(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の指示信号は、前記符号変調器に前記第1の交流電力を符号変調させるタイミングを示す第1のタイミング情報と、前記変調符号に関する第1の符号情報とを含み、
前記第2の指示信号は、前記変換器に前記符号変調電力を変換させるタイミングを示す第2のタイミング情報と、前記変換符号に関する第2の符号情報とを含む、
請求項11から15のいずれか一項に記載のコントローラ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係る参考形態及び実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の参考形態及び実施形態において、同様の構成要素については同一の符号及び/又は同一の名称を付している。
【0012】
以下の説明は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下に示される数値、符号、波形、素子の種類、素子の配置及び接続、信号の流れ、回路ブロックなどは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。加えて、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素は、任意の構成要素である。
【0013】
(第1の参考形態)
[1.電力伝送システム]
図1は、第1の参考形態に係る電力伝送システム100の構成を示す。電力伝送システム100は、発電機1と、符号変調器2と、伝送路3と、符号復調器4と、負荷5と、コントローラ10とを備える。
【0014】
発電機1は、電力(例えば直流電力)を発電する。符号変調器2は、発電電力を変調符号で符号変調し、これによって符号変調電力(すなわち符号変調波)を生成する。符号変調電力は、伝送路3を介して符号変調器2から符号復調器4に送電される。伝送路3は、例えば、有線伝送路である。符号復調器4は、符号変調電力を復調符号で符号復調し、これによって電力(例えば直流電力)を得る。得られた電力は、例えば、負荷5に供給される。
【0015】
変調符号及び復調符号は、それぞれ、所定の符号系列からなる信号である。
【0016】
符号変調電力は、電流の向き又は電圧の極性が周期的又は非周期的に反転するような電力である。符号変調電力は、例えば、その極性が所定の期間(例えば、ある単位期間の整数倍となる期間)毎に変化するような波形を有する。
【0017】
発電機1は、例えば、電力測定器1mを有する。電力測定器1mは、発電機1の発電量を測定し、これをコントローラ10に送信する。この発電量は、例えば、発電機1から符号変調器2に送電される電力量に相当する。なお、電力測定器1mは、符号変調器2の前段に設けられてもよい。
【0018】
負荷5は、例えば、電力測定器5mを有する。電力測定器5mは、負荷5の電力使用量を測定し、これをコントローラ10に送信する。この電力使用量は、例えば、符号復調器4から負荷5に送電される電力量に相当する。なお、電力測定器5mは、符号復調器4の後段に設けられてもよい。
【0019】
発電機1及び負荷5は、例えば、電池やキャパシタ等の蓄電装置であってもよい。この場合、例えば、消費電力が少ない時間帯に発電された電力が蓄電され、この蓄電された電力が有効に活用されうる。これにより、システム全体の電力効率を向上させることができる。
【0020】
コントローラ10は受信した各電力量に基づいて、符号変調器2と符号復調器4の動作を制御する。例えば、コントローラ10は、符号変調器2及び符号復調器4に、指示信号を送信する。
【0021】
指示信号は、符号変調器2の動作と符号復調器4の動作とを同期させるための同期信号を含む。符号変調器2に送信される指示信号は、例えば、発電電力を符号変調するタイミングを示すタイミング情報を含む、符号復調器4に送信される指示信号は、例えば、符号変調電力を符号復調するタイミングを示すタイミング情報を含む。これにより、電力の符号変調及び符号復調を正確に同期させることができる。
【0022】
符号変調器2に送信される指示信号は、例えば、変調符号に関する符号情報を含み、符号復調器4に送信される指示信号は、例えば、復調符号に関する符号情報を含む。本開示において、「符号情報」とは、符号系列そのものであってもよいし、複数の符号系列から特定の1つを指定するための指定情報であってもよいし、符号系列を生成するためのパラメータ情報であってもよい。
【0023】
例えば、コントローラ10は、符号変調器2に、変調符号の符号系列を送信し、符号復調器4に復調符号の符号系列を送信してもよい。
【0024】
例えば、コントローラ10は、変調符号の符号系列を指定する指定情報を符号変調器2に送信し、符号変調器2はこの指定情報に基づいて変調符号を生成してもよい。コントローラ10は、復調符号の符号系列を指定する指定情報を符号復調器4に送信し、符号復調器4はこの指定情報に基づいて復調符号を生成してもよい。
【0025】
あるいは、変調符号は符号変調器2において予め設定されていてもよく、復調符号は符号復調器4において予め設定されていてもよい。
【0026】
例えば、電力伝送システム100が、複数の発電機1と、複数の符号変調器2と、複数の符号復調器4と、複数の負荷5とを備える場合を想定する。この場合、例えば、コントローラ10が、複数の符号変調器2から選択された1つに対して変調符号の符号情報を送信し、かつ、複数の符号復調器4から選択された1つに対して復調符号の符号情報を送信する。これにより、選択された符号変調器2に接続されている発電機1から、選択された符号復調器4に接続されている負荷5へ、電力が伝送されうる。
【0027】
なお、
図1には、発電電力、符号変調電力、及び符号復調電力の代わりに、発電電流I1、符号変調電流I2、及び符号復調電流I3が示されている。以下では、電流が変調/復調される例が説明されるが、本開示はこれに限定されず、例えば電圧が変調/復調されてもよい。以下の説明における「電流」は、適宜「電圧」又は「電力」に読み替えることができる。
【0028】
[2.符号変調電力の伝送効率]
図2は、変調電流I2の波形の例を示す。また、
図3は、比較例に係る変調電流I2aの波形の例を示す。
図2中の“1”と“−1”は、変調電流I2の各期間の電流値に対応する符号を示している。
図3中の“1”と“0”は、変調電流I2aの各期間の電流値に対応する符号を示している。“1”と“0”からなる符号系列は、典型的な通信システムにおいて用いられる変調符号に相当する。
【0029】
図2に示される例では、符号変調器2は、発電電流I1を、“1”と“−1”の符号を有する変調波(すなわち変調電流I2)に変換している。そのため、変調電流I2が符号“1”を示す期間には、符号変調器2から符号復調器4へ正の電流が伝送され、変調電流I2が符号“−1”を示す期間(例えば
図2中の期間Ta)には、符号変調器2から符号復調器4へ負の電流が伝送される。したがって、いずれの期間においても電力が伝送され、これにより、高い伝送効率が得られる。
【0030】
図3に示される例では、変調電流I2aは、“1”と“0”の符号を有する変調波である。この場合、変調電流I2aが符号“0”を示す期間(例えば
図3中の期間Tb)には、変調電流I2aが0となり、電力が伝送されない。したがって、電力の伝送効率が低下する。
【0031】
図2及び3の比較から、符号変調電力の電流及び/又は電圧が正の値と負の値とを選択的にとる場合、特に、変調符号の符号系列が“0”を含まない場合には、高い伝送効率で電力が伝送されうることが分かる。
【0032】
[3.直流電力の符号変復調]
図4A〜4Cは、それぞれ、発電電流I1、変調電流I2、復調電流I3の波形の例を示す。
【0033】
図4Aに示される発電電流I1は、直流であった。
【0034】
図4Bに示される変調電流I2は、発電電流I1に変調符号M1を乗算することで得られた。この例において、変調符号M1は、次に示される符号系列を有していた。
【0035】
[数1]
M1=[1 -1 1 1 1 -1 -1 -1 1 -1 -1 -1 1 1]
【0036】
変調符号の周波数は35kHzであり、各符号の時間幅は、{1/(35kHz)}/2=14.3マイクロ秒であった。
図4Bに示される期間Tは、変調符号M1の符号系列の1周期を示している。
【0037】
図4Cに示される復調電流I3は、変調電流I2に復調符号D1を乗算することで得られた。この例において、変調符号M1と復調符号D1とは同一の符号系列を有していた。すなわち、復調符号D1は、次に示される符号系列を有していた。
【0038】
[数2]
D1=[1 -1 1 1 1 -1 -1 -1 1 -1 -1 -1 1 1]
【0039】
復調符号の周波数は35kHzであり、各符号の時間幅は14.3マイクロ秒であった。
【0040】
変調電流I2に復調符号D1を乗算した結果は、発電電流I1にM1×D1を乗算した結果に相当する。ここで、M1×D1は、次に示される符号系列を有する。
【0041】
[数3]
M1×D1=[1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1]
【0042】
したがって、
図4Cに示されるように、符号変調と符号復調によって、発電電流I1と同等の直流電流が、復調電流I3として復元された。
【0043】
以上説明したように、本参考形態に係る変復調方法によれば、正確に同期し、かつ、電力損失の少ない電力伝送が実現されうる。
【0044】
例えば、
図4Bに示されるように、変調符号M1が繰り返し使用されることにより、長時間、かつ、高効率で電力を伝送できる。
【0045】
上記の例において、変調符号M1の8番目から14番目までの数字(digit)は、それぞれ、変調符号M1の1番目から7番目までの数字の正負を反転させたものに相当する。
【0046】
[4.符号変調器と符号復調器]
図5は、符号変調器2の構成例を示す。
【0047】
図5において、符号変調器2は、通信回路21と、制御回路25と、Hブリッジ回路23とを備える。制御回路25は、例えば、制御IC20とゲートドライバ22とを含む。
【0048】
通信回路21は、コントローラ10からの指示信号を受信して制御IC20に出力する。通信回路21は、例えば、アンテナと、同調回路と、検波器とを含む。
【0049】
指示信号は、例えば、同期信号と、変調符号の符号情報とを含む。同期信号は、例えば、変調を開始させるトリガー信号であってもよいし、変調を終了させるトリガー信号であってもよい。あるいは、同期信号は、例えば、変調を開始すべき時刻を示す時刻情報であってもよいし、変調を終了すべき時刻を示す時刻情報であってもよい。これらのトリガー信号及び時刻情報は、本開示における「タイミング情報」の例である。
【0050】
制御IC20は、指示信号に基づいて変調符号を生成し、この変調符号に応じた制御信号をゲートドライバ22に生成させる。制御IC20は、プロセッサを含む。制御IC20は、例えばマイコンである。
【0051】
ゲートドライバ22は、制御信号をHブリッジ回路23に出力し、これにより、Hブリッジ回路23に符号変調動作を実行させる。
【0052】
符号変調器2は、発電機1に接続される入力端子T1、T2と、伝送路3に接続される出力端子T3、T4とを有する。
【0053】
図6は、符号復調器4の構成例を示す。
【0054】
図6において、符号復調器4は、通信回路31と、制御回路35と、Hブリッジ回路33とを備える。制御回路35は、例えば、制御IC30とゲートドライバ32とを含む。
【0055】
通信回路31は、コントローラ10から指示信号を受信して制御IC30に出力する。通信回路31は、例えば、アンテナと、同調回路と、検波器とを含む。
【0056】
指示信号は、例えば、同期信号と、復調符号の符号情報とを含む。同期信号は、例えば、復調を開始させるトリガー信号であってもよいし、復調を終了させるトリガー信号であってもよい。あるいは、同期信号は、例えば、復調を開始すべき時刻を示す時刻情報であってもよいし、復調を終了すべき時刻を示す時刻情報であってもよい。これらのトリガー信号及び時刻情報は、本開示における「タイミング情報」の例である。
【0057】
制御IC30は、指示信号に基づいて復調符号を生成し、この復調符号に応じた制御信号をゲートドライバ32に生成させる。制御IC30は、プロセッサを含み、例えばマイコンである。
【0058】
ゲートドライバ32は、制御信号をHブリッジ回路33に出力し、これにより、Hブリッジ回路33に符号復調動作を実行させる。
【0059】
符号復調器4は、伝送路3に接続される入力端子T11、T12と、負荷5に接続される出力端子T13、T14とを有する。
【0060】
図1において、コントローラ10は、伝送路3とは異なる経路で、符号変調器2及び符号復調器4に制御信号を送信している。しかし、コントローラ10は、伝送路3を介して、符号変調器2及び符号復調器4に制御信号を送信してもよい。この場合、制御信号は、例えば、符号変調電力と多重化されて伝送されうる。これにより、例えば、コントローラ10から符号変調器2及び符号復調器4への通信経路が削減され、コストが低減されうる。
【0061】
図7は、符号変調器2における制御回路25及びHブリッジ回路23、並びに、符号復調器4における制御回路35及びHブリッジ回路33の構成例を示す。
【0062】
図7において、Hブリッジ回路23は、フルブリッジ接続された4個のスイッチ回路SS1〜SS4を備える。例えば、スイッチ回路SS1、SS2、SS3、及びSS4は、それぞれ、スイッチS1、S2、S3、及びS4を含む。
【0063】
図7において、Hブリッジ回路33は、フルブリッジ接続された4個のスイッチ回路SS11〜SS14を備える。例えば、スイッチ回路SS11、SS12、SS13、及びSS14は、それぞれ、スイッチS11、S12、S13、及びS14を含む。
【0064】
スイッチS1〜S4及びS11〜S14のそれぞれは、例えば、双方向スイッチであってもよく、MOSトランジスタであってもよい。
【0065】
制御回路25は、所定の符号系列m1、m2を生成する。制御回路25は、符号系列m1をスイッチS1、S4に制御信号として出力し、符号系列m2をスイッチS2、S3に制御信号として出力する。
【0066】
例えば、スイッチS1〜S4は、“1”を示す信号が入力されている間、オン状態となり、“0”を示す信号が入力されている間、オフ状態となる。スイッチS1がオン状態のとき、端子T1から端子T3に電流が流れる。スイッチS3がオン状態のとき、端子T1から端子T4に電流が流れる。スイッチS2がオン状態のとき、端子T3から端子T2に電流が流れる。スイッチS4がオン状態のとき、端子T4から端子T2に電流が流れる。
【0067】
制御回路35は、所定の符号系列d1、d2を生成する。制御回路35は、符号系列d1をスイッチS12、S13に制御信号として出力し、符号系列d2をスイッチS11、S14に制御信号として出力する。
【0068】
例えば、スイッチS11〜S14は、“1”を示す信号が入力されている間、オン状態となり、“0”を示す信号が入力されている間、オフ状態となる。スイッチS11がオン状態のとき、端子T12から端子T13に電流が流れる。スイッチS13がオン状態のとき、端子T11から端子T13に電流が流れる。スイッチS12がオン状態のとき、端子T14から端子T12に電流が流れる。スイッチS14がオン状態のとき、端子T14から端子T11に電流が流れる。
【0069】
図7において、実線矢印で示される方向に流れる電流は、正の電流と見なされる。
図7において、符号変調器2と符号復調器4は、電流の流れる向きが互いに反対である点を除き、対称な構造を有する。
【0070】
[5.動作]
[5−1.制御信号]
表1は、符号変調器2のスイッチS1〜S4に入力される制御信号m1、m2の符号系列の例と、符号復調器4のスイッチS11〜S14に入力される制御信号d1、d2の符号系列の例を示す。
【0072】
この例において、制御信号m1の符号系列と、制御信号d1の符号系列は、同じ符号系列c1aであり、制御信号m2の符号系列と、制御信号d2の符号系列は、同じ符号系列c1bである。符号系列c1bは、符号系列c1aの全ビットをビット反転したものである。
【0073】
[5−2.符号変調器の動作]
符号変調器2の動作について説明する。
【0074】
制御信号m1が“1”であって、かつ、制御信号m2が“0”のとき、スイッチS1、S4はオン状態であり、かつ、スイッチS2、S3はオフ状態である。このとき、符号変調器2に入力された正の発電電流I1は、
図7の実線矢印の方向に流れ、これにより、端子T3、T4に正の変調電流I2が流れる。すなわち、発電電流I1は“1”で符号変調される。
【0075】
一方、制御信号m1が“0”であって、かつ、制御信号m2が“1”のとき、スイッチS1、S4はオフ状態であり、かつ、スイッチS2、S3はオン状態である。このとき、符号変調器2に入力された正の発電電流I1は、
図7の点線矢印の方向に流れ、これにより、端子T3、T4に負の変調電流I2が流れる。すなわち、発電電流I1は“−1”で符号変調される。
【0076】
なお、表1の制御信号m1、m2に基づく一連のスイッチ動作は、発電電流I1を下記の変調符号Maで符号変調する操作に相当する。
【0077】
[数4]
Ma=[1 -1 1 1 1 -1 -1]
【0078】
したがって、符号変調器2は、発電電流I1を変調符号Maで符号変調し、変調電流I2を、端子T3、T4を介して伝送路3に出力する。
【0079】
[5−3.符号復調器の動作]
符号復調器4の動作について説明する。
【0080】
制御信号d1、d2は、制御信号m1、m2と同期している。したがって、正の変調電流I2が符号復調器4に入力されるとき、制御信号d1は“1”であって、かつ、制御信号d2は“0”である。このとき、スイッチS13、S12はオン状態であって、かつ、スイッチS11、S14はオフ状態である。そのため、正の変調電流I2は、
図7実線矢印の方向に流れ、これにより、端子T13、T14に正の復調電流I3が流れる。すなわち、変調電流I2は“1”で符号復調される。
【0081】
一方、負の変調電流I2が符号復調器4に入力されるとき、制御信号d1は“0”であって、かつ、制御信号d2は“1”である。このとき、スイッチS11、S14はオン状態であって、かつ、スイッチS12、S13はオフ状態である。そのため、負の変調電流I2は、
図7の実線矢印の方向に流れ、これにより、端子T13、T14に正の復調電流I3が流れる。すなわち、変調電流I2は“−1”で符号復調される。
【0082】
なお、表1の制御信号d1、d2に基づく一連のスイッチ動作は、変調電流I2を下記の復調符号Daで符号復調する操作に相当する。
【0083】
[数5]
Da=[1 -1 1 1 1 -1 -1]
【0084】
したがって、符号復調器4は、変調電流I2を復調符号Daで符号復調し、正の復調電流I3を端子T13、T14を介して出力する。
【0085】
[5−4.制御信号の他の例]
表2は、制御信号m1、m2、d1、d2の符号系列の他の例を示す。
【0087】
表1に示される制御信号m1、m2の符号系列は、“1”の数と“0”の数が等しくない。そのため、変調符号Maの符号系列は、“1”の数と“−1”の数が等しくない。このような場合、変調電流I2の平均は0とならず、変調電流I2は、交流成分以外にわずかに直流成分を含む。
【0088】
一方、表2において、制御信号m1、d1は、符号系列c1aと符号系列c1bが縦続に連結された符号系列[c1a c1b]を有し、制御信号m2、d2は、符号系列c1bと符号系列c1aが縦続に連結された符号系列[c1b c1a]を有する。上述の通り、符号系列c1bは、符号系列c1aの全ビットをビット反転させたものであるため、これらが連結された符号系列では、“1”の数と“0”の数とが等しくなる。これにより、変調電流I2は、直流成分を含まないようにすることもできる。
【0089】
(第2の参考形態)
第2の参考形態に係る電力伝送システムは、発電電力が交流であることを除き、第1の参考の形態で説明された電力伝送システム100と同じである。以下では、第2の参考形態のうち、第1の参考形態と異なる点について説明される。
【0090】
[1.交流電力の符号変復調]
図8A−8Cは、それぞれ、発電電流I1、変調電流I2、復調電流I3の波形の例を示す。
【0091】
図8Aに示される発電電流I1は、周波数5kHzの矩形波形を有する交流であった。
図8Bに示される変調電流I2は、発電電流I1に変調符号M1を乗算することによって得られた。
図8Cに示される復調電流I3は、変調電流I2に復調符号D1を乗算することによって得られた。変調符号M1及び復調符号D1は、第1の参考形態で説明されたものと同じであった。
図8Cに示されるように、符号変調と符号復調によって、発電電流I1と同等の交流電流が、復調電流I3として復元された。
【0092】
したがって、発電電力が交流電力の場合にも、発電電力が直流電力である場合と同様に、高い伝送効率で電力が伝送されうる。
【0093】
[2.符号変調器と符号復調器]
図9は、第2参考形態に係る符号変調器2における制御回路25A及びHブリッジ回路23Aの構成例を示す。
図9に示される回路は、
図7に示される回路に対して、以下の点が異なる。
【0094】
(1)
図7に示されるスイッチ回路SS1〜SS4の代わりに、双方向スイッチ回路SS21〜SS24が設けられている。
(2)
図7に示される制御回路25の代わりに、制御回路25Aが設けられている。制御回路25Aは、符号系列m1〜m4をHブリッジ回路23Aに制御信号として出力する。
【0095】
スイッチ回路SS21は、
図7に示されるようなスイッチS1に加えて、スイッチS1と逆方向かつ並列に接続されたスイッチS21を含む。スイッチS21は、制御信号m3に応答してオンオフされる。スイッチ回路SS22は、
図7に示されるようなスイッチS2に加えて、スイッチS2と逆方向かつ並列に接続されたスイッチS22を含む。スイッチS22は、制御信号m4に応答してオンオフされる。スイッチ回路SS23は、
図7に示されるようなスイッチS3に加えて、スイッチS3と逆方向かつ並列に接続されたスイッチS23を含む。スイッチS23は、制御信号m4に応答してオンオフされる。スイッチ回路SS24は、
図7に示されるようなスイッチS4に加えて、スイッチS4と逆方向かつ並列に接続されたスイッチS24を含む。スイッチS24は、制御信号m3に応答してオンオフされる。
【0096】
スイッチS21〜S24は、例えば、MOSトランジスタである。
【0097】
図10は、第2参考形態に係る符号復調器4における制御回路35A及びHブリッジ回路33Aの構成例を示す。
図10に示される回路は、
図7に示される回路に対して、以下の点が異なる。
【0098】
(1)
図7に示されるスイッチ回路SS11〜SS14の代わりに、双方向スイッチ回路SS31〜SS34が設けられている。
(2)
図7に示される制御回路35の代わりに、制御回路35Aが設けられている。制御回路35Aは、符号系列d1〜d4をHブリッジ回路33Aに制御信号として出力する。
【0099】
スイッチ回路SS31は、
図7に示されるようなスイッチS11に加えて、スイッチS11と逆方向かつ並列に接続されたスイッチS31を含む。スイッチS31は、制御信号d4に応答してオンオフされる。スイッチ回路SS32は、
図7に示されるようなスイッチS12に加えて、スイッチS12と逆方向かつ並列に接続されたスイッチS32を含む。スイッチS32は、制御信号d3に応答してオンオフされる。スイッチ回路SS33は、
図7に示されるようなスイッチS13に加えて、スイッチS13と逆方向かつ並列に接続されたスイッチS33を含む。スイッチS33は、制御信号d3に応答してオンオフされる。スイッチ回路SS34は、
図7に示されるようなスイッチS14に加えて、スイッチS14と逆方向かつ並列に接続されたスイッチS34を含む。スイッチS34は、制御信号d4に応答してオンオフされる。
【0100】
スイッチS31〜S34は、例えば、MOSトランジスタである。
【0101】
[3.動作]
[3−1.制御信号]
表3は、符号変調器2のスイッチS1〜S4、S21〜S24に入力される制御信号m1〜m4の符号系列の例と、符号復調器4のスイッチS11〜S14、S31〜S34に入力される制御信号d1〜d4の符号系列の例を示す。
【0103】
この例において、制御信号m1、m2、m3、及びm4の符号系列は、それぞれ、制御信号d1、d2、d3、及びd4の符号系列と同一である。表3において、符号系列c1bは、符号系列c1aの全ビットをビット反転させたものであり、符号系列c0は、全ビットが“0”の符号系列である。符号系列c1a、c1b、c0の時間幅は、交流の発電電流I1の半周期と一致している。
【0104】
[3−2.符号変調器の動作]
符号変調器2の動作について説明する。ここでは、発電電流I1が、第1半周期(すなわち、1周期の前半部分)において正となり、第2半周期(すなわち、1周期の後半部分)において負となる場合を想定する。
【0105】
[3−2−1.第1半周期における符号変調器の動作]
第1半周期において、スイッチS1〜S4は制御信号m1、m2によってオンオフされ、スイッチS21〜S24はオフ状態に維持される。
【0106】
制御信号m1が“1”であって、かつ、制御信号m2が“0”のとき、スイッチS1、S4はオン状態であり、スイッチS2、S3がオフ状態である。このとき、正の発電電流I1は、
図9の矢印A1の方向に流れ、これにより、端子T3、T4に正の変調電流I2が流れる。すなわち、発電電流I1は“1”で符号変調される。
【0107】
一方、制御信号m1が“0”であって、かつ、制御信号m2が“1”のとき、スイッチS1、S4はオフ状態であり、かつ、スイッチS2、S3はオン状態である。このとき、正の発電電流I1は、
図9の矢印A2の方向に流れ、これにより、端子T3、T4に負の変調電流I2が流れる。すなわち、発電電流I1は“−1”で符号変調される。
【0108】
したがって、符号変調器2は、第1半周期において、端子T3、T4を介して伝送路3に変調電流I2を出力する。
【0109】
[3−2−2.第2半周期における符号変調器の動作]
第2半周期において、スイッチS1〜S4はオフ状態に維持され、スイッチS21〜S24が制御信号m3、m4によってオンオフされる。
【0110】
制御信号m3が“1”であって、かつ、制御信号m4が“0”のとき、スイッチS21、S24はオン状態であり、かつ、スイッチS22、S24はオフ状態である。このとき、符号変調器2に入力された負の発電電流I1は、
図9の矢印B1の方向に流れ、これにより、端子T3、T4に負の変調電流I2が流れる。すなわち、発電電流I1は“1”で符号変調される。
【0111】
一方、制御信号m3が“0”であって、かつ、制御信号m4が“1”のとき、スイッチS21、S24はオフ状態であり、かつ、スイッチS22、S23はオン状態である。このとき、符号変調器2に入力された負の発電電流I1は、
図9の矢印B2の方向に流れ、これにより、端子T3、T4に正の変調電流I2が流れる。すなわち、発電電流I1は“−1”で符号変調される。
【0112】
したがって、符号変調器2は、第2半周期においても、端子T3、T4を介して伝送路3に変調電流I2を出力する。
【0113】
[3−2−3.補足]
表3の制御信号m1〜m4に基づく一連のスイッチ動作は、発電電流I1を下記の変調符号Mbで符号変調する操作に相当する。
【0114】
[数6]
Mb=[1 -1 1 1 1 -1 -1 1 -1 1 1 1 -1 -1]
【0115】
変調符号Mbにおいて、“1”の数は“−1”の数よりも多い。しかし、変調電流I2の平均は0となりうる。なぜなら、発電電流I1は第1半周期で正、第2半周期で負となり、かつ、変調符号Mbの第1半周期の部分系列と第2半周期の部分系列は同一であるためである。
【0116】
[3−3.符号復調器の動作]
符号復調器4の動作について説明する。
【0117】
[3−3−1.第1半周期における符号復調器の動作]
第1半周期において、スイッチS11〜S14は制御信号d1、d2によってオンオフされ、スイッチS31〜S34はオフ状態に維持される。
【0118】
第1半周期において正の変調電流I2が符号復調器4に入力されるとき、制御信号d1は“1”であって、かつ、制御信号d2は“0”である。このとき、スイッチS12、S13はオン状態であって、かつ、スイッチS11、S14はオフ状態である。そのため、正の変調電流I2は、
図10の矢印C1の方向に流れ、これにより、端子T13、T14に正の復調電流I3が流れる。すなわち、変調電流I2は“1”で符号復調される。
【0119】
第1半周期において負の変調電流I2が符号復調器4に入力されるとき、制御信号d1は“0”であって、かつ、制御信号d2は“1”である。このとき、スイッチS12、S13はオフ状態であって、かつ、スイッチS11、S14はオン状態である。そのため、負の変調電流I2は、
図10の矢印C1の方向に流れ、これにより、端子T13、T14に正の復調電流I3が流れる。すなわち、変調電流I2は“−1”で符号復調される。
【0120】
したがって、符号復調器4は、第1半周期の間、端子T13、T14を介して正の復調電流I3を出力する。
【0121】
[3−3−2.第2半周期における符号復調器の動作]
第2半周期において、スイッチS11〜S14はオフ状態に維持され、スイッチS31〜S34が制御信号d3、d4によってオンオフされる。
【0122】
第2半周期において正の変調電流I2が符号復調器4に入力されるとき、制御信号d3は“1”であって、かつ、制御信号d4は“0”である。このとき、スイッチS32、S33はオン状態であり、かつ、スイッチS31、S34はオフ状態である。そのため、正の変調電流I2は、
図10の矢印C2の方向に流れ、これにより、端子T13、T14に負の復調電流I3が流れる。すなわち、変調電流I2は“−1”で符号復調される。
【0123】
第2半周期において負の変調電流I2が符号復調器4に入力されるとき、制御信号d3は“0”であって、かつ、制御信号d4は“1”である。このとき、スイッチS32、S33はオフ状態であって、かつ、スイッチS31、S34はオン状態である。そのため、負の変調電流I2は、
図10の矢印C2の方向に流れ、これにより、端子T13、T14に負の復調電流I3が流れる。すなわち、変調電流I2は“1”で符号復調される。
【0124】
したがって、符号復調器4は、第2半周期の間、端子T13、T14を介して負の復調電流I3を出力する。言い換えると、符号復調器4は、復調電流I3は、第1半周期において正となり、第2半周期において負となるような交流を生成し、その波形は発電電流I1の波形と概ね一致する。
【0125】
[3−3−3.補足]
表3の制御信号d1〜d4に基づく一連のスイッチ動作は、変調電流I2を下記の復調符号Dbで符号復調する操作に相当する。
【0126】
[数7]
Db=[1 -1 1 1 1 -1 -1 1 -1 1 1 1 -1 -1]
【0127】
[4.動作の変形例]
表4は、符号変調器2のスイッチS1〜S4、S21〜S24に入力される制御信号m1〜m4の符号系列の変形例と、符号復調器4のスイッチS11〜S14、S31〜S34に入力される制御信号d1〜d4の符号系列の変形例を示す。
【0129】
表4に示される制御信号m3、m4、d3、d4は、スイッチS21〜S24、S31〜S34をオフ状態に維持する。これにより、
図9に示されるHブリッジ回路23A及び
図10に示されるHブリッジ回路33Aは、それぞれ、
図7に示されるHブリッジ回路23及び33と同一の回路となる。
【0130】
加えて、表4に示される制御信号m1、m2、d1、d2は、表2に示される制御信号m1、m2、d1、d2と同一である。そのため、本参考形態に係る符号変調器2及び符号復調器4は、第1の参考形態で説明されたような直流電力の変復調を実現することができる。
【0131】
したがって、本参考形態に係る符号変調器及び符号復調器は、制御信号を変更することで、直流電力の変復調と、交流電力の変復調の両方に対応しうる。
【0132】
直流電力を生成する発電機1は、例えば、太陽光発電機であってもよい。交流電力を生成する発電機1は、例えば、タービンの回転を利用する発電機であってもよい。そのような発電機の例としては、火力発電機、水力発電機、風力発電機、原子力発電機、及び潮力発電機が挙げられる。
【0133】
[5.符号変調器と符号復調器の変形例]
図11は、第2参考形態に係る符号変調器2におけるHブリッジ回路23Bの変形例を示す。
図11に示されるHブリッジ回路23Bは、
図9に示される双方向スイッチ回路SS21〜SS24の代わりに、双方向スイッチ回路SS21A〜SS24Aを備える。
【0134】
双方向スイッチ回路SS21Aは、スイッチS41、スイッチS51、ダイオードDi1、及びダイオードDi11を含む。スイッチS41及びスイッチS51は直列に接続されている。ダイオードDi1は、スイッチS41に並列に接続されている。ダイオードDi11は、スイッチS51に並列に接続されている。ダイオードDi1は、端子T3から端子T1に電流を流す。ダイオードDi11は、端子T1から端子T3に電流を流す。双方向スイッチ回路SS22A〜SS24Aは、双方向スイッチ回路SS21Aと類似の構造を有するため、その説明が省略される。
【0135】
制御回路25Aは、制御信号m1をスイッチS41、S44に出力し、制御信号m2をスイッチS42、S43に出力し、制御信号m3をスイッチS51、S54に出力し、制御信号m4をスイッチS52、S53に出力する。制御信号m1〜m4は、例えば、表3に示されるものであってもよい。
【0136】
図12は、第2参考形態に係る符号復調器4におけるHブリッジ回路33Bの変形例を示す。
図12に示されるHブリッジ回路33Bは、
図10に示される双方向スイッチ回路SS31〜SS34の代わりに、双方向スイッチ回路SS31A〜SS34Aを備える。
【0137】
双方向スイッチ回路SS31Aは、スイッチS61、スイッチS71、ダイオードDi21、及びダイオードDi31を含む。スイッチS61及びスイッチS71は直列に接続されている。ダイオードDi21は、スイッチS61に並列に接続されている。ダイオードDi31は、スイッチS71に並列に接続されている。ダイオードDi21は、端子T13から端子T12に電流を流す。ダイオードDi31は、端子T12から端子T13に電流を流す。双方向スイッチ回路SS32A〜SS34Aは、双方向スイッチ回路SS31Aと類似の構造を有するため、その説明が省略される。
【0138】
制御回路35Aは、制御信号d1をスイッチS62、S63に出力し、制御信号d2をスイッチS61、S64に出力し、制御信号d3をスイッチS72、S73に出力し、制御信号d4をスイッチS71、S74に出力する。制御信号d1〜d4は、例えば、表3に示されるものであってもよい。
【0139】
スイッチS41〜S44、S51〜S54、S61〜S64、S71〜S74は、例えばMOSトランジスタであってもよい。その場合、ダイオードDi1〜Di4、Di11〜Di14、Di21〜Di24、Di31〜Di34は、例えば、MOSトランジスタのボディダイオードであってもよい。これにより、双方向スイッチ回路SS21A〜SS24A、SS31A〜SS34Aが小型化されうる。
【0140】
(第3の参考形態)
第3の参考形態に係る電力伝送システムは、DC−AC変換、又は、AC−DC変換を行うことを除き、第1及び/又は第2の参考の形態で説明された電力伝送システム100と同じである。以下では、第3の参考形態のうち、第1及び第2の参考形態と異なる点について説明される。
【0141】
[1.DC−AC変換を含む符号変復調]
第3の参考形態の第1の動作例では、直流が符号変調され、その後、符号変調された電流が所定の交流に変換された。
【0142】
本動作例において、符号変調器2の制御信号m1〜m4は上記の表4に示される符号系列を有し、符号復調器4の制御信号d1〜d4は上記の表3に示される符号系列を有していた。
【0143】
図13A〜13Cは、それぞれ、本動作例に係る、発電電流I1、変調電流I2、復調電流I3の波形を示す。復調電流I3の周期は、符号系列c1a、c1b、c0の時間幅の2倍であった。
図13A及び13Cの比較から分かるように、直流の発電電流I1が、符号変復調によって、交流の復調電流I3に変換された。
【0144】
なお、本開示における「復調」は、符号変調電力から変調前の電力を復元することに限定されない。「復調」は、例えば、符号変調電力を符号復調して、さらに、その正負を部分的かつ周期的に反転するような所定の変換操作であってもよい。
【0145】
[2.AC−DC変換を含む符号変復調]
第3の参考形態の第2の動作例では、交流が符号変調され、その後、符号変調された電流が所定の電流に変換された。
【0146】
本動作例において、符号変調器2の制御信号m1〜m4は上記の表3に示される符号系列を有し、符号復調器4の制御信号d1〜d4は上記の表4に示される符号系列を有していた。
【0147】
図14A〜14Cは、それぞれ、本動作例に係る、発電電流I1、変調電流I2、復調電流I3の波形を示す。発電電流I1の周期は、符号系列c1a、c1b、c0の時間幅の2倍であった。
図14A及び14Cの比較から分かるように、交流の発電電流I1が、符号変復調によって、直流の復調電流I3に変換された。
【0148】
(第4の参考形態)
[1.電力伝送システム]
図15は、第4の参考形態に係る電力伝送システム200の構成例を示す。
【0149】
電力伝送システム200は、発電機1a、1b、符号変調器2a、2b、伝送路3、符号復調器4a、4b、負荷5a、5b、及び、コントローラ10Aを備える。
【0150】
図15に示される例において、電力伝送システム200は、2つの発電機1a、1bと2つの負荷5a、5bを有するが、発電機の数および負荷の数は、これに限られるものではない。電力伝送システムは、3つ以上の複数の発電機と3つ以上の複数の負荷を備えてもよい。
【0151】
コントローラ10Aは、発電機1a、1bの発電量の情報を電力測定器1ma、1mbから取得し、負荷5a、5bの電力使用量の情報を電力測定器5ma、5mbから取得する。コントローラ10Aは、これらの情報に基づいて、符号変調器2a、2bと、符号復調器4a、4bを制御する。
【0152】
例えば、コントローラ10Aは、符号変調器2a、2b及び/又は符号復調器4a、4bにおける瞬時電力の情報を取得してもよい。これにより、どれだけの電力がどのルートで伝送されたのかが把握されうる。例えば、発電機毎に発電コストが異なる場合や、電力伝送ルートによって送電効率が異なる場合に、発電機や電力伝送ルートに応じた電力供給が実現されうる。また、取得された情報に応じて、発電機や電力伝送ルートに応じた電気料金が算出されてもよい。
【0153】
符号変調器2aは、発電機1aで発電された電力を符号変調し、変調電力を伝送路3に出力する。符号変調器2bは、発電機1bで発電された電力を符号変調し、変調電力を伝送路3に出力する。符号変調器2aおよび2bから出力された複数の変調電力は、合成された後、伝送路3を介して、符号復調器4aおよび4bに伝送される。符号復調器4aは、符号変調器2aによって符号変調された電力を符号復調し、復調電力を負荷5aに出力する。符号復調器4bは、符号変調器2bによって符号変調された電力を符号復調し、復調電力を負荷5bに出力する。
【0154】
これにより、発電機1aから負荷5aへの電力伝送と、発電機1bから負荷5bへの電力伝送とが、共通の伝送路3を介して、同時かつ独立して実行される。
【0155】
複数の異なる電力が共通の伝送路3を介して伝送されるため、伝送路3を簡素化することができる。例えば、伝送路3がケーブルである場合、ケーブルの本数を減らすことができる。
【0156】
複数の変調電力が合成されて同時に伝送されるため、例えば、複数系統の電力を時分割で伝送する方式に較べて、伝送時間を短縮できる。また、符号変復調方式によれば、各電力は独立して伝送されるため、他の電力伝送に影響を与えることなく、電力伝送を行うことができる。
【0157】
符号変調器2a、2bのそれぞれは、任意の変調符号を用いて符号変調を実行することができる。同様に、符号復調器4a、4bのそれぞれは、任意の復調符号を用いて符号復調を実行することができる。そのため、変調符号および復調符号の任意の組み合わせに応じて、符号変調器と符号復調器の間のペアリングを柔軟に変更することができる。例えば、
図15において、発電機1aから負荷5bへの電力伝送と、発電機1bから負荷5aへの電力伝送とが同時に実行されてもよい。また、ペアリングのパターン数が増大しても、回路規模の大型化は抑制される。そのため、小型化の装置で電力電送が実現されうる。
【0158】
[2.動作]
[2−1.複数の直流電力の符号変復調]
第4の参考形態の第1の動作例として、発電機1a、1bが直流電力を出力し、負荷5aに直流電力が入力され、負荷5bに交流電力が入力される場合を示す。
【0159】
本動作例において、符号変調器2aの制御信号m1〜m4、符号復調器4aの制御信号d1〜d4は上記の表4に示される符号系列を有しており、符号変調器2bの制御信号m1〜m4、符号復調器4bの制御信号d1〜d4は下記の表5に示される符号系列を有していた。
【0161】
符号系列c1aと符号系列c2aは互いに異なり、かつ、符号系列c1bと符号系列c2bは互いに異なっていた。符号系列c1aと符号系列c2aは互いに直交し、符号系列c1bと符号系列c2bは互いに直交していた。具体的には、符号系列c1aと符号系列c2aは、互いに異なる7ビットの直交Gold系列であり、かつ、符号系列c1bと符号系列c2bは互いに異なる7ビットの直交Gold系列であった。
【0162】
図16A−16Eは、それぞれ、本動作例における、発電電流I11、発電電流I12、変調電流I2、復調電流I31、及び復調電流I32の波形を示す。
図16A−16Eから示されるように、発電機1aからの直流電力が負荷5aに供給され、発電機1bからの直流電力が交流電力に変換されて負荷5bに供給された。
【0163】
[2−2.複数の交流電力の符号変復調]
第4の参考形態の第2の動作例として、発電機1a、1bが交流電力を出力し、負荷5aに直流電力が入力され、負荷5bに交流電力が入力される場合を示す。
【0164】
本動作例において、符号変調器2aの制御信号m1〜m4は上記の表3に示される符号系列を有しており、符号復調器4aの制御信号d1〜d4は上記の表4に示される符号系列を有しており、符号変調器2bの制御信号m1〜m4、及び、符号復調器4bの制御信号d1〜d4は下記の表6に示される符号系列を有していた。
【0166】
図17A−17Eは、それぞれ、本動作例における、発電電流I11、発電電流I12、変調電流I2、復調電流I31、及び復調電流I32の波形を示す。
図17A−17Eから示されるように、発電機1aからの交流電力が直流電力に変換されて負荷5aに供給され、発電機1bからの交流電力が負荷5bに供給された。
【0167】
(第1の実施形態)
[1.電力伝送システム]
第1の実施形態に係る電力伝送システムは、符号変調器2及び符号復調器4の制御内容を除き、第2の参考形態で説明された電力伝送システム100と同じである。例えば、第1の実施形態に係る電力システムは、符号変調器2及び符号復調器4を制御するためのプログラムが記録されたメモリを除き、第2の参考の形態で説明された電力伝送システム100と同じである。
【0168】
本実施形態において、符号変調器2は、第1の周波数を有する第1の交流電力を符号変調して、符号変調電力を生成する。本実施形態において、符号復調器4は、符号変調電力を復調して、第1の周波数よりも高い第2の周波数を有する第2の交流電力を生成する。言い換えると、符号復調器4は、符号復調と周波数逓倍とを一度に実行させる所定の変換符号を用いて、符号変調電力から第2の交流電力を生成する。なお、本開示では、このような変換符号を、復調符号と呼ぶ場合がある。本実施形態で説明される「復調符号」は、本開示における「変換符号」の一例である。
【0169】
例えば、電力測定器1mは、発電機1によって発電された電力の量及び周波数(すなわち第1の周波数)の情報をコントローラ10Aに送信する。電力測定器5mは、負荷5が要求する電力の量及び周波数(すなわち第2の周波数)の情報をコントローラ10Aに送信する。コントローラ10Aは、これらの情報を基に、符号変調器2と符号復調器4を制御する。
【0170】
[2.動作]
[2−1.第1の動作例]
第1の実施形態の第1の動作例として、符号変調器2が、第1の周波数を有する第1の交流電力から、符号変調電力を生成し、符号復調器4が、符号変調電力から、第1の周波数が2逓倍された第2の周波数を有する第2の交流電力を生成する例を説明する。
【0171】
図18は、本動作例に係る発電電流I1及び復調電流I3の波形を示す。
【0172】
図18において、発電電流I1の周期はTs[秒]であり、その周波数はfs[Hz](=1/Ts)である。復調電流I3の周期はTr[秒]であり、その周波数はfr[Hz](=1/Tr)である。Tc[秒]は、変調符号及び復調符号に含まれる部分系列(後述)の周期である。
【0173】
表7は、符号変調器2に入力される制御信号m1〜m4の符号系列と、符号復調器4に入力される制御信号d1〜d4の符号系列を示す。制御信号m1〜m4、d1〜d4の符号系列は、部分系列c1a、c1b、c0からなる。部分系列c1a、c1bは、上記表1に示されるような直交符号系列であり、部分系列c0は、ゼロ系列である。
【0175】
本動作例では、
図18に示される周期Tcが、部分系列c1a及びc1bのそれぞれの時間長に相当する。
図18では、発電電流I1の周期Tsは、各部分系列の周期Tcの4倍であり、復調電流I3の周期Trは、各部分系列の周期Tcの2倍である。すなわち、発電電流I1の周期Tsは、復調電流I3の周期Trの2倍である。言い換えると、復調電流I3の周波数frは、発電電流I1の周波数fsの2倍である。
【0176】
表7に示される制御信号m1〜m4に基づく一連のスイッチング動作は、発電電流I1を下記の変調符号Mcで符号変調する操作に相当する。また、表7に示される制御信号d1〜d4に基づく一連のスイッチング動作は、変調電流I2を下記の復調符号Dcで符号復調する操作に相当する。
【0177】
[数8]
Mc=[C1 C1 C1 C1]
Dc=[C1 C2 C2 C1]
C1=[1 -1 1 1 1 -1 -1],C2=[-1 1 -1 -1 -1 1 1]
【0178】
表7に示されるように、発電電流I1の周期Tsの第1四半期において、符号変調器2に入力される制御信号m1〜m4と、符号復調器4に入力される制御信号d1〜d4とはそれぞれ一致する。言い換えると、第1四半期において、変調符号Mcの部分系列C1と復調符号Dcの部分系列C1とが一致する。これにより、第1四半期では、正の発電電流I1が、正の復調電流I3として復元される。
【0179】
表7に示されるように、発電電流I1の周期Tsの第2四半期において、符号変調器2に入力される制御信号m1〜m4と、符号復調器4に入力される制御信号d1〜d4とはそれぞれ異なる。ただし、第2四半期において、復調符号Dcの部分系列C2の各ビット値は、変調符号Mcの部分系列C1の対応するビット値を反転した値に相当する。これにより、第2四半期では、正の発電電流I1が、負の復調電流I3に変換される。
【0180】
表7に示されるように、発電電流I1の周期Tsの第3四半期において、符号変調器2に入力される制御信号m1〜m4と、符号復調器4に入力される制御信号d1〜d4とはそれぞれ異なる。ただし、第3四半期において、復調符号Dcの部分系列C2の各ビット値は、変調符号Mcの部分系列C1の対応するビット値を反転した値に相当する。これにより、第3四半期では、負の発電電流I1が、正の復調電流I3に変換される。
【0181】
表7に示されるように、発電電流I1の周期Tsの第4四半期において、符号変調器2に入力される制御信号m1〜m4と、符号復調器4に入力される制御信号d1〜d4とはそれぞれ一致する。言い換えると、第4四半期において、変調符号Mcの部分系列C1と復調符号Dcの部分系列C1が一致する。これにより、第4四半期では、負の発電電流I1が、負の復調電流I3として復元される。
【0182】
これらの動作により、
図18に示されるように、発電電流I1が1サイクル分変化する間に、復調電流I3が2サイクル分変化する。すなわち、発電電流I1の周波数を2逓倍した周波数を有する復調電流I3が生成される。
【0183】
本実施形態では、復調符号を構成する部分系列のうち、復調符号の各ビット値が変調符号の対応するビット値と同じ値をとるものを、第1の部分系列と呼ぶ。復調符号を構成する部分系列のうち、復調符号の各ビット値が変調符号の対応するビット値を反転させた値をとるものを、第2の部分系列と呼ぶ。本動作例の復調符号において、発電電流の周期Tsの第1四半期及び第4四半期における部分系列C1が、第1の部分系列に相当し、発電電流の周期Tsの第2四半期及び第3四半期における部分系列C2が、第2の部分系列に相当する。
【0184】
[2−2.第2の動作例]
第1の実施形態の第2の動作例として、符号変調器2が、第1の周波数を有する第1の交流電力から、符号変調電力を生成し、符号復調器4が、符号変調電力から、第1の周波数が4逓倍された第2の周波数を有する第2の交流電力を生成する例を説明する。
【0185】
図19は、本動作例に係る発電電流I1及び復調電流I3の波形を示す。
【0186】
表8は、符号変調器2に入力される制御信号m1〜m4の符号系列と、符号復調器4に入力される制御信号d1〜d4の符号系列を示す。制御信号m1〜m4、d1〜d4の符号系列は、部分系列c1a、c1b、c0からなる。
【0188】
本動作例において、発電電流I1の周期Tsは、部分系列(例えばc1a、c1b)の周期Tcの8倍であり、復調電流I3の周期Trは、部分系列の周期Tcの2倍である。すなわち、復調電流I3の周波数frが、発電電流I1の周波数fsの4倍である。
【0189】
これにより、
図19に示されるように、発電電流I1が1サイクル分変化する間に、復調電流I3が4サイクル分変化する。すなわち、発電電流I1の周波数を4逓倍した周波数を有する復調電流I3が生成される。
【0190】
[2−2.第3の動作例]
第1の実施形態の第3の動作例として、符号変調器2が、第1の周波数を有する第1の交流電力から、符号変調電力を生成し、符号復調器4が、符号変調電力から、第1の周波数が2逓倍された第2の周波数を有する第2の交流電力を生成する例を説明する。ただし、第3の動作例は、第1の交流電力の周期と、変調符号及び復調符号の部分系列の周期との関係が、第1の動作例と異なる。
【0191】
図20は、本動作例に係る発電電流I1及び復調電流I3の波形を示す。
【0192】
符号変調器2に入力される制御信号m1〜m4の符号系列は、上記の表8と同様である。表9は、本動作例において符号復調器4に入力される制御信号d1〜d4の符号系列を示す。
【0194】
本動作例において、発電電流I1の周期Tsは、部分系列(例えばc1a、c1b)の周期Tcの8倍であり、復調電流I3の周期Trは、部分系列の周期Tcの4倍である。すなわち、復調電流I3の周波数frが、発電電流I1の周波数fsの2倍である。
【0195】
これにより、
図20に示されるように、発電電流I1が1サイクル分変化する間に、復調電流I3が2サイクル分変化する。すなわち、発電電流I1の周波数を2逓倍した周波数を有する復調電流I3が生成される。
【0196】
[2−4.第4の動作例]
第1の実施形態の第4の動作例として、符号変調器2が、第1の周波数を有する第1の交流電力から、符号変調電力を生成し、符号復調器4が、符号変調電力から、第1の周波数が3逓倍された第2の周波数を有する第2の交流電力を生成する例を説明する。
【0197】
図21は、本動作例に係る発電電流I1及び復調電流I3の波形を示す。
【0198】
表10は、符号変調器2に入力される制御信号m1〜m4の符号系列と、符号復調器4に入力される制御信号d1〜d4の符号系列を示す。
【0200】
本動作例において、発電電流I1の周期Tsは、部分系列(例えばc1a、c1b)の周期Tcの6倍であり、復調電流I3の周期Trは、部分系列の周期Tcの2倍である。すなわち、復調電流I3の周波数frが、発電電流I1の周波数fsの3倍である。
【0201】
これにより、
図21に示されるように、発電電流I1が1サイクル分変化する間に、復調電流I3が3サイクル分変化する。すなわち、発電電流I1の周波数を3逓倍した周波数を有する復調電流I3が生成される。
【0202】
[2−5.第5の動作例]
第1の実施形態の第5の動作例として、符号変調器2が、第1の周波数を有する第1の交流電力から、符号変調電力を生成し、符号復調器4が、符号変調電力から、第1の周波数が5逓倍された第2の周波数を有する第2の交流電力を生成する例を説明する。
【0203】
図22は、本動作例に係る発電電流I1及び復調電流I3の波形を示す。
【0204】
表11は、符号変調器2に入力される制御信号m1〜m4の符号系列と、符号復調器4に入力される制御信号d1〜d4の符号系列を示す。
【0206】
本動作例において、発電電流I1の周期Tsは、部分系列(例えばc1a、c1b)の周期Tcの10倍であり、復調電流I3の周期Trは、部分系列の周期Tcの2倍である。すなわち、復調電流I3の周波数frが、発電電流I1の周波数fsの5倍である。
【0207】
これにより、
図22に示されるように、発電電流I1が1サイクル分変化する間に、復調電流I3が5サイクル分変化する。すなわち、発電電流I1の周波数を5逓倍した周波数を有する復調電流I3が生成される。
【0208】
[2−6.補足]
種々の動作例から示されるように、本実施形態に係る符号復調器は、例えば、発電電流I1の周波数のN逓倍(Nは2以上の整数)の周波数を有する復調電流I3を選択的に生成できる。そのため、本実施形態に係る電力伝送システムは、符号変復調によって、発電電流I1の周波数を異なる周波数へと逓倍することができ、所望の周波数を有する交流を負荷5に供給することができる。
【0209】
なお、種々の動作例から示されるように、本実施形態に係る符号変調器は、例えば、発電電流I1の1サイクルを、2N(Nは2以上の整数)個の部分系列が縦続に連結された符号系列で符号変調してもよい。
【0210】
なお、本実施形態に係る電力伝送システムは、第1、第2の参考形態で説明された効果をも奏しうる。
【0211】
[3.変形例]
本実施形態に係る逓倍動作は、例えば、第4の参考形態に係る電力伝送システム200によって実行されてもよい。例えば、
図15に示される符号変調器2a及び符号復調器4aが、上記第1〜第5の動作例のいずれかを実行してもよい。
【0212】
この場合、本実施形態に係る電力伝送システムは、第4の参考形態で説明された効果をも奏しうる。
【0213】
(第2の実施形態)
[1.電力伝送システム]
第2の実施形態に係る電力伝送システムは、符号変調器2及び符号復調器4の制御内容を除き、第2の参考形態で説明された電力伝送システム100と同じである。
【0214】
本実施形態において、符号変調器2は、第1の周波数を有する第1の交流電力を符号変調して、符号変調電力を生成する。本実施形態において、符号復調器4は、符号変調電力を復調して、第1の周波数よりも低い第2の周波数を有する第2の交流電力を生成する。言い換えると、符号復調器4は、符号復調と周波数分周とを一度に実行させる所定の変換符号を用いて、符号変調電力から第2の交流電力を生成する。なお、本開示では、このような変換符号を、復調符号と呼ぶ場合がある。本実施形態で説明される「復調符号」は、本開示における「変換符号」の一例である。
【0215】
コントローラ10Aは、発電電力の量及び周波数の情報と、要求電力の量及び周波数の情報とに基づいて、符号変調器2と符号復調器4とを制御してもよい。
【0216】
[2.動作]
[2−1.第1の動作例]
第2の実施形態の第1の動作例として、符号変調器2が、第1の周波数を有する第1の交流電力から、符号変調電力を生成し、符号復調器4が、符号変調電力から、第1の周波数が2分の1に分周された第2の周波数を有する第2の交流電力を生成する例を説明する。
【0217】
図23は、本動作例に係る発電電流I1及び復調電流I3の波形を示す。
【0218】
図23において、発電電流I1の周期はTs[秒]であり、その周波数はfs[Hz](=1/Ts)である。復調電流I3の周期はTr[秒]であり、その周波数はfr[Hz](=1/Tr)である。Tc[秒]は変調符号及び復調符号に含まれる部分系列(後述)の周期である。
【0219】
表12は、符号変調器2に入力される制御信号m1〜m4の符号系列と、符号復調器4に入力される制御信号d1〜d4の符号系列を示す。制御信号m1〜m4、d1〜d4の符号系列は、部分系列c1a、c1b、c0からなる。部分系列c1a、c1bは、上記表1に示されるような直交符号系列であり、部分系列c0は、ゼロ系列である。
【0221】
本動作例では、
図23に示される周期Tcが、部分系列c1a及びc1bの時間長に相当する。
図23では、発電電流I1の周期Tsは、部分系列の周期Tcの2倍であり、復調電流I3の周期Trは、部分系列の周期Tcの4倍である。すなわち、復調電流I3の周期Trは、発電電流I1の周期Tsの2倍である。言い換えると、復調電流I3の周波数frは、発電電流I1の周波数fsの2分の1である。
【0222】
表12に示される制御信号m1〜m4に基づく一連のスイッチング動作は、発電電流I1を下記の変調符号Mdで符号変調する操作に相当する。また、表12に示される制御信号d1〜d4に基づく一連のスイッチング動作は、変調電流I2を下記の復調符号Ddで符号復調する操作に相当する。
【0223】
[数9]
Md=[C1 C2 C2 C1]
Dd=[C1 C1 C1 C1]
C1=[1 -1 1 1 1 -1 -1],C2=[-1 1 -1 -1 -1 1 1]
【0224】
表12に示されるように、発電電流I1の第1サイクルの前半周期において、符号変調器2に入力される制御信号m1〜m4と、符号復調器4に入力される制御信号d1〜d4とはそれぞれ一致する。言い換えると、第1サイクルの前半周期において、変調符号Mdの部分系列C1と復調符号Ddの部分系列C1とが一致する。これにより、第1サイクルの前半周期では、正の発電電流I1が、正の復調電流I3として復元される。
【0225】
表12に示されるように、発電電流I1の第1サイクルの後半周期において、符号変調器2に入力される制御信号m1〜m4と、符号復調器4に入力される制御信号d1〜d4とはそれぞれ異なる。ただし、第1サイクルの後半周期において、復調符号Ddの部分系列C1の各ビット値は、変調符号Mdの部分系列C2の対応するビット値を反転した値に相当する。これにより、第1サイクルの後半周期では、負の発電電流I1が、正の復調電流I3に変換される。
【0226】
表12に示されるように、発電電流I1の第2サイクルの前半周期において、符号変調器2に入力される制御信号m1〜m4と、符号復調器4に入力される制御信号d1〜d4とはそれぞれ異なる。ただし、第2サイクルの前半周期において、復調符号Ddの部分系列C1の各ビット値は、変調符号Mdの部分系列C2の対応するビット値を反転した値に相当する。これにより、第2サイクルの前半周期では、正の発電電流I1が、負の復調電流I3に変換される。
【0227】
表12に示されるように、発電電流I1の第2サイクルの後半周期において、符号変調器2に入力される制御信号m1〜m4と、符号復調器4に入力される制御信号d1〜d4とはそれぞれ一致する。言い換えると、第2サイクルの後半周期において、変調符号Mdの部分系列C1と復調符号Ddの部分系列C1とが一致する。これにより、第2サイクルの後半周期では、負の発電電流I1が、負の復調電流I3として復元される。
【0228】
これらの動作により、
図23に示されるように、発電電流I1が2サイクル分変化する間に、復調電流I3が1サイクル分変化する。すなわち、発電電流I1の周波数を2分の1に分周した周波数を有する復調電流I3が生成される。
【0229】
本実施形態では、復調符号を構成する部分系列のうち、復調符号の各ビット値が変調符号の対応するビット値と同じ値をとるものを、第1の部分系列と呼ぶ。復調符号を構成する部分系列のうち、復調符号の各ビット値が変調符号の対応するビット値を反転させた値をとるものを、第2の部分系列と呼ぶ。本動作例の復調符号において、発電電流の第1サイクルの前半周期と第2サイクルの後半周期における部分系列C1が、第1の部分系列に相当し、発電電流の第1サイクルの後半周期と第2サイクルの前半周期における部分系列C1が、第2の部分系列に相当する。
【0230】
[2−2.第2の動作例]
第2の実施形態の第2の動作例として、符号変調器2が、第1の周波数を有する第1の交流電力から、符号変調電力を生成し、符号復調器4が、符号変調電力から、第1の周波数が4分の1に分周された第2の周波数を有する第2の交流電力を生成する例を説明する。
【0231】
図24は、本動作例に係る発電電流I1及び復調電流I3の波形示す。
【0232】
表13は、符号変調器2に入力される制御信号m1〜m4の符号系列と、符号復調器4に入力される制御信号d1〜d4の符号系列を示す。制御信号m1〜m4、d1〜d4の符号系列は、部分系列c1a、c1b、c0からなる。
【0234】
本動作例において、復調電流I3の周期Trは、部分系列(例えばc1a、c1b)の周期Tcの8倍であり、発電電流I1の周期Tsは、部分系列の周期Tcの2倍である。すなわち、復調電流I3の周波数frが、発電電流I1の周波数fsの4分の1倍である。
【0235】
これにより、
図24に示されるように、発電電流I1が4サイクル分変化する間に、復調電流I3が1サイクル分変化する。すなわち、発電電流I1の周波数を4分の1に分周した周波数を有する復調電流I3が生成される。
【0236】
[2−3.第3の動作例]
第2の実施形態の第3の動作例として、符号変調器2が、第1の周波数を有する第1の交流電力から、符号変調電力を生成し、符号復調器4が、符号変調電力から、第1の周波数が2分の1に分周された第2の周波数を有する第2の交流電力を生成する例を説明する。ただし、第3の動作例は、第1の交流電力の周期と、変調符号及び復調符号の部分系列の周期との関係が、第1の動作例と異なる。
【0237】
図25は、本動作例に係る発電電流I1及び復調電流I3の波形を示す。
【0238】
表14は、本動作例において符号変調器2に入力される制御信号m1〜m4の符号系列を示す。符号復調器4に入力される制御信号d1〜d4の符号系列は、上記の表13と同様である。
【0240】
本動作例において、発電電流I1の周期Tsは、部分系列(例えばc1a、c1b)の周期Tcの4倍であり、復調電流I3の周期Trは、部分系列の周期Tcの8倍である。すなわち、復調電流I3の周波数frは、発電電流I1の周波数fsの2分の1倍である。
【0241】
これにより、
図25に示されるように、発電電流I1が2サイクル分変化する間に、復調電流I3が1サイクル分変化する。すなわち、発電電流I1の周波数を2分の1に分周した周波数を有する復調電流I3が生成される。
【0242】
[2−4.第4の動作例]
第2の実施形態の第4の動作例として、符号変調器2が、第1の周波数を有する第1の交流電力から、符号変調電力を生成し、符号復調器4が、符号変調電力から、第1の周波数が3分の1に分周された第2の周波数を有する第2の交流電力を生成する例を説明する。
【0243】
図26は、本動作例に係る発電電流I1及び復調電流I3の波形を示す。
【0244】
表15は、符号変調器2に入力される制御信号m1〜m4の符号系列と、符号復調器4に入力される制御信号d1〜d4の符号系列を示す。
【0246】
本動作例において、発電電流I1の周期Tsは、部分系列(例えばc1a、c1b)の周期Tcの2倍であり、復調電流I3の周期Trは、部分系列の周期Tcの6倍である。すなわち、復調電流I3の周波数frは、発電電流I1の周波数fsの3分の1倍である。
【0247】
これにより、
図26に示されるように、発電電流I1が3サイクル分変化する間に、復調電流I3が1サイクル分変化する。すなわち、発電電流I1の周波数を3分の1に分周した周波数を有する復調電流I3が生成される。
【0248】
[2−5.第5の動作例]
第2の実施形態の第5の動作例として、符号変調器2が、第1の周波数を有する第1の交流電力から、符号変調電力を生成し、符号復調器4が、符号変調電力から、第1の周波数が5分の1に分周された第2の周波数を有する第2の交流電力を生成する例を説明する。
【0249】
図27は、本動作例に係る発電電流I1及び復調電流I3の波形を示す。
【0250】
表16は、符号変調器2に入力される制御信号m1〜m4の符号系列と、符号復調器4に入力される
【0251】
制御信号d1〜d4の符号系列を示す。
【0253】
本動作例において、発電電流I1の周期Tsは、部分系列(例えばc1a、c1b)の周期Tcの2倍であり、復調電流I3の周期Trは、部分系列の周期Tcの10倍である。すなわち、復調電流I3の周波数frは、発電電流I1の周波数fsの5分の1倍である。
【0254】
これにより、
図27に示されるように、発電電流I1が5サイクル分変化する間に、復調電流I3が1サイクル分変化する。すなわち、発電電流I1の周波数を5分の1に分周した周波数を有する復調電流I3が生成される。
【0255】
[2−6.補足]
種々の動作例から示されるように、本実施形態に係る符号復調器は、例えば、発電電流I1の周波数のN分の1倍(Nは2以上の整数)の周波数を有する復調電流I3を選択的に生成できる。そのため、本実施形態に係る電力伝送システムは、符号変復調によって、発電電流I1の周波数を異なる周波数へと分周することができ、所望の周波数を有する交流を負荷5に供給することができる。
【0256】
なお、本実施形態に係る電力伝送システムは、第1、第2の参考形態で説明された効果をも奏しうる。
【0257】
[3.変形例]
本実施形態に係る分周動作は、例えば、第4の参考形態に係る電力伝送システム200によって実行されてもよい。例えば、
図15に示される符号変調器2a及び符号復調器4aが、上記第1〜第5の動作例のいずれかを実行してもよい。
【0258】
この場合、本実施形態に係る電力伝送システムは、第4の参考形態で説明された効果をも奏しうる。
【0259】
(その他の実施形態)
本開示は、上記の参考形態及び実施形態で説明された具体例に限定されない。本開示技術は、種々の参考形態及び実施形態で説明された特定の例に限定されず、それらの実施形態に対して、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った形態をも含む。また、本開示は、参考形態及び実施形態のうち少なくとも2つが組み合わされた形態をも含む。
【0260】
第1及び第2の実施形態において例示された種々の波形は、模式的な波形である。実際の電流波形は、例えば損失によって、異なる形状を有しているかもしれない。
【0261】
第1〜第4の参考形態及び第1及び第2の実施形態において、制御信号、変調符号、復調符号、及び変換符号のそれぞれの符号系列は、1以上の直交Gold系列から構成されているが、これに限定されない。例えば、変調符号、復調符号、及び変換符号のそれぞれは、他の直交符号であってもよい。他の直交符号の例としては、m系列が挙げられる。
【0262】
第1〜第4の参考形態及び第1及び第2の実施形態において、制御信号、変調符号、復調符号、及び変換符号のそれぞれの符号長は、7ビットまたは14ビットであったが、これに限定されない。符号長が長いほど、より多くの直交符号が生成されうる。また、符号長を長くすることで、相互相関がより小さくなり、電力の分離がより正確に行える。
【0263】
第1及び第2の実施形態において、符号変調器および符号復調器は、
図9及び10に示される回路であってもよいし、
図11及び12に示される回路であってもよい。
【0264】
第1〜第4の参考形態、並びに、第1及び第2の実施形態において例示された符号復調器及び/又は符号変調器は、任意の電力伝送システムの中で使用されてもよく、特定のシステムに限定されない。
【0265】
第1〜第4の参考形態、並びに、第1及び第2の実施形態において、コントローラは、符号変調器及び符号復調器の外部に存在するものとして説明されたが、本開示はこれに限定されない。コントローラの機能の少なくとも一部は、符号変調器及び符号復調器の少なくとも1つに組み込まれていてもよい。
【0266】
第1〜第4の参考形態、並びに、第1及び第2の実施形態において、電流が符号変復調される例が示されたが、電圧が符号変復調されてもよく、電流及び電圧が変復調されてもよい。
【0267】
(実施形態の概要)
第1の態様に係る電力送信装置は、電力を伝送路を介して電力受信装置に送信する電力送信装置であって、
第1の電力を、前記第1の電力の周波数よりも高い変調符号の周波数を有する所定の変調符号を用いて符号変調して交流の符号変調波を発生して伝送路を介して電力受信装置に送信する符号変調器を備える。
【0268】
第2の態様に係る電力送信装置は、第1の態様に係る電力送信装置において、前記変調符号は所定の直交符号である。
【0269】
第3の態様に係る電力受信装置は、電力送信装置からの第1の電力を含む交流の符号変調波を伝送路を介して受信する電力受信装置であって、
受信した交流の符号変調波を、符号復調後の第2の電力の周波数が前記第1の電力の周波数よりも高くなるように、前記第1の電力の周波数よりも高い復調符号の周波数を有する所定の復調符号を用いて符号復調して前記第2の電力に変換して出力する符号復調器を備える。
【0270】
第4の態様に係る電力受信装置は、第3の態様に係る電力受信装置において、前記復調符号は所定の直交符号である。
【0271】
第5の態様に係る電力伝送システムは、
少なくとも1つの第1又は第2の態様に係る電力送信装置と、
少なくとも1つの第3又は第4の態様に係る電力受信装置とを備え、
前記変調符号と前記復調符号とは互いに同一である。
【0272】
第6の態様に係る電力伝送システムは、第5の態様に係る電力伝送システムにおいて、
前記第1の電力は直流電力と交流電力とのうちの少なくとも1つであり、前記第2の電力は直流電力と交流電力とのうちの少なくとも1つである。
【0273】
第7の態様に係る電力伝送システムは、第5又は第6の態様に係る電力伝送システムにおいて、
前記電力送信装置から前記電力受信装置に対して電力を順方向に伝送することに代えて、
前記電力送信装置の符号変調器を符号復調器として用い、
前記電力受信装置の符号復調器を符号変調器として用いることで逆方向で電力を伝送する。
【0274】
第8の態様に係る電力伝送システムは、第5〜第7の態様のうちのいずれか1つに係る電力伝送システムにおいて、
前記符号変調器は、前記変調符号を生成する第1の生成回路を備え、
前記符号復調器は、前記復調符号を生成する第2の生成回路を備える。
【0275】
第9の態様に係る電力伝送システムは、第8の態様に係る電力伝送システムにおいて、
前記電力伝送システムは当該電力伝送システムを制御するコントローラを備え、
前記コントローラは前記符号変調器に対して、前記変調符号を生成するための制御信号、変調開始時刻及び変調終了時刻を出力し、
前記コントローラは前記符号復調器に対して、前記復調符号を生成するための制御信号、復調開始時刻及び復調終了時刻を出力し、
前記符号変調器は前記変調符号を生成するための制御信号、変調開始時刻及び変調終了時刻に基づいて前記第1の電力を符号変調し、
前記符号復調器は前記復調符号を生成するための制御信号、復調開始時刻及び復調終了時刻に基づいて前記第2の電力に符号復調する。
【0276】
第10の態様に係る電力伝送システムは、第9の態様に係る電力伝送システムにおいて、
前記電力送信装置は、前記第1の電力の電力量を計測する第1の電力測定手段を備え、
前記電力受信装置は、前記第2の電力の電力量を計測する第2の電力測定手段を備える。
【0277】
第11の態様に係る電力伝送システムは、第10の態様に係る電力伝送システムにおいて、
前記電力伝送システムは複数の符号変調器と複数の符号復調器を備え、
前記コントローラは、前記第1の電力測定手段により計測された前記第1の電力の電力量及び前記第2の電力測定手段により計測された前記第2の電力の電力量に基づいて、前記複数の符号変調器と前記複数の符号復調器の動作を制御することで、前記複数の符号変調器と前記複数の符号復調器の電力系統間で電力を融通する。
【0278】
第12の態様に係る符号変調器は、
第1の交流電力を変調符号で符号変調して符号変調電力を生成する回路と、
伝送路に接続され、前記符号変調電力が送信される端子と、を備え、
前記変調符号は、複数の部分系列を含み、
前記複数の部分系列のそれぞれの周期は、前記第1の交流電力の4分の1以下である。
【0279】
第13の態様に係る符号変調器において、第12の態様に係る前記複数の部分系列のそれぞれが、直交符号系列である。
【0280】
本開示によれば、電力伝送システムにおいて、送電元となる発電機と送電先となる電力負荷の組み合わせと融通電力量を能動的に指定した上で、複数の組み合わせの間での電力融通を1つの電力伝送路上で同時かつ独立に行うことができる。