(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の結合剤、場合により、使用説明書、緩衝液及び血液、血漿、血清、尿、脳脊髄液(CSF)、骨髄、唾液若しくは痰試料分析用デバイス、を含む、診断用キット。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明を特定の実施形態に関して説明することにするが、この説明を限定の意味に解釈すべきでない。本発明の詳細な例示的実施形態を説明する前に、本発明を理解するために重要な定義を与える。
【0050】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用する場合、単数形「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、文脈による別段の明白な指図がない限り、それぞれの複数形も含む。
【0051】
本発明に関して、用語「約」及び「おおよそ」は、当業者によって問題の特徴の技術的効果がまだ保証されると解釈されることになる精度区画を示す。この用語は、示されている数値からの±20%、好ましくは±15%、より好ましくは±10%及びよりいっそう好ましくは±5%の偏差を通常は示す。
【0052】
当然のことながら、用語「含む」は限定的でない。本発明では、用語「からなる」は、用語「含む(comprising of)」の好ましい実施形態であると考えられる。以降、群が少なくともある特定の数の実施形態を含むと定義されている場合、これは、これらの実施形態のみから好ましくはなる群も包含することが意図される。
【0053】
さらに、本明細書及び添付の特許請求の範囲における用語「第1の」、「第2の」、「第三の」又は「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」など及びこれらに類するものは、類似の要素間の区別のために使用され、必ずしも起こった順番又は発生した順番を記載するために使用されるとは限らない。そのように使用される前記用語が適切な状況下では交換可能であること、本明細書に記載する本発明の実施形態が、本明細書に記載又は図示する以外の順序での施行が可能であることを理解されたい。
【0054】
用語「第1の」、「第2の」、「第三の」又は「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」などが方法又は使用のステップに関する場合、本明細書において上又は下で述べる本出願では別段の指示がない限り、これらのステップ間には時間の統一性も時間間隔の統一性もなく、すなわち、これらのステップを同時に行ってもよく、又はそのようなステップ間に数秒、数分、数時間、数日、数週間、数カ月若しくはさらには数年の時間間隔があってもよい。本発明が本明細書に記載する特定の方法論、プロトコル、タンパク質、細菌、ベクター、試薬などに限定されないことを理解されたい。これらは変わってもよいからである。本明細書において使用する専門用語が、特定の実施形態の説明を目的にしたものに過ぎずないこと、及び添付の請求の範囲によってしか限定されない本発明の範囲を限定することを意図したものでないことも理解されたい。別段の定義がない限り、本明細書において使用する全ての専門及び科学用語は、当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。
【0055】
本発明に関して、用語「結合剤」は、任意の分子、例えば、それらがHNLの本明細書に記載の領域又はエピトープの配列と特異的に結合することを可能にする天然及び/又は修飾アミノ酸を含むペプチド、例えば、
図1(3D画像の色の濃い部分)で示されるような前記分子の内及び/又は外縁に露出されているHNLの領域と結合する結合剤を示す。結合剤は、配列番号1で示されるようなHNLのアミノ酸51〜76及び/又は82〜102及び/又は113〜132及び/又は141〜156を含む/そのようなアミノ酸によって構成されるアミノ酸を特異的に認識し、特に、配列番号26のペプチドによって構成される不連続の、好ましくは非直鎖状の、立体構造エピトープを特異的に認識する。好ましい結合剤は、抗体又はそれらの機能的断片若しくは誘導体である。
【0056】
本出願に関して、エピトープは、上で定義したHNLと特異的に結合する結合剤によって認識されることを条件に、わずかに異なってもよく、例えば、約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一でありうる。好ましくは、認識される結合剤は、好中球によって産生されるHNLである。
【0057】
本出願に関して、結合剤の結合特異性は、上記のHNLと結合する結合剤の結合親和性の、例えば少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%に等しいか又はそれより高い特異性であってもよい。
【0058】
本発明の意義の範囲内で、「有意に(significantly)」結合されるはまた、可能性のある結合パートナーと同等に接近可能な複数の異なる抗原のプールの中から、HNLが、HNLとは異なる他のいずれの(any)抗原より(速度論的な意味で)少なくとも10倍、例えば50倍、例えば100倍又は以上高い頻度で結合されることを意味する。そのような反応速度測定は、Biacore装置で行うことができる。
【0059】
本明細書で使用する場合の用語「レベル」は、試料中で検出されるHNLの量又は濃度を指す。
【0060】
「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチドのあらゆる長さの高分子形態、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドのどちらか、である。この用語は、分子の一次構造を単に指す。したがって、この用語は、二本鎖及び一本鎖DNA及びRNAを含む。この用語はまた、当技術分野において公知の標識、メチル化、「キャップ」、天然に存在する1つ又は複数のヌクレオチドのアナログ(an analog)での置換、及びヌクレオチド間修飾、例えば非荷電結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を含む公知のタイプの修飾、並びにポリヌクレオチドの未修飾形態をも含む。
【0061】
本発明に従って、モノクローナル抗体又はその機能的断片は、例えば蛍光部分、放射性部分、発色基質などで、誘導体化されることがある。
【0062】
典型的な免疫グロブリン(抗体)構造単位が四量体を含むことは公知である。各四量体は、各対が1本の「軽」鎖(約25kD)と1本の「重」鎖(約50〜70kD)を有する、同一の2対のポリペプチド鎖で構成されている。各鎖のN末端は、抗原認識を主に担当する、アミノ酸約100〜110以上の可変領域を規定する。用語可変軽鎖(variable light chain,VL)及び可変重鎖(variable heavy chain,VH)は、それぞれ、これらの軽鎖及び重鎖を指す。各鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能を主に担当する定常領域を規定する。免疫グロブリンは、それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に依存して異なるクラスに割り当てることができる。重鎖は、ミュー(μ)、デルタ(δ)、ガンマ(γ)、アルファ(α)及びイプシロン(ε)として分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEとして定義する。これらのうちの幾つかは、サブクラス又はアイソタイプ、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2にさらに分けられることがある。異なるアイソタイプは異なるエフェクター機能を有し、例えば、IgG1及びIgG3アイソタイプは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を有する。ヒト軽鎖は、カッパ(K)及びラムダ([ラムダ])軽鎖として分類される。軽鎖及び重鎖内の可変及び定常領域は、アミノ酸約12以上の「J」領域によって連結されており、重鎖は、アミノがさらに約10個多い「D」領域も含む。一般に、Fundamental Immunology、7章(Paul,W.編、第2版、Raven Press、N.Y.(1989))を参照されたい。
【0063】
アロタイプは、免疫原性であることができ且つヒトの特定のアレル(alleles)によってコードされている抗体配列のバリエーションであり、しばしば定常領域(constant region)のバリエーションである。アロタイプは、ヒトIGHC遺伝子のうちの5つ、IGHG1、IGHG2、IGHG3、IGHA2及びIGHE遺伝子について同定されており、それぞれ、GIm、G2m、G3m、A2m及びEmアロタイプと呼ばれる。抗体の構造及び産生の詳細な説明については、参照によりその全体が本明細書に組み入れられているRoth,D.B.及びCraig,N.L.、Cell、94:411〜414(1998)を参照されたい。簡単に言うと、重鎖及び軽鎖免疫グロブリン配列をコードするDNAを産生するプロセスは、主としてB細胞の発生中に起こる。様々な免疫グロブリン遺伝子セグメントの再編成及び連結前、V、D、J及び定常(C)遺伝子セグメントは、一般に、単一の染色体上に比較的ごく近接して見いだされる。B細胞分化中に、V、D、J(又は軽鎖遺伝子の場合はV及びJのみ)遺伝子セグメントの各々の適切なファミリーメンバーのうちの1つが組み換えられて、重及び軽免疫グロブリン遺伝子の機能的に再編成された可変領域を形成する。この遺伝子セグメント再編成プロセスは、逐次的であるように見える。先ず、重鎖のDとJの連結部が作られ、その後、重鎖のVとDJの連結部及び軽鎖のVとJの連結部が作られる。V、D及びJセグメントの再編成に加えて、軽鎖のVセグメントとJセグメントが連結される位置及び重鎖のDセグメントとJセグメントが連結される位置での可変的組換えによって、免疫グロブリン重及び軽鎖の一次レパートリーのさらなる多様性が生ずる。軽鎖のそのようなバリエーションは、V遺伝子セグメントの最後のコドン及びJセグメントの最初のコドン内で通常は起こる。連結に関して同様の不正確さが重鎖染色体のDセグメントとJHセグメント間に存在し、10ヌクレオチドほどもの多くのヌクレオチドにわたることもある。さらに、D遺伝子セグメントとJH遺伝子セグメントの間及びVH遺伝子セグメントとD遺伝子セグメントの間に、ゲノムDNAによってコードされていない幾つかのヌクレオチドが挿入されることもある。これらのヌクレオチドの付加は、N領域多様性として公知である。可変領域遺伝子セグメントのそのような再編成及びそのような連結中に起こることがある可変組換えの正味の効果は、一次抗体レパートリーの産生である。
【0064】
用語「抗体」を最も広い意味で使用しており、この用語は、完全に構築された抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)、抗原に結合することができる抗体断片(Fab’、F’(ab)2、Fv、一本鎖抗体、ダイアボディ(diabodies)を含む)、及び所望の生物学的活性を示すのであれば上述のものを含む組換えペプチドを含む。化学的に誘導体化された抗体を含む、無傷の分子及び/又は断片の多量体又は凝集物が考えられる。IgG、IgM、IgD、IgA及びIgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2を含む、あらゆるアイソタイプクラス若しくはサブクラス、又はあらゆるアロタイプ、の抗体が考えられる。
【0065】
用語「超可変(hypervariable)」領域は、相補性決定領域(complementarity determining region)すなわちCDRからのアミノ酸残基(すなわち、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991)に記載の軽鎖可変ドメインの残基24〜34(L1)、50〜56(L2)及び89〜97(L3)並びに重鎖可変ドメインの残基31〜35(H1)、50〜65(H2)及び95〜102(H3)を指す。単一のCDRであっても、CDRのすべてを含有する抗原結合部位全体より低い親和性でだが、抗原を認識し、抗原に結合されてよい。
【0066】
超可変「ループ」からの残基の代替定義は、Chothiaら、J.Mol.BioL、196:901〜917(1987)によって、軽鎖可変ドメインの残基26〜32(L1)、50〜52(L2)及び91〜96(L3)並びに重鎖可変ドメインの残基26〜32(H1)、53〜55(H2)及び96〜101(H3)と記載されている。
【0067】
「フレームワーク」すなわちFR残基は、超可変領域残基以外の可変領域残基である。
【0068】
「抗体断片」は、無傷免疫グロブリンの一部分、例えば、無傷抗体の抗原結合又は可変領域を含み、抗体断片から形成された多重特異性(二重特異性、三重特異性など)抗体を包含する。免疫グロブリンの断片は、組換えDNA技術によって産生されることもあり、又は無傷抗体の酵素的若しくは化学的切断によって産生されることもある。抗体断片の非限定的な例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv(可変領域)、ドメイン抗体(dAb、これはVHドメインを含有する;Wardら、Nature、341、544〜546、1989)、相補性決定領域(CDR)断片、一本鎖抗体(scFv、これは単一ポリペプチド鎖上にVH及びVLドメインを含有する)(Birdら、Science、242:423〜426、1988、及びHustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 85:5879〜5883、1988、場合によってはポリペプチドリンカーを含むもの;並びに場合によっては多重特異性のもの、Gruberら、J.Immunol、152:5368(1994))、一本鎖抗体断片、ダイアボディ(別の鎖の相補的VL及びVHドメインと対合する単一ポリペプチド鎖上のVH及びVLドメイン)(EP404,097;WO93/11161;及びHolligerら、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA、90:6444〜6448(1993))、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ(ペプチドリンカーによって(ヒンジレス)又はIgGヒンジによってCH3に融合されているscFv)、線形抗体(タンデムFdセグメント(VH−CH1−VH−CH1)(Zapataら、Protein Eng.、8(10):1057〜1062(1995));キレート組換え抗体(crAb、これは、同じ抗原の2つの隣接するエピトープと結合することができる)、ビボディ(二重特異性Fab−scFv)又はトリボディ(三重特異性Fab−(scFv)(2))(Schoonjansら、J Immunol.165:7050〜57、2000;Willemsら、J.Chromatogr.B.Analyt.Technol.Biomed.Life Sci.、786:161〜76、2003)、ナノボディ(重鎖のおおよそ15kDa可変ドメイン)(Cortez−Retamozoら、Cancer Research 64:2853〜57、2004)、抗原結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体(VHが、ヒンジ、CH1、CH2及びCH3ドメインを含有する定常領域と組み換えられる)(Desmyterら、J.Biol.Chem.、276:26285〜90、2001;Ewertら、Biochemistry、41:3628〜36、2002;米国特許出願公開第2005/0136049号及び同第2005/0037421号)、VHH含有抗体、重鎖抗体(HCAb、これは構造H2L2を有する2本の重鎖のホモ二量体である)、又はこれらのバリアント(variants,変異体)若しくは誘導体、並びに抗体が所望の生物学的活性を保持するのであれば、ポリペプチドとの特異的抗原結合をもたらすために十分である免疫グロブリンの少なくとも一部分、例えば、CDR配列が挙げられる。
【0069】
用語「バリアント」は、可変領域に少なくとも1つのアミノ酸置換、欠失若しくは挿入を含有する抗体のポリペプチド配列を指すか、又はそのバリアントが所望の結合親和性若しくは生物学的活性を保持することを条件に、可変領域と等価の部分を指す。
【0070】
用語「修飾」は、1つ又は複数のアミノ酸変化(置換、挿入又は欠失を含む);HNL結合活性に干渉しない化学的修飾;診断剤との結合(conjugation)による共有結合性修飾;標識(例えば、放射性核種又は様々な酵素での標識);共有結合性ポリマー結合、例えばPEG化(ポリエチレングリコールでの誘導体化);及び非天然アミノ酸の化学合成による挿入又は置換を含むが、これらに限定されない。一部の実施形態では、修飾ポリペプチド(抗体を含む)は、非修飾分子の結合特性を保持することになる。
【0071】
用語「誘導体」は、診断剤との結合、標識(例えば、放射性核種又は様々な酵素での標識)、共有結合性ポリマー結合、例えばPEG化(ポリエチレングリコールでの誘導体化)及び非天然アミノ酸の化学合成による挿入又は置換によって共有結合的に修飾されている、抗体又はポリペプチドを指す。一部の実施形態では、誘導体は、非誘導体化(underivatized)分子の結合特性を保持することになる。
【0072】
本明細書で使用する場合の用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体(抗体という用語は本明細書で定義する通り)を指し、すなわち、前記集団を構成する個々の抗体は、ハイブリドーマ技術から産生されようと、組換えDNA技術から産生されようと、少量で存在することがある可能性のある天然に起こる修飾又は代替的翻訳後修飾を除いて、同一である。モノクローナル抗体の非限定的な例としては、マウス、ウサギ、ラット、ニワトリ、キメラ、ヒト化若しくはヒト抗体、完全に構築された抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)、抗原に結合することができる抗体断片(Fab’、F’(ab)2、Fv、一本鎖抗体、ダイアボディを含む)、マキシボディ(maxibodies)、ナノボディ(nanobodies)、及び所望の生物学的活性を示すのであれば上述のものを含む組換えペプチド、又はこれらのバリアント若しくは誘導体が挙げられる。よりヒトに近くなるように抗体をヒト化(humanizing)又は修飾することは、例えば、Jonesら、Nature 321:522 525(1986);Morrisonら、Proc.Natl.Acad.ScLl U.S.A.、81:6851 6855(1984);Morrison及びOi、Adv.Immunol、44:65 92(1988);Verhoeyerら、Science 239:1534 1536(1988);Padlan、Molec.Immun.、28:489 498(1991);Padlan、Molec.Immunol、31(3):169 217(1994);並びにKettleborough,CA.ら、Protein Engineering.、4(7):773 83(1991);Co,M.S.ら、(1994)、J.Immunol 152、2968〜2976;Srudnickaら、Protein Engineering 7:805〜814(1994)に記載されており、これらの参考文献の各々はその全体が参照により本明細書に組み入れられている。ヒトモノクローナル抗体を単離するための1つの方法は、ファージディスプレイ技術の使用である。ファージディスプレイは、例えば、Dowerら、WO91/17271;McCaffertyら、WO92/01047;並びにCaton及びKoprowski、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、87:6450〜6454(1990)に記載されており、これらの参考文献の各々はその全体が参照により本明細書に組み入れられている。ヒトモノクローナル抗体を単離するためのもう1つの方法は、内因性免疫グロブリン産生がなく、ヒト免疫グロブリン座位(loci)を含有するように操作されている、トランスジェニック動物の使用である。例えば、各々その全体が参照により本明細書に組み入れられている、Jakobovitsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:2551(1993);Jakobovitsら、Nature、362:255〜258(1993);Bruggermannら、Year in Immuno.、7:33(1993);WO91/10741、WO96/34096、WO98/24893、又は米国特許出願公開第2003/0194404号、同第2003/0031667号若しくは同第2002/0199213号を参照されたい。
【0073】
本発明の抗体は、ラクダ科動物からの抗体などの、重鎖二量体も含む。ラクダ科動物における重鎖二量体IgGのVH領域は軽鎖と疎水性相互作用をする必要がないので、通常は軽鎖と接触する重鎖の領域がラクダ科動物では疎水性アミノ酸残基に変更される。重鎖二量体IgGのVHドメインは、VHHドメインと呼ばれる。本発明において使用するための抗体は、シングルドメイン抗体(dAb)及びナノボディ(例えば、Cortez−Retamozoら、Cancer Res.64、2853〜2857、2004を参照されたい)を含む。
【0074】
本明細書で使用する場合、「V領域」は、CDR3及びフレームワーク4を含む、フレームワーク1、CDR1、フレームワーク2、CDR2及びフレームワーク3のセグメントを含む抗体可変領域ドメインであって、前記セグメントがB細胞分化中の重鎖及び軽鎖V領域遺伝子の再編成の結果としてVセグメントに付加される抗体可変領域ドメインを指す。本明細書で使用する場合の「Vセグメント」は、V遺伝子によってコードされているV領域(重鎖又は軽鎖)の領域を指す。
【0075】
本明細書で使用する場合、「相補性決定領域(CDR)」は、軽鎖及び重鎖可変領域によって確立される4つの「フレームワーク」領域に割り込んでいる、各鎖内の3つの超可変領域を指す。CDRは、抗原のエピトープとの結合を主に担当する。各鎖のCDRは、通常は、N末端から開始して逐次的に番号付与してCDR1、CD2及びCDR3と呼ばれ、そしてまた、通常は、その特定のCDRが位置する鎖によって定義される。したがって、例えば、VH CDR3は、それが見いだされる抗体の重鎖の可変ドメイン内に位置し、これに対してVL CDR1は、それが見いだされる抗体の軽鎖の可変領域からのCDR1である。異なる軽鎖又は重鎖のフレームワーク領域の配列は、種内で比較的保存される。構成要素軽鎖及び重鎖の複合フレームワーク領域である、抗体のフレームワーク領域は、三次元空間でのCDRの配置決め及び整列に役立つ。
【0076】
CDR及びフレームワーク領域のアミノ酸配列は、当技術分野において周知の様々な定義、例えば、カバット(Kabat)、コチア(Chothia)、国際ImMunoGeneTicsデータベース(IMGT)、及びAbMを使用して決定することができる(例えば、Johnsonら、上掲;Chothia及びLesk、1987、Canonical structures for the hypervariable regions of immunoglobulins.J.Mol.Biol.196、901〜917;Chothia C.ら、1989、Conformations of immunoglobulin hypervariable regions.Nature 342、877〜883;Chothia C.ら、1992、structural repertoire of the human VH segments J.Mol.Biol.227、799〜817;Al−Lazikaniら、J.Mol.Biol 1997、273(4)を参照されたい)。抗原結合部位の定義は、以下のものにも記載されている:Ruizら、IMGT、the international ImMunoGeneTics database、Nucleic Acids Res.、28、219〜221(2000);及びLefranc,M.−P.IMGT、the international ImMunoGeneTics database、Nucleic Acids Res.Jan 1;29(1):207〜9(2001);MacCallumら、Antibody antigen interactions:Contact analysis and binding site topography、J.Mol.Biol、262(5)、732〜745(1996);及びMartinら、Proc.Natl Acad.Sci.USA、86、9268〜9272(1989);Martinら、Methods EnzymoL,203、121〜153(1991);Pedersenら、Immunomethods、1、126(1992);及びReesら、In Sternberg M.J.E.(編集)、Protein Structure Prediction.Oxford University Press、Oxford、141〜172(1996)。
【0077】
「エピトープ」又は「抗原決定基」は、抗体が結合する抗原上の部位を指す。エピトープは、連続アミノ酸、又はタンパク質の三次折り畳みによって並置された非連続アミノ酸、両方から形成されうる。連続アミノ酸から形成されるエピトープは、変性溶媒に曝露されても概して保持されるが、三次折り畳みによって形成されるエピトープ(不連続エピトープとも呼ばれる)は、変性溶媒で処理されると概して失われる。エピトープは、概して少なくとも3、より通常は少なくとも5又は8〜10個のアミノ酸を固有の空間立体構造で含む。エピトープの空間立体構造を決定する(determining)方法としては、例えば、X線結晶解析及び2次元核磁気共鳴が挙げられる。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology、66巻、Glenn E.Morris編(1996)を参照されたい。
【0078】
用語「組換え」は、例えば細胞又は核酸、タンパク質若しくはベクターに関して使用する場合、細胞、核酸、タンパク質又はベクターが、異種核酸若しくはタンパク質の導入、又はネイティブ(native)核酸若しくはタンパク質の改変(alteration)、によって修飾されている(modified)こと、或いは細胞が、そのように修飾された細胞に由来する(derived)ことを示す。したがって、例えば、組換え細胞は、ネイティブ(非組み換え)型の細胞内では見いだされない遺伝子を発現するか、又は別様に(otherwise)異常に発現されるか、低発現される(under expressed)か、若しくは全く発現されてないネイティブ遺伝子を発現する。本明細書における用語「組換え核酸」は、本来、in vitroで、一般に、核酸の操作によって、例えばポリメラーゼ及びエンドヌクレアーゼを使用して形成される、通常は自然界に見られない形態の核酸を意味する。このようにして、異なる配列の作動可能な連結が達成される。したがって、直鎖状の形態の単離された核酸、又は正常に連結されないDNA分子のライゲーション(ligating)によってin vitroで形成された発現ベクターは、両方とも、本発明では組換え体と見なす。一旦組換え核酸が作製され、宿主細胞又は生物に再導入されると、その核酸が非組換え的に、すなわちin vitro操作ではなく宿主細胞のin vivo細胞機構を使用して、複製されることになることは理解しているが、そのような核酸は、一旦組換え産生されれば、後に非組換え的に複製されたとしても、本発明では組換え体となお見なす。同様に、「組換えタンパク質」は、組換え技術を使用して、すなわち、上に示したような組換え核酸の発現によって、製造されるタンパク質である。
【0079】
抗体の重鎖可変領域又は軽鎖可変領域の1、2及び/又は3つのCDRを含む様々な組成物(a variety of compositions)を、当技術分野において公知の手法によって産生されてよい。
【0080】
本明細書に記載するモノクローナル抗体をコードする単離された核酸であって、宿主細胞よって認識される制御配列に場合によっては作動可能に(operably)連結されている核酸;前記核酸を含むベクター及び宿主細胞;並びに前記抗体を産生させるための組換え技術であって、前記宿主細胞を培養して前記核酸を発現させるステップと、場合により、前記宿主細胞培養物又は培養培地から前記抗体を回収するステップとを含む組換え技術も、提供する。
【0081】
目的の免疫グロブリンからの関連アミノ酸配列は、直接タンパク質シークエンシングによって決定できると予想され、コードされる好適なヌクレオチド配列をユニバーサルコドン表に従って設計することができる。或いは、モノクローナル抗体をコードするゲノム又はcDNAを単離し、そのような抗体を産生する細胞から従来の手順を使用して(例えば、モノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子と特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)シークエンシングされてよい。クローニングは、標準的手法を使用して行われる(例えば、Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Guide、第1〜3巻、Cold Spring Harbor Pressを参照されたく、この参考文献は参照により本明細書に組み入れられている)。例えば、cDNAライブラリーをポリA+mRNA、例えば膜結合型mRNA、の逆転写によって構築し、ヒト免疫グロブリンポリペプチド遺伝子配列に特異的なプローブを使用してそのライブラリーをスクリーニングしてもよい。しかし、一実施形態では、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、目的の免疫グロブリン遺伝子セグメント(例えば、軽鎖又は重鎖可変セグメント)をコードするcDNA(又は完全長cDNAの部分)を増幅させる。増幅された配列は、あらゆる好適なベクター、例えば、発現ベクター、ミニ遺伝子ベクター、又はファージディスプレイベクターに、容易にクローニングすることができる。目的の(of interest)免疫グロブリンポリペプチドの何らかの部分の配列を決定することが可能でありさえすれば使用される特定のクローニング方法が重要でないことは理解されると予想される。
【0082】
タンパク質又はペプチドに言及するときの、抗体と「特異的に(又は選択的に)結合する」という語句、又は「と特異的に(又は選択的に)免疫反応性の」という語句は、タンパク質と他の生物学的物質の異種集団中のタンパク質の存在を決定する結合反応を指す。したがって、指定イムノアッセイ条件下では、明記する抗体は、特定のタンパク質配列とバックグラウンドの少なくとも2倍結合し、より典型的にはバックグラウンドの10〜100倍より多く(more than 10 to 100 times)結合する。この用語は、HNLと結合する、特に、配列番号26のペプチドによって構成される不連続エピトープと結合する、結合剤、抗体又はその機能的断片若しくは誘導体の能力も指す。
【0083】
一部の実施形態では、約10
−6M〜10
−8Mの親和性KDでHNLと結合する、単離された抗体又は誘導体又は断片を提供する。
【0084】
本明細書で使用する場合の用語「結合親和性」又は「親和性」は、各抗原−抗体相互作用に関連する平衡解離定数(K
D)を指す。一部の実施形態では、本明細書に記載する抗体は、HNLに対するK
Dによって測定してpH7.4で1×10
−6M以下の範囲、又は下は10
−16M以下(例えば、10
−6、10
−7、10
−8、10
−9、10
−10、10
−11、10
−12、10
−13、10
−14、10
−15、10
−16M以下)に及ぶ範囲の結合親和性(この場合、より低いKDがより良好な親和性を示す)などの、望ましい特性を示す。平衡解離定数は、例えばBIAcoreを使用する、溶液平衡アッセイで決定することができる。
【0085】
結合親和性は、速度論的結合速度(kinetic on-rate)(一般に、単位時間当りの濃度、例えばM/s、の単位で報告される)で割った速度論的解離速度(kinetic off-rate)(一般に、時間の逆数、例えば秒
−1、の単位で報告される)の比に直接関係づけられる。解離速度分析はin vivoで起こる相互作用を推定することができる。遅い解離速度によって、長期間にわたる、より大きい相互作度が予測されるからである。
【0086】
他の実施形態では、本明細書に記載する抗体は、HNLに対する特異性を示す、又はHNLと特異的に結合する。本明細書で使用する場合、抗体は、異なるファミリーの他の無関係なタンパク質と比較してHNLに対して有意に高い結合親和性を有し、その結果としてHNLを区別することができる場合、HNL「に対して特異的」である、又はHNL「に特異的に結合する」。一部の実施形態では、そのような抗体は、マウス、ラット又は霊長類(primate)HNLなどの、他の種のHNLと交差反応することもあるが、他の実施形態では、前記抗体は、ヒトHNLのみと結合する。上述のいずれの抗体も、モノクローナル抗体であることがあり、又はキメラ、ヒト化、若しくはヒト抗体であることがある。一部の実施形態では、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4アイソタイプなどの、IgGアイソタイプである。
【0087】
別の態様では、本発明の実施形態は、上述の抗体のいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子、調節制御配列に作動可能に連結されている前記単離された核酸を含む発現ベクター、そのような単離された核酸分子又はベクターを含む宿主細胞、及びそのような宿主細胞を使用して抗体を産生させる方法を含む。そのような産生方法は、核酸が発現されて抗体を産生するために好適な条件下で宿主細胞を培養するステップ、及び場合により、前記宿主細胞又は培養培地から前記抗体を回収するステップを含む。関連実施形態では、上述の方法によって産生される単離された抗体又は作用物質(agent)を提供する。
【0088】
本明細書に記載する実施形態は、上述の結合剤、例えば抗体、のいずれかを含有する組成物、例えば診断用組成物を含む。
【0089】
一部の実施形態では、本発明は、
1)結合剤、例えば、配列番号8〜13、14〜19、及び20〜25で示されるようなCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2若しくはCDRL3、又はそれらの誘導体、のいずれか1、2、3、4、5又は6つを保持する抗体、
2)結合剤、例えば、CDRH1、CDRH2、CDRH3のすべてを保持し、場合によりそのようなCDRに1つ又は2つの変異を含む抗体であって、配列番号26に含まれるHNLエピトープとの特異的結合を示す抗体、
3)結合剤、例えば、CDRL1、CDRL2、CDRL3のすべてを保持し、場合によりそのようなCDRに1つ又は2つの変異を含む抗体、場合によりそのようなCDRに1つ又は2つの変異を含む抗体であって、配列番号26に含まれるHNLエピトープとの特異的結合を示す抗体、
4)結合剤、例えば抗体であって、例えばX線結晶解析によって判定して、本明細書に記載の抗体とHNLの同じエピトープに結合する抗体、或いは(or)(例えば、競合的ELISA若しくはBiacoreによって又は当技術分野において公知の他の方法によって評価して)約75%より多く、約80%より多く、又は約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%若しくは95%より多くが(ヒト)HNLと結合するための、配列番号26に含まれるアミノ酸を含む立体構造エピトープに結合する抗体、
に関する。
【0090】
別の態様では、HNLに対する、特に配列番号26によって構成されるエピトープに対する、特異的結合親和性を保持する本発明による抗体を変異させる方法を提供する。前記抗体は、そのような方法によって産生される抗HNL抗体であることができる。変異の候補残基としては、指向された接触部位、又は抗体−抗原結合界面に沿った電荷間相互作用の形成に寄与する部位である残基が挙げられる。他の候補残基としては、抗体の保存領域内の残基が挙げられる。さらに他の候補残基としては、少なくとも10%表面露出されており、CDR残基の4.5Å(オングストローム)以内にある、フレームワーク残基が挙げられる。さらなる候補残基としては、CDR又は選択フレームワーク残基に近接している、アミノ酸の3次元構造モデルの目視検査によって選択されるものが挙げられる。所望のアミノ酸をアミノ酸配列内の単一又は複数の位置で変異させることができる。例えば、単一変異として何らかの差異を示す結合効果を生じさせる変異を二重、三重又はより多重の変異として組み合わせることができる。そのような要領で変異させた抗体を、次に、差異を示す、例えば改善された、結合についてスクリーニングし、そしてその後、他の特性についてさらにスクリーニングすることができる。
【0091】
一態様では、前記抗体の重鎖可変領域内の少なくとも1、2、3、4、5、6つ以上の残基が欠失され、別の残基で置換される。別の態様では、前記抗体の軽鎖可変領域内の少なくとも1、2、3、4、5、6つ以上の残基が欠失され、異なる残基で置換される。一部の態様では、前記抗体の特異的結合活性が維持されることを条件に、前記抗体の軽鎖可変領域からの少なくとも1つの残基及び前記抗体の重鎖可変領域からの少なくとも1つの残基が異なる残基で置換される。
【0092】
一実施形態では、抗体は、配列番号8〜13、14〜19、及び20〜25からなる群から選択されるアミノ酸配列の少なくとも1、2、3、4、5つ又はすべてを含む。一部の実施形態では、抗体は、3つの軽鎖CDRすべて、3つの重鎖CDRすべて、又は6つCDRすべてを含む。一部の実施形態では、抗体からの2つの軽鎖CDRを異なる抗体からの第三の軽鎖CDRと組み合わせることもある。或いは、1つの抗体からのCDRL1と異なる抗体からのCDRL2及びさらに別の抗体からのCDRL3とを、特に前記CDRが高相同性である場合、組み合わせることができる。同様に、抗体からの2つの重鎖CDRと異なる抗体からの第三の重鎖CDRとを組み合わせてもよく、又は1つの抗体からのCDRH1と異なる抗体からのCDRH2及びさらに別の抗体からのCDRH3とを、特に前記CDRが高相同性である場合に、組み合わせることができる。
【0093】
抗体核酸の1つの源(source)は、目的の抗原で免疫処置した動物からのB細胞を得、それを不死細胞と融合させることよって産生された、ハイブリドーマである。或いは、免疫処置した動物のB細胞(又は全脾臓)から核酸を単離することができる。抗体をコードする核酸のさらに別の源は、例えばファージディスプレイ技術によって産生された、そのような核酸のライブラリーである。目的のペプチド(peptides)、例えば、所望の結合特性を有する可変領域ペプチドをコードするポリヌクレオチドは、パンニング(panning)などの標準的手法によって同定することができる。
【0094】
免疫グロブリンポリペプチドの全可変領域をコードする配列を決定してもよいが、可変領域の一部分、例えば、CDRをコードしている部分をシークエンシングするだけで十分にあることもあると予想される。シークエンシングは、標準的手法を使用して行われる(例えば、Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Guide、第1〜3巻、Cold Spring Harbor Press、及びSanger,F.ら(1977)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、74:5463〜5467を参照されたく、これらの参考文献は、参照により本明細書に組み入れられている)。クローニングされた核酸の配列を免疫グロブリン遺伝子及びcDNAの公開配列と比較することにより、当業者は、シークエンシングされた領域に依存して、(i)ハイブリドーマ免疫グロブリンポリペプチド(重鎖のアイソタイプを含む)の生殖細胞系列セグメント使用頻度(usage)と、(ii)N領域付加及び体細胞変異プロセスの結果として生ずる配列を含む重鎖及び軽鎖可変領域の配列とを、容易に判定されてよい。1つの免疫グロブリン遺伝子配列情報源は、メリーランド州ベセスダの国立衛生研究所、国立医学図書館、国立生物学情報センターである。
【0095】
本明細書で使用する場合、「単離された」核酸分子又は「単離された」核酸配列は、
(1)天然の核酸源中で同定され、通常は付随する少なくとも1つの混入核酸分子から分離された、又は
(2)バックグラウンド核酸からクローニングされた、増幅された、タグが付けられた、若しくは別様に区別された、
いずれかである核酸分子であり、したがって、目的の核酸の配列を決定する(determined)ことができる。単離された核酸分子は、該核酸分子(it)が自然界で見いだされる形態又は環境(setting)におけるもの以外である。しかし、単離された核酸分子は、抗体を通常に発現する細胞に含有される核酸分子を、例えば、該核酸分子が天然細胞のものとは異なる染色体位置にある場合には含む。
【0096】
一旦単離したら、そのDNAを発現制御配列に作動可能に連結してもよく、又は発現ベクター内に配置してもよく、それをその後、そうしなければ(otherwise)免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞にトランスフェクトして、それらの組換え宿主細胞においてモノクローナル抗体の合成を誘導する。抗体の組換え産生は、当技術分野において周知である。発現制御配列は、特定の宿主生物における作動可能に連結されたコード配列の発現に必要なDNA配列を指す。原核生物に好適である制御配列としては、例えば、プロモーター、場合によってはオペレーター配列、及びリボソーム結合部位が挙げられる。真核細胞がプロモーター、ポリアデニル化シグナル、及びエンハンサーを利用することは公知である。核酸は、別の核酸配列と機能的関係に置かれているとき、作動可能に連結されている。例えば、プレ配列又は分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するタンパク質前駆体として発現される場合、ポリペプチドのDNAに作動可能に連結されており、プロモーター若しくはエンハンサーは、コード配列の転写(transcription)に影響を与える場合、コード配列に作動可能に連結されており、又はリボソーム結合部位は、翻訳(translation)を促進する(facilitate)ように位置決めする場合、コード配列に作動可能に連結されている。一般に、作動可能に連結されるは、連結されるDNA配列が隣接していること、及び分泌リーダーの場合は、隣接しており且つ読み取り相にあることを意味する。しかし、エンハンサーが隣接している必要はない。連結は、従来の制限部位でのライゲーションによって果たされる。そのような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーが従来の慣例に従って使用される。
【0097】
多くのベクターが当技術分野において公知である。ベクター成分は、シグナル配列(例えば、抗体の分泌を誘導されてよい)、複製起点、1つ又は複数の選択マーカー遺伝子(例えば、抗生物質若しくは他の薬物耐性を付与する、栄養要求性欠損を補う、又は培地で入手できない重要な栄養素を供給されてよい)、エンハンサー要素、プロモーター及び転写終結配列のうちの1つ又は複数を含むことがあり、これらのすべてが当技術分野において周知である。
【0098】
トランスフェクション又は形質転換によってベクターに含まれた遺伝子情報を発現する例示的宿主細胞としては、原核生物、酵母又は高等真核生物(すなわち、多細胞生物)細胞が挙げられる。原核宿主細胞としては、真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物、例えば、腸内細菌科、例えば大腸菌属、例えば大腸菌(E.coli)、エンテロバクター属、エルウィニア属、クレブシエラ属、プロテウス属、サルモネラ属、例えばネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、セラチア属、例えば霊菌(Serratia marcescans)、及び赤痢菌属、並びに桿菌、例えば枯草菌(B.Subtilis)及びバチルス・リケニフォルミス(B.Licheniformis)、シュードモナス属、及びストレプトマイセス属が挙げられる。真核微生物、例えば糸状菌又は酵母は、組換えポリペプチド又は抗体の好適なクローニング又は発現宿主である。出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、又は一般的パン酵母は、下等真核宿主微生物の中で最も一般的に使用されている。しかし、ピキア属、例えばピキア・パストリス(P.pastoris)、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe);クリベロミセス属、ヤロウイア属;カンジダ属;トリコデルマ・リーシア(Trichoderma reesia);アカパンカビ(Neurospora crassa);シュワニオミセス属、例えばシュワニオミセス・オクシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis);並びに糸状菌、例えば、アカパンカビ属、アオカビ属、トリポクラジウム属、並びにコウジカビ属宿主、例えば偽巣性コウジ菌(A.nidulans)及びクロコウジカビ(A.niger)などのような、多数の他の属、種及び株が、ここで一般に利用可能であり、有用である。
【0099】
グリコシル化ポリペプチド又は抗体の発現のための宿主細胞は、多細胞生物から誘導され(derived)得る。無脊椎動物細胞の例としては、植物及び昆虫細胞が挙げられる。ツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)(イモムシ)、ネッタイシマカ(Aedes aegypy)(蚊)、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)(蚊)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)(ショウジョウバエ)、及びカイコ(Bombyx mori)などの宿主からの非常に多くのバキュロウイルス株及びバリアント並びに対応する許容昆虫宿主細胞が同定されている。そのような細胞のトランスフェクションのための様々なウイルス株、例えば、キンウワバ科(Autographa californica)NPVのL−Iバリアント、及びカイコNPVのBm−5株が、公的に入手可能である。脊椎動物宿主細胞も公的な宿主であり、そのような細胞からのポリペプチド又は抗体の産生は、常例的な手順になっている。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、CHOK1細胞(ATCC CCL61)、DXB−11、DG−44及びチャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFRを含む、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO、Urlaubら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、74:4216(1980));SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1系統(COS−7、ATCC CRL 1651);ヒト胎児由来腎臓系統(293細胞、又は浮遊培養での増殖用にサブクローニングされた293 細胞)[Grahamら、J.Gen Virol.36:59(1977)];ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);マウスセルトリ細胞(TM4,Mather,Biol.Reprod.、23:243〜251(1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL− 1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W 138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞癌細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳がん(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Matherら、Annals N.Y Acad.Sci、383:44〜68(1982));MRC 5細胞若しくはFS4細胞;又は哺乳動物骨髄腫細胞である。抗体産生のために宿主細胞を上記核酸若しくはベクターで形質転換し又は宿主細胞に上記核酸若しくはベクターをトランスフェクトし、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、又は所望の配列をコードする遺伝子の増幅のために必要に応じて修飾された従来の栄養培地で培養する。加えて、選択マーカーによって隔てられた転写ユニットの複数のコピーを有する、新規ベクター及びトランスフェクト(transfected)細胞株は、抗体の発現に特に有用である。
【0100】
本明細書に記載する抗体の産生に使用する宿主細胞は、様々な培地で培養されてよい。ハムF10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、Sigma)、RPMI−1640(Sigma)及びダルベッコ変性イーグル培地((DMEM)、Sigma)などの市販の培地は、宿主細胞の培養に好適である。加えて、Hamら、Meth.Enz.、58:44(1979);Barnesら、Anal.Biochem.、102:255(1980);米国特許第4,767,704号、同第4,657,866号、同第4,927,762号、同第4,560,655号若しくは同第5,122,469号;WO90/03430;WO87/00195;又は米国特許再発行第30,985号に記載されているいずれの培地を宿主細胞のための培養培地として使用してもよい。これらのいずれの培地にも、必要に応じて、ホルモン及び/又は他の増殖因子(例えば、インスリン、トランスフェリン若しくは上皮増殖因子)、塩(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩)、緩衝液(例えば、HEPES)、ヌクレオチド(例えば、アデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えば、Gentamycin(商標)薬)、微量元素(マイクロモル範囲の最終濃度で通常は存在する無機化合物と定義する)、並びにグルコース又は等価のエネルギー源を補足されてよい。他の何らかの必要サプリメントを当業者には公知である適切な濃度で含めることもできる。温度、pHなどのような培養条件は、発現のために選択された宿主細胞に関して以前に使用されたものであり、当業者には明らかである。
【0101】
宿主細胞を培養する際、抗体を細胞内で細胞膜周辺腔において産生させることができ、又は培地に直接分泌させることができる。抗体を細胞内で産生させる場合、第1のステップとして、粒子状デブリ(debris)(宿主細胞又は溶解断片のいずれか)を、例えば遠心分離又は限外濾過によって、除去する。
【0102】
抗体は、例えば、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、陽イオン若しくは陰イオン交換クロマトグラフィー、又はアフィニティーリガンドとして目的の抗原若しくはプロテインA若しくはプロテインGを使用するアフィニティークロマトグラフィーを使用して、精製することができる。プロテインAは、ヒトγ1、γ2又はγ4重鎖に基づく抗体を精製するために使用することができる(Lindmarkら、J.Immunol.Meth.62:1〜13(1983))。プロテインGは、すべてのマウスアイソタイプに及びヒトγ3に推奨される(Gussら、EMBO J.5:15671575(1986))。アフィニティーリガンドが結合されるマトリックスは、アガロースであることが最も多いが、他のマトリックスも利用可能である。機械的に安定なマトリックス、例えば、細孔制御ガラス又はポリ(スチレンビニル)ベンゼンは、アガロースで達成することができるものより速い流速及び短い処理時間を可能にする。抗体がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker、Phillipsburg、NJ.)が精製に有用である。回収すべき抗体に依存して、エタノール沈殿、逆相HPLC、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE及び硫酸アンモニウム沈殿などの他のタンパク質精製手法も可能である。
【0103】
他のHNL特異的結合剤は、例えば、抗体からのCDRに基づいて調製することができ、又はヒトHNLへの所望の結合特性を示すペプチド若しくは化合物について多種多様なペプチド若しくは有機化合物のライブラリーをスクリーニングすることによって調製することができる。HNL特異的結合剤は、本明細書において開示する1つ又は複数のCDRと少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一であるアミノ酸配列を含有するペプチドを含む。HNL特異的結合剤は、ペプチボディ(peptibodies)をも含む。用語「ペプチボディ」は、少なくとも1つのペプチドに結合している抗体Fcドメインを含む分子を指す。ペプチボディの産生は、2000年5月4日に公開されたPCT公開WO00/24782に一般に記載されている。これらのいずれのペプチボディも、リンカーで又はリンカーなしで、タンデムに(すなわち逐次的に)連結されて(linked)よい。システイニル残基を含有するペプチドと別のCys含有ペプチド(これらのいずれか又は両方がビヒクルに連結されていてもよい)を架橋させることがされてよい。1つより多くのCys残基を有するあらゆるペプチドが、ペプチド内ジスルフィド結合も形成されてよい。これらのいずれのペプチドも誘導体化されてよい。例えば、カルボキシル末端をアミノ基でキャップしてもよく、システインをキャップしもよく、又はアミノ酸残基をアミノ酸残基以外の部分によって置換してもよい(例えば、Bhatnagarら、J.Med.Chem.、39:3814〜9(1996)、及びCuthbertsonら、J.Med.Chem.、40:2876〜82(1997)を参照されたく、これらの参考文献はそれら全体が参照により本明細書に組み入れられている)。ペプチド配列は、抗体の親和性成熟に類似して、最適化されてよく、或いは別様に(otherwise)アラニンスキャニング又はランダム若しくは定方向変異誘発によって変化させ、その後(followed by)、最良の結合剤を同定するためにスクリーニングしてよい。Lowman、Ann.Rev.Biophys.Biomol.Struct.、26:401〜24(1997)。様々な分子を特異的結合剤構造に、例えば、その特異的結合剤のペプチド部分自体の中に又はペプチド部分とビヒクル部分の間に挿入することが、特異的結合剤の所望の活性を保持したままできる。例えば、Fcドメイン又はその断片、ポリエチレングリコール又は他の関連分子、例えばデキストラン、脂肪酸、脂質、コレステロール基、小さい炭水化物、ペプチド、本明細書に記載の検出可能部分(蛍光剤、放射標識、例えば放射性同位元素を含む)、オリゴ糖、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、干渉(又は他の)RNA、酵素、ホルモンなどのような分子を容易に挿入することができる。この方法での挿入に好適な他の分子は、当業者には分かると予想され、本発明の範囲に包含される。これは、例えば、好適なリンカーによって場合により連結されている、連続する2つのアミノ酸の間への所望の分子の挿入を含む。
【0104】
HNLに結合する、及び/又は本明細書に記載する例示的抗体を交差遮断する、及び/又はHNL活性を阻害する抗体又は特異的結合剤を同定する方法も提供する。抗体又は特異的結合剤を当技術分野において公知の方法によって結合親和性についてスクリーニングされてよい。例えば、ゲルシフトアッセイ、ウエスタンブロット、放射標識競合アッセイ、クロマトグラフィーによる共分画、共沈、架橋、ELISAなどを使用してもよく、これらは、例えば、Current Protocols in Molecular Biology(1999)John Wiley & Sons、NYに記載されており、この参考文献はその全体が参照により本明細書に組み入れられている。一実施形態では、標的抗原ペプチドへの好適な結合親和性を有する抗体断片又はCDR(該CDR内のアミノ酸に1、2、3つ以上の修飾を有するもの)についてのハイスループットスクリーニングを用いる。本明細書において開示する抗HNL抗体は、当業者に周知の手法によって容易に修飾することができる。可能性のある変異としては、1つ又は複数の残基の挿入、欠失又は置換が挙げられる。一部の実施形態では、挿入又は欠失は、約1〜5アミノ酸の範囲、約1〜3アミノ酸の範囲、又は約1若しくは2アミノ酸の範囲である。欠失バリアントは、任意のアミノ酸配列の少なくとも1つのアミノ酸残基が除去されているポリペプチドである。欠失は、タンパク質の一方若しくは両方の末端で果たされることもあり、又はポリペプチドの中の(すなわち内部の)1つ若しくは複数の残基の除去で果たされることもある。欠失バリアントの調製方法は、当技術分野では常例的である。例えば、Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Guide、第1〜3巻、Cold Spring Harbor Pressを参照されたく、この開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられている)。
【0105】
アミノ酸配列挿入は、1つの残基から数百以上の残基を含有するポリペプチドまで長さに幅があるアミノ及び/又はカルボキシル末端融合、並びに1つ又は複数の網ノン酸の内部配列挿入を含む。本明細書に記載する様々なバリアントのいずれかと同様に、挿入バリアントは、結果として生ずるポリペプチドが、同じ生物学的特性を保持するように、又はそのペプチドが由来した親ペプチドと関連のない新たな物理的、化学的及び/若しくは生物学的特性を示すように設計することができる。挿入バリアントの調製方法も常例的で有り、当技術分野において周知である(Sambrookら、上掲)。
【0106】
本明細書に記載する抗HNL抗体を含むポリペプチドと異種ポリペプチドとを含む融合タンパク質は、本明細書において企図される挿入バリアントの特異的タイプである。目的のポリペプチドに融合することができる異種ポリペプチドの非限定的な例としては、循環半減期が長いタンパク質、例えば、これに限定されるわけではないが、免疫グロブリン定常領域(例えば、Fc領域);目的のポリペプチドの同定を可能にするマーカー配列;目的のポリペプチドの精製を促進する配列;及び多量体タンパク質の形成を促進する配列が挙げられる。抗体融合タンパク質を製造する方法は、当技術分野において周知である。例えば、米国特許第6,306,393号を参照されたく、この特許文献の開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられている。ある特定の実施形態では、キメラscFv抗体を異種タンパク質部分と接続する可動性リンカーを含みうる融合タンパク質が産生される。適切なリンカー配列は、結果として生ずる融合タンパク質の、該タンパク質のVドメインによって特異的に結合されるエピトープを認識し、該エピトープに結合する能力に、影響を与えないものである(例えば、WO98/25965を参照されたく、この特許文献の開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられている)。
【0107】
置換バリアントは、ポリペプチドアミノ酸配列内の少なくとも1つの残基が除去され、異なる残基がその位置に挿入されているものである。抗体の生物学的特性の修飾は、(a)置換領域におけるポリペプチド骨格の構造、例えば、シート若しくはらせん立体構造のような構造、(b)分子の標的部位における電荷若しくは疎水性、又は(c)側鎖の嵩、の維持に対するそれらの効果の点で有意に異ならない置換を選択することによって果たされる。ある特定の実施形態では、置換変異体を設計し、すなわち、1つ又は複数の特定の(ランダムの対語として)アミノ酸残基を特定のアミノ酸残基で置換する。これらのタイプの典型的な変化は、保存的置換、及び/又はネイティブ残基と置換する残基の類似した特性に基づく、ある残基の別の残基での置換を含む。
【0108】
保存的置換を下に示す。最も保存的な置換は、「好ましい置換」の見出しの下にある。そのような置換が生物学的活性の変化をもたらさない場合には、より実質的な変化を導入し、生成物をスクリーニングしてもよい。
原型 例示的 好ましい置換
Ala(A) val;leu;ile; val
Arg(R) lys;gln;asn; lys
Asn(N) gln;his;asp,lys; gln;arg
Asp(D) glu;asn glu
Cys(C) ser;ala ser
Gln(Q) asn;glu asn
Glu(E) asp;gln asp
Gly(G) ala
His(H) asn;gin;lys;arg
Ile(I) leu;val;met;ala;leu;
phe;ノルロイシン leu
Leu(L) ノルロイシン;ile;val;met;
ala;phe ile
Lys(K) arg;gln;asn arg
Met(M) leu;phe;ile leu
Phe(F) leu;val;ile;ala;tyr
Pro(P) ala
Ser(S) thr
Thr(T) ser
Trp(W) tyr;phe tyr
Tyr(Y) trp;phe;thr;ser phe
Val(V) ile;leu;met;phe;ala;
ノルロイシン leu
【0109】
共通の側鎖特性を共有するアミノ酸残基は、多くの場合、次のように分類される:
(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile、
(2)中性親水性:cys、ser、thr、
(3)酸性:asp、glu、
(4)塩基性:asn、gln、his、lys、arg、
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:gly、pro、及び
(6)芳香族:trp、tyr、phe。
【0110】
ある特定の場合、抗体バリアントは、エピトープ結合に直接関与するアミノ酸残基を修飾する目的で調製される。他の実施形態では、エピトープ結合に直接関与しない残基又はエピトープ結合にいかなる形でも関与しない残基の修飾が、本明細書で論ずる目的には望ましい。あらゆるCDR領域及び/又はフレームワーク領域内での変異誘発が企図される。
【0111】
どの抗体アミノ酸残基がエピトープ認識及び結合に重要であるのかを決定するために、アラニンスキャニング変異誘発を行って置換バリアントを産生させる。例えば、Cunninghamら、Science、244:1081〜1085(1989)を参照されたく、この参考文献の開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられている。この方法では、個々のアミノ酸残基をアラニン残基で一度に置換し、得られた抗HNL抗体をその特異的エピトープに結合するその能力について非修飾抗体と比較してスクリーニングする。結合能が低減された修飾抗体をシークエンシングして、どの残基が変化したのかを判定し、その結果が、結合又は生物学的特性の点でのその有意性を示す。
【0112】
抗体の置換バリアントは、ランダムアミノ酸変化が親抗体配列に導入される親和性成熟によって調製することができる。例えば、Ouwehandら、Vox Sang 74(補遺2):223〜232、1998;Raderら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:8910〜8915、1998;DallAcquaら、Curr.Opin.Struct.Biol、8:443〜450、1998を参照されたく、これらの参考文献の開示はそれら全体が参照により本明細書に組み入れられている。親和性成熟は、抗HNL抗体又はそれらのバリアントの調製し、スクリーニングすること、及び得られたバリアントから、親抗HNL抗体と比較して増加された結合親和性などの修飾された生物学的特性を有するものを選択することを含む。置換変異体を生成するための便利な方法は、ファージディスプレイを用いた親和性成熟である。簡単に言うと、幾つかの超可領域部位を変異させて各部位で可能なすべてのアミノ酸置換を生じさせる。このようにして産生されたバリアントは、繊維状ファージ粒子の表面で、各粒子内にパッケージングされたM13の遺伝子III産物への融合物として、一価型で発現される。その後、それらのファージディスプレイしたバリアントをそれらの生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングする。例えば、WO92/01047、WO93/112366、WO95/15388及びWO93/19172を参照されたい。
【0113】
現行の(current)抗体親和性成熟法は、確率的及び非確率的である2つの変異誘発カテゴリーに属する。エラープローン(error prone)PCR、ミューテーター細菌株(Lowら、J.Mol.Biol.260、359〜68、1996)、及び飽和変異誘発(Nishimiyaら、J.Biol.Chem.275:12813〜20、2000;Chowdhury,P.S.、Methods Mol.Biol.178、269〜85、2002)は、確率的変異誘発法の典型的な例である(Rajpalら、Proc Natl Acad Sci USA.102,8466〜71、2005)。非確率的手法は、多くの場合、アラニンスキャニング又は定方向変異誘発を使用して特定の突然変異タンパク質の限定コレクションを産生させる。一部の方法を下でさらに詳細に説明する。組換え抗体の親和性成熟は、漸減量の抗原の存在下での候補抗体の数ラウンドのパンニングによって一般に行われる。ラウンドごとに抗原量を減少させることで抗原への最も高い親和性を有する抗体を選択することにより、出発物質の大きいプールから高親和性の抗体が得られる。パンニングによる親和性成熟は、当技術分野において周知であり、例えば、Hulsら(Cancer Immunol Immunother.50:163〜71、2001)に記載されている。ファージディスプレイ技術を使用する親和性成熟法は、本明細書の他の箇所で説明しており、当技術分野において公知である(例えば、Daughertyら、Proc Natl Acad Sci USA、91:2029〜34、2000を参照されたい)。
【0114】
ルックスルー変異誘発(Look-through mutagenesis,LTM)(Rajpalら、Proc Natl Acad Sci USA.102:8466〜71、2005)は、抗体結合部位の容易なマッピング方法を提供する。LTMのために、20の天然アミノ酸によって提供される主要側鎖化学的要素の代表を選択して、抗体の6つすべてのCDR内のあらゆる位置での結合へのその機能性側鎖の寄与を精査する。LMTは、各「野生型」残基が9つの選択されたアミノ酸の1つによって系統的に置換される、CDR内の一連の位置の単一変異である。変異したCDRを組み合わせて、すべての突然変異タンパク質の定量的提示に対して抑止的になることなく複雑性及びサイズが漸増するコンビナトリアル一本鎖可変断片(scFv)ライブラリーを産生させる。陽性選択後、結合が向上したクローンをシークエンシングし、有益な変異をマッピングする。
【0115】
エラープローンPCRは、異なる選択ラウンド間の核酸のランダム化を含む。ランダム化は、使用するポリメラーゼの固有のエラー率によって低速で起こるが、転写中に高い固有エラー率を有するポリメラーゼ(Hawkinsら、J Mol Biol.226:889〜96、1992)を使用するエラープローンPCRによってそれを増進することができる(Zaccoloら、J.Mol.Biol.285:775〜783、1999)。変異サイクル後、抗原に対する親和性が向上したクローンを、当技術分野における常例的方法を使用して選択する。
【0116】
遺伝子シャフリング及び定向進化を利用する手法を使用して、抗HNL抗体又はそれらのバリアントを調製し、所望の活性についてスクリーニングしてもよい。例えば、Jermutusら、Proc Natl Acad Sci USA.、98(1):75〜80(2001)には、リボソームディスプレイに基づく、目的に合わせたin vitro選択戦略を、DNAシャフリングによるin vitro多様化と併用して、scFvの解離速度安定性又は熱力学的安定性を発生させたことが示されており;Fermerら、Tumour Biol.2004 Jan−Apr;25(1〜2):7〜13には、ファージディスプレイとDNAシャフリングの併用が親和性をほぼ3桁(three orders of magnitude)分上昇させたことが報告されている。Doughertyら、Proc Natl Acad Sci USA.2000 Feb.29;97(5):2029〜2034には、(i)機能的クローンが超変異ライブラリーにおいて予想外に高い頻度で発生すること、(ii)機能獲得型変異体がそのようなライブラリーにおいて十分に説明されること、及び(iii)より高い親和性をもたらすscFV変異の大多数が結合部位から離れている残基に対応することが報告されている。
【0117】
或いは、又は加えて、抗原−抗体複合体の結晶構造を分析して抗体と抗原との接触点を同定すること又はコンピュータソフトウェアを使用してそのような接触点をモデル化することは、有益でありうる。そのような接触残基及び隣接残基は、本明細書において詳述する手法による置換の候補である。そのようなバリアントを産生させたら、それらを本明細書に記載のスクリーニングに付し、1種又は複数の適切なアッセイで優れた特性を有する抗体をさらなる開発のために選択されてよい。
【0118】
別の態様では、試料中のヒトHNLを検出する方法であって、ヒトからの試料と上述の抗体のいずれかとを、前記抗体とヒトHNLの結合を可能にする条件下で接触させるステップ、及び結合した抗体を検出するステップを含む方法を提供する。一実施形態では、HNLに対する一次抗体を捕捉試薬として固体支持体上に固定化し、HNLに対する二次抗体を検出試薬として使用する。関連態様では、結合した抗体の量を測定することによって、試料中のHNLの量を定量する。前記検出方法は、HNL関連障害を診断する方法、炎症性疾患を非炎症性疾患と識別する方法、及び抗HNL抗体で治療をモニターする方法を含む、様々な診断、予後予測及びモニタリング方法に使用することができる。そのような方法では、ある一定の閾より上のHNLレベルは、HNL関連障害の存在と相関性があり、その一方で前記閾より下のレベルは、患者がHNL関連障害に罹患している可能性が低いことを示す。同様に、ある一定の閾より上のHNLレベルは、細菌感染症の存在と相関性があり、その一方で前記閾より下のレベルは、患者が細菌感染症に罹患している可能性が低いことを示す。細菌感染症の存在又は不在を決定するために、患者からの生体試料と本明細書において開示する抗HNL抗体の1つ又は複数とを、免疫複合体の形成を可能にするのに十分な条件下で及び十分な時間にわたって接触させる。その後、生体試料中の抗HNL抗体とHNLとで形成された免疫複合体を検出する。抗体とHNLとで形成された免疫複合体の量を測定することによって、試料中のHNLの量を定量する。ある特定の方法の中で、生体試料が患者から単離され、本明細書において開示する抗HNL抗体の1つ又は複数とともにインキュベートされ、ある特定の閾(threshold)より上の抗体HNL複合体レベルは、細菌感染症の存在と相関性があり、前記閾より下のレベルは、患者が細菌感染症に罹患している可能性が低いことを示す。
【0119】
細菌感染症と闘うことを目的にした治療の開始後、治療中又は治療後のHNLの存在について患者を再検査することを含む治療のモニタリングについては、ある特定の閾より下のHNLレベルは、その治療(薬物及び/又は用量)が有効であることを示し、前記閾より上のレベルは、その治療が有効でないことを示す。したがって、本発明の実施形態は、細菌感染症に罹患している疑いが有る対象を(再)処置する(すなわち、異なる時点でHNLを測定する)方法であって、
− 前記結合剤の存在下で試料をインキュベートするステップ、
− 場合により、未結合試料物質を洗浄除去するステップ、
− 細菌感染症に罹患している疑いがあるか又は細菌感染症が確認されており、抗生物質治療を受けている対象からの試料中のHNLのレベルを測定するステップ、
− 場合により、ステップc)で測定されたHNLのレベルを、
(i)健常対象、
(ii)細菌感染症に罹患していることが分かっている対象
から場合により得た、1つ又は複数の対照試料と比較するステップ、
さらに場合により、ステップc)で測定されたHNLのレベルを、健常対象及び/若しくは細菌感染症の対象を示す1つ若しくは複数の正規化対照HNL値、並びに/又は処置前の患者からの試料におけるHNLのレベルと比較するステップ、
を含み、
細菌性疾患と診断された対象からの試料中のHNLのレベルを抗菌処置開始後の少なくも1つのさらなる時点で判定し、場合により、前記分析を反復するステップ、及びさらに場合により、抗菌治療前、その間及び/又はその後のHNLレベルを比較するステップを含む方法を提供する。
【0120】
本発明の別の実施形態では、前記対象が、敗血症の原因となる細菌及び/又は抗生物質耐性菌の保菌者と同定された場合に、例えば特異的抗生物質での、抗菌処置の効率のよさ又は効率の悪さをモニターする方法を提供する。
【0121】
本明細書において開示する方法のいずれにおいても、好ましくはN−ホルミルペプチド、より好ましくはトリペプチドfMLPである予備活性化物質を使用して、検査方法の感度を増加させる。プロテインAの使用も想定することが好ましい。本発明は、リポ多糖(LPS)、血小板活性化因子、非メチル化CpGオリゴヌクレオチド、又は腫瘍壊死因子(TNF)などの、さらなる代替好中球活性化因子の使用をさらに想定している。これらの活性化因子を単独で使用してもよく、又はあらゆる組合せで、例えば、fMLP及び/若しくはプロテインA及び/若しくはリポ多糖(LPS)及び/若しくは血小板活性化因子及び/若しくは腫瘍壊死因子(TNF)の形態で、例えば、プロテインAとの組合せでfMLP、LPSとの組合せでfMLP、血小板活性化因子との組合せでfMLP、非メチル化CpGオリゴジヌクレオチドとの組合せで若しくはTNFなどとの組合せでfMLPなどを使用してよい。LPSとの組合せでプロテインA、血小板活性化因子との組合せでプロテインA、非メチル化CpGオリゴジヌクレオチドとの組合せで、若しくはTNFとの組合せでプロテインA、又は上述の任意の他の活性化因子との組合せでLPS、又は上述の任意の他の活性化因子との組合せで非メチル化CpGオリゴジヌクレオチド、又は上述の任意の他の活性化因子との組合せでTNFなどの、活性化因子のさらなる組合せも想定される。好ましい実施形態では、活性化因子は、fMLP、又は上述の他の活性化因子の1つ若しくは複数との組合せである。
【0122】
細菌感染症を非細菌感染症と識別する(differentiating)方法も提供する。当技術分野において公知の様々なイムノアッセイを使用することができ、そのようなイムノアッセイは、これらに限定されるものではないが、以下のもの含む:ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫放射定量測定法、ゲル拡散沈殿反応、免疫拡散アッセイ、in situイムノアッセイ(例えば、コロイド金、酵素又は放射性同位元素標識を使用するもの)、ウエスタンブロット、沈殿反応、凝集アッセイ(例えば、ゲル凝集アッセイ、赤血球凝集アッセイ)、免疫蛍光アッセイ、プロテインAアッセイ及び免疫電気泳動アッセイなどのような手法を使用する、競合及び非競合アッセイシステム、並びに例えば、目的の分析物の磁性ベースの分離を含む分析物検出用デバイス(例えば、WO2008/072156、WO2008/102218、WO2010/035204及びWO2011/036638において開示されているデバイス(前記特許文献はそれら全体が本明細書に組み入れられている))。一実施形態では、一次抗体の標識を検出することによって、抗体結合を検出する。別の実施形態では、一次抗体との二次抗体又は試薬の結合を検出することによって、一次抗体を検出する。さらなる実施形態では、二次抗体を標識する。イムノアッセイで結合を検出するための多くの手段が当技術分野において公知であり、そのような手段は本発明の範囲内である。抗体:Harlow及びLaneによるA Laboratory Manual(1988)若しくはより最新版;イムノアッセイ:A Practical Approach,Oxford University Press、Gosling,J.P.(編)(2001)若しくはより最新版、及び/又は定期的に改定されるCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubelら)。そのようなアッセイの例は、表面又はマトリックスに抗体を結合させ、患者血清を添加し、複合体が形成される時間、放置し、未結合複合体を除去するために好適な洗浄手順に付し、その後、二次抗体を添加して複合体の検出を可能にする(サンドイッチELISA)、又はHNLの検出可能バージョンを添加して抗体表面の空いているHNL結合部位の検出を可能にする(競合ELISA)ことを通常は含む。上述の方法によって検出して、ある一定の閾より上のHNLレベルは、炎症性疾患の存在と相関性があり、前記閾より下のレベルは、患者が炎症性疾患に罹患している可能性が低いことを示す。患者は、HNLレベルが正常範囲内にある場合、細菌感染病に罹患している可能性が低い。患者は、HNLレベルが正常範を超える場合、細菌性疾患に罹患している可能性が高い。
【0123】
一部の実施形態では、患者から得た生体試料をHNLレベルについて検査する。生体試料を本明細書において開示する抗HNL抗体の1つ又は複数とともに、免疫複合体の形成を可能にするのに十分な条件下で及び十分な時間にわたってインキュベートする。その後、HNLと、該HNLと特異的に結合する生体試料中の抗体とで形成された免疫複合体を検出する。そのような方法の中で使用するための生体試料は、HNLを含有すると予想される患者から得られるいずれの試料であってもよい。好適な生体試料としては、血液、血清、血漿、尿、脳脊髄液(CSF)及び骨髄が挙げられる。好適な抗体は、ヒト細胞、齧歯動物、ウサギ、ヤギ、ラクダ又は他のあらゆる種からの抗体を含む。
【0124】
生体試料を反応混合物中の抗体とともに、HNLとHNLに免疫特異的である抗体との免疫複合体の形成を可能にするのに十分な条件下で及び十分な時間にわたってインキュベートする。インキュベーション後、反応混合物を免疫複合体の存在について検査する。抗HNL抗体と生体試料中に存在するHNLとで形成された免疫複合体の検出は、ラジオイムノアッセイ(RIA)及び酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)などの様々な公知手法によって果たすことができる。好適なアッセイは当技術分野において周知であり、科学及び特許文献(Harlow及びLane、1988)に十分に記載されている。使用できるアッセイとしては、二重モノクローナル抗体サンドイッチイムノアッセイ法(米国特許第4,376,110号);モノクローナル−ポリクローナル抗体サンドイッチアッセイ(Wide L.、「Solid Phase Antigen−Antibody Systems」、Radioimmunoassay Methods:European Workshop September 15〜17 1970 Edinburgh、Kirkham及びHunter編(Churchill Livingston、Edenburgh、(1971))405〜412頁);「ウエスタンブロット」法(米国特許第4,452,901号);標識リガンドの免疫沈降法(Brownら、J.Biol.Chem.4980〜4983、1980);酵素結合免疫吸着測定法;蛍光色素の使用を伴う免疫細胞化学的手法(Brooksら、CHn.Exp.Immunol、39:477、1980);及び活性の中和(Bowen− Popeら、Science、226:701〜703、1984)が挙げられるが、これらに限定されない。他のイムノアッセイとしては、米国特許第3,850,752号、同第3,901,654号、同第3,935,074号、同第3,984,533号、同第3,996,345号、同第4,034,074号及び同第4,098,876号に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されない。検出のために、抗HNL抗体を標識してもよく、又はしなくてもよい。非標識抗体は、凝集アッセイで使用されることがあり、又は免疫複合体と結合する標識された検出試薬(例えば、抗免疫グロブリン、プロテインG、プロテインA若しくはレクチン及び二次抗体、若しくはHNLと特異的に結合する抗体と結合することができるその抗原結合断片)と併用されることもある。抗HNL抗体を標識する場合、レポーター基は、放射性同位元素、蛍光基(例えば、フルオレセイン又はローダミン)、発光基、酵素、ビオチン及び染料粒子をはじめとする、当技術分野において公知のいずれの好適なレポーター基であってもよい。それら自体を直接検出することができる標識としては、蛍光若しくは発光染料、金属若しくは金属キレート、電気化学的標識、放射性核種(例えば、32P、14C、125I、3H若しくは131I)、磁性標識若しくは磁性ビーズ(例えば、DYNABEADS)、常磁性標識、又は比色分析用標識(例えば、コロイド金、着色ガラス若しくはプラスチックビーズ)が挙げられる。そのような検出可能な標識を、抗HNL抗体若しくは検出試薬と直接結合させてもよく、又は抗HNL抗体若しくは検出試薬に結合されたビーズ若しくは粒子と会合させてもよい。標識された特異的結合パートナーの結合によって検出することができる標識としては、ビオチン、ジゴキシゲニン、マルトース、オリゴヒスチジン、2,4−ジニトロベンゼン、フェニルアルセネート、ssDNA又はdsDNAが挙げられる。検出可能な反応生成物の生成によって間接的に検出することができる間接的標識としては、適切な基質を切断して着色又は蛍光反応生成物を形成する、当技術分野において周知の様々な酵素、例えば、アルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ若しくは他の糖類オキシダーゼ、又はルシフェラーゼが挙げられる。
【0125】
ある特定のアッセイの中で、非標識抗HNL抗体は、生体試料の中のHNLを捕捉する「捕捉剤」(又は試薬)として使用するために、固体支持体上に固定化される。固体支持体は、抗体が結合されうる、当業者に公知のいずれの物質であってもよい。例えば、固体支持体は、マイクロタイタープレートの検査ウェルであってもよく、又はニトロセルロース若しくは他の好適な膜であってもよい。或いは、支持体は、ガラス、ガラス繊維、ラテックス又はプラスチック材料、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン若しくはポリ塩化ビニル、又は多孔性マトリックスなどの、チューブ、ビーズ、粒子又はディスクであってもよい。他の材料としては、アガロース、デキストラン、ポリアクリルアミド、ナイロン、セファデックス、セルロース又は多糖が挙げられる。支持体は、例えば米国特許第5,359,681号に開示されているものなどの、磁性粒子又は光ファイバーセンサーであってもよい。固定化される抗HNL抗体は、ポリクローナル抗体であってもよく、1つ若しくは複数の抗体、例えば本明細書に記載するものであってもよく、又はポリクローナル抗体と1つ若しくは複数のモノクローナル抗体との組合せであってもよい。抗体は、特許及び科学文献に十分に記載されている、当業者には公知の様々な手法を使用して、固体支持体に固定化されてよい。本発明に関して、用語「固定化」は、吸着などの非共有結合性会合と、共有結合(抗原と支持体上の官能基との直接的連結であってもよく、又は架橋剤による連結であってもよい)の両方を指す。マイクロタイタープレートのウェルへの又は膜への吸着による固定化が企図される。そのような場合、吸着は、好適な緩衝液中で抗HNL抗体を固体支持体と好適な時間接触させることによって達成されてよい。接触時間は、温度によって変わるが、通常は約1時間〜約1日の間である。一般に、適切な量のペプチドを固定化するには、(ポリスチレン又はポリ塩化ビニルを含む)プラスチック製マイクロタータープレートのウェルを約10ng〜約10μg、約100ng〜約1μgの範囲の量のペプチドと接触させるので十分である。固定化後、支持体上の残存タンパク質結合部位を通常はブロックする。ウシ血清アルブミン、Tween(商標)20(Sigma Chemical Co.、St.Louis、Mo.)、熱失活正常ヤギ血清(NGS)、又はBLOTTO(保存薬、塩及び消泡剤も含有する、脱脂粉乳の緩衝溶液)をはじめとする、当業者に公知の任意の好適なブロッキング剤を使用することができる。その後、支持体を、HNLを含有する疑いがある生体試料とともにインキュベートする。試料は、未希釈で利用することができ、又は、より多くの場合、希釈すること、通常は、BSA、NGS若しくはBLOTTOなどの少量(0.1重量%〜5.0重量%)のタンパク質を含有する緩衝溶液で希釈することができる。一般に、適切な接触時間(すなわち、インキュベーション時間)は、HNLを含有する試料の中のHNLに免疫特異的である抗体又は抗原結合断片の存在を検出するのに十分である期間である。一部の実施形態では、接触時間は、結合した抗体又は抗体断片と未結合の抗体又は抗体断片との平衡時に達成されるものの少なくとも約95%である結合レベルを達成するのに十分な時間である。ある期間にわたって起こる結合のレベルをアッセイすることによって、平衡の達成に必要な時間を容易に決定されてよいということは、当業者には理解されると予想される。室温で、約10〜30分のインキュベーション時間で一般には十分である。
【0126】
その後、0.1%Tween(商標)20を含有するPBSなどの、適切な緩衝液で固体支持体を洗浄することによって、未結合試料を除去できる。その後、(捕捉剤と試料からのHNLの結合によって形成された)免疫複合体中のHNLと結合する検出試薬を添加できる。そのような検出試薬は、ポリクローナル抗体であってもよく、1つ若しくは複数の抗体、例えば本明細書に記載するものであってもよく、又はポリクローナル抗体と、1つ若しくは複数のモノクローナル抗体、例えば本明細書に記載するもの若しくは任意の抗体のFab画分、との組合せであってもよい。検出試薬は、直接標識されることがあり、すなわち、少なくとも第1の検出可能な標識又は「レポーター」分子を含む。或いは、検出試薬は、非標識抗HNL抗体であることもある。その場合、この非標識抗HNL(一次)抗体は、該一抗体と標識された二次抗体又は試薬の結合を検出することによって検出される。例えば、一次抗体がマウス免疫グロブリンである場合、二次抗体は、標識された抗マウス免疫グロブリン抗体でありうる。同様に、一次抗体がウサギ免疫グロブリンである場合、二次抗体は、標識された抗ウサギ免疫グロブリン抗体でありうる。
【0127】
検出試薬を免疫複合体とともに、結合した抗体又はその抗原結合断片を検出するのに十分な量の(an amount of)時間インキュベートする。適切な量の時間は、一般に、ある期間にわたって起こる結合のレベルをアッセイすることによって決定されてよい。その後、未結合の標識又は検出試薬を除去し、結合した標識又は検出試薬を、好適なアッセイ又は分析機器を使用して検出する。レポーター基の検出に用いる方法は、そのレポーター基の性質に依存する。放射性標識には、シンチレーション測定又はオートラジオグラフィー法が一般に適している。分光法を使用して、染料、発光又は化学発光部分及び様々な色素原、蛍光標識などを検出してもよい。ビオチンは、様々なレポーター基(一般に放射性基、蛍光基又は酵素)に連結されたアビジンを使用して検出されてよい。酵素レポーター基(ホースラディッシュペルオキシダーゼ、[ベータ]−ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼ及びグルコースオキシダーゼを含む)は、一般に、基質の(一般に、特定の期間にわたっての)添加、その後の生成物の分光分析又は他の分析によって検出されてよい。用いられる特定の方法に関係なく、バックグラウンド(すなわち、正常なHNLレベルを有する個体から得た生体試料について観察されるレベル)より少なくとも2倍大きい、結合した検出試薬のレベルは、HNLの発現に関連する障害の存在を示す。
【0128】
代替実施形態では、試料及び検出試薬を、後に添加するのではなく、捕捉剤と同時に接触させることがある。さらに別の代替実施形態では、試料及び検出試薬をプレインキュベートし、その後、捕捉剤に添加することもある。他の変形形態は、当業者には容易に分かる。
【0129】
別の実施形態では、試料中に存在するHNLの量を競合結合アッセイによって決定する。競合結合アッセイは、限られた量の抗HNL抗体との結合について検査試料分析物(HNLポリペプチド)と競合する標識標準物質(例えば、HNLポリペプチド、又はその免疫反応性の部分)の能力に依存する。遊離HNLと結合HNLの分離後、結合/未結合HNLの既知標準物質に対する比を関係づけることによってHNLを定量する。試験試料中のHNLポリペプチドの量は、抗体に結合する標準物質量に反比例する。結合される標準物質の量の決定を容易にするために、抗体は、典型的には固体支持体上に固定化され、それにより、抗体に結合した標準物質及び検体が、非結合のままである標準物質及び検体から都合よく分離され得る。したがって、そのような実施形態において、生物学的試料を標識成熟HNL(又はHNLの抗原性を保持するその標識されたフラグメント)及び成熟HNLに結合する抗体と接触させ、且つ、形成された抗体標識HNL複合体の量を検出することも企図される。
【0130】
固体支持体又は検出可能な標識との複合体の調製は、化学的架橋剤の使用を含むことが多い。架橋試薬は少なくとも2つの反応性基を含有し、一般に、(同一の反応性基を含有する)ホモ官能性架橋剤と(同一でない反応性基を含有する)ヘテロ官能性架橋剤とに分けられる。アミン、スルフヒドリルによって連結するか又は非特異的に反応するホモ官能性架橋剤は、多くの商業的供給源から入手可能である。マレイミド、アルキル及びアリールハリド、アルファ−ハロアシル、並びにピリジルジスルフィドは、チオール反応性基である。マレイミド、アルキル及びアリールハリド並びにアルファ−ハロアシルは、スルフヒドリルと反応してチオエーテル結合を形成し、これに対してピリジルジスルフィドは、スルフヒドリルと反応して混合ジスルフィドを生成する。このピリジルジスルフィド生成物は分裂可能(cleavable)である。
【0131】
ヘテロ二官能性架橋剤は、望ましくない重合又は自己共役を最小にしてタンパク質の特定の基との逐次的結合を可能にする、2つ以上の異なる反応性基を有する。ヘテロ二官能性試薬は、アミンの修飾に問題のある場合にも使用される。アミンは、時には高分子の活性部位で見いだされることもあり、これらの修飾は、活性喪失につながることがある。スルフヒドリル、カルボキシル、フェノール及び炭水化物などの他の部分は、より適切な標的であり得る。2ステップ戦略は、そのアミンの改変を許容し得るタンパク質と、他の接近可能な基を有するタンパク質とのカップリングを可能にする。成功したコンジュゲーションのために異なる属性をそれぞれ組み合わせた様々なヘテロ二官能性架橋剤が市販されている。一方の末端でアミン反応性であり、他方の末端でスルフヒドリル反応性である架橋剤は、かなり一般的である(quite common)。ヘテロ二官能性試薬を使用する場合、最も不安定な基が、典型的には最初に反応して効果的な架橋を確実にし、且つ、望ましくない重合を回避する。
【0132】
一部の実施形態では、抗生物質での治療の有効性をモニターする方法は、試料中の又は動物、例えば哺乳動物、例えばヒト患者におけるHNLのレベルの変化をモニターすることを含む。HNLレベルをモニターする方法は、(a)治療前の患者から得た第1の生体試料を本明細書において開示する抗HNL抗体の1つ又は複数とともにインキュベートするステップであって、前記インキュベーションを、免疫複合体の形成を可能にするのに十分な条件下で十分な時間にわたって行うステップ、(b)前記生体試料中のHNLとHNLに特異的に結合する抗体又は抗原結合断片とで形成された免疫複合体を検出するステップ、及び(c)前記患者からその後に、例えば1つ又は複数の抗生物質での治療後などに、採取した第2の生体試料を使用してステップ(a)及び(b)を反復するステップ、及び(d)前記第1の生体試料において検出された免疫複合体の数を前記第2の生体試料において検出された免疫複合体の数と比較するステップを含みうる。そのような方法の中で使用するための生体試料は、HNLを含有すると予想される患者から得られるいずれの試料であってもよい。例示的生体試料としては、血液、血漿、血清、尿、CSF、骨髄、唾液及び痰が挙げられる。第1の生体試料を治療の開始前に得てもよく、又は治療レジーム(regime)の途中で得てもよい。第2の生体試料は、同様に、しかしさらなる治療後に、得るべきである。第2の試料を治療の完了時に得てもよく、又は治療の途中で得てもよいが、ただし、治療の少なくとも一部が第1の生体試料の単離と第2の生体試料の単離の間に行われることを条件とする。両方の試料についてのインキュベーション及び検出手順は、一般に、上で説明したように行うことがされてよい。第1の試料と比較して第2の試料中の免疫複合体数の増加は、HNLレベルの増加を示し、治療成功を表す。
【0133】
本明細書に記載する病態の診断及び本明細書に記載の治療モニタリングのために適切な閾(threshold)を設定する方法は、当技術分野において周知である。例として、十分な代表数の正常対象(例えば、状態が検出されない健常集団)からの試料中HNLのレベルを、同じプロトコルを使用して十分な代表数の罹病対象(例えば、疾患又は状態に罹患していることが確認された集団)からのHNLレベルと比較して分析する。正常集団の大部分を罹病集団の大部分と識別する閾カットオフを決定することができる。或いは、陰性結果、不確実結果及び陽性結果についての有用なエンドポイント値をデータから決定することができる。例えば、正常集団の大部分についてのHNLを含むが罹病集団のほぼすべてを含まない、(陰性結果を示す)正常範囲を決定することができる。相応じて、罹病集団の大部分についてのHNLを含むが正常集団のほぼすべてを含まない、陽性結果を示す範囲を決定することができる。前記閾についての適切なエンドポイント値は、所望の特異度又は感度を最適化するために決定されることがあり、医学的及び疫学的因子全体を考慮に入れることもある。考慮される因子としては、IVD検査の臨床目的、及び高い陽性的中率を有する必要があるのか、高い陰性的中率を有する必要があるのか、並びに被検集団における疾患の有病率が挙げられる。
【0134】
本発明は、対象において細菌感染症を除外する方法、ウイルス感染症を除外する方法、細菌感染症を確定診断する方法、及びウイルス感染症を確定診断する方法にさらに関する。一般に、細菌感染症に罹患している患者の試料中のHNLポリペプチド濃度は、健常患者試料中又はウイルス感染症に罹患している患者の試料中のものより高い。したがって、感染症を「確定診断すること」は、対象がそのタイプの感染症に罹患していることを意味する。感染症を「除外すること」は、対象がそのタイプの感染症に罹患していないことを意味する。
【0135】
例えば、細菌感染症に罹患している患者の試料中のHNLポリペプチド濃度は、健常患者集団と比較して濃度の平均より1.5標準偏差高い閾を超える場合、健常患者試料中の濃度より高いと見なされる。好ましくは、患者試料中のHNLポリペプチド濃度は、そのHNL濃度が健常患者集団と比較して濃度の平均より2標準偏差高い閾を超える場合、高い。より好ましくは、患者試料中のHNLポリペプチド濃度は、そのHNL濃度が健常患者集団と比較して濃度の平均より3標準偏差高い閾を超える場合、高い。
【0136】
したがって、本発明は、ある特定の実施形態では、患者生体試料中のHNLポリペプチドの全濃度を全HNLペプチドの統計学的に検証された閾と比較することによる、及び患者生体試料中の決定基濃度を特異的決定基(specific determinant)(複数可)各々についての統計学的に検証された閾と比較することによる、細菌感染症の診断(すなわち、細菌感染症を確定診断すること)に関する。全HNLポリペプチドについての統計学的に検証された閾は、対照集団から、例えば、健常患者、又は細菌感染症以外の疾患、例えばウイルス感染症、に罹患している患者から得た比較試料中のHNLポリペプチドの全濃度に基づく。特異的決定基における決定基濃度についての統計学的に検証された閾は、対照集団からの、例えば、健常患者、又は細菌感染症以外の疾患に罹患している患者からの、比較対照生体試料中の特定の決定基各々における決定基濃度に基づく。様々な対照集団を本明細書に別様に記載する。
【0137】
本発明は、ある特定の実施形態では、患者生体試料中のHNLポリペプチドの全濃度を全HNLペプチドの統計学的に検証された閾と比較することによる、及び患者生体試料中の決定基濃度を特異的決定基各々についての統計学的に検証された閾と比較することによる、細菌感染症の除外に関する。全HNLポリペプチドについての統計学的に検証された閾は、対照集団から、例えば、細菌感染症に罹患している患者から得た比較試料中のHNLポリペプチドの全濃度に基づく。特異的(specific)決定基における決定基濃度についての統計学的に検証された閾は、対照集団からの、例えば細菌感染症に罹患している患者からの、比較対照生体試料中の特異的(specific)決定基各々における決定基濃度に基づく。様々な対照集団を本明細書に別様に記載する。
【0138】
対象において細菌感染症を除外する方法、ウイルス感染症を除外する方法、細菌感染症を確定診断する方法、及びウイルス感染症を確定診断する方法は、以下のステップを本質的に含みうる:
a)本明細書において上で定義した結合剤又は本明細書において上で定義した診断用組成物若しくはキットを使用して、対象から得た試料中のHNLのポリペプチド濃度を測定するステップ、及び
b)(i)ステップ(a)で決定されたHNLのポリペプチド濃度が所定の第1の閾値より低い場合、前記対象について細菌感染症を除外するステップ、又は
b)(ii)ステップ(a)で決定されたHNLのポリペプチド濃度が所定の第1の閾値より高い場合、前記対象についてウイルス感染症を除外するステップ、又は
b)(iii)ステップ(a)で決定されたHNLのポリペプチド濃度が所定の第1の閾値より高い場合、前記対象について細菌感染症を確定診断するステップ、又は
b)(iv)ステップ(a)で決定されたHNLのポリペプチド濃度が所定の第1の閾値より低い場合、前記対象についてウイルス感染症を確定診断するステップ。
【0139】
細菌感染症を除外する(ruling out)ことに関連して、所定の第1の閾は、細菌感染症に罹患している患者からの比較対照生体試料中のHNLポリペプチドの全濃度に基づく、全HNLポリペプチドについての統計学的に検証された閾でありうる。
【0140】
ウイルス感染症を除外することに関連して、所定の第1の閾は、ウイルス感染症に罹患している患者からの比較対照生体試料中のHNLポリペプチドの全濃度に基づく、全HNLポリペプチドについての統計学的に検証された閾でありうる。
【0141】
細菌感染症を確定診断する(ruling in)ことに関連して、所定の第1の閾は、健常患者又はウイルス感染症に罹患している患者からの比較対照生体試料中のHNLポリペプチドの全濃度に基づく、全HNLポリペプチドについての統計学的に検証された閾でありうる。
【0142】
ウイルス感染症を確定診断することに関連して、所定の第1の閾は、健常患者又はウイルス感染症に罹患している患者からの比較対照生体試料中のHNLポリペプチドの全濃度に基づく、全HNLポリペプチドについての統計学的に検証された閾でありうる。
【0143】
さらなる態様によると、本発明は、対象への処置推奨を提供する方法であって、a)上で定義した結合剤又は上で定義した診断用組成物若しくはキットを使用して、対象から得た試料中のHNLのポリペプチド濃度を測定するステップ、及び
b)ステップ(a)で決定されたHNLのポリペプチド濃度が所定の閾値より高い場合、前記対象が抗生物質処置を受けることを推奨するステップ、
c)ステップ(a)で決定されたHNLのポリペプチド濃度が所定の閾値より低い場合、患者が抗生物質処置を受けないことを推奨するステップ、又は
d)ステップ(a)で決定されたHNLのポリペプチド濃度が本明細書において上で定義した所定の閾値より低い場合、患者が抗ウイルス処置を受けることを推奨するステップ、
を含む方法に関する。
【0144】
さらに、本発明は、対象への診断検査推奨を提供する方法であって、
a)上で定義した結合剤又は上で定義した診断用組成物若しくはキットを使用して、対象から得た試料中のHNLのポリペプチド濃度を測定するステップ、及び
b)ステップ(a)で決定されたHNLのポリペプチド濃度が所定の閾値より高い場合、前記試料を細菌の存在について検査することを推奨するステップ、又は
c)ステップ(a)で決定されたHNLのポリペプチド濃度が所定の閾値より低い場合、前記試料をウイルスの存在について検査することを推奨するステップ
を含む方法に関する。
【0145】
統計学的に検証された閾は、対象又は患者から得た生体試料中の全HNL濃度と1以上の特定の(specific)他の決定基(複数可)の濃度の両方を特徴づけるために使用される値に関係づけられる。したがって、全HNL濃度又は決定基濃度が絶対値である場合には、対照値も絶対値に基づく。他の決定基は、本明細書において定義する感染症の決定基に関する予測値を有する任意のマーカー、例えば、ポリペプチドマーカー又は二次マーカーであることができる。したがって、これらの他の決定基には、所定の閾値に関して上で提供した定義が適用される。本発明に関して「決定基」は、限定ではないが、ポリペプチド、ペプチド、タンパク質、タンパク質アイソフォーム(例えば、デコイ受容体アイソフォーム)を包含する。決定基は、変異タンパク質も含むことができる。
【0146】
したがって、「決定基」(単数)又は「決定基」(複数)は、感染症に罹患している対象ではそのレベルが変化するすべてのポリペプチドの1つ又は複数を包含する。例えば、個々の決定基は、TRAIL、IL1RA、IP10、Mac−2BP、B2M、BCA−1、CHI3L1、エオタキシン、IL1a、MCP、CD62L、VEGFR2、CHP、CMPK2、CORO1C、EIF2AK2、ISG15、RPL22L1、RTN3、CD112、CD134、CD182、CD231、CD235A、CD335、CD337、CD45、CD49D、CD66A/C/D/E、CD73、CD84、EGFR、GPR162、HLA−A/B/C、ITGAM、NRG1、RAP1B、SELI、SPINT2、SSEA1、IgG非特異的結合分子、IL1、I−TAC、TNFR1、ABTB1、ADIPOR1、ARHGDIB、ARPC2、ATP6V0B、Clorf83、CD15、CES1、COROIA、CRP、CSDA、EIF4B、EPSTI1、GAS7、HERC5、IFI6、KIAA0082、IFIT1、IFIT3、IFITM1、IFITM3、LIPT1、IL7R、ISG20、LOC26010、LY6E、LRDD、LTA4H、MAN1C1、MBOAT2、MX1、NPM1、OAS2、PARP12、PARP9、QARS、RAB13、RAB31、RAC2、RPL34、PDIA6、PTEN、RSAD2、SART3、SDCBP、TRIM22、SMAD9、SOCS3、UBE2N、XAF1又はZBP1、並びにこれらのいずれの組合せ、例えば、これらの決定基の1つより多く、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上又はすべてを含むことができる。本発明は、上述の決定基のいずれか、特に、存在する場合にはポリペプチドのような決定基、に対する結合剤であって、しかしある特定の実施形態では核酸結合分子も含む結合剤の提供及び/又は使用をさらに想定している。そのような結合剤、好ましくは抗体は、当業者に公知の手順、若しくはHNLとの関連で本明細書において概要を述べる手順に従って得ることが可能であるか又は商業的供給源から入手可能であると予想される。さらなる情報は、例えば、Kjeldsenら、J Biol Chem.、1993年5月15日、268(14):10425〜32、「Isolation and primary structure of NGAL,a novel protein associated with human neutrophil gelatinase」から得ることがされてよい。
【0147】
決定基は、健常状態の非ポリペプチド因子、非血液感染性因子又は非分析物生理学的マーカー、例えば、本明細書において定義する「臨床パラメータ」はもちろん、同じく本明細書において定義する「従来の検査室リスク因子」も包含しうる。
【0148】
例えば、本明細書で使用する場合、決定基は、非ポリペプチド特徴(features)(すなわち、非ポリペプチド決定基)、例えば、好中球%(Neu(%)と略記する)、リンパ球%(Lym(%)と略記する)、単球%(Mon(%)と略記する)、絶対好中球数(ANCと略記する)及び絶対リンパ球数(ALCと略記する)、白血球数(WBCと略記する)、年齢、性別、並びに最大温度(すなわち、症状が最初に出現してからの最大深部体温)を含みうる。
【0149】
決定基は、数学的に生成されるあらゆる算定インデックス、又は時間的傾向及び相違を含む、上述の測定値のいずれか1つ又は複数についての組合せも含みうる。利用可能な場合、且つ本明細書に別段の記載がない限り、遺伝子産物である決定基は、国際ヒトゲノム構成命名委員会(Human Genome Organization Naming Committee:HGNC)によって指定された、及び本出願日の時点で、Entrez Geneとしても公知の米国国立生物学情報センター(NCBI)ウェブサイトに収載されている、公式の文字略語又は遺伝子記号に基づいて明記する。好ましい実施形態では、決定基は、ポリペプチド及び非ポリペプチド特徴を含む。
【0150】
上述の及び本発明によって想定されるそのような決定基の例を以下に提供する。
【0151】
ABTB1: この遺伝子は、アンキリン反復領域とタンパク質間相互作用に関与すると考えられる2つのBTB/POZドメインとを有するタンパク質をコードする。この遺伝子の発現は、腫瘍抑制因子であるホスファターゼ・テンシン・ホモログによって活性化される。選択的スプライシングの結果、3つの転写バリアントが生ずる。それは、PTEN増殖抑制シグナル経路のメディエーターとして作用しうる。それは、発生プロセスに関与しうる。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり(would be know)、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0152】
ADIPOR1: ADIPOR1は、脂肪細胞によって分泌され抗糖尿病薬として作用する必須ホルモンである、球状で完全長のアディポネクチン(APM1)の受容体である。それは、脂肪酸酸化などの脂質代謝を調節する代謝経路にほぼ確実に関与する。それは、AMPK増加、PPARAリガンド活性、脂肪酸酸化及びアディポネクチンによるグルコース取り込みを媒介する。ADIPOR1は、球状アディポネクチンの幾つかの高親和性受容体、及び完全長アディポネクチンの低親和性受容体を有する。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0153】
ARHGDIB: Rhoタンパク質からのGDPの解離の阻害及びその後のRhoタンパク質とのGTPの結合によってRhoタンパク質のGDP/GTP交換反応を調節する。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0154】
ARPC2: アクチン重合の調節に関与するArp2/3複合体のアクチン結合成分として機能し、活性化核形成促進因子(NPF)と共に分枝アクチンネットワークの形成を媒介する。母アクチンフィラメントと接触しているように見えるこの決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者に知られているか、又は適切なデータベースエントリー、例えば、Genbank又はUniprotで、2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0155】
ATP6V0B: H<+>−ATPアーゼ(液胞型ATPアーゼ、V−ATPアーゼ)は、真核細胞の細胞内区画を酸性化するように機能する酵素輸送体である。それは、偏在的に発現され、細胞内膜小器官、例えば液胞、リソソーム、エンドソーム、ゴルジ体、クロム親和性顆粒及び被覆小胞内に存在することはもちろん、細胞膜中にも存在する。H<+>−AGPアーゼは、2つのドメインで構成されているマルチサブユニット複合体である。VIドメインがATP加水分解を担当し、V0ドメインがタンパク質移行を担当する。H<+>−ATPアーゼ活性を調節する主要メカニズムが2つある:細胞膜への及びからのH<+>−ATPアーゼ含有小胞の再循環と、ホロ酵素複合体のグルコース感受性構築/分解。これらの輸送体は、受容体依存性エンドサイトーシス、タンパク質分解、及び共役輸送などのプロセスに重要な役割を果たす。それらには骨再吸収の機能があり、A3遺伝子の変異は劣性骨粗鬆症の原因となる。さらに、H<+>−ATPアーゼは、腫瘍転移並びに精子運動能及び成熟に関係づけられている。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0156】
B2M: B2Mのさらなる別名(alias)としては、限定ではないが、ベータ−2−ミクログロブリン及びCDABP0092が挙げられる。B2Mは、すべての有核細胞上に存在する、MHCクラスI分子の成分である。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、血清中に存在するアイソフォームもコードする。このタンパク質は、一部の病的状態でアミロイド線維を形成することができるベータ−プリーツシート構造を主に有する。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0157】
BCA1: BCA1は、Bリンパ球走化性因子(chemoattractant)であり、独立してクローニングされ、Angieと命名されており、脾臓、リンパ節及びパイエル板の濾胞内で強く発現されるCXCケモカインである。それは、どうやら、バーキットリンパ腫受容体1(BLR−1)を発現する細胞へのカルシウム流入及び前記細胞の化学遊走を刺激することによって、Bリンパ球の遊走を(T細胞及びマクロファージと比較して)優先的に促進する。したがって、これは濾胞へのBリンパ球のホーミングにおいて機能を果たしうる(RefSeqにより提供された)。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0158】
Clorf83: 機能が十分に特徴づけられていない。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0159】
CD112: この遺伝子は、2つのIg様C2型ドメインとIg様V型ドメインとを有する、1回膜貫通I型膜糖タンパク質をコードする。このタンパク質は、接着結合の細胞膜成分の1つである。それは、単純ヘルペスウイルス及び仮性狂犬病ウイルスのある特定の変異体株の入口としての機能も果たし、これらのウイルスの細胞間伝播に関与する。この遺伝子のバリエーションは、多発性硬化症の重症度の差に関連づけられている。異なるアイソフォームをコードする選択的転写スプライスバリアントが特徴づけられている。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0160】
CD134: この遺伝子によってコードされるタンパク質は、TNF受容体スーパーファミリーのメンバーである。この受容体は、アダプタータンパク質TRAF2及びTRAF5とのその相互作用によってNF−カッパBを活性化することが証明されている。マウスでのノックアウト研究は、この受容体がアポトーシス阻害剤BCL2及びBCL21L1/BCL2−XLの発現を促進し、このようにしてアポトーシスを抑制することを示唆した。前記ノックアウト研究は、CD4+T細胞応答におけるこの受容体の役割、並びにT細胞依存性B細胞増殖及び分化も示唆した。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0161】
CD15(FUT4): この遺伝子の産物は、フコースをN−アセチルラクトサミン多糖に導入して、フコシル化炭水化物構造を生成する。それは、非シアリル化抗原、ルイスx(CD15)の合成を触媒する。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0162】
CD182: この遺伝子によってコードされるタンパク質は、Gタンパク質共役型受容体スーパーファミリーのメンバーである。このタンパク質は、インターロイキン8(IL8)の受容体である。それは、IL8と高親和性で結合し、Gタンパク質活性化二次メッセンジャー系によってシグナルを伝達する。この受容体は、黒色腫増殖刺激活性を有するタンパク質であるケモカイン(C−X−Cモチーフ)リガンド1(CXCL1/MGSA)とも結合し、またこの受容体は、血清依存性黒色腫細胞増殖に必要な腫瘍成分であることが証明されている。この受容体は、炎症部位への好中球遊走を媒介する。腸微小血管内皮細胞におけるIL8の血管新生効果は、この受容体によって媒介されることが判明している。マウスでのノックアウト研究は、この受容体が、発育期の脊髄内でのオリゴデンドロサイト前駆細胞の配置を、それらの遊走を阻止することによって制御することを示唆した。ある領域内の遺伝子クラスターからのこの遺伝子、IL8RA(別の高親和性IL8受容体をコードする遺伝子)及びIL8RBP(IL8RBの偽遺伝子)は、2番染色体q33〜q36にマッピングされる領域において遺伝子クラスターを形成する。同じタンパク質をコードする、選択的スプライシングを受けたバリアントが、同定されている。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0163】
CD231: この遺伝子によってコードされるタンパク質は、テトラスパニンフェミリーとしても公知のトランスメンブレン4スーパーファミリーのメンバーである。これらのメンバーの大部分は、4つの疎水性ドメインの存在を特徴とする膜表面タンパク質である。このタンパク質は、細胞発生、活性化、増殖及び運動性の調節に関与するシグナル伝達事象を媒介する。これにコードされるタンパク質は、細胞表面糖タンパク質であり、神経突起伸長の制御に関与しうる。それはインテグリンと複合体を形成することが公知である。この遺伝子は、X連鎖精神遅滞及び神経精神疾患、例えば、ハンチントン舞踏病、脆弱X症候群及び筋強直性ジストロフィーに関連づけられる(RefSeqにより提供された)。
【0164】
CD235a: CD235aは、赤血球の主要内在性膜タンパク質である。赤血球膜の外側にあるN末端グリコシル化セグメントは、M血液型受容体を有する。SLC4A1の機能にとって重要であるようであり、高いSLC4A1活性に必要とされる。SLC4A1の細胞膜への転位に関与しうる。インフルエンザウイルスの受容体である。熱帯熱マラリア原虫赤血球結合抗原175(EBA−175)の受容体であり、EBA−175の結合は、O結合型グリカンのシアル酸残基に依存する。A型肝炎ウイルス(HAV)の受容体であるようである。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0165】
CD335: 活性化されたナチュラルキラー(K)細胞が腫瘍細胞溶解を媒介する効率の増加に寄与しうる細胞傷害性活性化受容体。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0166】
CD337: この遺伝子によってコードされるタンパク質は、NK細胞による腫瘍細胞の溶解を促進しうる自然細胞傷害性受容体(NCR)である。コードされるタンパク質は、T細胞受容体であるCD3−ゼータ(CD247)と相互作用する。この遺伝子の5’非翻訳領域の一塩基多型は、軽症マラリア感受性に関連づけられている。異なるアイソフォームをコードする3つの転写バリアントがこの遺伝子について判明している。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得。
【0167】
CD45: この遺伝子によってコードされるタンパク質は、タンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)ファミリーのメンバーである。PTPが細胞増殖、分化、有糸分裂周期及び発癌性形質転換をはじめとする様々な細胞プロセスを調節するシグナル伝達分子であることは公知である。このPTPは、細胞外ドメイン、単一の膜貫通セグメント及び2つのタンデム細胞質内触媒ドメインを含有し、受容体型PTPに属する。この遺伝子は、造血細胞において発現される。このPTPは、T細胞及びB細胞抗原受容体シグナル伝達の必須調節因子であることが証明されている。それは、抗原受容体複合体の成分と直接相互作用によって、又は抗原受容体シグナル伝達に必要とされる様々なSrcファミリーキナーゼを活性化することによって、機能する。このPTPはまた、JAKキナーゼを抑制し、このようにしてサイトカイン受容体シグナル伝達の調節因子として機能する。固有のアイソフォームをコードする、この遺伝子の選択的スプライシングを受けた幾つかの転写産物が報告されている。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0168】
CD49d: この遺伝子の産物は、タンパク質のインテグリンアルファ鎖ファミリーに属する。インテグリンは、アルファ鎖及びベータ鎖で構成されているヘテロ二量体内在性膜タンパク質である。この遺伝子は、アルファ4鎖をコードする。他のインテグリンアルファ鎖とは異なり、アルファ4は、Iドメインを含有せず、ジスルフィド結合切断も受けない。アルファ4鎖は、ベータ1鎖又はベータ7鎖のどちらか一方と会合している。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0169】
CD62L: この遺伝子は、接着/ホーミング受容体のファミリーに属する細胞表面接着分子をコードする。コードされる遺伝子は、C型レクチン様ドメイン、カルシウム結合上皮増殖因子様ドメイン、及び2つの短い補体様ドメインを含有する。遺伝子産物は、内皮細胞上の白血球への結合及びその後の回転、二次リンパ器官及び炎症不意へのそれらの遊走の促進に必要とされる。この遺伝子の一塩基多型は、免疫グロブリンA腎症をはじめとする様々な疾患に関連づけられている。選択的スプライシングを受けた転写バリアントがこの遺伝子について判明している(RefSeqにより提供された)。この遺伝子によってコードされるタンパク質には、sCD62Lと表される可溶型がある。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であると予想され、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0170】
CD64: この遺伝子は、単量体IgG型抗体に高親和性で結合するFc受容体として公知の膜内在性糖タンパク質をコードする。構造的に、CD64は、細胞の表面へのその輸送を可能にするシグナルペプチドと、抗体に結合するために使用するC2型の3つの免疫グロブリンドメインと、疎水性膜貫通ドメインと、短い細胞質側末端とで構成されている。CD64は、マクロファージ及び単球上でのみ構成的に見いだされる。IFNγ及びG−CSFのようなサイトカインでの多形核白血球の処置は、これらの細胞上でのCD64発現を誘導することができる。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0171】
CD66a: この遺伝子は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する癌胎児抗原(CEA)遺伝子ファミリーのメンバーをコードする。CEAファミリーの2つのサブグループ、CEA細胞接着分子及び妊娠特異的糖タンパク質、は、19番染色体の長腕上の1.2Mbクラスター内に位置する。CEA細胞接着分子サブグループの11の偽遺伝がこのクラスター内で見いだされる。コードされるタンパク質は、肝臓の胆管内の胆汁糖タンパク質として最初に記載された。その後、白血球、上皮及び内皮上で検出された細胞間接着分子であることが判明した。コードされるタンパク質は、細胞接着を同種分子間結合によってはもちろん、そのサブグループの他のタンパク質との異種分子間結合によっても媒介する。組織三次元構造の分化及び配置、血管新生、アポトーシス、主要抑制、転移、並びに自然及び適応免疫応答をはじめとする、複数の細胞活性が、コードされるタンパク質の結果であると考えられている。異なるアイソフォームをコードする複数の転写バリアントが報告されている。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であると予想され、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0172】
CD66c: 癌胎児抗原(CEA;MIM 114890)は、癌腫の血清イムノアッセイ決定の際に最も広く使用されている腫瘍マーカーの1つである。CEAの絶対がん特異性の明らかな欠如は、一つには、180kD型のCEAと抗原決定基を共有する抗原の正常及び腫瘍性組織における存在に起因する(Barnettら、1988(PubMed 3220478))。遺伝子のCEAファミリーに関するバックグラウンド情報については、CEACAM1(MIM 109770)を参照されたい。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0173】
CD66d: この遺伝子は、宿主細胞に結合して侵入するために幾つかの細菌病原体によって使用される、癌胎児抗原関連細胞接着分子(CEACAM)のファミリーのメンバーをコードする。コードされる膜貫通タンパク質は、低分子量GTPアーゼRacに依存性である幾つかの細菌腫のファゴサイトーシスを誘導する。それは、自然免疫系によるヒト特異的病原体の制御において重要な役割と果たすと考えられる。選択的スプライシングを受けた転写バリアントが記載されているが、それらの生物学的有益性は判定されていない。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0174】
CD66e: CEACAMサブファミリーのメンバーであるCD66eは、細胞接着に及び細胞内シグナル伝達に関与する表面糖タンパク質として機能する。CD66eは、大腸菌Drアドヘシンの受容体としても機能する。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0175】
CD73: この遺伝子によってコードされるタンパク質は、細胞外ヌクレオチドの膜透過性ヌクレオシドへの変換を触媒する細胞膜タンパク質である。コードされるタンパク質は、リンパ球分化の決定基として使用される。この遺伝子の欠損は、関節及び動脈の石灰化につながりうる。異なるアイソフォームをコードする2つの転写バリアントがこの遺伝子について判明している。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0176】
CD84: CD84は、同種分子間相互作用によって及びクラスター形成によって機能する接着受容体としての役割を果たし、SH2ドメイン含有タンパク質SH2D1A SAPを補充する。活性化T細胞及びSH2D1A SAPの増殖応答増加は、このプロセスには必要ではないようである。同種分子間相互作用は、リンパ球におけるインターフェロンガンマ/IFNG分泌を増進し、SH2D1 A/SAP依存性経路経由で血小板刺激を誘導する。CD84は、造血前駆細胞のマーカーとしての機能も果たしうる。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0177】
CD8A: CD8抗原は、免疫系内の効率的細胞間相互作用を媒介する最も細胞傷害性が高いTリンパ球上に見いだされる細胞表面糖タンパク質である。CD8抗原は、補助抑制因子としてT細胞受容体とともにTリンパ球に作用して、クラスIのMHC分子との関連で抗原提示細胞(APC)によって提示される抗原を認識する。この共受容体は、2本のアルファ鎖で構成されているホモ二量体として、又は1本のアルファ鎖と1本のベータ鎖とで構成されているヘテロ二量体として、機能する。アルファ鎖とベータ鎖の両方が免疫グロブリン可変軽鎖と有意な相同性を共有する。この遺伝子は、CD8アルファ鎖アイソフォームをコードする。異なるアイソフォームをコードする複数の転写バリアントがこの遺伝子について判明している。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0178】
CES1: 生体異物の解毒に、並びにエステル及びアミドプロドラッグの活性化に関与する。芳香族及び脂肪族エステルを加水分解するが、アミド又は脂肪酸−CoAエステルに対する触媒活性を有する。コカインのメチルエステル基を加水分解してベンゾオイルエクゴニンを形成する。コカインのエステル交換反応を触媒してコカエチレンを形成する。オレイン酸のエチルオレエートへのエチルエステルかを触媒する脂肪酸エチルエステルシンターゼ活性を提示する。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0179】
CHI3L1: キチナーゼ3様1(軟骨糖タンパク質−39);CHI3L1のさらなる別名としては、限定ではないが、ASRT7、CGP−39、GP−39、GP39、HC−gp39、HCGP−3P、YKL−40、YKL40、YYL−40及びhCGP−39が挙げられる。キチナーゼは、昆虫外骨格及び真菌の細胞壁にある豊富な糖重合体であるキチンの加水分解を触媒する。キチナーゼのグリコシドヒドロラーゼ18ファミリーは、8つのヒトファミリーメンバーを含む。この遺伝子は、活性化されたマクロファージ、軟骨細胞、好中球及び滑膜細胞によって分泌されうる、キチナーゼ活性を欠くグリコシドヒドロラーゼ18ファミリーの糖タンパク質メンバーをコードする。CHI3L1は、オキシダント誘導性肺損傷を阻害し、Th2免疫を増大させ、アポトーシスを調節し、選択的マクロファージ活性化を刺激し、線維症及び創傷治癒の一因となる。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0180】
CHP: この遺伝子は、Na+/H+交換輸送体NHE1と結合するリン酸化タンパク質をコードする。このタンパク質は、NHEファミリーメンバーの生理活性を支持する必須補因子としての機能を果たし、NHE1の細胞分裂促進性調節に関与しうる。このタンパク質は、カルシニューリンB及びカルモジュリンと類似性を共有し、カルシニューリン活性の内在性阻害因子であることも公知である(RefSeqにより提供された)。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0181】
CMPK2: この遺伝子は、ミトコンドリアにおけるdUTP及びdCTP合成に関与しうるタンパク質をコードする。リン酸供与体としてのATPで、dUMP、dCMP、CMP、UMP、並びにピリミジンヌクレオシドアナログddC、dFdC、araC、BVDU及びFdUrdの一リン酸塩を、リン酸化することができる。効力はdUMPが一番高く、それにdCMPが続き、CMP及びUMPは不良な基質である。ddC又は他のピリミジンアナログでの長期処置によって起こるmtDNA欠乏に関与しうる。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0182】
CORO1A: 運動性が高い細胞の細胞骨格の極めて重要な成分であって、大きい細胞膜片の陥入においても、細胞遊走に関与する細胞膜突起の形成においても機能を果たす成分でありうる。マイコバクテリア感染細胞では、ファゴソーム膜上にそれが保持されることによってファゴソームとリソソームとの融合が防止される。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0183】
CRP: C反応性タンパク質。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、ペントラキシンファミリーに属する。それは、宿主の外来性病原体及び損傷細胞を認識し、それらの除去を血液中の体液性及び細胞性エフェクター系との相互作用によって開始させるその能力に基づく、幾つかの宿主防御関連機能に関与する。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0184】
CSDA: GM−CSFプロモーターと結合し、抑制因子として作用するようである。完全長mRNAとも結合し、コンセンサス部位5’−UCCAUCA−3’を含有する短いRNA配列とも結合する。翻訳抑制に関与しうる。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0185】
EGFR: この遺伝子によってコードされるタンパク質は、プロテインキナーゼスーパーファミリーのメンバーである膜貫通糖タンパク質である。このタンパク質は、上皮増殖因子ファミリーのメンバーの受容体である。EGFRは、上皮増殖因子と結合する細胞表面タンパク質である。このタンパク質のリガンドとの結合は、受容体二量体化及びチロシン自己リン酸化を誘導し、細胞増殖につながる。この遺伝子の変異は、肺がんに関連する。異なるタンパク質アイソフォームをコードする選択的スプライシングを受けた複数の転写バリアントがこの遺伝子について判明している。
【0186】
GPR162: この遺伝子は、ヒト12番染色体p13の高遺伝子密度領域のゲノム解析によって同定された。主として脳内で発現されるようであるが、その機能は不明である。異なるアイソフォームをコードする選択的スプライシングを受けた転写バリアントが同定されている。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0187】
EIF2AK2: EIF2AK2は、二本鎖RNA(dsR A)によって媒介されるプロセスである自己リン酸化後に酵素的活性を獲得する、タンパク質セリン/トレオニンキナーゼである。さらなる別名としては、限定ではないが、PKR、PRKR、EIF2AK1、プロテインキナーゼ、インターフェロン誘導性二本鎖RNA依存性、p68キナーゼなどが挙げられる。EIF2AK2の活性化は、このキナーゼを、タンパク質合成の阻害をもたらすその天然基質(真核生物タンパク質合成開始因子−2のアルファサブユニット(EIF2−アルファ;MIM 603907))へとリン酸化させる。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0188】
EIF4B: mRNAのリボソームとの結合に必要とされる。EIF4−F及びEIF4−Aと密接に関連して機能する。それは、EIF−4F及びATPの存在下でmRNAの5’末端キャップ付近に結合する。それは、EIF4−AとEIF4−F両方のATPアーゼ活性及びATP依存性RNA巻き戻し活性を促進する。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0189】
エオタキシン: この遺伝子は、17番染色体のq腕上にクラスターを形成している幾つかのCys−Cys(CC)サイトカイン遺伝子の1つである。サイトカインは、免疫調節プロセス及び炎症プロセスに関与する分泌タンパク質のファミリーである。CCサイトカインは、2つの隣接するシステインを特徴とするタンパク質である。この遺伝子によってコードされるサイトカインは、好酸球に対して化学遊走活性を示すが、単核細胞に対しても好中球に対しても示さない。この好酸球特異的ケモカインは、好酸球性炎症性疾患、例えば、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、喘息及び寄生虫感染症に関与すると想定された。アレルゲンの存在に反応して、このタンパク質は、アレルギー性炎症反応の顕著な特徴である好酸球蓄積を直接促進する。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0190】
EPSTI1: 機能がまだ十分に特徴づけられていない。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0191】
GAS7: 成長停止特異的7(Growth arrest-specific 7)は、高分化した(terminally differentiated)脳細胞において主として発現され、成熟小脳プルキンエ神経細胞において発現されることが圧倒的に多い。GAS7は、神経発達に関与すると推定される。N末端が異なるタンパク質をコードする幾つかの転写バリアントが記載されている。それは、小脳神経細胞の成熟及び形態的分化の促進に関与しうる。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0192】
HERC5: ISG15結合のための主要E3リガーゼ。インターフェロンによって誘導される細胞における自然抗ウイルス応答の正の調節因子として作用する。標的タンパク質と広範に且つ比較的特異的に認識するISG化機構の一部をなす。持続的活性化をもたらすIRF3のISG化を触媒する。それは、IRF3ユビキチンか及び分解に拮抗するIRF3−PIN1相互作用を減弱させ、抗ウイルス応答を促進する。病原性を減弱する、A型インフルエンザウイルスNS1のISG化を触媒する;ISG化NS1は、ホモ二量体を形成することができず、したがってそのRNA標的と相互作用することができない。それは、ウイルスの感染性に対してドミナントネガティブ効果をもたらす、パピローマウイルス16LI型タンパク質のISG化を触媒する。ポリリボソームと物理的に会合しており、新たに合成されたタンパク質を同時翻訳様式で広範に修飾する。インターフェロンによって刺激された細胞では、新たに翻訳されたウイルスタンパク質がISG15の主な標的である。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0193】
HLA−A: HLA−Aは、HLAクラスI重鎖パラログ(paralogues)に属する。このクラスI分子は、重鎖及び軽鎖(ベータ−2ミクログロブリン)からなるヘテロ二量体である。重鎖は、膜に固着されている。クラスI分子は、小胞体内腔に由来するペプチドを提示することによって免疫系で中心的な役割を果たす。それらは、ほぼすべての細胞において発現される。重鎖は、おおよそ45kDaであり、その遺伝子は、8つのエクソンを含有する。エクソン1は、リーダーペプチドをコードし、エクソン2及び3は、アルファ及びアルファ2ドメインをコードし、前記両方のドメインが前記ペプチドに結合するものであり、エクソン4は、アルファ3ドメインをコードし、エクソン5は、膜貫通領域をコードし、エクソン6及び7は、細胞質側末端をコードする。エクソン2及びエクソン3内の多型は、各クラス1分子のペプチド結合特性の原因となる。これらの多型のタイピングは、骨髄及び腎臓移植のために常例的に行われている。何百ものHLA−Aアレルが記載されている。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0194】
HLA−B: HLA−Bは、HLAクラスI重鎖パラログに属する。このクラスI分子は、重鎖及び軽鎖(ベータ−2ミクログロブリン)からなるヘテロ二量体である。重鎖は、膜に固着されている。クラスI分子は、小胞体内腔に由来するペプチドを提示することによって免疫系で中心的な役割を果たす。それらは、ほぼすべての細胞において発現される。重鎖は、おおよそ45kDaであり、その遺伝子は、8つのエクソンを含有する。エクソン1は、リーダーペプチドをコードし、エクソン2及び3は、アルファ及びアルファ2ドメインをコードし、前記両方のドメインが前記ペプチドに結合するものであり、エクソン4は、アルファ3ドメインをコードし、エクソン5は、膜貫通領域をコードし、エクソン6及び7は、細胞質側末端をコードする。エクソン2及びエクソン3内の多型は、各クラス1分子のペプチド結合特性の原因となる。これらの多型のタイピングは、骨髄及び腎臓移植のために常例的に行われている。何百ものHLA−Bアレルが記載されている。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0195】
HLA−C: HLA−Cは、HLAクラスI重鎖パラログに属する。このクラスI分子は、重鎖及び軽鎖(ベータ−2ミクログロブリン)からなるヘテロ二量体である。重鎖は、膜に固着されている。クラスI分子は、小胞体内腔に由来するペプチドを提示することによって免疫系で中心的な役割を果たす。それらは、ほぼすべての細胞において発現される。重鎖は、おおよそ45kDaであり、その遺伝子は、8つのエクソンを含有する。エクソン1は、リーダーペプチドをコードし、エクソン2及び3は、アルファ及びアルファ2ドメインをコードし、前記両方のドメインが前記ペプチドに結合するものであり、エクソン4は、アルファ3ドメインをコードし、エクソン5は、膜貫通領域をコードし、エクソン6及び7は、細胞質側末端をコードする。エクソン2及びエクソン3内の多型は、各クラス1分子のペプチド結合特性の原因となる。これらの多型のタイピングは、骨髄及び腎臓移植のために常例的に行われている。100を超えるHLA−Cアレルが記載されている。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0196】
IFI6: この遺伝子は、そもそも(first)、インターフェロンによって誘導される多くの遺伝子の1つとして同定された。コードされるタンパク質は、アポトーシスの調節に肝要な役割を果たしうる。哺乳動物スプライスコンセンサス配列に似ている12ヌクレオチド反復エレメントの26の反復からなるミニサテライトが、第2エクソンの末端付近で始まる。2つの顆粒反復ユニットをスプライス供与部位として使用することによって異なるアイソフォームをコードする選択的スプライシングを受けた転写バリアントが記載されている。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0197】
IFIT1: テトラトリコペプチド反復(repeats)を有する、インターフェロン誘導タンパク質。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0198】
IFIT3: 機能がまだ十分に特徴づけられていない。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0199】
IFITM1: 複製の初期段階を阻害することによって、少なくとも3つの主要ヒト病原体、すなわち、A型インフルエンザH1N1ウイルス、ウエストナイルウイルス及びデングウイルスに対する細胞自然免疫を媒介する、IFN誘導抗ウイルス性タンパク質。ERK活性化を阻害することにより、又はp53依存的にG1期での細胞成長を阻止することにより、IFN−ガンマの抗増殖作用に重要な役割を果たす。細胞成長の制御に関係づけられている。抗増殖及び同型接着シグナルの伝達に関与する多量体複合体の成分。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0200】
IFITM3 IFITM2: 複製の初期段階を阻害することによって、少なくとも3つの主要ヒト病原体、すなわち、A型インフルエンザH1N1ウイルス、ウエストナイルウイルス(WNV)及びデングウイルス(WNV)に対する細胞自然免疫を媒介する、IFN誘導抗ウイルス性タンパク質。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0201】
IL1a: この遺伝子によってコードされるタンパク質は、インターロイキン1サイトカインファミリーのメンバーである。このサイトカインは、様々な免疫応答、炎症プロセス及び造血に関与する多面発現性サイトカインである。単球及びマクロファージは、このサイトカインを、細胞傷害に応答してタンパク質分解的にプロセッシングされ、放出され、このようにしてアポトーシスを誘導するプロタンパク質として、産生することができる。この遺伝子及び他の8つのインターロイキン1ファミリー遺伝子が2番染色体上でサイトカイン遺伝子クラスターを形成する。IL−1タンパク質は、炎症反応に関与し、内因性発熱物質として同定されており、滑膜細胞からのプロスタグランジン及びコラゲナーゼの放出を刺激すると報告されている。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0202】
IL1RA: この遺伝子によってコードされるタンパク質は、インターロイキン1受容体ファミリーのメンバーである。このタンパク質は、インターロイキンアルファ(IL1A)の受容体、インターロイキンベータ(IL1B)の受容体、及びインターロイキン1受容体、1型(IL1RI/IL1RA)である。それは、多くのサイトカインによって誘導される免疫応答及び炎症反応に関与する、重要なメディエーターである。この遺伝子のさらなる名称としては、限定ではないが、CD121A、IL−1RT1、p80、CD121a抗原、CD121A、IL1R及びIL1raが挙げられる。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0203】
IL6:こ の遺伝子は、炎症及びB細胞の成熟において機能するサイトカインをコードする。加えて、コードされるタンパク質は、自己免疫疾患又は感染症の人々において発熱を誘導しうる内因性発熱物質であることが証明されている。前記タンパク質は、主として急性及び慢性炎症部位で産生され、そこで血清に分泌され、インターロイキン6受容体アルファによって転写炎症反応を誘導する。この遺伝子の機能は、糖尿病及び全身性若年性関節リウマチへの易罹患性を含む、多種多様な炎症関連病態に関係づけられている。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0204】
IL7R: この遺伝子によってコードされるタンパク質は、インターロイキン7(IL7)の受容体である。この受容体の機能は、インターロイキン2、4、7、9及び15をはじめとする様々なサイトカインの受容体によって共有される共通のガンマ鎖である、インターロイキン2受容体、ガンマ鎖(IL2RG)を必要とする。このタンパク質がリンパ球発生中のV(D)J組換えに肝要な役割を果たすことは公知である。このタンパク質は、STAT5によるTCRガンマ遺伝子座の到達性及びヒストンアセチル化を制御することも判明している。マウスのノックアウト研究は、アポトーシスの阻止がTリンパ球の分化及び活性化中のこのタンパク質の本質的機能であることを示唆した。このタンパク質の機能的欠陥は、重症複合免疫不全(SCID)の発病に関連しうる。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0205】
IL−8: この遺伝子によってコードされるタンパク質は、CXCケモカインファミリーのメンバーである。IL−8のさらなる別名としては、限定ではないが、インターロイキン8、K60、CXCL8、SCYB8、GCP−1、TSG−1、MDNCF、b−ENAP、MONAP、肺胞マクロファージ走化性因子I、NAP−1、ベータ内皮細胞由来好中球活性化ペプチド、GCP1、ベータ−トロンボグロブリン様タンパク質、LECT、ケモカイン(C−X−Cモチーフ)リガンド8、LUCT、エモクタキン、LYNAP、インターロイキン−8、NAF、肺巨細胞癌由来走化性タンパク質、NAP1、リンパ球由来好中球活性化ペプチド、IL−8、好中球活性化ペプチド1、顆粒球走化性タンパク質1、低分子量誘導性サイトカインサブファミリーB、メンバー8、単球由来好中球走化性因子、腫瘍壊死因子誘導遺伝子1、単球由来好中球活性化ペプチド、エモクタキン、T細胞走化性因子、C−X−Cモチーフケモカイン8、3−1OC、好中球活性化タンパク質1、AMCF−I及びプロテイン3−1OCが挙げられる。このケモカインは、炎症反応の主要メディエーターの1つである。このケモカインは、幾つかの細胞型によって分泌される。それは、走化性因子として機能し、強力な血管新生因子でもある。この遺伝子は、ウイルス感染によって起こる一般的な呼吸器疾患である気管支炎の発病に関与すると考えられている。CXCケモカイン遺伝子ファミリーのこの遺伝子及び他の10のメンバーは、4番染色体qにマッピングされた領域においてケモカイン遺伝子クラスターを形成する。IL−8は、単球ではなく好中球、好塩基球及びT細胞を誘引する走化性因子である。それは、好中球活性化にも関与する。それぞれIL−8(1〜77)と比較して、IL−8(6〜77)のほうが好中球活性化に関して5〜10倍高い活性を有し、IL−8(5〜77)のほうが好中球活性化に関して活性が増加されており、IL−8(7〜77)のほうが受容体CXCR1及びCXCR2への親和性が高い。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0206】
IP10: この遺伝子は、CXCサブファミリーのケモカインと受容体CXCR3のリガンドとをコードする。このタンパク質のCXCR3との結合は、単球、ナチュラルキラー及びT細胞遊走の刺激並びに接着分子発現の修飾を含む、多面的効果をもたらす。この遺伝子のさらなる名称としては、限定ではないが、CXCL10、ガンマ−IP、INP10及びケモカイン(C−X−Cモチーフ)リガンド10が挙げられる。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0207】
ISG15: ISG15ユビキチン様修飾因子(modifier);ISG15のさらなる別名としては、限定ではないが、G1P2、IFI15、IP17、UCRP及びhUCRPが挙げられる。このユビキチン様タンパク質は、IFN−アルファ又はIFN−ベータ刺激後、細胞内標的タンパク質と結合する。その酵素的経路は、ユビキチンのものとは部分的に異なり、基質特異性及びライゲーションする酵素との相互作用が異なる。ISG15結合経路は、E1酵素を使用するが、特異的E2酵素のレベルでUb結合経路と合流するようである。標的は、STAT1、SERPINA3G/SPI2A、JAK1、MAPK3/ERK1、PLCGl、EIF2AK2/PKR、MXl/MxA、及びRIG−1を含む。好中球に対して特異的走化活性を示し、好中球を活性化して好酸球走化性因子の放出を誘導する。ライゲーションされる標的タンパク質の中間経線維との会合を誘導するトランス作用性結合因子としての機能を果たしうる。ことによるとある程度は単球及びマクロファージによるIFN−ガンマ分泌を誘導することによって、細胞間シグナル伝達におけるような、自己分泌、パラ分泌及び内分泌メカニズムにも関与しうる。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0208】
ITGAM: この遺伝子は、インテグリンアルファM鎖をコードする。インテグリンは、アルファ鎖及びベータ鎖で構成されているヘテロ二量体内在性膜タンパク質である。アルファインテグリンを含有するこのIドメインは、ベータ2鎖(ITGB2)と化合して、マクロファージ受容体1(「Mac−1」)又は不活性化C3b(iC3b)受容体3(「CR3」)と呼ばれる、白血球特異的インテグリンを形成する。アルファMベータ2インテグリンは、刺激を受けた内皮への好中球及び単球の接着において重要であり、補体被覆粒子のファゴサイトーシスにおいても重要である。異なるアイソフォームをコードする複数の転写バリアントがこの遺伝子について判明している。
【0209】
Mac−2−BP: MAC−2−BPのさらなる別名としては、限定ではないが、LGALS3BP、90K、血清タンパク質90K、BTBD17B、M2BP及びレクチン、ガラクトシド結合、可溶性、3結合タンパク質が挙げられる。ガレクチンは、細胞間相互作用及び細胞・マトリックス相互作用の修飾に関係づけられているベータ−ガラクトシド結合タンパク質のファミリーである。MAC−2−BPのレベルは癌患者の血清では上昇していることが判明している。それは、ナチュラルキラー(NK)及びリンフォカイン活性化キラー(LAK)細胞の細胞傷害性(cell cytotoxicity)に関連する免疫応答に関係づけられるようである。このネイティブタンパク質は、Mac−2として公知のヒトマクロファージ結合レクチンとはもちろんガレクチン1とも特異的に結合することができる。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0210】
MCP:この遺伝子によってコードされるタンパク質は、I型膜タンパク質であり、補体系の調節部である。コードされるタンパク質は、血清因子Iによる補体成分C3b及びC4bの不活性化の補因子活性であって、宿主細胞を補体による損傷から保護する活性を有する。加えて、コードされるタンパク質は、麻疹ウイルスエドモンストン株、ヒトヘルペスウイルス−6及び病原性ナイセリアのIV型線毛の受容体として作用することができる。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、受精中の精子と卵母細胞融合に関与しうる。この遺伝子座での変異は、溶血性尿毒症症候群に対する易罹患性と関連づけられている。異なるアイソフォームをコードする選択的スプライシングを受けた転写バリアントが記載されている。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0211】
ISG20: 一本鎖RNAに対する特異性を有するエクソヌクレアーゼであり、より少ない程度ではDNAに対する特異性を有する。一本鎖DNAの速度よりも約35倍高い速度でRNAを分解する。RNAウイルスに対するIFNの抗ウイルス機能に関与する。
【0212】
KIAA0082(FTSJD2): mRNAの5’キャップ構造へのmRNAキャップ1 2’−O−リボースメチル化を媒介する、S−アデノシル−L−メチオニン依存性メチルトランスフェラーゼ。m(7)GpppGキャップ化mRNAの第1のヌクレオチドのリボースをメチル化して、m(7)GpppNmp(キャップ1)を生じさせる。キャップ1修飾は、より高い翻訳レベルに関連づけられる。インターフェロン応答経路に関与しうる。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0213】
LIPT1: リポ酸のタンパク質への転移プロセスは、2ステッププロセスである。第1のステップは、リポシル−AMPを形成するためのリポ酸活性化酵素によるリポ酸の活性化である。第2のステップについては、この遺伝子によってコードされるタンパク質がそのリポシル部分をアポタンパク質に転移させる。この遺伝子の5’UTRにおける選択的スプライシングの結果、同じタンパク質をコードする5つの転写バリアントが生ずる。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0214】
LOC26010(SPATS2): 機能がまだ十分に特徴づけられていない。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0215】
LRDD: この遺伝子によってコードされるタンパク質は、ロイシンリッチな(rich))反復及びデスドメイン(death domain)を含有する。このタンパク質は、他のデスドメインタンパク質、例えば、Fas(TNFRSF6)関連ビアデスドメイン(FADD)及びMAPキナーゼ活性化デスドメイン含有タンパク質(MADD)と相互作用すること、したがって細胞死関連シグナル伝達プロセスにおいてアダプタータンパク質として機能しうることが証明されている。この遺伝子のマウス対応物の発現は、腫瘍抑制因子p53によって正に調節されること及びDNA損傷に反応して細胞アポトーシスを誘導することが判明しており、これは、p53依存性アプト−シスのエフェクターとしてのこの遺伝子の役割を示唆する。選択的スプライシングの結果、複数の転写バリアントが生ずる。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0216】
LTA4H: ロイコトリエンA4(LTA−4)のエポキシド部分を加水分解してロイコトリエンB4(LTB−4)を形成する。この酵素には多少のペプチダーゼ活性もある。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0217】
LY6E: 機能がまだ十分に特徴づけられていない。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0218】
MAN1C1: マンノシダーゼは、広い発現パターンを提示する2つのサブタイプ:I及びII(それぞれEC番号3.2.1.113及び3.2.1.114)に分けられる。マンノシダーゼIは、オリゴマンノースオリゴ糖Man9(GlcNac)2の(1,2)−結合アルファ−D−マンノース残基を加水分解し、マンノシダーゼIIは、Man5(GlcNAc)3の(1,3)結合及び(1,6)結合アルファ−D−マンノース残基を加水分解する。両方のサブタイプが二価陽イオン補因子を必要とする。マンノシダーゼの変異は、マンノース症(マンノシダーゼI欠損)の原因になりうる。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0219】
MBOAT2: リゾホスファチジル−エタノールアミン(1−アシル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン又はLPE)のホスファチジル−エタノールアミン(1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン又はPE)への変換(LPEAT活性)を媒介するアシルトランスフェラーゼ。リゾホスファチジン酸(LPA)のホスファチジン酸(PA)へのアシル化(LPAAT活性)も触媒する。非常に弱いリゾホスファチジル−コリンアシルトランスフェラーゼ(LPCAT活性)も有する。オレオイル−CoAをアシル供与体として好む。リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼ(LPLAT)は、ランズ回路としても公知のリン脂質リモデリング経路の再アシル化ステップを触媒する。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0220】
MX1/MXA: マウスにおいて、インターフェロン誘導性Mxタンパク質は、インフルエンザウイルス感染症に対する特異的抗ウイルス状態の原因となる。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、その抗原的関連性、誘導状態、物理化学的特性及びアミノ酸分析によって判定してマウスタンパク質に類似している。この細胞質タンパク質は、ダイナミンファミリーと大型GTPアーゼのファミリーの両方のメンバーである。同じタンパク質をコードする2つの転写バリアントがこの遺伝子について判明している。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0221】
NPM1: NPM1(it)は、多種多様な細胞プロセス、例えば、リボソーム新生、中心体複製、タンパク質シャペロニング、ヒストン集合、細胞増殖、並びに腫瘍抑制因子TP53/p53及びARFの調節に関与する。それは、リボソームに結合して、おそらくリボソーム核輸送を駆動する。NPM1(it)は、核小体リボ核タンパク質構造と会合し、一本鎖核酸に結合する。コアヒストンH3、H2B及びH4のシャペロニンとして作用する。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0222】
NRG1: この遺伝子によってコードされるタンパク質は、当初、NEU/ERBB2受容体チロシンキナーゼと相互作用してチロシン残基上のそのリン酸化を増加させる44kD糖タンパク質として同定された。このタンパク質は、細胞−細胞相互作用を媒介し、多臓器系の成長及び発達において重要な役割を果たすシグナル伝達タンパク質である。異なるアイソフォームの異常な多様性(an extraordinary variety)が、代替的なプロモーターの使用及びスプライシングを介してこの遺伝子から産生されることが知られている。これらのアイソフォームは、組織特異的に発現され、それらの構造が大きく異なるため、これらのアイソフォームはI、II、III、IV、V及びVI型に分類される。遺伝子調節不全は、癌、統合失調症及び双極性障害(BPD)などの疾患に関連している。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者に知られているか、又は適切なデータベースエントリー、例えば、Genbank又はUniprotで、2015年11月11日の日付で誘導され得る。。
【0223】
OAS2: この遺伝子は、ウイルス感染症に対する自然免疫応答に関与する必須タンパク質である、2−5Aシンターゼファミリーのメンバーをコードする。コードされるタンパク質は、インターフェロンによって誘導され、2’特異的ヌクレオチジル転移反応においてアデノシン三リン酸を使用して2’,5’−オリゴアデニル酸(2−5A)を合成する。これらの分子は、不活性型リボヌクレアーゼLを活性化し、その結果、ウイルスRNAが分解され、ウイルス複製が阻害されることになる。この遺伝子ファミリーの3つの公知メンバーは、12番染色体上のクラスター内に位置する。異なるアイソフォームをコードする選択的スプライシングを受けた転写バリアントが記載されている。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0224】
PARP9: ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)は、複数のADP−リボース部分の付加によるタンパク質の翻訳後修飾を触媒する。PARPは、ADP−リボースをニコチンアミドジヌクレオチド(NAD)から基質タンパク質上のglu/asp残基に転移させ、そしてまたADP−リボースを重合して長/分岐鎖ポリマーを形成する。PARP阻害剤は、がん、糖尿病、脳卒中及び心血管疾患をはじめとする多数の病態に使用するために開発中である。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0225】
PARP12: ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)は、複数のADP−リボース部分の付加によるタンパク質の翻訳後修飾を触媒する。PARPは、ADP−リボースをニコチンアミドジヌクレオチド(NAD)から基質タンパク質上のglu/asp残基に転移させ、そしてまたADP−リボースを重合して長/分岐鎖ポリマーを形成する。PARP阻害剤は、がん、糖尿病、脳卒中及び心血管疾患をはじめとする多数の病態に使用するために開発中である。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0226】
PCT: プロカルシトニン(PCT)は、ホルモンカルシトニンのペプチド前駆体であり、ホルモンカルシトニンは、カルシウム恒常性に関係する。プロカルシトニンレベルは、炎症誘発性刺激に反応して上昇する。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0227】
PDIA6: PDIA6などの、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(EC5.3.4.1)は、タンパク質におけるジスルフィド結合の形成、還元及び異性体化を触媒する小胞体(ER)常在性タンパク質であって、ジスルフィド結合しているタンパク質の折り畳みに関与すると考えられているタンパク質である。それは、誤って折り畳まれたタンパク質の凝集を阻害するシャペロンとして機能しうる。コンブルキシン、コラーゲン及びトロンビンなどのアゴニストによる血小板凝集及び活性化に関与する。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0228】
プロカルシトニン: カルシウム恒常性に関係するホルモンカルシトニンのペプチド前駆体である。プロカルシトニンレベルは、炎症誘発性刺激、特に、細菌に起因する炎症誘発性刺激に反応して上昇する。この場合、それは、主として肺及び腸の細胞によって生ずる。それは、ウイルス又は非感染性炎症に伴って有意に上昇しない。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0229】
PTEN: 腫瘍抑制因子。チロシンリン酸化タンパク質、セリンリン酸化タンパク質及びトレオニンリン酸化タンパク質を脱リン酸化する、二重特異性タンパク質ホスファターゼとして作用する。ホスファチジルイノシトール(PI)3,4,5−三リン酸、PI3,4−二リン酸、PI3−リン酸及びイノシトール1,3,4,5−四リン酸からイノシトール環のD3位のリン酸をin vitro基質優先順序PtdIns(3,4,5)P3>PtdIns(3,4)P2>PtdIns3P>Ins(l,3,4,5)P4で除去する、脂質ホスファターゼとしても作用する。脂質ホスファターゼ活性は、その腫瘍抑制因子機能に肝要である。ホスホイノシチドを脱リン酸化することによりPI3K−AKT/PKBシグナル伝達経路を遮断することによって、細胞周期進行及び細胞生存を調節する。その非リン酸化形は、AIP1と協働してAKT1活性化を抑制する。チロシンリン酸化接着斑キナーゼを脱リン酸化し、細胞遊走並びにインテグリン媒介細胞細胞伸展及び接着斑形成を阻害する。神経細胞配置、樹状突起発達及びシナプス形成を含む成体神経新生の過程で新生神経細胞の組み込みプロセスのテンポを制御するAKT−mTORシグナル伝達経路の重要な調節因子としての役割を果たす。脂肪組織におけるインスリンシグナル伝達及びグルコース代謝の負の制御調節でありうる。核のモノユビキチン化型は、より大きいアポトーシスの可能性を有するが、細胞質のモノユビキチン化型は、低い腫瘍抑制能力を誘導する。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0230】
RAB13: 極性輸送に、タイトジャンクションの構築(assembly)及び/又は活性に関与することができる。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0231】
RAP1B: 固有のGTPアーゼ活性を有するGTP結合タンパク質。適正な内皮細胞極性及び血管内腔の確立及び維持におけるKRIT1及びCDH5の極性化活性の一因となる。細胞結合部位へのリン酸化PR、CZ、PARD3及びTIAM1の局在化に必要とされる。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0232】
RTN3: 初期分泌経路の膜輸送に関与しうる。BACE1活性及びアミロイド前駆体タンパク質プロセッシングを阻害する。カスパーゼ−8カスケード及びアポトーシスを誘導しうる。小胞体ストレスに基づくミトコンドリアへのBCL2転位を支持しうる。エンテロウイルス感染症の場合、RTN3は、ウイルス複製又は発病に関与しうる。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0233】
SAA: アポリポタンパク質の血清アミロイドAファミリーのメンバーをコードする。コードされるタンパク質は、炎症及び組織傷害に反応して高度に発現される。このタンパク質は、HDL代謝及びコレステロール恒常性に重要な役割を果たす。このタンパク質の高いレベルは、アテローム動脈硬化症、関節リウマチ、アルツハイマー病及びクローン病をはじめとする慢性炎症性疾患に関連づけられる。このタンパク質は、ある特定の腫瘍の潜在的バイオマーカーでもありうる。選択的スプライシングの結果、同タンパク質をコードする複数の転写バリアントが生ずる。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0234】
QARS: アミノアシル−tRNAシンセターゼは、それらの同族アミノ酸によるtRNAのアミノアシル化を触媒する。tRNAに含有されるヌクレオチドトリプレットとアミノ酸の連結におけるそれらの中心的役割のため、アミノアシル−tRNAシンセターゼは、進化中に出現した最初のタンパク質のであると考えられる。後生動物では、グルタミン(gln)、グルタミン酸(glu)及び7つの他のアミノ酸に特異的な9つのアミノアシル−tRNAシンセターゼが多酵素複合体の中で会合している。真核生物に存在するが、グルタミル−tRNAシンセターゼ(QARS)は、Gln−tRNA(Gln)がミスアシル化Glu−tRNA(Gln)のアミド基転移によって形成される多くの原核生物、ミトコンドリア及び葉緑体には不在である。グルタミル−tRNAシンセターゼは、クラスIアミノアシル−tRNAシンセターゼファミリーに属する。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0235】
RAB13: 極性輸送に、タイトジャンクションの構築及び/又は活性に関与できる。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0236】
RAB31: RABファミリーの低分子量GTP結合タンパク質、例えばRAB31は、小胞及び顆粒標的化において不可欠な役割を果たす。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0237】
RAC2: 低分子量Gタンパク質(低分子量GTPアーゼ)は、Gアルファタンパク質のホモログであり、多くの場合、Ras癌原遺伝子スーパーファミリーと呼ばれる。Rasスーパーファミリーは、8ファミリー:Ras、Rho、Rab、Rap、Arf、Ran、Rheb及びRadに分類される、100を超える低分子量GTPアーゼを含有する。低分子量GTPアーゼは、増殖、分化、運動及び脂質小胞輸送をはじめとする、細胞の多種多様なプロセスを調節する。Gアルファタンパク質同様、低分子量GTPアーゼは、交互に(GTPと結合している)オン状態と(GDPと結合している)オフ状態になる。この周期的プロセスは、グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)及びGTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)を必要とする。低分子量GTPアーゼは、大部分の受容体チロシンキナーゼ(RTK)の下流エフェクターであり、2つのタンパク質、GRB2及びSOSを介して連結される。それらは、MAPK経路を含む細胞内シグナル伝達カスケードに、Rafキナーゼとの相互作用によって連結される。通常、低分子量GTPアーゼの活性化は、RTKとのリガンド結合によって誘導される。多くの形質転換では、GTPアーゼ、多くの場合Ras、の活性化変異は、リガンド不在下で細胞応答を生じさせ、このようにして悪性進行を促進する。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0238】
RPL34: タンパク質合成を触媒するオルガネラであるリボソームは、小さな40Sサブユニットと大きな60Sサブユニットでからなる。これらのサブユニットはともに、4つのRNA種と約80の構造的に異なるタンパク質とから構成される。この遺伝子は、60Sサブユニットの成分であるリボソームタンパク質をコードする。このタンパク質はリボソームタンパク質のL34Eファミリーに属する。それは細胞質に位置している。この遺伝子はもともと17q21に位置すると考えられていたが、4qにマッピングされていた。選択的スプライシング、代替転写開始部位および/または代替ポリアデニル化に由来する転写産物変異体が存在する;これらの変異体は同じタンパク質をコードする。リボソームタンパク質をコードする遺伝子に典型的であるように、ゲノムを介して分散されたこの遺伝子の複数の(multiple)処理された偽遺伝子が存在する。この決定基のアミノ酸および/またはヌクレオチド配列は、当業者に知られているか、または適切なデータベースエントリー、例えば、GenbankまたはUniprotで、2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0239】
RSAD2: 抗ウイルス防御に関与する。多くのウイルスの出芽過程に不可欠である特徴部である細胞膜の脂質ラフトを破壊することによってウイルス出芽を減じさせうる。コレステロール、ファルネシル化及びゲラニル化タンパク質、ユビキノンドリコール及びヘムの合成に関与する酵素である、FPPSと結合し、FPPSを活性化することによって作用する。I型及びII型インターフェロンによって誘導される細胞抗ウイルス状態に関与する。HIV−1ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒトサイトメガロウイルス及びアルファウイルスに対して抗ウイルス効果を示すが、ベシクロウイルスに対しては示さない。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0240】
SART3: この遺伝子によってコードされるタンパク質は、腫瘍拒絶抗原であるRNA結合核タンパク質である。この抗原は、がん患者においてHLA−A24制限及び腫瘍特異的細胞傷害性Tリンパ球を誘導することができる腫瘍エピトープを有し、特定の免疫治療に有用でありうる。この遺伝子産物は、HIV−1遺伝子発現及びウイルス複製に重要な細胞因子であることが判明している。それはまた、スプライソソームサイクルのリサイクル期中にU6及びU4/U6 snRNPと一時的に会合する。このコードされるタンパク質は、mRNAスプライシングの調節に関与すると考えられる。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0241】
SDCBP: この遺伝子によってコードされるタンパク質は、最初、細胞骨格へのシンデカン介在シグナル伝達を関連づける分子として同定された。シンテニンタンパク質は、様々な膜貫通タンパク質の細胞質Cドメインに結合するタンデム反復PDZドメインを含有する。このタンパク質は、細胞骨格の膜構成、細胞接着、タンパク質輸送、及び転写因子の活性化にも影響しうる。このタンパク質は、主として膜結合型接着結合部位及び接着点に主として局在するが、小胞体及び核でも見いだされる。選択的スプライシングの結果、異なるアイソフォームをコードする複数の転写バリアントが生ずる。それは、転写因子SOX4をIL−5受容体(IL5RA)に連結させるようである。小胞輸送に関与することがあり、初期分泌経路におけるTGFAの細胞表面への標的化に必要とされるようである。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0242】
SELI: この遺伝子は、その活性部位にセレノシステイン(Sec)を含有するセレノプロテインをコードする。セレノシステインは、通常は翻訳終結シグナルを伝達するUGAコドンによってコードされる。セレノプロテイン遺伝子の3’UTRは、UGAの認識に必要とされる一般的なステムループ構造、sec挿入配列(SECIS)を、停止シグナルとしてではなく、Secコドンとして有する。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0243】
SPINT2: この遺伝子は、様々なセリンプロテアーゼを阻害する2つの細胞外クニッツドメインを有する膜貫通タンパク質をコードする。このタンパク質は、活性肝細胞増殖因子の形成を妨げるHGF活性化因子を阻害する。この遺伝子は、推定腫瘍抑制因子であり、この遺伝子の変異に起因して、先天性ナトリウム下痢症が生ずる。異なるアイソフォームをコードする複数の転写バリアントがこの遺伝子について判明している。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0244】
SMAD9: この遺伝子によってコードされるタンパク質は、TGF−ベータファミリーメンバーからのシグナルを伝達するSMADファミリーのメンバーである。コードされるタンパク質は、骨形成タンパク質によって活性化され、SMAD4と相互作用する。異なるアイソフォームをコードする2つの転写バリアントがこの遺伝子について判明している。BMP(骨形成タンパク質)1型受容体キナーゼによって活性化される転写修飾因子。SMAD9は、受容体制御型SMAD(R−SMAD)である。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0245】
SOCS3: SOCSファミリータンパク質は、サイトカインシグナル伝達を調節する古典的な負のフィードバックシステムの一部を構成する。SOCS3は、JAK/STAT経路によってシグナル伝達するサイトカインの負の調節に関与する。gpl30、LIF、エリスロポエチン、インスリン、IL12、GCSF及びレプチン受容体をはじめとするチロシンキナーゼ受容体と結合することによって、サイトカインシグナル伝達を阻害する。JAK2との結合は、そのキナーゼ活性を阻害する。胎児肝臓エリスロポエチンを抑制する。Tヘルパー2型細胞によって媒介されるアレルギー反応の発生及び維持を調節する。in vivo IL−6シグナル伝達を(類似性によって)調節する。標的タンパク質のユビキチン化及びその後のプロテアソーム分解を場解する、SCF様ECS(エロンギンBC−CUL2/5−SOCSボックスタンパク質)E3ユビキチン−タンパク質リガーゼ複合体のほぼ確実な基質認識成分。IL6STを(類似性によって)認識するようである。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0246】
TRAIL: この遺伝子によってコードされるタンパク質は、腫瘍壊死因子(TNF)リガンドファミリーに属するサイトカインである。この遺伝子のさらなる別名(Additional names)としては、限定ではないが、AP02L、TNF関連アポトーシス誘導リガンド、TNFSF10及びCD253が挙げられる。TRAILは、膜結合型及び可溶型で存在し、両方の型は、形質転換腫瘍細胞などの異なる細胞のアポトーシスを誘導することができる。このタンパク質は、TNF受容体スーパーファミリーの幾つかのメンバー、例えば、TNFRSF 10A/TRAILR1、NFRSF 10B/TRAILR2、NFRSF 10C/TRAILR3、TNFRSF 10D/TRAILR4と結合し、ことによるとNFRSF11B/OPGとも結合する。このタンパク質の活性は、アポトーシスを誘導することができないデコイ受容体、例えば、NFRSF 10C/TRAILR3、TNFRSF 10D/TRAILR4、及びNFRSF 11B/OPGと結合することによって調節されうる。このタンパク質のその受容体との結合は、MAPK8/JNK、カスパーゼ8及びカスパーゼ3の活性化を標的にすることが証明されている。異なるアイソフォームをコードする選択的スプライシングを受けた転写バリアントがこの遺伝子について判明している。TRAILは、細胞表面からタンパク質分解的に切断されて、ホモ三量体構造を有する可溶型を生じさせることができる。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0247】
TREM1: 骨髄腫細胞で発現される誘発性受容体1(Triggering receptor expressed on myeloid cells 1);TREM1のさらなる別名は、CD354及びTREM−1である。この遺伝子は、骨髄腫細胞に発現するIgスーパーファミリーに属する受容体をコードする。このタンパク質は、炎症誘発性ケモカイン及びサイトカインの放出を刺激することによって、細菌及び真菌感染症により誘発される好中球及び単球媒介炎症反応を増幅させる。異なるアイソフォームをコードする選択的スプライシングを受けた転写バリアントがこの遺伝子について記述されている。この遺伝子によってコードされるタンパク質には、sTREM1によって表される可溶型がある。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0248】
TRIM22: 細胞自然免疫に関与するインターフェロン誘導ウイルスタンパク質。抗ウイルス活性は、一部は、ウイルスタンパク質のTRIM22依存性ユビキチン化によって媒介されうる。HIV−1、脳心筋炎ウイルス(EMCV)及びB型肝炎ウイルス(HBV)の複製の制限に関与する。HBVコアプロモーターの転写抑制因子として作用する。E3ユビキチン・タンパク質リガーゼ活性を有しうる。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0249】
UBE2N: UBE2V1−UBE2N及びUBE2V2−UBE2Nヘテロ二量体は非標準「Lys−63」結合ポリユビキチン鎖の合成を触媒する。このタイプのポリユビキチン化は、プロテアソームによるタンパク質分解をもたらさない。それは、標的遺伝子の転写活性化を媒介する。それは、細胞周期及び分化による進行の制御に関与する。誤りのないDNA修復経路に関与し、DNA損傷後の細胞の生存の一因となる。DNA修復に必要とされる、遺伝毒性ストレスに基づくPCNAの「Lys−63」結合ポリユビキチン化において、E3リガーゼ、HLTF及びSHPRH、とともに作用する。それは、JKAMPの「Lys−63」結合ポリユビキチン化においてE3リガーゼRNF5とともに作用することによって、プロテアソーム及びERADの成分とのその会合を減少させることによりJKAMP機能を調節するようである。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0250】
VEGFR2: 血管内皮増殖因子(VEGF)は、内皮細胞の主要増殖因子である。この遺伝子は、VEGFの2つの受容体の一方をコードする。キナーゼインサートドメイン受容体受容体としても公知のこの受容体は、III型受容体チロシンキナーゼである。それは、VEGF誘導内皮増殖、生存、遊走、管状形態形成及び出芽の主要メディエーターとして機能する。この受容体のシグナル伝達及び輸送は、Rab GTPアーゼ、P2Yプリンヌクレオチド受容体、インテグリンアルファVベータ3、T細胞タンパク質チロシンホスファターゼなどを含む、複数の因子によって調節される。この遺伝子の変異は、乳児毛細血管腫に関係づけられている(RefSeqにより提供された)。この遺伝子によってコードされるタンパク質には、sVEGFR2と表される可溶型がある。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0251】
XAF1: IAP(アポトーシスタンパク質阻害剤)ファミリーのメンバーの負の調節因子として機能するようである。BIRC4の抗カスパーゼ活性を阻害する。カスパーゼ活性化とは無関係にBIRC4の切断及び不活性化を誘導する。TNF−アルファ誘導アポトーシスを媒介し、栄養膜細胞のアポトーシスに関与する。ミトコンドリアアポトーシス経路を活性化することにより間接的にBIRC4を阻害しうる。ミトコンドリアへの転位後、BAXのミトコンドリアへの転位及びミトコンドリアからのチトクロムc放出を促進する。細胞質内で起こるようであるBIRC4不活性化とはほぼ確実に無関係に、細胞質から核へのBIRC4の再分布を促進するようである。BIRC4−XAF1複合体は、BIRC5/サバイビンのダウンレギュレーションを媒介する;このプロセスは、BIRC4のE3リガーゼ活性を必要とする。TRAILのアポトーシス促進性作用に対する細胞の感受性に関与するようである。がん細胞のアポトーシス抵抗性を媒介することにより腫瘍抑制因子でありうる。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0252】
ZBP1: DLM1は、Z−DNA結合タンパク質をコードする。Z−DNA形成は、主に高次コイル形成量によって制御される、動的プロセスである。腫瘍及び病原体に対する宿主防御に関与しうる。Z−DNAに(類似性により)結合する。この決定基のアミノ酸及び/又はヌクレオチド配列は、当業者には公知であり、又は好適なデータベースエントリから、例えば、Genbank又はUniprotで2015年11月11日の日付で誘導され得る。
【0253】
本発明は、年齢、絶対好中球数(ANC)、絶対リンパ球数(ALC)、好中球%(Neu(%))、リンパ球%(Lym(%))、単球%(Mono(%))、最大温度、発症からの期間、クレアチニン(Cr)、カリウム(K)、脈拍及び尿素などの非ポリペプチド決定基の形態の他の決定基の使用も想定している。用語「好中球%(Neu(%))」は、リンパ球である、白血球画分を指す。用語「リンパ球%(Lym(%))」は、リンパ球である、白血球画分を指す。用語「単球%(Mono(%))」は、単球である、白血球画分を指す。
【0254】
特に好ましい他の決定基は、TRAIL及びCRPである。プロカルシトニン、CD64、IP10、IL1Ra又はMac−2BPなどの決定基も好ましい。したがって、本発明は、TRAILとの組合せでのHNLの測定、CRPとの組合せでのHNLの測定はもちろん、プロカルシトニンとの組合せでのHNLの測定、CD64との組合せでのHNLの測定、IP10との組合せでのHNLの測定、IL1Raとの組合せでのHNLの測定、Mac−2BPとの組合せでのHNLの測定、又はTRAIL、IP10、IL1Ra及びMac−2BPのうちの1つ若しくは複数との組合せでのHNLの測定も想定している。非ポリペプチド決定基絶対好中球数(ANC)及び好中球%(Neu(%))も好ましい。
【0255】
別の実施形態では、決定基絶対好中球数(ANC)のレベル及び好中球%(NEU(%))は、HNLのレベルを正規化するために使用される。そのような正規化は、測定されたHNLに好中球(ANC)又はNeu%を相関させることによって行うことがされてよい。
【0256】
したがって、細菌感染症を除外するか又はウイルス感染症を確定診断する上記方法の一実施形態では、前記方法は、
a)対象から得た試料中のTRAILのポリペプチド濃度を測定するステップ、及び
b)ステップ(a)で決定されたTRAILのポリペプチド濃度が所定の第1の閾値より高い場合、前記対象について細菌感染症を除外するか又はウイルス感染症を確定診断するステップ、
をさらに含む。
【0257】
別の実施形態では、ウイルス感染症を除外する上記方法又は細菌感染症を確定診断する方法の別の実施形態では、前記方法は、
a)対象から得た試料中のTRAILのポリペプチド濃度を測定するステップ、及び
b)ステップ(a)で決定されたTRAILのポリペプチド濃度が所定の第1の閾値より低い場合、前記対象について細菌感染症を確定診断するか又はウイルス感染症を除外するステップ、
をさらに含む。
【0258】
さらに、さらなる実施形態では、対象への処置推奨を提供する方法は、
ステップa)において対象から得た試料中のTRAILのポリペプチド濃度をさらに測定すること、及び
ステップb)においてステップ(a)で決定されたHNLのポリペプチド濃度が所定の閾値より高い場合、及びステップ(a)で決定されたTRAILの濃度が所定の閾値より低い場合、前記対象が抗生物質処置を受けることを推奨すること、
ステップc)においてステップ(a)で決定されたHNLのポリペプチド濃度が所定の閾値より低い場合、及びステップ(a)で決定されたTRAILのポリペプチド濃度が所定の閾値より高い場合、患者が抗生物質処置を受けないことを推奨すること、又は
ステップd)においてステップ(a)で決定されたHNLのポリペプチド濃度が、本明細書において上で定義した所定の閾値より低い場合、及びステップ(a)で決定されたTRAILのポリペプチド濃度が所定の閾値より高い場合、患者が抗ウイルス処置を受けることを推奨すること、
をさらに含む。
【0259】
別の実施形態によると、対象への診断検査推奨を提供する方法は、
ステップa)において対象から得た試料中のTRAILのポリペプチド濃度をさらに測定すること、及び
ステップb)においてステップ(a)で決定されたHNLのポリペプチド濃度が所定の閾値より高い場合、及びステップ(a)で決定されたTRAILの濃度が所定の閾値より低い場合、前記試料を細菌の存在について検査することを推奨すること、
ステップc)においてステップ(a)で決定されたHNLのポリペプチド濃度が所定の閾値より低い場合、及びステップ(a)で決定されたTRAILのポリペプチド濃度が所定の閾値より高い場合、前記試料をウイルスの存在について検査することを推奨すること、
をさらに含む。
【0260】
また、対象において感染性疾患、好ましくは細菌性又はウイルス性疾患を除外する方法であって、
a)上で定義した結合剤又は上で定義した診断用組成物若しくはキットを使用して、対象から得た試料中のHNLのポリペプチド濃度と、TRAIL、IP10、IL1Ra又はMac−2BPからなる群から選択される1つ又は複数のポリペプチドのポリペプチド濃度とを測定するステップ、
b)測定された前記ポリペプチドの濃度(the concentrations)に所定の数学関数を適用してスコアを計算するステップ、
c)前記スコアを所定の基準値と比較するステップ、
を含む方法も想定される。
【0261】
本明細書で使用する場合の「基準値」は、同じ感染症に罹患している上述の対象、同じ若しくは類似の年連範囲を有する対象、同じ若しくは類似の民族の対象を限定ではないが含む、集団研究から導出された値に対して相対的であることがあり、又は感染症の処置を受けた対象の出発試料に対して相対的であることがある。そのような基準値は、集団の統計解析、並びに/又は数学アルゴリズム及び計算感染インデックスから得られる集団のリスク予測データから導出することができる。アルゴリズム並びに他の統計及び構造分類方法を使用して、基準となる決定基インデックスを構成し、使用することもできる。
【0262】
本発明の一実施形態では、基準値は、感染症に罹患していない1名又は複数名の対象(すなわち、健常、及び又は非感染個体)から採取された対照試料中の決定基の量(すなわち、レベル)である。さらなる実施形態では、そのような検査後に診断に妥当な期間にわたってそのような対象をモニター及び/又は定期的に再検査して、感染症不在が続いていることを検証する。そのような期間は、基準値の決定のための最初の検査日から1日、2日、2〜5日、5日、5〜10日、10日、又は10日以上であることがある。
【0263】
さらに、適切に預けられた過去の対象試料中の決定基の遡及測定をこれらの基準値の確立に使用し、このようにして必要な研究時間を短縮されてよい。
【0264】
基準値は、感染症の処置及び/又は治療の結果として発生を示す、対象由来の(derived from)決定基の量も含むことができる。基準値は、公知の手法によって感染が確認された対象由来の決定基の量も含むことができる。
【0265】
別の実施形態では、基準値は、インデックス値又はベースライン値である。インデックス値又はベースライン値は、感染症に罹患していない1名又は複数名の対象からの決定基の有効量の複合サンプルである。ベースライン値は、感染症の処置又は治療の向上を示した対象由来の試料中の決定基の量も含むことができる。この実施形態では、対象由来試料との比較を行うために、決定基の量を同様に算出し、インデックス値と比較する。場合により、感染症に罹患していると同定された対象は、進行を遅らせる又は感染症を除去するための治療レジメン(regimen)を受けることに選ばれる。
【0266】
さらに、決定基の量を検査試料で測定し、カットオフポイント及び正常値を定義するために基準限界値、判別限界値又はリスク定義閾などの手法を利用して「正常対照値」と比較することができる。「正常対照値」は、感染症に罹患していない対象において通常は見いだされる1つ若しくは複数の決定基又は結合された決定基インデックスのレベルを意味する。そのような正常対照レベル及びカットオフポイントは、決定基を単独で使用するのか、決定基を他の決定基と結合させて1つのインデックスにする式で使用するのかに基づいて変わりうる。或いは、正常対照レベルは、以前に検査した対象からの決定基パターンのデータベースでありうる。
【0267】
処置レジメンの有効性は、ある期間にわたって対象から得た(1つ又は複数であり得る)有効量の試料中の決定基を検出し、検出された決定基の量を比較することによってモニターすることができる。例えば、第1の試料は、対象が処置を受ける前に得ることができ、1つ又は複数のその後の試料は、対象の処置後又は処置中に採取される。
【0268】
例えば、本発明の方法は、細菌感染症とウイルス感染症と混合感染症(すなわち、細菌とウイルスへの同時感染)とを判別するために使用することができる。これによって、患者を層別化し、相応じて処置することが可能になる。
【0269】
決定基の結果を結合させて本発明の実施に有用なインデックスにするために、いずれの式を使用してもよい。上で示したように、及び限定ではないが、そのようなインデックスは、様々なことを示す中でも特に、確率、尤度、絶対若しくは相対リスク、ある病態が別の病態に転換するまでの時間若しくは転換率を示すことができ、又は感染症についての将来のバイオマーカー測定値の予測できる。これは、特定の期間若しくは発生段階についてであることもあり、又は生涯リスクの維持についてであることもあり、又は単に、別の他基準対象集団に対するインデックスとして提供されることもある。
【0270】
様々な好ましい式をここに記載するが、本明細書において言及するもの及び上記定義の中で言及したもの以外の幾つかの他のモデル及び式のタイプが当業者には周知である。使用する実際のモデルタイプ又は式自体は、訓練集団でのその結果の性能及び診断精度特性に基づいて、可能性のあるモデルの範囲から選択されてよい。式自体の細目は、適切な訓練集団における決定基の結果から一般に導出されてよい。数ある使用の中でも特に、そのような式は、1つ若しくは複数の決定基入力量から導出される特徴空間を(例えば、対象のクラスメンバーシップを正常なもの、感染症に罹患しているものと予測するのに有用な)一連の対象クラスにマッピングすること、ベイズ的(Bayesian)アプローチを使用してリスクの確率関数の推定値を導出すること、又はクラス条件付き確率を推定し、次いでベイズの規則(Bayes’ rule)を使用して前の場合のようにクラス確率関数を生成することを意図したものでありうる。
【0271】
好ましい式には、広範な種類の統計的分類アルゴリズム、特に判別分析(discriminant analysis)の使用が含まれる。判別分析の目的は、以前に識別された一連の特徴からクラスメンバーシップを予測することである。線形判別分析(LDA)の場合、いくつかの基準によってグループ間の分離を最大にする特徴の線形結合が識別される。特徴は、異なる閾値を有する固有遺伝子ベースの(eigengene based)アプローチ(ELD A)または多変量分散解析(MANOVA)に基づくステッピングアルゴリズムを使用して、LDAについて同定することができる。Hotelling−Lawley統計に基づいて分離の確率を最小限に抑える前方、後方および階段状アルゴリズムを実行することができる。
【0272】
固有遺伝子ベースの線形判別分析(Eigengene-based Linear Discriminant Analysis,)は、Shenら(2006)によって開発された特徴選択手法である。この式は、最も重要な固有ベクトル(eigenvectors)に関連づけられる特徴を同定するために変形固有値解析を使用して多変量の枠組みの中で特徴(例えば、バイオマーカー)を選択する。「重要な」は、何らかの閾を基準にして分類することを試みるサンプル間の差の最も大きい分散を説明するこれら固有ベクトル(eigenvectors)と定義する。
【0273】
サポートベクターマシン(support vector machine,SVM)は、2つのクラスを分離する超平面の発見を試みる分類式である。この超平面は、まさしくこの超平面からのマージン距離であるデータ点である、サポートベクトルを含有する。分離超平面がデータの現次元に存在しない可能性が高い事象の場合、元の変数の非線形関数を用いることによってデータをより大きい次元に投影することにより、次元数を拡大する。必要というわけではないが、SVMの特徴のフィルタリングは、予測を向上させることが多い。ノンパラメトリック・クラスカル−ウォリス(KW)検定を使用して最良の単変量特徴を選択することにより、サポートベクターマシンのための特徴(例えば、バイオマーカー)を特定することができる。ランダムフォレスト(RF、Breiman、2001)又は再帰分割(RPART、Breimanら、1984)を別々に使用して又は併用して、最も重要であるバイオマーカーの組合せを特定することもできる。KWとRFは両方とも、多数の特徴を全特徴から選択する必要がある。RPARTは、利用可能なバイオマーカーのサブセットを使用して単一の分類木を作成する。他の式を使用して、個々の決定基測定結果を予測式への提示前に前処理して、より価値のある情報形態にしてもよい。最も注目すべきこととして、正規分布又は他の分布の位置としての一般的の数学的変換、例えば対数関数又はロジスティック関数のいずれかを使用する、集団の平均値などに対するバイオマーカー結果の正規化は、すべて、当業者には周知である。特定の式を単にクラス内の対象に対して使用するか又は入力量としての臨床的決定基を連続的に結合させて使用する、年齢、発症からの期間、性別、人種、又は性などの臨床的決定基に基づく一連の正規化は、特に関心が高い。他の場合、分析物に基づくバイオマーカーを結合させて算出する変数にすることができ、その後、それらの変数を式に提示する。
【0274】
正規化される可能性のある1対象の個々のパラメータ値に加えて、すべての対象についての又は任意の既知対象クラスについての全予測式自体を、D’Agostinoら、(2001)JAMA 286:180〜187に概要が述べられている手法による集団の予測有病率及び平均バイオマーカーパラメータ値の補正又は他の類似の正規化及び再較正法に基づいて、再較正又は別様に補正されてよい。そのような疫学的補正統計量は、機械可読であることもあり、そうでないこともある、モデルに提示された過去のデータのレジストリによって、又はときには保存サンプルの後向きクエリ若しくはそのようなパラメータ及び統計量の過去の研究の参照によって、継続的に計算、確認、改善及びアップデートされてよい。式の再較正又は他の補正の対象になりうるさらなるサンプルとしては、オッズ比の制約を用いるPepe,M.S.ら、2004による研究、ROC曲線に関するCook,N.R.、2007による研究で使用された統計量が挙げられる。最後に、分類器式の数値結果自体を、実際の臨床集団及び研究結果及び観察されたエンドポイントに対するその参照によって後処理して変換して、絶対リスクに合わせて較正し、分類器又はリスク式の様々な数値結果の信頼区間(confidence intervals)を得ることができる。
【0275】
一部の決定基は、本明細書において上で説明したように非ポリペプチド決定基として使用されうる患者年齢に依存する傾向を示すことがある(例えば、集団ベースラインは、年齢の関数として上昇又は下降することがある)。したがって、年齢依存性正規化又は層別化スキームを使用して、年連関連差について補正されてよい。年齢依存性正規化又は層別化は、異なる感染症タイプ間を識別する決定基の精度を向上させるために使用することができる。例えば、当業者は、各決定基の集団平均レベルを当てはめる関数を年齢の関数として生成し、それを使用して異なる年齢にわたって個々の対象レベルの決定基を正規化することができる。別の例は、対象を彼らの年齢に従って層別化し、年齢特異的閾又は各年齢群のインデックス値を独立して決定することである。
【0276】
本発明の性能、したがって絶対及び相対臨床的有用性を、上で述べたような様々な方法で評価されてよい。性能の様々な評価の中でも、本発明は、臨床診断及び予後予測の精度の提供を意図したものである。診断若しくは予後予測検査の精度、又は感染症に罹患している対象間を区別する検査、アッセイ若しくは方法に関する方法は、対象が、決定基のレベルで「有意な(significant)変化」(例えば、臨床的に有意な「診断的に有意な変化」)を有するかどうかに基づく。「有効量」は、所定のカットオフポイント(又は閾値)とは異なる、したがって前記決定基が決定基である感染症に罹患している対象を示す、「有意な変化」(例えば、決定基の発現又は活性のレベル)を生じさせるのに適している数(1つであることもあり、又は複数であることもある)の決定基の測定値を意味する。決定基のレベルの差は、統計的に有意であることが好ましい。下で述べるように、及び本発明に対するいずれの制限もなく、統計的有意性、したがって分析、診断及び臨床的精度の達成には、パネル内で一緒に使用される幾つかの決定基の組合せであって、統計的に有意な決定基インデックスを実現するために数学的アルゴリズムと結合された前記決定基の組合せが、常にではないが一般に必要である。
【0277】
病態のカテゴリー診断では、検査(又はアッセイ)のカットポイント又は閾値の変化は、通常、感度及び特異度を、定性的に逆の関係でだが、変化させる。したがって、対象の状態を評価するための、提案する医学的検査、アッセイ又は方法の精度及び有用性の評価では、常に、感度と特異度の両方を考慮に入れるべきであり、感度及び特異度は、カットポイントの範囲にわたって有意に変化しうるので、どのようなカットポイントが感度及び特異度を報告するポイントであるのかに気を配るべきである。これを達成する1つの方法は、感度と特異度の両方に依存するMCC測定基準を使用することによる方法である。可能性のあるすべてのカットポイント値を包含する統計量、例えばAUCの使用は、本発明を使用するほとんどのカテゴリーリスク測定に好ましいが、連続リスク測定には、観察結果又は他の黄金律に対する適合度及び較正の統計が好ましい。
【0278】
用語「MCC」は、マシューズ相関係数(Mathews Correlation coefficient)を意味し、次のように算定される:MCC=(TP*TN−FP*FN)/{(TP+FN)*(TP+FP)*(TN+FP)*(TN+FN)}<A>0.5(式中、TP、FP、TN、FNは、それぞれ、真陽性、偽陽性、真陰性及び偽陰性である)。MCC値が、完全に誤った分類及び完璧な分類をそれぞれ示す、−1と+1の間の範囲であることに留意されたい。0のMCCは、ランダムな分類を示す。MCCは、感度と特異度を結合させて単一の測定基準にするのに有用であることが証明されている(Baldi、Brunakら、2000)。MCCは、クラスサイズのバランスがとれている場合、分類精度の測定及び最適化にも有用である(Baldi、Brunakら、2000)。
【0279】
MCC値は、完全に誤った分類及び完璧な分類をそれぞれ示す、−1と+1の間の範囲でありうる。0のMCCは、ランダムな分類を示す。MCCは、クラスサイズのバランスがとれている場合、分類精度の測定及び最適化に特に有用であることが証明されている(Baldi、Brunakら、2000)。訓練セットのMCCを最大化するカットオフを計算し、次いでそれを使用して検査セットの患者を分類する、線形分類スキームを使用して、決定基の識別診断を評価してもよい。
【0280】
用語「TP」は、「真陽性(true positive)」、すなわち、検査される活性を正確に反映する陽性検査結果を意味する。例えば、本発明に関して、TPは、これに限定されるわけではないが、例えば、細菌感染症を真にそのように分類することである。
【0281】
「TN」は、「真陰性(true negative)」であり、検査される活性を正確に反映する陰性検査結果を意味する。例えば、本発明に関して、TNは、これに限定されるわけではないが、例えば、ウイルス感染症を真にそのように分類することである。
【0282】
「FN」は、偽陰性(false negative)であり、状況を明らかにすることはできないが陰性に見える結果を意味する。例えば、本発明に関して、FNは、これに限定されるわけではないが、例えば、細菌感染症を誤ってウイルス感染症と分類することである。
【0283】
「FP」は、偽陽性(false positive)であり、陽性カテゴリーに間違って分類される検査結果を意味する。例えば、本発明に関して、FPは、これに限定されるわけではないが、例えば、ウイルス感染症を誤って細菌感染症と分類することである。
【0284】
「感度」は、TP/(TP+FN)、又は疾患対象の真陽性率によって算定される。「特異度」は、TN/(TN+FP)、又は非疾患若しくは正常対象の真陰性率によって算定される。「総合精度」は、(TN+TP)/(TN+FP+TP+FN)によって算定される。「陽性的中率」又は「PPV」は、TP/(TP+FP)、又は全陽性検査結果の真陽性率によって算定される。陽性的中率は、疾患の有病率、及び検査する予定の集団の検査前確率による影響を本質的に受ける。「陰性的中率」又は「NPV」は、TN/(TN+FN)、又は全陰性検査結果の真陰性率によって算定される。陰性的中率もまた、疾患の有病率、及び検査する予定の集団の検査前確率による影響を本質的に受ける。例えば、検査、例えば臨床診断検査、の特異度、感度並びに陽性及び陰性的中率を論じている、O’Marcaigh AS、Jacobson RM、「Estimating The Predictive Value Of A Diagnostic Test,How To Prevent Misleading Or Confusing Results」、Clin.Ped.1993、32(8):485〜491を参照されたい。
【0285】
用語「精度」は、測定又は算定された量(検査報告値)のその実際の(又は真の)値に対する一致度を指す。臨床精度は、真の転帰(真陽性(TP)又は真陰性(TN))の誤分類された転帰(偽陽性(FP)又は偽陰性(FN))に対する割合に関係し、感度、特異度、陽性的中率(Positive predictive value,PPV)若しくは陰性的中率(NPV)、マシューズ相関係数(MCC)と称されることがあり、又は数ある測度の中でも特に、尤度、オッズ比、受信者動作特性(ROC)曲線、曲線下面積(Area Under the Curve,AUC)と称されることがある。
【0286】
多くの場合、連続診断検査測定を使用する二項病態分類アプローチについての感度及び特異度は、Pepeら、「Limitations of the Odds Ratio in Gauging the Performance of a Diagnostic,Prognostic,or Screening Marker」、Am.J.Epidemiol 2004、159(9):882〜890に従って受信者動作特性(ROC)曲線によって要約され、並びに検査(又はアッセイ)カットポイントの全範囲にわたって検査、アッセイ又は方法の感度及び特異度を1つだけの値で表すことを可能にする指標である、曲線下面積(AUC)又はc統計量(c-statistic)によって要約される。例えば、Shultz、「Clinical Interpretation Of Laboratory Procedures」、Teitz,Fundamentals of Clinical Chemistry、Burtis and Ashwood(編)、第4版、1996、W.B.Saunders Company、14章、192〜199頁、及びZweigら、「ROC Curve Analysis:An Example Showing The Relationships Among Serum Lipid And Apolipoprotein Concentrations In Identifying Subjects With Coronory Artery Disease」、Clin.Chem.、1992、38(8):1425〜1428も参照されたい。尤度関数、オッズ比、情報理論、予測値、較正(適合度を含む)及び再分類測定を使用する代替アプローチは、Cook、「Use and Misuse of the Receiver Operating Characteristic Curve in Risk Prediction」、Circulation 2007、115:928〜935に従って要約される。
【0287】
本明細書で使用する場合の「式」、「アルゴリズム」又は「モデル」は、あらゆる数学的方程式、アルゴリズム的、分析的若しくはプログラムされたプロセスであり、又は1つ若しくは複数の連続的若しくはカテゴリー入力(本明細書では「パラメータ」と呼ぶ)を用いて、「インデックス」又は「インデックス値」と呼ばれることもある出力値を算定する、統計的手法である。「式」の非限定的な例としては、合計、比及び回帰演算子、例えば係数又は指数、バイオマーカー値変換及び正規化(限定ではないが、臨床的決定基、例えば性別、年齢若しくは民族性を含む)、規則及びガイドライン、統計的分類モデル、並びに過去の集団で訓練されたニューラルネットワークが挙げられる。決定基を結合させるのに特に有用であるのは、対象試料において検出された決定基のレベル間の関係性及び感染症又はある特定のタイプの感染症に罹患している対象の確率を決定するための、線形及び非線形方程式並びに統計的分類分析である。パネル及び組合せの構成において、特に関心が高いのは、構造及び構文統計的分類アルゴリズム、並びにパターン認識特徴を利用するインデックス構成方法であり、これらは、確立された手法、例えば、数ある中でも特に、相互相関、主成分分析(Principal Components Analysis,PCA)、因子軸の回転、ロジスティック回帰(LogReg)、線形判別分析(LDA)、固有遺伝子線形判別分析(Eigengene Linear Discriminant Analysis,ELDA)、サポートベクターマシン(SVM)、ランダムフォレスト(RF)、再帰分割木(RPART)、及び他の関連決定木分類手法、収縮重心法(Shrunken Centroids,SC)、stepAIC、k近傍法(Kth-Nearest Neighbor)、ブースティング、決定木、ニューラルネットワーク、ベイジアンネットワーク、及び隠れマルコフモデルを含む。当業者には周知のコックス、ワイブル、カプラン・マイヤー及びグリーンウッドモデルを含む他の手法を、生存及び時間事象ハザード分析に使用してもよい。これらの手法の多くは、決定基選択手法、例えば、前向き選択、後向き選択、若しくは段階的選択、所与のサイズの可能性のある全パネルの全数調査、遺伝的アルゴリズムと併用されたとき有用であり、又はそれら自体が、それらの独自の手法にバイオマーカー選択方法論を含むこともある。これらを情報量基準、例えば、赤池の情報量基準(AIC)又はベイズ情報量基準(BIC)と併用して、追加のバイオマーカー間のトレードオフ及びモデル向上を定量すること並びにオーバーフィットの最小化を促進されてよい。結果として生ずる予測モデルを、他の研究でブートストラップ、リーブワンアウト(LOO)及び10倍交差検証(10倍CV)のような手法を使用して検証してもよく、又はそれらを最初に訓練した研究で交差検証してもよい。様々な段階で、当技術分野において公知の手法による値並べ替えによって、偽陽性率を推定されてよい。「医療経済的有用性関数」は、理想的な適用可能患者集団において標準治療への診断的又は治療的介入の導入前及び導入後両方の臨床転帰の範囲について予想された確率の組合せから導出される式である。これは、そのような介入の精度、有効性及び性能の推定値と、ケア(サービス、供給品、デバイス及び薬物など)についての実際の保健制度の費用から及び/又は各転帰をもたらす質調整生存年(quality adjusted life year,QALY)当りの推定許容値として導出されうる、各転帰に関連する費用及び/又は値測定値(有用性)とを包含する。転帰の予測集団サイズにそれぞれの転帰の予想有用性を掛けた積の、予測転帰すべてにわたる、合計が、所与の標準治療の全医療経済的有用性である。(i)介入を伴う標準治療について算定される全医療経済的有用性と(ii)介入を伴わない標準治療についての全医療経済的有用性との差は、結果的に、介入の医療経済費用又は値の総合的評価基準になる。これ自体が、分析する全患者群間で(又はもっぱら介入群間で)分割されて、単位介入当りの費用になり、並びに市場位置づけ、価格設定、及び保健制度受け入れの仮定のような決定の指針になりうる。そのような医療経済的有用性関数は、介入の対費用効果を比較するために一般に使用されるが、医療制度が出費をいとわないQALY当りの許容値、又は新たな介入が必要な許容される対費用効果の高い臨床成績特性を推定するために変換されることもある。
【0288】
本発明の診断的(又は予後予測的)介入については、各転帰(疾患分類診断検査はTPであっても、FPであっても、TNであっても、又はFNであってもよい)が異なる費用を負担するので、医療経済的有用性関数は、臨床状況と個々の転帰の費用及び価値に基づいて特異度より感度に又はNPVよりPPVに優先的に有利に働き、したがって、より直接的な臨床又は分析性能評価基準とは異なりうる健康経済的性能の別の評価基準をもたらす。これらの異なる測定値及び相対的トレードオフは、一般に、程度に差はあるがすべての性能評価基準が不完全より有利である完全検査の場合にのみゼロエラー率(別名、ゼロ予測対象転帰誤分類又はFP及びFN)に収斂することになる。
【0289】
したがって、さらなる態様では、本発明は、対象において細菌感染症とウイルス感染症を区別する(distinguishing)方法であって、
a)上で定義した結合剤又は上で定義した診断用組成物若しくはキットを使用して、対象から得た試料中のHNL及びCRPの、場合によりTRAILのポリペプチド濃度を測定するステップ、
b)前記HNL及びCRP並びに場合によりTRAILの濃度(the concentrations)に所定の数学関数を適用してスコアを計算するステップ、
c)本明細書において上で定義したスコアを、本明細書において上で定義した所定の基準値と比較するステップ、
を含む方法に関する。
【0290】
したがって、さらなる態様では、本発明は、対象において細菌又は混合感染症とウイルス感染症とを区別する方法であって、
a)上で定義した結合剤又は上で定義した診断用組成物若しくはキットを使用して、対象から得た試料中のHNL及びCRPの、場合によりTRAILのポリペプチド濃度を測定するステップ、
b)前記HNL及びCRP並びに場合によりTRAIの濃度(the concentrations)に所定の数学関数を適用してスコアを計算するステップ、
c)本明細書において上で定義した、スコアを、本明細書において上で定義した所定の基準値と比較するステップ
を含む方法を提供する。
【0291】
さらに別の態様では、対象において感染症のタイプ、好ましくは細菌又はウイルス感染症を同定する(identifying)方法であって、
a)請求項1〜5のいずれか一項に記載の結合剤又は請求項6若しくは7に記載の診断用組成物若しくはキットを使用して、対象から得た試料中のHNLのポリペプチド濃度と、TRAIL、IL1RA、IP10、Mac−2BP、B2M、BCA−1、CHI3L1、エオタキシン、IL1a、MCP、CD62L、VEGFR2、CHP、CMPK2、CORO1C、EIF2AK2、ISG15、RPL22L1、RTN3、CD112、CD134、CD182、CD231、CD235A、CD335、CD337、CD45、CD49D、CD66A/C/D/E、CD73、CD84、EGFR、GPR162、HLA−A/B/C、ITGAM、NRG1、RAP1B、SELI、SPINT2、SSEA1、IgG非特異的結合分子、IL1、I−TAC及びTNFR1からなる群から選択される本明細書において上で定義した第1のポリペプチド決定基のレベルとを測定するステップ、及び
b)(i)本明細書において上で定義したポリペプチド決定基、TRAIL、IL1RA、IP10、Mac−2BP、B2M、BCA−1、CHI3L1、エオタキシン、IL1a、MCP、CD62L、VEGFR2、CHP、CMPK2、CORO1C、EIF2AK2、ISG15、RPL22L1、RTN3、CD112、CD134、CD182、CD231、CD235A、CD335、CD337、CD45、CD49D、CD66A/C/D/E、CD73、CD84、EGFR、GPR162、HLA−A/B/C、ITGAM、NRG1、RAP1B、SELI、SPINT2、SSEA1、IgG非特異的結合分子、IL1、I−TAC及びTNFR1、
(ii)本明細書において上で定義したポリペプチド決定基、IFITM3、IFIT3、EIF4B、IFIT1、LOC26010、MBOAT2、MX1、OAS2、RSAD2、ADIPOR1、CD15、CD8A、IFITM1、及びIL7、
(iii)本明細書において上で定義したポリペプチド決定基、CRP、SAA、TREM−1、PCT、IL−8、TREM−1及びIL6、又は
(iv)本明細書において上で定義した非ポリペプチド決定基:年齢、絶対好中球数(ANC)、絶対リンパ球数(ALC)、好中球%(Neu(%))、リンパ球%(Lym(%))、単球%(Mono(%))、最大温度、発症からの期間、クレアチニン(Cr)、カリウム(K)、脈拍及び尿素、
からなる群から選択される第2の決定基のレベルを測定するステップ、
c)HNL、第1及び第2の決定基のレベルを基準値と比較することによって前記対象において感染症のタイプを同定するステップ、
を含み、前記第1及び/又は第2の決定基の測定がHNLの測定による感染症のタイプの同定精度を増加させる、方法を提供する。
【0292】
本明細書で使用する場合の「感染症のタイプ」は、細菌感染症、ウイルス感染症、混合感染症、非感染症(すなわち、非感染性)を含むことを意味する。より具体的には、本発明の一部の方法は、細菌感染症に罹患している患者と、ウイルス感染症に罹患している患者と、混合感染症(すなわち、細菌とウイルスへの同時感染)に罹患している患者と、非感染性疾患を有する患者と、健常個体とを区別するために使用される。
【0293】
便宜上、本明細書において開示する抗体を、キット、すなわち所定量の試薬と診断アッセイを行うための説明書との包装済みの組合せ、で提供することができる。抗体が酵素で標識されている場合、キットは、前記酵素によって必要とされ基質及び補因子(例えば、検出可能な発色団又はフルオロフォアを提供する基質前駆体)を含むことになる。加えて、他の添加剤、例えば、安定剤、緩衝液(例えば、ブロック用緩衝液又は溶解用緩衝液)などを含むこともある。様々な試薬の相対量は、アッセイの感度を実質的に最適化する試薬の溶液中濃度を得るために広範に変えることがされてよい。特に、試薬は、乾燥粉末、通常は凍結乾燥されたもの、として備えられることがあり、そのような試薬には、溶解すると適切な濃度を有する試薬溶液を生じさせることになる賦形剤が含まれる。
【0294】
例えばイムノアッセイ、例えばELISA(サンドイッチ型又は競合形式)をはじめとする様々な診断アッセイで使用するための、診断試薬及び1つ又は複数のそのような試薬を含むキットも提供する。一部の実施形態では、そのようなキットは、少なくとも第1のペプチド(場合により、本明細書に記載の正しく折り畳まれた成熟HNL標準物質)、又は本明細書に記載する一次抗体若しくは抗原結合断片、その機能的断片、又はそのカクテル、及びシグナル発生のための手段を含むことがある。キットの成分は、固体支持体に予め結合されていることもあり、又はキットを使用するときに固体支持体の表面に適用されることもある。一部の実施形態では、シグナル発生手段は、本明細書に記載する抗体と予め会合している状態になっていることもあり、又は1つ若しくは複数の成分、例えば、緩衝液、抗体・酵素結合体若しくは酵素基質などと使用前に併せる必要があることもある。キットは、さらなる試薬、例えば、固相表面との非特異的結合を低減させるためのブロッキング試薬、洗浄試薬及び酵素基質なども含むことがある。固相表面は、タンパク質、ペプチド又はポリペプチを固定化するのに好適なチューブ、ビーズ、マイクロタイタープレート、小球体又は他の材料の形態でありうる。一部の実施形態では、化学発光若しくは発色生成物の形成又は化学発光若しくは発色基質の還元を触媒する酵素が、シグナル発生手段の成分である。そのような酵素は、当技術分野において周知である。キットは、本明細書に記載するあらゆる捕捉剤及び検出試薬を含むことがされてよい。場合により、キットは、本明細書に記載する方法を行うための説明書も含むことがある。キットは、他の生物学的パラメータの検出及び測定のための試薬、例えば、プロカルシトニン、C反応性タンパク質、CD64の、又は本明細書において上で述べたあらゆるポリペプチド決定基の、発現及び量を測定するための試薬、及び白血球、例えば、好中球、T細胞、B細胞、単球、好酸球、好塩基球の数の判定のための試薬をさらに含むことがある。
【0295】
本明細書において開示する抗体、ペプチド、抗原結合断片又はポリヌクレオチドのうちの少なくとも1つと、組成物を診断試薬又は治療剤として使用するための説明書とを含む、本明細書に開示する診断キットも、作製されてよい。そのようなキットに使用するための容器は、診断用及び/又は治療用組成物の1つ又は複数を入れること及び好適には等分されてよい、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、注射器又は他の好適な容器を、通常は含むことがされてよい。第2の治療剤も備えている場合、キットは、この第2の診断用及び/又は治療用組成物を入れることがされてよい第2の別個の容器も含むことがある。或いは、複数の成分が単一の医薬組成物に調製されていることもあり、単一の容器手段、例えば、バイアル、フラスコ、注射器、ボトル若しくは他の好適な単一容器に包装されていることもある。本発明のキットはまた、典型的には、例えば、所望のバイアルが保持される注入又はブロー成形されたプラスチック容器のような、バイアル(複数可)を密閉して商業的に販売するための手段を含む。放射性標識、色素形成、蛍光発生、又は他のタイプの検出可能な標識又は検出手段がキットに含まれる場合、標識剤は、診断又は治療用組成物自体と同じ容器に入れてもよいし、あるいは、この第2の組成物がその中に配置され、適切に分注され得る別個の容器手段内に配置されてもよい。あるいは、検出試薬及び標識は、単一の容器手段で調製することができ、大抵の場合、キットは、商業的販売及び/又は便利な包装及び送達のために密閉してバイアル(単数又は複数)を収容するための手段も典型的に含む。
【0296】
本明細書に記載する診断又はモニター方法を行うためのデバイス又は装置も提供する。そのような装置は、試料を投入することができるチャンバー又はチューブと、デバイスを通る試料の流れを方向づけるための弁又はポンプを場合により含む流体取り扱いシステムと、場合により、血液から血漿又は血清を分離するためのフィルターと、捕捉剤又は検出試薬の添加のための混合チャンバーと、場合により、捕捉剤免疫複合体に結合された検出可能標識の量を検出するための検出デバイスとを含むことがある。試料の流れは、受動的である(例えば、毛管力、静浮力、若しくは一旦試料を適用したらデバイスのさらなる操作を必要としない他の力による)こともあり、又は能動的である(例えば、機械式ポンプ、電気浸透流ポンプ、遠心力若しくは空気圧増加によって生じる力の印加による)こともあり、又は能動的な力と受動的な力の組合せによることもある。目的の分析物の磁性ベースの分離を含む分析物分離のためのデバイス(例えば、WO2008/072156、WO2008/102218、WO2010/035204及びWO2011/036638に開示されているデバイス)を使用して、本明細書において開示する検査を行うこともできる。
【0297】
関連実施形態では、プロセッサと、コンピュータ可読メモリーと、前記コンピュータ可読メモリーに記憶されたルーチンも提供し、前記ルーチンは、明細書に記載する任意の方法の遂行を前記プロセッサで実行するように構成されており、並びに/又はHNLの検出レベル、及び「正常」範囲外のレベルが本明細書に記載する状態の1つ若しくは複数と相関するような「正常」と見なされる閾レベル若しくは閾レベル範囲を出力として生成するように構成されている。一部の実施形態では、同様の機能を遂行するためのプログラム又はルーチンを含有するコンピュータ可読媒体も提供する。好適な計算システム、環境及び/又は構成の例としては、パーソナルコンピュータ、サーバーコンピュータ、携帯用若しくはラップトップ型デバイス、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベースシステム、セットトップボックス、プログラム可能な家庭用電化製品、ネットワークPC、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ、上記システム若しくはデバイスのいずれか又は当技術分野において公知の任意の他のシステムを含む分散コンピューティング環境が挙げられる。
【0298】
本明細書において開示する抗体は、標的抗原についての診断アッセイ、例えば、特定の細胞、組織又は血清中でのその発現を検出する診断アッセイにおいて使用されてよい。前記抗体は、in vivo診断アッセイにも使用されてよい。一般に、これらの目的のために、抗体は、免疫シンチグラフィーを使用してその部位の場所を突き止めることができるように放射性核種で標識される。
【0299】
本明細書に記載する抗体を、競合結合アッセイ、直接的及び間接的サンドイッチアッセイ、例えばELISA、並びに免疫沈降アッセイなどの、いずれの公知アッセイ方法で用いてもよい。Zola、Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques、147〜158頁(CRC Press,Inc.1987)。前記抗体を免疫組織化学的検査に使用して、当技術分野において公知の方法を使用して細胞試料を標識することもされてよい。
【実施例】
【0300】
1.抗体及びHNLエピトープの特徴づけ
High−Mass MALDI質量分析によるエピトープマッピング
エピトープマッピングを開始する前に、High−Mass MALDI分析を各試料(抗体及び抗原)に関して行って、それらの完全性及び凝集レベルを検証した。完全性/凝集試験については、CovalXのHM3相互作用モジュールを装備したUltraflex III MALDI ToF質量分析計(Bruker)を使用して測定を行った。CovalXの相互作用モジュールは、ナノモル感度で2MDaまでの検出を最適化するように設計された特別な検出システムを含む。20μlの各タンパク質試料(抗HNLクローンMAB1;クローンMAB2及びクローンMAB3及びHNL)をピペッティングして、最終体積が10μである8つの希釈物(dilutions)を調製した。これらの希釈物中の抗体の濃度は、1.0mg/ml、0.5mg/ml、250μg/ml、125μg/ml、62.5μg/ml、31.25μg/ml、15.63μg/ml、7.82μg/mlであった。HNL抗原を希釈して、以下の濃度を得た:350μg/ml、175μg/ml、87.5μg/ml、43.75μg/ml、21.88μg/ml、10.94μg/ml、5.47μg/ml、及び2.74μg/ml。これら8つの試料希釈物を下記の予想濃度が得られるように調製した。
【0301】
得られた各希釈物1μlを、アセトニトリル/水(1:1 v/v)、TFA0.1%中の再結晶シナピン酸マトリックス(10mg/ml)で構成されているマトリックス(K200 MALDI Kit)1μlと混合した。混合後、1μlの各試料をMALDIプレート(SCOUT384)にスポッティングした。室温で晶出後、プレートをMALDI質量分析計に導入し、直ちにHigh−Mass MALDIモードで分析した。分析を3回ずつ繰り返した。
【0302】
架橋(cross-linking)実験によって、High−Mass MALDI質量分析による非共有結合性相互作用の直接分析が可能になる。共有結合性相互作用を有するタンパク質試料と特別に開発された架橋混合物(Bich,C.ら、Anal.Chem.、2010、82(1)、172〜179頁)を混合することによって、非共有結合性複合体を高感度で特異的に検出することができる。生ずる共有結合によって、相互作用化学種は試料調製プロセス及びMALDIイオン化を生き延びることができる。特別なHigh−Mass検出システムは、High−Massレンジの相互作用特徴づけを可能にする。
【0303】
対照実験のために調製した各混合物を(9μl残して)、CovalXのK200 MALDI MS分析キットを使用する架橋に付した。前記混合物の9μl(1〜1/128)は、1μlのK200 Stabilizer試薬(2mg/ml)と混合し、室温でインキュベートする。インキュベーション時間(180分)後、対照実験の場合と同様にMALDI分析のための試料を調製した。晶出後直ちにHigh−Mass MALDI分析によって試料を分析する。MALDI Tof MS分析は、標準窒素レーザーを備えたCovalXのHM3相互作用モジュールを使用して、0〜1500kDaの様々な質量範囲に焦点を合わせて行った。分析には、以下のパラメータを適用した:質量分析計:リニア及びポジティブモード、イオン源1:20kV、イオン源2:17kV、レンズ:12kV、パルスイオン抽出:400ns、HM3:ゲイン電圧:3.14V、加速電圧:20kV。
【0304】
結果
抗体抗HNL MAB1
対照実験では、1〜1/64のすべての希釈物についてMH+=146.935±0.098kDaを有する1つの主ピークが検出された。観測分子量(kDa)は、146.935±0.098 抗HNL MAB1である。
【0305】
架橋実験では、1〜1/64のすべての希釈物についてMH+=148.717±0.112kDaを有する1つの主ピークが検出された。観測分子量(kDa)は、148.717±0.112 抗HNL MAB1である。他の非共有結合性複合体は、より高い質量範囲で検出されなかった。さらに、Complex Trackerソフトウェアを使用して非共有結合性複合体なし(検出されなかった)。
【0306】
抗体抗HNL MAB2
対照実験では、1〜1/64のすべての希釈物についてMH+=152.657±0.115kDaを有する1つの主ピークが検出された。観測分子量(kDa)は、152.657±0.115 抗HNL MAB2である。
【0307】
架橋実験では、1〜1/64のすべての希釈物についてMH+=154.521±0.142kDaを有する1つの主ピークが検出された。観測分子量(kDa)は、154.521±0.142 抗HNL MAB2である。他の非共有結合性複合体は、より高い質量範囲で検出されなかった。Complex Trackerソフトウェアを使用して、非共有結合性複合体は検出されなかった。
【0308】
抗体抗HNL MAB3
対照実験では、1〜1/64のすべての希釈物についてMH+=147.717±0.133kDaを有する1つの主ピークが検出された。観測分子量(kDa)は、147.717±0.133 抗HNL MAB3である。
【0309】
架橋実験では、1〜1/64のすべての希釈物についてMH+=149.134±0.089kDaを有する1つの主ピークが検出された。観測分子量(kDa)は、149.134±0.089 抗HNL MAB3である。他の非共有結合性複合体は、より高い質量範囲で検出されなかった。Complex Trackerソフトウェアを使用して、非共有結合性複合体は検出されなかった。
【0310】
抗原HNL
対照実験では、1〜1/32のすべての希釈物についてMH+=45.431±0.33kDaを有する1つの主ピークが検出された。観測分子量(kDa)は、45.431±0.33である。
【0311】
架橋実験では、1〜1/32のすべての希釈物についてMH+=48.509±0.052kDaを有する1つの主ピークが検出された。観測分子量(kDa)は、48.509±0.052である。他の非共有結合性複合体は、より高い質量範囲で検出されなかった。Complex Trackerソフトウェアを使用して、非共有結合性複合体は検出されなかった。
【0312】
凝集試験の結論
High−Mass MALDI質量分析及び化学的架橋を使用して、抗体抗HNLと抗原HNLの多量体との非共有結合性凝集物は検出されなかった。
【0313】
エピトープの性質の特徴づけ
エピトープの性質(すなわち、直鎖状又は立体構造的)を決定するために、抗原タンパク質と抗体間の相互作用が、抗原のタンパク質分解によって産生される不定形ペプチドによって阻害されうるかどうかを評価した。
【0314】
− 抗原の完全タンパク質分解によって産生されるペプチドが、抗体上に対する抗原の結合を阻害することができる場合、相互作用は立体構造に基づかない。この場合、エピトープは直鎖状である。エピトープの配列を決定するには、抗原の配列から産生される重複ペプチドのバンクを用いる単純競合アッセイで十分であると予想される。
【0315】
− 抗原の完全タンパク質分解によって産生されるペプチドが、抗体に対する抗原の結合を阻害することができない場合、立体構造が相互作用に必要である。この場合、エピトープは、連続的である(特異的立体構造、すなわちループを有する)こともあり、又は(三次構造のため)不連続であることもある。この場合、共有結合性標識、ペプチドマッピング、及び高分解能質量分析の使用が必要となる。
【0316】
エピトープの性質を特徴づけるために、CovalXのHM3 High−Massシステムを装備したUltraflex III MALDI ToF質量分析計(Bruker)を使用して測定を行った。
【0317】
対照実験
mAb/Agの混合物(抗HNL MAB1/HNL、抗HNL MAB2/HNL及び抗HNL MAB3/HNL)を調製した。得られた混合物1μlを、アセトニトリル/水(1:1 v/v)、TFA0.1%中の再結晶シナピン酸マトリックス(10mg/ml)で構成されているマトリックス(K200 MALDI Kit)1μlと混合した。混合後、1μlの各試料をMALDIプレート(SCOUT384)にスポッティングした。室温で晶出後、プレートをMALDI質量分析計に導入し、直ちに分析した。分析を3回ずつ繰り返した。
【0318】
架橋(cross-link)実験
対照実験のために調製した混合物を(9μl残して)、CovalXのK200 MALDI MS分析キットを使用する架橋に付した。前記混合物の9μlは、1μlのK200 Stabilizer試薬(2mg/ml)と混合し、室温でインキュベートする。インキュベーション時間(180分)後、対照実験の場合と同様にMALDI分析のための試料を調製した。晶出後直ちにHigh−Mass MALDI分析によって試料を分析する。
【0319】
競合アッセイ
エピトープの性質を決定するために、固定化ペプシンでのHNL抗原のタンパク質分解を行った。10μMの濃度を有する25μlの抗原を固定化ペプシン2.5μMと混合し、室温で30分間インキュベートした。インキュベーション時間の後、試料を遠心分離し、その上ずみをピペッティングした。タンパク質分解の完了を線形モード及びリフレクトロンモードでのHigh−Mass MALDI質量分析によって制御する。ペプシンタンパク質分解を最適化して、1000〜3500Da範囲の大量のペプチドを得た。タンパク質分解によって産生された5μlの抗原ペプチド(7.6μM)を5μlの抗HNL抗体(3.8μM)と混合し、37°で2時間インキュベートした。抗体と抗原ペプチドのインキュベーション後、5μlの混合物を5μlの無傷抗原(3.8μM)と混合する。
【0320】
相互作用分析
競合アッセイについての抗体/抗原相互作用分析は、上に記載したのと同じプロトコル(対照及び架橋実験)で行った。
【0321】
High−Mass MALDI分析
MALDI Tof MS分析は、標準窒素レーザーを備えたCovalXのHM3相互作用モジュールを使用して、0〜2000kDaの様々な質量範囲に焦点を合わせて行った。分析には、以下のパラメータを適用した:質量分析計:リニア及びポジティブモード、イオン源1:20kV、イオン源2:17kV、レンズ:12kV、パルスイオン抽出:400ns、HM3:ゲイン電圧:3.14V、加速電圧:20kV。計器を較正するために、インスリン、BSA及びIgGのクラスターでの外部較正を適用した。各試料について3スポットを分析した(スポット当り300のレーザーショット)。提示スペクトルは、合計300のレーザーショットに対応する。MSデータは、CovalXのComplex Tracker分析ソフトウェアバージョン2.0を使用して分析した。
【0322】
結果
抗HNL MAB1/HNL
対照実験では、抗原及び抗体は、MH+=45.862kDa及びMH+=148.577kDaを有した。観測分子量(kDa)45.725 HNL;148.431 抗HNL MAB1。
【0323】
架橋剤K200との180分のインキュベーション時間後、架橋実験を完了した。架橋後、MH+=195.941kDa及びMH+=241.619kDaを有する2つのさらなるピークが検出された。Complex Trackerソフトウェアを使用して、本発明者らは、対照スペクトルと架橋スペクトルを重ね合わせた。次の化学量論組成を有する2つの非共有結合性複合体が検出された。観測分子量(kDa)化学量論組成は、それぞれ、194.865[抗HNL MAB1/HNL]及び241.287[抗HNL MAB1/2HNL]であった。
【0324】
競合実験では、抗体抗HNLと抗原HNLの結合に対する阻害は検出されなかった。抗原のペプチドは、抗体の抗原への結合を阻害しなかった。
【0325】
抗HNL MAB2/HNL
対照実験では、抗原及び抗体は、それぞれ、MH+=45.755kDa及びMH+=148.531kDaを有した。観測分子量(kDa)は、45.755 HNL、及び148.531 抗HNL MAB2であった。
【0326】
架橋剤K200との180分のインキュベーション時間後、架橋実験を完了した。架橋後、2つのさらなるピークが、MH+=201.793kDa及びMH+=248.696kDaで検出された。Complex Trackerソフトウェアを使用して、対照スペクトルと架橋スペクトルを重ね合わせた。次の化学量論組成を有する2つの非共有結合性複合体が検出された:観測分子量(kDa)化学量論組成194.881[抗HNL MAB2/HNL]及び240.978[抗HNL MAB2/2HNL]。
【0327】
競合実験では、抗体抗HNLと抗原HNLの結合に対する阻害は検出されなかった。抗原のペプチドは、抗体の抗原への結合を阻害しなかった。
【0328】
抗HNL MAB3/HNL
対照実験では、抗原及び抗体が、MH+=45.742kDa及びMH+=148.554kDaで検出された。観測分子量(kDa)は、それぞれ、45.742 HNL、及び148.554 抗HNL MAB3であった。
【0329】
架橋剤K200との180分のインキュベーション時間後、架橋実験を完了した。架橋後、2つのさらなるピークが、MH+=196.482kDa及びMH+=243.468kDaで検出された。Complex Trackerソフトウェアを使用して、本発明者らは、対照スペクトルと架橋スペクトルを重ね合わせた。次の化学量論組成を有する2つの非共有結合性複合体が検出された。観測分子量(kDa)化学量論組成は、それぞれ、194.130[抗HNL MAB3/HNL]及び240.793[抗HNL MAB3/2HNL]であった。
【0330】
競合実験では、抗体抗HNLと抗原HNLの結合に対する阻害は検出されなかった。抗原のペプチドは、抗原に対する抗体の結合を阻害しなかった。
【0331】
競合アッセイの結論
競合アッセイは、抗原のペプチドが抗原に対する抗体の結合を阻害しないことを示した。HNL上の抗HNLのエピトープは、直鎖状でない。
【0332】
抗原HNLの特徴づけ及びペプチド質量フィンガープリント
HNLを特徴づけるために、その試料をASP−N、トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ及びサーモリシンタンパク質分解に付し、その後、LC−LTQ Orbitrap MS/MS分析に付した。抗原の特徴づけのために、Ultimate 3000(Dionex)システムをLTQ Orbitrap XL質量分析計(Thermo)とインラインで使用してナノ−LCクロマトグラフィーを処理した。10μlの抗原(0.35mg/mL)を40μlの重炭酸アンモニウム(25mM、pH8.3)と混合した。混合後、2μlのDTT(500mM)をその溶液に添加する。その後、その混合物を1時間、55℃でインキュベートする。インキュベーション後、2μlのヨードアセトアミド(1M)を添加し、その後、1時間、室温で、暗所でインキュベートする。インキュベーション後、その溶液を、トリプシン、キモトリプシン、ASP−N、エラスターゼ又はサーモリシンでのタンパク質分解に使用した緩衝液120μlの添加によって、1/5希釈する:
【0333】
− 145μlの還元(reduced)/アルキル化(alkyled)抗原を0.7μlのトリプシン(Roche Diagnostic)と比率1/100で混合した。そのタンパク質分解混合物を一晩、37℃でインキュベートした。
【0334】
− 145μlの還元/アルキル化抗原を0.35μlのキモトリプシン(Roche Diagnostic)と比率1/200で混合した。そのタンパク質分解混合物を一晩、25°Cでインキュベートした。
【0335】
− 145μlの還元/アルキル化抗原を0.35μlのASP−N(Roche Diagnostic)と比率1/200で混合した。そのタンパク質分解混合物を一晩、37°Cでインキュベートした。
【0336】
− 145μlの還元/アルキル化抗原を0.70μlのエラスターゼ(Roche Diagnostic)と比率1/100で混合した。そのタンパク質分解混合物を一晩、37°Cでインキュベートした。
【0337】
− 145μlの還元/アルキル化抗原を1.40μlのサーモリシン(Roche Diagnostic)と比率1/50で混合した。そのタンパク質分解混合物を一晩、70°Cでインキュベートした。
【0338】
タンパク質分解後、タンパク質分解によって産生された10μlのペプチドをナノ液体クロマトグラフィーシステム(Ultimate 3000,Dionex)に負荷し、分析に付した。DTA生成及びフィルタリングは、LTQ OrbiTrapを使用して行った。
【0339】
分子界面の特徴づけ
HNL抗原上の抗HNL MAB1、抗HNL MAB2及び抗HNL MAB3のエピトープを高分解能で決定するために、これらの抗体/抗原複合体を重水素化された架橋剤とともにインキュベートし、多酵素切断に付す。架橋ペプチドの富化後、試料を高分解能質量分析(nLC−Orbitrap MS)によって分析し、生成されたデータを、XQuest及びStavroxソフトウェアを使用して分析する。
【0340】
抗体/抗原複合体
5μlの抗原試料(濃度3.8μM)を5μlの抗体試料(濃度1.9μM)と混合して、最終濃度0.95μM/1.9μMを有する抗体/抗原混合物を得た。この混合物を37℃で180分間インキュベートした。
【0341】
第1のステップでは、1mgのd0架橋剤を1mgのd12架橋剤と混合した。調製した2mgを1mlのDMFと混合して、DSS d0/d12の2mg/ml溶液を得た。前もって調製した10μlの抗体/抗原混合物を、調製した架橋剤d0/d12(2mg/ml)の1μl溶液と混合した。架橋反応を達成するために、その溶液を180分間、室温でインキュベートする。
【0342】
10μlの抗原(0.35mg/mL)を40μlの重炭酸アンモニウム(25mM、pH8.3)と混合した。混合後、2μlのDTT(500mM)をその溶液に添加する。その後、その混合物を1時間、55℃でインキュベートする。インキュベーション後、2μlのヨードアセトアミド(1M)を添加し、その後、1時間、室温で、暗所でインキュベートする。インキュベーション後、その溶液を、タンパク質分解に使用した緩衝液120μlの添加によって、1/5希釈する。
【0343】
145μlの還元/アルキル化抗原を0.7μlのトリプシン(Roche Diagnostic)と比率1/100で混合した。そのタンパク質分解混合物を一晩、37°Cでインキュベートした。
【0344】
145μlの還元/アルキル化抗原を0.35μlのキモトリプシン(Roche Diagnostic)と比率1/200で混合した。そのタンパク質分解混合物を一晩、25°Cでインキュベートした。
【0345】
145μlの還元/アルキル化抗原を0.35μlのASP−N(Roche Diagnostic)と比率1/200で混合した。そのタンパク質分解混合物を一晩、37°Cでインキュベートした。
【0346】
145μlの還元/アルキル化抗原を0.70μlのエラスターゼ(Roche Diagnostic)と比率1/100で混合した。そのタンパク質分解混合物を一晩、37°Cでインキュベートした。
【0347】
145μlの還元/アルキル化抗原を1.40μlのサーモリシン(Roche Diagnostic)と比率1/50で混合した。そのタンパク質分解混合物を一晩、70°Cでインキュベートした。
【0348】
Xquestバージョン2.0及びStavrox 2.1ソフトウェアを使用して、架橋剤ペプチドを分析した。
【0349】
抗体抗HNL MAB1
架橋後、多酵素的タンパク質分解によって産生されたペプチドは、全抗原配列を95%カバーしている。
【0350】
用意した抗HNL MAB1ハイブリドーマを使用してcDNAシークエンシングを行い、次の結果であった:
軽鎖可変領域:
DIVMTQTPATLSVTPGDSVSLSCRASQSIITDLHWYQQRSHESPRLLIKSASQSISGIPSRFSGSGSGTDFTLTINSVETEDFGMYFCQQSNSWPLTFGAGTKLELKRADAAPTVS
重鎖可変領域:
VQLQESGPDLVAPSQSLSITCTVSGFSLSSYGVHWVRQPPGKGLEWLIVMWSDGSTTSNSALKSRLSISKDNSKSQVFLKVNSLQSDDTAIYYCARHYGYFTMDYWGQGTSVTVSS
【0351】
化学的架橋、High−Mass MALDI質量分析及びnLC−Orbitrap質量分析を使用して、抗原HNLとモノクローナル抗体抗HNL MAB1間の相互作用界面を特徴づけた。このモノクローナル抗体のエピトープは、次のアミノ酸をHNL抗原上に含む:144、145、154。抗体上の、パラトープは、次のアミノ酸を含む:重鎖:80、86。
【0352】
抗体抗HNL MAB2
架橋後、多酵素的タンパク質分解によって産生されたペプチドは、全抗原配列を95%カバーしている。用意した抗HNL MAB2ハイブリドーマを使用してcDNAシークエンシングを行い、次の結果であった:
軽鎖可変領域:
DIVLTQSTSSLSVSLGDRVTINCRASQDISNYLNWYQEKPDGTVKLLIYFTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYSLTITNLEQEDIATYFCQQGNTLPWTFGGGTKLEIKRADAAPTV
重鎖可変領域:
EVQLEESGPGLVAPSQSLSITCTISGFSLTSYGIHWLRQPPGKDLEWLVVIWGDGSTTSNSALKSRLSISKDNSKSQVFFKMSGLQTDDTAIYYCARHRYSDYHAMDYWGPGTSVTVS
【0353】
化学的架橋、High−Mass MALDI質量分析及びnLC−Orbitrap質量分析を使用して、抗原HNLとモノクローナル抗体抗HNL MAB2間の相互作用界面を特徴づけた。この分析は、このモノクローナル抗体のエピトープが次のアミノ酸をHNL抗原上に含むことを示す:83、88、145、154。抗体上の、パラトープは、次のアミノ酸を含む:重鎖:76、軽鎖:114。
【0354】
抗体抗HNL MAB3
架橋後、多酵素的タンパク質分解によって産生されたペプチドは、全抗原配列を95%カバーしている。用意した抗HNL MAB3ハイブリドーマを使用してcDNAシークエンシングを行い、次の結果であった:
軽鎖可変領域:
DIVLTQTTSSLSVSLGDRVTINCRASQDISNYLNWYQEKPDGTVKLLIYFTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYSLTITNLEQEDIATYFCQQGNTLPWTFGGGTKLEIKRADAAPTV
重鎖可変領域:
EVKLQESGPGLVAPSQSLSITCTISGFSLTSYGIHWLRQPPGKDLEWLVVIWGDGSTTSNSALKSRLSISKDNSKSQVFFKMSGLQTDDTAIYYCARHRYSDYHAMDYWGPGTSVTVSS
【0355】
化学的架橋、High−Mass MALDI質量分析及びnLC−Orbitrap質量分析を使用して、抗原HNLとモノクローナル抗体抗HNL MAB3間の相互作用界面を特徴づけた。この分析は、このモノクローナル抗体のエピトープが次のアミノ酸をHNL抗原上に含むことを示す:145、154。抗体上の、パラトープは、次のアミノ酸を含む:軽鎖:74、76、85。
【0356】
2.抗HNL抗体を使用する臨床試料の分析
HNLの高い判別力は、血清中の測定値で最も強調されるがEDTA血漿ではされず、これは、血清調製時にex vivoで試験管中の好中球がそれらのHNLを放出し続けることを示唆するように思われる。この放出活性は、ウイルスによってではなく細菌曝露によって誘導された好中球の活性化状態を表す。救急科において及び診療所において有用であるために、採血から任意のバイオマーカーの結果までの全アッセイ時間は、短い、すなわち15〜20分未満であるべきであり、これは、ポイントオブケア(POC)アッセイの開発の背景にある理念である。そのような要件は、HNLの血清測定に関しては相当困難である。上に示したように、HNLの血清測定は、好中球のかなり長い予備活性化を必要とするからである。確立した好中球活性化因子トリペプチドfMLPによる血液中の好中球の活性化がこの問題を回避する可能性を検査した。前記好中球活性化因子を使用して全血凝固中に起こる好中球活性化を模倣し、前記好中球活性化因子は長期インキュベーション後に血清中のHNLを測定する要求を置換する。
【0357】
この実施例では、急性感染症の兆候がある患者の大コホートから血液を採取して、fMLPでの活性化後の全血中のHNL濃度の診断性能を非活性化血漿中のHNLの診断性能と比較した。加えて、この原則を使用してHNL検査の診断性能を血中好中球数、CRP、IgG1受容体CD64の好中球上での発現及びプロカルシトニンなどの、現行の検査の診断性能と比較した。
【0358】
fMLPによる好中球の活性化
患者及び正常者の血液から精製した好中球を様々な濃度のfMLPに曝露し、15分間、37℃でインキュベートし、その後、遠心分離し、上清をHNLの存在についてアッセイした。fMLPの放出に最適な濃度は、5x10
−8mol/Lであることが判明した。HNLの放出の反応速度を研究するために、精製細胞を様々な時間長にわたってインキュベートした。有意な放出が5分のインキュベーション後に見られ、インキュベーション延長によってさらに増加された(
図2)。
【0359】
fMLPとのインキュベーション後の好中球の放出傾向が、凝集後の全血におけるHNLの放出を反映する可能性を検査するために、急性感染症を有する患者23名及び健常対象20名から精製した好中球からのHNLの放出をそれぞれの対象の血清HNL濃度と比較した。
図3から分かるように、有意な線形相関(r=0.743、p=0.002)が上清とHNLの血清濃度間で得られた。
【0360】
臨床結果
ヘパリン化全血及びEDTA血漿を、急性感染症の症状がある患者600名及び感染していないように見える健常対象144名から採取した。調査したバイオマーカー(HNL、PCT、及び血中好中球上でのCD64発現)結果の知識を持たずに、感染患者を臨床的理由で細菌性の病因又はウイルス性の病因を有すると分類した。この分類は、CRPの白血球の濃度及び差異の知識を含んだ。患者240名を彼らの感染症について可能性の高い原因として細菌又はウイルスを有すると分類し、患者325名を彼らの感染症について可能性のある又は不確かな原因を有すると判断した。患者35名は、彼らの感染原因としてマイコプラズマを有した。彼らの感染症について可能性の高い原因を有する患者に関して、細菌培養及び/若しくはPCRなどの客観的検査、並びに/又は他の客観的検査によって感染症を確認した。CRP及び白血球数も診断に含めた。マイコプラズマ感染性に罹患している者がいない、この後者の患者群は、対象総計384名(健常:144名、細菌感染症:185名、ウイルス感染症:55名)を構成し、この報告書でバイオマーカーの診断性能を調査するために使用した群であった。
【0361】
急性細菌感染症の診断についてのHNLの診断性能
図4a及びbに、20分間、37℃で、EDTA血漿中でのfMLP活性化後の全血中のHNL濃度を示す。健常対象のfMLP活性化全血中のHNL濃度(幾何平均98μg/L、95%CI 90〜107μg/L)と比較して、細菌感染症を有する患者で測定された濃度(幾何平均337μg/L、95%CI 300〜379μg/L)(p<0.0001)及びウイルス感染症を有する患者で測定された濃度(幾何平均117μg/L、95%CI 101〜136μg/L)(p<0.05)は、有意に上昇された。
【0362】
健常対象の血漿中のHNL濃度は、35μg/L(幾何平均、95%CI 34〜36μg/L)であり、細菌感染症を有する患者における濃度、64μg/L(幾何平均、95%CI 60〜69)(p<0.0001)及びウイルス感染症を有する患者における濃度、43μg/L(幾何平均、95%CI 38〜49)(p=0.0001)のほうが有意に高かった。健常のものと細菌のものとの重複はEDTA血漿でのほうが大きいようである。平均して、fMLPによって活性化された全血中の好中球から放出された追加のHNL量は、健常対象については2.8倍、細菌感染症を有する患者については5.3倍、及びウイルス感染症の者については2.7倍であった。したがって、健常対象を上回るHNLの追加の放出は、fMLP活性化全血では見られなかった。
【0363】
図5a及びbは、2つのHNLアッセイの、すなわち、fMLP活性化全血中及びEDTA血漿中の、診断性能を示す。
図5aに、健常な感染していない対象と細菌感染症が確認された対象との差異を受信者動作特性(ROC)曲線によって示す。fMLP活性化全血でのHNL検査についての曲線下面積(AUC)は、EDTA血漿でのHNL検査についての0.88(95%CI 0.84〜0.91)と比較して0.095(95% 0.91〜0.97)、p=0.0003であった。fMLP活性化全血について、125μg/L HNLでの陰性的中率(NPV)は90%(95%CI 82〜96%)であり、陽性値は83%(95%CI 77〜89%)であった。40μg/LのHNL濃度でのEDTA血漿について、NPVは86%(95%CI 72〜95%)であり、PPVは63%(95%CI 57〜69%)であった。細菌感染症とウイルス感染症の差異に関して、fMLP活性化全血のAUVは0.92(95%CI 0.87〜0.96)であり、EDTA血漿のAUVは0.79(95%CI 0.71〜0.85)、p=0.0006であった。110μg/Lの濃度で、fMLP活性化全血についてのNPVは93%(95%CI 68〜100%)でありPPVは85%(77〜90%)であった。EDTA血漿中40μg/Lでの濃度のHNLについての対応する数値は、NPV 52%(95%CI 37〜67%)及びPPV 85%(95%CI 78〜90%)であった。NPVは、EDTA血漿中のいずれのHNL濃度でも60%を超えなかった。したがって、fMLP活性化全血中のHNLの臨床成績は、健常対象と細菌感染症の差異に関しても、細菌感染症とウイルス感染症の差異に関しても、EDTA血漿中のHNLに勝っていた。
【0364】
急性細菌感染症の診断についてのCRP、血中好中球数、好中球上でのCD64発現及びプロカルシトニンの診断性能
図6a〜dは、研究対象集団におけるバイオマーカー:CRP、血中好中球数、血中好中球上でのCD64発現、及びプロカルシトニン、の分布を示す。好中球数を除いて、他のすべてのバイオマーカーは、細菌感染症とウイルス感染症両方において健常対象と比較して有意に上昇した。バイオマーカーはすべて、ウイルス感染症に対して細菌感染症でのほうが有意に高かった(p<0.001)。平均濃度を表1に示す。
【0365】
表1 バイオマーカー4種の濃度及び発現
【表1】
【0366】
AUCを表2に与える。健常と細菌感染症間の差異に関して、4つのバイオマーカーはAUC>90を示し、これらは、CRP、fMLP活性化全血中のHNL、血中好中球上でのCD64の発現、及び血中好中球数であった。fMLP活性化全血中のHNLのAUCは、EDTA血漿中のHNLのAUC(p<0.001)及びプロカルシトニンのAUC(p<0.05)より有意に高く、好中球上でのCD64の発現のAUCは、EDTA血漿HNLより高かった(p=0.002)が、PCTとは有意差がなかった(p=0.06)。CRPは、最高AUCを示したが、固有のバイアスリスクのため統計量を算定しなかった。
【0367】
細菌感染症とウイルス感染症間の差異に関して、fMLP活性化全血のAUCのみが>90%であった。これは、EDTA血漿HNLと有意差があり(p=0.003)、好中球上でのCD64発現及びプロカルシトニンと有意差があった(両方の比較についてp<0.0001)。EDTA血漿HNLのAUCは、プロカルシトニンのものより有意に高かった(p=0.01)。
【0368】
表2 すべての研究されたバイオマーカーのROC曲線下面積
【表2】