(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記演算処理部は、前記第一電気信号及び前記第二電気信号の少なくとも一方の信号強度が、前記所定の範囲内にある場合の前記信号比の平均値に基づいて、前記水分量を検出する
請求項1または2に記載の水分量センサ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本発明の実施の形態に係る水分量センサ及び路面状態検出装置について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する趣旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0011】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0012】
(実施の形態)
[路面状態検出装置]
まず、実施の形態に係る路面状態検出装置100について説明する。
【0013】
図1は実施の形態に係る路面状態検出装置100の概略構成を示す模式図である。
図1に示すように、路面状態検出装置100は、路側帯に設置された一対の支柱200、201に対して設けられている。具体的には、路面状態検出装置100は、水分量センサ1と、表示部110とを備えている。
【0014】
水分量センサ1は、支柱200の上部から車道の上方に延び出された支持部210に対して取り付けられている。水分量センサ1は、車道の路面S上の水分量を検出する光学式のセンサである。水分量センサ1は、その直下の路面Sに向けて参照光及び検知光を照射するように配置されている。
【0015】
表示部110は、支柱200よりも進行方向の先方に配置された支柱201に設置されている。表示部110は、支柱201の上部から車道の上方に延び出された支持部211に対して取り付けられている。表示部110は、種々の情報を表示する例えば電光掲示板である。
【0016】
図2は、実施の形態に係る路面状態検出装置100の制御ブロック図である。
図2に示すように、路面状態検出装置100には、水分量センサ1及び表示部110を制御する制御部120が設けられている。制御部120は、例えばマイクロコントローラで構成されている。制御部120は、水分量センサ1及び表示部110を制御するための処理プログラムが格納された不揮発性メモリ、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリ、入出力ポート、プログラムを実行するプロセッサなどを有する。具体的には、制御部120は、水分量センサ1で検出された水分量に基づく情報を表示部110に表示させる。これにより、車道上を走行する車両Vの運転者に対して、路面Sの水分量に基づく情報を表示部110から報知することができる。
【0017】
[水分量センサ]
次に、実施の形態に係る水分量センサ1の概要について説明する。
【0018】
図3は、実施の形態に係る水分量センサ1の構成と路面Sとを示す模式図である。
図4は、実施の形態に係る水分量センサ1の制御構成を示すブロック図である。
【0019】
水分量センサ1は、路面Sに対して光を発し、当該路面Sからの反射光に基づいて路面Sの水分量を検出する水分量センサである。
【0020】
本実施の形態では、
図3及び
図4に示すように、水分量センサ1は、空間3を隔てて存在する路面Sに含まれる水分量を検出する。「路面Sに含まれる水分量」は、路面S上に溜まった水分と、路面Sの表面部分に浸透した水分とを含む。
【0021】
水分量センサ1は、筐体10と、発光部20と、第一受光モジュール30と、第二受光モジュール40と、温度センサ60と、信号処理回路50とを備えている。
【0022】
以下では、水分量センサ1の各構成要素について詳細に説明する。
【0023】
[筐体]
筐体10は、路面状態検出装置100における筐体であり、発光部20と、第一受光モジュール30と、第二受光モジュール40と、信号処理回路50とを収容している。筐体10は、遮光性の材料から形成されている。これにより、外光が筐体10内に入射するのを抑制することができる。具体的には、筐体10は、第一受光モジュール30と第二受光モジュール40とが受光する光に対して遮光性を有する樹脂材料又は金属材料から形成されている。
【0024】
筐体10の外壁には、複数の開口が設けられており、これらの開口に、発光部20のレンズ21と、第一受光モジュール30のレンズ31とが取り付けられている。
【0025】
[発光部]
発光部20は、水による吸収が所定値よりも大きな第一波長帯を含む検知光と、水による吸収が所定値以下である第二波長帯を含む参照光とを路面Sに向けて発する発光部である。具体的には、発光部20は、レンズ21と、光源22とを備えている。
【0026】
レンズ21は、光源22が発した光を、路面Sに対して集光する集光レンズである。レンズ21は、樹脂製の凸レンズであるが、これに限らない。
【0027】
光源22は、検知光をなす第一波長帯と参照光をなす第二波長帯とを含み、ピーク波長が第二波長帯側にある連続した光を発するLED(Light Emitting Diode)光源である。具体的には、光源22は、化合半導体からなるLED光源である。
【0028】
図5は、水分と水蒸気との吸光スペクトルを示す図である。
図5に示すように、水分は、約1450nm及び約1940nmの波長に吸収ピークを有する。水蒸気は、水分の吸収ピークよりやや低い波長、具体的には約1350nm〜1400nm及び約1800nm〜1900nmの波長に吸収ピークを有する。
【0029】
このため、検知光をなす第一波長帯としては、水の吸光度が高い波長帯を選択し、参照光をなす第二波長帯としては、第一波長帯よりも水の吸光度が小さい波長帯を選択する。そして、一例としては、第二波長帯の平均波長は、第一波長体の平均波長よりも長くする。また、光学的なバンドパスフィルタの最大透過率の半値である波長の中心値で定義される中心波長に関して、例えば第一波長帯の中心波長は1450nmとし、第二波長帯の中心波長は1700nmとする。
【0030】
このように、光源22が、第一波長帯と第二波長帯とを連続して含む光を照射するので、路面Sには、水による吸収が大きな第一波長帯を含む検知光と、水による吸収が第一波長帯よりも小さい第二波長帯を含む参照光が照射される。
【0031】
[第一受光モジュール]
図3に示すように第一受光モジュール30は、レンズ31と、第一バンドパスフィルタ32と、第一受光部33とを備えている。
【0032】
レンズ31は、路面Sによって反射された反射光を第一受光部33に集光するための集光レンズである。レンズ31は、例えば、焦点が第一受光部33の受光面に位置するように筐体10に固定されている。レンズ31は、例えば、樹脂製の凸レンズであるが、これに限らない。
【0033】
第一バンドパスフィルタ32は、反射光から第一波長帯の光を抽出するバンドパスフィルタである。具体的には、第一バンドパスフィルタ32は、レンズ31と、第一受光部33との間に配置されており、レンズ31を透過して第一受光部33に入射する反射光の光路上に設けられている。また、第一バンドパスフィルタ32は、レンズ31の光軸に対して傾いて配置されている。これにより、第一バンドパスフィルタ32は、第一波長帯の光を透過するとともに、それ以外の波長帯の光を反射する。
【0034】
第一受光部33は、路面Sによって反射され、第一バンドパスフィルタ32を透過した第一波長帯の光を受光し、第一電気信号に変換する受光素子である。第一受光部33は、受光した第一波長帯の光を光電変換することで、当該光の受光量(すなわち、強度)に応じた第一電気信号を生成する。生成された第一電気信号は、信号処理回路50に出力される。第一受光部33は、例えば、フォトダイオードであるが、これに限定されない。例えば、第一受光部33は、フォトトランジスタ、又は、イメージセンサでもよい。
【0035】
[第二受光モジュール]
第二受光モジュール40は、第二バンドパスフィルタ42と、第二受光部43とを備えている。
【0036】
第二バンドパスフィルタ42は、第一バンドパスフィルタ32で反射された光から第二波長帯の光を抽出するバンドパスフィルタである。具体的には、第二バンドパスフィルタ42は、第一バンドパスフィルタ32と、第二受光部43との間に配置されており、第一バンドパスフィルタ32を透過して第二受光部43に入射する光の光路上に設けられている。そして、第二バンドパスフィルタ42は、第二波長帯の光を透過し、かつ、それ以外の波長帯の光を吸収する。
【0037】
第二受光部43は、路面Sによって反射され、第二バンドパスフィルタ42を透過した第二波長帯の光を受光し、第二電気信号に変換する受光素子である。第二受光部43は、受光した第二波長帯の光を光電変換することで、当該光の受光量(すなわち、強度)に応じた第二電気信号を生成する。生成された第二電気信号は、信号処理回路50に出力される。第二受光部43は、第一受光部33と同形の受光素子である。つまり、第一受光部33がフォトダイオードである場合には、第二受光部43もフォトダイオードである。
【0038】
[温度センサ]
温度センサ60は、水分量センサ1の周囲の温度を検出する温度センサである。具体的には、温度センサ60は、筐体10の外側面に取り付けられており、筐体10外の外気温を検出する。なお、温度センサ60は筐体10内に収容されていてもよい。温度センサ60は、信号処理回路50の演算処理部56に電気的に接続されており、検出結果を演算処理部56に出力する。
【0039】
[信号処理回路]
信号処理回路50は、発光部20の光源22を点灯制御するとともに、第一受光部33及び第二受光部43から出力された第一電気信号及び第二電気信号を処理することで、水分量を演算する回路である。
【0040】
信号処理回路50は、筐体10に収容されていてもよく、又は、筐体10の外側面に取り付けられていてもよい。あるいは、信号処理回路50は、無線通信などの通信機能を有し、第一受光部33からの第一電気信号、第二受光部43からの第二電気信号及び温度センサ60からの検出結果を受信してもよい。
【0041】
具体的には、
図4に示すように、信号処理回路50は、光源制御部51、第一増幅部52、第二増幅部53、第一信号処理部54、第二信号処理部55及び演算処理部56を備えている。
【0042】
光源制御部51は、駆動回路及びマイクロコントローラで構成される。光源制御部51は、光源22の制御プログラムが格納された不揮発性メモリ、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリ、入出力ポート、プログラムを実行するプロセッサなどを有する。
【0043】
光源制御部51は、光源22の点灯及び消灯が所定の発光周期で繰り返されるように、光源22を制御する。具体的には、光源制御部51は、所定の周波数(例えば、1kHz)のパルス信号を光源22に出力することで、光源22を所定の発光周期で点灯及び消灯させる。
【0044】
第一増幅部52は、第一受光部33が出力した第一電気信号を増幅して第一信号処理部54に出力する。具体的には、第一増幅部52は、第一電気信号を増幅するオペアンプである。
【0045】
第一信号処理部54は、マイクロコントローラで構成される。第一信号処理部54は、第一電気信号に対する処理プログラムが格納された不揮発性メモリ、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリ、入出力ポート、プログラムを実行するプロセッサなどを有する。第一信号処理部54は、第一電気信号に対して、通過帯域制限を行うとともに当該通過帯域制限による位相遅延を補正してから、光源22の発光周期との乗算処理を施す。この第一電気信号に対する処理は、いわゆるロックインアンプ処理である。これにより、外乱光に基づくノイズを第一電気信号から抑制することが可能である。
【0046】
第二増幅部53は、第二受光部43が出力した第二電気信号を増幅して第二信号処理部55に出力する。具体的には、第二増幅部53は、第二電気信号を増幅するオペアンプである。
【0047】
第二信号処理部55は、マイクロコントローラで構成される。第二信号処理部55は、第二電気信号に対する処理プログラムが格納された不揮発性メモリ、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリ、入出力ポート、プログラムを実行するプロセッサなどを有する。第二信号処理部55は、第二電気信号に対して、通過帯域制限を行うとともに当該通過帯域制限による位相遅延を補正してから、光源22の発光周期との乗算処理を施す。この第二電気信号に対する処理は、いわゆるロックインアンプ処理である。これにより、外乱光に基づくノイズを第二電気信号から抑制することが可能である。
【0048】
演算処理部56は、第一受光部33から出力された第一電気信号と、第二受光部43から出力された第二電気信号とに基づいて、路面Sが含む水分を検出する。具体的には、演算処理部56は、第一電気信号の電圧レベルと第二電気信号の電圧レベルとの比(信号比)に基づいて、路面Sが含む水分量を検出する。本実施の形態では、演算処理部56は、第一信号処理部54によって処理された第一電気信号と、第二信号処理部55によって処理された第二電気信号とに基づいて、路面Sが含む水分量を検出する。具体的な水分量の検出処理については後で説明する。
【0049】
ここで、水分量センサ1の直下に車両Vが存在しない場合と、水分量センサ1の直下を車両Vが通過する場合とでは、検知光及び参照光の信号強度に大きな違いが生ずる。
図6は、実施の形態に係る水分量センサ1の直下に車両Vが存在していない状態を示す説明図である。この状態を第一状態と称す。また、
図7は、実施の形態に係る水分量センサ1の直下を車両Vが通過する状態を示す説明図である。この状態を第二状態と称す。
【0050】
図6に示すように、第一状態では、水分量センサ1から路面Sまでの距離L1を検知光及び参照光が往復する。一方、
図7に示すように、第二状態では水分量センサ1から車両Vまでの距離L2を検知光及び参照光が往復する。このように、第一状態の方が第二状態よりも、検知光及び参照光それぞれの光路が長くなる。つまり、第一状態の方が第二状態よりも、検知光及び参照光のそれぞれは、水分量センサ1に戻ったときに弱まっている。したがって、検知光を起因とした第一電気信号と、参照光を起因とした第二電気信号とのそれぞれは、第一状態の方が第二状態よりも信号強度が小さくなる。
【0051】
図8は、実施の形態に係る参照光を起因とした第二電気信号の信号強度変化を示すグラフである。
図8では、第二電気信号を例示して図示しているが、第一電気信号においても概ね同様の結果となる。また、
図8では、信号強度変化をパルス状の波形で表現したが、実際には、車両Vの形状に応じた波形となる。
【0052】
図8に示すように、第一状態では第二電気信号の信号強度は小さく、第二状態では第二電気信号の信号強度は大きい。上述したように、第二状態では、水分量センサ1の直下を車両Vが通過している。つまり、第二状態での第二電気信号及び第一電気信号を水分量の検出に用いたとしても不正確となってしまう。このことから、水分量の基となる信号比を求める際には、第二状態での信頼性の低い第二電気信号及び第一電気信号を排除し、それ以外、つまり第一状態での信頼性の高い第二電気信号及び第一電気信号から信号比を求めればよい。
【0053】
具体的には、第二状態での第二電気信号を排除するための基準値を予め決定しておく。この基準値は、第二状態での第二電気信号の信号強度よりも小さい値である。また、基準値を基準として、その±αの範囲を所定の範囲とする。所定の範囲は、第二状態での第二電気信号の信号強度を含まない範囲とする。
【0054】
ここで、基準値及び所定の範囲の一例について説明する。
【0055】
例えば、基準値は、路面Sから距離L1だけ離れた位置に水分量センサ1を設置した際の、第一状態における第二電気信号の強度とする。
【0056】
ここで、光の強度は、光源からの距離の2乗に反比例することが知られている。このため、第一状態における第二電気信号の強度E1と、第二状態における第二電気信号の強度E2との関係は、以下の(式1)で表される。
【0057】
(式1) E2=E1・L1
2/L2
2
【0058】
例えば、距離L1を5mとし、距離L2の最大値を4.5mとした場合には、第二状態における第二電気信号の信号強度E2と、第一状態における第二電気信号の信号強度E1は、以下の(式2)で推定される。
【0059】
(式2) E2/E1=L1
2/L2
2=5
2/4.5
2≒1.23
【0060】
このように、第二状態における第二電気信号の信号強度E2は、第一状態における第二電気信号の信号強度E1よりも23%ほど大きい値となる。この値に基づき、基準値に対して±20%の範囲を所定の範囲とすればよい。また、余裕を持たせて、基準値に対して±10%の範囲を所定の範囲とすることも可能である。
【0061】
なお、基準値は、路面Sが含む水分量による影響を補正するために、検出した信号比に基づいて変動させてもよい。
【0062】
その他、基準値及び所定の範囲については、種々の実験、シミュレーション、過去の第二電気信号の信号強度の履歴などによって適切な値を決定することが可能である。
【0063】
演算処理部56は、第二電気信号の信号強度が所定の範囲に収まっていれば、その時間帯が第一状態であったことを特定する。一方、演算処理部56は、第二電気信号の信号強度が所定の範囲外となる場合には、その時間帯が第二状態であったことを特定する。第二状態の時間帯は、第二電気信号が所定の範囲外となる範囲外時間帯である。演算処理部56は、範囲外時間帯を算出するとともに、所定の時間内において範囲外時間帯の頻度を算出する。1つの範囲外時間帯は、水分量センサ1の直下を車両Vが一台通過したことを示す。つまり、所定の時間内における範囲外時間帯の頻度は、所定の時間内での車両Vの通行量を示すこととなる。ここで「所定の時間」とは、車両Vの通行量を判断するための単位時間であり、分単位でも、時間単位でもよい。具体的には、所定の時間は数分間でもよいし、十数分間でもよいし、30分でもよいし、数時間であってもよい。
【0064】
また、本実施の形態では、第二電気信号の信号強度に基づいて、第一状態であるか第二状態であるかを判別する場合を例示した。これは、参照光の方が検知光よりも水の影響を受けにくいためである。具体的には、検知光を起因とした第一電気信号では、水の影響を受けるので、車両Vの有無に関係なく信号強度に変動が生じる。一方、参照光を起因とした第二電気信号では、水の影響を受けにくいために、車両Vの有無が如実に信号強度に反映される。つまり、第一状態であるか第二状態であるかの判別には、第二電気信号の方が適している。なお、第一状態であるか第二状態であるかの判別に、第一電気信号を用いることも可能であるし、第一電気信号及び第二電気信号の両者を用いることも可能である。
【0065】
上記した説明では、第一状態の方が第二状態よりも、第一電気信号及び第二電気信号のそれぞれの信号強度が小さくなる場合を例示した。しかしながら、車両V表面の光の吸収率が、路面Sの光の吸収率よりも大幅に大きい場合も存在する。この場合、車両Vの表面で検知光及び参照光が大きく吸収されるので、第二状態の方が第一状態よりも、第一電気信号及び第二電気信号のそれぞれの信号強度が小さくなる。この場合も考慮して、基準値及び所定の範囲を決定することが望ましい。
【0066】
演算処理部56は、例えば、マイクロコントローラである。演算処理部56は、信号処理プログラムが格納された不揮発性メモリ、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリ、入出力ポート、プログラムを実行するプロセッサなどを有する。
【0067】
演算処理部56の不揮発性メモリには、危険度テーブルと、温度テーブルとが記憶されている。
【0068】
危険度テーブルは、範囲外時間帯と、水分量との関係から路面S上の危険度を判断するためのテーブルである。
図9は、実施の形態の危険度テーブルを作成するための基準となるイメージ図である。範囲外時間帯は、車両Vが水分量センサ1の直下を通過する時間である。この範囲外時間帯は車両Vの速度を表す。つまり、範囲外時間帯が短いと車両Vの速度が速いため危険度が高く、範囲外時間帯が長いと車両Vの速度が遅いため危険度は低い。また、水分量が多いと路面Sが滑りやすいため危険度が高く、水分量が少ないと路面Sが滑りにくいため危険度は低い。
図9では、この関係性を示しており、分割線L3で分割された領域のうち、
図9でおける網掛け部分を危険度の高い部分とする。危険度テーブルは、この危険度の高い部分に含まれる範囲外時間及び水分量に基づいて作成されている。なお、危険度テーブルの具体的な値は、各種の実験、シミュレーション等によって求められる。演算処理部56は、この危険度テーブルと、範囲外時間帯と、検出した水分量とに基づいて、路面S上の危険度を判断する。
【0069】
温度テーブルは、所定の時間内における範囲外時間帯の頻度と、温度センサ60が検出した水分量センサ1の周囲の温度との関係から、路面S上の温度を判断するためのテーブルである。上述したように、所定の時間内における範囲外時間帯の頻度は、所定の時間内での車両Vの通行量を示している。頻度が多いと、通行量も多いために、その摩擦によって路面Sの路面温度が高まる。つまり、温度センサ60が検出した温度よりも、路面S上では高温となる。一方、頻度が少ないと、通行量も少ないために路面Sの温度上昇も小さい。つまり、路面S上の温度は、温度センサ60が検出した温度と同程度となる。温度テーブルは、この関係性に基づいて、水分量センサ1の周囲の温度から路面S上の温度が推定できるように作成されている。なお、温度テーブルの具体的な値は、各種の実験、シミュレーション等によって求められる。演算処理部56は、この温度テーブルと、所定の時間内における範囲外時間帯の頻度と、温度センサ60の検出した温度とに基づいて、路面S上の温度を推定する。また、演算処理部56は、推定した路面S上の温度に基づいて、路面Sに含まれる水の状態を判断する。具体的には、演算処理部56は、推定した路面S上の温度が0度以下であれば、路面Sに含まれる水の状態を「固体」として判断し、当該温度が0度より大きければ、路面Sに含まれる水の状態を「液体」として判断する。
【0070】
演算処理部56は、路面S上の危険度と、水の状態とを、入出力ポートから制御部120に出力する。これにより、制御部120は、表示部110を制御して、水分量センサ1で検出された水分量に基づく情報を表示部110に表示させる。水分量に基づく情報には、路面S上の危険度、水の状態などが含まれる。
【0071】
[水分量の検出処理]
続いて、演算処理部56による水分量の検出処理について説明する。
【0072】
本実施の形態では、演算処理部56は、反射光に含まれる検知光の光エネルギーPdと、参照光の光エネルギーPrとを比較することで、路面Sに含まれる成分量を検出する。なお、光エネルギーPdは、第一受光部33から出力される第一電気信号の強度に対応し、光エネルギーPrは、第二受光部43から出力される第二電気信号の強度に対応する。
【0073】
光エネルギーPdは、次の(式3)で表される。
【0074】
(式3) Pd=Pd0×Gd×Rd×Td×Aad×Ivd
【0075】
ここで、Pd0は、光源22が発した光のうち、検知光をなす第一波長帯の光の光エネルギーである。Gdは、第一波長帯の光の第一受光部33に対する結合効率(集光率)である。具体的には、Gdは、光源22が発した光のうち、路面Sで拡散反射される成分の一部(すなわち、反射光に含まれる検知光)になる部分の割合に相当する。
【0076】
Rdは、路面Sによる検知光の反射率である。Tdは、第一バンドパスフィルタ32により検知光の透過率である。Ivdは、第一受光部33における反射光に含まれる検知光に対する受光感度である。
【0077】
Aadは、路面Sに含まれる成分(水分)による検知光の吸収率あり、次の(式4)で表される。
【0078】
(式4) Aad=10
−αa×Ca×D
【0079】
ここで、αaは、予め定められた吸光係数であり、具体的には、成分(水分)による検知光の吸光係数である。Caは、路面Sに含まれる成分(水分)の体積濃度である。Dは、検知光の吸収に寄与する成分の厚みの2倍である寄与厚みである。
【0080】
より具体的には、水分が均質に分散した路面Sでは、光が路面Sに入射し、反射して路面Sから出射する場合において、Caは、路面Sの成分に含まれる体積濃度に相当する。また、Dは、反射して路面Sから出射するまでの光路長に相当する。例えば、Caは、路面Sを覆っている液相に含まれる水分の濃度である。また、Dは、路面Sを覆っている液相の平均的な厚みとして換算される寄与厚みである。
【0081】
したがって、αa×Ca×Dは、路面Sに含まれる成分量(水分量)に相当する。以上のことから、路面Sに含まれる水分量に応じて、第一電気信号の強度に相当する光エネルギーPdが変化することが分かる。なお、水分と比べて湿気の吸光度は極端に小さいので、無視することができる。
【0082】
同様に、第二受光部43に入射する参照光の光エネルギーPrは、次の(式5)で表される。
【0083】
(式5) Pr=Pr0×Gr×Rr×Tr×Ivr
【0084】
本実施の形態では、参照光は、路面Sに含まれる成分によって実質的には吸収されないとみなすことができるので、(式3)と比較して分かるように、水分による吸収率Aadに相当する項は(式5)には含まれていない。
【0085】
(式5)において、Pr0は、光源22が発した光のうち、参照光をなす第二波長帯の光の光エネルギーである。Grは、光源22が発した参照光の第二受光部43に対する結合効率(集光率)である。具体的には、Grは、参照光のうち、路面Sで拡散反射される成分の一部(すなわち、反射光に含まれる参照光)になる部分の割合に相当する。Rrは、路面Sによる参照光の反射率である。Trは、第二バンドパスフィルタ42による参照光の透過率である。Ivrは、第二受光部43の反射光に対する受光感度である。
【0086】
本実施の形態では、光源22から照射される光、つまり、検知光と参照光とは、同軸かつ同スポットサイズで照射されるため、検知光の結合効率Gdと参照光の結合効率Grとは略等しくなる。また、検知光と参照光とはピーク波長が比較的近いので、検知光の反射率Rdと参照光の反射率Rrとが略等しくなる。
【0087】
したがって、(式3)と(式5)との比(信号比)を取ることにより、次の(式6)が導き出される。
【0089】
ここで、Zは、定数項であり、(式7)で示される。
【0090】
(式7) Z=(Pd0/Pr0)×(Td/Tr)×(Ivd/Ivr)
【0091】
光エネルギーPd0及びPr0はそれぞれ、光源22の初期出力として予め定められている。また、透過率Td及び透過率Trはそれぞれ、第一バンドパスフィルタ32及び第二バンドパスフィルタ42の透過特性により予め定められている。受光感度Ivd及び受光感度Ivrはそれぞれ、第一受光部33及び第二受光部43の受光特性により予め定められている。したがって、(式7)で示されるZは、定数とみなすことができる。
【0092】
演算処理部56は、第一電気信号に基づいて検知光の光エネルギーPdを算出し、第二電気信号に基づいて参照光の光エネルギーPrを算出する。具体的には、第一電気信号の信号レベル(電圧レベル)が光エネルギーPdに相当し、第二電気信号の信号レベル(電圧レベル)が光エネルギーPrに相当する。
【0093】
したがって、演算処理部56は、(式6)に基づいて、路面Sに含まれる水分の吸収率Aadを算出することができる。これにより、演算処理部56は、(式4)に基づいて水分量を算出することができる。
【0094】
ここで、水分量センサ1は、例えば100msecなどの微小な時間間隔で路面Sに対して光を照射して、その都度路面Sに対する第一電気信号及び第二電気信号の信号比を求めている。このため、第一状態の時間帯及び第二状態の時間帯では、それぞれひとつの時間帯内において複数回、信号比が求められる。上述したように、第二状態の時間帯での第一電気信号と第二電気信号を用いると不正確な値となってしまうので、第一状態の時間帯での信号比のみを用いて水分量を検出する。具体的には、演算処理部56は、一回の第一状態の時間帯内で得られた複数の信号比の平均値に基づいて、水分量を検出している。これにより、検出した水分量の確度を高めることができる。
【0095】
なお、空間3には湿気(水蒸気)も存在しているが、水蒸気によって検知光及び参照光が吸収される場合も想定される。この水蒸気による吸収分をキャンセルするように第一電気信号及び第二電気信号を補正する補正部を信号処理回路50に設けてもよい。
【0096】
[路面状態検出装置の動作]
次いで、路面状態検出装置100の動作について説明する。まず制御部120は、水分量センサ1を制御して、路面S上の水分量を検出させる。このとき、水分量センサ1の演算処理部56は、第一状態となる毎に、当該第一状態の時間帯内で平均化した水分量を求めている。また、演算処理部56は、検出した水分量と、範囲外時間帯と、危険度テーブルとに基づいて、路面S上の危険度を判断する。一方、演算処理部56は、温度テーブルと、所定の時間内における範囲外時間帯の頻度と、温度センサ60の検出した温度とに基づいて、路面S上の温度を推定する。また、演算処理部56は、推定した路面S上の温度に基づいて、路面Sに含まれる水の状態を判断する。演算処理部56は、路面S上の危険度と、水の状態とを制御部120に出力する。
【0097】
制御部120は、表示部110を制御して、水分量センサ1で検出された水分量に基づく情報を表示部110に表示させる。水分量に基づく情報には、路面S上の危険度、水の状態、これらに基づき決定された表示内容などが含まれる。具体的には、演算処理部56の判断結果が、水の状態「固体」、危険度「高い」である場合には、制御部120は、例えば「路面凍結中。速度落とせ。」などと注意喚起の表示を表示部110に表示させる。演算処理部56の判断結果が、水の状態「液体」、危険度「高い」である場合には、制御部120は、例えば「速度落とせ。」などと注意喚起の表示を表示部110に表示させる。演算処理部56の判断結果が、危険度「低い」である場合には、制御部120は、表示部110に注意喚起の表示を行わせない。なお、水分量センサ1で検出された水分量を表示部110に表示させてもよい。
【0098】
[効果など]
以上のように、本実施の形態によれば、路面Sに対して光を発し、当該路面Sからの反射光に基づいて路面Sの水分量を検出する水分量センサ1であって、水による吸収が所定値よりも大きな第一波長帯を含む検知光と、水による吸収が所定値以下である第二波長帯を含む参照光とを、光として路面Sに向けて発する発光部20と、路面Sによって反射された検知光を受光し、第一電気信号に変換する第一受光部33と、路面Sによって反射された参照光を受光し、第二電気信号に変換する第二受光部43と、第一電気信号及び第二電気信号の信号比に基づいて、路面Sが含む水分量を検出する演算処理部56と、を備え、演算処理部56は、第一電気信号及び第二電気信号の少なくとも一方の信号強度が、基準値を基準とした所定の範囲内にある場合の信号比に基づいて、水分量を検出する。
【0099】
これによれば、車両Vの通過の影響で、所定の範囲内に収まらなかった信頼性の低い信号比を排除することができる。これにより、水分量の検出には、所定の範囲内に収まった信頼性の高い信号比を用いることができる。したがって、路面S上を移動する車両Vの影響を抑制して、検出結果の正確性を高めることができる。
【0100】
また、演算処理部56は、第一電気信号及び第二電気信号の少なくとも一方の信号強度が、所定の範囲内にある場合の信号比の平均値に基づいて、水分量を検出する。
【0101】
これによれば、演算処理部56は、第一状態の時間帯内で得られた複数の信号比の平均値に基づいて、水分量を検出しているので、検出した水分量の確度を高めることができる。
【0102】
また、演算処理部56は、第二電気信号の信号強度が所定の範囲内にある場合の信号比に基づいて、前記水分量を検出する。
【0103】
これによれば、水の影響を受けにくい参照光を起因とした第二電気信号の信号強度が所定の範囲内にある場合の信号比に基づいて、水分量を検出することができる。
【0104】
また、演算処理部56には、第一電気信号及び第二電気信号の少なくとも一方の信号強度が所定の範囲外となる範囲外時間帯と水分量との関係から路面S上の危険度を判断するための危険度テーブルが備えられており、演算処理部56は、範囲外時間帯を算出して、当該範囲外時間帯と、検出した水分量と、危険度テーブルとに基づいて、危険度を判断する。
【0105】
これによれば、水分量と範囲外時間帯とに基づいて、路面Sに対する車両Vの現在の危険度を判断することができる。
【0106】
また、水分量センサ1の周囲の温度を検出する温度センサ60を備え、演算処理部56には、第一電気信号及び第二電気信号の少なくとも一方の信号強度が、所定の時間内において所定の範囲外となる頻度と温度との関係から路面S上の温度を判断するための温度テーブルが備えられており、演算処理部56は、頻度を算出して、当該頻度と、温度センサが検出した温度と、温度テーブルとに基づいて、路面S上の温度を推定する。
【0107】
これによれば、前記頻度と、温度センサが検出した水分量センサ1の周囲の温度とに基づいて、路面S上の温度を推定することができる。このため、例えば、赤外線温度センサなどの非接触式の温度センサを採用した場合と比べても、コストを抑制することができる。なお、路面Sの温度を検出するために、非接触式の温度センサを採用してもよい。
【0108】
また、演算処理部56は、推定した路面S上の温度に基づいて、当該路面Sに含まれる水の状態を判断する。
【0109】
これによれば、推定した路面S上の温度に基づいて、路面Sに含まれる水が、液体であるか固体であるかを判断することができる。したがって、路面Sの滑りやすさを判断することできる。
【0110】
また、本実施の形態に係る路面状態検出装置100は、上記の水分量センサ1と、水分量センサ1で検出された水分量に基づく情報を表示する表示部110とを備えている。
【0111】
これによれば、表示部110から水分量に基づく情報を報知することができる。したがって、報知された人は、水分量に関する対策を講じやすくなる。
【0112】
(その他)
以上、本発明に係る水分量センサ1について、上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。
【0113】
例えば、上記実施の形態では、光源22がLED光源である場合を例示したが、光源は半導体レーザ素子又は有機EL素子などでもよい。
【0114】
また、上記実施の形態では、検知光をなす第一波長帯と参照光をなす第二波長帯とを含む連続した光を1つの光源22が発する場合を例示して説明した。しかしながら、複数の光源を設け、1つの光源が検知光を発し、他の光源が参照光を発するようにしてもよい。
【0115】
また、上記実施の形態では、信号処理回路50に備わる光源制御部51、第一信号処理部54、第二信号処理部55及び演算処理部56がそれぞれ専用のマイクロコントローラからなる場合を例示して説明したが、信号処理回路は、全体として1つのマイクロコントローラで実現されてもよい。
【0116】
また、上記実施の形態では、車道に対して路面状態検出装置100が設置された場合を例示した。しかし、路面状態検出装置100は、それ以外の施設に設置することも可能である。例えば、ショッピングモールなどの商業施設に設置することも可能である。商業施設内においては、雨、雪以外にも、アトラクションとして散布された水、人物がこぼした飲料などによって、路面の状態が変動する。このように、商業施設内に路面状態検出装置100を設置すれば、商業施設内にいる人々に路面状態を報知することが可能である。また、路面上を移動する人物、ショッピングカートなどが水分量センサ1からの光を遮ることがある。この場合においても、上記の路面状態検出装置100であれば、水分量センサ1の直下を通過する移動体の影響を抑制しているので、路面状態を正確に判断することが可能である。
【0117】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。