(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第一実施形態>
本発明の第一実施形態に係る鋼製部材の接合構造が適用された構造物について、
図1〜
図3を用いて説明する。
【0018】
(構造)
先ず、本発明の第一実施形態に係る鋼製部材の接合構造100が適用された構造物102の要部の構造について説明する。
【0019】
図1に示すように、構造物102は、接合構造100を構成する荷重伝達部材の一例としてのシアプレート150と中空の鋼製部材の一例としての鋼管柱170と充填材Jとを備えている。
【0020】
また、コンクリート部材の一例としての鉄筋コンクリート製の基礎梁104と鋼管柱170と鉄骨梁106とで構成された架構108に、逆V字状の逆V字ブレース110が設けられている。
【0021】
逆V字ブレース110は、鉄骨梁106の左右方向の中央部に設けられた上側ガセットプレート112と、鋼管柱170の柱脚部172に設けられた下側ガセットプレート114と、これら上側ガセットプレート112及び下側ガセットプレート114に接合プレート116を介してボルト締結されたブレース材118と、を有している。
【0022】
図2に示すように、鋼管柱170の柱脚部172の下端の開口部172Aには、隅部に貫通孔174Aが形成された平面視矩形状の底板174が設けられている。この底板174の中央部には、平面視略矩形状の挿通孔174Bが形成されている。
【0023】
基礎梁104には、表面104Aから突出するアンカーボルト120が埋設されている。このアンカーボルト120の下端部には、定着板122が設けられている。
【0024】
そして、鋼管柱170の柱脚部172の底板174は、基礎梁104に埋設されたアンカーボルト120が隅部の貫通孔174Aに挿通されナット124によって締結されている。
【0025】
なお、本実施形態では、鋼管柱170の柱脚部172の底板174と基礎梁104の表面104Aとの間に、モルタル等のレベル調整材Kが設けられているが、レベル調整材Kが設けられていなくてもよい。
【0026】
また、基礎梁104には、表面104Aから突出するシアプレート150が埋設されている。シアプレート150は、平面視十字とされ、板面150Aにはスタッド152が設けられている。そして、シアプレート150における基礎梁104の表面104Aから突出する突出部150Bが、底板174の挿通孔174Bに挿通され、鋼管柱170の柱脚部172の内部に配設されて取り囲まれると共に、柱脚部172にグラウトやモルタル等の充填材Jが充填されることで一体化されている。
【0027】
(施工方法)
次に、構造物102の要部の施工方法の一例について説明する。
【0028】
図3(A)に示すように、鉄筋コンクリート製の基礎梁104を構築する際に、表面104Aから突出すようにアンカーボルト120及びシアプレート150を埋設させる。
【0029】
図3(B)に示すように、鋼管柱170の柱脚部172を基礎梁104に設置し、底板174をアンカーボルト120に締結する。なお、必要があれば、鋼管柱170の柱脚部172の底板174と基礎梁104の表面104Aとの間にモルタル等のレベル調整材Kを設けてレベル調整を行う。
【0030】
図3(C)に示すように、鋼管柱170の柱脚部172に充填材Jを充填し、鋼管柱170の柱脚部172とシアプレート150の突出部150Bとを一体化する。
【0031】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0032】
鉄筋コンクリート製の基礎梁104に埋設されると共に基礎梁104の表面104Aから突出するシアプレート150が、鋼管柱170の柱脚部172の内部に設けられて取り囲まれ、柱脚部172に充填された充填材Jで、鋼管柱170の柱脚部172と一体化されている。よって、鋼管柱170の柱脚部172に作用するせん断力が、主にシアプレート150によって基礎梁104に伝達される。
【0033】
鋼管柱170の柱脚部172の底板174に作用する引張力は、主にアンカーボルト120によって基礎梁104に伝達される。
【0034】
鋼管柱170に作用する鉛直荷重は、柱脚部172の底板174から基礎梁104に均一に伝達される。
【0035】
また、基礎梁104に埋設され突出するシアプレート150を中空の鋼管柱170の柱脚部172の内部に配設して充填材Jを充填することで、鋼管柱170の柱脚部172とシアプレート150とが一体化されるので、施工が容易である。
【0036】
ここで、本実施形態の鋼管柱170の柱脚部172には、下側ガセットプレート114及び接合プレート116を介してブレース材118が接合されている。よって、鋼管柱170の柱脚部172には、地震時等にブレース材118から大きなせん断力がかかる。しかし、本実施形態では、鋼管柱170の柱脚部172に作用する大きなせん断力は、シアプレート150によって基礎梁104に伝達されるので、好適である。
【0037】
また、仮に、シアプレート150を設けないでアンカーボルト120のみが設けられている場合、地震時等にブレース材118から鋼管柱170の柱脚部172に伝達される大きなせん断力に対抗するには、多数のアンカーボルト120が必要となり、施工性が大幅に低下する。しかし、前述のように、本実施形態の鋼管柱170の柱脚部172に作用するせん断力の一部又は全部がシアプレート150によって基礎梁104に伝達されるので、アンカーボルト120の必要本数が減少し、施工性が向上する。
【0038】
<第二実施形態>
本発明の第二実施形態に係る鋼製部材の接合構造が適用された構造物について、
図4及び
図5を用いて説明する。なお、第一実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0039】
(構造)
先ず、本発明の第二実施形態に係る鋼製部材の接合構造200が適用された構造物202の要部の構造について説明する。
【0040】
図4に示すように、構造物202は、接合構造200を構成する荷重伝達部材の一例としてのシアプレート150と中空の鋼製部材の一例としての固定部270と充填材Jとを備えている。
【0041】
また、コンクリート部材の一例としての鉄筋コンクリート製の基礎梁104と鋼管柱170と鉄骨梁106とで構成された架構108に、V字状のV字ブレース210が設けられている。
【0042】
V字ブレース210は、架構108の左右の上側の隅部に設けられた上側ガセットプレート212と、基礎梁104の左右方向の中央部に設けられた固定部270に接合された下側ガセットプレート214と、これら上側ガセットプレート212及び下側ガセットプレート214に接合プレート116を介してボルト締結されたブレース材118と、を有している。
【0043】
鋼管柱170の柱脚部172の下端には、隅部に貫通孔175Aが形成された平面視矩形状の底板175が設けられている。
【0044】
基礎梁104には、表面104Aから突出するアンカーボルト120が埋設されている。このアンカーボルト120の下端部には定着板122が設けられている。
【0045】
そして、鋼管柱170の柱脚部172の底板175は、基礎梁104に埋設されたアンカーボルト120が隅部の貫通孔175Aに挿通されナット124によって締結されている。
【0046】
図5に示すように、基礎梁104の左右方向の中央部に設けられた固定部270は、下側が開口した中空の箱形状の本体部272を有し、この本体部272の開口部272Aには、隅部に貫通孔274Aが形成された平面視矩形状の底板274が設けられている。この底板274の中央部には、平面視略矩形状の挿通孔274Bが形成されている。
【0047】
基礎梁104の左右方向中央部には、表面104Aから突出するアンカーボルト120が埋設されている。このアンカーボルト120の下端部には定着板122が設けられている。
【0048】
そして、固定部270の底板274は、基礎梁104に埋設されたアンカーボルト120が隅部の貫通孔274Aに挿通されナット124によって締結されている。
【0049】
なお、本実施形態では、固定部270の底板274と基礎梁104の表面104Aとの間に、モルタル等のレベル調整材Kが設けられているが、レベル調整材Kが設けられていなくてもよい。
【0050】
また、基礎梁104の左右方向中央部には、表面104Aから突出するシアプレート150が埋設されている。そして、シアプレート150における基礎梁104の表面104Aから突出する突出部150Bが、底板274の挿通孔274Bに挿通され、固定部270の内部に配設されて取り囲まれると共に、固定部270にグラウトやモルタル等の充填材Jが充填されることで一体化されている。
【0051】
(施工方法)
次に、構造物202の要部の施工方法の一例について説明する。
【0052】
鉄筋コンクリート製の基礎梁104を構築する際に、表面104Aから突出すようにアンカーボルト120及びシアプレート150を埋設させる。
【0053】
固定部270を基礎梁104に設置し、底板274をアンカーボルト120に締結する。なお、必要があれば、固定部270の底板274と基礎梁104の表面104Aとの間にモルタル等のレベル調整材Kを設けてレベル調整を行う。
【0054】
固定部270に充填材Jを充填し、固定部270とシアプレート150の突出部150Bとを一体化する。
【0055】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0056】
鉄筋コンクリート製の基礎梁104に埋設されると共に基礎梁104の表面104Aから突出するシアプレート150が、固定部270の内部に設けられて取り囲まれ、固定部270に充填された充填材Jで、固定部270と一体化されている。よって、固定部270に作用するせん断力が、主にシアプレート150によって基礎梁104に伝達される。
【0057】
固定部270の底板274に作用する引張力は、主にアンカーボルト120によって基礎梁104に伝達される。
【0058】
固定部270に作用する鉛直荷重は、底板274から基礎梁104に均一に伝達される。
【0059】
また、基礎梁104に埋設され突出するシアプレート150を中空の固定部270の内部に配設して充填材Jを充填することで、固定部270とシアプレート150とが一体化されるので、施工が容易である。
【0060】
ここで、第一実施形態と同様に、本実施形態の固定部270には、下側ガセットプレート214及び接合プレート116を介してブレース材118が接合されている。よって、固定部270には、地震時等にブレース材118から大きなせん断力がかかる。しかし、本実施形態では、固定部270に作用する大きなせん断力は、シアプレート150によって基礎梁104に伝達されるので、好適である。
【0061】
また、第一実施形態と同様に、仮に、シアプレート150を設けないでアンカーボルト120のみが設けられている場合、地震時等にブレース材118から固定部270に伝達される大きなせん断力に対抗するには、多数のアンカーボルト120が必要となり、施工性が大幅に低下する。しかし、固定部270に作用するせん断力の一部又は全部がシアプレート150によって基礎梁104に伝達されるので、アンカーボルト120の必要本数し、施工性が向上する。
【0062】
<第三実施形態>
本発明の第三実施形態に係る鋼製部材の接合構造が適用された構造物について、
図6を用いて説明する。
【0063】
(構造)
先ず、本発明の第三実施形態に係る鋼製部材の接合構造300が適用された構造物302の要部の構造について説明する。
【0064】
図6(B)に示すように、構造物302は、接合構造300を構成する荷重伝達部材の一例としてのアンカーボルト120と中空の鋼製部材の一例としての鋼管柱370と充填材Jとを備えている。また、コンクリート部材の一例としての鉄筋コンクリート製の基礎部304に鋼管柱370が設けられている。
【0065】
鋼管柱370の柱脚部372の下端の開口部372Aには、平面視矩形状の底板374が設けられている。底板374の中央部には、平面視略円形状の挿通孔374Aが形成されている。
【0066】
基礎部304には、表面304Aから突出するアンカーボルト120が埋設されている。このアンカーボルト120の下端部には定着板122が設けられている。
【0067】
この基礎部304に埋設されたアンカーボルト120における表面304Aから突出する突出部120Bが、底板374の挿通孔374Aに挿通され鋼管柱370の柱脚部372の内部に配設されて取り囲まれると共に、柱脚部372にグラウトやモルタル等の充填材Jが充填されることで一体化されている。
【0068】
なお、本実施形態では、鋼管柱370の底板374と基礎梁304の表面304Aとの間に、モルタル等のレベル調整材Kが設けられているが、レベル調整材Kが設けられていなくてもよい。
【0069】
(施工方法)
次に、構造物302の要部の施工方法の一例について説明する。
【0070】
図6(A)に示すように、鉄筋コンクリート製の基礎部304を構築する際に、表面304Aから突出すようにアンカーボルト120を埋設させる。鋼管柱370の柱脚部372を基礎部304に設置し、底板374の挿通孔374Aにアンカーボルト120を挿通する。
【0071】
図6(B)に示すように、鋼管柱370の柱脚部372に充填材Jを充填し、鋼管柱370の柱脚部372とアンカーボルト120の突出部120Bとを一体化する。なお、必要があれば、鋼管柱370の底板374と基礎部304の表面304Aとの間にモルタル等のレベル調整材Kを設けてレベル調整を行う。
【0072】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0073】
鉄筋コンクリート製の基礎部304に埋設されると共に基礎部304の表面304Aから突出するアンカーボルト120が、鋼管柱370の柱脚部372の内部に設けられて取り囲まれ、柱脚部372に充填された充填材Jで、柱脚部372と一体化されている。よって、鋼管柱370の柱脚部372に作用するせん断力が、アンカーボルト120によって基礎部304に伝達される。
【0074】
鋼管柱370に作用する鉛直荷重は、底板374から基礎部304に均一に伝達される。
【0075】
また、基礎部304に埋設され突出するアンカーボルト120を中空の鋼管柱370の柱脚部372の内部に配設して充填材Jを充填することで、鋼管柱370の柱脚部372とアンカーボルト120とが一体化されるので、施工が容易である。
【0076】
<第四実施形態>
本発明の第四実施形態に係る鋼製部材の接合構造が適用された構造物について、
図7を用いて説明する。
【0077】
(構造)
先ず、本発明の第四実施形態に係る鋼製部材の接合構造400が適用された構造物402の要部の構造について説明する。
【0078】
図7(A)及び
図7(B)に示すように、構造物402は、接合構造400を構成する荷重伝達部材の一例としてのダボ鉄筋450と中空の鋼製部材の一例としての固定部470と充填材Jとを備えている。また、コンクリート部材の一例としての鉄筋コンクリート製の基礎部404に固定部470が設けられている。そして、この固定部470に接合された接合プレート414に鉄骨架台418がボルト締結されている。
【0079】
固定部470は、下側が開口した中空の箱形状の本体部472を有し、この本体部472の開口部472Aには平面視矩形状の底板474が設けられている。この底板474の中央部には、平面視略円形状の挿通孔474Aが形成されている。
【0080】
基礎部404には、表面404Aから突出するダボ鉄筋450が埋設されている。このダボ鉄筋450の上端部には円板状の定着部452が設けられている。
【0081】
そして、この基礎部404に埋設されたダボ鉄筋450における表面404Aから突出する突出部450Bが、底板474の挿通孔474Aに挿通され固定部470の内部に配設されて取り囲まれると共に、固定部470にグラウトやモルタル等の充填材Jが充填されることで一体化されている。
【0082】
なお、本実施形態では、固定部470の底板474と基礎部404の表面404Aとの間に、モルタル等のレベル調整材Kが設けられているが、レベル調整材Kが設けられていなくてもよい。
【0083】
(施工方法)
次に、構造物302の要部の施工方法の一例について説明する。
【0084】
鉄筋コンクリート製の基礎部404を構築する際に、表面404Aから突出すようにダボ鉄筋450を埋設させる。固定部470を基礎部404に設置し、底板474の挿通孔474Aにダボ鉄筋450を挿通する。
【0085】
固定部470に充填材Jを充填し、固定部470とダボ鉄筋450の突出部450Bとを一体化する。なお、必要があれば、固定部470の底板474と基礎部404の表面404Aとの間にモルタル等のレベル調整材Kを設けてレベル調整を行う。
【0086】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0087】
鉄筋コンクリート製の基礎部404に埋設されると共に基礎部404の表面404Aから突出するダボ鉄筋450が、固定部470の内部に設けられて取り囲まれ、固定部470に充填された充填材Jで、固定部470と一体化されている。よって、固定部470に作用するせん断力が、ダボ鉄筋450によって基礎部404に伝達される。
【0088】
また、固定部470に作用する鉛直荷重は、底板474から基礎部404に均一に伝達される。
【0089】
また、基礎部404に埋設され突出するダボ鉄筋450を中空の固定部470の内部に配設して充填材Jを充填することで、固定部470とダボ鉄筋450とが一体化されるので、施工が容易である。
【0090】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0091】
例えば、シアプレート150、アンカーボルト120及びダボ鉄筋450以外の荷重伝達部材であってもよい。
【0092】
例えば、
図8に示すように、四本の主筋552と、これら四本の主筋552を取り囲む補強筋554と、で構成された鉄筋部材550であってもよい。なお、
図8は第一実施形態の構造物102に適用した例で示したが、他の実施形態の構造物202、302、402にも適用することができる。
【0093】
また、第一実施形態及び第二実施形態のシアプレート150は、平面視十字状とされ、板面150Aにスタッド152が設けられた構成であったが、これに限定されない。例えば、スタッド152が設けられていなくてもよい。また、第三実施形態の構造物302及び第四実施形態の構造物402においてもシアプレート150で荷重を伝達してもよい。
【0094】
また、第一実施形態は、逆V字ブレースであったが、これに限定されない。X字ブレースであってもよい。
【0095】
また、充填材Jが充填されたことを確認する為の吹き出し口を、確認可能な場所に適宜あけてもよい。
【0096】
また、本願が開示する技術の一態様に関し、更に以下の内容を開示する。
コンクリート部材に埋設され、前記コンクリート部材の表面から突出する荷重伝達部材と、
前記荷重伝達部材の突出部を取り囲む中空の鋼製部材と、
前記鋼製部材の中空部に充填され、前記荷重伝達部材と前記鋼製部材とを一体化する充填材と、
に加え、
前記鋼製部材には、ブレース部材の端部が接合されていてもよい。
前記鋼製部材には、鉄骨架台の端部が接合されていてもよい。
前記荷重伝達部材は、板厚方向が水平又は略水平方向に配置された板部材と、前記板部材の板面に設けられたスタッドと、で構成されていてもよい。
前記荷重伝達部材は、上方から見た平面視において、二枚の前記板部材が十字状に交差して配置されていてもよい。
前記荷重伝達部材は、下端部に定着板が設けられたアンカーボルトでああってもよい。
前記荷重伝達部材は、上端部に定着部が設けられたダボ鉄筋であってもよい。
前記荷重伝達部材は、鉛直方向に延在する複数の主筋と、これら複数の主筋を取り囲む補強筋と、で構成された鉄筋部材であってもよい。
【0097】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。