特許第6788807号(P6788807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6788807樹脂組成物、プリプレグ、金属箔張積層板、樹脂シート、及びプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6788807
(24)【登録日】2020年11月5日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】樹脂組成物、プリプレグ、金属箔張積層板、樹脂シート、及びプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/40 20060101AFI20201116BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20201116BHJP
   C08K 5/315 20060101ALI20201116BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20201116BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20201116BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   C08G59/40
   C08L63/00
   C08K5/315
   C08J5/24CFC
   B32B15/08 J
   H05K1/03 610L
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-515505(P2017-515505)
(86)(22)【出願日】2016年4月20日
(86)【国際出願番号】JP2016062569
(87)【国際公開番号】WO2016175106
(87)【国際公開日】20161103
【審査請求日】2019年2月25日
(31)【優先権主張番号】特願2015-91041(P2015-91041)
(32)【優先日】2015年4月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 宇志
(72)【発明者】
【氏名】高野 健太郎
【審査官】 今井 督
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/065694(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/203866(WO,A1)
【文献】 特開平05−271442(JP,A)
【文献】 特開2006−229038(JP,A)
【文献】 特開2007−227567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00− 59/72
C08L 63/00− 63/10
C08K 3/00− 13/08
C08J 5/00− 5/24
B32B 15/00− 15/20
B32B 27/00− 27/42
H05K 1/00− 1/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(2)で表されるナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物(A)及び下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(B)を含有し、
前記一般式(2)で表されるナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物(A)の含有量が、前記樹脂組成物中の樹脂固形分の総量(100質量部)に対して、40〜60質量部であり、
前記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(B)の含有量が、前記樹脂組成物中の樹脂固形分の総量(100質量部)に対して、40〜60質量部である、樹脂組成物。
【化1】
(式中、m及びnは、各々独立に1以上の整数を示す。前記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(B)は、m及びnが、各々独立に異なる整数を示す化合物の混合物であってもよい。)
【化2】
(式(2)中、Ar1は、ナフチレン基を示し、Raは、水素原子を示し、Xは、メチレン基を示す。pは、1〜3の整数である。qは、6−pの整数である。tは、平均繰り返し数を示し、1〜50の整数である。)。
【請求項2】
充填材(C)をさらに含有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(B)以外のエポキシ樹脂、マレイミド化合物、フェノール樹脂、オキセタン樹脂、ベンゾオキサジン化合物、及び重合可能な不飽和基を有する化合物からなる群より選択される1種又は2種以上を、さらに含有する、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記充填材(C)の含有量が、前記樹脂組成物中の樹脂固形分の総量(100質量部)に対して、50〜1600質量部である、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
基材と、該基材に含浸又は塗布された、請求項1〜のいずれか一項に記載の樹脂組成物と、を有する、プリプレグ。
【請求項6】
1枚の又は2枚以上を積層した、請求項に記載のプリプレグと、該プリプレグの片面又は両面に積層成形された金属箔と、を有する、金属箔張積層板。
【請求項7】
シート基材と、該シート基材の片面又は両面に塗工及び乾燥された、請求項1〜のいずれか一項に記載の樹脂組成物と、を有する、樹脂シート。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む絶縁層と、該絶縁層の片面又は両面に形成された導体層と、を有する、プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、プリプレグ、金属箔張積層板、樹脂シート、及びプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器や通信機、パーソナルコンピューター等に広く用いられている半導体の高集積化及び微細化はますます加速している。これに伴い、プリント配線板に用いられる半導体パッケージ用積層板に求められる諸特性はますます厳しいものとなっている。求められる特性としては、例えば、低吸水性、吸湿耐熱性、難燃性、低誘電率、低誘電正接、低熱膨張率、耐熱性、耐薬品性、高めっきピール強度等の特性が挙げられる。しかし、これまでのところ、これらの要求特性は、必ずしも満足されてきたわけではない。
【0003】
従来から、耐熱性や電気特性に優れるプリント配線板用樹脂として、シアン酸エステル化合物が知られており、その中でもシアン酸エステル化合物にエポキシ樹脂等を併用した樹脂組成物が、近年半導体プラスチックパッケージ用等の高機能のプリント配線板用材料などに幅広く使用されている。また、多層プリント配線板の小型化、高密度化により、多層プリント配線板においては、ビルドアップ層が複層化され、配線の微細化及び高密度化が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2013/065694号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2014/203866号パンフレット
【特許文献3】特許第5413522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、密着性、低吸水性、吸湿耐熱性、絶縁信頼性等の特性に優れるシアン酸エステル化合物とエポキシ樹脂からなる樹脂組成物が提案(例えば特許文献1、2参照)されているが、めっきピール強度については未だ不十分であるため、さらなるめっきピール強度の向上が求められている。
【0006】
また、銅箔のピール強度及びめっきピール強度を向上させる方法としては、充填材を表面処理する方法が提案されている(特許文献3参照)が、めっきピール強度については未だ不十分であるため、さらなるめっきピール強度の向上が求められている。
【0007】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、耐熱性に優れ、かつめっき密着性にも優れる硬化物が得られ、めっきピール強度に優れるプリント配線板を実現し得る樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、シアン酸エステル化合物(A)及び所定の構造を有するエポキシ樹脂(B)を含有する樹脂組成物を使用することにより、耐熱性に優れ、かつめっき密着性にも優れる硬化物が得られ、高いめっきピール強度を有するプリント配線板が得られることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0009】
[1]
シアン酸エステル化合物(A)及び下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(B)を含有する、樹脂組成物。
【化1】
(式中、m及びnは、各々独立に1以上の整数を示す。前記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(B)は、m及びnが、各々独立に異なる整数を示す化合物の混合物であってもよい。)
[2]
前記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(B)の含有量が、前記樹脂組成物中の樹脂固形分の総量(100質量部)に対して、1〜90質量部である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]
充填材(C)をさらに含有する、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4]
前記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(B)以外のエポキシ樹脂、マレイミド化合物、フェノール樹脂、オキセタン樹脂、ベンゾオキサジン化合物、及び重合可能な不飽和基を有する化合物からなる群より選択される1種又は2種以上を、さらに含有する、[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5]
前記充填材(C)の含有量が、前記樹脂組成物中の樹脂固形分の総量(100質量部)に対して、50〜1600質量部である、[3]又は[4]に記載の樹脂組成物。
[6]
基材と、該基材に含浸又は塗布された、[1]〜[5]のいずれかに記載の樹脂組成物と、を有する、プリプレグ。
[7]
1枚の又は2枚以上を積層した、[6]に記載のプリプレグと、該プリプレグの片面又は両面に積層成形された金属箔と、を有する、金属箔張積層板。
[8]
シート基材と、該シート基材の片面又は両面に塗工及び乾燥された、[1]〜[5]のいずれかに記載の樹脂組成物と、を有する、樹脂シート。
[9]
[1]〜[5]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む絶縁層と、該絶縁層の片面又は両面に形成された導体層と、を有する、プリント配線板。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る樹脂組成物によれば、耐熱性に優れ、かつめっき密着性にも優れる硬化物が得られ、めっきピール強度に優れる、高性能なプリント配線板を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の実施の形態に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0012】
<樹脂組成物>
本実施形態の樹脂組成物は、シアン酸エステル化合物(A)及び下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(B)(以下、単に「エポキシ樹脂(B)」ともいう。)を含有する。
【化2】
式中、m及びnは、各々独立に1以上の整数を示す。一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(B)は、m及びnが、各々独立に異なる整数を示す化合物の混合物であってもよい。本実施形態の樹脂組成物によれば、めっきピール強度に優れる、高性能なプリント配線板を実現することができる。この要因は、次のように推察される(ただし、要因はこれに限定されない。)。本実施形態の樹脂組成物は、主として、一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(B)を含有することにより、エポキシ樹脂(B)の粘度が比較的低く、樹脂組成物を成形する際に、基材や支持体等の対象に対して生じる空間の大きさが小さいことに起因して、優れためっきピール強度を得ることができる。また、主としてシアン酸エステル化合物(A)を含有することにより、高いガラス転移温度が高いことに起因して、耐熱性に優れ、かつめっき密着性にも優れる硬化物を得ることができる。
【0013】
<シアン酸エステル化合物(A)>
本実施形態のシアン酸エステル化合物(A)は、シアナト基(シアン酸エステル基)が少なくとも1個置換された芳香族部分を分子内に有する樹脂であれば特に限定されない。本実施形態のシアン酸エステル化合物(A)を含有することにより、耐熱性に優れたプリント配線板を実現する樹脂組成物を得ることができる。この要因は、シアン酸エステル化合物(A)を含有することにより、樹脂組成物全体のガラス転移温度が高くなることに起因して、耐熱性により優れたプリント配線板が得られると推察される(ただし、要因はこれに限定されない。)。
【0014】
シアン酸エステル化合物(A)としては、例えば、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。なお、シアン酸エステル化合物(A)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【化3】
式中、Arは、各々独立に、置換基を有してもよいフェニレン基、置換基を有してもよいナフチレン基又は置換基を有してもよいビフェニレン基を示す。Raは各々独立に水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数1〜4のアルコキシル基、炭素数1〜6のアルキル基と炭素数6〜12のアリール基とが結合した置換基を有してもよいアラルキル基又は炭素数1〜6のアルキル基と炭素数6〜12のアリール基とが結合した置換基を有してもよいアルキルアリール基のいずれか一種から選択される。pはArに結合するシアナト基の数を示し、1〜3の整数である。qはArに結合するRaの数を示し、Arがフェニレン基の時は4−p、ナフチレン基の時は6−p、ビフェニレン基の時は8−pである。tは平均繰り返し数を示し、0〜50の整数であり、tが異なる化合物の混合物であってもよい。Xは、各々独立に、単結合、炭素数1〜50の2価の有機基(水素原子がヘテロ原子に置換されていてもよい)、窒素数1〜10の2価の有機基(−N−R−N−など)、カルボニル基(−CO−)、カルボキシ基(−C(=O)O−)、カルボニルジオキサイド基(−OC(=O)O−)、スルホニル基(−SO−)、或いは、2価の硫黄原子又は2価の酸素原子のいずれか一種から選択される。
【0015】
一般式(2)のRaが示すアルキル基は、鎖状構造及び環状構造(シクロアルキル基等)のどちらを有していてもよい。また、一般式(2)のRaにおけるアルキル基及びアリール基中の水素原子は、フッ素、塩素等のハロゲン原子、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシル基、シアノ基等で置換されていてもよい。
【0016】
一般式(2)のRaにおけるアルキル基の具体例としては、特に限定されないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、1−エチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、及びトリフルオロメチル基が挙げられる。
【0017】
一般式(2)のRaにおけるアリール基の具体例としては、特に限定されないが、フェニル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基、フェノキシフェニル基、エチルフェニル基、o−,m−又はp−フルオロフェニル基、ジクロロフェニル基、ジシアノフェニル基、トリフルオロフェニル基、メトキシフェニル基、及びo−,m−又はp−トリル基が挙げられる。
【0018】
一般式(2)のRaにおけるアルコキシル基の具体例としては、特に限定されないが、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、及びtert−ブトキシ基が挙げられる。
【0019】
一般式(2)のXが示す2価の有機基の具体例としては、特に限定されないが、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、トリメチルシクロヘキシレン基、ビフェニルイルメチレン基、ジメチルメチレン−フェニレン−ジメチルメチレン基、フルオレンジイル基、及びフタリドジイル基が挙げられる。Xで示される2価の有機基中の水素原子は、フッ素、塩素等のハロゲン原子、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシル基、シアノ基等で置換されていてもよい。
【0020】
一般式(2)のXにおける窒素数1〜10の2価の有機基としては、特に限定されないが、イミノ基、及びポリイミド基が挙げられる。
【0021】
また、一般式(2)中のXとしては、下記一般式(3)又は下記一般式(4)で表される構造を有する基が挙げられる。
【化4】
式中、Arは、各々独立に、フェニレン基、ナフチレン基及びビフェニレン基のいずれか一種から選択される。を表す。Rb、Rc、Rf、Rgは各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、トリフルオロメチル基及びフェノール性ヒドロキシ基が少なくとも1個置換されたアリール基のいずれか一種から選択される。Rd、Reは各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜4のアルコキシル基及びヒドロキシ基のいずれか一種から選択される。uは0〜5の整数を示すが、uが異なる化合物の混合物であってもよい。
【化5】
式中、Arは、各々独立に、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニレン基のいずれか一種から選択される。Ri、Rjは各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、ベンジル基、炭素数1〜4のアルコキシル基、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基及びシアナト基が少なくとも1個置換されたアリール基のいずれか一種から選択される。vは0〜5の整数を示すが、vが異なる化合物の混合物であってもよい。
【0022】
さらに、一般式(2)中のXとしては、下記式で表される2価の基が挙げられる。
【化6】
式中、zは4〜7の整数を示す。Rkは各々独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。
【0023】
一般式(3)のAr及び一般式(4)のArの具体例としては、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、4,4’−ビフェニレン基、2,4’−ビフェニレン基、2,2’−ビフェニレン基、2,3’−ビフェニレン基、3,3’−ビフェニレン基、3,4’−ビフェニレン基、2,6−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、1,6−ナフチレン基、1,8−ナフチレン基、1,3−ナフチレン基、及び1,4−ナフチレン基が挙げられる。
【0024】
一般式(3)のRb〜Rf及び一般式(4)のRi、Rjにおけるアルキル基及びアリール基は一般式(2)で記載したものと同様である。
【0025】
一般式(2)で表されるシアナト置換芳香族化合物の具体例としては、シアナトベンゼン、1−シアナト−2−,1−シアナト−3−,又は1−シアナト−4−メチルベンゼン、1−シアナト−2−,1−シアナト−3−,又は1−シアナト−4−メトキシベンゼン、1−シアナト−2,3−,1−シアナト−2,4−,1−シアナト−2,5−,1−シアナト−2,6−,1−シアナト−3,4−又は1−シアナト−3,5−ジメチルベンゼン、シアナトエチルベンゼン、シアナトブチルベンゼン、シアナトオクチルベンゼン、シアナトノニルベンゼン、2−(4−シアナフェニル)−2−フェニルプロパン(4−α−クミルフェノールのシアネート)、1−シアナト−4−シクロヘキシルベンゼン、1−シアナト−4−ビニルベンゼン、1−シアナト−2−又は1−シアナト−3−クロロベンゼン、1−シアナト−2,6−ジクロロベンゼン、1−シアナト−2−メチル−3−クロロベンゼン、シアナトニトロベンゼン、1−シアナト−4−ニトロ−2−エチルベンゼン、1−シアナト−2−メトキシ−4−アリルベンゼン(オイゲノールのシアネート)、メチル(4−シアナトフェニル)スルフィド、1−シアナト−3−トリフルオロメチルベンゼン、4−シアナトビフェニル、1−シアナト−2−又は1−シアナト−4−アセチルベンゼン、4−シアナトベンズアルデヒド、4−シアナト安息香酸メチルエステル、4−シアナト安息香酸フェニルエステル、1−シアナト−4−アセトアミノベンゼン、4−シアナトベンゾフェノン、1−シアナト−2,6−ジ−tert−ブチルベンゼン、1,2−ジシアナトベンゼン、1,3−ジシアナトベンゼン、1,4−ジシアナトベンゼン、1,4−ジシアナト−2−tert−ブチルベンゼン、1,4−ジシアナト−2,4−ジメチルベンゼン、1,4−ジシアナト−2,3,4−ジメチルベンゼン、1,3−ジシアナト−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3−ジシアナト−5−メチルベンゼン、1−シアナト又は2−シアナトナフタレン、1−シアナト4−メトキシナフタレン、2−シアナト−6−メチルナフタレン、2−シアナト−7−メトキシナフタレン、2,2’−ジシアナト−1,1’−ビナフチル、1,3−,1,4−,1,5−,1,6−,1,7−,2,3−,2,6−又は2,7−ジシアナトシナフタレン、2,2’−又は4,4’−ジシアナトビフェニル、4,4’−ジシアナトオクタフルオロビフェニル、2,4’−又は4,4’−ジシアナトジフェニルメタン、ビス(4−シアナト−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)エタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−シアナト−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(2−シアナト−5−ビフェニルイル)プロパン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−シアナト−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)イソブタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−2,2−ジメチルプロパン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−3,3−ジメチルブタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)ヘキサン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)ヘプタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)オクタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2−メチルペンタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2−メチルヘキサン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2,2−ジメチルペンタン、4,4−ビス(4−シアナトフェニル)−3−メチルヘプタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2−メチルヘプタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2,2−ジメチルヘキサン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2,4−ジメチルヘキサン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2,2,4−トリメチルペンタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−シアナトフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−シアナトフェニル)ビフェニルメタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−シアナト−3−イソプロピルフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−シアナトフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−シアナトフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−シアナトフェニル)−2,2−ジクロロエチレン、1,3−ビス[2−(4−シアナトフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、1,4−ビス[2−(4−シアナトフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4−[ビス(4−シアナトフェニル)メチル]ビフェニル、4,4−ジシアナトベンゾフェノン、1,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2−プロペン−1−オン、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、ビス(4−シアナトフェニル)スルフィド、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、4−シアナト安息香酸−4−シアナトフェニルエステル(4−シアナトフェニル−4−シアナトベンゾエート)、ビス−(4−シアナトフェニル)カーボネート、1,3−ビス(4−シアナトフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(4−シアナトフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)イソベンゾフラン−1(3H)−オン(フェノールフタレインのシアネート)、3,3−ビス(4−シアナト−3−メチルフェニル)イソベンゾフラン−1(3H)−オン(o−クレゾールフタレインのシアネート)、9,9’−ビス(4−シアナトフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−シアナト−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2−シアナト−5−ビフェニルイル)フルオレン、トリス(4−シアナトフェニル)メタン、1,1,1−トリス(4−シアナトフェニル)エタン、1,1,3−トリス(4−シアナトフェニル)プロパン、α,α,α’−トリス(4−シアナトフェニル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼン、1,1,2,2−テトラキス(4−シアナトフェニル)エタン、テトラキス(4−シアナトフェニル)メタン、2,4,6−トリス(N−メチル−4−シアナトアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(N−メチル−4−シアナトアニリノ)−6−(N−メチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ビス(N−4−シアナト−2−メチルフェニル)−4,4’−オキシジフタルイミド、ビス(N−3−シアナト−4−メチルフェニル)−4,4’−オキシジフタルイミド、ビス(N−4−シアナトフェニル)−4,4’−オキシジフタルイミド、ビス(N−4−シアナト−2−メチルフェニル)−4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタルイミド、トリス(3,5−ジメチル−4−シアナトベンジル)イソシアヌレート、2−フェニル−3,3−ビス(4−シアナトフェニル)フタルイミジン、2−(4−メチルフェニル)−3,3−ビス(4−シアナトフェニル)フタルイミジン、2−フェニル−3,3−ビス(4−シアナト−3−メチルフェニル)フタルイミジン、1−メチル−3,3−ビス(4−シアナトフェニル)インドリン−2−オン、2−フェニル−3,3−ビス(4−シアナトフェニル)インドリン−2−オン、フェノールノボラック型シアン酸エステル化合物、クレゾールノボラック型シアン酸エステル化合物、トリスフェノールノボラック型シアン酸エステル化合物、フルオレンノボラック型シアン酸エステル化合物、フェノールアラルキル型シアン酸エステル化合物、クレゾールアラルキル型シアン酸エステル化合物、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル化合物、フェノール変性キシレンホルムアルデヒド型シアン酸エステル化合物、変性ナフタレンホルムアルデヒド型シアン酸エステル化合物、フェノール変性ジシクロペンタジエン型シアン酸エステル化合物、及びポリナフチレンエーテル構造を有するフェノール樹脂のシアン酸エステル化合物が挙げられる。これらのシアン酸エステル化合物(A)は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0026】
なお、フェノールノボラック型シアン酸エステル化合物、クレゾールノボラック型シアン酸エステル化合物としては、公知の方法により、フェノールノボラック樹脂やクレゾールノボラック樹脂をシアネート化したものが挙げられる。フェノールノボラック樹脂やクレゾールノボラック樹脂としては、公知の方法により、フェノール、アルキル置換フェノール又はハロゲン置換フェノールと、ホルマリンやパラホルムアルデヒドなどのホルムアルデヒド化合物を、酸性溶液中で反応させたものが挙げられる。
【0027】
トリスフェノールノボラック型シアン酸エステル化合物としては、公知の方法により、トリスフェノールノボラック樹脂をシアネート化したものが挙げられる。トリスフェノールノボラック樹脂としては、ヒドロキシベンズアルデヒドとフェノールとを酸性触媒の存在下に反応させたものが挙げられる。
【0028】
フルオレンノボラック型シアン酸エステル化合物としては、公知の方法により、フルオレンノボラック樹脂をシアネート化したものが挙げられる。フルオレンノボラック樹脂としては、フルオレノン化合物と9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類とを酸性触媒の存在下に反応させたものが挙げられる。
【0029】
フェノールアラルキル型シアン酸エステル化合物、クレゾールアラルキル型シアン酸エステル化合物、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル化合物としては、公知の方法により、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂やビフェニルアラルキル樹脂をシアネート化したものが挙げられる。フェノールアラルキル樹脂、クレゾールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂やビフェニルアラルキル樹脂としては、公知の方法により、Ar−(CHY)で表されるようなビスハロゲノメチル化合物とフェノール化合物とを酸性触媒若しくは無触媒で反応させたもの、Ar−(CHOR)で表されるようなビス(アルコキシメチル)化合物やAr−(CHOH)で表されるようなビス(ヒドロキシメチル)化合物とフェノール化合物を酸性触媒の存在下に反応させたもの、又は、芳香族アルデヒド化合物、アラルキル化合物、フェノール化合物を重縮合させたものが挙げられる。
【0030】
フェノール変性キシレンホルムアルデヒド型シアン酸エステル化合物としては、公知の方法により、フェノール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂をシアネート化したものが挙げられる。フェノール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂としては、公知の方法により、キシレンホルムアルデヒド樹脂とフェノール化合物を酸性触媒の存在下に反応させたものが挙げられる。
【0031】
変性ナフタレンホルムアルデヒド型シアン酸エステル化合物としては、公知の方法により、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂をシアネート化したものが挙げられる。変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂としては、公知の方法により、ナフタレンホルムアルデヒド樹脂とヒドロキシ置換芳香族化合物を酸性触媒の存在下に反応させたものが挙げられる。
【0032】
フェノール変性ジシクロペンタジエン型シアン酸エステル化合物、ポリナフチレンエーテル構造を有するフェノール樹脂のシアン酸エステル化合物としては、公知の方法により、フェノール変性ジシクロペンタジエン樹脂、ポリナフチレンエーテル構造を有するフェノール樹脂をシアネート化したものが挙げられる。フェノール変性ジシクロペンタジエン樹脂、ポリナフチレンエーテル構造を有するフェノール樹脂としては、公知の方法により、フェノール性ヒドロキシ基を1分子中に2つ以上有する多価ヒドロキシナフタレン化合物を、塩基性触媒の存在下に脱水縮合させたものが挙げられる。
【0033】
上述した中でも、フェノールノボラック型シアン酸エステル化合物、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル化合物、ナフチレンエーテル型シアン酸エステル化合物、キシレン樹脂型シアン酸エステル化合物、及びアダマンタン骨格型シアン酸エステル化合物が好ましく、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物がより好ましい。
【0034】
これらのシアン酸エステル化合物(A)を用いた樹脂組成物から得られる硬化物は、ガラス転移温度が高いことに起因して、耐熱性に優れ、かつめっき密着性にも優れる。特に、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物を用いた樹脂組成物から得られる硬化物は、耐熱性とめっき密着性とのバランスに優れる。
【0035】
シアン酸エステル化合物(A)の含有量は、所望する特性に応じて適宜設定することができ特に限定されないが、樹脂組成物中の樹脂固形分の総量(100質量部)に対して、1〜90質量部であることが好ましく、10〜85質量部であることがより好ましく、30〜75質量部であることがさらに好ましく、40〜60質量部であることがよりさらに好ましい。シアン酸エステル化合物(A)の含有量が1質量部以上であることにより、より優れた耐熱性が得られる傾向にあり、また、シアン酸エステル化合物(A)の含有量が90質量部以下であることにより、より優れためっきピール強度が得られる傾向にある。ここで、「樹脂組成物中の樹脂固形分」とは、特に断りのない限り、樹脂組成物における、溶剤、充填材(C)等の樹脂以外の成分を除いた成分をいい、「樹脂固形分の総量」とは、樹脂組成物における溶剤、充填材(C)等の樹脂以外を除いた成分の合計量をいうものとする。
【0036】
<エポキシ樹脂(B)>
本実施形態のエポキシ樹脂(B)は、下記一般式(1)で表される。
【化7】
式中、m及びnは、1以上の整数を示す。一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(B)は、m及びnが、各々独立に異なる整数を示す化合物の混合物であってもよい。
【0037】
一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(B)の粘度は、特に限定されないが、10mPa・s/25℃以上20000mPa・s/25℃以下であることが好ましく、100mPa・s/25℃以上10000mPa・s/25℃以下であることがより好ましく、500mPa・s/25℃以上5000mPa・s/25℃以下であることがさらに好ましく、1000mPa・s/25℃以上2500mPa・s/25℃以下であることがよりさらに好ましい。粘度が上記範囲内にあることにより、より優れためっきピール強度を得ることができる傾向にある。粘度が上記範囲内にあるようなエポキシ樹脂(B)は、市販のものから適宜選択することができ、これらを組み合わせてもよい。
【0038】
一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(B)は、一般式(1)で表されるものであれば特に限定されず、市販のものを使用してもよく、例えば、株式会社ADEKA製商品名「EP−4000S」が好ましい。
【0039】
一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(B)の含有量は、所望する特性に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、樹脂組成物中の樹脂固形分の総量(100質量部)に対して、1〜90質量部であることが好ましく、20〜75質量部であることがより好ましく、40〜60質量部であることがさらに好ましく、40〜60質量部であることがよりさらに好ましい。エポキシ樹脂(B)の含有量が1質量部以上であることにより、より優れためっきピール強度が得られる傾向にあり、また、エポキシ樹脂(B)の含有量が90質量部以下であることにより、より優れた耐熱性が得られる傾向にある。
【0040】
<充填材(C)>
本実施形態の樹脂組成物は、充填材(C)をさらに含有することが好ましい。充填材(C)を含有することで、本発明の作用効果をより確実に奏することができ、優れためっきピール強度が得られる傾向にある。また、本実施形態のシアン酸エステル化合物(A)の作用効果をより確実に奏することができ、優れた耐熱性が得られる傾向にもある。
【0041】
充填材(C)としては、公知のものを適宜使用することができ、その種類は特に限定されず、当業界において一般に使用されているものを好適に用いることができる。具体的には、天然シリカ、溶融シリカ、合成シリカ、アモルファスシリカ、アエロジル、中空シリカ等のシリカ類、ホワイトカーボン、チタンホワイト、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、凝集窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム加熱処理品(水酸化アルミニウムを加熱処理し、結晶水の一部を減じたもの)、ベーマイト、水酸化マグネシウム等の金属水和物、酸化モリブデンやモリブデン酸亜鉛等のモリブデン化合物、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、アルミナ、クレー、カオリン、タルク、焼成クレー、焼成カオリン、焼成タルク、マイカ、E−ガラス、A−ガラス、NE−ガラス、C−ガラス、L−ガラス、D−ガラス、S−ガラス、M−ガラスG20、ガラス短繊維(Eガラス、Tガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス等のガラス微粉末類を含む。)、中空ガラス、球状ガラス等の無機系の充填材の他、スチレン型、ブタジエン型、アクリル型等のゴムパウダー、コアシェル型のゴムパウダー、シリコーンレジンパウダー、シリコーンゴムパウダー、シリコーン複合パウダー等の有機系の充填材が挙げられる。これらの充填材(C)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
これらの充填材(C)を含有することで、樹脂組成物のめっきピール強度、熱膨張特性、寸法安定性、難燃性等の特性がより向上する傾向にある。
【0043】
本実施形態の樹脂組成物における充填材(C)の含有量は、所望する特性に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、樹脂組成物中の樹脂固形分の総量(100質量部)に対して、50〜1600質量部であることが好ましく、60〜1000質量部であることがより好ましく、70〜500質量部であることがさらに好ましく、80〜200質量部であることがよりさらに好ましい。充填材(C)の含有量を50〜1600質量部とすることで、樹脂組成物の成形性が良好となる傾向にある。
【0044】
ここで充填材(C)を使用するにあたり、シランカップリング剤や湿潤分散剤を併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、一般に無機物の表面処理に使用されているものを好適に用いることができ、その種類は特に限定されない。具体的には、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシランなどのアミノシラン系、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン系、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルートリ(β−メトキシエトキシ)シラン等のビニルシラン系、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩等のカチオニックシラン系、及びフェニルシラン系が挙げられる。シランカップリング剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、湿潤分散剤としては、一般に塗料用に使用されているものを好適に用いることができ、その種類は特に限定されない。好ましくは、共重合体ベースの湿潤分散剤が使用され、その具体例としては、ビックケミー・ジャパン(株)製のDisperbyk−110、111、161、180、BYK−W996、BYK−W9010、BYK−W903、BYK−W940が挙げられる。湿潤分散剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
<その他の成分>
さらに、本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、特に限定されないが、例えば、上記エポキシ樹脂(B)以外のエポキシ樹脂(以下、「他のエポキシ樹脂」という。)、マレイミド化合物、フェノール樹脂、オキセタン樹脂、ベンゾオキサジン化合物、及び重合可能な不飽和基を有する化合物からなる群より選ばれるいずれか1種類以上が挙げられる。このようなその他の成分を用いることにより、樹脂組成物を硬化した硬化物の難燃性、低誘電性など所望する特性を向上させることができる。
【0046】
他のエポキシ樹脂としては、一般式(1)で表される構造単位を有するものでなく、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であれば、公知のものを適宜使用することができ、その種類は特に限定されない。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、多官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格変性ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジルエステル、ブタジエンなどの二重結合をエポキシ化した化合物、及び水酸基含有シリコーン樹脂類とエピクロルヒドリンとの反応により得られる化合物が挙げられる。これらの他のエポキシ樹脂の中でも、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、多官能フェノール型エポキシ樹脂、及びナフタレン型エポキシ樹脂が好ましい。このような他のエポキシ樹脂を用いることにより、難燃性及び耐熱性がより向上する傾向にある。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
マレイミド化合物としては、1分子中に1個以上のマレイミド基を有する化合物であれば、一般に公知のものを使用でき、その種類は特に限定されない。具体的には、4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、フェニルメタンマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)−フェニル)プロパン、3,3−ジメチル−5,5−ジエチル−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン、4,4−ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4−ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ポリフェニルメタンマレイミド、ノボラック型マレイミド、ビフェニルアラルキル型マレイミド、及びこれらマレイミド化合物のプレポリマー、並びにマレイミド化合物とアミン化合物のプレポリマーが挙げられる。これらの中でも、ノボラック型マレイミド化合物、及びビフェニルアラルキル型マレイミド化合物がより好ましい。これらのマレイミド化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
フェノール樹脂としては、1分子中に2個以上のヒドロキシ基を有するフェノール樹脂であれば、一般に公知のものを使用でき、その種類は特に限定されない。具体的には、ビスフェノールA型フェノール樹脂、ビスフェノールE型フェノール樹脂、ビスフェノールF型フェノール樹脂、ビスフェノールS型フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック型フェノール樹脂、グリシジルエステル型フェノール樹脂、アラルキルノボラック型フェノール樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、多官能フェノール樹脂、ナフトール樹脂、ナフトールノボラック樹脂、多官能ナフトール樹脂、アントラセン型フェノール樹脂、ナフタレン骨格変性ノボラック型フェノール樹脂、フェノールアラルキル型フェノール樹脂、ナフトールアラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、脂環式フェノール樹脂、ポリオール型フェノール樹脂、リン含有フェノール樹脂、及び水酸基含有シリコーン樹脂類が挙げられる。これらのフェノール樹脂の中では、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、ナフトールアラルキル型フェノール樹脂、リン含有フェノール樹脂、及び水酸基含有シリコーン樹脂が難燃性の点でより好ましい。これらのフェノール樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
オキセタン樹脂としては、一般に公知のものを使用でき、その種類は特に限定されない。具体的には、オキセタン、2−メチルオキセタン、2,2−ジメチルオキセタン、3−メチルオキセタン、3,3−ジメチルオキセタン等のアルキルオキセタン、3−メチル−3−メトキシメチルオキセタン、3,3−ジ(トリフルオロメチル)パーフルオキセタン、2−クロロメチルオキセタン、3,3−ビス(クロロメチル)オキセタン、ビフェニル型オキセタン、OXT−101(東亞合成製商品名)、及びOXT−121(東亞合成製商品名)が挙げられる。これらのオキセタン樹脂は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0050】
ベンゾオキサジン化合物としては、1分子中に2個以上のジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物であれば、一般に公知のものを用いることができ、その種類は特に限定されない。具体的には、ビスフェノールA型ベンゾオキサジンBA−BXZ(小西化学製商品名)ビスフェノールF型ベンゾオキサジンBF−BXZ(小西化学製商品名)、及びビスフェノールS型ベンゾオキサジンBS−BXZ(小西化学製商品名)が挙げられる。これらのベンゾオキサジン化合物は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0051】
重合可能な不飽和基を有する化合物としては、一般に公知のものを使用でき、その種類は特に限定されない。具体的には、エチレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル等のビニル化合物、メチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の1価又は多価アルコールの(メタ)アクリレート類、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート類、ベンゾシクロブテン樹脂、及び(ビス)マレイミド樹脂が挙げられる。これらの不飽和基を有する化合物は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0052】
また、本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じて、硬化速度を適宜調節するための硬化促進剤をさらに含有していてもよい。この硬化促進剤としては、シアン酸エステル化合物やエポキシ樹脂等の硬化促進剤として一般に使用されているものを好適に用いることができ、その種類は特に限定されない。その具体例としては、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、アセチルアセトン鉄、オクチル酸ニッケル、オクチル酸マンガン等の有機金属塩類、フェノール、キシレノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、オクチルフェノール、ノニルフェノール等のフェノール化合物、1−ブタノール、2−エチルヘキサノール等のアルコール類、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類及びこれらのイミダゾール類のカルボン酸もしくはその酸無水類の付加体等の誘導体、ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン類、ホスフィン系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、ホスホニウム塩系化合物、ダイホスフィン系化合物等のリン化合物、エポキシ−イミダゾールアダクト系化合物、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシカーボネート等の過酸化物、並びにアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。硬化促進剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
硬化促進剤の含有量は、樹脂の硬化度や樹脂組成物の粘度等を考慮して適宜調整でき、特に限定されないが、樹脂組成物中の樹脂固形分の総量(100質量部)に対して、0.005〜10質量部であることが好ましい。
【0054】
さらに、本実施形態の樹脂組成物は、所期の特性が損なわれない範囲において、他の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、そのオリゴマー、エラストマー類等の種々の高分子化合物、難燃性化合物、各種添加剤等を併用することができる。これらは一般に使用されているものであれば、特に限定されるものではない。例えば、難燃性化合物の具体例としては、4,4’−ジブロモビフェニル等の臭素化合物、リン酸エステル、リン酸メラミン、リン含有エポキシ樹脂、メラミンやベンゾグアナミンなどの窒素化合物、オキサジン環含有化合物、及びシリコーン系化合物が挙げられる。また、各種添加剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、光増感剤、染料、顔料、増粘剤、流動調整剤、滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光沢剤、重合禁止剤等が挙げられる。これらは、所望に応じて1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
なお、本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じて、有機溶剤を含有することができる。この場合、本発明の樹脂組成物は、上述した各種樹脂成分の少なくとも一部、好ましくは全部が有機溶剤に溶解あるいは相溶した態様(溶液あるいはワニス)として用いることができる。有機溶剤としては、上述した各種樹脂成分の少なくとも一部、好ましくは全部を溶解あるいは相溶可能なものであれば、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されるものではない。具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のセロソルブ系溶媒、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステル系溶媒、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類等の極性溶剤類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等の無極性溶剤が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物は、常法にしたがって製造することができ、シアン酸エステル化合物(A)及び一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(B)、並びに上述したその他の任意成分を均一に含有する樹脂組成物が得られる方法であれば、その調製方法は特に限定されない。例えば、シアン酸エステル化合物(A)及び一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(B)を順次溶剤に配合し、十分に撹拌することで本実施形態の樹脂組成物を容易に調整することができる。
【0057】
なお、樹脂組成物の調製時に、各成分を均一に溶解或いは分散させるための公知の処理(撹拌、混合、混練処理など)を行うことができる。例えば、充填材(C)の均一分散にあたり、適切な撹拌能力を有する撹拌機を付設した撹拌槽を用いて撹拌分散処理を行うことで、樹脂組成物に対する分散性が高められる。上記の撹拌、混合、混練処理は、例えば、ボールミル、ビーズミルなどの混合を目的とした装置、または、公転・自転型の混合装置などの公知の装置を用いて適宜行うことができる。
【0058】
本実施形態の樹脂組成物は、特に限定されないが、プリント配線板の絶縁層用材料、半導体パッケージ用材料として用いることができる。例えば、本実施形態の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を、基材に含浸又は塗布し乾燥することでプリプレグとすることができる。
【0059】
また、支持体として剥離可能なプラスチックフィルムを用いて、本実施形態の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を、プラスチックフィルムに塗布し、乾燥することで、樹脂シートとすることができる。樹脂シートは、ビルドアップ用フィルム又はドライフィルムソルダーレジストとして使用することができる。ここで、溶剤は、20℃〜150℃の温度で1〜90分間加熱することで乾燥できる。また、樹脂組成物は、溶剤を乾燥しただけの未硬化の状態で使用することもできるし、必要に応じて半硬化(Bステージ化)の状態にして使用することもできる。
【0060】
<プリプレグ>
以下、本実施形態のプリプレグについて詳述する。本実施形態のプリプレグは、基材と、該基材に含浸又は塗布された、上述した本実施形態の樹脂組成物とを有する。プリプレグの製造方法は、本実施形態の樹脂組成物と基材とを組み合わせてプリプレグを製造する方法であれば、特に限定されず、本実施形態の樹脂組成物を基材に含浸又は塗布させて得られる。より具体的には、本実施形態の樹脂組成物を基材に含浸又は塗布させた後、120〜220℃で2〜15分程度乾燥させる方法等によって半硬化させることで、本実施形態のプリプレグを製造することができる。このとき、基材に対する樹脂組成物の付着量、すなわち半硬化後のプリプレグの総量(100質量部)に対する樹脂組成物量(充填材(C)を含む。)は、20〜99質量部の範囲であることが好ましい。
【0061】
本実施形態の基材としては、特に限定されないが、例えば、各種プリント配線板材料に用いられている公知のものを使用することができる。具体的には、Eガラス、Dガラス、Lガラス、Sガラス、Tガラス、Qガラス、UNガラス、NEガラス、球状ガラス等のガラス繊維;クォーツ等のガラス以外の無機繊維;ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル等の有機繊維;液晶ポリエステル等の織布が挙げられる。基材の形状としては、織布、不織布、ロービング、チョップドストランドマット、サーフェシングマット等が知られているが、いずれであっても構わない。基材は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、基材の厚さは、特に限定されないが、積層板用途であれば0.01〜0.2mmの範囲が好ましく、特に超開繊処理や目詰め処理を施した織布が、寸法安定性の観点から好適である。さらに、エポキシシラン処理、アミノシラン処理等のシランカップリング剤などで表面処理したガラス織布は吸湿耐熱性の観点から好ましい。また、液晶ポリエステル織布は、電気特性の点から好ましい。
【0062】
<金属箔張積層板>
本実施形態の金属箔張積層板は、1枚の又は2枚以上を積層した、上述したプリプレグと、該プリプレグのの片面又は両面に積層成形された金属箔と、を有する。具体的には、上述したプリプレグを一枚あるいは複数枚重ね、その片面又は両面に銅やアルミニウム等の金属箔を配置して、積層成形することにより製造することができる。ここで使用する金属箔は、プリント配線板材料に用いられているものであれば、特に限定されないが、圧延銅箔や電解銅箔等の銅箔が好ましい。また、金属箔の厚さは、特に限定されないが、2〜70μmであることが好ましく、3〜35μmであることがより好ましい。成形条件としては、通常のプリント配線板用積層板及び多層板の手法が適用できる。例えば、多段プレス機、多段真空プレス機、連続成形機、オートクレーブ成形機等を使用し、温度180〜350℃、加熱時間100〜300分、面圧20〜100kg/cmで積層成形することにより本実施形態の金属箔張積層板を製造することができる。また、上記のプリプレグと、別途作製した内層用の配線板とを組み合わせて積層成形することにより、多層板とすることもできる。多層板の製造方法としては、例えば、上述したプリプレグ1枚の両面に35μmの銅箔を配置し、上記条件にて積層形成した後、内層回路を形成し、この回路に黒化処理を実施して内層回路板を形成し、その後、この内層回路板と上記のプリプレグとを交互に1枚ずつ配置し、さらに最外層に銅箔を配置して、上記条件にて好ましくは真空下で積層成形することにより、多層板を作製することができる。
【0063】
そして、本実施形態の金属箔張積層板は、プリント配線板として好適に使用することができる。プリント配線板は、常法にしたがって製造することができ、その製造方法は特に限定されない。以下、プリント配線板の製造方法の一例を示す。まず、上述した銅張積層板等の金属箔張積層板を用意する。次に、金属箔張積層板の表面にエッチング処理を施して内層回路の形成を行い、内層基板を作製する。この内層基板の内層回路表面に、必要に応じて接着強度を高めるための表面処理を行い、次いでその内層回路表面に上述したプリプレグを所要枚数重ね、さらにその外側に外層回路用の金属箔を積層し、加熱加圧して一体成形する。このようにして、内層回路と外層回路用の金属箔との間に、基材及び熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層が形成された多層の積層板が製造される。次いで、この多層の積層板にスルーホールやバイアホール用の穴あけ加工を施した後、この穴の壁面に内層回路と外層回路用の金属箔とを導通させるめっき金属皮膜を形成し、さらに外層回路用の金属箔にエッチング処理を施して外層回路を形成することで、プリント配線板が製造される。
【0064】
<プリント配線板>
本実施形態のプリント配線板は、上述した本実施形態の樹脂組成物を含む絶縁層と、該絶縁層の片面又は両面に形成された導体層とを有する。すなわち、上述した本実施形態のプリプレグ(基材及びこれに含浸又は塗布された本実施形態の樹脂組成物)、上述した本実施形態の金属箔張積層板の樹脂組成物の層(本実施形態の樹脂組成物からなる層)が、本実施形態の樹脂組成物を含む絶縁層から構成されることになる。
【0065】
<樹脂シート>
本実施形態の樹脂シートは、シート基材と、該シート基材の片面又は両面に塗工及び乾燥された、上述した本実施形態の樹脂組成物とを有する。樹脂シートは、溶剤に溶解させた溶液(樹脂組成物)をシート基材に塗布(塗工)し、乾燥することで得ることができる。ここで用いるシート基材としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体フィルム、並びにこれらのフィルムの表面に離型剤を塗布した離型フィルム、ポリイミドフィルム等の有機系のフィルム基材、銅箔、アルミ箔等の導体箔、ガラス板、SUS板、FRP等の板状のものが挙げられるが、特に限定されるものではない。塗布方法としては、例えば、本実施形態の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を、バーコーター、ダイコーター、ドクターブレード、ベーカーアプリケーター等で支持体上に塗布する方法が挙げられる。また、乾燥後に、積層シートから支持体を剥離又はエッチングすることで、単層シート(樹脂シート)とすることもできる。なお、上記の本実施形態の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を、シート状のキャビティを有する金型内に供給し乾燥する等してシート状に成形することで、支持体を用いることなく単層シート(樹脂シート)を得ることもできる。
【0066】
なお、本実施形態の単層あるいは積層シートの作製において、溶剤を除去する際の乾燥条件は、特に限定されないが、低温であると樹脂組成物中に溶剤が残り易く、高温であると樹脂組成物の硬化が進行することから、20℃〜200℃の温度で1〜90分間が好ましい。また、本実施形態の単層シート又は積層シートの樹脂層の厚さは、本実施形態の樹脂組成物の溶液の濃度と塗布厚みにより調整することができ、特に限定されないが、一般的には塗布厚さが厚くなると乾燥時に溶剤が残り易くなることから、0.1〜500μmが好ましい。
【実施例】
【0067】
以下、合成例、実施例及び比較例を示し、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0068】
(合成例1)シアン酸エステル化合物の合成
1−ナフトールアラルキル樹脂(新日鉄住金化学株式会社製)300g(OH基換算1.28mol)及びトリエチルアミン194.6g(1.92mol)(ヒドロキシ基1molに対して1.5mol)をジクロロメタン1800gに溶解させ、これを溶液1とした。
【0069】
塩化シアン125.9g(2.05mol)(ヒドロキシ基1molに対して1.6mol)、ジクロロメタン293.8g、36%塩酸194.5g(1.92mol)(ヒドロキシ基1モルに対して1.5モル)、水1205.9gを、撹拌下、液温−2〜−0.5℃に保ちながら、溶液1を30分かけて注下した。溶液1注下終了後、同温度にて30分撹拌した後、トリエチルアミン65g(0.64mol)(ヒドロキシ基1molに対して0.5mol)をジクロロメタン65gに溶解させた溶液(溶液2)を10分かけて注下した。溶液2注下終了後、同温度にて30分撹拌して反応を完結させた。
【0070】
その後反応液を静置して有機相と水相を分離した。得られた有機相を水1300gで5回洗浄した。水洗5回目の廃水の電気伝導度は5μS/cmであり、水による洗浄により、除けるイオン性化合物は十分に除けられたことを確認した。
【0071】
水洗後の有機相を減圧下で濃縮し、最終的に90℃で1時間濃縮乾固させて目的とするナフトールアラルキル型のシアン酸エステル化合物(SNCN)(橙色粘性物)を331g得た。得られたSNCNの質量平均分子量Mwは600であった。また、SNCNのIRスペクトルは2250cm−1(シアン酸エステル基)の吸収を示し、且つ、ヒドロキシ基の吸収は示さなかった。
【0072】
(実施例1)
合成例1により得られたSNCN50質量部、下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(EP−4000S、粘度:1800mPa・s/25℃、(株)ADEKA製)50質量部、溶融シリカ(SC2050MB、アドマテックス製)100質量部、オクチル酸亜鉛(日本化学産業(株)製)0.15質量部を混合してワニスを得た。このワニスをメチルエチルケトンで希釈し、厚さ0.1mmのEガラス織布に含浸塗工し、150℃で5分間加熱乾燥して、樹脂含有量50質量%のプリプレグを得た。
【0073】
【化8】
(式中、m及びnは、1以上の整数を示す。式(1)で表されるエポキシ樹脂は、m及びnが、各々独立に異なる整数を示す化合物の混合物であってもよい。)
【0074】
得られたプリプレグを8枚重ねて12μm厚の電解銅箔(3EC−M3−VLP、三井金属(株)製)を上下に配置し、圧力30kgf/cm、温度220℃で120分間の積層成型を行い、絶縁層厚さ0.8mmの金属箔張積層板を得た。得られた金属箔張積層板を用いて、めっきピール強度、曲げ弾性率、及び誘電率の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0075】
(比較例1)
実施例1において、一般式(1)で表されるエポキシ樹脂を50質量部用いる代わりに、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC−3000−FH、日本化薬(株)製)50質量部、オクチル酸亜鉛を0.12質量部用いた以外は、実施例1と同様にして厚さ0.8mmの金属箔張積層板を得た。得られた金属箔張積層板の各評価結果を表1に示す。
【0076】
(測定方法及び評価方法)
めっきピール強度:実施例1及び比較例1で得られた絶縁層厚さ0.8mmの金属箔張積層板を、上村工業製の無電解銅めっきプロセス(使用薬液名:MCD−PL、MDP−2、MAT−SP、MAB−4−C、MEL−3−APEA ver.2)にて、約0.8μmの無電解銅めっきを施し、130℃で1時間の乾燥を行った。続いて、電解銅めっきをめっき銅の厚みが18μmになるように施し、180℃で1時間の乾燥を行った。こうして、絶縁層上に厚さ18μmの導体層(めっき銅)が形成されたサンプルを作製し評価した。めっき銅の接着力は、JIS C6481に準じて3回測定し、その平均値を求めた。
【0077】
曲げ弾性率:実施例1及び比較例1で得られた絶縁層厚さ0.8mmの金属箔張積層板の両面の銅箔をエッチングにより除去した後に、JIS C6481に準じて、試験片(50mm×25mm×0.8mm)を用い、試験数5で曲げ強度弾性率を測定し、最大値の平均値を求めた。
【0078】
誘電率(Dk):実施例1及び比較例1で得られた絶縁層厚さ0.8mmの金属箔張積層板の銅箔をエッチングにより除去した試験片を用い、空洞共振器摂動法(Agilent 8722ES、アジレントテクノロジー製)にて1GHzの、誘電率を3回測定し、その平均値を求めた。
【0079】
【表1】
【0080】
表1から明らかなように、実施例の樹脂組成物を用いることで、めっきピール強度に優れるプリプレグ及びプリント配線板等を実現できることが少なくとも確認された。
【0081】
本出願は、2015年4月28日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2015−091041号)に基づくものであり、それらの内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上説明した通り、本発明に係る樹脂組成物は、電気・電子材料、工作機械材料、航空材料等の各種用途において、例えば、電気絶縁材料、半導体プラスチックパッケージ、封止材料、接着剤、積層材料、レジスト、ビルドアップ積層板材料等として、広く且つ有効に利用可能であり、とりわけ、近年の情報端末機器や通信機器等の高集積・高密度化対応のプリント配線板材料として殊に有効に利用可能である。また、本発明に係る金属箔張積層板等は、めっきピール強度に優れた性能を有するので、その工業的な実用性は極めて高いものとなる。