特許第6788991号(P6788991)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6788991
(24)【登録日】2020年11月5日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】蓄電デバイス用外装材及び蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/02 20060101AFI20201116BHJP
   H01M 2/06 20060101ALI20201116BHJP
   H01M 2/30 20060101ALI20201116BHJP
   H01M 2/32 20060101ALI20201116BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20201116BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20201116BHJP
【FI】
   H01M2/02 K
   H01M2/06 K
   H01M2/30 D
   H01M2/32
   B32B15/08 E
   H01G11/78
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-79733(P2016-79733)
(22)【出願日】2016年4月12日
(65)【公開番号】特開2017-191681(P2017-191681A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2019年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】昭和電工パッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】永田 健祐
【審査官】 結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−228365(JP,A)
【文献】 特開2001−035453(JP,A)
【文献】 特開2013−058326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/02
B32B 15/08
H01G 11/78
H01M 2/06
H01M 2/30
H01M 2/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔層の一方の面に、耐食層/中間層/下地層/内側接着剤層/熱可塑性樹脂層がこの順に積層され、前記下地層の表面の一部において前記内側接着剤層および前記熱可塑性樹脂層で被覆されていない導電部が設けられた蓄電デバイス用外装材であって、
前記耐食層は、金属酸化物又はSi酸化物からなる層であり、
前記中間層は、金属アルコキシドの加水分解物又はSiアルコキシドの加水分解物を含有する層であり、
前記下地層は、金属及びSiからなる群より選ばれる1種または2種以上の成分と、水溶性樹脂と、を含有する層であることを特徴とする蓄電デバイス用外装材。
【請求項2】
前記金属アルコキシドにおける金属が、Cr、Zr、Ti、Ce及びAlからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属である請求項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項3】
前記耐食層における有機物含有率を「X」とし、前記中間層における有機物含有率を「Y」とし、前記下地層における有機物含有率を「Z」としたとき、
X<Y<Z
の関係にある請求項1または2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項4】
前記耐食層における有機物含有率が50質量%未満であり、前記下地層における有機物含有率が50質量%以上である請求項1〜のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項5】
前記金属箔層は、銅箔または鉄箔からなる請求項1〜のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項6】
前記金属箔層は、金属箔の少なくとも片面に、Ni、Cr、Zn及びSnからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属からなるメッキ層が形成されたものからなる請求項1〜のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項7】
前記金属箔層の他方の面に耐熱性樹脂層が積層されると共に、前記金属箔層の他方の面の一部に、前記耐熱性樹脂層で被覆されていない端子部が設けられている請求項1〜のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材2枚と、
デバイス本体部と、を備え、
互いの熱可塑性樹脂層同士が向き合うように配置された前記2枚の外装材の間の空間に前記デバイス本体部が収容され、前記デバイス本体部の電極と前記外装材の導電部とが接続され、前記2枚の外装材の周縁部の熱可塑性樹脂層同士が接合されて封止されていることを特徴とする蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートフォン、タブレット等の携帯機器に使用される電池やコンデンサ、ハイブリッド自動車、電気自動車、風力発電、太陽光発電、夜間電気の蓄電用に使用される電池やコンデンサ等の蓄電デバイス、及びこのような蓄電デバイス用の外装材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、タブレット端末等の携帯機器の薄型化、軽量化に伴い、これらに搭載されるリチウムイオン二次電池やリチウムポリマー二次電池の外装材としては、従来の金属缶に代えて、金属箔の両面に樹脂フィルムを貼り合わせたラミネート外装材が用いられている。同様に、コンデンサ、キャパシタ等もラミネート外装材を使用したものをバックアップ電源としてICカードや電子機器に搭載することが検討されている。
【0003】
金属箔の両面に樹脂フィルムを貼り合わせたラミネート外装材内に電池本体部を収容したものとして、例えば、フレキシブルなフィルムよりなる密閉外装材内に、積層された正極、セパレータ、および負極、並びに、電解質からなる電池構成物質を収容したカード電池であって、前記外装材として、熱可塑性樹脂、金属箔、および熱可塑性樹脂を順次積層した構成からなるラミネートフィルムが用いられてなる電池が公知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−56854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の電池では、電極から導出されるタブリード線(リード線)を設ける必要があるので、その分部品点数が多くなるという問題があった。また、このタブリード線は、ラミネート外装材の周縁のヒートシール部分で固定させる必要があるので、その分製造時の工数が多くなって手間がかかるという問題もあった。
【0006】
また、上記従来構成の外装材では、電解液によるバリア層の腐食を十分に防止できない面があることから、外装材の耐食性をさらに向上させることが望まれていた。
【0007】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、タブリードを要することなく通電が可能になると共に、外装材が十分な耐食性を備え、かつ十分な層間接合力を備えた蓄電デバイス及び蓄電デバイス用外装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0009】
[1]金属箔層の一方の面に、耐食層/下地層/内側接着剤層/熱可塑性樹脂層がこの順に積層され、前記下地層の表面の一部において前記内側接着剤層および前記熱可塑性樹脂層で被覆されていない導電部が設けられた蓄電デバイス用外装材であって、
前記耐食層は、金属酸化物又はSi酸化物からなる層であり、
前記下地層は、金属及びSiからなる群より選ばれる1種または2種以上の成分と、水溶性樹脂と、を含有する層であることを特徴とする蓄電デバイス用外装材。
【0010】
[2]金属箔層の一方の面に、耐食層/中間層/下地層/内側接着剤層/熱可塑性樹脂層がこの順に積層され、前記下地層の表面の一部において前記内側接着剤層および前記熱可塑性樹脂層で被覆されていない導電部が設けられた蓄電デバイス用外装材であって、
前記耐食層は、金属酸化物又はSi酸化物からなる層であり、
前記中間層は、金属アルコキシドの加水分解物又はSiアルコキシドの加水分解物を含有する層であり、
前記下地層は、金属及びSiからなる群より選ばれる1種または2種以上の成分と、水溶性樹脂と、を含有する層であることを特徴とする蓄電デバイス用外装材。
【0011】
[3]前記金属アルコキシドにおける金属が、Cr、Zr、Ti、Ce及びAlからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属である前項2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0012】
[4]前記耐食層における有機物含有率を「X」とし、前記中間層における有機物含有率を「Y」とし、前記下地層における有機物含有率を「Z」としたとき、
X<Y<Z
の関係にある前項2または3に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0013】
[5]前記耐食層における有機物含有率が50質量%未満であり、前記下地層における有機物含有率が50質量%以上である前項1〜4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0014】
[6]前記金属箔層は、銅箔または鉄箔からなる前項1〜5のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0015】
[7]前記金属箔層は、金属箔の少なくとも片面に、Ni、Cr、Zn及びSnからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属からなるメッキ層が形成されたものからなる前項1〜5のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0016】
[8]前記金属箔層の他方の面に耐熱性樹脂層が積層されると共に、前記金属箔層の他方の面の一部に、前記耐熱性樹脂層で被覆されていない端子部が設けられている前項1〜7のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【0017】
[9]前項1〜8のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材2枚と、
デバイス本体部と、を備え、
互いの熱可塑性樹脂層同士が向き合うように配置された前記2枚の外装材の間の空間に前記デバイス本体部が収容され、前記デバイス本体部の電極と前記外装材の導電部とが接続され、前記2枚の外装材の周縁部の熱可塑性樹脂層同士が接合されて封止されていることを特徴とする蓄電デバイス。
【発明の効果】
【0018】
[1]の発明では、デバイス本体部を接続する導電部が外装材の一部として形成されているので、タブリードを用いなくても通電が可能である。タブリードを無くすことによって、蓄電デバイスの軽量化および小型化に貢献できる。金属箔層の一方の面に耐食層/下地層/内側接着剤層/熱可塑性樹脂層がこの順に積層されてなる構成であり、耐食層が金属酸化物又はSi酸化物からなる層であるので金属箔の耐食性を向上させることができると共に、下地層は、金属及びSiからなる群より選ばれる1種または2種以上の成分と、水溶性樹脂と、を含有する層であるので、内側接着剤層に安定して接着結合させることができる。従って、金属箔の耐食性に優れていて耐電解液性等に優れると共に、十分な接着力が確保された蓄電デバイス用外装材が提供され得る。
【0019】
[2]の発明では、デバイス本体部を接続する導電部が外装材の一部として形成されているので、タブリードを用いなくても通電が可能である。タブリードを無くすことによって、蓄電デバイスの軽量化および小型化に貢献できる。金属箔層の一方の面に耐食層/中間層/下地層/内側接着剤層/熱可塑性樹脂層がこの順に積層されてなる構成であり、耐食層が金属酸化物又はSi酸化物からなる層であるので金属箔の耐食性を向上させることができると共に、下地層は、金属及びSiからなる群より選ばれる1種または2種以上の成分と、水溶性樹脂と、を含有する層であるので、内側接着剤層に安定して接着結合させることができる。更に、耐食層に中間層(金属アルコキシドの加水分解物又はSiアルコキシドの加水分解物を含有する層)を介して下地層が積層されているので、より十分な接着力が得られて、金属箔層と熱可塑性樹脂層とが十分な接着力で接合されるものとなる。従って、金属箔の耐食性に優れていて耐電解液性等に優れると共に、より十分な接着力が確保された蓄電デバイス用外装材が提供され得る。
【0020】
[3]の発明では、前記中間層において金属アルコキシドを構成する金属が、Cr、Zr、Ti、Ce及びAlからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属であるから、耐食層に中間層を介して下地層がより十分な接着力で接合され、金属箔層と熱可塑性樹脂層とがより十分な接着力で接合される。
【0021】
[4]の発明では、X<Y<Zの関係にある構成であるから、各層間の接着力をさらに高めることができる。
【0022】
[5]の発明では、耐食層における有機物含有率が50質量%未満であるので金属箔層と耐食層との接合力を更に向上させることができると共に、下地層における有機物含有率が50質量%以上であるので下地層と内側接着剤層との接合力を更に向上させることができて、金属箔層と熱可塑性樹脂層とがより十分な接着力で接合された蓄電デバイス用外装材が提供される。
【0023】
[6]の発明では、金属箔層が、銅箔または鉄箔からなる構成であり、銅箔である場合にはデバイスの放熱性を向上させることができるし、鉄箔である場合には外装材の強度を向上させることができる。
【0024】
[7]の発明では、金属箔層は、金属箔の少なくとも片面に、Ni、Cr、Zn及びSnからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属からなるメッキ層が形成されたものからなる構成であるので、耐食性を向上させることができる。
【0025】
[8]の発明では、金属箔層の他方の面に耐熱性樹脂層が積層されているから、(端子部を除いて)絶縁性を十分に確保できるし、物理的強度および耐衝撃性も確保できると共に、金属箔層の他方の面の一部に、耐熱性樹脂層で被覆されていない露出部(端子部)が設けられているので、この露出部(端子部)を介して通電を行うことができる。
【0026】
[9]の発明(蓄電デバイス)では、上記[1]〜[8]のいずれかの外装材を用いて構成されているから、タブリードを用いなくても通電が可能であり、軽量化および小型化を図ることが可能であるし、外装材が耐食性に優れていて耐電解液性に優れると共に十分な接着力が確保された外装材で外装された耐久性に優れた蓄電デバイスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係る蓄電デバイス用外装材の一実施形態を示す断面図である。
図2図1の蓄電デバイス用外装材を用いて構成された蓄電デバイスの一例を示す断面図である。
図3図2の蓄電デバイスの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る蓄電デバイス1の一実施形態を図2、3に示す。この蓄電デバイス1は、ラミネート外装電池であり、デバイス本体部としてのベアセル60と、該ベアセル60を収納する外装ケース45とを備えている。
【0029】
図2、3に示すように、外装ケース45は、平面視角形の凹部52とこの凹部52の開口縁から外方に延びるフランジ53を有する本体51と、前記本体51のフランジ53の外回り寸法と同寸の蓋体(底蓋)55とを組み合わせて作製されたものである。前記凹部52はベアセル60の収納用空間を形成している。
【0030】
前記本体51の構成材としては、第二金属箔層12と、該第二金属箔層12の一方の面(第一の面)側に積層された第二熱可塑性樹脂層14と、前記第二金属層12の他方の面(第二の面)側に積層された第二耐熱性樹脂層18と、を備えた外装材(蓄電デバイス用外装材)50が使用されている(図2参照)。
【0031】
前記蓋体55の構成材としては、第一金属箔層2と、該第一金属箔層2の一方の面(第一の面)側に積層された第一熱可塑性樹脂層4と、前記第一金属箔層2の他方の面(第二の面)側に積層された第一耐熱性樹脂層8と、を備えた外装材(蓄電デバイス用外装材)50が使用されている(図2参照)。
【0032】
前記本体51を構成する外装材50は、その構成を詳細に説明すると、図1に示すように、第二金属箔層12の一方の面に、耐食層81/中間層82/下地層83/内側接着剤層84/第二熱可塑性樹脂層14がこの順に積層され、前記下地層83の表面の一部(本実施形態では中央部)に、前記内側接着剤層84および前記第二熱可塑性樹脂層14で被覆されていない負極導電部54が設けられてなり、前記下地層83の表面(第二熱可塑性樹脂層14側の表面)における前記負極導電部54を除く領域で内側接着剤層84を介して前記第二熱可塑性樹脂層14が積層されている。更に、第二金属箔層12の他方の面に外側接着剤層90を介して第二耐熱性樹脂層18が積層されると共に、前記第二金属箔層12の他方の面の一部(本実施形態では中央部)に、前記第二耐熱性樹脂層18および外側接着剤層90で被覆されていない負極端子部19が設けられている(図1参照)。前記耐食層81は、金属酸化物又はSi酸化物からなる層であり、前記中間層82は、金属アルコキシドの加水分解物又はSiアルコキシドの加水分解物を含有する層であり、前記下地層83は、金属及びSiからなる群より選ばれる1種または2種以上の成分と、水溶性樹脂と、を含有する層である。これら前記耐食層81、前記中間層82および前記下地層83の構成の詳細は後述する。なお、図1、2において、80は機能層であり、この機能層は、第二金属箔層12側から第二熱可塑性樹脂層14側に向けて順に耐食層81/中間層82/下地層83/内側接着剤層84で構成されている。
【0033】
前記蓋体55を構成する外装材50は、その構成を詳細に説明すると、図1に示すように、第一金属箔層2の一方の面に、耐食層81/中間層82/下地層83/内側接着剤層84/第一熱可塑性樹脂層4がこの順に積層され、前記下地層83の表面の一部(本実施形態では中央部)に、前記内側接着剤層84および前記第一熱可塑性樹脂層4で被覆されていない正極導電部56が設けられてなり、前記下地層83の表面(第一熱可塑性樹脂層4側の表面)における前記正極導電部56を除く領域で内側接着剤層84を介して前記第一熱可塑性樹脂層4が積層されている。更に、第一金属箔層2の他方の面に外側接着剤層90を介して第一耐熱性樹脂層8が積層されると共に、前記第一金属箔層2の他方の面の一部(本実施形態では中央部)に、前記第一耐熱性樹脂層8および外側接着剤層90で被覆されていない正極端子部9が設けられている(図1参照)。前記耐食層81は、金属酸化物又はSi酸化物からなる層であり、前記中間層82は、金属アルコキシドの加水分解物又はSiアルコキシドの加水分解物を含有する層であり、前記下地層83は、金属及びSiからなる群より選ばれる1種または2種以上の成分と、水溶性樹脂と、を含有する層である。これら前記耐食層81、前記中間層82および前記下地層83の構成の詳細は後述する。なお、図1、2において、80は機能層であり、この機能層は、第一金属箔層2側から第一熱可塑性樹脂層4側に向けて順に耐食層81/中間層82/下地層83/内側接着剤層84で構成されている。
【0034】
前記本体51は、フラットシートの前記外装材50に対し、張り出し成形、絞り成形等の成形を行って凹部52を形成し、凹部52の周囲の未変形部分をフランジ53の外回り寸法にトリミングしたものである。一方、前記蓋体55はフラットシートの前記外装材50を所要寸法に裁断したものである。前記本体51の凹部52の底部の内面に負極導電部54が設けられ、蓋体55の内面に正極導電部56が設けられている(図2参照)。前記正極導電部56および負極導電部54は、前記外装材50の下地層83を露出させた露出部によって形成されている(図1参照)。また、前記正極端子部9および負極端子部19は、前記外装材50の金属箔層2、12を露出させた露出部によって形成されている(図1参照)。
【0035】
前記ベアセル60は、シート状の正極61とシート状の負極62とがセパレーター63を介して積層されてなり、このベアセル60が前記2枚の外装材50の間の空間に収容されて、正極61の端部が外装材50の正極導電部56に接続され、負極62の端部が外装材50の負極導電部54に接続されている(図2参照)。
【0036】
前記蓄電デバイス1は、ベアセル60の正極61および負極62をそれぞれ正極導電部56、負極導電部54に接合した後に、ベアセル60を本体51の凹部52に収納して蓋体55を被せ、電解質注入口を残して本体51のフランジ53と蓋体55との接触部の熱可塑性樹脂層4、14同士をヒートシールし、電解質を注入した後に前記電解質注入口をヒートシールすることによって封止したものである。
【0037】
上記蓄電デバイス1では、外装材50に正極端子部9および負極端子部19が設けられているので、これら端子部を介して他の機器に通電可能に接続できる。
【0038】
前記正極61と正極導電部56との接合手段、前記負極62と負極導電部54の接合手段としては、特に限定されるものではないが、例えば、超音波接合、はんだ付、導電性接着剤による接着等を例示できる。
【0039】
上記蓄電デバイス1では、ベアセル(デバイス本体部)60を接続する導電部(金属層)54、56が外装材の一部として形成されているので、タブリードを用いなくても通電が可能である。タブリードを無くすことによって、蓄電デバイス1の軽量化および小型化を図ることができる。また、金属箔層2、12の一方の面(デバイス本体部60側の面;熱可塑性樹脂層側の面)に、耐食層81/中間層82/下地層83がこの順に積層され、下地層83の表面における導電部56、54を除く領域で内側接着剤層84を介して熱可塑性樹脂層4、14が積層されてなる構成であり、耐食層81が金属酸化物又はSi酸化物からなる層であるので金属箔の耐食性を向上させることができると共に、下地層83は、金属及びSiからなる群より選ばれる1種または2種以上の成分と、水溶性樹脂と、を含有する層であるので、内側接着剤層84に安定して接着結合させることができる。ここで、耐食層81に中間層(金属アルコキシドの加水分解物又はSiアルコキシドの加水分解物を含有する層)82を介して下地層83が積層されているので、十分な接着力が得られて、金属箔層2、12と熱可塑性樹脂層4、14とが十分な接着力で接合されるものとなる。上記外装材50は、金属箔の耐食性に優れていて耐電解液性等に優れると共に、十分な接着力を確保できる。
【0040】
本発明の蓄電デバイス用外装材50の一実施形態を図1に示す。この蓄電デバイス用外装材1は、金属箔層2(12)の一方の面に、耐食層81/中間層82/下地層83/内側接着剤層84/熱可塑性樹脂層4(14)がこの順に積層され、前記下地層83の表面の一部(本実施形態では中央部)に、前記熱可塑性樹脂層4(14)および内側接着剤層84で被覆されていない導電部56(54)が設けられている。更に、金属箔層2(12)の他方の面に外側接着剤層90を介して耐熱性樹脂層8(18)が積層されると共に、前記金属箔層2(12)の他方の面の一部(本実施形態では中央部)に、前記耐熱性樹脂層8(18)および外側接着剤層90で被覆されていない端子部9(19)が設けられている(図1参照)。図1に示すように、耐食層81/中間層82/下地層83/内側接着剤層84により機能層80が形成されている。図2では、耐食層81、中間層82、下地層83、内側接着剤層84の各層は記載せずに、便宜上、これらの層をまとめて機能層80として記載しており、この機能層80の詳細な構成、態様等は、図1に示すとおりである。
【0041】
本発明では、前記耐食層81は、金属酸化物又はSi酸化物からなる層であり、前記中間層82は、金属アルコキシドの加水分解物又はSiアルコキシドの加水分解物を含有する層であり、前記下地層83は、金属及びSiからなる群より選ばれる1種または2種以上の成分と、水溶性樹脂と、を含有する層である。
【0042】
本発明の蓄電デバイス用外装材50では、前記耐食層81における有機物含有率を「X」(質量%)とし、前記中間層82における有機物含有率を「Y」(質量%)とし、前記下地層83における有機物含有率を「Z」(質量%)としたとき、X<Y<Zの関係にある構成が好ましい。金属箔層2、12と熱可塑性樹脂層4、14との接着力をさらに高めることができる。なお、上記各層における「有機物含有率」(質量%)は、JIS K7120−1987に準拠してTGによる質量減少分(減少した質量)を測定し、当該層の質量減少分(減少した質量)を「M」とし、上記測定を行う前の当該層の質量を「N」としたとき、
有機物含有率=(M/N)×100
上記計算式により求められる値(質量%)である。
【0043】
前記金属箔層2、12は、外装材50に酸素や水分の侵入を阻止するガスバリア性を付与する役割を担うものである。前記金属箔層2、12としては、特に限定されるものではないが、例えば、銅箔、鉄箔、銀箔、アルミニウム箔(Al箔)、各種合金箔等の他、金属箔の少なくとも片面に、Ni、Cr、Zn及びSnからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属からなるメッキ層が形成されたもの等が挙げられる。中でも、前記金属箔層2、12としては、銅箔、鉄箔、銀箔等の金属箔を用いるのが好ましい。前記金属箔層2、12の厚さは、20μm〜100μmであるのが好ましい。20μm以上であることで金属箔を製造する際の圧延時のピンホール発生を防止できると共に、100μm以下であることで張り出し成形、絞り成形等の成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。中でも、前記金属箔層2、12の厚さは、20μm〜50μmであるのが特に好ましい。
【0044】
金属のイオン化傾向を考慮すると、正極にアルミニウム箔を使用した場合には、銅箔または鉄箔は、負極側の外装材用の金属箔層(図2において金属箔層12)として好適である。
【0045】
前記金属箔層2、12の一方の面(内側層4、14側の面)に積層される耐食層81は、金属酸化物又はSi酸化物からなる層である。この耐食層81は、主に金属箔層2、12の腐食(腐食による変色も含む)防止の役割を担うものである。前記耐食層81としては、特に限定されるものではないが、例えば、クロメート皮膜(クロミウムクロメート皮膜、リン酸クロメート皮膜、電解クロメート皮膜等)、チタネート皮膜、ジルコネート皮膜、アルミナ皮膜、シリケート皮膜、セリウム酸化物皮膜、パシベート処理による金属酸化物皮膜などが挙げられる。前記耐食層81の厚さは、0.01μm〜5μmであるのが好ましい。
【0046】
前記中間層82は、主に耐食層81と下地層83との接着力を高める役割を担う。前記中間層82は、金属アルコキシドの加水分解物又はSiアルコキシドの加水分解物を含有してなる層である。金属アルコキシドやSiアルコキシドは、一般式R’M(OR)nで表され、ここで、
「M」として、Si、Ti、Zr、Cr、Ce、Al等が挙げられ、
「R’」として、ビニル基、スチリル基、メタアクリル基、エポキシ基、アミノ基等が挙げられ、
「R」として、メタン、エタン等が挙げられ、
R’M(OR)nにおけるRが加水分解により離脱してこの部位が耐食層81の金属又はSiと結合する一方、R’が下地層83の水溶性樹脂の官能基(例えば、カルボニル基、水酸基、アミノ基等)と結合する。これにより、中間層82を介して耐食層81と下地層83とが十分な接合力で接合される。
【0047】
また、前記中間層82は、例えば、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、ジルコネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤等のカップリング剤を塗布することにより形成できる層である。カップリング剤を塗布した後、上述した加水分解により、中間層82を介して耐食層81と下地層83とが十分な接合力で接合(結合)される。前記中間層82の厚さは、0.01μm〜5μmであるのが好ましい。
【0048】
前記下地層83は、主に、内側接着剤層84に安定して接着結合させる役割を担う。前記下地層83は、金属及びSiからなる群より選ばれる1種または2種以上の成分と、水溶性樹脂と、を含有する層である。金属及びSiからなる群より選ばれる1種または2種以上の成分としては、例えば、Cr、Zr、Ti、Ce、Zn、Si等が挙げられる。前記水溶性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
【0049】
前記下地層83を形成するための処理液としては、例えば、
1)リン酸と、
クロム酸と、
フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
2)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
3)リン酸と、
アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、
フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
上記1)〜3)のうちのいずれかの水溶液を例示できる。この水溶液を(乾燥後の)中間層82の表面に塗工した後、乾燥させることにより、前記下地層83を形成することができる。
【0050】
前記下地層83の厚さは、0.1μm〜10μmであるのが好ましい。
【0051】
前記内側接着剤層84としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリウレタン接着剤層、ポリエステルポリウレタン接着剤層、ポリエーテルポリウレタン接着剤層、ポリオレフィン系接着剤層等が挙げられる。中でも、電解液による膨潤の少ないポリオレフィン系接着剤を使用するのが好ましい。前記内側接着剤層84の厚さは、1μm〜5μmに設定されるのが好ましい。中でも、外装材の薄膜化、軽量化の観点から、前記内側接着剤層84の厚さは、1μm〜3μmに設定されるのが特に好ましい。
【0052】
前記熱可塑性樹脂層(熱融着性樹脂層)(内側層)4、14は、リチウムイオン二次電池等で用いられる腐食性の強い電解液などに対しても優れた耐薬品性を具備させると共に、外装材にヒートシール性を付与する役割を担うものである。
【0053】
前記熱可塑性樹脂層4、14としては、特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂無延伸フィルム層であるのが好ましい。前記熱可塑性樹脂無延伸フィルム層3は、特に限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系共重合体、これらの酸変性物およびアイオノマーからなる群より選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる無延伸フィルムにより構成されるのが好ましい。なお、前記熱可塑性樹脂層4、14は、単層であってもよいし、複層であってもよい。
【0054】
前記熱可塑性樹脂層4、14の厚さは、10μm〜80μmに設定されるのが好ましい。10μm以上とすることでピンホールの発生を十分に防止できると共に、80μm以下に設定することで樹脂使用量を低減できてコスト低減を図り得る。中でも、前記熱可塑性樹脂層4、14の厚さは25μm〜50μmに設定されるのが特に好ましい。
【0055】
前記耐熱性樹脂層(外側層)8、18を構成する耐熱性樹脂としては、外装材をヒートシールする際のヒートシール温度で溶融しない耐熱性樹脂を用いる。前記耐熱性樹脂としては、熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂の融点より10℃以上高い融点を有する耐熱性樹脂を用いるのが好ましく、熱可塑性樹脂の融点より20℃以上高い融点を有する耐熱性樹脂を用いるのが特に好ましい。
【0056】
前記耐熱性樹脂層(外側層)8、18としては、特に限定されるものではないが、例えば、ナイロンフィルム等のポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム等が挙げられ、これらの延伸フィルムが好ましく用いられる。中でも、前記耐熱性樹脂層8、18としては、二軸延伸ナイロンフィルム等の二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いるのが特に好ましい。前記ナイロンフィルムとしては、特に限定されるものではないが、例えば、6ナイロンフィルム、6,6ナイロンフィルム、MXDナイロンフィルム等が挙げられる。なお、前記耐熱性樹脂層8、18は、単層で形成されていても良いし、或いは、例えばポリエステルフィルム/ポリアミドフィルムからなる複層(PETフィルム/ナイロンフィルムからなる複層等)で形成されていても良い。前記例示した複層構成において、ポリエステルフィルムがポリアミドフィルムよりも外側に配置されるのが好ましく、同様にPETフィルムがナイロンフィルムよりも外側に配置されるのが好ましい。
【0057】
前記耐熱性樹脂層8、18の厚さは、8μm〜50μmであるのが好ましい。上記好適下限値以上に設定することで外装材として十分な強度を確保できると共に、上記好適上限値以下に設定することで張り出し成形、絞り成形等の成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。中でも、前記耐熱性樹脂層8、18の厚さは、12μm〜25μmであるのが特に好ましい。
【0058】
前記外側接着剤層90としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリウレタン接着剤層、ポリエステルポリウレタン接着剤層、ポリエーテルポリウレタン接着剤層等が挙げられる。前記外側接着剤層90の厚さは、1μm〜5μmに設定されるのが好ましい。中でも、外装材の薄膜化、軽量化の観点から、前記外側接着剤層90の厚さは、1μm〜3μmに設定されるのが特に好ましい。
【0059】
なお、本発明では、前記金属箔層2(12)の他方の面(外側層側の面)に前記下地層83が形成されていてもよい。即ち、金属箔層2(12)の他方の面側は、金属箔層2(12)/下地層83/外側接着剤層90/耐熱性樹脂層8(18)の積層態様になっていてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、蓄電デバイス用外装材1は、金属箔層2(12)の一方の面に、耐食層81/中間層82/下地層83/内側接着剤層84/熱可塑性樹脂層4(14)がこの順に積層され、前記下地層83の表面の一部に、前記熱可塑性樹脂層4(14)および内側接着剤層84で被覆されていない導電部56(54)が設けられた構成が採用されていたが、この構成部に代えて、金属箔層2(12)の一方の面に、耐食層81/下地層83/内側接着剤層84/熱可塑性樹脂層4(14)がこの順に積層され、前記下地層83の表面の一部に、前記熱可塑性樹脂層4(14)および内側接着剤層84で被覆されていない導電部56(54)が設けられた構成を採用してもよい。即ち、中間層82が全く設けられていない構成を採用してもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、金属箔層2(12)の一方の面の全面に、耐食層81を介して前記中間層82が積層された構成が採用されているが、例えば、前記導電部56(54)に対応する領域では金属箔層2(12)の一方の面に耐食層81/下地層83がこの順に積層された構成(この対応領域だけ中間層82が設けられていない構成)を採用してもよい。この場合には、前記対応領域の下地層83の表面の露出部により導電部56(54)が構成される。
【実施例】
【0062】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0063】
<実施例1>
温度20℃〜40℃に制御された無水クロム酸水溶液(無水クロム酸の濃度3g/L)に厚さ35μmの銅箔を浸漬し、電流密度15A/dm2の条件で電解クロメート処理を行うことによって、厚さ35μmの銅箔の一方の面に厚さ1μmのクロメート皮膜(耐食層)を形成した。前記耐食層の有機物含有率は0質量%である。
【0064】
次に、銅箔におけるクロメート皮膜(耐食層)の上に、シランカップリング剤(3−アミノプロピルエトキシシラン)の1vol%水溶液を塗工した後、130℃で加熱乾燥させることによって、クロメート皮膜(耐食層)の上にSiアルコキシド加水分解物を含有してなる厚さ1μmの中間層を形成した。前記中間層の有機物含有率は50質量%である。
【0065】
次いで、前記中間層の表面に(得られた銅箔/耐食層/中間層における中間層側の表面に)、リン酸、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、クロム(III)塩化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布した後、180℃で乾燥を行って、Cr及びアクリル系樹脂を含有してなる厚さ1μmの化成皮膜(下地層)を形成した。この下地層のクロム付着量は3mg/m2であった。前記下地層の有機物含有率は90質量%である。
【0066】
また、前記銅箔の他方の面に、ポリエステル−ウレタン系接着剤を塗布した。この塗布の時に、銅箔の他方の面の中央部をマスキング(マスキングテープ貼付)により接着剤未塗布領域とした。しかる後、このポリエステル−ウレタン系接着剤塗布面に厚さ15μmの二軸延伸ポリアミドフィルム(耐熱性樹脂層;外側層)を貼り合わせた。
【0067】
次に、前記下地層の表面に(得られた銅箔/耐食層/中間層/下地層における下地層側の表面に)、さらに2液硬化型のマレイン酸変性ポリプロピレン接着剤(硬化剤が多官能イソシアネート)を塗布した。この塗布の時に、下地層の表面の中央部をマスキング(マスキングテープ貼付)により接着剤未塗布領域とした。しかる後、このマレイン酸変性ポリプロピレン接着剤塗布面に厚さ30μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(熱可塑性樹脂層;内側層)を重ね合わせて、ゴムニップロールと、100℃に加熱されたラミネートロールとの間に挟み込んで圧着することによりドライラミネートし、しかる後、40℃で5日間エージングする(加熱する)ことによって、積層体を得た。
【0068】
次に、前記積層体における二軸延伸ポリアミドフィルム(耐熱性樹脂層;外側層)の接着剤未塗布領域の周縁にレーザーを照射して二軸延伸ポリアミドフィルムを切断し、接着剤未塗布領域にある二軸延伸ポリアミドフィルムを除去して、正極端子部9を形成した。また、前記積層体における無延伸ポリプロピレンフィルム(熱可塑性樹脂層;内側層)の接着剤未塗布領域の周縁にレーザーを照射して無延伸ポリプロピレンフィルムを切断し、接着剤未塗布領域にある無延伸ポリプロピレンフィルムを除去して、正極導電部56を形成して、図1に示す構成の厚さ86μmの蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0069】
<実施例2>
無水クロム酸水溶液(無水クロム酸の濃度3g/L)に代えて、該無水クロム酸水溶液(無水クロム酸の濃度3g/L)に分散性向上のためのEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を添加してなる水溶液を用いて化成処理を行うことによって、耐食層が、有機物含有率5質量%である厚さ1μmのクロメート皮膜からなる構成にすると共に、化成処理液として、実施例1で使用した化成処理液にさらにEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を1質量%含有せしめた液を使用した以外は、実施例1と同様にして、図1に示す構成の厚さ86μmの蓄電デバイス用外装材1を得た。得られた蓄電デバイス用外装材において下地層の有機物含有率は95質量%である。
【0070】
<実施例3>
厚さ35μmの銅箔に代えて、厚さ35μmの鉄箔(Fe箔)を用いると共に、無水クロム酸水溶液に代えて、濃度5vol%のケイ酸ナトリウム水溶液を用いてシリケート処理を行うことによって、耐食層が、有機物含有率0質量%である厚さ0.1μmのシリケート皮膜からなる構成にした以外は、実施例1と同様にして、図1に示す構成の厚さ85μmの蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0071】
<実施例4>
無水クロム酸水溶液に代えて、濃度5vol%のチタニアコロイド分散液を用いて湿式法による成膜処理を行うことによって、耐食層が、有機物含有率0質量%である厚さ2μmのチタネート皮膜からなる構成にした以外は、実施例2と同様にして、図1に示す構成の厚さ87μmの蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0072】
<実施例5>
無水クロム酸水溶液に代えて、濃度5vol%のジルコニアコロイド分散液を用いて湿式法による成膜処理を行うことによって、耐食層が、有機物含有率0質量%である厚さ2μmのジルコネート皮膜からなる構成にした以外は、実施例1と同様にして、図1に示す構成の厚さ87μmの蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0073】
<実施例6>
厚さ35μmの銅箔に代えて、厚さ35μmのSUS箔(ステンレス箔)を用いた以外は、実施例1と同様にして、図1に示す構成の厚さ86μmの蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0074】
<実施例7>
厚さ35μmの銅箔に代えて、厚さ35μmの鋼箔(Fe箔)の両面にそれぞれZnメッキ層(各1μm)が形成されたものを用いた以外は、実施例1と同様にして、図1に示す構成の厚さ88μmの蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0075】
<実施例8>
リン酸、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、クロム(III)塩化合物、水、アルコールからなる化成処理液に代えて、リン酸、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、酸化セリウム、水、アルコールからなる化成処理液を用いることによって、下地層が、有機物含有率90質量%である厚さ1μmの下地層(Ceおよびアクリル系樹脂を含有する下地層)からなる構成とした以外は、実施例1と同様にして、図1に示す構成の厚さ86μmの蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0076】
<実施例9>
シランカップリング剤に代えて、チタネートカップリング剤(チタンラクテート)を使用した以外は、実施例1と同様にして、図1に示す構成の厚さ86μmの蓄電デバイス用外装材1を得た。得られた蓄電デバイス用外装材において中間層の有機物含有率は65質量%である。
【0077】
<実施例10>
無水クロム酸水溶液(無水クロム酸の濃度3g/L)に代えて、該無水クロム酸水溶液(無水クロム酸の濃度3g/L)に分散性向上のためのEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を添加してなる水溶液を用いて化成処理を行うことによって、耐食層が、有機物含有率5質量%である厚さ1μmのクロメート皮膜からなる構成にすると共に、シランカップリング剤に代えて、ジルコネートカップリング剤(ジルコニウムモノアセチルアセテート)を使用した以外は、実施例1と同様にして、図1に示す構成の厚さ86μmの蓄電デバイス用外装材1を得た。得られた蓄電デバイス用外装材において中間層の有機物含有率は70質量%である。
【0078】
<実施例11>
シランカップリング剤に代えて、アルミネートカップリング剤であるアルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)を使用した以外は、実施例1と同様にして、図1に示す構成の厚さ86μmの蓄電デバイス用外装材1を得た。得られた蓄電デバイス用外装材において中間層の有機物含有率は60質量%である。
【0079】
<実施例12>
リン酸、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、クロム(III)塩化合物、水、アルコールからなる化成処理液に代えて、リン酸、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、シリカ、水、アルコールからなる化成処理液を用いることによって、下地層が、有機物含有率90質量%である厚さ1μmの下地層(Siおよびアクリル系樹脂を含有する下地層)からなる構成とした以外は、実施例1と同様にして、図1に示す構成の厚さ86μmの蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0080】
<実施例13>
厚さ35μmの銅箔に代えて、厚さ30μmのアルミニウム箔(Al箔)を用いた以外は、実施例3と同様にして、図1に示す構成の厚さ80μmの蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0081】
<実施例14>
厚さ35μmの銅箔に代えて、厚さ35μmの銀箔(Ag箔)を用いた以外は、実施例3と同様にして、図1に示す構成の厚さ85μmの蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0082】
<実施例15>
実施例1で得られた銅箔/耐食層における耐食層側の表面に、リン酸、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、クロム(III)塩化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布した後、180℃で乾燥を行って、Cr及びアクリル系樹脂を含有してなる化成皮膜(下地層)を形成した。この下地層のクロム付着量は3mg/m2であった。
【0083】
次に、前記下地層の表面に(得られた銅箔/耐食層/下地層における下地層側の表面に)、2液硬化型のマレイン酸変性ポリプロピレン接着剤(硬化剤が多官能イソシアネート)を介して、厚さ30μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(内側層)を重ね合わせて、ゴムニップロールと、100℃に加熱されたラミネートロールとの間に挟み込んで圧着することによりドライラミネートし、しかる後、40℃で5日間エージングする(加熱する)ことによって、積層体を得た。
【0084】
次に、前記積層体における二軸延伸ポリアミドフィルム(耐熱性樹脂層;外側層)の接着剤未塗布領域の周縁にレーザーを照射して二軸延伸ポリアミドフィルムを切断し、接着剤未塗布領域にある二軸延伸ポリアミドフィルムを除去して、正極端子部9を形成した。また、前記積層体における無延伸ポリプロピレンフィルム(熱可塑性樹脂層;内側層)の接着剤未塗布領域の周縁にレーザーを照射して無延伸ポリプロピレンフィルムを切断し、接着剤未塗布領域にある無延伸ポリプロピレンフィルムを除去して、正極導電部56を形成して、厚さ85μmの蓄電デバイス用外装材を得た。即ち、実施例1と比較して、中間層を設けていない構成の蓄電デバイス用外装材を得た。
【0085】
<実施例16>
無水クロム酸水溶液に代えて、濃度5vol%のケイ酸ナトリウム水溶液を用いてシリケート処理を行うことによって、耐食層が、有機物含有率0質量%である厚さ0.1μmのシリケート皮膜からなる構成にした以外は、実施例15と同様にして、厚さ84μmの蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0086】
<実施例17>
リン酸、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、クロム(III)塩化合物、水、アルコールからなる化成処理液に代えて、リン酸、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、シリカ、水、アルコールからなる化成処理液を用いることによって、下地層が、有機物含有率90質量%である厚さ1μmの下地層(Siおよびアクリル系樹脂を含有する下地層)からなる構成とした以外は、実施例15と同様にして、厚さ85μmの蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0087】
<実施例18>
無水クロム酸水溶液に代えて、濃度5vol%のケイ酸ナトリウム水溶液を用いてシリケート処理を行うことによって、耐食層が、有機物含有率0質量%である厚さ0.1μmのシリケート皮膜からなる構成にすると共に、リン酸、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、クロム(III)塩化合物、水、アルコールからなる化成処理液に代えて、リン酸、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、シリカ、水、アルコールからなる化成処理液を用いることによって、下地層が、有機物含有率90質量%である厚さ1μmの下地層(Siおよびアクリル系樹脂を含有する下地層)からなる構成とした以外は、実施例15と同様にして、厚さ84μmの蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0088】
<比較例1>
厚さ35μmの銅箔の一方の面に、2液硬化型のマレイン酸変性ポリプロピレン接着剤(硬化剤が多官能イソシアネート)を介して、厚さ30μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(内側層)を重ね合わせて、ゴムニップロールと、100℃に加熱されたラミネートロールとの間に挟み込んで圧着することによりドライラミネートし、しかる後、40℃で5日間エージングする(加熱する)ことによって、積層体を得た。
【0089】
次に、前記積層体における二軸延伸ポリアミドフィルム(耐熱性樹脂層;外側層)の接着剤未塗布領域の周縁にレーザーを照射して二軸延伸ポリアミドフィルムを切断し、接着剤未塗布領域にある二軸延伸ポリアミドフィルムを除去して、正極端子部を形成した。また、前記積層体における無延伸ポリプロピレンフィルム(熱可塑性樹脂層;内側層)の接着剤未塗布領域の周縁にレーザーを照射して無延伸ポリプロピレンフィルムを切断し、接着剤未塗布領域にある無延伸ポリプロピレンフィルムを除去して、正極導電部を形成して、厚さ83μmの蓄電デバイス用外装材を得た。即ち、実施例1と比較して、耐食層、中間層および下地層を設けていない構成の蓄電デバイス用外装材を得た。
【0090】
<比較例2>
厚さ35μmの銅箔の一方の面に、リン酸、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、クロム(III)塩化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布した後、180℃で乾燥を行って、Cr及びアクリル系樹脂を含有してなる化成皮膜(下地層)を形成した。この下地層のクロム付着量は3mg/m2であった。次に、前記下地層の表面に(得られた銅箔/下地層における下地層側の表面に)、2液硬化型のマレイン酸変性ポリプロピレン接着剤(硬化剤が多官能イソシアネート)を介して、厚さ30μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(内側層)を重ね合わせて、ゴムニップロールと、100℃に加熱されたラミネートロールとの間に挟み込んで圧着することによりドライラミネートし、しかる後、40℃で5日間エージングする(加熱する)ことによって、積層体を得た。
【0091】
次に、前記積層体における二軸延伸ポリアミドフィルム(耐熱性樹脂層;外側層)の接着剤未塗布領域の周縁にレーザーを照射して二軸延伸ポリアミドフィルムを切断し、接着剤未塗布領域にある二軸延伸ポリアミドフィルムを除去して、正極端子部を形成した。また、前記積層体における無延伸ポリプロピレンフィルム(熱可塑性樹脂層;内側層)の接着剤未塗布領域の周縁にレーザーを照射して無延伸ポリプロピレンフィルムを切断し、接着剤未塗布領域にある無延伸ポリプロピレンフィルムを除去して、正極導電部を形成して、厚さ84μmの蓄電デバイス用外装材を得た。即ち、実施例1と比較して、耐食層および中間層を設けていない構成の蓄電デバイス用外装材を得た。
【0092】
<比較例3>
温度20℃〜40℃に制御された無水クロム酸水溶液(無水クロム酸の濃度3g/L)に厚さ35μmの銅箔を浸漬し、電流密度15A/dm2の条件で電解クロメート処理を行うことによって、厚さ35μmの銅箔の一方の面に厚さ1μmのクロメート皮膜(耐食層)を形成した。
【0093】
次に、銅箔におけるクロメート皮膜(耐食層)の上に、2液硬化型のマレイン酸変性ポリプロピレン接着剤(硬化剤が多官能イソシアネート)を介して、厚さ30μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(内側層)を重ね合わせて、ゴムニップロールと、100℃に加熱されたラミネートロールとの間に挟み込んで圧着することによりドライラミネートし、しかる後、40℃で5日間エージングする(加熱する)ことによって、積層体を得た。
【0094】
次に、前記積層体における二軸延伸ポリアミドフィルム(耐熱性樹脂層;外側層)の接着剤未塗布領域の周縁にレーザーを照射して二軸延伸ポリアミドフィルムを切断し、接着剤未塗布領域にある二軸延伸ポリアミドフィルムを除去して、正極端子部を形成した。また、前記積層体における無延伸ポリプロピレンフィルム(熱可塑性樹脂層;内側層)の接着剤未塗布領域の周縁にレーザーを照射して無延伸ポリプロピレンフィルムを切断し、接着剤未塗布領域にある無延伸ポリプロピレンフィルムを除去して、正極導電部を形成して、厚さ84μmの蓄電デバイス用外装材を得た。即ち、実施例1と比較して、中間層および下地層を設けていない構成の蓄電デバイス用外装材を得た。
【0095】
<比較例4>
実施例1で得られた銅箔/耐食層/中間層における中間層側の表面に、2液硬化型のマレイン酸変性ポリプロピレン接着剤(硬化剤が多官能イソシアネート)を介して、厚さ30μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(内側層)を重ね合わせて、ゴムニップロールと、100℃に加熱されたラミネートロールとの間に挟み込んで圧着することによりドライラミネートし、しかる後、40℃で5日間エージングする(加熱する)ことによって、積層体を得た。
【0096】
次に、前記積層体における二軸延伸ポリアミドフィルム(耐熱性樹脂層;外側層)の接着剤未塗布領域の周縁にレーザーを照射して二軸延伸ポリアミドフィルムを切断し、接着剤未塗布領域にある二軸延伸ポリアミドフィルムを除去して、正極端子部を形成した。また、前記積層体における無延伸ポリプロピレンフィルム(熱可塑性樹脂層;内側層)の接着剤未塗布領域の周縁にレーザーを照射して無延伸ポリプロピレンフィルムを切断し、接着剤未塗布領域にある無延伸ポリプロピレンフィルムを除去して、正極導電部を形成して、厚さ85μmの蓄電デバイス用外装材を得た。即ち、実施例1と比較して、下地層を設けていない構成の蓄電デバイス用外装材を得た。
【0097】
<比較例5>
厚さ35μmの銅箔の一方の面に、シランカップリング剤(3−アミノプロピルエトキシシラン)の1vol%水溶液を塗工した後、130℃で加熱乾燥させることによって、銅箔の一方の面に、Siアルコキシド加水分解物を含有してなる厚さ1μmの中間層を形成した。
【0098】
次いで、前記中間層の表面に(得られた銅箔/中間層における中間層側の表面に)、リン酸、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、クロム(III)塩化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布した後、180℃で乾燥を行って、Cr及びアクリル系樹脂を含有してなる化成皮膜(下地層)を形成した。この下地層のクロム付着量は3mg/m2であった。
【0099】
次に、前記下地層の表面に(得られた銅箔/中間層/下地層における下地層側の表面に)、2液硬化型のマレイン酸変性ポリプロピレン接着剤(硬化剤が多官能イソシアネート)を介して、厚さ30μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(内側層)を重ね合わせて、ゴムニップロールと、100℃に加熱されたラミネートロールとの間に挟み込んで圧着することによりドライラミネートし、しかる後、40℃で5日間エージングする(加熱する)ことによって、積層体を得た。
【0100】
次に、前記積層体における二軸延伸ポリアミドフィルム(耐熱性樹脂層;外側層)の接着剤未塗布領域の周縁にレーザーを照射して二軸延伸ポリアミドフィルムを切断し、接着剤未塗布領域にある二軸延伸ポリアミドフィルムを除去して、正極端子部を形成した。また、前記積層体における無延伸ポリプロピレンフィルム(熱可塑性樹脂層;内側層)の接着剤未塗布領域の周縁にレーザーを照射して無延伸ポリプロピレンフィルムを切断し、接着剤未塗布領域にある無延伸ポリプロピレンフィルムを除去して、正極導電部を形成して、厚さ85μmの蓄電デバイス用外装材を得た。即ち、実施例1と比較して、耐食層を設けていない構成の蓄電デバイス用外装材を得た。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
【0104】
上記のようにして得られた各蓄電デバイス用外装材に対して下記評価法に基づいて性能評価を行った。その結果を表1〜3に示す。
【0105】
<耐食性評価法>
各実施例、比較例ごとにそれぞれ蓄電デバイス用外装材から長さ100mm×幅15mmの試験片を切り出し、この試験片の長さ方向の一端部を剥離させた状態で試験片を電解液に浸漬してこの電解液暴露状態にて85℃のオーブン内に4時間静置した。なお、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)が等量体積比で配合された混合溶媒に、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)が濃度1モル/Lで溶解された電解液を用いた。
【0106】
4時間経過後にオーブン内から試験片を取り出し、取り出した試験片を水洗してから、試験片の前記一端部の金属箔を肉眼で観察して、変色の有無を調べ、変色があったものを「×」とし、変色がなかったものを「○」(合格)とした。
【0107】
<抵抗値測定法>
日置電機社製(HIOKI製)「ミリオームハイテスター3540」を用いて蓄電デバイス用外装材の正極端子部9と正極導電部56との間で抵抗値(mΩ)を測定した。抵抗値100mΩ以下を合格とし、抵抗値が100mΩを超えるものを不合格とした。
【0108】
<電解液浸漬後の剥離強度測定法>
各実施例、比較例ごとにそれぞれ蓄電デバイス用外装材から長さ100mm×幅15mmの試験片を切り出し、この試験片の長さ方向の一端部に剥離強度測定用の掴みしろを設けた状態で前記試験片を電解液に浸漬してこの電解液暴露状態にて85℃のオーブン内に4時間静置した。なお、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)が等量体積比で配合された混合溶媒に、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)が濃度1モル/Lで溶解された電解液を用いた。
【0109】
4時間経過後にオーブン内から試験片を取り出し、試験片を水洗した後、25℃環境下の恒温室に24時間静置した。しかる後、前記恒温室内にて試験片を金属箔層と内側層(ポリプロピレンフィルム)の界面で剥離させてその剥離強度を測定した。この時、引張速度を150mm/分に設定して、180度剥離で剥離強度(N/15mm幅)を測定した。3(N/15mm幅)以上を合格とし、3(N/15mm幅)未満を不合格とした。
【0110】
<総合判定>
耐食性が「○」(合格)であり、耐電解液性が合格であり、抵抗値が小さくて十分に通電できていたものを総合判定「○」とし、耐食性、耐電解液性、小抵抗値(十分な通電性)のいずれかが不合格であったものを総合判定「×」とした。
【0111】
表1〜3から明らかなように、本発明に係る実施例1〜18の蓄電デバイス用外装材は、端子部と導電部との間は低抵抗でありながら、電解液に晒されても変色がなくて(腐食は認められず)耐食性に優れていると共に、電解液浸漬後の剥離強度(層間の接着力)も保持できているため、端子部と導電部との間にタブリードを用いなくても通電が十分に可能である。
【0112】
これに対し、表3から明らかなように、比較例1〜5では、電解液浸漬後の剥離強度は不十分であった。また、比較例1、2、5では、耐食性も良好でなかった。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明に係る蓄電デバイス用外装材は、具体例として、例えば、
・リチウム2次電池(リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池等)などの蓄電デバイス
・リチウムイオンキャパシタ
・電気2重層コンデンサ
等の各種蓄電デバイスの外装材として用いられる。また、本発明に係る蓄電デバイスは、上記例示した蓄電デバイスの他、全固体電池も含む。
【符号の説明】
【0114】
1…蓄電デバイス
2…第一金属箔層(金属箔層)
4…第一熱可塑性樹脂層(熱可塑性樹脂層;内側層)
8…第一耐熱性樹脂層(耐熱性樹脂層;外側層)
9…正極端子部(端子部)
12…第二金属箔層(金属箔層)
14…第二熱可塑性樹脂層(熱可塑性樹脂層;内側層)
18…第二耐熱性樹脂層(耐熱性樹脂層;外側層)
19…負極端子部(端子部)
50…蓄電デバイス用外装材
54…負極導電部(導電部)
56…正極導電部(導電部)
60…デバイス本体部(ベアセル)
80…機能層部
81…耐食層
82…中間層
83…下地層
84…内側接着剤層
90…外側接着剤層
図1
図2
図3