(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6788608
(24)【登録日】2020年11月4日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】フィールド機器、遠隔表示器及び遠隔表示器を構成する方法
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
G05B23/02 Z
【請求項の数】21
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-555217(P2017-555217)
(86)(22)【出願日】2016年4月20日
(65)【公表番号】特表2018-513497(P2018-513497A)
(43)【公表日】2018年5月24日
(86)【国際出願番号】US2016028363
(87)【国際公開番号】WO2016172152
(87)【国際公開日】20161027
【審査請求日】2017年12月14日
(31)【優先権主張番号】14/691,955
(32)【優先日】2015年4月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597115727
【氏名又は名称】ローズマウント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】サンドヴァル−カスティーロ,ヴィルジーリオ・ディー
(72)【発明者】
【氏名】クラウス,ジェイソン
【審査官】
影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−535741(JP,A)
【文献】
特表2014−510345(JP,A)
【文献】
特開2009−048289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動しているフィールド機器と関連する遠隔表示器を自動的に構成する方法であって:
プロセス特徴を測定し、プロセス変数を通信するように構成された作動しているフィールド機器であって、遠隔表示器を作動しているフィールド機器の近距離通信範囲内に配置するステップと;
遠隔表示器と作動しているフィールド機器との間で無線により機器構成情報を交換するステップと;
遠隔表示器のプロセス通信ループモジュールを通じてプロセス情報を受信するために遠隔表示器を結合するステップと;
結合を介してプロセス変数を示すプロセス情報を受信するステップと;
遠隔表示器に作動しているフィールド機器からのプロセス情報を表示するステップと;を含み、
機器構成情報を無線により交換するステップが、作動しているフィールド機器がプロセス情報を遠隔表示器にブロードキャストするため、作動しているフィールド機器が再び機器構成を受けられるように、遠隔表示器から作動しているフィールド機器に機器構成情報を提供すること、を含む方法。
【請求項2】
近距離通信範囲が約1フィート以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
作動しているフィールド機器の近距離通信送受信器によって、遠隔表示器の近距離通信回路に電力供給するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
プロセス情報がプロセス通信ループまたはセグメントを通じてブロードキャストされるようにするステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
作動しているフィールド機器がプロセス通信ループまたはセグメントに結合される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
プロセス情報がプロセス通信プロトコルに従って通信される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
プロセス情報が異なる無線通信プロトコルを通じてブロードキャストされるようにするステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
遠隔表示器がプロセス通信ループまたはセグメントによって完全に電力供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
プロセス通信プロトコルに従って通信するように構成されるプロセス通信回路と;
フィールド機器の構成要素に電力を供給するように構成される電力モジュールと;
少なくとも1つのセンサに作動可能に結合可能な測定回路であって、少なくとも1つのセンサのアナログ信号を測定し、測定の表示を提供するように構成される測定回路と;
プロセス通信回路、電力モジュールおよび測定回路に結合された制御器であって、測定回路から測定の表示を受信し、プロセス変数を計算し、プロセス通信回路を使用してプロセス変数情報を伝達するように構成される制御器と;
フィールド機器のフィーチャボードに配置された近距離通信送受信器であって、制御器に接続されて、制御器がフィールド機器の近距離通信範囲内に配置された機器に通信するのを可能にする近距離通信送受信器と;
フィーチャボード上に配置された近距離通信送受信器と通信するように構成されているが、フィールド機器の他の構成要素から電気的に分離されている近距離通信回路であって、不揮発性メモリを有する近距離通信回路と、
を含む、フィールド機器。
【請求項10】
プロセス通信回路および電力モジュールがプロセス通信ループまたはセグメントに結合するように構成されている、請求項9に記載のフィールド機器。
【請求項11】
近距離送受信器がフィールド機器の近距離通信範囲内に配置される近距離通信タグに電力供給するように構成されている、請求項10に記載のフィールド機器。
【請求項12】
制御器に結合された無線通信モジュールをさらに含む、請求項10に記載のフィールド機器。
【請求項13】
制御器が近距離通信送受信器を使用した機器と対になり、その後、無線通信モジュールを用いて対になった機器に通信するように構成される、請求項12に記載のフィールド機器。
【請求項14】
無線通信モジュールが2.4GHzで作動する、請求項13に記載のフィールド機器。
【請求項15】
プロセス通信ループまたはセグメントに結合し、プロセス通信プロトコルに従って通信するように構成されるプロセス通信回路と;
プロセス通信ループまたはセグメントに結合し、遠隔表示器の構成要素に電力供給するように構成される電力モジュールと;
プロセス変数情報を視覚的に表示するように構成されるディスプレイと;
プロセス通信回路、電力モジュールおよびディスプレイに結合された制御器であり、プロセス変数情報をプロセス通信ループまたはセグメントに結合されたフィールド機器から受信し、ディスプレイにプロセス変数情報を表示させるように構成される制御器と;
フィールド機器がプロセス変数情報をプロセス通信ループまたはセグメントによって遠隔表示器にブロードキャストするため、フィールド機器が再び機器構成を受けられるようにする機器構成情報であって、フィールド機器と交換されるように構成された機器構成情報を保存するメモリに結合された近距離通信回路と;を含む、遠隔表示器。
【請求項16】
制御器に結合された追加の無線通信モジュールをさらに含む、請求項15に記載の遠隔表示器。
【請求項17】
プロセス変数情報が追加の無線通信モジュールを通じて受信される、請求項16に記載の遠隔表示器。
【請求項18】
追加の無線通信モジュールが約2.4GHzの周波数で通信する、請求項15に記載の遠隔表示器。
【請求項19】
プロセス変数情報がプロセス通信回路を通じて受信される、請求項15に記載の遠隔表示器。
【請求項20】
複数の副構成要素であって、各副構成要素がそれぞれの副構成要素近距離通信タグを有する副構成要素と;
フィールド機器のフィーチャボードに配置された近距離通信送受信器であって、フィールド機器内に配置され、各複数の副構成要素の近距離通信タグと通信するように構成される近距離通信送受信器と;
フィーチャボード上に配置された近距離通信送受信器と通信するように構成されているが、フィールド機器の他の構成要素から電気的に分離されている近距離通信回路であって、不揮発性メモリを有する近距離通信回路と、
近距離通信送受信器に結合され、近距離通信送受信器を使用して各複数の副構成要素を識別し、識別された副構成要素を特定の機器構成と比較して、フィールド機器が正しい副構成要素を有するかどうかを決定するように構成される制御器と;を含む、フィールド機器。
【請求項21】
フィールド機器を作動させる方法であって:
フィールド機器内に近距離通信送受信器を備えるステップと;
フィールド機器から電気的に分離されるが、フィールド機器内に近距離通信回路を備えるステップと;
近距離通信回路の不揮発性メモリにフィールド機器の作動に関係する診断情報を保存するように、診断情報を近距離通信送受信器から分離された近距離通信回路に通信するステップと;を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[背景技術]
工業的環境では、制御システムは、工業プロセスおよび化学プロセスなどのインベントリを監視および制御するために使用される。通常、制御システムは、産業プロセスの主要な位置に分散し、プロセス制御ループまたはセグメントによって制御室の制御回路に結合されたフィールド機器を使用してこれらの機能を実行する。「フィールド機器」という用語は、計測制御および産業プロセスの監視に使用されるすべての機器を含む分散制御システムまたはプロセス監視システムにおいて機能を実行する任意の機器を指す。
【0002】
フィールド機器は、さまざまな目的のためにプロセス制御および測定業界によって使用される。通例、このようなフィールド機器は、屋外で比較的厳しい環境に設置でき、温度、湿度、振動、機械的衝撃などの気候の極端さに耐えることができるようにフィールド強化型エンクロージャを有する。これらのフィールド機器は、比較的低電力で作動することもできる。例として、プロセス通信ループまたはセグメントを通じて20ミリアンペア以下の作動電流で時々受信する電力のみで作動することができるフィールド機器がある。
【0003】
プロセス特性を測定し、測定に関するプロセス変数を計算して送信するフィールド機器がある。これらのプロセス変数送信機は、温度、圧力、流量、pH、濁度、レベルまたは任意の他の好適なプロセス変数に関する情報を制御室または監視テーションに提供するために使用することができる。
【0004】
場合によっては、次の最終制御機器にプロセス変数の表示を提供すること、または比較的アクセス困難な場所に取り付けられた1つまたは複数の送信機からの情報を表示することは、有用であろう。このような場合、遠隔表示器として知られているフィールド機器が使用される。遠隔表示器は、プロセス制御ループまたはセグメントに沿ってどこにでも配置することができ、どこであろうとも必要ときに情報を表示することができる。場合によっては、遠隔表示器は、指示された量が計算値になるようなプロセス変数に基づいて基本的な算術演算を実行することもできる。
【発明の概要】
【0005】
遠隔表示器を自動的に構成する方法が提供される。この方法は、遠隔表示器を作動しているフィールド機器の近距離通信範囲内に配置するステップを含む。機器構成情報は、遠隔表示器とフィールド機器との間で無線により交換される。遠隔表示器は、プロセス情報を受信するように結合される。プロセス情報は、結合を通じて受信され、遠隔表示器のディスプレイ上に表示される。フィールド機器および遠隔表示器も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本発明の実施態様が特に有用であるプロセス監視システムの線図である。
【
図2】
図2は、本発明の一つの実施態様によるプロセス変数送信機のブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の一つの実施態様による遠隔表示器の斜視図である。
【
図5A】
図5Aは、本発明の一つの実施態様によるフィールド機器からのプロセス変数情報を表示するように構成される遠隔表示器の線図である。
【
図5B】
図5Bは、プロセス通信ループまたはセグメントに結合されたフィールド機器および遠隔表示器の線図である
【
図6】
図6は、本発明の一つの実施態様による遠隔表示器を構成する方法の流れ図である。
【
図7】
図7は、本発明の一つの実施態様によるフィールド機器のブロック図である。
【
図8】
図8は、本発明の別の実施態様によるフィールド機器のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
プロセス制御装置の機器構成は、人為的ミスが発生する重大な可能性を有する脅威がある手順となり得る。遠隔表示器の機器構成手順では、一般的に、特定の製品に固有であるかなりな量の知識が必要である。さらに、機器構成手順では、遠隔表示器を構成する技術者は、フィールド機器および/または遠隔表示器の製造業者からの指示に正確に従うことが要求される。以下に説明する本発明の実施態様は、プロセス変数情報が表示される1つまたは複数のフィールド機器がプロセス制御環境内で現在機能している場合であっても、遠隔表示器の機器構成を一般的に容易にする。それゆえに、1つまたは複数のフィールド機器がプロセス制御の重要な局面に現在関与している可能性があるので、遠隔表示器を構成するためにプロセス制御機能を中断しないことが重要である。さらに、フィールド機器は、比較的アクセス困難な場所に配置される場合があるので、作動中のフィールド機器との著しい物理的相互作用は、好まれない。
【0008】
図1は、本発明の実施態様が特に有用であるプロセス監視システムの線図である。システム10は、電源12を含み、これは、終端装置16を有する電力調整器を介してプロセス制御ループまたはセグメント14にエネルギーを付与する既知の24ボルト電源とすることができる。プロセス制御ループまたはセグメント14は、例えば、FOUNDATION(商標)Fieldbusプロトコル、ハイウェイアドレス可能遠隔トランスデューサ(HART(登録商標))プロトコル、PROFIBUSまたは任意の他の好適なプロセス通信プロトコルなどの既知のプロセス通信プロトコルに従って作動する。ループまたはセグメントの電気エネルギーが非常に低レベルなので、爆発性であるまたは高度に揮発性であるプロセス環境の安全性を損なうことなく、そのような環境に到達することが可能なように、エネルギー制限状態で効果的に作動することができるプロセス通信プロトコルがある。また、通常、データ通信ネットワークプロトコルよりもプロセス制御および測定タスクに対してより効果的に作動するプロセス通信プロトコルもある。最後に、例えば、FOUNDATION(商標)FieldbusおよびHART(登録商標)などの少なくともいくつかのプロセス通信プロトコルは、そのようなプロセス通信ループまたはセグメントに取り付けられたフィールド機器に完全に電力を供給することができる。それゆえに、取り付けられたフィールド機器は、それらが結合されている通信媒体を通じて受信されたエネルギーのみで作動可能であってもよい。さらに、少なくともいくつかのプロセス通信プロトコルは、例えば、IEC62591(WirelessHART)に従うような無線通信を使用する。そのような実施態様では、フィールド機器が無線プロセス通信ネットワークに通信可能に結合されているが、無線プロセス通信ネットワークとフィールド機器との間に物理的接続はない。
【0009】
図1では、マルチチャネル温度送信機18および20は、プロセス制御ループまたはセグメント14に結合され、プロセス通信ループまたはセグメント14によってプロセス温度に対する情報を提供する。また、プロセス圧力送信機22は、プロセス圧力変数を測定し、プロセス制御ループまたはセグメント14によってプロセス圧力情報を伝達するようにも構成されている。遠隔表示器24は、プロセス通信ループまたはセグメント14にも結合され、マルチチャネル温度送信機18,20およびプロセス圧力送信機22に関するプロセス変数情報を表示するように構成される。ひとたび適切に構成されると、遠隔表示器24は、遠隔表示器24が表示するように構成されたプロセス通信ループまたはセグメント14上で利用可能なプロセス変数情報を識別および/または受信することができる。このような情報を検出/受信するとすぐに、遠隔表示器24は、プロセス変数を示す情報を遠隔表示器のディスプレイに表示する。通常、ディスプレイは、例えば、液晶ディスプレイのような比較的汎用のデジタルディスプレイである。また、フィールド機器18、20および22のように、遠隔表示器24は、いくつかの実施態様では、プロセス通信ループまたはセグメント14によって全体的に電力を供給されることも可能である。
【0010】
遠隔表示器24を構成するための現在の技術では、一般的に、遠隔表示器をプロセスに取り付けられた1つまたは複数のフィールド機器と対にする、または、さもなければ関連付けるために、ユーザまたは技術者が遠隔表示器24を手作業で構成することが要求される。上述のように、これらの手動操作は、潜在的にエラーを起こしやすく、要求が充たされない可能性がある。
【0011】
本発明の実施態様は、一般的に、遠隔表示器を構成するための著しく改善されたシステムおよび方法を提供する。本発明の態様は、改善されたフィールド機器ならびに改善された遠隔表示器を包含することができる。さらに、本発明の実施態様は、遠隔表示器を1つまたは複数のフィールド機器と対にする、または、さもなければ関連付ける方法を含む。
【0012】
図2は、本発明の一つの実施態様による、例えば、プロセス変数送信機などのフィールド機器のブロック図である。プロセス変数送信機50は、
図1に示すプロセス変数送信機18、20もしくは22のいずれかまたは他の任意のプロセス変数送信機にすることができる。プロセス変数送信機50は、複数の導体54、56を介してプロセス通信ループまたはセグメント14に結合されたプロセス通信回路52を含む。また、電力モジュール58も導体54、56に結合されている。電力モジュール58は、いくつかの実施態様では、導体54、56から通電電力を受け取るように調整され、「すべてに」とラベル付けされた矢印60で示されるように、プロセス変数送信機50内の他の構成要素に好適な電力を供給する。プロセス変数送信機50は、プロセス通信回路52に結合された制御器62を含むので、制御器62は、プロセス通信回路52を使用してプロセス通信ループまたはセグメントによってプロセス変数情報および他の情報を通信することができる。制御器62は、プログラムデータおよびプロセスデータを保存することができる好適なメモリ64を含んでもよく、または好適なメモリ64に結合されてもよい。メモリ64は、揮発性および/または不揮発性メモリを含むことができる。一つの実施態様では、制御器62は、一連のプログラムステップをプログラムで実行するために、好適なメモリ64を備えたマイクロプロセッサである。これらのステップは、プロセス変数送信機としてのその機能を提供するために制御器62によって実行される。また、本発明の実施態様による自動無線遠隔表示器の機器構成を容易にするために、さらなるステップもメモリ64内にも保存されて、制御器62によって実行される。
【0013】
プロセス変数送信機50は、プロセス変数を感知するために1つまたは複数のセンサ68に結合された測定回路66も含む。センサ68は、例えば、プロセス圧力送信機内に配置された圧力センサのように、プロセス変数送信機50内に配置されてもよく、またはプロセス変数送信機50の外部に配置されて、好適な配線を介してそれに結合されてもよく、例として、サーモウェル内に配置され、好適な配線を介して測定回路66に結合された温度センサがある。測定回路66は、いくつかの実施態様では、1つまたは複数のアナログ−デジタル変換器および好適な線形化回路および/または増幅回路を含む。測定回路66は、1つまたは複数の検出されたアナログ値の指示をデジタル信号の形態で制御器62に提供する。制御器62は、測定回路66からデジタル信号を受信し、プロセス通信ループまたはセグメント14によって利用可能にできる1つまたは複数のプロセス変数をプログラムで計算する。
【0014】
本発明の一つの実施態様によれば、プロセス変数送信機50は、近距離通信(NFC)送受信器70を含む。NFC送受信器70は、制御器62が既知の近距離通信技術に従って通信することができるように、制御器62に結合される。NFC送受信器70は、いくつかの実施態様では、NFC送受信器70の近距離通信範囲内に配置されたパッシブNFCタグまたは機器に電力を供給するように構成される。それゆえに、そのようなパッシブタグは、NFC送受信器70と通信するときに独立した電力を受け入れる必要はない。また、NFC送受信器70は、例えば、スマートフォン、タブレットまたはハンドヘルド型コンフィギュレータなどの他の近距離通信機器を介して、プロセス変数送信機50と相互交信する能力を提供することができる。本発明の実施態様は、パッシブNFCタグに電力供給するアクティブNFC送受信器に関して一般的に記載されるが、実施態様が互いに通信する2つの「アクティブ」NFC送受信器を使用して実施され得ることが明白に意図される。さらに、本発明の実施態様は、フィールド機器のNFC送受信器がパッシブであり、無線ゲートウェイを介したあるタイプのフィールド機器の機器構成を可能にする、例えば、無線ゲートウェイなどの別の機器内のアクティブNFCによって電力が供給される場合に実施され得る。
【0015】
いくつかの実施態様では、プロセス変数送信機50は、プロセス変数送信機50がNFC送受信器70を使用することで、可能であるよりも長い範囲に基づいて通信することを可能にする追加の無線通信モジュール72を含むことができる。例として、追加の無線通信モジュール72は、いくつかの実施態様では、2.4GHzで他の無線機器と通信することができる。2.4GHz周波数を使用する無線通信技術の例には、既知のBluetooth(登録商標)およびWiFiプロトコルが含まれる。NFC送受信器70および追加の無線通信モジュール72の両方を利用することにより、プロセス変数送信機50は、例えば、遠隔表示器などの外部機器と対になる、または、さもなければ安全に構成されることが可能になり、その後、追加のワイヤレス通信モジュールを使用して対になった外部機器との通信が可能になる。
【0016】
図3は、本発明の一つの実施態様による遠隔表示器の斜視図である。しかしながら、本発明の実施態様は、フィールド機器からまたは制御ループまたはセグメント上でプロセス情報を遠隔で表示することができる任意の装置で実行することができることを理解されたい。さらに、本発明の実施態様は、より複雑な相互交信を単純化するために、NFC相互交信を使用する任意の機器を使用して実行することができる。例として、複雑な機器構成/セットアップは、フィールド機器が別のフィールド機器、制御システムまたはハンドヘルドコンフィギュレータなどと通信する場合に単純化することができる。さらに別の例では、アナログ入力(AI)を備えたフィールド機器を、そのアナログ入力とは異なる機器からのアナログ出力(AO)を使用するように構成することができる。そのような機器構成には、いくらかの複雑さがあるだろうが、そのようなフィールド機器間のNFCデータ共有を使用することで複雑さが軽減されるであろう。
【0017】
一つの実施態様によれば、遠隔表示器100は、遠隔表示器100を屋外での使用に好適にする堅牢な筐体102を含む。遠隔表示器100は、プロセス制御ループまたはセグメントまたは他のプロセス監視ネットワーク上で通信する1つまたは複数のフィールド機器に関する情報を提供するディスプレイ103を含む。一つの実施態様では、遠隔表示器100は、機器タグまたはフィールド機器識別子および選択可能な工学装置に関するそのような情報を示す複数のフィールド機器に関する情報を表示する能力を有する。そのような実施態様では、データは、要望に応じてスクロールされる、または、さもなければ順次表示されることが可能である。さらに、遠隔表示器100は、例えば、経時的な総流量、総質量または体積を計算するなどの選択されたフィールド機器情報に対していくつかの基本的な操作を実行することができる。また、遠隔表示器100および筐体102内の回路を慎重に設計することによって、遠隔表示器100は、さまざまな潜在的に有害な場所に対して承認され得る。そのような承認には、クラス1、区分1の使用のための工場相互(E5)承認およびI5/IE本質安全使用が含まれる。追加の認証には、例として、クラス1、区分1の使用のための防爆およびクラス1、区分1の使用のためのI6/IF本質安全承認のためのCanadian Standards Association (CSA)の承認E6が含まれる。さらに、E1 Atex Flameproof Certificationなどの欧州認証も同様に提供することができる。それゆえに、遠隔表示器100のユーザは、慎重を期するさまざまな場所で使用するための遠隔表示器100を指定することができる。遠隔表示器100は、好ましくは、遠隔表示器100の内部へのアクセスを可能にする1対のねじ付きエンドキャップ105,107を含む。また、プロセス配線された実施態様では、1つまたは複数の配線導管109がプロセス配線を受け入れるために備えられる。
【0018】
図4は、遠隔表示器100(
図3に示す)の線図である。遠隔表示器100は、プロセス通信回路104、電力モジュール106、制御器108およびメモリ110を収容する筐体102を含む。これらの構成要素は、プロセス変数送信機50内で使用される構成要素と同じであってもよく、または類似していてもよいが、必ずしもそうである必要はなく、したがって別個の参照番号が使用される。しかしながら、図示された実施態様では、遠隔表示器100のプロセス通信回路104は、複数の導体112、114を介してプロセス変数ループまたはセグメントに結合するように構成される。もちろん、無線通信を使用する実施態様では、導体112、114は、必要ではないであう。さらに、電力モジュール106も、「全てに」とラベル付けされた矢印116によって示されるように、遠隔表示器100の構成要素に作動電力を供給するために導体112、114に結合される。無線の実施態様では、電力モジュールは、電池または他の電力機器であろう。制御器108は、いくつかの実施態様では、遠隔表示器100が表示するように構成されたプロセス制御ループまたはセグメント上に提供されるプロセス変数情報を識別または受信するためにプロセス通信回路104を使用するように構成されるマイクロプロセッサである。制御器108は、遠隔表示器100が表示するように構成されたプロセス変数情報に関するプログラム命令および機器構成情報を保存するために、好適なメモリ110を含んでもよく、またはそれに結合されてもよい。また、遠隔表示器100は、遠隔表示器100がプロセス変数情報の視覚的表示を提供できるように、制御器108に結合されたディスプレイ120を含む。いくつかの実施態様では、ディスプレイ120は、液晶ディスプレイであってもよい。しかしながら、本発明の実施態様は、LEDディスプレイ、電子インク、真空蛍光ディスプレイ(VFD)、有機発光ダイオード(OLED)を含む任意の適切なディスプレイ技術または他の任意の好適なディスプレイ技術を使用して実行することができる。
【0019】
本発明の一つの実施態様によれば、遠隔表示器100は、近距離通信(NFC)タグ130を含む。一つの実施態様では、近距離通信タグ130は、遠隔表示器100内の電源からではなく、NFC送受信器70(
図2に示す)などの外部電源から電力を受信するように構成されるパッシブタグである。そのような実施態様では、パッシブNFCタグ130は、遠隔表示器100に関する識別情報を含むので、ひとたび遠隔表示器100がフィールド機器と同じプロセス通信ループまたはセグメント(有線または無線)に好適に結合されると、フィールド機器への識別情報の提供により、そのフィールド機器が遠隔表示器100に対して自動的にプロセス通信を構成することを可能にする。あるいは、フィールド表示器は、フィールド機器プロセス情報を表示するためにフィールド機器に直接的に(すなわち、無線で)結合するように構成することができる。しかしながら、本発明の実施態様は、遠隔表示器100内に完全にアクティブな近距離通信送受信器を備えることも含む。そのような実施態様では、NFC送受信器は、一般的に、制御器108に結合され、これは、破線132によって示される。したがって、制御器108は、NFC送受信器内に保存された情報にアクセスすることができるであろう。また、遠隔表示器100は、遠隔表示器100がより長い通信範囲の無線技術、例えば、2.4GHzで作動する通信技術、例えば、Bluetooth(登録商標)またはWi-Fiなどによって通信できる追加の無線通信モジュール140を含むことができる。このような通信は、1つまたは複数のフィールド機器と遠隔表示器100との間の通信が制限される実施態様において有用であろう。
【0020】
図5Aは、本発明の一つの実施態様によるフィールド機器からのプロセス変数情報を表示するように構成される遠隔表示器の線図である。フィールド機器200は、作動中のプロセス通信ループまたはセグメント上のプロセス変数情報を感知および提供することに現在関与している。ブロック202に示すように、そのようなプロセス通信は、FOUNDATION(商標)Fieldbus、HART(登録商標)または任意の他の好適な有線または無線プロセス通信プロトコルを含むことができる。遠隔表示器204は、最初にフィールド機器200の近距離通信範囲内に持つてこられる。例として、この近距離近接は、約1フィート以下でよい。それゆえに、遠隔表示器204は、プロセス通信ループまたはセグメントに物理的に結合されておらず、それゆえに、電力供給されていない。必要とされる近接を達成するとすぐに、フィールド機器200の近距離通信送受信器は、遠隔表示器204のパッシブ近距離通信タグに電力を供給して相互交信する。いくつかの実施態様では、フィールド機器200は、近距離通信送受信器を介して通信が行われている視覚的表示を提供することができる。例として、例えばLED206、208のようなフィールド機器200上の1つまたは複数の表示器が点滅して状態を示すことができる。例として、フィールド機器上の点滅する赤色光は、フィールド機器が近距離通信送受信器を使用して現在通信していることを示すことができる。あるいは、赤色の点滅光は、フィールド機器が現在機器構成中であることを示すことができる。緑色の表示器は、フィールド機器が近距離通信を終了し、プロセス通信および/または監視のタスクに完全に関与していることを示すことができる。あるいは、緑色の表示器は、単に機器が完全に構成されたことを示してもよい。
【0021】
近距離通信近接を達成するとすぐに、遠隔表示器204の近距離通信タグまたは送受信器は、機器構成情報をフィールド機器200に提供する。この機器構成情報は、フィールド機器200がその特定の遠隔表示器204にプロセス変数情報をブロードキャストするために自身を構成することができるようにフィールド機器200によって解釈される。しかしながら、本発明の実施態様は、フィールド機器200が近距離通信送受信器を介して相互交信して、それ自体を示す情報を遠隔表示器204に書き込む、または、さもなければ保存する逆交換も含む。このようにして、その後、遠隔表示器204は、その特定のフィールド機器によって送信されたプロセス制御ループまたはセグメントに基づく情報を識別することができるので、情報が遠隔表示器204にローカルに表示されるようになるであろう。いずれにせよ、NFC近接は、フィールド機器と遠隔表示器との間の協調通信に関与するために使用されるので、その後、遠隔表示器がフィールド機器200も結合される同じプロセス通信ループまたはセグメントに結合される場合、遠隔表示器204は、フィールド機器200からのプロセス変数情報を自動的に表示する。あるいは、フィールド表示器は、フィールド機器に無線で結合し、フィールド機器プロセス情報を表示してもよい。
【0022】
図5Bは、プロセス通信ループまたはセグメント14に結合されたフィールド機器200および遠隔表示器204の線図である。
図5Aに関して図示されたNFC機器構成に続いて、
図5Bでは、遠隔表示器204が完全に現在構成されている。遠隔表示器204は、フィールド機器200および遠隔表示器204が構成されている他のフィールド機器からのブロードキャストを現在受信する。この遠隔表示器204の機器構成は、上述のように技術者がフィールド機器200または任意のその他の構成されたフィールド機器に関する情報を入力する必要なく行われる。
【0023】
図6は、本発明の一つの実施態様による遠隔表示器を構成する方法の流れ図である。方法300は、ブロック302で開始し、遠隔表示器は、フィールド機器に近距離通信近接に持ってこられる。近距離通信近接は、遠隔表示器とフィールド機器との間の近距離通信を可能にするのに十分な任意の範囲である。一例では、この近接は、1フィート以下である。しかしながら、両方のNFC機器がアクティブである実施態様では、より長い範囲が可能である。次に、ブロック304で、フィールド機器と遠隔表示器との間で機器構成情報が交換される。上述したように、一つの実施態様では、フィールド機器は、遠隔表示器から機器構成情報を読み出し、その後に、遠隔表示器に結合されたプロセス通信ループまたはセグメントによって情報をブロードキャストするようにそれ自体を構成する。ブロック306で、近距離通信結合が解消される。この分断は、通常、近距離通信近接を超えて遠隔表示器を単に移動させるという形態である。しかしながら、本発明の実施態様は、セッションを積極的に終了させるために、技術者がフィールド機器または遠隔表示器のユーザインタフェース要素を押し込む、または、さもなければ係合させることも含む。次に、ブロック308で、遠隔表示器がプロセス通信ループまたはセグメントに結合される。一つの実施態様では、これは、フィールド機器が作動しているのと同じプロセス通信ループまたはセグメントである。しかしながら、例として、遠隔表示器がBluetooth(登録商標)またはWi-Fiなどの追加の無線通信プロトコル性能を含む実施態様では、遠隔表示器は、フィールド機器と同じプロセス通信ループまたはセグメントに結合される必要はなく、単に遠隔表示器を作動するのに十分な電力を提供することができる任意のプロセス通信ループまたはセグメントに結合されればよく、または表示器が自己で電力を供給するもの(すなわち、バッテリ)であってもよい。もちろん、このような実施態様では、フィールド機器自体も、プロセス変数情報がBluetooth(登録商標)またはWi-Fiプロトコルを介して遠隔表示器に送信されるように、好適な無線通信モジュールを含む、またはそれに結合される必要があるであろう。次に、ブロック310で、遠隔表示器が構成されたプロセス変数情報が表示される。上述したように、遠隔表示器は、複数のフィールド機器に関するプロセス変数情報を表示し、例えば、単位時間当たりの質量流量または総体積などの計算値を表示するために、そのようなプロセス変数情報に基づいた基本的な操作を提供することができる。
【0024】
遠隔表示器が例えばBluetooth(登録商標)またはWi-Fiのような任意の追加の無線プロトコルモジュールを含む本発明の実施態様の追加の特徴は、追加の機器を使用して遠隔表示器と相互交信できることである。例として、遠隔表示器およびスマートフォンまたはタブレットを自動的に対にするために、近距離通信機能を有するスマートフォンまたはタブレットを使用して遠隔表示器と相互交信することで、プロセス通信ループまたはセグメントを通じた通信をせずに、追加の操作を遠隔表示器に対して実行できるようにすることができる。例として、遠隔表示器によって実行される計算を調整することができ、表示のために選択されたユニットを変更することができ、またはスマートフォンまたはタブレットのユーザインタフェースを使用して遠隔表示器のプロセッサと相互交信する任意の他の好適な修正を行うことができる。さらに、スマートフォンまたはタブレットを使用して、遠隔表示器が構成されているプロセス情報を表示することもできる。さらに、スマートフォンまたはタブレットは、より広い範囲の無線プロトコルを使用して表示器またはプロセス計測を点検および/または修復するために使用することができる。
【0025】
フィールド機器にNFC送受信器を備えることで、遠隔表示器の自動機器構成を超えた追加機能が容易になる。例として、近距離通信能力を有するスマートフォン、タブレットまたは他の好適な機器を使用して、フィールド機器と相互交信し、フィールド機器からのプロセス情報を表示することができる。また、スマートフォン、タブレットまたは他の好適な機器を使用して、NFC通信を使用してフィールド機器を構成、作動、点検、修理または、さもなければ、調整することができる。
【0026】
近距離通信回路およびタグは、任意の好適な方法でフィールド機器および遠隔表示器に組み合わせ、または追加することができる。一つの実施態様では、
図7に示すように、複数の近距離通信回路402、404および406がそれぞれフィールド機器400の各副構成要素408、410および412に埋め込まれている。ひとたびフィールド機器400が製造業者によって完全に組み立てられ、電力供給されると、フィールド機器400内に存在する副構成要素がフィールド機器400のために特定された機器構成と一致するかどうかを決定するために、制御器62がNFC送受信器70を通じて各副構成要素408、410および412と通信する。例として、副構成要素408は、FOUNDATION(商標)Fieldbusプロトコルに従ってプロセス通信を提供するプロセス通信副構成要素であってもよい。それゆえに、近距離通信回路402は、副構成要素408がプロセス通信副構成要素であり、副構成要素408がFOUNDATION(商標)Fieldbusプロトコル用に構成されていることを示す。フィールド機器が異なるプロトコルに従って通信するように指定され、電源投入時に、副構成要素408が適切な副構成要素ではないと決定された場合、補修する、または、さもなければ処置するために、エラーまたは他の好適な表示がフィールド機器によって生成されることが可能である。このようにして、副構成要素のNFC識別の一致は、正しい副構成要素がフィールド機器を構築するために使用されたことを確認するために使用できる。本発明の実施態様のNFC技術が追加の目的のために活用されることが可能になる別の方法は、電子フォレンジックに関するものである。例として、近距離通信回路は、フィールド機器および/または遠隔表示器内に配置されたフィーチャボードに備えることができる。
【0027】
図8は、本発明の一つの実施態様によるフィールド機器500のブロック図である。フィールド機器500の多くの構成要素は、プロセス変数送信機50(
図2に示す)の構成要素と同じであり、同様の構成要素には、同様の番号が付けられている。プロセス変数送信機50とは対照的に、プロセス変数送信機50の近距離通信送受信器70は、フィーチャボード502上に配置される。フィーチャボードは、フィールド機器の筐体内に収まる大きさのフィールド機器の追加の構成要素であり、追加の「機能」を提供する。フィーチャボードは、中央処理装置と支持構成要素を含む回路基板である。フィーチャボードは、通常、定義された方法でフィールド機器の配線にも接続する。
図8に示される例のように、フィーチャボード502は、診断情報または他の好適な情報を、フィールド機器500の内部にではあるが電気的に分離されて配置された近距離通信回路506内に埋め込まれた不揮発性メモリ504に記録するために使用される。しかしながら、本発明の実施態様は、近距離通信回路がフィーチャボード502の一部である、またはそれ自体の別個の回路基板上にある場合に実行することができる。フィーチャボード502は、無線信号508をブロードキャストし、障害状態にかかわらず、電子的障害から完全に分離され保護された診断情報を無線で提供する近距離通信チップ506に電力を供給する。この不揮発性メモリ504は、フィールド機器500の故障直前の故障状態を診断するのに使用される必須情報を含むブラックボックスとして本質的に使用することができる。
【0028】
本発明を好ましい実施態様を参照して説明してきたが、当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細に変更を加えることができることを認識する。