【文献】
KARIM TEKKOUK,MAURO ETTORRE,LAURENT LE COQ,RONAN SAULEAU,Multibeam SIW Slotted Waveguide Antenna System Fed by a Compact Dual-Layer Rotman Lens,IEEE Transactions on Antennas and Propagation,IEEE,2016年,Vol. 64, No. 2,pp. 504 - 514
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
導電体からなるグランド層と、当該グランド層の上層に当該グランド層と離間して設けられた複数のアレイアンテナと、当該グランド層の下層に当該グランド層と離間して設けられたロットマンレンズとを備えたアンテナ装置であって、
前記複数のアレイアンテナの各々は、その中央に給電点が位置する給電線路と、当該給電線路に接続された複数の放射素子とを含み、且つ、前記給電点を対称の中心として点対称な形状であり、
前記複数のアレイアンテナの給電点の各々は、前記グランド層に形成されたスロットを介して前記ロットマンレンズの何れかの出力ポートの端部と結合し、
当該アンテナ装置の動作帯域の中心周波数の前記給電線路における実効波長を中心波長λとして、
前記給電線路に対して前記複数の放射素子の各々が接続される区間である分岐区間は、前記給電線路が延伸されている方向に沿った長さがλ/4である単位区間を複数個連ねることにより構成され、
前記単位区間の各々の幅は、隣接する単位区間の特性インピーダンスが整合するように定められている、
ことを特徴とするアンテナ装置。
前記給電線路は、(1)前記給電点を含み第1の方向に沿って延伸された給電区間と、(2)当該給電区間の一方の端部から前記第1の方向に交わる第2の方向のうち一方の方向に沿って延伸された第1の放射区間と、(3)当該給電区間の他方の端部から前記第2の方向のうち他方の方向に沿って延伸された第2の放射区間とを含み、
前記第1の放射区間に接続された1又は複数の放射素子、及び、前記第2の放射区間に接続された1又は複数の放射素子は、同一直線上に配置されており、
前記給電点に対して結合する前記ロットマンレンズの前記何れかの出力ポートの前記端部を含む端部区間は、前記第1の方向に沿って延伸されており、
当該出力ポートの前記端部区間に連なる区間は、前記第2の方向に沿って延伸されている、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のアンテナ装置。
導電体からなるグランド層と、当該グランド層の上層に当該グランド層と離間して設けられた複数のアレイアンテナと、当該グランド層の下層に当該グランド層と離間して設けられたロットマンレンズとを備えたアンテナ装置であって、
前記複数のアレイアンテナの各々は、その中央に給電点が位置する給電線路と、当該給電線路に接続された複数の放射素子とを含み、且つ、前記給電点を対称の中心として点対称な形状であり、
前記複数のアレイアンテナの給電点の各々は、前記グランド層に形成されたスロットを介して前記ロットマンレンズの何れかの出力ポートの端部と結合し、
前記給電線路は、(1)前記給電点を含み第1の方向に沿って延伸された給電区間と、(2)当該給電区間の一方の端部から前記第1の方向に交わる第2の方向のうち一方の方向に沿って延伸された第1の放射区間と、(3)当該給電区間の他方の端部から前記第2の方向のうち他方の方向に沿って延伸された第2の放射区間とを含み、
前記第1の放射区間に接続された1又は複数の放射素子、及び、前記第2の放射区間に接続された1又は複数の放射素子は、同一直線上に配置されており、
前記給電点に対して結合する前記ロットマンレンズの前記何れかの出力ポートの前記端部を含む端部区間は、前記第1の方向に沿って延伸されており、
当該出力ポートの前記端部区間に連なる区間は、前記第2の方向に沿って延伸されている、
ことを特徴とするアンテナ装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔ビームフォーミングアンテナの概要〕
本発明の一実施形態に係るビームフォーミングアンテナ(請求の範囲に記載のアンテナ装置に対応)の概要について、
図1を参照して説明する。
【0011】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るビームフォーミングアンテナは、グランド層と複数のアレイアンテナと、ロットマンレンズとを備えている。
【0012】
グランド層は、導電体からなる膜又は板により構成されている。複数のアレイアンテナは、グランド層の上層にグランド層と離間して設けられている。ロットマンレンズは、グランド層の下層にグランド層と離間して設けられている。
図1においては、斜視図を見やすくするためにグランド層を仮想線(二点鎖線)にて示している。また、同様の理由から、グランド層の設けられた複数のスロットの図示を省略している。なお、複数のスロットの詳細については、
図2及び
図3の(a)、並びに、
図6及び
図7の(a)を参照して後述する。各スロットは、ビームフォーミングアンテナを平面視した場合に、ロットマンレンズの出力ポートの端部とアレイアンテナの給電点とが重畳する領域に設けられている。
【0013】
複数のアレイアンテナの各々は、その中央に給電点が位置する給電線路と、当該給電線路に接続された複数の放射素子とを含み、且つ、給電点を対称の中心として点対称な形状である(
図3の(a)及び
図7の(a)参照)。
【0014】
複数のアレイアンテナの給電点の各々は、グランド層に形成されたスロットを介してロットマンレンズの何れかの出力ポートの端部と結合している(
図2、
図3の(a)、
図6、及び
図7の(a)参照)。
【0015】
なお、このようなビームフォーミングアンテナは、例えば、グランド層と、グランド層を挟持する2つの誘電体層(第1の誘電体層及び第2の誘電体層)とにより構成された誘電体基板を用いて実現することができる。この場合、複数のアレイアンテナを誘電体基板のおもて面に形成し、ロットマンレンズを誘電体基板のうら面に形成すればよい。
【0016】
この構成によれば、複数のアレイアンテナとロットマンレンズとを同一基板上に形成することができるため、ビームフォーミングアンテナの製造コストを抑制することができる。
【0017】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係るビームフォーミングアンテナについて、
図2〜
図5を参照して説明する。
図2は、本実施形態に係るビームフォーミングアンテナ1の分解斜視図である。
図3の(a)は、ビームフォーミングアンテナ1が備えている複数のアレイアンテナ22の1つであるアレイアンテナ22iの平面図である。
図3の(b)は、
図3の(a)に示したアレイアンテナ22iの拡大平面図であり、
図3の(a)に示した領域R1の拡大平面図である。
図4は、
図3に示したアレイアンテナ22iの分岐部分の平面図である。
図5は、ビームフォーミングアンテナ1が備えているロットマンレンズ32の平面図である。また、非特許文献2に記載の直列給電アレイアンテナ(以下、従来のビームフォーミングアンテナ101)の分解斜視図を
図9に示す。
【0018】
従来のビームフォーミングアンテナ101は、
図9に示すように、グランド層141と、誘電体層121と、複数のアレイアンテナ122と、誘電体層131と、ロットマンレンズ132とを備えている。ロットマンレンズ132は、複数の給電ポート1321と、複数の出力ポート1322と、本体1323とを備えている。グランド層141には、複数のスロット1141が設けられている。ロットマンレンズ132の複数の出力ポート1322の各々の一方の端部(本体1323と逆側の端部)と、複数のアレイアンテナ122の一方の端部である給電点とは、複数のスロット1141を介して結合している。なお、
図9の二点鎖線は、複数のアレイアンテナ122が形成されている面と、ロットマンレンズ132が形成されている面を仮想的に示している。
図9において、複数のアレイアンテナ122と誘電体層121の一方の主面とは、互いに離間しているように描かれている。しかし、実際には、複数のアレイアンテナ122は、誘電体層121の一方の主面に積層されている。ロットマンレンズ132についても同様である。
【0019】
一方、請求の範囲に記載のアンテナ装置の一態様であるビームフォーミングアンテナ1は、
図2に示すように、グランド層11と、誘電体層21と、複数のアレイアンテナ22と、誘電体層31と、ロットマンレンズ32とを備えている。
【0020】
図2に図示した座標系は、誘電体層21の主面211の法線に沿う方向をz軸方向と定め、後述する各アレイアンテナ22iの給電線路23Li(
図3参照)が延伸されている方向をx軸方向と定め、x軸方向及びz軸方向とともに右手系の直交座標系を構成するようにy軸方向を定めている。また、z軸方向において主面212から主面211へ向かう方向をz軸正方向と定め、後述するロットマンレンズ32の複数の出力ポート322から複数の給電ポート321へ向かう方向をx軸正方向と定め、x軸正方向及びz軸正方向とともに右手系の直交座標系を構成するようにy軸正方向を定めている。
【0021】
グランド層11と、グランド層11を挟持する一対の誘電体層である誘電体層21,31とは、誘電体基板を構成する。誘電体層21の一方の主面(z軸正方向側の主面)である主面211は、誘電体基板のおもて面を構成し、誘電体層21の他方の主面(z軸負方向側の主面)である主面212は、グランド層11と接触している。誘電体層31の一方の主面(z軸正方向側の主面)である主面311は、グランド層11と接触しており、誘電体層31の他方の主面(z軸負方向側の主面)である主面312は、誘電体基板のうら面を構成する。
【0022】
(複数のアレイアンテナ22)
複数のアレイアンテナ22は、主面211に積層された導体膜(本実施形態では銅製の薄膜)をパターニングすることによって得られる導体パターンである。本実施形態において、10個のアレイアンテナ22iにより構成されており、各アレイアンテナ22iの形状は、
図3の(a)及び(b)に示す通りである。
【0023】
各アレイアンテナ22iは、給電線路23Liと、給電線路23Liに接続された16個の放射素子241i〜248i,251i〜258iと、給電線路23Liと放射素子241i〜248iの各々とを接続するサブ給電線路261i〜268iと、給電線路23Liと放射素子251i〜258iの各々とを接続するサブ給電線路線とを備えている。給電線路23Liは、x軸方向に沿って延伸された帯状の導体パターンである。給電線路23Liの中央には、給電点23Piが位置する。
【0024】
本実施形態では、
図3の(b)に示すように、給電線路23Liのうち給電点23Piからx軸正方向側に延伸された部分と、当該部分に接続されたサブ給電線路261i〜268iと、放射素子241i〜248iとを用いて各アレイアンテナ22iの構成を説明する。各アレイアンテナ22iは、
図3の(a)に示すように、給電点23Piを対称の中心として点対称な形状を有する。したがって、本実施形態では、給電線路23Liのうち給電点23Piからx軸負方向側に延伸された部分と、当該部分に接続された8本のサブ給電線路と、放射素子251i〜258iとに関する説明を省略する。
【0025】
給電線路23Liのうち給電点23Piからx軸正方向側に延伸された部分は、サブ給電線路261i〜267iの各々が接続される分岐区間271i〜277iを含んでいる。分岐区間271iは、給電点23Piに最も近い分岐区間、すなわち、最前段の分岐区間であり、分岐区間277iは、給電点23Piから最も遠い分岐区間、すなわち、最後段の分岐区間であり、分岐区間271iと分岐区間277iとの間には、給電点23Piに近い側から遠い側に向かって、すなわち、前段から後段に向かって分岐区間272i〜276iが等間隔で配置されている。また、給電線路23Liのうち給電点23Piからx軸正方向側に延伸された部分の末端である末端部278iには、サブ給電線路268iが接続される。なお、分岐区間271i〜277iのことを分岐区間27ji(jは、1≦j≦7の整数)と一般化して表す。
【0026】
ビームフォーミングアンテナ1において、動作帯域の中心周波数の前記給電線路における実効波長を中心波長λとして、分岐区間27jiの各々は、x軸方向に沿った長さがλ/4である単位区間271ji,272ji,273jiを連ねることにより構成されている。単位区間271ji,272ji,273jiの各々は、給電線路23Liの前段から後段に向かって連なる単位区間であり、それぞれ、請求の範囲に記載の第1の区間、第2の区間、及び第3の区間に対応する。以下において、単位区間271ji,272ji,273jiの各々のことを第1の区間271ji、第2の区間272ji、及び第3の区間273jiとも呼ぶ。第1〜第3の区間271ji,272ji,273jiの各々の幅W271ji,W272ji,W273jiは、それぞれ、隣接する第1〜第3の区間271ji,272ji,273jiの特性インピーダンスZ1,Zb,Zcが整合するように定められている。
【0027】
この構成によれば、給電線路23Liに対して各放射素子241i〜247iが接続されることにより生じ得る反射損失を抑制することができる。したがって、ビームフォーミングアンテナ1の利得を高めることができる。
【0028】
また、各放射素子241i〜247iの各々は、第1の区間271jiと第2の区間272jiとの境界近傍に、サブ給電線路261i〜267iの各々を介して接続されている。サブ給電線路261i〜267iの各々は、第1の区間271jiと第2の区間272jiとの境界近傍からy軸正方向に向かって延伸されている。なお、サブ給電線路268iは、サブ給電線路261i〜267iの各々と同一に構成されている。
【0029】
給電線路23Liにおいて、給電点23Piに供給された電流は、給電点23Piから末端部278iに向かう過程において、分岐区間271i〜277iの各々を順番に通過する。上記電流が分岐区間271i〜277iの各々、例えば分岐区間271iを通過するとき、給電線路23Liを流れる電流は、そのまま給電線路23Liを次の分岐区間である分岐区間272iに向かって流れる電流と、サブ給電線路261iを放射素子241iに向かって流れる電流とに分けられる。給電線路23Liを分岐区間272iに向かって流れる電流を第1の電流とし、サブ給電線路261iを放射素子241iに向かって流れる電流を第2の電流とする。分岐区間271iにおける分岐比、すなわち、分岐区間272iに給電される電力に対する放射素子241iに給電される電力の比は、第1の電流に対する第2の電流の比により与えられる。他の分岐区間272i〜277iにおける分岐比も同様である。
【0030】
ここで、幅W272jiは、分岐区間27jiにおける分岐比が所定の値になる幅であり、幅W271jiは、第2の区間272jiと分岐区間27jiから分岐される放射素子との合成インピーダンスと、分岐区間27jiの前段の特性インピーダンスとを整合させる幅であり、第3の区間273jiの幅W273jiは、第2の区間272jiの特性インピーダンスと、分岐区間27jiの後段の特性インピーダンスとを整合させる幅である。
【0031】
この構成によれば、給電線路に対して各放射素子が接続されることにより生じ得る反射損失を確実に抑制することができる。したがって、アンテナ装置の利得を確実に高めることができる。
【0032】
また、分岐区間27jiの各々の分岐比は、給電線路23Liの前段に設けられた分岐区間27jiほど小さく、給電線路23Liの後段に設けられた分岐区間27jiほど大きくなるように定められている。すなわち、分岐区間271iの分岐比が最も小さく、分岐区間272i〜276iの分岐比がこの順番で大きくなり、分岐区間277iの分岐比が最も大きくなるように定められている。
【0033】
この構成によれば、各放射素子241i〜248iから放射される各ビームのパワーを容易に制御することができるため、ビームフォーミングアンテナ1の放射効率やサイドローブ比を容易に制御することができる。換言すれば、所望の放射効率やサイドローブ比を有するビームフォーミングアンテナ1の設計が容易になる。
【0034】
また、アレイアンテナ22iにおいて、放射素子241i〜248i,251i〜258iの各々は、何れも合同である。この構成によれば、複数の放射素子が何れも合同であることによって、ビームフォーミングアンテナ1の設計が容易になる。
【0035】
(ロットマンレンズ32)
ロットマンレンズ32は、主面312に積層された導体膜(本実施形態では銅製の薄膜)をパターニングすることによって得られる導体パターンである。
図5に示すように、ロットマンレンズ32は、複数の給電ポート321と、複数の出力ポート322と、本体323とを備えている。本実施形態において、複数の給電ポート321は、9個の給電ポート321iにより構成されており、複数の出力ポート3222は、10個の出力ポート322iにより構成されている。
【0036】
各出力ポート322iの端部のうち本体323と逆側の端部(各出力ポート322iの末端部)を含む端部区間は、何れもx軸に沿って延伸されている。
【0037】
図5に示すようにロットマンレンズ32を平面視した場合に、グランド層11のうち、各出力ポート322iの末端部近傍に対応する位置には、それぞれ、スロット111iが設けられている。すなわち、グランド層11には、複数のスロット111が設けられている。
【0038】
(複数のアレイアンテナ22及びロットマンレンズ32の結合)
図3の(a)に示すように、アレイアンテナ22iを平面視した場合に、給電点23Piがロットマンレンズ32の出力ポート322iの末端部及びグランド層11のスロット111iに重畳するように、複数のアレイアンテナ22は、主面211に配置されている。したがって、複数のアレイアンテナ22の給電点23Piの各々は、スロット111iを介して、ロットマンレンズ32の何れかの出力ポート322iの末端部と結合している。したがって、ロットマンレンズ32の何れかの給電ポート321iに供給され、本体323を経て、各出力ポート322iの末端部に至った電力は、スロット111iを介して各アレイアンテナ22iの給電点23Piと結合し、各アレイアンテナ22iの放射素子241i〜248i,251i〜258iから放射される。
【0039】
(ビームフォーミングアンテナ1の機能)
従来のビームフォーミングアンテナにおいて放射パターンのピーク方向と、天頂方向とのなす角をθとした場合、
【数1】
と表すことができる。ただし天頂方向を0°とし、天頂方向を向くときの周波数をf
0、そこからの周波数のずれをΔfとする。
【0040】
しかし、
図3の(a)のように給電線路23Liの中央(本実施形態においては中点)に給電点23Piを配置することでピークがずれる向きが反対のビームが重ねあわされるため、ピークが変化しにくくなる。本発明の一態様であるビームフォーミングアンテナ1は、それを利用したものである。
【0041】
また、アレイアンテナの放射効率やサイドローブ比は、放射素子の給電強度比に依存する。そのため特許文献1のように給電比を調整するために放射素子自体の大きさを変えることがある。しかし、そうすると各放射素子の整合、給電比の調整が難しくなる。本発明の一実施形態に係るビームフォーミングアンテナ1は、
図3の(b)のように給電線路23Liから放射素子241i〜247iへ電力を分岐する分岐区間27jiの構成と、放射素子241i〜247iの大きさとをすべての放射素子241i〜247iで一定にし、且つ、給電線路23Liの幅を単位区間(第1〜第3の区間271ji,272ji,273ji)毎に変えることで各放射素子241i〜248iへの分配比を調整している。これらの構成を用いて放射パターンを制御することで、ビームフォーミングアンテナ1は、その設計を簡単にしている。
【0042】
図4にあるように、給電線23Liから各放射素子241i〜247iへの各分岐比は、特性インピーダンスZaとZbの比で決まる。合成インピーダンスZab=Za・Zb/ ( Za+Zb )であらわされ、整合をとるために
【数2】
で表される。同様に
【数3】
と求めることができ、給電線路23Liの特性インピーダンスであるZ0と分岐比、Zaを初期値として決めることで、
図4に示す給電線路23Liに含まれる分岐区間27jiを構成する第1〜第3の区間271ji,272ji,273jiの幅W271ji,W272ji,W273jiをそれぞれ求めることができ、所望の分岐比を簡単に得ることができる。したがって、ビームフォーミングアンテナ1は、インピーダンス整合を取りつつ設計することができる。その結果、ビームフォーミングアンテナ1は、インピーダンス整合をとることができるため、分岐区間27jiにおいて生じ得る反射損失を抑制することができる。
【0043】
〔第2の実施形態〕
以下、本発明の第2の実施形態に係るビームフォーミングアンテナについて、
図6〜
図7を参照して説明する。
図6は、本実施形態に係るビームフォーミングアンテナ1Aの分解斜視図である。
図7の(a)は、ビームフォーミングアンテナ1Aが備えている複数のアレイアンテナ22Aの1つであるアレイアンテナ22Aiの平面図である。
図7の(b)は、ビームフォーミングアンテナ1Aが備えているロットマンレンズ32Aの平面図である。
図7の(c)は、ロットマンレンズ32Aが備えている出力ポート322Aの1つである出力ポート322Aiを拡大した拡大図である。なお、説明の便宜上、第1の実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0044】
ロットマンレンズ32を使い、複数のアレイアンテナ22の放射方向を振る場合、各放射素子241i〜248i,251i〜258iは、振る方向に対して角度依存性が低いほうが望ましい。そのため、本発明の一実施形態において、放射素子は、特許文献2及び特許文献3に記載されているようになるべく一直線上にあることが望ましい。ビームフォーミングアンテナ1Aは、第1の実施形態に係るビームフォーミングアンテナ1の構成をベースにし、放射素子241Ai〜248Aiと放射素子251Ai〜258Aiとがx軸に沿って一直線状に配置されるように、放射素子241Ai〜248Ai,251Ai〜258Aiの配置を変更することによって得られる。すなわち、ビームフォーミングアンテナ1Aが備えているアレイアンテナ22Ai(
図7の(a)参照)において、複数の放射素子241Ai〜248Ai,251Ai〜258Aiは、一直線上に配置されている。
【0045】
なお、ビームフォーミングアンテナ1Aの複数のアレイアンテナ22A及びロットマンレンズ32Aの各々は、それぞれ、ビームフォーミングアンテナ1の複数のアレイアンテナ22及びロットマンレンズ32にとって代わる部材である。
【0046】
グランド層11に設けられた複数のスロット
111のうちの1つであるスロット111iを介して給電線路23ALiの中央に位置する給電点23APiへ中央給電する場合、給電点23APiから放射素子241Ai〜248Aiへ向かうかう方向、及び、給電点23APiから放射素子251Ai〜258Aiへ向かうかう方向の各方向へは、電流が逆位相で給電される。そのためパッチアンテナ(放射素子)への給電は、放射素子241Ai〜248Ai及び放射素子251Ai〜258Aiの各々に対して逆方向から行う必要がある。
【0047】
逆方向から給電しつつ同一直線状に放射素子を配置するため、ビームフォーミングアンテナ1Aにおいては、放射素子241Ai〜248Ai,251Ai〜258Aiを
図7の(a)に示すように構成し、ロットマンレンズ32Aを
図7の(b)に示すように構成する。すなわち、(1)給電点23APi付近をクランク状に折り曲げて放射素子241Ai〜248Aiと、放射素子251Ai〜258Aiとが同一直線状になるようにアレイアンテナ22Aiを設計し、(2)ロットマンレンズ32Aの出力ポート322Aの先端部を含む端部区間がアレイアンテナ22Aiの給電点23APi付近における給電線路23ALiが延伸されている方向(y軸方向)に沿うように、ロットマンレンズ
32Aの複数の出力ポート322Aの各々である出力ポート322Aiを設計する。
【0048】
より具体的には、
図7の(a)に示すように、給電線路23ALiは、給電区間231ALiと、第1の放射区間232ALiと、第2の放射区間233ALiとにより構成されている。給電区間231ALiは、給電線路23ALiの中央部分に位置し、給電部23APiを含む。給電区間231ALiは、請求の範囲に記載の第1の方向であるy軸方向に沿って(本実施形態では平行に)延伸されている。第1の放射区間232ALiは、給電区間231ALiの一方の端部(y軸負方向側の端部)からx軸正方向に沿って(本実施形態では平行に)延伸されている。x軸正方向は、請求の範囲に記載の第2の方向のうち一方の方向に対応する。当然のことながら、第1の方向であるy軸方向と第2の方向であるx軸方向とは、交わっている(本実施形態では直交している)。第2の放射区間233ALiは、給電区間231ALiの他方の端部(y軸正方向側の端部)からx軸負方向に沿って(本実施形態では平行に)延伸されている。x軸負方向は、請求の範囲に記載の第2の方向のうち他方の方向に対応する。
【0049】
放射素子241Ai〜248Aiの各々は、
図7の(a)に示すように、第1の放射区間232ALiのy軸正方向側に配置されている。第1の放射区間232ALiに対して放射素子241Ai〜248Aiの各々を接続する部分の構成は、第1の実施形態に係るビームフォーミングアンテナ1が備えている給電線路23Liに対して放射素子241i〜248iの各々を接続する部分(領域R1)の構成と同じである(
図3の(b)参照)。また、放射素子251Ai〜258Aiの各々は、
図7の(a)に示すように、第2の放射区間233ALiのy軸負方向側に配置されている。第2の放射区間233ALiに対して放射素子251Ai〜258Aiの各々を接続する部分の構成は、第1の実施形態に係るビームフォーミングアンテナ1が備えている給電線路23Liに対して放射素子251i〜258iの各々を接続する部分の構成と同じである。(1)第1の放射区間232ALiの中心軸と放射素子241Ai〜248Aiの各々の中心との長さと、(2)第2の放射区間233ALiの中心軸と放射素子251Ai〜258Aiの各々の中心との長さは、何れも等しい。また、給電区間231ALiにおいて、給電部23APiから給電区間231ALiの一方の端部(y軸負方向側の端部)までの長さと、給電部23APiから給電区間231ALiの他方の端部(y軸正方向側の端部)までの長さは等しい。したがって、放射素子241Ai〜248Ai,251Ai〜258Aiの各々は、x軸に沿い(本実施形態では平行であり)、且つ、給電部23APiを通る直線上に配置されている。
【0050】
また、
図7の(c)に示すように、ロットマンレンズ32Aが備えている複数の出力ポート322Aの各々である出力ポート322Aiは、端部区間3221Aiと、端部区間3221Aiに連なる区間である中央区間3222Aiとを含んでいる。端部区間3221Aiは、各出力ポート322Aiの端部を含み、且つ、y軸方向に沿って延伸されている。中央区間3222Aiは、x軸方向に延伸されている。すなわち、本実施形態において、端部区間3221Aiと中央区間3222Aiとは、直交している。
【0051】
この構成によれば、複数の放射素子241Ai〜248Ai,251Ai〜258Aiが同一直線上に配置されていることによって、広帯域かつ広角のビーム走査を可能にする。なお、各出力ポート322Aiの中央区間3222Aiは、第2の方向であるx軸方向に沿って延伸されていればよく、その形状は限定されるものではない。例えば、その形状は、直線であってもよいし、蛇行した曲線であってもよい。
【0052】
なお、各出力ポート322Aiの端部(端部区間3221Aiの中央区間3222Aiに連なる側の端部と逆側の端部)は、スロット111を構成するスロットのうちの何れか1つのスロットであるスロット111iを介して、複数のアンテナアレイ22Aを構成するアンテナアレイのうち何れか1つのアンテナアレイであるアンテナアレイ22Aiの給電点23APiと結合している。
【0053】
〔実施例〕
本発明の第1の実施例であるビームフォーミングアンテナ1は、
図3に示したアレイアンテナ22iを備えている。本発明の第2の実施例であるビームフォーミングアンテナ1Aは、
図7の(a)に示したアレイアンテナ22Aiを備えている。なお、第1の実施例及び第2の実施例では、ビームフォーミングアンテナ1,1Aが備えているアレイアンテナ22i,22Aiの数を6個とし、ロットマンレンズ32,32Aの各々における給電ポート321iの数は5個とし、ロットマンレンズ32,32Aの出力ポート322i,322Aiの数、及び、スロット111iの数は、何れも6個とした。
【0054】
第1の実施例により得られた利得の方位依存性(放射パターン)を
図8の(a)に示し、第2の実施例により得られた利得の方位依存性(放射パターン)を
図8の(b)に示す。
図8の(a)及び(b)を参照して第1の実施例と第2の実施例とを比較すると、第2の実施例の方が放射方向を変化させた時、放射強度が落ちにくくなっていることが確認できる。なお、
図8の(a)に示した5つのプロットは、それぞれ、ロットマンレンズ32,32Aの各々における給電ポート321iを変更することにより得た。
図5の(b)に示した5つのプロットについても同様である。
【0055】
(まとめ)
本発明の一態様に係るアンテナ装置(1,1A)は、導電体からなるグランド層(11)と、当該グランド層(11)の上層に当該グランド層(11)と離間して設けられた複数のアレイアンテナ(22,22A)と、当該グランド層(11)の下層に当該グランド層(11)と離間して設けられたロットマンレンズ(32,32A)とを備えたアンテナ装置(1,1A)であって、前記複数のアレイアンテナ(22,22A)の各々(22i,22Ai)は、その中央に給電点(23Pi,23APi)が位置する給電線路(23Li,23ALi)と、当該給電線路(23Li,23ALi)に接続された複数の放射素子(241i〜248i,251i〜258i,241Ai〜248Ai,251Ai〜258Ai)とを含み、且つ、前記給電点(23Pi,23APi)を対称の中心として点対称な形状であり、前記複数のアレイアンテナ(22,22A)の給電点(23Pi,23APi)の各々は、前記グランド層(11)に形成されたスロット(111)を介して前記ロットマンレンズ(32,32A)の何れかの出力ポート(322i,322Ai)の端部と結合している、ことを特徴とする。
【0056】
上記の構成によれば、アレイアンテナに対する給電を給電線路の中央から行うため、給電する電磁波の周波数を変化させた場合であっても、この周波数の変化にともなうビーム方向の変化を抑制することができる。したがって、本アンテナ装置は、放射パターンのピーク方向が放射する電磁波の周波数に依存しないアンテナ装置を実現することができる。
【0057】
本発明の一態様に係るアンテナ装置(1,1A)において、当該アンテナ装置(1,1A)の動作帯域の中心周波数の前記給電線路における実効波長を中心波長λとして、前記給電線路(23Li,23ALi)に対して前記複数の放射素子(241i〜248i,251i〜258i,241Ai〜248Ai,251Ai〜258Ai)の各々が接続される区間である分岐区間(27ji)は、前記給電線路(23Li,23ALi)が延伸されている方向(x軸方向)に沿った長さがλ/4である単位区間(271ji,272ji,273ji)を複数個連ねることにより構成され、前記単位区間(271ji,272ji,273ji)の各々の幅(W271ji,W272ji,W273ji)は、隣接する単位区間(271ji,272ji,273ji)の特性インピーダンスZ1,Zb,Zcが整合するように定められている、ことが好ましい。
【0058】
上記の構成によれば、給電線路に対して各放射素子が接続されることにより生じ得る反射損失を抑制することができる。したがって、アンテナ装置の利得を高めることができる。
【0059】
本発明の一態様に係るアンテナ装置(1,1A)において、前記分岐区間(27ji)は、前記給電線路(23Li,23ALi)の前段から後段に向かって連なる第1の区間(271ji)、第2の区間(272ji)、及び第3の区間(273ji)を含み、各放射素子(241i〜248i,251i〜258i,241Ai〜248Ai,251Ai〜258Ai)は、前記第1の区間(271ji)と前記第2の区間(272ji)との境界近傍に接続されており、前記第2の区間の幅(W272ji)は、当該分岐区間(27ji)における分岐比が所定の値になる幅であり、前記第1の区間の幅(W271ji)は、前記第2の区間(272ji)と前記分岐区間(27ji)から分岐される放射素子との合成インピーダンスと、前記分岐区間の前段の特性インピーダンスとを整合させる幅であり、前記第3の区間(273ji)の幅(W273ji)は、前記第2の区間(272ji)の特性インピーダンスと、前記分岐区間(27ji)の後段の特性インピーダンスとを整合させる幅である、ことが好ましい。
【0060】
上記の構成によれば、給電線路に対して各放射素子が接続されることにより生じ得る反射損失を確実に抑制することができる。したがって、アンテナ装置の利得を確実に高めることができる。
【0061】
本発明の一態様に係るアンテナ装置(1,1A)において、前記複数の放射素子(241i〜248i,251i〜258i,241Ai〜248Ai,251Ai〜258Ai)の数は、4つ以上であり、前記複数の放射素子(241i〜248i,251i〜258i,241Ai〜248Ai,251Ai〜258Ai)の各々が接続される分岐区間(27ji)の分岐比は、前記給電線路(23Li,23ALi)の前段に設けられた分岐区間(27ji)ほど小さく、前記給電線路(23Li,23ALi)の後段に設けられた分岐区間(27ji)ほど大きい、ことが好ましい。
【0062】
上記の構成によれば、各放射素子から放射される各ビームのパワーを容易に制御することができるため、アンテナ装置の放射効率やサイドローブ比を容易に制御することができる。換言すれば、所望の放射効率やサイドローブ比を有するアンテナ装置の設計が容易になる。
【0063】
本発明の一態様に係るアンテナ装置(1A)において、前記給電線路(23ALi)は、(1)前記給電部(23APi)を含み第1の方向(y軸方向)に沿って延伸された給電区間(231ALi)と、(2)当該給電区間(231ALi)の一方の端部(y軸負方向側の端部)から前記第1の方向(y軸方向)に交わる第2の方向(x軸方向)のうち一方の方向(x軸正方向)に沿って延伸された第1の放射区間(232ALi)と、(3)当該給電区間(231ALi)の他方の端部(y軸正方向側の端部)から前記第2の方向(x軸方向)のうち他方の方向(x軸負方向)に沿って延伸された第2の放射区間(233ALi)とを含み、前記第1の放射区間(232ALi)に接続された1又は複数の放射素子(241Ai〜248Ai)、及び、前記第2の放射区間(233ALi)に接続された1又は複数の放射素子(251Ai〜258Ai)は、同一直線(x軸に沿った直線であって給電部23APiを通る直線)上に配置されており、前記給電部(23APi)に対して結合する前記ロットマンレンズ(32A)の前記いずれかの出力ポート(322Ai)の前記端部を含む端部区間(3221Ai)は、前記第1の方向(y軸方向)に沿って延伸されており、当該出力ポート(322Ai)の前記端部区間に連なる区間(3222Ai)は、前記第2の方向(x軸方向)に沿って延伸されている、ことが好ましい。
【0064】
上記の構成によれば、複数の放射素子が同一直線上に配置されていることによって、広帯域かつ広角のビーム走査を可能にする。なお、出力ポートの前記端部区間に連なる区間は、第2の方向に沿って延伸されていればよく、その形状は限定されるものではない。例えば、その形状は、直線であってもよいし、蛇行した曲線であってもよい。
【0065】
本発明の一態様に係るアンテナ装置(1,1A)において、前記複数の放射素子(241i〜248i,251i〜258i,241Ai〜248Ai,251Ai〜258Ai)は、何れも合同である、ことが好ましい。
【0066】
上記の構成によれば、複数の放射素子が何れも合同であることによって、アンテナ装置の設計が容易になる。
【0067】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。