(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
建設現場等で発生する濁水の処理や、比較的小規模の閉鎖水域の浄化に伴う濁水の処理には、濁水中の懸濁物質(SS成分、例えば、粘土、シルト、セメント成分等)の除去や固化、脱水が避けられない要件である。
【0003】
このような濁水の処理において、例えば飲料水精製においては、前処理として凝集剤等の薬品を用いる凝集処理により濁水中の懸濁物質をある程度除いた後、さらに砂ろ過等のろ過処理により、処理水を得ることが行われている。
【0004】
凝集処理では、凝集剤撹拌槽、凝集沈降分離水槽、pH調整槽、中和槽等より構成される処理設備を必要とし、連続処理をする場合は、処理中の濁水を貯留する大容量の濁水槽が必要となる。さらに、凝集剤が排出脱水ケーキに混入するため、多くの場合、産業廃棄物としての処分が必要となり、再資源化の観点からも、コスト面でも課題となっている。
【0005】
前処理に用いられる、凝集剤等の薬品を使用しない濁水処理装置としては、例えば、特許文献1には、ろ過槽内に分離膜を配設した膜モジュールを浸漬し、ポンプを用いて膜モジュールの二次側を吸引することによる吸引圧、あるいは水面のヘッド差による圧力を膜間差圧として膜モジュールによるろ過を行う汚濁水のろ過方法において、コンプレッサを用いて膜モジュールの二次側より一次側へエアーを通気させることにより、膜モジュールの洗浄処理を行う汚濁水のろ過方法が記載されている。
【0006】
しかし、特許文献1の濁水処理装置で特に固形分濃度の高い濁水を処理して、ろ過、膜の洗浄を繰り返していくと、汚泥がろ過槽内に濃縮されるため、ろ過槽から頻繁に汚泥の排出を行う必要がある。また、その間、ろ過作業を中断しなければならず、効率が悪い。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0018】
<濁水処理>
本発明の実施形態に係る濁水処理装置の一例の概略構成を
図1に示し、その構成について説明する。本実施形態に係る濁水処理装置1は、主に、濁水をろ過処理し、濃縮するために用いられる。濁水処理装置1は、濁水をろ過するためのろ過槽10と、ろ過槽10中の濁水に浸漬してろ過処理を行うための少なくとも1つの中空状のろ過材12と、ろ過材12に接続された真空吸引手段としての真空吸引装置14と、ろ過槽10の下方に設置され、上部に開閉可能な開口部38を有する密閉された濃縮槽18と、ろ過槽10と濃縮槽18とを接続する接続配管46と、接続配管46に設置されたバルブ44と、を備える。
【0019】
図1の濁水処理装置1において、移送流路20の一端が濁水の貯留源である被処理濁水槽34中の被処理濁水に浸漬され、他端はろ過槽10の上部の開口部32に接続され、移送流路20の途中には三方バルブ28が設けられている。ろ過材12は中空状になっており、ろ過材12の内部と接続された配管16によりろ過槽10の上部に設けられた開口部30を通して真空吸引装置14の吸引側と接続されている。ろ過槽10は密閉されていても開放されていてもよい。配管16の途中には三方バルブ24,26が設けられている。三方バルブ28と三方バルブ26とは、配管22により接続されている。ろ過槽10の下方には、濃縮槽18が設置され、ろ過槽10の下部と、濃縮槽18の上部とがバルブ44を介して接続配管46により接続されている。濃縮槽18には、撹拌手段として撹拌装置40,42が設置されていてもよい。濃縮槽18の下部には、バルブ36を介して排出口48が設けられている。濃縮槽18の上部には、開閉可能なバルブを有する開口部38が設けられている。
図1の例では、濁水処理装置1は1つのろ過材12を有するが、ろ過材12の数は少なくとも1つであればよく、2つ以上であってもよく、これに限定されるものではない。
【0020】
次に、濁水処理装置1の動作および濁水処理方法について
図1,2を参照して説明する。
【0021】
図1に示すように、三方バルブ28を被処理濁水槽34とろ過槽10の開口部32との連通状態とし、三方バルブ24,26をろ過槽10の開口部30と真空吸引装置14との連通状態とし、バルブ44を開状態とし、開口部38を閉状態とし、バルブ36を閉状態として、ろ過槽10および濃縮槽18を密閉状態とし、真空吸引装置14を作動させて真空吸引を開始する。真空吸引されることによってろ過材12を介してろ過槽10内に負圧が形成され、被処理濁水槽34から移送流路20を通して懸濁物質(SS成分)を含む濁水等の被処理濁水がろ過槽10および濃縮槽18に移送される(被処理濁水供給工程)。濃縮槽18が被処理濁水で満たされ、ろ過槽10内のろ過材12が被処理濁水に浸漬されると、ろ過材12によって被処理濁水のろ過処理が行われる(真空吸引ろ過工程)。ろ過槽10およびろ過材12によりろ過処理されたろ過水は、配管16を通して系外へ排出される。一方、ろ過物である懸濁物質等は、ろ過材12の表面に付着される。バルブ44を開状態としているので、ろ過槽10および濃縮槽18は被処理濁水で満たされる。また、懸濁物質等の自然沈降により濃縮槽18の固形分濃度は自然に上昇していくことになる。
【0022】
ろ過槽10および濃縮槽18が密閉されている場合、被処理濁水がろ過材12の上端に達すると、ろ過槽10上部の残留空気が排出されないため水位の上昇が止まる。真空吸引が継続しているため、ろ過材12を介して系外に排出されたろ過水量と同等量の被処理濁水がろ過槽10内に連続的に供給され、ろ過槽10内の水位がほぼ一定に保たれる。本構成により、真空吸引により濁水の貯留源である被処理濁水槽34から被処理濁水をろ過槽10および濃縮槽18に自動供給することができる。また、ろ過槽10中の濁水の水位がほぼ一定に保たれるため、センサやフロート弁等による水位管理を行わなくてもよい。
【0023】
なお、ろ過槽10を密閉状態ではなく開放状態として、ポンプ等を用いてろ過槽10および濃縮槽18に濁水を供給し(被処理濁水供給工程)、ろ過材12を浸漬させた後、真空吸引装置14を作動させてろ過処理を行ってもよい(真空吸引ろ過工程)。ろ過槽10を密閉状態または開放状態とし、バルブ44を閉状態として、被処理濁水供給および真空吸引ろ過を行ってもよい。
【0024】
ろ過材12の表面に、汚泥等の懸濁物質が付着すると通水性が低下し、ろ過水の量が減少する。そこで、真空吸引装置14を作動させたまま、
図2に示すように、三方バルブ26,28をろ過槽10の開口部32と真空吸引装置14との連通状態として、三方バルブ24を大気側とろ過槽10の開口部30との連通状態とする。大気が三方バルブ24の開口部から吸引されてろ過材12の内部に取り込まれ、ろ過材12の表面より排出されることにより、ろ過材12の表面に付着していた汚泥等の懸濁物質は剥離して落下する(水中剥離工程)。ろ過材12の膨張によるろ過槽10内の水位の上昇は、ろ過槽10内のろ過材12の上部に空間を設けて吸収すればよい。ろ過材12の表面に付着していた汚泥等の懸濁物質が十分に剥離したら、真空吸引装置14を停止すればよい。剥離されたケーキは、接続配管46を通して下方の濃縮槽18へ移行するが、ケーキの性状によっては一部または全部がろ過槽10の下部傾斜部に堆積する場合もある。その場合は、後述する振動装置70を濃縮槽18の例えば下部傾斜部の外側面に設置して(
図6参照)、振動装置70によりろ過槽10に振動を加えて、ケーキを流動化してもよい。
【0025】
なお、水中剥離工程において、負圧による大気導入の代わりに、ろ過槽10を密閉状態で、コンプレッサ等により圧搾空気等の圧搾気体をろ過材12の内部に送り込み、ろ過材12の表面より排出することにより、ろ過材12の表面に付着していた汚泥等の懸濁物質を剥離してもよい(水中剥離工程)。また、水中剥離工程において、ろ過槽10を密閉状態ではなく開放状態として、コンプレッサ等の送気装置により圧搾空気等の圧搾気体をろ過材12の内部に送り込み、ろ過材12の表面より排出することにより、ろ過材12の表面に付着していた汚泥等の懸濁物質を剥離してもよい(水中剥離工程)。
【0026】
所定の時間経過後、バルブ44が閉状態とされ、剥離されたケーキは、濃縮槽18において、必要に応じて撹拌装置40,42による撹拌等が所定の時間行われることにより、スラリー化される(濃縮工程)。濃縮工程において、開口部38は開状態であっても閉状態であってもよいが、濃縮槽18の内容物の流出を避けるために閉状態の方が好ましい。濃縮された濃縮スラリーは、開口部38を開状態とし、バルブ36を開状態として、排出口48から排出される(排出工程)。濃縮工程、排出工程において、バルブ44は開状態でも閉状態でもよいが、バルブ44を閉状態とすることにより、ろ過槽10では被処理濁水供給工程、真空吸引ろ過工程、水中剥離工程を継続して行うことができる。濃縮スラリーを排出した後、開口部38を閉状態とし、バルブ36を閉状態とし、バルブ44を開状態として、運転を継続すればよい。このとき、バルブ44は閉状態であってもよい。以上の被処理濁水供給工程、真空吸引ろ過工程、水中剥離工程、濃縮工程および排出工程を繰り返すことにより、濁水の濃縮処理が行われる。
【0027】
本構成により、濁水処理においてろ過、水中剥離、濃縮を繰り返す場合に、ろ過作業を中断しなくても、効率的に濁水の濃縮処理を行うことができる。また、コンプレッサ等の送気装置を用いなくても、真空吸引装置という簡便な手段で効率的な水中剥離処理を実現することができる。これにより、付帯設備の削減と装置の簡素化とにより設備コストのより一層の低減、作業性の向上、省スペース化が可能となる。
【0028】
また、本処理方法では、凝集剤を用いなくてもよいため、凝集剤撹拌槽、pH調整槽、中和槽などの水槽を設ける必要がなく、設備の軽減につながる。凝集剤等の添加物を含まないため、ケーキを産業廃棄物処理する必要がなく、オンサイトで再利用可能となり、コスト低減効果も高い。
【0029】
ろ過槽10および濃縮槽18は、汚泥等を含むケーキが下方に落下しやすいように下部が傾斜したホッパー型であることが好ましい。
【0030】
撹拌手段としては、濃縮槽18内の固形分を撹拌して、濃縮スラリーとすることができるものであればよく、特に制限はないが、例えば、撹拌羽根による撹拌装置、水中ミキサー等が挙げられる。
【0031】
被処理濁水槽34は、被処理濁水を貯留し、少なくとも移送流路20の一端を接続または浸漬可能なものであればよく、特に制限はない。
図1,2の濁水処理装置1において、被処理濁水槽34中の被処理濁水に移送流路20の一端が浸漬されて真空吸引処理が行われるが、被処理濁水槽34を設けずに、池、河川、湖等の処理対象に移送流路20の一端が直接浸漬されて真空吸引処理が行われてもよい。
【0032】
移送流路20は、ろ過槽10のどの位置に接続してもよい。
図1から
図6の例では、移送流路20の他端はろ過槽10の上部の開口部32に接続されているが、開口部32は、ろ過槽10の側面であって、ろ過槽10の上端とろ過槽10内の水面との間に設けられて、移送流路20の他端が接続されてもよい。
【0033】
接続配管46は、ろ過槽10の下部に設けられればよく、ろ過槽10の下部側面に設けられてもよいが、下部に設けられた方が、水中剥離工程で剥離されたケーキが濃縮槽18に移行しやすいため好ましい。
【0034】
三方バルブ24,26,28を用いて真空吸引ろ過工程と水中剥離工程における流路を切り替えているが、二方バルブを用いて流路を切り替えてもよく、特に制限はない。
【0035】
真空吸引装置14としては、真空吸引できるものであればよく、特に制限はないが、例えば、真空ポンプ、エジェクタ等が挙げられ、高い真空度と高排気量を有する装置が好ましい。
【0036】
ろ過材12への大気の導入は、ろ過材12の上部から導入しても下部から導入してもよいが、ろ過材の表面からほぼ一様の状態で汚泥等を剥離することができる等の点で、下部から導入することが好ましい。
【0037】
濁水処理に用いられるろ過材12は例えば布材で、水分は通すが、所定の大きさの懸濁物質等は通さないろ過機能を有し、さらに内側に空気等の気体が注入されると内部から外側に気体を排出するように適度な通気性を備えている。ろ過材12の形状および材質は、濁水等の被処理水から懸濁物質を捕捉、分離することができるものであればよく、特に制限はない。ろ過材12の形状および材質は、処理対象となる被処理水の性状、含まれる懸濁物質等の性状等に応じて選択すればよい。ろ過材12の形状は、中空状のものであればよく、特に制限はないが、例えば、円筒形状、楕円筒形状、多角筒形状等の筒型形状や、板形状、球形状、多角形形状等であり、板形状が好ましい。ろ過面積を大きくするためには、できるだけろ過材が膨らまないような構成とし、できるだけ多くのろ過材をろ過槽内に設置するとよい。
【0038】
例えば、
図7に示すような、1つ以上のろ室58を有する板形状のろ過材12を用いることができる。
図7に示すろ過材12は、ろ布を縫製処理または溶着等により貼り合わされた貼り合わせ部60によって1つ以上のろ室58が形成された構成となっている。ろ過材12によりろ過処理されたろ過水は、各ろ室58内から下部集水管62を通って排出されるようになっている。各ろ室58にはろ過水が通過するための流路を形成した板状等のパネル材等を挿入してもよい。
【0039】
図7に示すように、ろ過材12の両側面を覆うように、剥離の際のろ過材の膨らみを抑制する膨らみ抑制部材50を設置してもよい。本構成により、水中剥離工程において、ろ過材の膨らみが抑制されるため、
図3に示すように、ろ過槽10内に複数のろ過材12を向かい合うように設置する場合、より近接してろ過材12を配置することができ、効率的なろ過を行うことができる。
【0040】
膨らみ抑制部材50としては、例えば、網状の剛性部材等が挙げられる。また、
図7に示すような縫製処理または溶着等による貼り合わせ部60等により、ろ室58を多設し、ろ過材12の膨らみを抑制する構造としてもよい。
【0041】
図4に示すように、ろ過槽10内に、ろ過材12が内部に位置するように設置され、上端および下端が開口する内筒管52を備えてもよい。本構成により、水中剥離工程において、ろ過材12から排出された空気が内筒管52内を上昇し、内筒管52の内外で比重差が発生し、下部から上方向に向かって水流が発生する。これにより、気水混合流によるろ過材12の表面の洗浄と、ろ過材12の内部からの空気による水中剥離とが行われ、より効率的な水中剥離を行うことができる。
【0042】
図5に示すように、ろ過槽10内に、複数のろ過材12を、多段および複数列に設置してもよい。
図5の例では、ろ過材12を2段および2列に設置しているが、これに限定されない。各ろ過材12には、ろ過材12の両側面を覆うように膨らみ抑制部材50が設置されてもよい。また、全てのろ過材12が内部に位置するように内筒管52が設置されてもよい。例えば、上段の各ろ過材12の下部は開口部30a、バルブ54を介して、下段の各ろ過材12の下部は開口部30bを通しバルブ56を介して、配管16により、真空吸引装置14の吸引側と接続されている。
【0043】
三方バルブ28を被処理濁水槽34とろ過槽10の開口部32との連通状態、三方バルブ24,26をろ過槽10の開口部30a,30bと真空吸引装置14との連通状態とし、バルブ54,56,44を開状態とし、開口部38を閉状態とし、バルブ36を閉状態として、ろ過槽10および濃縮槽18を密閉状態とし、真空吸引装置14を作動させて真空吸引を開始する。真空吸引されることによって各ろ過材12を介してろ過槽10内に負圧が形成され、被処理濁水槽34から移送流路20を通して懸濁物質(SS成分)を含む濁水等の被処理濁水がろ過槽10および濃縮槽18に移送される(被処理濁水供給工程)。濃縮槽18が被処理濁水で満たされ、ろ過槽10内のろ過材12が被処理濁水に浸漬されると、各ろ過材12によって被処理濁水のろ過処理が行われる(真空吸引ろ過工程)。各ろ過材12によりろ過処理されたろ過水は、配管16を通して系外へ排出される。一方、ろ過物である懸濁物質等は、各ろ過材12の表面に付着される。バルブ44を開状態としているので、ろ過槽10および濃縮槽18は被処理濁水で満たされる。また、懸濁物質等の自然沈降により濃縮槽18の固形分濃度は自然に上昇していくことになる。
【0044】
なお、ろ過槽10を密閉状態ではなく開放状態として、ポンプ等を用いてろ過槽10および濃縮槽18に濁水を供給し(被処理濁水供給工程)、ろ過材12を浸漬させた後、真空吸引装置14を作動させてろ過処理を行ってもよい(真空吸引ろ過工程)。ろ過槽10を密閉状態または開放状態とし、バルブ44を閉状態として、被処理濁水供給および真空吸引ろ過を行ってもよい。
【0045】
各ろ過材12の表面に、汚泥等の懸濁物質が付着すると通水性が低下し、ろ過水の量が減少する。そこで、真空吸引装置14を作動させたまま、三方バルブ26,28をろ過槽10の開口部32と真空吸引装置14との連通状態として、三方バルブ24を大気側とろ過槽10の開口部30a,30bとの連通状態とすると、大気が三方バルブ24の開口部から吸引されて各ろ過材12の内部に取り込まれる。ろ過材12から排出された空気が内筒管52内を上昇し、内筒管52の内外で比重差が発生し、下部から上方向に向かって水流が発生する。これにより、気水混合流による各ろ過材12の表面の洗浄と、各ろ過材12の内部からの空気による水中剥離とが行われ、より効率的な水中剥離を行うことができる。各ろ過材12の表面に付着していた汚泥等の懸濁物質が十分に剥離したら、バルブを切り替えて真空吸引ろ過工程に入ればよい。
【0046】
また、真空吸引ろ過工程の後、別の方法として、真空吸引装置14を作動させたまま、三方バルブ26,28をろ過槽10の開口部32と真空吸引装置14との連通状態として、上段側のバルブ54を閉状態とし、三方バルブ24を大気側とろ過槽10の開口部30a,30bとの連通状態とすると、大気が三方バルブ24の開口部から吸引されて下段の各ろ過材12の内部に取り込まれる。下段の各ろ過材12から排出された空気が内筒管52内を上昇し、内筒管52の内外で比重差が発生し、下部から上方向に向かって水流が発生する。これにより、気水混合流による上段側の各ろ過材12の表面の一次洗浄が行われ、次に、上段側のバルブ54を開状態とすると、上段側の各ろ過材12の内部からの空気による水中剥離が行われる。このように水中剥離を下段から上段へと順次実施することにより、さらに効率的な水中剥離を行うことができる。
【0047】
図6に示すように、振動手段として、ろ過槽10の例えば下部傾斜部の外側面に少なくとも1つの振動装置70を設置してもよい。振動装置70によりろ過槽10に振動を加えながら、水中剥離工程が行われることにより、ろ過槽10の下部の斜面上に落下した剥離ケーキは、振動装置70により流動化され、下方の濃縮槽18へ移行されやすくなる。
【0048】
また、振動手段として、濃縮槽18の例えば下部傾斜部の外側面に少なくとも1つの振動装置70を設置してもよい。振動装置70により濃縮槽18に振動を加えることにより、濃縮槽18の下部の斜面上に堆積した濃縮スラリーは、振動装置70により流動化され、排出口48から排出されやすくなる。
【0049】
振動装置70としては、ろ過槽10または濃縮槽18に振動を加え、ろ過槽10または濃縮槽18の下部の斜面上に堆積した剥離ケーキまたは濃縮スラリーを流動化することができるものであればよく、特に制限はないが、例えば、超音波振動子、振動モーター等が挙げられる。
【0050】
図8に、本発明の実施形態に係る濁水処理装置1を備える濁水処理システムの一例の概略構成を示す。
図8の濁水処理システム3において、被処理濁水槽34からの濁水について、ろ過材が設置されたろ過槽10および濃縮槽18を備える濁水処理装置1で真空吸引装置14を用いた前ろ過処理が行われる。得られたろ過水は、必要に応じて貯水槽64に貯留された後、ろ過処理装置66に送液され、ろ過されて、処理水が得られる。濃縮槽18から排出された濃縮スラリーは、必要に応じて脱水手段である脱水装置68で減容化され、脱水ケーキとして排出される。
【0051】
ろ過処理装置66としては、ろ過処理を行うものであればよく、特に制限はないが、例えば、砂ろ過装置、中空糸等を用いた高度水処理装置等が挙げられる。
【0052】
脱水装置68としては、脱水することができるものであればよく、特に制限はないが、例えば、真空膜式脱水装置、フィルタープレス、ベルトプレス等が挙げられる。
【0053】
本実施形態に係る濁水処理装置の処理対象となる被処理濁水としては、例えば、土木・建築現場等で発生する濁水、河川・湖沼・池・運河等の底質改善や浚渫に伴う濁水、土壌洗浄後の濁水、粘土・シルト等を含む濁水、セメント成分等の化学物質を含む濁水等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、放流レベルから飲料水生成(高度処理)の前処理まで多様な濁水処理が可能である。
【実施例】
【0054】
以下、実施例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0055】
[実施例1]
図3に示すように、上部に2つの開口部30,32が設置された円筒状の樹脂製のろ過槽10(内径230mm、高さ1000mm、容積40L/m)内にろ過材12として中空平板状のろ布(通気度100cm
3/cm
2/min、幅90mm×高さ230mm、ろ布面積414cm
2)2枚(合計ろ布面積828cm
2)を同じ高さに向かい合うように設置し、移送流路20となる管の一端を、三方バルブ28を介して被処理濁水槽34に浸漬した。配管16により、ろ布を開口部30に接続し、三方バルブ24,26を介して真空吸引装置14の吸引側と接続した。三方バルブ26と三方バルブ28とを配管22により接続した。それぞれの平板状のろ布の両面には、膨らみ抑制部材50として、網状の剛性部材(幅110mm×高さ250mm)を設置した。
【0056】
ろ過槽10を密閉し、三方バルブ28を被処理濁水槽34とろ過槽10の開口部32との連通状態とし、三方バルブ24,26をろ過槽10の開口部30と真空吸引装置14との連通状態とし、バルブ44を開状態とし、開口部38を閉状態とし、バルブ36を閉状態として、ろ過槽10および濃縮槽18を密閉状態とし、真空吸引を開始するとろ布を介してろ過槽10内に負圧が形成され、被処理濁水槽34の濁水がろ過槽10および濃縮槽18に供給され、ろ過槽10内のろ布上端まで上昇した(被処理濁水供給工程)。ろ過水が系外に排出されても常にこの状態が保たれ(水位ほぼ一定)、ろ過処理を継続した(真空吸引ろ過工程)。
【0057】
真空吸引装置14を作動させたまま、
図3に示すように、三方バルブ26,28をろ過槽10の開口部32と真空吸引装置14との連通状態として、三方バルブ24を大気側とろ過槽10の開口部30との連通状態とした。ろ過槽10の上部に形成される負圧により、大気が三方バルブ24の開口部から吸引され(吸気量:約400L/min)、ろ過材12を介して大気が排出されることにより、ろ過材12の表面に付着していた汚泥等の懸濁物質が剥離して落下し、少なくとも一部は濃縮槽18へ移行した(水中剥離工程)。所定の時間経過後、バルブ44が閉状態とされ、濃縮槽18において、撹拌装置40,42による撹拌を2〜3分間行い、剥離されたケーキをスラリー化した(濃縮工程)。濃縮した濃縮スラリーを、開口部38を開状態とし、バルブ36を開状態として、排出口48から排出した(排出工程)。濃縮工程、排出工程において、バルブ44を閉状態としたので、ろ過槽10において被処理濁水供給工程、真空吸引ろ過工程、水中剥離工程を継続して行うことができた。濃縮スラリーを排出した後、開口部38を閉状態とし、バルブ36を閉状態とし、バルブ44を開状態として、運転を継続した。
【0058】
このように、実施例の装置により、簡易な構成で効率的に濁水の濃縮を行うことができた。