(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態における工作システム1の構成を示す。工作システム1は、工作機械10および情報処理装置40を備えている。工作機械10は、工作機械の内部に搬入された加工対象であるワークに対して切削、研削等の加工を行う装置である。ワークに対して加工を行うと、ワークの一部が分離して切屑が発生し、工作機械の内部に堆積する。工作機械10と情報処理装置40とが一体となって構成されてもよい。
【0015】
(工作システム)
工作機械10は、切削部11、コンベア12、液体放出部13、および撮像部14を備えている。また、図示しないが機械座標取得部15を備えてもよい。切削部11は、後述する主軸24の先端に取り付けられた工具によって、工作機械内に搬入されたワークを加工することができる。切削部11は、研削等、切削以外の加工を行うことできてもよい。コンベア12は、詳細は後述するが、加工によって生じた切屑を回収し、工作機械外または任意の回収部へと連続的に排出(または搬出)することができる。
【0016】
液体放出部13は、例えば、液体を放出することができるノズルと、ノズルを駆動するアクチュエータと、液体を貯留している液体貯留部から液体をくみ上げるポンプと、を備える。ノズルから切屑へと液体を放出することで上述の切屑を加工領域外のコンベア12などに移動させ、最終的には加工領域から切屑を除去(洗浄)することができる。この液体には、加工時に熱を生じるワークおよび加工装置である主軸などを冷却及び潤滑するためのクーラントを用いてもよいし、他の液体を使用してもよい。以下、本明細書では、切屑を移動させるための液体としてクーラントを用いた場合について説明する。液体放出部13は、ノズルの位置、ノズルからのクーラントの放出方向、クーラントの放出圧力などを変更することができる。液体放出部13は、複数のノズルを有する形態が好ましい。1つのノズルの液体放出領域では、工作機械の構成部品で隠れてしまう空間領域ができる。その空間領域に切屑が入り込むとノズルからの液流が十分切屑に作用させることができないため切屑を移動させることが難しいためである。
【0017】
加工時に熱を生じるワークおよび加工装置である主軸などを冷却及び潤滑するためのクーラントは、当該加工がドライ加工でなければ、一般的に加工中は常に放出されている。このような場合、当該クーラントによってコンベア12へと移動する切屑を排出するために、一般的にコンベア12も常に駆動している。
【0018】
撮像部14は、例えば、CCDやCMOSなどの撮像素子を備えたカメラであり、工作機械10内部を撮像することができる。撮像部14は、撮像された画像を後述する情報処理装置40へと出力することができる。工作機械10は、撮像部14の性能、撮像範囲に応じて、撮像部14を工作機械内に複数備えてもよい。本実施形態における工作機械10は、撮像部14が二つ設けられている。この場合においても、一つの撮像部では撮像できない領域を撮像することができるように、もう一つの撮像部を配置することで、工作機械内の加工領域の全体を撮像部で撮像した画像から確認することができる。
【0019】
機械座標取得部15は、工作機械10の構造のうち、詳細は後述するパレット16、テーブル18、主軸24等の移動する部品について、工作機械10内部での当該部品の位置を表す機械座標を取得することができる。取得した機械座標は、情報処理装置40に、特に後述する液体放出制御部59などに送信することができる。当該機械座標は、加工のためにNC制御装置から工作機械10へ送信された位置情報を用いることができる。センサーを用いて取得した位置情報も用いることができる。
【0020】
情報処理装置40は、工作機械10の撮像部14で撮像された撮像画像を処理し、工作機械へと信号を送信する演算部41、撮像部14で撮像された撮像画像を表示する表示部42、演算部41で処理される画像および位置等の情報を必要に応じて記憶する記憶部43並びに演算部41へ入力信号を出力する入力部44を備える。情報処理装置40は、例えば、コンピュータやタブレットなど、画像を受信し表示する機能を備える装置である。
【0021】
表示部42は、例えばコンピュータのディスプレイであり、工作機械10の撮像部14が撮像し情報処理装置40に出力した画像を表示させることができる。また、後述するメッシュ分割部52において作成されたメッシュを組み合わせて表示するなど、撮像画像に関して演算部41で処理された画像を表示させることができる。表示部42は、後述する処理のため、例えば、抵抗膜方式や静電容量方式のディスプレイなど、表示画像に作業者が接触することで画像に基づいて直接指示できる、いわゆるタッチパネルであってもよい。
【0022】
入力部44は、例えばコンピュータの一般的な入力装置であるマウスであり、情報処理装置40において、作業者は位置情報など何らかの指示を入力部44によって入力することができる。タッチパネルの場合、上述のディスプレイの一部である、作業者が触れた位置を検知する機構が入力部44(および後述する検知部57)に相当する。
【0023】
演算部41は、取得部51、メッシュ分割部52、切屑情報生成部53、信号生成部54、コンベア制御部55および送信部56を備える。演算部41および演算部41に含まれる各処理部51〜56は、プログラムを実行することにより所定の機能を実現するCPUまたはMPUのような汎用プロセッサを含む。演算部41および演算部41に含まれる各処理部51〜56は、例えば記憶部43に格納された制御プログラムを呼び出して実行することにより、情報処理装置40における各種の処理を実現する。演算部41および演算部41に含まれる各処理部51〜56は、ハードウェアとソフトウェアの協働により所定の機能を実現するものに限定されず、所定の機能を実現する専用に設計されたハードウェア回路でもよい。すなわち、演算部41および演算部41に含まれる各処理部51〜56は、CPU、MPU、GPU、FPGA、DSP、ASIC等、種々のプロセッサで実現することができる。
【0024】
取得部51は、撮像部14にて撮像された画像を取得し、メッシュ分割部52に出力する。
【0025】
メッシュ分割部52は、撮像部14で撮像された撮像画像の少なくとも一部を複数のメッシュ領域に分割することができる。メッシュ領域は、撮像画像が所定の幾何学的な形状(メッシュ)により、分割された領域である。
図2は、工作機械10の内部を撮像した撮像画像が、正方形のメッシュ領域に分割された図である。このような複数のメッシュ領域で構成された画像をメッシュ画像と称することができる。分割するメッシュの大きさおよび形状は、必要に応じて変更できるように構成されてもよい。なお、本明細書のメッシュ画像は、撮影画像にメッシュの情報を付加し新たな画像を生成したものに限られず、撮影画像とメッシュとを関連付けたものでもよい。つまり、撮影画像とメッシュとを別々のデータとして保存しているものもメッシュ画像という。
【0026】
切屑情報生成部53は、切屑情報は、例えば、切屑の有無、量、形状、切屑が存在しているメッシュ領域、検出した時間(生成時間)など何らかの情報である切屑情報について生成することができる。切屑情報生成部53は、例えば切屑が存在すると作業者によって指示された位置を検知する検知部57を備える。
【0027】
検知部57は、表示部42に表示された画像に応じて作業者が入力部44を操作し、入力部44から出力された位置情報を含む信号を受信する。したがって、撮像部14において撮像された撮像画像に基づいて、作業者が切屑の有無を判断し、切屑が存在する場合に作業者が入力部44によって指示した切屑の堆積位置を検知することができる。所定位置への入力を検知すると、切屑情報として検知信号を信号生成部54へと出力する。検知信号は、少なくとも作業者が指示した所定位置の情報を含む。
【0028】
例えば入力部44が上述したようにマウスであれば、検知部57は、作業者がマウスを使用して指示した位置を検知することができる。また、入力部44と検知部57は一体となって構成されてもよい。この場合、例えば表示部42が上述したようにタッチパネルであれば、入力部44および検知部57は、タッチパネルに作業者が触れた(つまり、入力した)位置を検知することができる。検知部57は、メッシュ分割部52によって作成されたメッシュ領域に基づいた指示位置を、検知してもよい。検知部57は、検知された一つ以上の入力信号をそれぞれ信号生成部54へと出力する。
【0029】
信号生成部54は、詳細は後述するが、複数の指示位置(例えば、第1指示位置と第2指示位置)に対して対象エリアでのクーラントの放出経路を形成し、放出制御信号を生成する。放出制御信号は、当該放出経路に応じてクーラントを放出するように制御する信号である。指示位置が一つであった場合、その位置へクーラントを放出するような放出制御信号を生成してもよいし、当該指示位置に応じて所定のアルゴリズムによってクーラントの放出経路を形成し、放出制御信号を生成してもよい。信号生成部54は、クーラントの放出制御信号を送信部56へと出力する。また、クーラントの放出制御信号をコンベア制御部55へと出力する。
【0030】
コンベア制御部55は、放出制御信号に応じて、コンベアを駆動させるためのコンベア制御信号を生成する。コンベア制御信号は、少なくともコンベアを駆動させるタイミングに関する情報を含む。例えば、コンベアの駆動のオン/オフのタイミング、駆動させる期間などの情報を含んでもよい。また、コンベアの回転速度の変更等、出力に関する信号を含んでもよい。コンベア制御部55は、生成したコンベア制御信号を送信部56へと出力する。
【0031】
送信部56は、液体放出部13にクーラントの放出制御信号を送信する。また、コンベア12にコンベア制御信号を送信する。放出制御信号に応じて、工作機械10の液体放出部13は、当該放出経路の接線方向前側へクーラントを放出するようにノズルを駆動してクーラントを放出する。また、コンベア制御信号に応じて、工作機械10のコンベア12は、駆動される。本実施形態においては、送信部56から放出制御信号およびコンベア制御信号を送信しているが、情報処理装置40は送信部56を備えず、信号生成部54から液体放出部13へ、およびコンベア制御部55からコンベア12へと各信号を直接送信する構成としてもよい。
【0032】
また、信号生成部54がコンベア制御部55の機能を備えてもよい。すなわち、信号生成部54が、クーラントの放出制御信号に応じてコンベア制御信号を生成してもよい。
【0033】
記憶部43は、種々の情報を記録する記録媒体である。記憶部43は、例えば、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAM、ReRAM、FeRAM、SSD(Solid State Device)、ハードディスク、その他の記憶デバイス又はそれらを適宜組み合わせて実現される。記憶部43は、取得部51で取得された撮像画像、メッシュ分割部52で作成されたメッシュ領域(メッシュ画像)、検知部57で検知された所定位置の情報などを格納することができる。また、演算部41の各処理部は、必要に応じて当該記憶部43に記憶された画像および情報を読み込むことができる。本明細書において、各処理部への画像および情報の入力、並びに当該処理部で処理をされた画像および作成された情報の出力はそれぞれ、ある処理部から当該処理部へ直接入力され、当該処理部から別の処理部へ直接出力される構成で記載をしている。しかし、これに限定されず、演算部41の各処理部は、画像処理または信号検知の際に記憶部43から画像および情報を読み込んでもよく、当該処理部にて画像処理をされた画像および作成された情報を記憶部43に記憶してもよい。
【0034】
図3は、工作機械10の内部を撮像した撮像画像の概略図であり、パレット16、カバー17、テーブル18、旋回扉19、側面20、斜面21、プロテクタ22、シュータ23、主軸24およびコンベア12が示されている。本実施形態において、
図3に示す主軸24の長軸25を工作機械10内部の前後方向として、主軸24の根元側と手前側、先端側を奥側とする。また、長軸25に直交する水平方向を左右方向、長軸25に直交する垂直方向を上下方向とする。
【0035】
パレット16は、ワーク26(図示せず)を載せて固定する台である。工作機械10は、複数のパレット16を設けることができる。それにより、加工するワークを変更する際、パレット16を変更することでワークを変更でき、時間の効率化を図ることができる。
【0036】
カバー17は、
図3においてパレット16の左右の側部に位置している部品であり、後述する旋回扉19が回転してパレット16を交換する際、カバー17が例えばパレット16を持ち上げることでテーブル18から分離させる。本実施形態において、カバー17は旋回扉19に固定されている。
【0037】
テーブル18は、パレット16を取り付けることができる部品である。テーブル18は前後方向へ移動することができ、それによりパレット16上に固定されたワークを移動させることができる。また、テーブル18は少なくともテーブル18の一部を水平方向へ回転することができ、それによりパレット16上に固定されたワークを回転させることができる。
【0038】
旋回扉19は、軸27を中心に回転することができる扉である。旋回扉19が回転する際、カバー17がパレット16をテーブル18から分離させて、パレット16およびカバー17と一緒に回転する。それによりワークの加工が終了したパレット16をパレット格納部28(図示せず)へと搬出することができ、また次に加工するワークが固定されたパレット16をパレット格納部28から工作機械内へと搬入することができる。旋回扉の工作機械内側と格納部側の両方にカバー17を取り付け、旋回扉が180度回転することでパレットの搬入と搬出を同時に行ってもよい。
【0039】
側面20は、工作機械10の開閉可能な壁である。側面20は、工作機械10の内部と、外部とを区画しており、側面20を開放すると作業者が工作機械10の内部に入ることができる。また、側面20に対向する位置にある図示しない側面29は、工作機械10の内部と、工具格納部30(図示せず)とを区画している。工具格納部30は、複数の工具を格納しており、加工の際、必要に応じて側面29が開き、主軸24に取り付けられている工具を工具格納部30に格納されている別の工具と交換することができる。
【0040】
シュータ23は、洗浄によって切屑が流れていく場所である。斜面21、プロテクタ22は、旋回扉19および側面20、29の下側に設けられており、シュータ23へと切屑が流れやすいように、それぞれシュータへ向けて下向きに傾斜している。
【0041】
主軸24は、先端に工具を取り付け、その長軸25を中心に回転させることにより、ワークを加工することができる。本実施形態においては、
図3に示すように、主軸24は円柱形の外形を有する。
【0042】
コンベア12は、スクラップコンベアまたはチップコンベアとも称し、シュータ23の下方に配置される。コンベア12として、例えばエプロンコンベアやベルトコンベアを採用することができる。切屑は、放出されたクーラントにより、シュータ23上を上方から下方に移動してコンベア12上に達する。切屑が載置された状態でコンベア12を駆動させることにより、切屑を工作機械10の外部のスクラップボックス等へ搬出することができる。
【0043】
(コンベアの駆動の制御)
作業者の指示に応じたコンベアの駆動の制御方法について説明する。
【0044】
図4Aは、作業者の指示によって洗浄(切屑の除去)を行う構成を備える工作システム1の表示部42の一例を示す。表示部42は、撮像画像やメッシュ画像を表示する画面部70、第1画像選択エリア71、第2画像選択エリア72を備える。各選択エリア71〜72は、作業者が指示することで(例えば、表示部42がタッチパネルの場合、表示部42に触れることで)、検知部57が検知し、洗浄方法や画面部70に表示させる画像を選択することができる領域(選択部)を有する。
【0045】
第1画像選択エリア71は、本実施形態においては二つある撮像部14の一方から見た、液体放出部13の一方による第1クーラントの放出方向を表示する画像を示す。第1画像選択エリア71は、撮像画像選択部73、メッシュ画像選択部74、クーラント放出経路選択部75を有する。作業者が撮像画像選択部73を選択すると、撮像部14で撮像された画像が画面部70に表示される。メッシュ画像選択部74を選択すると、メッシュ分割部52で作成されたメッシュ画像が画面部70に表示される。
【0046】
第2画像選択エリア72は、第1画像選択エリア71の画像とは別の撮像部14から見た、別の液体放出部13による第2クーラントの放出方向を表示する画像を示す。第2画像選択エリア72は、撮像画像選択部76、メッシュ画像選択部77、クーラント放出経路選択部78を有する。選択部76〜78はそれぞれ、第1画像選択エリア71の選択部73〜75と同様に動作する。
【0047】
例えば、画面部70に表示された撮像画像またはメッシュ画像に対して、作業者が(例えば画面部70に触れることで)所定位置を指示することができる。
図4Aは、工作機械10の内部を撮像部14が撮像した撮像画像からメッシュ分割部52が作成したメッシュ画像に対して作業者による位置の指示を反映させたものである。
図4Aの画面部70に数字が記載されているメッシュ領域は、作業者が指示した位置であり、数字は作業者が指示した順に大きくなっている。作業者が指示する位置は、例えばワークを加工して切屑が発生した後に、表示部42に表示された画像を確認して指示してもよいし、経験的に切屑が堆積しやすい場所を指示してもよい。検知部57は、各メッシュ領域の指示位置およびその順序を入力信号として検知し、信号生成部54へと出力する。
【0048】
信号生成部54は、例えば、複数の入力信号に基づいて指示された順番通りに、対象エリアでのクーラントの放出経路を作成することができる。
図4Bは、
図4Aに記載のメッシュ領域に対して本実施形態によるクーラント放出経路作成方法によって作成されたクーラントの放出経路の例を示す。本方法による放出経路は、指示位置として入力されたメッシュ領域を作業者が指示した順番通りに通るように形成される。クーラント放出経路選択部75を選択すると、上記クーラント放出経路が画面部70に表示される。この際、撮像画像に対してクーラント放出経路を表示してもよいし、メッシュ画像に対して表示してもよい。これにより作業者はクーラントの放出経路を確認することができる。放出経路が想定していたものと同じであれば、放出経路の接線方向前側(進行方向側)へクーラントを放出するようにノズルを駆動してクーラントを放出するように制御する放出制御信号を生成し、送信部56へ出力する。放出経路が想定していたものと異なれば、当該放出経路を取り消して再度表示部42に対して位置を指示することができる。また、複数の放出経路を指示するために、続けて表示部42に対して位置を指示できるように構成してもよい。
【0049】
本実施形態において、表示部42は、画面部70、および各選択部73〜78を備えているが、当然、表示部42は、画面部70のみを備え、他の選択部は、機械的なスイッチとして構成されてもよい。
【0050】
また、信号生成部54は、指示された順番とは関係なく、指示位置に基づいてクーラントの放出経路を作成することができるように構成されてもよい。例えば、隣接したメッシュ領域を一群として設定し、当該一群とされた全てのメッシュ領域を通る放出経路を所定のアルゴリズムによって形成する。液体放出部13は、当該放出経路に応じて作成された放出制御信号を受信し、クーラントを放出することができる。
【0051】
本実施形態において、上述しているように、情報処理装置40に係る信号生成部54は、上記したようなクーラント放出の放出制御信号をコンベア制御部55へと出力することができる。これによって、コンベア制御部55は、入力部44への作業者の指示によって作成されたクーラントの放出制御信号に応じたコンベア制御信号を生成し、クーラントが流れている間のみ駆動するように制御できるため、不要時にはコンベア12を停止させるなど、効率的にコンベア12を駆動させることができる。また、コンベア制御部55は、クーラントが流れている間に加えて、さらに所定の時間(例えば数秒〜十数秒程度)、コンベア12を駆動するように制御してもよい。当該所定の時間は、数秒、十数秒または数十秒程度が想定されるが、工作機械によって適切な設定時間は変動する。これによって、クーラント放出の終了後、切屑がクーラントによってコンベア12へと移動するまで、またはコンベア12へと移動した切屑をコンベア12が収集部等の所定の位置へ排出するまで、コンベア12を駆動させることができる。このようにして、クーラントの放出と、コンベアの駆動とを連動させることができる。
【0052】
以上が、第1の実施形態に係る工作システム1の説明である。
【0053】
(第2の実施形態)
次に、メッシュ領域から自動的に切屑を認識することで、当該切屑を移動させるためにクーラントを放出し、それによってコンベアを駆動させる、第2の実施形態について説明する。
【0054】
図5は、本実施形態における工作システム1の構成を示す。本工作システム1は、上述した第1の実施形態に対して、切屑情報生成部53がさらに切屑認識部58を備え、演算部41が信号生成部54の代わりに液体放出制御部59を備える点が異なる。
【0055】
切屑認識部58は、詳細は後述するが、メッシュ分割部52において撮像画像から作成された各メッシュ領域に対して自動的に切屑を認識し、当該メッシュ領域において切屑が存在しているか否かと、存在している切屑の量との少なくとも一方について判定を行う。切屑認識部58は、メッシュ領域に切屑があると判定した場合、メッシュ画像におけるメッシュ領域に対応する撮像画像上の位置を切屑の堆積位置として認識する。切屑の堆積位置を認識すると、認識信号として自動検知信号を液体放出制御部59に出力する。自動検知信号は、撮像画像において切屑が堆積していると認識された所定位置に関する情報に関する情報を少なくとも含む。
【0056】
また、本実施形態において、検知部57は、所定位置への入力を検知すると、信号生成部54の代わりに液体放出制御部59へと、入力信号の代わりに検知信号として出力する。
【0057】
液体放出制御部59は、自動検知信号または検知信号に応じて、クーラントを放出する位置を設定する。切屑認識部58から出力された自動検知信号に応じて、または検知部57から出力された検知信号に応じて、撮像画像における所定位置を取得し、工作機械内部で切屑が堆積している関連領域を取得する。液体放出制御部59は、関連領域に応じて所定のクーラント放出経路を設定する。そして、液体放出制御部59は、少なくとも当該関連領域にクーラントを放出するための情報を含む放出制御信号を送信部56へと出力する。したがって、自動検知信号または検知信号に応じて液体放出部13を制御することができるため、所定位置を認識することで、液体放出部13を制御することにより、クーラントを放出させて、切屑を移動させることができる。
【0058】
本実施形態において、送信部56が液体放出部13に送信するクーラントの放出制御信号は、切屑がある指示された所定位置に関連する関連領域に対して、切屑を移動させるためのクーラントを放出するための信号であり、放出経路および放出時間等の情報を含む。放出制御信号に応じて、工作機械10の液体放出部13のノズルは、当該関連領域へ所定の洗浄方法でクーラントを放出する。
【0059】
例えば、
図3には、切屑を移動させるためにクーラントを放出する経路の一例が示してある。
図3に示す画像は、パレット16、カバー17、旋回扉19について切屑がある場合のクーラント放出経路を示している。
【0060】
まず、パレット16、カバー17に切屑がある場合について説明する。本実施形態では、パレット16は前後方向に移動するため、パレット16が奥側にある場合、パレット16、カバー17、および旋回扉19とカバー17との境目を一群として洗浄する。切屑を移動させると下に流れるため、上方にあるパレット16、カバー17、境目の順に洗浄する。例えば、パレット16の洗浄は、矢印Aで示すようにクーラントを奥側から手前側へ向かってジグザグにまたは往復するようにパレット16に当たるように放出する。それによってパレット上の切屑を全体的に移動させることができる。
図3においてパレット16には何も載っていないが、ワークが載っている状態でクーラントを放出してもよい。このようにパレット上にクーラントをジグザグにまたは往復するように当たるように放出することでワークが搭載されていたとしても、ワークを含めてパレット16上を全体的に洗浄することができる。このようにして、切屑に対して正確な位置が指示されていなかったとしても、各領域の一端から他端へジグザグにまたは往復するように移動するようにクーラントを放出することで、当該領域全域の切屑を効率的に除去することができる。
【0061】
カバー17の洗浄は、矢印Bで示すように奥側から手前側へと直線状にクーラントを放出する。それによって、シュータ23へと切屑を流す。
【0062】
旋回扉19とカバー17との境目の洗浄は、矢印Cで示すように境目に沿って横方向に直線状にクーラントを放出する。それによって、シュータ23へと切屑を流す。
【0063】
旋回扉19に付着した切屑の除去について説明する。旋回扉19は、略垂直に構成されているため、切屑の付着量は少なく、クーラントを当てると重力にしたがってそのまま下方へ流れる。そのため、円Dで示すように切屑があると認識された関連領域へと直接クーラントを放出する。側面20も旋回扉19と同様である。シュータ23は、切屑が多少堆積したとしても加工不良等へ影響を及ぼす場所ではなく、また、他の関連領域へ放出したクーラントが流れ込み、それによって切屑が移動するため、旋回扉19と同様に放出する。切屑がこのようにして、切屑が除去しやすい場所にある場合、ピンポイントにクーラントを放出することで効率的に除去することができる。
【0064】
上記経路は、一例であり、構造に応じて任意の形状を設定することができる。このように切屑が堆積していると認識した位置に応じて、液体放出制御部59は、当該位置に対応した関連領域ごとに適したクーラント放出経路を作成することができる。
【0065】
また、本実施形態において記憶部43はさらに、切屑認識部58で切屑が存在していると認識された所定位置の情報および切屑の量に関する情報、検知部57で検知した、切屑が存在していると作業者によって指示された所定位置の情報、所定位置と関連領域との関連に関する情報なども格納することができる。
【0066】
(コンベアの駆動の制御)
自動的な切屑の認識に応じたコンベアの駆動の制御方法について説明する。
【0067】
まず、撮像画像を用いて自動的に切屑を認識する方法について説明する。
図6は、切屑を自動的に認識する切屑認識部58の構成の概略図である。
図6に示すように、切屑認識部58は、算出部60および判定部61を備える。また、演算部41は、モデル学習部62を備え、記憶部43は、モデル記憶部63を備える。
【0068】
モデル学習部62は、学習モデルを作成する。学習モデルは、入力としてメッシュ分割部52で作成されたメッシュ領域の一つを入力すると、当該メッシュ領域内の切屑に関する、所定の項目の内どれに該当するか、その確率を算出して出力することができるモデルである。学習モデルは例えば、対となる入力データと出力データを教師データとしてあらかじめ、CNN(畳み込みニューラルネットワーク)に入力して学習させることで作成することができる。一般的なCNNは、畳み込み層、プーリング層によって画像の特徴を抽出し、当該特徴をニューラルネットワークへと入力し処理を行う学習手法であり、画像の特徴抽出によく利用される。なお、なお、例えばSVM(Support Vector Machine)を用いるなど、CNN以外の学習手法を用いて学習モデルを作成してもよい。本実施形態においては、入力データにメッシュ領域を、出力データにメッシュ領域における切屑の有無および量に関する情報を用いることができる。本実施形態において、出力データは、後述するように3項目のいずれに該当するかに関する情報を使用している。より多くの教師データを入力し、より多くのメッシュ領域(つまり、より様々なメッシュ領域)に関する切屑の有無および量を学習させることで、当該学習モデルによる切屑認識の精度を向上させることができる。
【0069】
モデル記憶部63は、切屑の有無を自動的に判定する学習モデルを記憶する。学習モデルは、必要に応じて算出部60に読み込まれる。本実施形態においては、切屑認識部58がモデル学習部62を備え、記憶部43がモデル記憶部63を備えるが、情報処理装置40とは別の装置にて学習モデルを作成し、記憶部43に学習モデルを記憶させて必要に応じて当該学習モデルを読み込む方式でもよい。情報処理装置40とは別の外部の記憶装置に学習モデルを記憶し、必要に応じて学習モデルを読み込む方式でもよい。
【0070】
算出部60は、メッシュ領域内の切屑に関する、あらかじめ定められた項目に該当する確率である検出判定確率を算出する。本実施形態において、算出部60は具体的には、モデル学習部62で学習した学習モデルを用いて、入力データとして入力されたメッシュ領域が「切屑が多い(クラス2)」、「切屑が少ない(クラス1)」、「切屑がない(クラス0)」という3項目のいずれに該当するかに関する確率を算出する。また、項目をさらに細分化してもよいし、単純に切屑が存在する確率を算出してもよい。本実施形態において、上述したようにクラス0〜2の3項目に分類する場合について記載する。
【0071】
判定部61は、入力されたメッシュ領域に関して算出部60が算出した検出判定確率から、当該メッシュ領域において切屑がクラス0〜2のいずれに該当するかを判定する。判定部61は、メッシュ領域内に存在する切屑に関して算出部60から算出した検出判定確率から、どのように判定するかを設定することができる。例えば、算出部60が算出したクラス0〜2の確率のうち、一番高い項目に該当すると判定してもよい。また、「クラス2」が25%、「クラス1」が35%、「クラス0」が40%と算出された場合のように、「切屑がある(クラス2+クラス1)」の確率が「切屑がない(クラス0)」の確率よりも高いときに、「クラス1」(または「クラス2」)に該当すると判定してもよい。判定部61は、メッシュ領域に切屑があると判定(つまり、クラス2またはクラス1であると判定)した場合、メッシュ画像における当該メッシュ領域の位置に対応した撮像画像上の位置情報を少なくとも有する自動検知信号を、上述したように液体放出制御部59へと出力する。自動検知信号は、切屑の量に関する情報を含んでもよい。
【0072】
このようにして、工作システム1は、ワークの加工中、または加工終了後、撮像部14で撮像された撮像画像に基づいて自動的に切屑を認識し、クーラントを放出する自動洗浄を行うことができる。当該自動洗浄は、定期的に行われてもよく、また、例えば作業者による指示など何らかの指示を与えることで実行されてもよい。
【0073】
自動洗浄によって切屑の多くは除去することができるが、切屑認識部は必ずしも全ての切屑を認識できるわけではない。切屑認識部58によって切屑を認識できない場合、当該切屑は工作機械内に残り続ける可能性があり、切屑が残り続けると加工不良や動作不良の原因となり得る。また、切屑が除去されずに残り続けて切屑の量が多くなると、クーラントでは切屑を移動させることができなくなり、作業者が内部に入り、切屑を除去する必要が生じる。そこで、本工作システム1は、作業者がクーラントの放出位置を指示して、自動洗浄では除去されない切屑も移動させる指示洗浄を行う構成を備えている。すなわち、作業者が表示部42を確認し、入力部によって切屑の位置を指示し、検知部57が切屑を認識し、クーラントを放出する洗浄を行うことができるように構成されている。
【0074】
上述したように、作業者は表示部42に表示された画像を見て、切屑の有無を判断することができる。切屑が存在していると判断した場合、所定の入力方法で画像内の位置を指示することができる。検知部57は、当該位置を切屑が堆積している所定位置への入力として検知し、少なくともこの所定位置の情報を含む検知信号を、液体放出制御部59へと出力する。これにより、上記した切屑認識部58によって自動的に認識されていない切屑であっても除去することができる。つまり、本工作システム1の情報処理装置40は、切屑を移動させたい画像内の所定位置に対する入力を検知することで、当該所定位置に対応した工作機械の内部の関連領域に、
図3の矢印A〜Cおよび円Dで示すような放出経路で液体を放出することができ、切屑を効率的に除去することができる。
【0075】
このようにして、作業者は表示部42に表示された画像に基づいて、切屑の除去を指示することができる。その結果、たとえ作業者が工作機械10から離れた場所にいたとしても、作業者は情報処理装置40が近くにあれば、情報処理装置40によって工作機械10の内部の状態を確認し、必要に応じて洗浄の指示をすることができる。
【0076】
第1の実施形態と同じように本実施形態に係る工作システム1の液体放出制御部59は、コンベア制御部55へと放出制御信号を出力する。第1の実施形態において記載しているように、コンベア制御部55は、放出制御信号に応じて、コンベアを駆動させるためのコンベア制御信号を生成し、送信部56へ出力する。また、送信部56は、コンベア12にコンベア制御信号を送信する。これにより、本実施形態における工作システム1は、加工中でなかったとしても、自動的に検出した切屑位置、または指示した切屑位置に対するクーラント放出に応じて、コンベア12を制御することができ、効率的にコンベア12を駆動させることができる。
【0077】
本実施形態において、情報処理装置40に係る切屑情報生成部53は、液体放出制御部59に加えて、コンベア制御部55にも切屑情報に関する信号を出力することができるように構成されてもよい(図示せず)。切屑認識部58は、自動検出信号を切屑情報として出力してもよいし、別の信号を作成して出力してもよい。切屑認識部58が出力する切屑情報には、切屑が検出されたメッシュ領域における切屑の量に関する情報が少なくとも含まれる。検知部57は、検出信号を出力してもよいし、別の信号を作成して出力してもよい。切屑情報によって、コンベア制御部は、切屑情報に応じてコンベア制御信号を生成することができる。このように構成する場合、検知部57に対する作業者の入力部での入力に、切屑の量に関する何らかの入力手段が備えられていることが望ましい。
【0078】
本実施形態に係る情報処理装置40は、記憶部43に備えられた切屑情報記憶部64に、自動検知信号および検知信号等による切屑情報を記憶することができるように構成されてもよい。
【0079】
そしてコンベア制御部は、切屑情報から切屑の有無に関する情報を用いてコンベア制御信号を生成することができる。例えば、加工が終了若しくは一時的に停止している場合、または任意のタイミングで撮像部が撮像した後、時間的に次のタイミングでの撮像までの間に加工が行われていない場合など切屑が発生しない状態で、同一のメッシュ領域において、あるタイミング(第1の時間)で生成された、切屑情報記憶部64に記憶されている切屑情報での切屑の量と、時間的に次のタイミング(第2の時間)で生成された切屑情報の切屑の量との差分を取得することで、当該メッシュ領域において移動した切屑の量を推定することができる。上記した切屑の量の推定を少なくとも一部のメッシュ領域について行い、各メッシュ領域での推定量の合計量によってコンベアへと移動した切屑の量を推定することができる。このように差分を取得して、コンベアと移動したと推定される切屑の量を推定することで、当該切屑量に応じて、コンベアを移動させるかどうか、コンベアの速度を変更させるかどうか、また、どの程度の時間コンベアを移動させるか決定するように設定することもできる。仮に、コンベアを最大速度で稼働させても排出が困難な量の切屑量を検出した場合には、多量の切り屑が一度にコンベアに達しないように、クーラントの放出を制御することもできる。
【0080】
以上が第2の実施形態に係る工作システム1の説明である。第1の実施形態と第2の実施形態は、それらを組み合わせた一つの工作システムとして動作させることができる。例えば、
図4Aに示した表示部42にモード選択エリア79を設け、モード選択エリア79が自動洗浄モード選択部80および指示洗浄モード選択部81を有するように構成してもよい。このような構成において選択部80または81を選択することで第1の実施形態に係るクーラント放出または第2の実施形態に係るクーラント放出に応じたコンベアの駆動を行うことができる。
【0081】
上記のように、本開示に係る工作システムによれば、ワークを加工していない場合、ドライ加工である場合など、コンベアが停止している可能性があるときでも、必要に応じてコンベアを動作させることができる。このため、常にコンベアを動作させておく必要が無く、コンベアを効率的に駆動させることができる。
【0082】
(第3の実施形態)
第1の実施形態と第2の実施形態では、ワークを切削する過程で発生する切屑を工作機械から排除する例の説明をしたが、この形態に限られない。
【0083】
金属粉末を噴霧し、レーザを金属粉末に照射してワークに金属を付加する工作機械の1つの付加加工機でも用いることができる。ワークの加工過程において、金属粉末を噴霧したりするが、ワークに積層できなかった金属粉末が加工室内に堆積する。金属粉末が加工室内にテーブルや金属粉末噴霧ノズルの駆動部に入り込み、駆動に影響がでる可能性がある。そのため、このような金属粉末の屑を撮像部であるカメラで撮影し、撮影された画像から金属粉末の屑に関する屑情報を屑情報生成部で生成する。生成された屑情報で、金属粉末の屑が多いと判断されれば、加工室の下方を開放し屑を下方にあるコンベアに向けて落下させる。金属粉末の屑がコンベアの上に移動した後に、コンベアを駆動して金属粉末を移動させ、付加加工機の外に排出する。
【0084】
本実施形態では、画像から屑情報を生成し、屑情報をもとに、コンベア制御部は、コンベアの駆動の信号を生成し、コンベアに送信する。その際に、コンベア制御部は、加工機の下方を開放する制御信号を合わせて生成し、付加加工機の数値制御装置に送信し、下方ドアを開放させるようにしている。
【0085】
他の処理や構成などは第1の実施形態や第2の実施形態に開示した技術を適用できる。
【0086】
本開示に係る情報処理装置および工作機械は、ハードウェア資源、例えば、プロセッサ、メモリ、およびプログラムとの協働などによって、実現される。本開示は、例示された実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。
【解決手段】ワークの加工過程から発生する屑を排出するコンベア12と、撮像部14とを備える工作機械10におけるコンベアを制御するための情報処理装置40は、コンベアを制御するコンベア制御部55と、撮像部で撮像された画像から屑に関する屑情報を生成する屑情報生成部53と、を備え、コンベア制御部は、屑情報に基づいて、コンベアの制御信号を生成する。