特許第6788900号(P6788900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6788900
(24)【登録日】2020年11月5日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】超音波診断装置用3次元プローブ
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
   A61B8/14
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-6410(P2018-6410)
(22)【出願日】2018年1月18日
(65)【公開番号】特開2019-122657(P2019-122657A)
(43)【公開日】2019年7月25日
【審査請求日】2019年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】309043986
【氏名又は名称】有限会社フロントエンドテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100201363
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 豊
(72)【発明者】
【氏名】日向 恒雄
【審査官】 姫島 あや乃
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−126095(JP,A)
【文献】 特開2017−113335(JP,A)
【文献】 特表2011−517284(JP,A)
【文献】 特開2010−088497(JP,A)
【文献】 特開平08−223694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00−8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波振動子が同心円状に2次元配列された同心状アレイ振動子と、
前記同心状アレイ振動子の超音波送受波面と対向して配置された超音波遮蔽板と、を備え、
前記超音波遮蔽板は同心を原点とした動径方向に沿って開口した音響窓を有し、
前記同心状アレイ振動子は前記音響窓を介した電子走査を行い、
前記電子走査による電子走査断面を、前記超音波遮蔽板を1回転以上回転させることで移動して、連続して3次元画像を収集すること、を特徴とする3次元超音波プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に用いられる超音波プローブに関し、特に3次元超音波画像取得用の超音波プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は非侵襲で被爆の無い簡便な検査方法として循環器、腹部、産科、乳腺など多くの診療領域で使用されている。通常の超音波画像検査は、Bモードと呼ばれる超音波探触子が被検体の体表と当接する部分の2次元断層画像により行われている。この2次元断層の走査面を連続して移動することにより、被検体内の3次元空間の画像を取得して3次元画像による診断や、3次元画像データから再構築した任意の断層面画像による診断も行われている。
【0003】
前記3次元画像を取得するための走査方法として、超音波振動子を1次元配列したアレイ振動子を仰角方向に振り子の様に揺動して電子走査と機械走査とを組み合わせたメカニカル3Dプローブによるスキャン方式や、超音波振動子を2次元のマトリックス状に配列した2Dアレイプローブによる電子スキャン方式がある。
【0004】
一方、乳癌検診等において行われている乳房超音波検査では、乳房全体の3次元画像データを収集することがある。この場合、メカニカル3Dプローブや2Dアレイプローブによる方法では体表との当接面が乳房全体に対して小さいため、乳房全体の3次元画像を得ることが困難である。そこで、通常のリニアプローブを乳房全体にわたって縦横に順次走査することで3次元画像データを取得する方法や、乳頭を中心軸にして超音波プローブを回転走査させ乳房全体の3次元画像データを取得する方法が実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平03−184532号公報
【特許文献2】特開2003−310614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記の3次元画像データ取得方法には次のような課題がある。
メカニカル3Dプローブ方式は、超音波振動子アレイ部分の揺動運動を伴うことから、揺動範囲全体を収容するための大型のプローブ外形を必要とする、揺動運動のための機械機構および制御回路を必要とするなどプローブ構造の複雑化を招く、揺動運動に起因した振動により検査者および被検者に不快感を与える、揺動運動の往路復路の方向転換時に機械走査速度が変化するため、画像として扱えない走査領域が発生する等の課題がある。
【0007】
2Dアレイプローブ方式は、3次元画像の取得領域を広げるためには2次元アレイ振動子の面積を広げなければならないため、超音波振動子数が1000以上と多数になり、送受信回路の増大や、または送受信回路の増大を回避するためのチャンネルリダクション回路の追加など、装置の複雑化や高価格化を招く、等の課題がある。
【0008】
プローブの回転走査方式は、メカニカル3Dプローブや2Dアレイプローブを必要としないため従来の超音波診断装置をそのまま利用できるという利点はあるが、プローブと超音波診断装置本体とを接続するケーブルにプローブの回転走査に伴う捻じれが生じる。このため、無制限にプローブを回転させることができず、またこの捻れを開放するための逆回転を行わなければならず、プローブ回転機構の複雑化や3次元画像データ取得のための検査時間を短縮できない、という課題があった。
【0009】
そこで、本発明は、超音波振動子部分を揺動させることなく、超音波振動子数の増加による送受信回路の複雑化を伴うことなく、プローブ自体を回転走査することなく、短時間で3次元画像データを取得する超音波診断装置用3次元プローブを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様である超音波診断装置用3次元プローブは、超音波振動子が同心円状に2次元配列された同心状アレイ振動子と、前記同心状アレイ振動子の超音波送受波面と対向して配置された円盤状の超音波遮蔽板と、前記超音波遮蔽板の回転軸は前記同心状アレイ振動子の同心軸と同一であって、前記超音波遮蔽板は同心を原点とした動径方向に沿って開口した音響窓を有し、前記同心状アレイ振動子は同心の動径方向に前記音響窓を介して電子走査を行い、前記超音波遮蔽版を回転させることで前記電子走査面を移動して3次元画像を取得すること、を特徴とする。
【0011】
また、前記同心状アレイ振動子が、同心を原点とする動径で少なくとも2以上に分割されていても良い。
【0012】
また、前記同心状アレイ振動子が、同心を原点とする動径で4以上に分割されたときにできる弧が、弧に対応する弦で近似されたことを特徴とする多角形同心状アレイ振動子であっても良い。
【0013】
また、前記同心状アレイ振動子が、2Dアレイ振動子であって、前記2Dアレイ振動子が半径の異なる複数のリング状の電極で接続された同心円状アレイ振動子であっても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、機械走査は超音波遮蔽板の回転運動により行われるため、一般に駆動機構が単純化しやすく、また振動も発生しにくく、無限に回転することができるので機械走査速度の変化が無く、走査不能領域が発生しない、という効果がある。
【0015】
また、動径方向の2次元電子走査は、同心状アレイ振動子を構成する複数のリング振動子内で送受信開口を移動して行うので、通常の超音波診断装置で構成することができ、低価格で実現することができる。
【0016】
また、同心状アレイ振動子は、リング振動子で構成する態様のほか、2次元配列振動子をリング状の電極で同心円状に相互接続することで構成することもでき、送受信制御回路の増加を伴うことなく動径方向の2次元走査が可能である。
【0017】
さらに回転するのは超音波遮蔽板だけなので、プローブと超音波診断装置を接続するケーブルの捻じれなどによる機械走査への制限が発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】3次元プローブの概念図である。
図2】横から見た3次元プローブの断面図である。
図3】音響窓と超音波遮蔽板と同心円状アレイ振動子の概略図である。
図4】音響窓と超音波遮蔽板と同心状アレイ振動子を音波送出方向から見た概略図である。点線は超音波遮蔽板により音響的に隠された同心状アレイ振動子である。
図5】扇形状アレイ振動子を集合させて同心状アレイ振動子を構成する説明図。
図6】二等辺三角形状アレイ振動子を集合させて多角形状アレイ振動子を構成する説明図。
図7】微細な振動子群をリング状の電極でグループ化することで同心状アレイ振動子を構成する説明図。
図8】動径で分割した同心状振動子を音響窓位置に同期させて制御する説明図。
図9】音響窓位置に同期させて送受信回路を制御する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための最良の形態を図1及び図2に例示する。尚、実施形態は、図で示された構成および手段に限定されるものではない。
【0020】
実施形態によれば、本発明は水やオイルなどの音響媒体5を満たした密閉容器4と、その内部に固定された同心円状に配置された複数のリング振動子からなる同心状アレイ振動子3と、同心の動径方向に沿って開口した音響レンズからなる音響窓1を有する超音波遮蔽板2から構成される。
【0021】
一つの電子走査断面は、図4で示す様に、音響窓により音響的に隠されていない同心状アレイ振動子部分による電子走査(電子スキャン)で取得する。
【0022】
同心状アレイ振動子3により送波された超音波は、音響窓1を介して被検体7に到達し、被検体7で反射し、音響窓1を介して同心状アレイ振動子3で受波される。これを同心状アレイ振動子の開口を移動しながら、つまり音響窓1で構成された1次元アレイ振動子の開口位置を移動しながら繰り返すことで、音響窓1の位置における電子走査画像を取得する。
【0023】
そして、超音波遮蔽板2をモーター6により前記密閉容器内において同心を軸として回転させることで音響窓1の位置が移動し、これによって電子走査断面が移動して第2の電子走査断面を得ることが出来る。
【0024】
さらに、超音波遮蔽板2の回転と電子走査を繰り返して行い、超音波遮蔽板2が一回転すると被検体7の3次元画像が取得できる。
続けて超音波遮蔽板2の回転と電子走査を繰り返すことで、連続して被検体7の3次元画像を取得することができる。
【0025】
音響窓1を有する超音波遮蔽板2を図3に例示する。超音波遮蔽版2は、音響窓1以外の部分では同心状アレイ振動子3から送波された超音波を吸収または反射などすることにより被検体7への到達を遮蔽し、また被検体7から反射された超音波を吸収または反射などすることにより同心状アレイ振動子3で受波されないようにする。
【0026】
音響窓1は、同心状アレイ振動子3から送波された超音波を吸収または反射などすることなく被検体7へ到達させ、また被検体7から反射された超音波を吸収または反射などすることなく同心状アレイ振動子3で受波されるよう、超音波を透過させることが出来る音響窓である。
【0027】
この音響窓は、開口部分が密閉容器4に満たされた水やオイルなどの音響媒体5で満たされた構成としても良いし、音響レンズなどの超音波を透過させることが出来る媒体で構成されても良い。超音波を透過させることが出来る媒体としては、通常用いられるシリコンレンズなどがある。
【0028】
図5は、扇状アレイ振動子8を集合させて同心状アレイ振動子を構成する方法を例示したものである。図5は4分割したものを集めているが分割数はいくつでも良い。また、各扇状アレイ振動子の扇の開き角度は均等でなくても良いが、扇の開き角度の和は360度であることが望ましい。
図5の構成はリング状アレイ振動子を加工するよりも容易に製造することが出来る。
【0029】
図6は、二等辺三角形アレイ振動子9を集合させて多角形状アレイ振動子を構成する方法を例示したものである。図6は16分割したものを集めているが、分割数はいくつでも良い。また、各二等辺三角形アレイ振動子の頂角は均等でなくても良いが、頂角の和は360度であることが望ましい。図6の構成は図5の扇状アレイ振動子を集合させたものよりも容易に製造することが出来る。
【0030】
図7は、マトリックス状に細かく分かれている2Dアレイ振動子の圧電素子群11を、リング状の電極10でグループ化することによりリング状振動子とする同心円状アレイ振動子の構成方法を例示したものである。
【0031】
図8は、超音波遮蔽板2に設けられた音響窓1の回転位置に同期して、送受信回路に接続する扇状又は二等辺三角形状アレイ振動子の一つを選択するための回路構成方法を説明するために例示した図である。
図9の回路は、各素子に接続される送受信回路の特性を音響窓の位置に応じて変更するための回路である。
【0032】
図8は、8個の扇状アレイ振動子で同心状アレイ振動子を構成した例図である。8個の扇状アレイ振動子1から扇状アレイ振動子8を、ARRAY[1]からARRAY[8]と表している。さらに扇状アレイ振動子1から扇状アレイ振動子8のそれぞれの扇状アレイ振動子を構成するN個の振動子の中で、中心から数えてn番目の振動子をARRAY[1][n]、ARRAY[2][n]、ARRAY[3][n]...ARRAY[8][n]と表している。
【0033】
音響窓1は8個の扇状アレイ振動子の前面を扇のかなめを軸に回転する(図8)。一つの扇状アレイ振動子を構成するN個の振動子の中で中心から数えてn番目の振動子は、それ以外の扇状アレイ振動子を構成する中心から数えてn番目の振動子とアナログスイッチSW1からSW8のいずれかを経由して送受信機「n」に接続される。尚、動径方向を電子スキャンするためにN個の同一回路が存在するが図9では省略されている。
【0034】
【表1】
【0035】
図9は、音響窓1の位置に同期させて送受信回路を制御する回路の説明図である。音響窓検出回路Aはポテンショメータ等の位置検出回路からなり、音響窓1の位置を検出して表1の真理値表に従い位置条件番号1から16のいずれかの条件番号を出力する。スイッチ制御回路Bは位置条件番号に応じて表1の真理値表に従いSW1からSW8を制御する。図8の場合は、送受信機「n」に接続される振動子の数は音響窓1の位置により1個又は2個となり、送受信特性が音響窓1の位置に応じて変化する。
【0036】
送信条件メモリDは位置条件番号を基に、一つの送信回路に接続される振動子数の変化を補償する条件を決定して送信アンプFの特性を制御する(図9)。
【0037】
受信条件メモリEは位置条件番号を基に、一つの受信回路に接続される振動子数の変化を補償する条件を決定して受信アンプGの特性を制御する(図9)。
【符号の説明】
【0038】
1 音響窓
2 超音波遮蔽板
3 同心状アレイ振動子
4 密閉容器
5 音響媒体
6 モーター
7 被検体
8 扇状アレイ振動子
9 二等辺三角形状アレイ振動子
10 リング状の電極
11 細かく分割された圧電素子群
12 音響窓検出回路
13 送信条件メモリ
14 受信条件メモリ
15 スイッチ制御回路
16 送受信回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9