
【0052】
【表1】
【0053】
図21の左のボックスプロットは総合的なウェッジ変動を比較している。MWCは、従来のATCS及びPI制御システムと比較して、より小さい中央値及びより狭い変動範囲を有していたことが分かる。中央のプロットは、ウェッジについての低頻度変動(長期周期)を示している。
図21の右のボックスプロットは、高頻度におけるウェッジ変動を示している。ここでは、MWCを使用して観察された変動は、従来のATCSを使用した場合に観察される変動と同様であり(4%の悪化)、従来のPI制御システムを使用した場合に見られる変動より良好であった(21%の改善)。したがって、MWCは、従来のATCSと比較して高頻度変動を補償するようには見えなかったが、アルゴリズム設計から期待されるように、従来のPI制御システムのようには高頻度変動を増幅しなかった。
【0054】
前記内容に基づき、ガラスリボンの厚さウェッジを制御する方法のさまざまな態様が本明細書に開示されることが理解されよう。第1の態様によれば、ガラスリボンにおけるウェッジ変動を制御する方法は、成形容器の収束する側面上に溶融ガラスを流す工程、成形容器のルートから、ある幅を有するガラスリボンを延伸する工程、ガラスリボンの幅の少なくとも一部にわたってウェッジ変動を測定する工程、及び、測定されたウェッジ変動に基づいて成形容器のチルト及び成形容器の堰の近くの温度を調整し、ガラスリボンの幅にわたってウェッジ変動を低下させる工程を含む。
【0055】
第2の態様において、フュージョンドロー装置は、成形容器の長さを画定する第1端部及び第2端部、並びにその上面に配置されたトラフを有する成形容器と、成形容器を傾動させて、成形容器の第2端部に対する成形容器の第1端部の位置を変化させるチルト機構と、成形容器の堰の近くの領域に熱を供給する少なくとも1つの加熱機構と、プロセッサとコンピュータ読取及び実行可能命令セットを記憶するメモリとを備えたコントローラを含む自動厚さ制御システムとを備えている。コンピュータ読取及び実行可能命令セットは、プロセッサによって実行された場合に、延伸の底部において厚さゲージからウェッジ変動計算値を受け取り、受け取ったウェッジ変動計算値に基づいて、ウェッジ変動の高頻度成分及びウェッジ変動の低頻度成分を決定し、チルト設定値を計算してウェッジ変動の高頻度成分を低減し、温度設定値を計算してウェッジ変動の低頻度成分を低減し、チルト機構にチルト設定値を供給し、かつ、 少なくとも1つの加熱機構に温度設定値を供給する。
【0056】
第3の態様において、ガラスリボンの幅にわたってウェッジ変動を制御する方法は、成形容器の収束する側面上に溶融ガラスを流す工程、成形容器のルートからある幅を有するガラスリボンを延伸する工程、ガラスリボンの幅の一部にわたってウェッジ変動を測定する工程、ウェッジ変動の高頻度成分に基づいて成形容器のチルトを調整し、ガラスリボンの幅にわたってウェッジ変動を低下させる工程、ウェッジ変動の低頻度成分に基づいて成形容器の堰の温度を調整し、ガラスリボンの幅にわたってウェッジ変動を低下させる工程、及び、ガラスリボンの幅の一部にわたって調整されたウェッジ変動を測定する工程を含む。
【0057】
第4の態様は、ウェッジ変動の高頻度成分に基づいて成形容器のチルトの変化を特定する工程をさらに含む、第1〜第3の態様のいずれかを含む。
【0058】
第5の態様は、成形容器のチルトを調整する工程が、成形容器の第2端部に対する成形容器の第1端部の位置を調整する工程を含み、成形容器の第1端部及び第2端部が、成形容器の収束する側面に対して垂直であり、かつ、成形容器の長さによって分離されていることを特徴とする、第1〜第4の態様のいずれかを含む。
【0059】
第6の態様は、ウェッジ変動の低頻度成分に従って、堰の温度変化を特定する工程をさらに含む、第1〜第5の態様のいずれかを含む。
【0060】
第7の態様は、堰の温度を調整する工程が、成形容器の上部の近くに配置された少なくとも1つの加熱機構のパワー出力を調整する工程を含む、第1から第6の態様のいずれかを含む。
【0061】
第8の態様は、堰の温度を調整する工程が、成形容器の周りに配置された冷却機構のパワー出力を調整する工程を含む、第1〜第7の態様のいずれかを含む。
【0062】
第9の態様は、堰の温度を調整する工程が、少なくとも1つの加熱機構のパワー出力を調整する工程、及び、成形容器の周りに配置された冷却機構のパワー出力を調整する工程を含む、第1〜第8の態様のいずれかを含む。
【0063】
第10の態様は、自動厚さ制御システムが、チルト設定値に基づいて、成形容器のチルトの度合いを調整することを特徴とする、第1〜第9の態様のいずれかを含む。
【0064】
第11の態様は、自動厚さ制御システムが、温度設定値に基づいて、成形容器の堰の領域に供給される熱の量を調整することを特徴とする、第1〜第10の態様のいずれかを含む。
【0065】
第12の態様は、堰の近くに配置された冷却機構をさらに含み、自動厚さ制御システムが、温度設定値に基づいて、成形容器の堰の領域を能動的に冷却させることを特徴とする、第1〜第11の態様のいずれかを含む。
【0066】
第13の態様は、自動厚さ制御システムが、チルト設定値を計算してウェッジ変動の高頻度成分を最小化することを特徴とする、第1〜第12の態様のいずれかを含む。
【0067】
第14の態様は、自動厚さ制御システムが、温度設定値を計算してウェッジ変動の低頻度成分を最小化することを特徴とする、第1〜第13の態様のいずれかを含む。
【0068】
第15の態様は、自動厚さ制御システムが、ウェッジ変動の低頻度成分とは無関係にチルト設定値を計算することを特徴とする、第1〜第14の態様のいずれかを含む。
【0069】
第16の態様は、自動厚さ制御システムが、ウェッジ変動の高頻度成分とは無関係に温度設定値を計算することを特徴とする、第1〜第15の態様のいずれかを含む。
【0070】
第17の態様は、ガラスリボンの幅の一部が、ガラスリボンのビード領域を含まないことを特徴とする、第1〜第16の態様のいずれかを含み。
【0071】
第18の態様は、成形容器のチルトを調整する工程が、チルトの度合い及びウェッジ変化の量に基づいて、チルト設定値を決定する工程を含む、第1〜第17の態様のいずれかを含む。
【0072】
第19の態様は、堰の近くの温度を調整する工程が、温度及びウェッジ変化の量に基づいて、温度設定値を決定する工程を含む、第1から第18の態様のいずれかを含む。
【0073】
第20の態様は、調整されたウェッジ変動の高頻度成分に基づいて、成形容器のチルトを調整する工程、及び 、調整されたウェッジ変動の低頻度成分に基づいて、成形容器の堰の温度を調整する工程をさらに含む、第1から第19の態様のいずれかを含む。
【0074】
特許請求される主題の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の実施形態には、さまざまな修正及び変更がなされうることは、当業者にとって明白であろう。よって、本明細書は、このような修正及び変更が添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内に入ることを条件に、本明細書に記載のさまざまな実施形態の修正及び変更にも及ぶことが意図されている。
【0075】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0076】
実施形態1
ガラスリボンにおけるウェッジ変動を制御する方法であって、
成形容器の収束する側面上に溶融ガラスを流す工程、
前記成形容器のルートからある幅を有するガラスリボンを延伸する工程、
前記ガラスリボンの幅の少なくとも一部にわたって前記ウェッジ変動を測定する工程、及び
前記測定されたウェッジ変動に基づいて前記成形容器のチルト及び前記成形容器の堰の近くの温度を調整し、前記ガラスリボンの幅にわたる前記ウェッジ変動を低下させる工程
を含む方法。
【0077】
実施形態2
前記ウェッジ変動の高頻度成分に基づいて前記成形容器の前記チルトの変化を特定する工程をさらに含む、実施形態1に記載の方法。
【0078】
実施形態3
前記成形容器の前記チルトを調整する工程が、前記成形容器の第2端部に対して前記成形容器の第1端部の位置を調整する工程を含み、前記成形容器の前記第1端部及び前記第2端部が、前記成形容器の収束する側面に対して垂直であり、前記成形容器の長さによって分離されていることを特徴とする、実施形態1又は2に記載の方法。
【0079】
実施形態4
前記ウェッジ変動の低頻度成分に従った前記堰における前記温度の変化を特定する工程をさらに含む、実施形態1又は2に記載の方法。
【0080】
実施形態5
前記堰における前記温度を調整する工程が、前記成形容器の上部に配置された少なくとも1つの加熱機構のパワー出力を調整する工程を含む、実施形態4に記載の方法。
【0081】
実施形態6
前記堰における前記温度を調整する工程が、前記成形容器の周りに配置された冷却機構のパワー出力を調整する工程を含む、実施形態4に記載の方法。
【0082】
実施形態7
前記堰における前記温度を調整する工程が、少なくとも1つの加熱機構のパワー出力を調整する工程、及び、前記成形容器の周りに配置された冷却機構のパワー出力を調整する工程を含む、実施形態4に記載の方法。
【0083】
実施形態8
フュージョンドロー装置であって、
成形容器の長さを画定する第1端部及び第2端部を有する成形容器、及びその上面に配置されたトラフと、
前記成形容器を傾動させて、前記成形容器の前記第2端部に対する前記成形容器の前記第1端部の位置を変化させるチルト機構と、
前記成形容器の堰の近くの領域に熱を供給する少なくとも1つの加熱機構、及び
プロセッサと、コンピュータ読取及び実行可能命令セットを記憶するメモリとを備えたコントローラを含む自動厚さ制御システムであって、前記プロセッサによって実行された場合に:
延伸の底部において厚さゲージからウェッジ変動計算値を受け取り、
受け取った前記ウェッジ変動計算値に基づいて、前記ウェッジ変動の高頻度成分及び前記ウェッジ変動の低頻度成分を特定し、
チルト設定値を計算して前記ウェッジ変動の前記高頻度成分を低減し、
温度設定値を計算して前記ウェッジ変動の前記低頻度成分を低減し、
前記チルト機構に前記チルト設定値を供給し、
前記少なくとも1つの加熱機構に前記温度設定値を供給する、
自動厚さ制御システムと
を備えた、フュージョンドロー装置。
【0084】
実施形態9
前記自動厚さ制御システムが、前記チルト設定値に基づいて前記成形容器のチルトの度合いを調整することを特徴とする、実施形態8に記載のフュージョンドロー装置。
【0085】
実施形態10
前記自動厚さ制御システムが、前記温度設定値に基づいて前記成形容器の前記堰の前記領域に供給される熱の量を調整することを特徴とする、実施形態8に記載のフュージョンドロー装置。
【0086】
実施形態11
前記堰の近くに配置された冷却機構をさらに備え、前記自動厚さ制御システムが、前記成形容器の前記堰の前記領域を前記温度設定値に基づいて能動的に冷却させることを特徴とする、実施形態8に記載のフュージョンドロー装置。
【0087】
実施形態12
前記自動厚さ制御システムが、前記チルト設定値を計算して、前記ウェッジ変動の前記高頻度成分を最小化することを特徴とする、実施形態8に記載のフュージョンドロー装置。
【0088】
実施形態13
前記自動厚さ制御システムが、前記温度設定値を計算して、前記ウェッジ変動の前記低頻度成分を最小化することを特徴とする、実施形態8に記載のフュージョンドロー装置。
【0089】
実施形態14
前記自動厚さ制御システムが、前記ウェッジ変動の前記低頻度成分とは無関係に前記チルト設定値を計算することを特徴とする、実施形態8に記載のフュージョンドロー装置。
【0090】
実施形態15
前記自動厚さ制御システムが、前記ウェッジ変動の前記高頻度成分とは無関係に前記温度設定値を計算することを特徴とする、実施形態8に記載のフュージョンドロー装置。
【0091】
実施形態16
ガラスリボンの幅にわたってウェッジ変動を制御する方法であって、
成形容器の収束する側面上に溶融ガラスを流す工程、
前記成形容器のルートから、ある幅を有するガラスリボンを延伸する工程、
前記ガラスリボンの前記幅の一部にわたって前記ウェッジ変動を測定する工程、
前記ウェッジ変動の高頻度成分に基づいて前記成形容器のチルトを調整し、前記ガラスリボンの前記幅にわたる前記ウェッジ変動を低下させる工程、
前記ウェッジ変動の低頻度成分に基づいて前記成形容器の堰の温度を調整し、前記ガラスリボンの前記幅にわたる前記ウェッジ変動を低下させる工程、及び
前記ガラスリボンの前記幅の前記一部にわたって、調整されたウェッジ変動を測定する工程
を含む、方法。
【0092】
実施形態17
前記ガラスリボンの前記幅の前記一部が、前記ガラスリボンのビード領域を含まないことを特徴とする、実施形態16に記載の方法。
【0093】
実施形態18
前記成形容器の前記チルトを調整する工程が、前記チルトの度合い及び前記ウェッジ変化の量に基づいてチルト設定値を特定する工程を含むことを特徴とする、実施形態16に記載の方法。
【0094】
実施形態19
前記堰の近くの前記温度を調整する工程が、前記温度及び前記ウェッジ変化の量に基づいて温度設定値を特定する工程を含むことを特徴とする、実施形態16に記載の方法。
【0095】
実施形態20
前記調整されたウェッジ変動の高頻度成分に基づいて前記成形容器の前記チルトを調整する工程、及び
前記調整されたウェッジ変動の低頻度成分に基づいて前記成形容器の前記堰における前記温度を調整する工程
をさらに含む、実施形態16に記載の方法。