特許第6789020号(P6789020)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6789020
(24)【登録日】2020年11月5日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】蓄電池運用方法および蓄電池運用装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20201116BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20201116BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20201116BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20201116BHJP
   G06Q 50/06 20120101ALI20201116BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20201116BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   H02J3/00 170
   H02J3/00 180
   H02J3/38 130
   H02J3/32
   H02J7/35 K
   G06Q50/06
   H01M10/44 P
   H01M10/48 P
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-139430(P2016-139430)
(22)【出願日】2016年7月14日
(65)【公開番号】特開2018-11452(P2018-11452A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2019年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】中森 勇一
(72)【発明者】
【氏名】梅岡 尚
(72)【発明者】
【氏名】上西 章太
【審査官】 坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−067195(JP,A)
【文献】 特開2010−057262(JP,A)
【文献】 特開2016−095863(JP,A)
【文献】 特開2015−037355(JP,A)
【文献】 特開2012−120295(JP,A)
【文献】 特開2016−170706(JP,A)
【文献】 特開平9−179604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
G06Q 50/06
H01M 10/44
H01M 10/48
H02J 3/32
H02J 3/38
H02J 7/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の需要家からなる需要家群であって1または複数の前記需要家が蓄電設備を持つ前記需要家群の電力の需給状態を管理する際に、
電子計算機によって、
前記需要家群の前記各需要家が系統に対して売電中かまたは前記系統から買電中かを示す情報に応じて、
前記各需要家を、前記売電中の前記需要家が属する第1需要家群または前記買電中の前記需要家が属する第2需要家群に分類し、
前記第1需要家群の売電計画の電力計画値と売電実績予測値との差分を算出し、その差分に応じて前記第1需要家群に分類された前記各需要家がもつ前記各蓄電設備の充放電電力を制御するとともに、
前記第2需要家群の買電計画の電力計画値と買電実績予測値との差分を算出し、その差分に応じて前記第2需要家群に分類された前記各需要家がもつ前記各蓄電設備の充放電電力を制御する
蓄電池運用方法。
【請求項2】
前記各蓄電設備の充放電電力を30分単位で制御する
請求項1に記載の蓄電池運用方法。
【請求項3】
再生可能エネルギー利用、または深夜電力利用のポリシーによる充放電制御をベースとして、前記各蓄電設備の充放電電力を制御する
請求項2に記載の蓄電池運用方法。
【請求項4】
前記買電計画の前記電力計画値が前記買電実績予測値より大きい場合に、充電するためにかかる購入電力費用と充電によるインバランス低減費用を比較して充放電制御を行う
請求項1に記載の蓄電池運用方法。
【請求項5】
電子計算機を備え、
複数の需要家からなる需要家群であって1または複数の前記需要家が蓄電設備を持つ前記需要家群の電力の需給状態を管理する際に、
前記電子計算機によって、
前記需要家群の前記各需要家が系統に対して売電中かまたは前記系統から買電中かを示す情報に応じて、
前記各需要家を、前記売電中の前記需要家が属する第1需要家群または前記買電中の前記需要家が属する第2需要家群に分類し、
前記第1需要家群の売電計画の電力計画値と売電実績予測値との差分を算出し、その差分に応じて前記第1需要家群に分類された前記各需要家がもつ前記各蓄電設備の充放電電力を制御するとともに、
前記第2需要家群の買電計画の電力計画値と買電実績予測値との差分を算出し、その差分に応じて前記第2需要家群に分類された前記各需要家がもつ前記各蓄電設備の充放電電力を制御する
蓄電池運用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池運用方法および蓄電池運用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力自由化が一般住宅も含む低圧まで拡大され、一般住宅において電力小売事業を自由に選択できるようになっている。一方電力小売事業者は、電力の品質に影響を与えないように電力の需要と供給をうまく一致させるよう、30分計画値同時同量が求められている(特許文献1〜3)。すなわち、電力需要、および発電電力のそれぞれに対して計画値と実績値を一致させることが求められている。そして、一致しない場合はペナルティーが科せられる制度となっている。電力小売事業者としては、このインバランス費用を低減することが大きな命題となっている。しかしながら、一般住宅では太陽電池を設置している家庭もあり、需要電力、および発電電力の予測は更に難しくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−63548号公報
【特許文献2】特開2010−148244号公報
【特許文献3】国際公開第2013/001713号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、インバランス費用を低減することができる蓄電池運用方法および蓄電池運用装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、複数の需要家からなる需要家群であって1または複数の前記需要家が蓄電設備を持つ前記需要家群の電力の需給状態を管理する際に、電子計算機によって、前記需要家群の前記各需要家が系統に対して売電中かまたは前記系統から買電中かを示す情報に応じて、前記各需要家を、前記売電中の前記需要家が属する第1需要家群または前記買電中の前記需要家が属する第2需要家群に分類し、前記第1需要家群の売電計画の電力計画値と売電実績予測値との差分を算出し、その差分に応じて前記第1需要家群に分類された前記各需要家がもつ前記各蓄電設備の充放電電力を制御するとともに、前記第2需要家群の買電計画の電力計画値と買電実績予測値との差分を算出し、その差分に応じて前記第2需要家群に分類された前記各需要家がもつ前記各蓄電設備の充放電電力を制御する蓄電池運用方法である。
【0006】
本発明の一態様は、上記蓄電池運用方法であって、前記各蓄電設備の充放電電力を30分単位で制御する。
【0007】
本発明の一態様は、上記蓄電池運用方法であって、再生可能エネルギー利用、または深夜電力利用のポリシーによる充放電制御をベースとして、前記各蓄電設備の充放電電力を制御する。
【0008】
本発明の一態様は、上記蓄電池運用方法であって、前記買電計画の前記電力計画値が前記買電実績予測値より大きい場合に、充電するためにかかる購入電力費用と充電によるインバランス低減費用を比較して充放電制御を行う。
【0009】
本発明の一態様は、電子計算機を備え、複数の需要家からなる需要家群であって1または複数の前記需要家が蓄電設備を持つ前記需要家群の電力の需給状態を管理する際に、前記電子計算機によって、前記需要家群の前記各需要家が系統に対して売電中かまたは前記系統から買電中かを示す情報に応じて、前記各需要家を、前記売電中の前記需要家が属する第1需要家群または前記買電中の前記需要家が属する第2需要家群に分類し、前記第1需要家群の売電計画の電力計画値と売電実績予測値との差分を算出し、その差分に応じて前記第1需要家群に分類された前記各需要家がもつ前記各蓄電設備の充放電電力を制御するとともに、前記第2需要家群の買電計画の電力計画値と買電実績予測値との差分を算出し、その差分に応じて前記第2需要家群に分類された前記各需要家がもつ前記各蓄電設備の充放電電力を制御する蓄電池運用装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、インバランス費用を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態にかかる電力管理システム3の全体構成例を示す図である。
図2図1に示す電力管理装置200の動作例を示すフローチャートである。
図3図2に示す発電インバランス低減処理(S12)を示すフローチャートである。
図4図2に示す需要インバランス低減処理(S13)を示すフローチャートである。
図5図2に示す発電インバランス低減処理(S12)を説明するための図である。
図6図2に示す発電インバランス低減処理(S12)を説明するための図である。
図7図2に示す需要インバランス低減処理(S13)を説明するための図である。
図8図2に示す需要インバランス低減処理(S13)を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る電力管理システム3の全体構成例を示している。本実施形態に係る電力管理システム3は、電力管理装置200と複数の需要家施設(需要家)10とを備える。図1に示す電力管理システム3は、例えば、所定の地域範囲(電力管理地域1)における複数の需要家施設10(需要家群4)に対応する住宅、商業施設、産業施設などの需要家施設10における電力を一括して管理するものである。このような電力管理システム3は、例えばTEMS(Town Energy Management System)やCEMS(Community Energy Management System)などといわれるものに対応する。図1に示す電力管理装置200が本発明の蓄電池運用装置の一態様に対応する。
【0013】
本実施形態に係る電力管理システム3は、図1において電力管理地域1として示す一定範囲の地域の需要家群4における需要家施設10ごとの電気設備を対象として電力管理を行う。需要家施設10は、例えば、住宅、商業施設、あるいは産業施設などに該当する。これらの需要家施設10には、それぞれ電力系統2からの電力が分岐して供給される。
【0014】
同図においては、さらに或る1つの需要家施設10が備える電気設備が示されている。同図において示される1つの需要家施設10は、太陽電池101(再生可能エネルギー対応発電装置の一例)、パワーコンディショナ102、蓄電池(蓄電設備)103、充放電制御装置104、分電盤105、負荷106−1〜106−Nおよび施設別制御部107を備える。なお、以降の説明において、負荷106−1〜106−Nのそれぞれについて特に区別しない場合には、負荷106と記載する。
【0015】
太陽電池101は、光起電力効果により光エネルギーを電力に変換する電力発生装置である。太陽電池101は、例えば需要家施設10の屋根などのように太陽光を効率的に受けられる場所に設置されることで、太陽光の光エネルギーを電力に変換する。なお、需要家施設10は、太陽電池101以外の発電設備を備えていてもよい。
【0016】
パワーコンディショナ102は、太陽電池101から出力される直流の電力を交流の電力に変換する。
【0017】
蓄電池103は、充電のために入力される電力を蓄積し、また、蓄積した電力を放電して出力する。この蓄電池103には、例えばリチウムイオン電池などを採用することができる。
【0018】
充放電制御装置104は、蓄電池103ごとに対応して備えられるもので、蓄電池103に充電するための電力の交流直流変換または蓄電池103から放電により出力される電力の直流交流変換を行う。つまり、蓄電池103が入出力する電力の双方向変換を行う。具体的に、蓄電池103に対する充電時には、電力系統2またはパワーコンディショナ102から分電盤105を介して充電のための交流の電力が充放電制御装置104に供給される。充放電制御装置104は、このように供給される交流の電力を直流に変換し、蓄電池103に供給する。また、蓄電池103の放電時には、蓄電池103から直流の電力が出力される。充放電制御装置104は、このように蓄電池103から出力される直流の電力を交流に変換して分電盤105に出力する。
【0019】
分電盤105は、電力量計測部108と図示していない複数のブレーカやスイッチを備え、電力系統2、パワーコンディショナ102、充放電制御装置104および負荷106−1〜106−Nに接続されている各配線を、ブレーカ等を介して相互に接続する。また、分電盤105は、電力量計測部108によって、電力系統2から供給を受けた電力量および逆潮流させた電力量、パワーコンディショナ102が出力した電力量、充放電制御装置104が入出力した電力量、負荷106−1〜106−Nへ供給された電力量を計測し、計測結果を施設別制御部107に対して通知する。ただし、電力量計測部108は分電盤105以外に設けられていてもよい。この場合、例えば、施設別制御部107は、電力系統2と分電盤105との間に設けられた通信機能を有する電力量計で計測された入力および出力の電力量を表す情報を所定の通信線を介して取得することができる。また、パワーコンディショナ102、充放電制御装置104、負荷106−1〜106−Nがそれぞれ発生や消費した電力の電力量を計測し、施設別制御部107に対して通知するようにすることができる。
【0020】
負荷106−1〜負荷106−Nは、需要家施設10において自己の動作のために電力を消費する所定の機器や設備などである。なお、需要家施設10ごとに備える負荷の数はそれぞれが異なっていて構わない。
【0021】
施設別制御部107は、需要家施設10における電気設備(太陽電池101、パワーコンディショナ102、蓄電池103、充放電制御装置104、分電盤105および負荷106)を制御する。施設別制御部107は、例えば破線で示した通信線(あるいは制御線)を介して電気設備と所定の制御信号を送受信する。
【0022】
電力管理装置200は、電子計算機(コンピュータ)を備え、その電子計算機によって電力管理地域1に属する需要家施設10全体における電気設備を対象として電力制御を実行する。このために、図1における電力管理装置200は、需要家施設10における施設別制御部107の各々と相互に通信が可能なように接続される。これにより、電力管理装置200は、施設別制御部107に対する制御によって、その施設別制御部107の管理下にある電気設備を制御することができる。
【0023】
なお、例えば施設別制御部107を省略して、電力管理装置200が各需要家施設10における電気設備などを直接制御するようにしてもよい。しかし、本実施形態では、電力管理装置200と施設別制御部107を備えた構成として、電力管理地域1全体と、需要家施設10とで制御を階層化することにより、電力管理装置200の制御の複雑化を回避している。
【0024】
また、電力管理地域1内の需要家施設10の一部において、例えば太陽電池101や、蓄電池103を備えないものがあってもよい。具体的には、電力管理地域1において、太陽電池101と蓄電池103とのいずれも備えない需要家施設10があってもよいし、太陽電池101と蓄電池103のうちのいずれか一方を備える需要家施設10があってもよい。
【0025】
太陽電池101の発電電力は、日照条件に応じて変動する。特に日中において晴天の状態であれば太陽電池101は大きな発電電力を出力する。その一方で、例えば需要家施設10において稼働している負荷106が少ないなどして、負荷106により消費される電力が少ないような状態となる場合がある。このような場合、需要家施設10においては、太陽電池101の発電電力のうちで負荷106により消費されない余剰分の電力(余剰電力)が生じる。
【0026】
このような余剰電力は、例えば蓄電池103に充電することができる。しかし、余剰電力が比較的大きいような場合には、蓄電池103に充電してもなお余剰電力が残る場合もあると考えられる。蓄電池103にも充電できない余剰電力については他の需要家施設10に対して供給すればよいということになる。しかし、太陽電池101の発電電力は日照条件に依存し、常に太陽電池101の余剰電力が発生し、他の需要家施設10に対して供給することはできない。また、電力管理地域1の需要家施設10全体の買電電力を設定し、最大買電電力(ピーク電力)を低下させるピークカットを行う場合、電力管理地域1における太陽電池101の発電電力および蓄電池103の蓄電電力を適切に制御することが望ましい。
【0027】
そこで、本実施形態の電力管理装置200は、以下に説明するようにして、各蓄電池103の充放電電力量を制御する。まず、電力管理装置200は、需要家群4の各需要家施設10の売電計画と買電計画を、所定時間分(例えば24時間分)、所定の単位期間(例えば30分;この単位期間は時間ステップあるいはコマとも呼ばれる)毎に作成する。売電計画と買電計画は、例えば、再生可能エネルギー利用、深夜電力利用など他のポリシーによる充放電制御をベースとして作成することができる。電力管理装置200は、このベースとする売電計画と買電計画に、以下で説明する実績予測値に基づく充放電制御を付与することでインバランスの低減を図る。売電計画および買電計画は、各需要家施設10において売電または買電する単位期間毎の電力(平均電力)の計画値を示す。なお、電力管理装置200は、例えば、売電計画と買電計画を1日に複数回(例えば3回)作成することができる。さらに、電力管理装置200は、需要家群4の電力の需給状態を管理する際に、需要家群4の各需要家施設10が電力系統2に対して売電中なのかまたは電力系統2から買電中なのかを示す情報に応じて、各需要家施設10を、売電中の需要家施設10が属する第1需要家群または買電中の需要家施設10が属する第2需要家群のいずれかに分類する。そして、電力管理装置200は、第1需要家群の売電計画の電力計画値と売電実績予測値との差分を算出し、その差分に応じて第1需要家群に分類された各需要家施設10がもつ各蓄電池103の充放電電力を制御する。また、電力管理装置200は、第2需要家群の買電計画の電力計画値と買電実績予測値との差分を算出し、その差分に応じて第2需要家群に分類された各需要家施設10がもつ各蓄電池103の充放電電力を制御する。
【0028】
なお、電力管理装置200は、各需要家施設10が電力系統2に対して売電中なのかまたは電力系統2から買電中なのかを示す情報を、例えば各需要家施設10の施設別制御部107から取得することができる。また、売電計画の電力計画値とは、予め作成された売電計画において次の所定の単位期間に売電することが計画されている電力の値(平均電力値)であり、第1需要家群に分類された各需要家施設10全体での合計値である。売電実績予測値は、売電電力の実績値に基づいて次の所定の単位期間に売電することが予測された電力の値(平均電力値)であり、第1需要家群に分類された各需要家施設10全体での合計値である。また、買電計画の電力計画値は、予め作成された買電計画において次の所定の単位期間に買電することが計画されている電力の値(平均電力の値)であり、第2需要家群に分類された各需要家施設10全体での合計値である。買電実績予測値は、買電電力の実績値に基づいて次の所定の単位期間に買電することが予測された電力の値(平均電力の値)であり、第2需要家群に分類された各需要家施設10全体での合計値である。
【0029】
次に、図2図8を参照して、電力管理装置200の動作例について説明する。図2は、電力管理装置200による各蓄電池103の充放電制御の処理の流れを示す。電力管理装置200は、次の所定の単位期間(期間Bとする)が開始される時刻の所定時間前に、その時点における状態が、売電中の状態なのか、買電中の状態なのかを示す情報に基づいて、需要家群4に属する各需要家施設10を、第1需要家群または第2需要家群のいずれかに分類する(ステップS11)。なお、売電中か買電中かの判断は、一時刻の状態で行ってもよいし、例えば、現在の所定の単位期間(期間Aとする(期間Bの1つ前の期間))における平均的な状態等としてもよい。すなわち、1期間において売電と買電とを行ったり来たりするような場合には電力量が大きい状態を当該需要家施設10の売電または買電の状態とすることができる。
【0030】
次に、電力管理装置200は、第1需要家群に分類された売電中の需要家施設10を対象として発電インバランス低減処理を実行するとともに(ステップS12)、第2需要家群に分類された買電中の需要家施設10を対象として需要インバランス低減処理を実行する(ステップS13)。
【0031】
ステップS12の発電インバランス低減処理では、図3に示すように、電力管理装置200が発電インバランス評価を行う(ステップS21)。ステップS21の発電インバランス評価では、電力管理装置200が第1需要家群に分類された売電中の需要家施設10を対象として、売電計画の電力計画値と、売電実績予測値と、売電計画の電力計画値と売電実績予測値の差分とを算出する。次に、電力管理装置200は、図5に示すように売電計画の電力計画値(計画値)が売電実績予測値(実績予測値)より大きい場合(ステップS22でYES)、第1需要家群に分類された売電中の需要家施設10が持つ蓄電池103を対象として、差分が小さくなるように放電制御を行う(ステップS23)。ステップS23で電力管理装置200は、差分がゼロに近づくように、差分に相当する電力量の分、第1需要家群に分類された売電中の需要家施設10が持つ蓄電池103の放電電力量を増加させる。この場合、図5において、放電によって実績予測値を押し上げることで、インバランスが低減される。なお、図5図8は、横軸を時間、縦軸を電力として、計画値と実績予測値の変化を模式的に示す図である。
【0032】
一方、図6に示すように売電計画の電力計画値(計画値)が売電実績予測値(実績予測値)より大きくない場合(ステップS22でNO)、第1需要家群に分類された売電中の需要家施設10が持つ蓄電池103を対象として、差分が小さくなるように充電制御を行う(ステップS24)。ステップS24で電力管理装置200は、差分がゼロに近づくように、差分に相当する電力量の分、第1需要家群に分類された売電中の需要家施設10が持つ蓄電池103の充電電力量を増加させる。この場合、図6において、充電によって実績予測値を押し下げることで、インバランスが低減される。
【0033】
一方、ステップS13の需要インバランス低減処理では、図4に示すように、電力管理装置200が需要インバランス評価を行う(ステップS31)。ステップS31の需要インバランス評価では、電力管理装置200が第2需要家群に分類された買電中の需要家施設10を対象として、買電計画の電力計画値と、買電実績予測値と、買電計画の電力計画値と買電実績予測値の差分とを算出する。次に、電力管理装置200は、図7に示すように買電計画の電力計画値(計画値)が売電実績予測値(実績予測値)より大きい場合(ステップS32でYES)、充電のための購入電力費用(購入電力コスト)が充電によるインバランス低減効果より大きいか否かを判定する(ステップS33)。購入電力費用が大きい場合(ステップS33でYES)、電力管理装置200は、充放電制御の調整を行わずに処理を終了する。
【0034】
一方、購入電力費用が大きくない場合(ステップS33でNO)、電力管理装置200は、第2需要家群に分類された買電中の需要家施設10が持つ蓄電池103を対象として、差分が小さくなるように充電制御を行う(ステップS34)。ステップS34で電力管理装置200は、差分がゼロに近づくように、差分に相当する電力量の分、第2需要家群に分類された買電中の需要家施設10が持つ蓄電池103の放電電力量を増加させる。この場合、図7において、充電によって実績予測値を押し上げることで、インバランスが低減される。
【0035】
なお、買電計画の電力計画値(計画値)が買電実績予測値(実績予測値)より大きい場合(ステップS32でYESの場合)、インバランス低減だけの観点では、充電により実績値を押し上げればよい。ただし、実際には、充電のための電力購入費が発生するので、充電のための電力購入費と充電によるインバランス費用の低減額を比較し(ステップS33)、次の運用を行っている。すなわち、電力費用>低減額の場合(ステップS33でYESの場合)、充電を増加させない。一方、電力費用≦低減額の場合(ステップS33でNOの場合)、充電を増加させる。なお、インバランス費用の低減額は、例えば、30分計画値同時同量を守れない場合のペナルティー料の低減額等を含む。
【0036】
一方、図8に示すように買電計画の電力計画値(計画値)が買電実績予測値(実績予測値)より大きくない場合(ステップS32でNO)、第2需要家群に分類された買電中の需要家施設10が持つ蓄電池103を対象として、差分が小さくなるように放電制御を行う(ステップS35)。ステップS35で電力管理装置200は、差分がゼロに近づくように、差分に相当する電力量の分、第2需要家群に分類された買電中の需要家施設10が持つ蓄電池103の放電電力量を増加させる。この場合、図8において、放電によって実績予測値を押し下げることで、インバランスが低減される。
【0037】
図2において、図3等を参照して説明した発電インバランス費用低減処理(ステップS12)および図4等を参照して説明した需要インバランス費用低減処理(ステップS13)が完了すると、電力管理装置200は、次の所定の単位時間に対する処理を開始するまで待機する(ステップS14)。
【0038】
以上のように、本実施形態によれば、電力管理装置200によって各蓄電池103の充放電電力量を制御することで、インバランス費用を低減することができる。
【0039】
なお、電力管理装置200の処理内容は次のようにまとめることができる。(1)プロシューマーは発電状態に応じて発電者(買電中の需要家施設10)か需要者(売電中の需要家施設10)か変わり得る。(2)電力管理装置200は、30分単位で、発電者か需要者かを区別する。(3)電力管理装置200は、発電者に設置されている蓄電池103を用いて発電インバランスを低減する。(4)発電計画値>発電実績予測値の場合は放電する。(5)発電計画値<発電実績予測値の場合は充電する。(5)電力管理装置200は、需要者に設定されている蓄電池103を用いて需要インバランスを低減する。(6)需要計画値>需要実績予測値の場合は充電する。ただし、充電するのは充電のための購入電力費用より充電によるインバランス費用低減金額が大きい場合に限定する。(7)需要計画値<需要実績予測値の場合は放電する。
【0040】
本実施形態は、一例として、小売事業者の立場で収益改善のために、需要家の蓄電池利用を提示したが、メリットは小売事業者だけでなく、蓄電池利用を許可する需要家にも金銭メリットが還元されるべきものである。また、需要家側にとっては、蓄電池の使用を電力小売事業者に許可すること収益増を見込むことができる。
【0041】
なお、上述の電力管理装置200の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述の電力管理装置200としての処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD−ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。
【0042】
また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部または外部に設けられた記録媒体も含まれる。配信サーバの記録媒体に記憶されるプログラムのコードは、端末装置で実行可能な形式のプログラムのコードと異なるものでもよい。すなわち、配信サーバからダウンロードされて端末装置で実行可能な形でインストールができるものであれば、配信サーバで記憶される形式は問わない。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後に端末装置で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0043】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は本実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。例えば、電力管理装置200を1または複数の需要家施設10内に設置したり、施設別制御部107による制御を行わない負荷106を需要家施設10内に設けたりすることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 電力管理地域
2 電力系統(系統)
3 電力管理システム
4 需要家群
10 需要家施設
101 太陽電池
102 パワーコンディショナ
103 蓄電池
104 充放電制御装置
105 分電盤
106−1〜106−N 負荷
107 施設別制御部
108 電力量計測部
200 電力管理装置(蓄電池運用装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8