特許第6789013号(P6789013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6789013-粘着シート 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6789013
(24)【登録日】2020年11月5日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/29 20180101AFI20201116BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20201116BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   C09J7/29
   C09J201/00
   B32B27/00 M
   B32B27/00 B
【請求項の数】8
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-132366(P2016-132366)
(22)【出願日】2016年7月4日
(65)【公開番号】特開2018-2898(P2018-2898A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100154449
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 征史
(72)【発明者】
【氏名】西脇 匡崇
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 理仁
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−287091(JP,A)
【文献】 特開2015−145474(JP,A)
【文献】 特開2015−224284(JP,A)
【文献】 特開2014−058108(JP,A)
【文献】 特開2013−203965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の一方の表面に設けられた粘着剤層と、を備える片面接着性の粘着シートであって、
前記基材は、樹脂フィルム層と、該樹脂フィルム層よりも前記粘着シートの背面側に配置されかつ前記粘着シートの背面を構成しているマット層とを含み、
前記マット層は、樹脂成分と、マット材とを含み、
前記樹脂成分は、ポリウレタン系樹脂およびメタクリル系樹脂から選ばれる1種類または2種類以上を含み、
前記マット材は、アクリル系樹脂粒子、二酸化ケイ素粒子および硫酸バリウム粒子から選ばれる1種類または2種類以上を含み、
前記マット層における前記マット材の含有量は、0.5重量%以上40重量%以下であり、
前記粘着シートの背面の60°グロス値は7以下であり、かつ
前記粘着シートの背面の水接触角は80°以下である、粘着シート。
【請求項2】
前記粘着シートの総厚は50μm以下である、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記粘着剤層の厚さは10μm以下である、請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記樹脂フィルム層の厚さは30μm以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記基材は、前記樹脂フィルム層と前記マット層との間に配置された着色層をさらに含む、請求項からのいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記粘着シートの光透過率は10%以下である、請求項1からのいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項7】
前記粘着シートの背面の60°グロス値が5.0未満である、請求項1からのいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項8】
グラファイトシートに貼り付けて用いられる、請求項1からのいずれか一項に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、片面接着性粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、粘着剤(感圧接着剤ともいう。以下同じ。)は室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する。このような性質を活かして、粘着剤は、基材付き粘着シートの形態で、各種部材の接合や固定、保護等の目的で広く利用されている。例えば、携帯電話等の携帯電子機器内において、放熱目的で設置されるグラファイトシートの保護や意匠性付与等を目的として、上記構成の粘着シートが用いられている(特許文献1)。この用途の粘着シートは、具体的には、着色層を含む基材の片面に粘着剤層が配置された構成を有する。特許文献2は、耐指紋処理層を有する粘着シートに関する先行技術文献である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−203965号公報
【特許文献2】特開2013−166891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
片面粘着シートは、その背面に別の粘着シート(以下「背面支持シート」ともいう。)を一時的に貼り付けて、該背面支持シートとともに取り扱われることがあり得る。これにより作業性の向上や片面粘着シートの背面の保護等を図ることができる。片面粘着シートの背面に貼り付けられた背面支持シートは、所望の役割を果たした後は該背面から剥がされる。したがって、背面支持シートの粘着剤としては、再剥離性(例えば、剥離作業性や低汚染性)の観点から、高凝集力かつ低タックのものが好ましく用いられる。
【0005】
一方、片面粘着シートの背面には、意匠性の観点から、光沢(反射光)の抑制されたマットな質感が求められることがある。マットな質感を得るにはグロス値を低くすることが有効である。しかし、上述のように背面支持シートを貼り付けて取り扱われ得る片面粘着シートにおいて背面のグロス値を低くすると、該背面に対する上記背面支持シートの密着性が不足しやすくなるという不都合があった。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みて創出されたものであり、低光沢であって、かつ粘着剤を密着させやすい背面を備えた粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、基材と、該基材の一方の表面に設けられた粘着剤層と、を備える片面粘着シート(片面接着性の粘着シート)が提供される。上記粘着シートの背面の60°グロス値は15以下である。上記粘着シートの背面の水接触角は105°以下である。このような粘着シートは、60°グロス値が制限されていることにより、背面からみて低光沢で高級感のある外観を有する。また、上記背面の水接触角が所定値以下に制限されていることにより、該背面が粘着剤に対して良好な濡れ性を示す傾向にある。これにより上記背面への粘着剤の密着性が向上する。したがって、ここに開示される粘着シートは、該背面に上述のような背面支持シートが一時的に(すなわち、再剥離を前提として)貼り付けられる使用態様でも好ましく用いられ得る。
【0008】
好ましい一態様に係る粘着シートの総厚は50μm以下である。このように比較的薄い粘着シートは、背面支持シートを貼り付けて取り扱うことが特に有利である。したがって、粘着剤(例えば、背面支持シートを構成する粘着剤)に対する密着性のよい背面を有することの意義が大きい。
【0009】
好ましい他の一態様に係る粘着シートにおいて、該粘着シートを構成する粘着剤層の厚さは10μm以下である。このように粘着剤層の厚さが制限された粘着シートでは、背面支持シートのタックを高くする(ベタつきを強くする)ことによって粘着シート背面への密着性を高めようとすると、該背面支持シートを再剥離する際に上記粘着シートの粘着面が浮き上がってしまう等の不都合が生じやすい。ここに開示される技術によると、低タックの背面支持シートに対しても粘着シート背面の密着性を効果的に改善し得る。
【0010】
ここに開示される粘着シートの好ましい一態様において、上記基材は、樹脂フィルム層と、該樹脂フィルム層よりも上記粘着シートの背面側に配置されたマット層とを含む。このように構成することにより、低光沢の背面が好適に実現され得る。
【0011】
上記マット層は、典型的には上記粘着シートの背面を構成している。すなわち、上記マット層の表面が粘着シートの背面を兼ねている。このような構成では、背面支持シートのベタつきを強くすることで粘着シート背面への密着性を高めようとすると、該背面支持シートを再剥離する際にマット層の損傷や汚染を生じる懸念がある。ここに開示される技術によると、低タックの背面支持シートに対しても粘着シート背面の密着性を効果的に改善し得る。
【0012】
好ましい一態様において、上記樹脂フィルム層の厚さは30μm以下である。このように樹脂フィルム層の厚さが比較的小さい粘着シートは、背面支持シートを貼り付けて取り扱うことが特に有利である。したがって、粘着剤に対する密着性のよい背面を備えることの意義が大きい。
【0013】
上記基材は、着色層を含み得る。このことによって粘着シートの外観(色味、透過性等)を効果的に調節し、貼付け箇所等の使用態様に応じた所定の外観を有する粘着シートを好適に実現することができる。好ましい一態様において、上記着色層は、上記樹脂フィルム層と上記マット層との間に配置されている。このような構成では、背面支持シートの再剥離時における基材の損傷(例えば、マット層と着色層との間や着色層と樹脂フィルムとの間での剥がれ)を抑制する観点から、ここに開示される技術を適用して低タックの背面支持シートに対しても粘着シート背面の密着性を改善することが特に有意義である。
【0014】
好ましい一態様において、上記粘着シートの光透過率は10%以下である。このように構成された粘着シートを貼り付けることにより、被着体の外観(色ムラ、汚れ、凹凸等であり得る。)を好適にマスクし、該粘着シートの意匠性をよりよく反映した外観を実現することができる。
【0015】
好ましい一態様に係る粘着シートは、背面の60°グロス値が5未満である。このような粘着シートによると、特にマット感に優れた外観品質を得ることができる。
【0016】
ここに開示される粘着シートは、低光沢で高級感のある外観を有する。また、薄厚であっても背面支持シートを貼り付けて取り扱うことで良好な作業性を実現し得る。したがって、所定の意匠性、外観性が要求され、かつ放熱性のために薄厚化の要請の高いグラファイトシートに貼り付けられる粘着シートとして好ましく用いられる。具体的には、携帯電話、スマートフォン等の携帯電子機器内に配置されるグラファイトシートに使用される粘着シートとして好適である。この明細書により提供される粘着シートは、携帯電子機器内に配置されるグラファイトシートに積層されるものであり得る。また、同様に意匠性や薄厚化が求められることから、ここに開示される粘着シートは、フェライトシートに貼り付けられる粘着シートとして好ましく用いられる。具体的には、携帯電話、スマートフォン等の携帯電子機器に装着されるフェライトシートに使用される粘着シートとして好適である。この明細書により提供される粘着シートは、携帯電子機器内に配置されるフェライトシートに積層されるものであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】粘着シートの一構成例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、製品として実際に提供される本発明の粘着シートのサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
【0019】
この明細書において「粘着剤」とは、前述のように、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する材料をいう。ここでいう粘着剤は、「C. A. Dahlquist, “Adhesion : Fundamental and Practice”, McLaren & Sons, (1966) P. 143」に定義されているとおり、一般的に、複素引張弾性率E(1Hz)<10dyne/cmを満たす性質を有する材料(典型的には、25℃において上記性質を有する材料)であり得る。
【0020】
<粘着シートの構成>
ここに開示される粘着シートは、基材(支持体)の一方の表面に粘着剤層を有する形態の基材付き片面接着性の粘着シートである。ここでいう粘着シートの概念には、粘着テープ、粘着ラベル、粘着フィルム等と称されるものが包含され得る。なお、ここに開示される粘着シートは、ロール状であってもよく、枚葉状であってもよい。あるいは、さらに種々の形状に加工された形態の粘着シートであってもよい。
【0021】
ここに開示される粘着シートは、例えば、図1に模式的に示される断面構造を有するものであり得る。図1に示す粘着シート1は、シート状の基材10と、基材10の一方の表面10Aに設けられた粘着剤層20と、を備える。この粘着シート1において、粘着剤層20の表面は、粘着シート1の一方の表面を構成する接着面(粘着面)1Aである。また、この粘着シート1において、基材10の他方の表面10Bは、粘着シート1の他方の表面(背面)1Bとなっている。すなわち、基材10の他方の表面10Bは、粘着シート1の背面1Bを兼ねている。この粘着シート1の背面1Bは、60°グロス値が15以下であり、かつ水接触角が105°以下である。基材10は、樹脂フィルム層12と、樹脂フィルム層12の背面側(すなわち、樹脂フィルム層12よりも粘着シート1の背面1B側)に配置されたマット層16とを含む。この実施形態では、マット層16は基材10の最外層であり、マット層16の外表面16Aは粘着シート1の背面1Bとなっている。また、基材10は、樹脂フィルム層12とマット層16との間に配置された着色層14をさらに含む。したがって、基材10は、樹脂フィルム層12と着色層14とマット層16とがこの順で積層された積層構造を有する。この実施形態では、樹脂フィルム層12の第1表面12Aに粘着剤層20が設けられており、樹脂フィルム層12の第2表面12Bに着色層14が設けられている。
【0022】
使用前の粘着シート1は、粘着剤層20側が剥離面50Bとなっている剥離ライナー50によって粘着剤層20が保護された構成を有する。この剥離ライナー50付きの粘着シート1を、搬送や保管等を目的としてロール(粘着シートロール)形態とする場合には、剥離ライナー50の外表面50A(剥離面50Bとは反対側に位置する表面)と粘着シートの背面1B(本実施形態ではマット層16の外表面16A)とが当接した状態となり得る。
【0023】
なお、上記実施形態では、基材10は、樹脂フィルム層12と着色層14とマット層16との積層構造を有していたが、これに限定されない。例えば、マット層はなくてもよい。その場合、基材を樹脂フィルム層と着色層とからなる積層構造とし、その背面にマット処理を施すことで、粘着シート背面の60°グロス値を15以下にすることができる。基材が樹脂フィルム層と着色層とを備える場合、図1に示す実施形態と異なり、着色層は樹脂フィルム層よりも粘着剤層側に配置されてもよい。その場合、粘着シートは、粘着剤層と着色層と樹脂フィルム層とマット層(任意)とがこの順で積層された積層構造を有する。あるいはまた、基材を着色層のみから構成することも可能である。その場合、基材は、樹脂フィルム層の強度と着色層の色味を兼ね備えたものとなり得る。あるいは、基材は着色層を含んでいなくてもよい。
【0024】
<粘着シートの特性等>
ここに開示される粘着シートは、背面の60°グロス値が15以下である。かかる低グロス化によって、粘着シート背面は、光沢が抑制された高品質な外観を呈し得る。上記粘着シート背面の60°グロス値は、好ましくは10以下、より好ましくは7以下、さらに好ましくは6以下(典型的には5.5以下、例えば5.0未満)であり、4.0以下であってもよい。粘着シート背面の60°グロス値の下限値は特に制限されないが、実用上、0.5以上とすることができ、典型的には1.0以上(例えば1.5以上)である。なお、上記グロス値は、粘着シートの背面側にマット層を形成したり、エンボス加工、サンドブラスト加工等のマット処理(表面処理)を施すことによって得られる。
【0025】
粘着シート背面の60°グロス値は、市販の光沢計(例えば堀場製作所社製の商品名「高光沢グロスチェッカIG−410」)を用いて測定角60°の条件で測定される。後述の実施例についても同様である。
【0026】
ここに開示される粘着シートは、該粘着シートの背面の水接触角が105°以下である。一般に、高光沢の表面に比べてマットな表面は平滑性が低く粘着剤の密着性が不足しやすいところ、このように水接触角が所定値以下の背面は、上述の低いグロス値にかかわらず、粘着剤に対して良好な密着性を示し得る。このことによって、上述のように粘着シート背面に背面支持シートが一時的に貼り付けられ得る使用態様に対する適性が向上する。
【0027】
ここに開示される技術の一態様において、粘着シート背面の水接触角は、典型的には凡そ100°以下であり、凡そ90°以下でもよく、凡そ80°以下でもよい。水接触角がより小さくなると、粘着シート背面の粘着剤に対する濡れ性がより高くなる傾向にある。ここに開示される技術は、背面の水接触角が凡そ70°以下(例えば凡そ65°以下)である態様でも実施することができる。また、粘着シート背面の汚染防止の観点から、上記水接触角は、通常、凡そ30°以上が適当であり、凡そ40°以上(例えば凡そ45°以上)が好ましい。一態様において、粘着シート背面の水接触角は、凡そ50°以上であってよく、凡そ60°以上であってもよい。水接触角は、粘着シートの背面を構成する材料の選択や背面処理方法等によって調節することができる。これらの水接触角調節手段は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて適用することができる。
【0028】
上記水接触角は、市販の接触角測定装置を用いて、JIS R 3257:1999に準拠して測定すればよい。例えば、下記の条件で測定することができる。後述の実施例についても同様の方法が採用される。
[水接触角測定条件]
測定装置: 接触角測定器 FACE CA−X型(協和界面化学社製)
測定雰囲気:23℃、50%RH
測定液体: 蒸留水
測定時間: 着滴1500ms後
【0029】
ここに開示される粘着シートの光透過率は特に限定されず、例えば50%以下(典型的には30%以下)であり得る。一態様に係る粘着シートは、光透過率が20%以下であることが好ましい。これによって、粘着シートは良好な遮光性を示す。上記光透過率は、好ましくは15%以下であり、より好ましくは10%以下であり、さらに好ましくは10%未満(例えば7%以下、典型的には5%以下)である。好ましい一態様において、上記光透過率は、例えば凡そ3%以下であってよく、凡そ2%以下であってもよい。特に好ましい一態様では、十分な遮光性や被着体のマスク性(隠蔽性)を得る観点から、上記光透過率は1%未満(例えば0.5%未満、典型的には0.1%未満)であり得、実質的に0%であってもよい。あるいはまた、上記光透過率は、1%以上であってもよく、2%以上であってもよい。このような粘着シートによると、被着体(例えばグラファイトシート)の色味を程よく反映させて、所望の色味や質感、意匠性を付与することができる。
【0030】
粘着シートの光透過率は、市販の分光光度計を用いて、波長が380〜780nmの光を粘着シートの一方の面に垂直に照射し、他方の面に透過した光の強度を測定することにより求められる。分光光度計としては、例えば日立製作所製の分光光度計(装置名「U4100型分光光度計」)を用いることができる。後述の実施例についても同様である。
【0031】
ここに開示される粘着シートは、180度剥離強度が0.5N/20mm以上であることが好ましい。上記特性を示す粘着シートは、被着体(例えばグラファイトシート)に対して良好に接着し得る。また、背面に一時的に背面支持シートを貼り付けて取り扱うことを含む使用態様に適する。上記180度剥離強度は、1.0N/20mm以上であることがより好ましく、2.0N/20mm以上であることがさらに好ましい。他の好ましい一態様では、被着体への接着性を重視して、上記180度剥離強度は5.0N/20mm以上であり得、より好ましくは8.0N/20mm以上、さらに好ましくは12.0N/20mm以上である。ここでいう180度剥離強度は、ステンレス鋼板に対する180度剥離強度(180度引き剥がし粘着力)を指す。
【0032】
180度剥離強度は、次のようにして測定することができる。具体的には、粘着シートの背面にアクリル系粘着テープ(商品名「No.31B」、日東電工社製、総厚50μmの片面粘着テープ)を貼り付けて裏打ちした後、その裏打ちされた粘着シートを幅20mm、長さ100mmのサイズにカットした測定サンプルにつき、23℃、50%RHの環境下にて、上記測定サンプルの接着面をステンレス鋼板(SUS304BA板)の表面に、2kgのローラを1往復させて圧着する。これを同環境下に30分間放置した後、引張試験機を使用して、JIS Z 0237:2000に準じて、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で、上記測定サンプルの剥離強度(N/20mm)を測定する。引張試験機としては、例えばミネベア社製の「引張圧縮試験機、TG−1kN」を用いることができる。
【0033】
一態様に係る粘着シートは、9.0N/20mmを超える背面剥離強度を示す。このように良好な背面接着性を示す粘着シートは、該粘着シートの背面に背面支持シートを貼り付けて取り扱われ得る使用態様に適している。上記背面剥離強度は、9.5N/20mm以上であることが好ましく、10.0N/20mm以上(例えば10.5N/20mm以上)がより好ましい。一態様において、上記背面剥離強度は、11.0N/20mm以上であってよく、11.5N/20mm以上であってもよい。背面剥離強度の上限は特に制限されないが、通常は凡そ20.0N/20mm以下が適当であり、例えば凡そ15N/20mm以下であってもよい。
【0034】
粘着シートの背面剥離強度は、次のようにして測定することができる。すなわち、粘着シートの背面を被着体表面として、23℃、50%RHの環境下にて、20mmの幅にカットしたアクリル系粘着テープ(商品名「No.31B」、日東電工社製、総厚50μmの片面粘着テープ)を上記粘着シートの背面に、2kgのローラを1往復させて圧着する。これを同環境下に30分間放置した後、引張試験機を使用して、JIS Z 0237:2000に準じて、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で、上記アクリル系粘着テープの剥離強度(N/20mm)を測定する。引張試験機としては、上述した180度剥離強度測定と同様のものを用いることができる。後述の実施例についても同様の方法で測定される。測定にあたっては、必要に応じて、被着体としての粘着シートの粘着面に適当な補強材(例えば樹脂フィルム)を貼り付けて補強するとよい。後述の実施例についても同様の方法で測定される。
【0035】
好ましい一態様では、粘着シートの背面は、L表色系で規定される明度Lが50以下(例えば40以下、典型的には35以下)であり得る。上記明度Lは、好ましくは30以下である。かかる明度を有する粘着シートは、黒色が望まれる各種用途に適した色味を有するものとなり得る。上記明度を有する粘着シートは、グラファイトシートに貼り付ける用途に好ましく用いられる。上記明度Lの下限値について特に制限はないが、外観性等の観点から、凡そ15以上(例えば20以上)に設定され得る。特に好ましい一態様では、上記背面の60°グロス値が15以下(好ましくは10以下、より好ましくは7以下、さらに好ましくは5.0未満、例えば4.0以下、また典型的には0.5以上、好ましくは1.0以上、例えば1.5以上)であり、かつ明度Lが40以下(例えば15〜35、典型的には20〜30)である粘着シートが用いられる。上記背面を有する粘着シートは、光沢が抑制された重厚感あふれる黒色を呈し得るので、その種の意匠性が要求される用途に特に好ましく適用され得る。上記背面を有する粘着シートは、例えば、グラファイトシートに積層されることで、その周辺部材(例えばバッテリー)等とよく調和した色味を有し得る。
【0036】
粘着シートの背面のL表色系で規定される色度aは、特に限定されないが、粘着シートが適用される部分(部材であり得る。)の周辺との色味の調和を考慮して、±15(例えば±5、典型的には±2)の範囲とすることが好ましい。色度bは、特に限定されないが、±15(例えば±10、典型的には±5)の範囲とすることが好ましい。なお、本明細書において「±Xの範囲」とは、−X〜+Xの範囲という意味で用いられる。
【0037】
なお、本明細書におけるL表色系は、国際照明委員会が1976年に推奨した規定またはJIS Z 8729の規定に準拠するものとする。具体的には、Lは、色差計(商品名「CR−400」ミノルタ社製;色彩色差計)を用いて、粘着シート背面につき複数箇所(例えば5点以上)で測定を行い、その平均値を採用すればよい。
【0038】
ここに開示される粘着シート(粘着剤層および基材を含むが、剥離ライナーは含まない。)の総厚は特に限定されず、凡そ2μm以上(例えば3μm以上)とすることが適当であり、また凡そ250μm以下(典型的には150μm以下、例えば100μm以下、好ましくは50μm以下)とすることが適当である。好ましい一態様において、粘着シートの総厚は、30μm以下(例えば20μm以下、典型的には12μm以下)程度であり、凡そ10μm以下、さらには凡そ7μm以下であってもよい。薄厚の粘着シートは、該粘着シートが適用される製品の薄膜化、小型化、軽量化、省資源化等の点で有利なものとなり得る。また、ここに開示される粘着シートをグラファイトシートに貼り付ける用途に利用する場合、粘着シートを薄厚に構成することで、グラファイトシートの放熱効果が充分に発揮される。他の好ましい一態様では、取扱い性や、粘着剤層の厚さを大きくして十分な粘着特性(例えば粘着力)を得る観点から、粘着シートの総厚は、10μm以上(典型的には10μm超)であってよく、例えば15μm以上、さらには20μm以上とすることができ、25μm以上としてもよい。
【0039】
ここに開示される粘着シートの一態様において、該粘着シートの背面は、耐アルコール性を有する表面(耐アルコール性表面)であり得る。ここで、粘着シートの背面が耐アルコール性を有するとは、アルコール(例えばエタノール)に曝されたときに当該表面の外観変化(例えば、グロス値、色味または遮光性の変化)が抑制されている表面のことをいう。これによって、例えば粘着シートの背面が汚染された場合に、意匠性を低下させる懸念なく、アルコールを用いて上記汚染を拭き取ることができる。上記汚染は、例えば、凝集力が低くべたつきの強い粘着剤を備えた背面支持シートを上記粘着シート背面に貼り付けた後に再剥離する場合に、上記粘着剤の残渣が上記背面に残る(糊残り)ことで生じ得る。ここに開示される粘着シートは、低グロスでありながら粘着剤を密着させやすい背面を有することから、該粘着シートの背面に貼り付けられる背面支持シートとして、上述のような糊残りを生じにくい高凝集力かつ低タックのものを好ましく採用することができる。したがって、ここに開示される粘着シートは、該粘着シートの背面が耐アルコール性を有しない態様でも好ましく実施され得る。
【0040】
<基材>
(樹脂フィルム層)
ここに開示される粘着シートの基材としては、樹脂材料を主成分(例えば50重量%を超えて含まれる成分)とする樹脂フィルム層を含むものを好ましく採用し得る。この明細書において「樹脂フィルム」とは、典型的には、実質的に非発泡の樹脂フィルムを指す。すなわち、この明細書における樹脂フィルムは、該樹脂フィルム内に気泡が実質的に存在しない(ボイドレスの)ものであり得る。したがって、上記樹脂フィルムは、いわゆる発泡体フィルムとは区別される概念である。また、上記樹脂フィルムは、典型的には、実質的に非多孔質のフィルムであって、いわゆる不織布や織布とは区別される概念である。発泡体や不織布あるいは織布のような多孔質の層を含まない基材、すなわち非多孔質の層からなる基材を好ましく使用し得る。樹脂フィルムは、一般に、発泡体や不織布、織布に比べて、引張強度等の機械的強度に優れる傾向がある。また、加工性(例えば、打ち抜き加工性)に優れる。そのため、樹脂フィルムを含む基材を用いた粘着シートは、加工性や寸法精度、取扱い性の点で有利である。このような樹脂フィルムを含む基材は、その他、寸法安定性、厚み精度、経済性(コスト)等の観点からも、ここに開示される技術における基材として好ましく用いられ得る。
【0041】
ここに開示される樹脂フィルム層を構成する樹脂材料の好適例としては、ポリオレフィン系樹脂やポリエステル系樹脂等が挙げられる。ここで、ポリオレフィン系樹脂とは、ポリオレフィンを50重量%超の割合で含有する樹脂のことをいう。同様に、ポリエステル系樹脂とは、ポリエステルを50重量%を超える割合で含有する樹脂のことをいう。ポリオレフィン系樹脂フィルムとしては、ポリエチレン(PE)系樹脂、ポリプロピレン(PP)系樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体等が挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、ポリブチレンナフタレート系樹脂等が挙げられる。なかでも、投錨性(特に、アクリル系粘着剤層の投錨性)の観点から、ポリエステル系樹脂が好ましく、強度や加工性の点からPET系樹脂が特に好ましい。
【0042】
上記樹脂フィルム層には、必要に応じて、充填剤(無機充填剤、有機充填剤等)、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤等の各種添加剤が配合されていてもよい。各種添加剤の配合割合は、通常は30重量%未満(例えば20重量%未満、典型的には10重量%未満)程度である。
【0043】
樹脂フィルム層としては、透明フィルム(典型的には、透明な樹脂フィルム)を好ましく採用することができる。このような樹脂フィルム層は、強度等の観点から、着色剤を実質的に含まないものであり得る。ここで、樹脂フィルム層が着色剤を実質的に含有しないとは、該着色剤の含有量が1重量%未満、好ましくは0.1重量%未満であることをいう。あるいは、ここに開示される技術における樹脂フィルム層は、粘着シートにおいて所望の意匠性や光学特性(例えば遮光性等)を発現させるために、黒色や白色(例えば乳白色)その他の色に着色されていてもよい。上記着色は、例えば、樹脂フィルム層を構成する材料に公知の有機または無機の着色剤(顔料、染料等)を配合して行うとよい。黒色に着色された樹脂フィルム層は、黒色層となり得る。
【0044】
ここに開示される樹脂フィルム層は、単層構造であってもよく、2層、3層またはそれ以上の多層構造を有するものであってもよい。形状安定性の観点から、樹脂フィルム層は単層構造であることが好ましい。樹脂フィルム層の製造方法は従来公知の方法を適宜採用すればよく特に限定されない。例えば、押出成形、インフレーション成形、Tダイキャスト成形、カレンダーロール成形等の従来公知の一般的なフィルム成形方法を適宜採用することができる。
【0045】
上記樹脂フィルム層の表面には、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理、下塗り剤の塗布(下塗り層の形成)等の、従来公知の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は、樹脂フィルム層と粘着剤層との密着性や樹脂フィルム層とその背面に積層される層(例えば、マット層や着色層であり得る。)との密着性を向上させるための処理であり得る。なお、ここに開示される技術は、樹脂フィルム層と粘着剤層との間および/または樹脂フィルム層とその背面に積層される層との間に、下塗り層が形成されず、樹脂フィルム層と粘着剤層、および/または樹脂フィルム層とその背面に積層される層とが直接接触した態様で好ましく実施され得る。このような構成の粘着シートは、より薄厚となり得る。
【0046】
樹脂フィルム層の厚さは特に限定されない。好ましい一態様において、樹脂フィルム層の厚さを例えば30μm以下とすることができる。樹脂フィルム層の厚さを薄くすることで、粘着シートも薄厚となり、ひいては当該粘着シートが適用される製品の薄膜化、小型化、軽量化、省資源化等の点でも有利となり得る。また、ここに開示される粘着シートを放熱シート(典型的にはグラファイトシート)に用いる場合には、放熱シートの放熱効率が改善され得る。樹脂フィルム層の厚さは、典型的には20μm以下、好ましくは12μm以下、より好ましくは9μm以下(例えば7μm以下、典型的には5μm以下)である。小型化、軽量化等を特に重視する場合には、樹脂フィルム層の厚さは3μm以下(例えば凡そ2μm以下)とすることが特に好ましい。ハンドリング性や加工性等の観点から、樹脂フィルム層の厚さは、凡そ0.5μm以上(例えば1μm以上)とすることが好ましい。他の一態様では、取扱い性等の観点から、樹脂フィルム層の厚さは、30μm超(例えば35μm以上)である。この態様の基材の厚さは、凡そ200μm以下(例えば100μm以下、典型的には50μm以下)とすることが適当である。
【0047】
(マット層)
ここに開示される基材は、マット層を含むことが好ましい。これによって、グロス値を所望の範囲に好ましく調節することができる。ここでマット層とは、該層が形成されることで粘着シート背面の光沢を低下させる層のことをいう。なお、光沢の低下の有無や程度は、上述の60°グロス値の測定によって把握することができる。マット層表面は粘着シート背面であり得るため、マット層表面の60°グロス値は、上述の粘着シート背面の60°グロス値として示した範囲内の値をとることができる。
【0048】
好ましい一態様において、上記マット層は、粘着シートの背面を構成する層であり得る。マット層に加えて着色層(例えば黒色層)を含む基材を備えた粘着シートでは、マット層は、該粘着シートにおいて着色層の表面を覆うように配置され得る。着色層の保護機能を兼ね備える点から、マット層は着色層の背面(外表面)に設けられることが好ましい。また、粘着シートの背面視における色味を着色層によって効率よく調整する観点から、マット層は典型的には透明(半透明を含む。)であることが好ましい。マット層は、その表面にエンボス加工、サンドブラスト加工等の表面処理が施された層(マット処理面を有する層)であってもよく、塗布等により黒色層の表面に形成されたときに艶消し性を有するマット層であってもよい。マット層は、典型的には単層構造を有するが、多層構造を有してもよい。
【0049】
ここに開示されるマット層は、その組成によって艶消し性を有することが好ましい。例えば、マット層はマット材を含むものであり得る。これによって、追加の表面処理を施すことなく艶消し性を付与することができる。マット材は、典型的には粒子状であり、透明(典型的には無色透明)のものが好ましく用いられる。マット材の粒子形状は特に限定されず、球形等であり得る。
【0050】
マット材は、有機系粒子、無機系粒子のいずれであってもよく、あるいは両者を併用したものであってもよい。有機系粒子としては、例えば、ポリメチルメタクリレート粒子等のアクリル系樹脂粒子、ポリスチレン系粒子、スチレン−アクリル系樹脂粒子、ポリカーボネート系粒子、ウレタン系樹脂ビーズ、エポキシ系樹脂ビーズ、ポリエステル系樹脂ビーズ、ポリエステルウレタン系樹脂ビーズ等が挙げられる。無機系粒子としては、例えば、二酸化ケイ素(シリカ)粒子、二酸化チタン粒子、硫酸バリウム粒子、炭酸カルシウム粒子、マイカ、タルク等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。なかでも、アクリル系樹脂粒子、ウレタン系樹脂ビーズ、シリカ粒子が好ましい。
【0051】
マット材の平均粒子径は、要求される艶消しの程度やマット層の厚さ等に応じて決定されるため特定の範囲に限定されるものではないが、凡そ0.1μm以上であることが適当であり、好ましくは0.5μm以上(例えば1μm以上、典型的には1μm超)である。また、上記平均粒子径は、20μm以下であることが適当であり、好ましくは8μm以下(例えば3μm以下、典型的には2μm以下)程度である。マット材の平均粒子径は、艶消し性を十分に発現させる観点から、マット層の厚さの半分以上であることが好ましく、マット層の厚さと同じかそれよりも大きいことが好ましい。外観性や塗工性の観点から、マット材の平均粒子径は、マット層の厚さの10倍以下(例えば5倍以下、典型的には3倍以下)程度とすることが好ましい。なお、マット材の平均粒子径とは、レーザ回折・散乱法に基づく測定により得られた粒度分布において体積基準の累積粒度が50%となる粒径、すなわち50%体積平均粒子径(50%メジアン径)をいう。
【0052】
マット材の含有量は、要求される艶消しの程度やマット材の粒子径等に応じて設定されるため特定の範囲に限定されるものではないが、マット層において凡そ0.5重量%以上とすることが適当であり、好ましくは1重量%以上(例えば2重量%以上、典型的には3重量%以上)である。また、上記マット材の含有量は、マット層において凡そ40重量%以下とすることが適当であり、好ましくは20重量%以下(例えば10重量%以下、典型的には8重量%以下)である。
【0053】
マット層は、樹脂成分や分散剤等の他の添加成分を含み得る。マット層が透明である場合、マット層は、着色剤を実質的に含まない組成であってもよい。ここで、マット層が着色剤を実質的に含有しないとは、該着色剤の含有量が1重量%未満、好ましくは0.1重量%未満であることをいう。
【0054】
マット層に含まれる樹脂成分としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素メラミン系樹脂、シリコーン系樹脂、フェノキシ樹脂、メタクリル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、セルロース類、ポリアセタール、アルキッド樹脂等が挙げられる。樹脂成分は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記マット層を形成するための樹脂組成物(マット層形成用樹脂組成物)は、溶剤型組成物や熱硬化型組成物、紫外線硬化型組成物であり得るが、層形成性や耐熱性の観点から、熱硬化型や紫外線硬化型であることが好ましい。
【0055】
上記マット層形成用組成物を用いてマット層を形成する方法は特に限定されず、各種の印刷処理方法が採用され得る。印刷処理方法としては、特に限定されず、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、凸版印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷等の、公知または慣用の各種の方法を適宜採用することができる。具体的には、上記組成物を構成する固形分(典型的には樹脂成分や分散剤)を適当な溶媒に溶解または分散し、上記印刷処理方法のうち適当な方法を採用して、得られた組成物を黒色層や樹脂フィルム層に印刷処理することによりマット層は形成され得る。
【0056】
マット層の厚さは、艶消し性の付与や塗工性を考慮して、凡そ0.1μm以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ0.2μm以上(例えば0.3μm以上、典型的には0.5μm以上)である。また薄厚化の観点から、上記厚さは凡そ5μm以下とすることが適当であり、好ましくは凡そ3μm以下(例えば2μm以下、典型的には1.5μm以下)である。
【0057】
(着色層)
ここに開示される基材は、着色層を含むことが好ましい。着色層は、例えば、基材の背面側または粘着剤層側の表面に黒色の層が印刷された黒色印刷層であり得る。着色層として黒色層を備える粘着シートは、例えばグラファイトシートに貼り付ける用途に好ましく利用され得る。
【0058】
着色層は、典型的には、着色剤およびバインダーを含有する着色層形成用組成物を、基材に塗布して形成することができる。バインダーとしては、塗料または印刷の分野において公知の材料を特に制限なく使用することができる。例えば、ポリウレタン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素メラミン樹脂、ポリメタクリル酸メチル等が例示される。着色層形成用組成物は、例えば、溶剤型、紫外線硬化型、熱硬化型等であり得る。着色層の形成は、従来より着色層の形成に採用されている手段を特に制限なく採用して行うことができる。例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷等の印刷により着色層(印刷層)を形成する方法を好ましく採用し得る。
【0059】
着色層は、全体が1層からなる単層構造であってもよく、2層、3層またはそれ以上のサブ着色層を含む多層構造であってもよい。2層以上のサブ着色層を含む多層構造の着色層は、例えば、着色層形成用組成物の塗布(例えば印刷)を繰り返して行うことにより形成することができる。各サブ着色層に含まれる着色剤の色や配合量は、同一であってもよく、異なってもよい。遮光性を付与するための着色層では、ピンホールの発生を防止して光漏れ防止の信頼性を高める観点から、多層構造とすることが特に有意義である。
【0060】
着色層の着色に使用する着色剤としては、目的とする色に応じた公知の顔料や染料を適宜選択することができる。特に限定するものではないが、白色顔料の例としては、二酸化チタン、亜鉛華、鉛白等が挙げられる。黒色顔料の例としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、松煙、黒鉛等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
着色剤の含有量は、要求される色味や質感等に応じて設定されるため特定の範囲に限定されるものではないが、着色層において凡そ1重量%以上とすることが適当であり、好ましくは2重量%以上(例えば5重量%以上、典型的には15重量%以上)である。また、上記着色剤の含有量は、着色層において凡そ65重量%以下とすることが適当であり、好ましくは30重量%以下(例えば15重量%以下、典型的には8重量%以下)である。
【0062】
着色層全体の厚さは、通常、0.1μm以上が適当であり、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは0.7μm以上である。着色層全体の厚さは、凡そ0.8μm以上であってもよく、凡そ1μm以上であってもよい。他の一態様では、十分な遮光性や隠蔽性を得る観点から、着色層全体の厚さを2μm以上(例えば3μm以上、典型的には4μm以上)とすることが好ましい。また、上記着色層全体の厚さは、通常は10μm以下が適当であり、好ましくは7μm以下、より好ましくは5μm以下である。一態様において、着色層全体の厚さは、凡そ3μm以下とすることができ、さらには凡そ2μm以下とすることができる。二層以上のサブ着色層を含む着色層において、各サブ着色層の厚さは、通常、0.5μm〜2μm程度が好ましい。
【0063】
(トップコート層)
ここに開示される粘着シートの基材は、該基材の背面を構成するトップコート層を含み得る。トップコート層の表面(外表面)はマット処理面であることが好ましく、その場合、トップコート層はマット層と言い換えることができる。マット層は、その表面にエンボス加工、サンドブラスト加工等の表面処理が施されたトップコート層(マット処理面を有する層)であってもよく、塗布等により着色層の表面に形成されたときに艶消し性を有するマット層であってもよい。着色層の保護機能を兼ね備える点から、トップコート層はマット層であることが好ましい。
【0064】
一態様において、トップコート層は耐アルコール層を含み得る。例えば、トップコート層は耐アルコール層であり得る。ここで耐アルコール層とは、粘着シート(典型的には粘着シート背面)に耐アルコール性を付与する層をいう。耐アルコール層は、耐アルコール層を形成するための組成物中に含まれる樹脂成分や溶媒、分散剤等の添加成分の種類や量を選択することにより得ることができる。樹脂成分については前述のマット層に含まれ得る樹脂成分のなかから耐アルコール性に優れるものを技術常識に基づき選択すればよい。市販品としては、十条ケミカル社製の9000PLシリーズ、9100PLシリーズ(いずれも、溶剤型PETインキ)が挙げられる。かかる市販品は、着色剤を含み得るので、例えば品番「#9092」(黒色インキ)は、耐アルコール性を有する着色層の形成材料としても使用することができる。
【0065】
トップコート層(マット層、耐アルコール層、マット層および耐アルコール層の両方の機能を兼ね備えた耐アルコール性マット層であり得る。)は、樹脂成分や分散剤等の他の添加成分を含み得る。トップコート層が透明である場合、該トップコート層は、着色剤を実質的に含まない組成であってもよい。ここで、トップコート層が着色剤を実質的に含有しないとは、該着色剤の含有量が1重量%未満、好ましくは0.1重量%未満であることをいう。
【0066】
特に限定するものではないが、ここに開示される粘着シートにおいて粘着剤層以外の層の合計厚さ(非粘着剤層の合計厚さ。典型的には基材、着色層およびトップコート層の合計厚さ)は、例えば40μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下であり得る。粘着シートの総厚を所定以下に制限し、かつ高い粘着性能等を得る観点から、上記非粘着剤層の合計厚さは、10μm以下がさらに好ましく、5μm以下(例えば4.5μm以下)が特に好ましい。上記非粘着剤層の合計厚さの下限は特に限定されないが、粘着シートの加工性等の観点から、通常は2μm以上が適当であり、3μm以上(例えば3.5μm以上)が好ましい。他の一態様に係る非粘着剤層の合計厚さは、遮光性や取扱い性の観点から、10μm以上であってもよく、20μm以上(例えば35μm以上)であってもよい。
【0067】
<粘着剤層>
ここに開示される技術において、粘着剤層を構成する粘着剤の種類は特に限定されない。上記粘着剤は、粘着剤の分野において公知のアクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、フッ素系ポリマー等の各種ゴム状ポリマーの1種または2種以上をベースポリマーとして含むものであり得る。粘着性能やコスト等の観点から、アクリル系ポリマーまたはゴム系ポリマーをベースポリマーとして含む粘着剤を好ましく採用し得る。なかでもアクリル系ポリマーをベースポリマーとする粘着剤(アクリル系粘着剤)が好ましい。以下、アクリル系粘着剤により構成された粘着剤層、すなわちアクリル系粘着剤層を有する粘着シートについて主に説明するが、ここに開示される粘着シートの粘着剤層をアクリル系粘着剤により構成されたものに限定する意図ではない。
【0068】
なお、粘着剤の「ベースポリマー」とは、該粘着剤に含まれるゴム状ポリマーの主成分をいう。上記ゴム状ポリマーとは、室温付近の温度域においてゴム弾性を示すポリマーをいう。また、この明細書において「主成分」とは、特記しない場合、50重量%を超えて含まれる成分を指す。
また、「アクリル系ポリマー」とは、該ポリマーを構成するモノマー単位として、1分子中に少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来するモノマー単位を含む重合物をいう。以下、1分子中に少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを「アクリル系モノマー」ともいう。したがって、この明細書におけるアクリル系ポリマーは、アクリル系モノマーに由来するモノマー単位を含むポリマーとして定義される。アクリル系ポリマーの典型例として、該アクリル系ポリマーの合成に用いられる全モノマー成分のうちアクリル系モノマーの割合が50重量%より多いアクリル系ポリマーが挙げられる。
また、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよびメタクリロイルを包括的に指す意味である。同様に、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートおよびメタクリレートを、「(メタ)アクリル」とはアクリルおよびメタクリルを、それぞれ包括的に指す意味である。
【0069】
上記アクリル系ポリマーとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含み、該主モノマーと共重合性を有する副モノマーをさらに含み得るモノマー原料の重合物が好ましい。ここで主モノマーとは、上記モノマー原料におけるモノマー組成の50重量%超を占める成分をいう。
【0070】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば下記式(1)で表される化合物を好適に用いることができる。
CH=C(R)COOR (1)
ここで、上記式(1)中のRは水素原子またはメチル基である。また、Rは炭素原子数1〜20の鎖状アルキル基である。以下、このような炭素原子数の範囲を「C1−20」と表すことがある。粘着剤の貯蔵弾性率等の観点から、RがC1−14(例えばC2−10、典型的にはC4−8)の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとすることが適当である。粘着特性の観点から、Rが水素原子であってRがC4−8の鎖状アルキル基であるアルキルアクリレート(以下、単にC4−8アルキルアクリレートともいう。)を主モノマーとすることが好ましい。
【0071】
がC1−20の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらアルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましいアルキル(メタ)アクリレートとして、n−ブチルアクリレート(BA)および2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)が挙げられる。
【0072】
アクリル系ポリマーの合成に用いられる全モノマー成分に占めるアルキル(メタ)アクリレートの割合は、好ましくは70重量%以上、より好ましくは85重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である。アルキル(メタ)アクリレートの割合の上限は特に限定されないが、通常は99.5重量%以下(例えば99重量%以下)とすることが好ましい。あるいは、アクリル系ポリマーは実質的にアルキル(メタ)アクリレートのみを重合したものであってもよい。また、モノマー成分としてC4−8アルキルアクリレートを使用する場合、該モノマー成分中に含まれるアルキル(メタ)アクリレートのうちC4−8アルキルアクリレートの割合は、70重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましく、95重量%以上(典型的には99〜100重量%)であることがさらに好ましい。ここに開示される技術は、全モノマー成分の50重量%以上(例えば60重量%以上、典型的には70重量%以上)がBAである態様で好ましく実施され得る。好ましい一態様において、上記全モノマー成分は、BAより少ない割合で2EHAをさらに含み得る。
【0073】
ここに開示される技術におけるアクリル系ポリマーには、本発明の効果を顕著に損なわない範囲で、上記以外のモノマー(その他モノマー)が共重合されていてもよい。上記その他のモノマーは、例えば、アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)の調整、粘着性能(例えば剥離性)の調整等の目的で使用することができる。例えば、粘着剤の凝集力や耐熱性を向上させ得るモノマーとして、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ビニルエステル類、芳香族ビニル化合物等が挙げられる。これらのうちの好適例としてビニルエステル類が挙げられる。ビニルエステル類の具体例としては、酢酸ビニル(VAc)、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル等が挙げられる。なかでもVAcが好ましい。
【0074】
また、アクリル系ポリマーに架橋基点となり得る官能基を導入し、あるいは接着力の向上に寄与し得るその他モノマーとして、水酸基(OH基)含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、イミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、(メタ)アクリロイルモルホリン、ビニルエーテル類等が挙げられる。
ここに開示される技術におけるアクリル系ポリマーの一好適例として、上記その他モノマーとしてカルボキシ基含有モノマーが共重合されたアクリル系ポリマーが挙げられる。カルボキシ基含有モノマーとしては、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等が例示される。なかでも、AA、MAAが好ましい。
他の好適例として、上記その他モノマーとして水酸基含有モノマーが共重合されたアクリル系ポリマーが挙げられる。水酸基含有モノマーの例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート;N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。なかでも好ましい水酸基含有モノマーとして、アルキル基が炭素原子数2〜4の直鎖状であるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0075】
上記「その他モノマー」は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。その他モノマーの合計含有量は、全モノマー成分の凡そ40重量%以下(典型的には、0.001〜40重量%)とすることが好ましく、凡そ30重量%以下(典型的には0.01〜30重量%、例えば0.1〜10重量%)とすることがより好ましい。
上記その他モノマーとしてカルボキシ基含有モノマーを用いる場合、その含有量は、全モノマー成分の凡そ0.1重量%以上(例えば0.2重量%以上、典型的には0.5重量%以上)とすることが適当であり、また凡そ10重量%以下(例えば8重量%以下、典型的には5重量%以下)とすることが適当である。上記その他モノマーとして水酸基含有モノマーを用いる場合、その含有量は、全モノマー成分の凡そ0.001重量%以上(例えば0.01重量%以上、典型的には0.02重量%以上)とすることが適当であり、また、10重量%以下(例えば5重量%以下、典型的には2重量%以下)とすることが適当である。
【0076】
アクリル系ポリマーの共重合組成は、該ポリマーのガラス転移温度(Tg)が−15℃以下(典型的には−70℃以上−15℃以下)となるように設計されていることが適当である。アクリル系ポリマーのTgは、好ましくは−25℃以下(例えば−60℃以上−25℃以下)、より好ましくは−40℃以下(例えば−60℃以上−40℃以下)である。アクリル系ポリマーのTgを上述した上限値以下とすることは、粘着シートの貼付け作業性等の観点から好ましい。
【0077】
アクリル系ポリマーのTgは、モノマー組成(すなわち、該ポリマーの合成に使用するモノマーの種類や使用量比)を適宜変えることにより調整することができる。ここで、アクリル系ポリマーのTgとは、該ポリマーの合成に用いられるモノマー成分の組成に基づいて、Foxの式により求められるTgをいう。Foxの式とは、以下に示すように、共重合体のTgと、該共重合体を構成するモノマーのそれぞれを単独重合したホモポリマーのガラス転移温度Tgiとの関係式である。
1/Tg=Σ(Wi/Tgi)
なお、上記Foxの式において、Tgは共重合体のガラス転移温度(単位:K)、Wiは該共重合体におけるモノマーiの重量分率(重量基準の共重合割合)、Tgiはモノマーiのホモポリマーのガラス転移温度(単位:K)を表す。
【0078】
Tgの算出に使用するホモポリマーのガラス転移温度としては、公知資料に記載の値を用いるものとする。例えば、以下に挙げるモノマーについては、該モノマーのホモポリマーのガラス転移温度として、以下の値を使用する。
2−エチルヘキシルアクリレート −70℃
n−ブチルアクリレート −55℃
エチルアクリレート −22℃
メチルアクリレート 8℃
メチルメタクリレート 105℃
2−ヒドロキシエチルアクリレート −15℃
4−ヒドロキシブチルアクリレート −40℃
酢酸ビニル 32℃
スチレン 100℃
アクリル酸 106℃
メタクリル酸 228℃
【0079】
上記で例示した以外のホモポリマーのガラス転移温度については、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons, Inc., 1989)に記載の数値を用いるものとする。本文献に複数種類の値が記載されているモノマーについては、最も高い値を採用する。
【0080】
上記文献にもホモポリマーのガラス転移温度が記載されていない場合には、以下の測定方法により得られる値を用いるものとする。
具体的には、温度計、攪拌機、窒素導入管および還流冷却管を備えた反応器に、モノマー100重量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部および重合溶媒として酢酸エチル200重量部を投入し、窒素ガスを流通させながら1時間攪拌する。このようにして重合系内の酸素を除去した後、63℃に昇温し10時間反応させる。次いで、室温まで冷却し、固形分濃度33重量%のホモポリマー溶液を得る。次いで、このホモポリマー溶液を剥離ライナー上に流延塗布し、乾燥して厚さ約2mmの試験サンプル(シート状のホモポリマー)を作製する。この試験サンプルを直径7.9mmの円盤状に打ち抜き、パラレルプレートで挟み込み、粘弾性試験機(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、機種名「ARES」)を用いて周波数1Hzのせん断歪みを与えながら、温度領域−70℃〜150℃、5℃/分の昇温速度でせん断モードにより粘弾性を測定し、tanδのピークトップ温度をホモポリマーのTgとする。
【0081】
アクリル系ポリマーを得る方法は特に限定されず、溶液重合法、エマルション重合法、バルク重合法、懸濁重合法、光重合法等の、アクリル系ポリマーの合成手法として知られている各種の重合方法を適宜採用することができる。例えば、溶液重合法を好ましく用いることができる。溶液重合を行う際のモノマー供給方法としては、全モノマー原料を一度に供給する一括仕込み方式、連続供給(滴下)方式、分割供給(滴下)方式等を適宜採用することができる。重合温度は、使用するモノマーおよび溶媒の種類、重合開始剤の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば20℃以上(典型的には40℃以上)程度とすることができ、例えば170℃以下(典型的には140℃以下)程度とすることができる。好ましい一態様において、凡そ75℃以下(より好ましく凡そ65℃以下、例えば45℃〜65℃程度)の重合温度を採用することができる。
【0082】
溶液重合に用いる溶媒(重合溶媒)は、従来公知の有機溶媒から適宜選択することができる。例えば、トルエン等の芳香族化合物類(典型的には芳香族炭化水素類);酢酸エチル等の酢酸エステル類;ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素類;1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化アルカン類;イソプロピルアルコール等の低級アルコール類(例えば、炭素原子数1〜4の一価アルコール類);tert−ブチルメチルエーテル等のエーテル類;メチルエチルケトン等のケトン類;等から選択されるいずれか1種の溶媒、または2種以上の混合溶媒を用いることができる。
【0083】
重合に用いる開始剤は、重合方法の種類に応じて、従来公知の重合開始剤から適宜選択することができる。例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のアゾ系重合開始剤の1種または2種以上を好ましく使用し得る。重合開始剤の他の例としては、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物系開始剤;フェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤;芳香族カルボニル化合物;等が挙げられる。重合開始剤のさらに他の例として、過酸化物と還元剤との組み合わせによるレドックス系開始剤が挙げられる。このような重合開始剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、通常の使用量であればよく、例えば、全モノマー成分100重量部に対して0.005〜1重量部(典型的には0.01〜1重量部)程度の範囲から選択することができる。
【0084】
上記溶液重合によると、アクリル系ポリマーが有機溶媒に溶解した形態の重合反応液が得られる。ここに開示される技術における粘着剤層は、上記重合反応液または該反応液に適当な後処理を施して得られたアクリル系ポリマー溶液を含む粘着剤組成物から形成されたものであり得る。上記アクリル系ポリマー溶液としては、上記重合反応液を必要に応じて適当な粘度(濃度)に調製したものを使用し得る。あるいは、溶液重合以外の重合方法(例えば、エマルション重合、光重合、バルク重合等)でアクリル系ポリマーを合成し、該アクリル系ポリマーを有機溶媒に溶解させて調製したアクリル系ポリマー溶液を用いてもよい。
【0085】
ここに開示される技術におけるベースポリマー(好適にはアクリル系ポリマー)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されず、例えば10×10〜500×10の範囲であり得る。粘着性能の観点から、ベースポリマーのMwは、10×10以上(例えば20×10以上、典型的には35×10以上)の範囲にあることが好ましく、また150×10以下(例えば75×10以下、典型的には65×10以下)の範囲にあることが好ましい。ここでMwとは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)により得られた標準ポリスチレン換算の値をいう。GPC装置としては、例えば機種名「HLC−8320GPC」(カラム:TSKgelGMH−H(S)、東ソー社製)を用いることができる。
【0086】
ここに開示される技術における粘着剤は、粘着付与樹脂を含む組成であり得る。粘着付与樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、炭化水素系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂等の各種粘着付与樹脂を用いることができる。このような粘着付与樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを採用する場合、ロジン系粘着付与樹脂を用いることが好ましい。
【0087】
ロジン系粘着付与樹脂の例としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の未変性ロジン(生ロジン);これらの未変性ロジンを水添化、不均化、重合等により変性した変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、その他の化学的に修飾されたロジン等。以下同じ。);その他の各種ロジン誘導体;等が挙げられる。上記ロジン誘導体の例としては、未変性ロジンをアルコール類によりエステル化したもの(すなわち、ロジンのエステル化物)、変性ロジンをアルコール類によりエステル化したもの(すなわち、変性ロジンのエステル化物)等のロジンエステル類;未変性ロジンや変性ロジンを不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;未変性ロジン、変性ロジン、不飽和脂肪酸変性ロジン類または不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類におけるカルボキシ基を還元処理したロジンアルコール類;未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等のロジン類(特に、ロジンエステル類)の金属塩;ロジン類(未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等)にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂;等が挙げられる。
【0088】
使用する粘着付与樹脂の軟化点(軟化温度)は特に限定されない。例えば、軟化点が凡そ100℃以上(好ましくは凡そ120℃以上)であるものを好ましく使用し得る。このような軟化点を有するロジン系粘着付与樹脂(例えば、重合ロジンのエステル化物)を好ましく用いることができる。粘着付与樹脂の軟化点の上限は特に制限されず、凡そ200℃以下(典型的には凡そ180℃以下、例えば凡そ150℃以下)とすることができる。なお、ここでいう粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K 5902およびJIS K 2207のいずれかに規定する軟化点試験方法(環球法)によって測定された値として定義される。
【0089】
粘着付与樹脂の使用量は特に制限されず、目的とする粘着性能(剥離強度等)に応じて適宜設定することができる。例えば、ベースポリマー100重量部に対して、粘着付与樹脂を凡そ10重量部以上(より好ましくは15重量部以上、さらに好ましくは20重量部以上)の割合で使用することが好ましく、また凡そ100重量部以下(より好ましくは80重量部以下、さらに好ましくは60重量部以下)の割合で使用することが好ましい。
【0090】
ここに開示される技術において、粘着剤層の形成に用いられる粘着剤組成物は、必要に応じて架橋剤を含んでもよい。架橋剤の種類は特に制限されず、従来公知の架橋剤から適宜選択して用いることができる。そのような架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、アミン系架橋剤等が挙げられる。架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、凝集力向上の観点から、イソシアネート系架橋剤および/またはエポキシ系架橋剤の使用が好ましく、イソシアネート系架橋剤の使用が特に好ましい。架橋剤の使用量は特に制限されない。例えば、ベースポリマー(好適にはアクリル系ポリマー)100重量部に対して凡そ10重量部以下とすることができ、好ましくは凡そ0.005〜10重量部、より好ましくは凡そ0.01〜5重量部の範囲から選択することができる。
【0091】
ここに開示される技術における粘着剤層は、所望の意匠性や光学特性(例えば、遮光性等)を発現させるために、着色されていてもよい。この着色には、公知の有機または無機の着色剤(顔料、染料等)の1種または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。例えば、カーボンブラック等の黒色系着色剤を粘着剤層に含ませることにより、当該粘着剤層は黒色に着色され得る。着色剤の含有量は特に限定されず、例えばベースポリマー100重量部に対して15重量部未満とすることができる。粘着特性の低下を抑制する観点から、着色剤の含有量は、ベースポリマー100重量部に対して10重量部未満(例えば5重量部未満、典型的には3重量部未満)程度とすることが好ましい。ここに開示される技術は、粘着性能の観点から、粘着剤層が無機および有機の着色剤を実質的に含有しない態様で好ましく実施され得る。例えば、着色剤の含有量がベースポリマー100重量部に対して0〜1重量部である態様で好ましく実施され得る。
【0092】
上記粘着剤組成物は、必要に応じて、レベリング剤、架橋助剤、可塑剤、軟化剤、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等の、粘着剤組成物の分野において一般的な各種の添加剤を含有するものであり得る。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができ、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
【0093】
ここに開示される粘着剤層(粘着剤からなる層)は、水系粘着剤組成物、溶剤型粘着剤組成物、ホットメルト型粘着剤組成物、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物から形成された粘着剤層であり得る。水系粘着剤組成物とは、水を主成分とする溶媒(水系溶媒)中に粘着剤(粘着剤層形成成分)を含む形態の粘着剤組成物のことをいい、典型的には、水分散型粘着剤組成物(粘着剤の少なくとも一部が水に分散した形態の組成物)等と称されるものが含まれる。また、溶剤型粘着剤組成物とは、有機溶媒中に粘着剤を含む形態の粘着剤組成物のことをいう。ここに開示される技術は、粘着特性等の観点から、溶剤型粘着剤組成物から形成された粘着剤層を備える態様で好ましく実施され得る。
【0094】
ここに開示される粘着剤層は、従来公知の方法によって形成することができる。例えば、上述のような基材に粘着剤組成物を直接付与(典型的には塗布)して乾燥させることにより粘着剤層を形成する方法(直接法)を採用することができる。また、剥離性を有する表面(剥離面)に粘着剤組成物を付与して乾燥させることにより該表面上に粘着剤層を形成し、その粘着剤層を基材に転写する方法(転写法)を採用してもよい。生産性の観点から、転写法が好ましい。上記剥離面としては、剥離ライナーの表面や、剥離処理された基材背面等を利用し得る。なお、ここに開示される粘着剤層は典型的には連続的に形成されるが、このような形態に限定されるものではなく、例えば点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成された粘着剤層であってもよい。
【0095】
粘着剤組成物の塗布は、例えば、グラビアロールコーター、ダイコーター、バーコーター等の、従来公知のコーターを用いて行うことができる。あるいは、含浸やカーテンコート法等により粘着剤組成物を塗布してもよい。
架橋反応の促進、製造効率向上等の観点から、粘着剤組成物の乾燥は加熱下で行うことが好ましい。乾燥温度は、例えば40〜150℃程度とすることができ、通常は60〜130℃程度とすることが好ましい。粘着剤組成物を乾燥させた後、さらに、粘着剤層内における成分移行の調整、架橋反応の進行、基材や粘着剤層内に存在し得る歪の緩和等を目的としてエージングを行ってもよい。
【0096】
ここに開示される粘着剤層の厚さは特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。通常は、粘着性能や塗工性等の観点から、1μm以上(典型的には1.2μm以上、例えば1.5μm以上)程度が適当であり、また、乾燥効率等の生産性の観点から200μm以下(典型的には140μm以下、好ましくは80μm以下、より好ましくは40μm以下、例えば30μm以下)程度が適当である。ここに開示される粘着シートは、粘着剤層の厚さが25μm以下(典型的には15μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下、例えば3μm以下)である態様でも好ましく実施され得る。薄厚の粘着剤層は、粘着シートの薄膜化、小型化、軽量化、省資源化等の点でも有利である。また、粘着シートをグラファイトシートに適用する場合には、放熱効率の観点から、粘着剤層は薄厚であることが好ましい。
【0097】
<剥離ライナー>
ここに開示される技術において、粘着剤層の形成、粘着シートの作製、使用前の粘着シートの保存、流通、形状加工等の際に、剥離ライナーを用いることができる。剥離ライナーとしては、特に限定されず、例えば、樹脂フィルムや紙等のライナー基材の表面に剥離処理層を有する剥離ライナーや、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)やポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)の低接着性材料からなる剥離ライナー等を用いることができる。上記剥離処理層は、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により上記ライナー基材を表面処理して形成されたものであり得る。片面接着性の粘着シートに用いられる剥離ライナーは、典型的には、粘着シートの接着面に当接する面が剥離性表面(剥離処理面)として構成されており、他方の表面は非剥離処理面であり得る。剥離ライナーの厚さ(剥離ライナーの総厚)は特に限定されないが、剥離作業性や取扱い性、強度等の観点から、10μm以上(より好ましくは15μm以上、例えば25μm以上)程度とすることが好ましく、500μm以下(典型的には200μm以下、好ましくは100μm以下、例えば75μm以下)程度とすることが好ましい。
【0098】
<背面支持シート>
ここに開示される粘着シートは、上述のように、該粘着シートの背面に背面支持シートを貼り付けて(典型的には一時的に貼り付けて)取り扱う態様で用いられ得る。ここに開示される粘着シートは、低グロスでありながら水接触角が小さいので、粘着剤に対して良好な濡れ性を示し得る。背面支持シートとしては、特に限定されず、公知の粘着シートから適宜に選択することができる。通常、基材の片面または両面(典型的には片面)に粘着剤層を有する形態の背面支持シートが好ましい。背面支持シートの厚さは、特に限定されないが、通常は15μm以上250μm以下(典型的には25μm以上150μm以下、例えば35μm以上85μm以下)程度とすることが適当である。
背面支持シートを構成する基材としては、樹脂フィルム、紙、布、ゴムフィルム、発泡体フィルム、金属箔、これらの複合体や積層体等を用いることができる。例えば、樹脂フィルム層を含む基材を好ましく採用し得る。樹脂フィルムを構成する樹脂材料の好適例として、上述のようなポリオレフィン系樹脂やポリエステル系樹脂(例えばPET)等が挙げられる。基材の厚さは特に限定されないが、背面支持の目的と柔軟性とバランスよく両立する観点から、通常、10μm以上200μm以下(典型的には20μm以上100μm以下、例えば30μm以上80μm以下)程度とすることが適当である。
背面支持シートの粘着剤層を構成する粘着剤の種類は、特に限定されず、例えばゴム系、アクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、ポリエーテル系、シリコーン系、ポリアミド系等の粘着剤であり得る。低汚染性や再剥離性の観点から、一態様において、シリコーン系粘着剤を好ましく採用し得る。粘着剤層の厚さは特に限定されないが、被着体である粘着シート背面に対する粘着性と再剥離性とのバランスを考慮して、通常、2μm以上50μm以下(好ましくは5μm以上30μm以下、例えば7μm以上20μm以下)程度とすることが適当である。
【0099】
特に限定するものではないが、ここに開示される粘着シートは、背面支持シートとしてシリコーン系粘着テープ(例えば、厚さ約50μm程度のPETフィルムを基材とし、該基材の片面に厚さ10μm〜15μm程度のシリコーン系粘着剤層を有するシリコーン系片面粘着テープ)を用い、該背面支持シートを上記粘着シートの背面に一時的に貼り付けて取り扱う態様で好ましく用いられ得る。上記粘着シートおよび上記背面支持シートは、上記粘着シートの背面に対する上記背面支持シートの粘着力が0.005〜1N/20mm(より好ましくは0.01〜0.5N/20mm)程度となるように選択されることが好ましい。上記粘着力は、上述した背面剥離強度測定において、アクリル系粘着テープ(商品名「No.31B」、日東電工社製)に代えて上記シリコーン系粘着テープを用いることにより測定される。
【0100】
<用途>
ここに開示される粘着シートは、携帯電子機器用途に好ましく適用され得る。例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット型パソコン、ノート型パソコン、各種ウェアラブル機器(例えば、腕時計のように手首に装着するリストウェア型、クリップやストラップ等で体の一部に装着するモジュラー型、メガネ型(単眼型や両眼型。ヘッドマウント型も含む。)を包含するアイウェア型、シャツや靴下、帽子等に例えばアクセサリの形態で取り付ける衣服型、イヤホンのように耳に取り付けるイヤウェア型等)、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、音響機器(携帯音楽プレーヤー、ICレコーダー等)、計算機(電卓等)、携帯ゲーム機器、電子辞書、電子手帳、電子書籍、車載用情報機器、携帯ラジオ、携帯テレビ、携帯プリンター、携帯スキャナ、携帯モデム等の携帯電子機器内において、各種部材の保護や意匠性付与、各種部材の固定、ロゴ(意匠文字)や各種デザイン等の表示物(各種標章を含む。)の固定等の目的で好ましく利用され得る。なお、この明細書において「携帯」とは、単に携帯することが可能であるだけでは充分ではなく、個人(標準的な成人)が相対的に容易に持ち運び可能なレベルの携帯性を有することを意味するものとする。
【0101】
好ましい一態様では、ここに開示される粘着シートは、グラファイトシートに貼り付けて使用される。グラファイトシートは、発熱要素(バッテリー、ICチップ等)からの熱を逃がす放熱シートとして、各種小型電子機器内に好ましく用いられている。例えば、上記電子機器内のバッテリーやICチップ等の発電要素と隣接する位置や該発電要素の周辺に上記グラファイトシートは配置される。そのようなグラファイトシートは、外観ムラを有したり、また薄厚のものは破損しやすいため、外観性の改善、保護等の目的で、その表面に粘着シートが好ましく貼り付けられる。かかる用途において、粘着シートのグラファイトシートへの貼付け前または貼付け後に、該粘着シートの背面に一時的に背面支持シートを貼り付けて取り扱う使用態様に適することの利点が好ましく発揮され得る。また、ここに開示される粘着シートをグラファイトシートに適用することで、外観品質の向上が好ましく実現される。また、粘着シート背面のグロス値が制限されていることにより、光沢が抑制された高品質な外観を付与することができる。特に、着色層として黒色層を有し、かつ光透過性の低い構成によると、粘着シートの背面が重厚感あふれる黒色を呈し得るので、グラファイトシートやその周辺部材の色味とよく調和したものとなり得る。なお、特に限定されるものではないが、ここに開示される粘着シートは、4〜100μmの厚さを有し、および/または0.005〜5μmの算術平均表面粗さRaを有するグラファイトシートに好ましく適用される。
【0102】
他の好ましい一態様では、ここに開示される粘着シートは、フェライトシートに貼り付けて使用される。フェライトシートは、例えば電子機器等から放出される電磁波を吸収したり、電子機器等に侵入する電磁波を吸収する磁性シートとして、各種電子機器内に好ましく用いられている。例えば、上記電子機器内のRFID(Radio Frequency Identification)タグにおけるアンテナコイルに近接する位置、具体的には上記アンテナコイルと導電性部材との間に上記フェライトシートは配置される。そのようなフェライトシートで薄厚のものは脆く破損しやすいため、保護等の目的で、その表面に粘着シートが好ましく貼り付けられる。ここに開示される粘着シートをフェライトシートに適用することで、フェライトシートは良好に保護され得る。また、粘着シートのフェラトシートへの貼付け前または貼付け後に、該粘着シートの背面に一時的に背面支持シートを貼り付けて取り扱う使用態様に適することの利点が好ましく発揮され得る。また、外観品質の向上が好ましく実現され得る。
【0103】
この明細書により開示される事項には以下のものが含まれる。
(1) 基材と、該基材の一方の表面に設けられた粘着剤層と、を備える片面接着性の粘着シートであって、
上記粘着シートの背面の60°グロス値は15以下であり、かつ
上記粘着シートの背面の水接触角は105°以下である、粘着シート。
(2) 上記粘着シートの総厚は凡そ50μm以下である、上記(1)に記載の粘着シート。
(3) 上記粘着剤層の厚さは凡そ10μm以下である、上記(1)または(2)に記載の粘着シート。
【0104】
(4) 基材と、該基材の一方の表面に設けられた粘着剤層と、を備える片面接着性の粘着シートであって、
上記粘着シートの背面の60°グロス値は15以下(好ましくは10以下、より好ましくは5.0未満)であり、
上記粘着シートの背面の水接触角は105°以下であり、
上記粘着シートの光透過率は10%以下(好ましくは5%以下、典型的には1%以上)であり、
上記粘着シートの総厚が凡そ10μm以下(例えば凡そ7μm以下、典型的には凡そ3μm以上)である、粘着シート。
(5) 前記背面の水接触角が凡そ80°以下(典型的には凡そ70°以下、例えば凡そ60°以下)であり、かつ凡そ30°以上(例えば凡そ40°以上)である、上記(4)に記載の粘着シート。
【0105】
(6) 基材と、該基材の一方の表面に設けられた粘着剤層と、を備える片面接着性の粘着シートであって、
上記粘着シートの背面の60°グロス値は15以下(好ましくは10以下、より好ましくは5.0未満)であり、
上記粘着シートの背面の水接触角は105°以下であり、
上記粘着シートの光透過率は5%以下(好ましくは2%未満、典型的には0%)であり、
上記粘着シートの総厚が凡そ30μm以下(好ましくは凡そ15μm以下)かつ凡そ5μm以上(好ましくは凡そ7μm以上、例えば10μm超)である、粘着シート。
(7) 前記背面の水接触角が凡そ100°以下(典型的には凡そ90°以下、例えば凡そ80°以下)であり、かつ凡そ40°以上(典型的には凡そ50°以上、例えば凡そ60°以上)である、上記(6)に記載の粘着シート。
【0106】
(8) 上記基材は樹脂フィルム層を含む、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の粘着シート。
(9) 上記基材は、樹脂フィルム層と、該樹脂フィルム層よりも上記粘着シートの背面側に配置されたマット層とを含む、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の粘着シート。
(10) 上記基材は、上記樹脂フィルム層と上記マット層との間に配置された着色層をさらに含む、上記(9)に記載の粘着シート。
(11) 上記樹脂フィルム層としてポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム層を含む、上記(8)〜(10)のいずれかに記載の粘着シート。
(12) 上記樹脂フィルム層の厚さは凡そ30μm以下(好ましくは10μm以下、例えば5μm以下)である、上記(8)〜(11)のいずれかに記載の粘着シート。
【0107】
(13) 上記基材は着色層を含む、上記(1)〜(12)のいずれか一項に記載の粘着シート。
(14) 上記着色層は黒色層である、上記(13)に記載の粘着シート。
(15) 上記黒色層は、黒色顔料としてカーボンブラックを含む、上記(14)に記載の粘着シート。
【0108】
(16) 上記基材は、上記粘着シートの背面を構成するマット層を含む、上記(1)〜(15)のいずれかに記載の粘着シート。
(17) 上記マット層は、粒子状のマット材を含む、上記(16)に記載の粘着シート。
(18) 上記マット材は、アクリル系樹脂粒子(例えば、ポリメチルメタクリレート粒子)、ポリスチレン系粒子、スチレン−アクリル系樹脂粒子、ポリカーボネート系粒子、ウレタン系樹脂ビーズ、エポキシ系樹脂ビーズ、ポリエステル系樹脂ビーズ、ポリエステルウレタン系樹脂ビーズ、シリカ粒子、二酸化チタン粒子、硫酸バリウム粒子、炭酸カルシウム粒子、マイカおよびタルクからなる群から選択される1種または2種以上の粒子を含む、上記(17)に記載の粘着シート。
(19) 上記マット層は、マット材と樹脂成分とを含み、
上記樹脂成分は、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素メラミン系樹脂、シリコーン系樹脂、フェノキシ樹脂、メタクリル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、セルロース類、ポリアセタールおよびアルキッド樹脂からなる群から選択される1種または2種以上の樹脂を含む、上記(16)〜(18)のいずれかに記載の粘着シート。
(20) 上記マット層の厚さは2μm以下である、上記(16)〜(19)のいずれかに記載の粘着シート。
【0109】
(21) 上記粘着剤層は、該粘着剤層に含まれるポリマー成分の50重量%を超える割合でアクリル系ポリマーを含み、
上記アクリル系ポリマーは、モノマー成分として、式(1):
CH=C(R)COOR (1)
(上記式(1)中のRは水素原子またはメチル基である。また、Rは炭素原子数1〜20の鎖状アルキル基である。);で表されるアルキル(メタ)アクリレートを70重量%以上の割合で含む、上記(1)〜(20)のいずれかに記載の粘着シート。
【0110】
(22) グラファイトシートに貼り付けて用いられる、上記(1)〜(21)のいずれかに記載の粘着シート。
(23) フェライトシートに貼り付けて用いられる、上記(1)〜(21)のいずれかに記載の粘着シート。
(24) 携帯電子機器内に配置される、上記(1)〜(23)のいずれかに記載の粘着シート。
【実施例】
【0111】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
【0112】
<粘着シートの作製>
(例1)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器、滴下ロートを備えた反応容器に、モノマー成分としてのBA70部、2EHA27部、AA3部および4−ヒドロキシブチルアクリレート0.05部と、重合溶媒としてのトルエン135部とを仕込み、窒素ガスを導入しながら2時間撹拌した。このようにして重合系内の酸素を除去した後、重合開始剤としてのAIBN0.1部を加え、60℃で6時間溶液重合してアクリル系ポリマーのトルエン溶液を得た。このアクリル系ポリマーのMwは約40×10であった。
上記トルエン溶液に含まれるアクリル系ポリマー100部に対し、粘着付与樹脂として重合ロジンエステル(商品名「ペンセルD−125」、軟化点120〜130℃、荒川化学工業社製)30部およびイソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」、東ソー社製、固形分75%)2部を加えてアクリル系粘着剤組成物を調製した。
【0113】
剥離ライナーとして、片面が剥離処理されて剥離面となっているポリエステル製剥離フィルム(商品名「ダイアホイルMRF」、厚さ38μm、三菱ポリエステル社製)を用意した。剥離ライナーの剥離面に上記粘着剤組成物を、乾燥後の厚さが2μmとなるように塗布し、100℃で2分間乾燥させた。このようにして、上記剥離ライナーの剥離面上に粘着剤層を形成した。
厚さ2μmの透明なPETフィルム(商品名「マイラー」、帝人デュポンフィルム社製)の片面(第2表面)に厚さ約1μmの黒色印刷層が形成され、さらに該黒色印刷層の上に厚さ約1μmのトップコート層が形成された黒色印刷層形成PETフィルム(トップコート層形成基材)を用意した。上記トップコート層は、樹脂材料にマット材を添加、混合したトップコート層形成用組成物を黒色印刷層表面に塗布することにより形成したものであり、黒色印刷層およびトップコート層はいずれも大日精化工業社製から入手可能な材料により形成されている。
このトップコート層形成基材のPETフィルム側表面(PETフィルム層の第1表面)に上記剥離ライナー上に形成された粘着剤層を貼り合わせて、本例に係る粘着シートを作製した(転写法)。上記剥離ライナーは、そのまま粘着剤層上に残し、該粘着剤層の表面(接着面)の保護に使用した。
【0114】
(例2〜5)
粘着シート背面の光沢および水接触角が変化するようにトップコート層の組成(具体的には樹脂種、マット材の使用量等)を変更し、その他は例1と同様にして、例2〜5に係る粘着シートを作製した。ただし、例2に係る粘着シートについては、粘着剤層の厚さを20μmとし、基材としては厚さ4.5μmの透明なPETフィルム(商品名「ルミラー」、東レ社製)の片面(第2表面)に厚さ約5μmの黒色印刷層が形成され、さらに該黒色印刷層の上に厚さ約1μmのトップコート層が形成された黒色印刷層形成PETフィルム(トップコート層形成基材)を使用した。
【0115】
<評価>
各例に係る粘着シートにつき、背面の60°グロス値、水接触角(°)、光透過率(%)および背面剥離強度(N/20mm)を測定した。結果を表1に示す。
【0116】
(背面剥離強度)
23℃、50%の環境下にて、上記被着体上記で作製した各例に係る粘着シートの粘着面に、補強用の厚さ25μmの透明なPETフィルム(商品名「ルミラー」、東レ社製)を貼り合わせた。次いで、上記粘着シートの背面に、幅20mmにカットしたアクリル系粘着テープ(商品名「No.31B」、日東電工社製、総厚50μmの片面粘着テープ)を、2kgのローラを1往復させて圧着した。これを23℃、50%の環境下に30分間放置した後、JIS Z 0237に準じて、引張試験機を用いて上記アクリル系粘着テープを300mm/分の引張速度で180度方向に引きはがすことにより、各例に係る粘着シートの背面剥離強度[N/20mm]を測定した。
【0117】
(外観)
上記で作製した各例に係る粘着シートを市販のグラファイトシート(商品名「グラフィニティー25μm」、カネカ社製、厚さ25μm)に貼り付け、粘着シート背面側からの外観をパネリスト10人で評価した。その結果を、マット感の高い順に、E(Excellent):優れたマット感を示す、G(Good):良好なマット感を示す、A(Acceptable):まずまずのマット感を示す、P(Poor):マット感に乏しい、の4段階で評価した。結果を表1に示す。
【0118】
【表1】
【0119】
表1に示されるように、例1,2,4,5の粘着シートの背面は、60°グロス値の高い例3の粘着シートに比べて明らかに良好な質感(マット感)を有していた。また、例1,2の粘着シートの背面は、マット感に優れた低グロスの表面でありながら、水接触角が小さいことにより、良好な背面接着性を示した。
【0120】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0121】
1 粘着シート
1A 接着面
1B 背面
10 基材
10A 基材の一方の表面(粘着剤層側表面)
10B 基材の他方の表面(背面側表面)
12 樹脂フィルム層
12A 樹脂フィルム層の第1表面
12B 樹脂フィルム層の第2表面
14 着色層
16 マット層
20 粘着剤層
50 剥離ライナー
図1