(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)エポキシ樹脂及び(B)ビスマレイミド樹脂の合計量100質量部に対して、(C)フェノール硬化剤を1〜30質量部、(D)硬化促進剤を0.2〜8.0質量部を含有することを特徴とする請求項1に記載の封止用樹脂組成物。
【背景技術】
【0002】
トランジスタ、集積回路(IC)、大規模集積回路(LSI)等の半導体装置における封止材として、エポキシ樹脂をベースとし、これに硬化剤や硬化促進剤、さらにはシリカ粉末等の無機充填剤、着色剤等を配合した樹脂組成物が広く用いられている。これは、エポキシ樹脂組成物が電気特性や耐熱性、耐湿性、機械特性に優れており、かつ生産性やコストのバランスを備えているためである。
【0003】
しかし、近年、電子機器の小型化、軽量化、高性能化という市場の要求に応えるべく、半導体素子の高集積化や半導体装置の表面実装化が進み、それに伴い半導体素子の封止に使用されるエポキシ樹脂組成物への要求もますます厳しいものとなってきている。
【0004】
特に、表面実装される半導体装置では、半導体装置が半田リフロー時に高温にさらされ、半導体素子やリードフレームとエポキシ樹脂組成物の硬化物との界面に剥離が発生し、ひいては半導体装置にクラックが生じる等、信頼性を大きく損なう不良が生じることがある。このため、これらの不良の防止、すなわち耐リフロー性の向上が大きな課題となっている。
【0005】
かかる課題に対し、これまで、低弾性、低吸湿の樹脂を使用することが検討されてきた。これは、低弾性化によってリフロー時に半導体素子やリードフレームとエポキシ樹脂組成物の硬化物との界面に発生する応力を緩和することができ、また低吸湿化によって封止材中への水の吸収が抑制され、水が気化し膨張することによって生じる剥離を低減することができるからである。
【0006】
一方、車載用の電子機器等に搭載される半導体装置では、パソコンや家電製品よりも厳しい環境下、例えば150℃以上の高温下での動作信頼性が求められる。また最近の炭化珪素(SiC)デバイスを使用した半導体装置では、動作温度は200℃以上にも達するとされている。そのため、これらの用途で使用される半導体の封止材には、高い耐熱性が要求されている。
【0007】
エポキシ樹脂組成物、特にエポキシ樹脂とフェノール硬化剤とを組み合わせた組成物において、耐熱性を高めるためには、架橋密度を高くし、高いガラス転移温度(Tg)を得ることが有効である。しかし、架橋密度を高くすると、一般に硬化物は剛直な構造体となり高弾性になる傾向がある。また、架橋点が構造的に分極しているため、吸湿性も高くなる。
【0008】
このように耐リフロー性及び耐熱性に優れるエポキシ樹脂組成物の要求があるが、これらを両立させることは非常に難しい。このような中、高耐熱性樹脂として知られるベンゾオキサジン樹脂をエポキシ樹脂と組み合わせた組成物が報告されている(例えば、特許文献1、2参照。)。この組成物はベンゾオキサジン樹脂とエポキシ樹脂が反応することで密度の高い架橋構造が得られ、200℃を超えるTgを有し得るとともに、ベンゾオキサジン樹脂がその構造により架橋点の分極を緩和するため、吸湿性も低い。
【0009】
しかし、硬化物が高弾性となることには変わりなく、封止材として用いるには耐リフロー性の点で未だ改善すべき余地があった。さらに、ベンゾオキサジン樹脂とエポキシ樹脂との架橋反応の反応速度が遅いため、一般的な封止材の成形条件では硬化不良を起こすという問題もあった。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の封止用樹脂組成物は、上記したように(A)エポキシ樹脂、(B)主鎖に脂肪族炭化水素基を有するビスマレイミド樹脂、(C)フェノール硬化剤、(D)硬化促進剤、(E)無機充填剤を含む樹脂組成物である。以下、この封止用樹脂組成物を構成する各成分について詳細に説明する。
【0016】
本発明の封止用樹脂組成物において、(A)エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば、その分子量や分子構造等は特に限定されない。具体的には、例えば、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂等の結晶性エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの二量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂等の、ナフトール型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
(A)エポキシ樹脂としては、なかでも、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂が好ましく、特にビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂が好ましい。
【0018】
本発明の封止用樹脂組成物において、(B)成分は、主鎖に脂肪族炭化水素基を有するビスマレイミド樹脂であり、2つのマレイミド基を連結する主鎖が、炭素数が1以上の脂肪族炭化水素基を有して構成されるものである。ここで、脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分枝鎖状及び環状のいずれの形態でもよく、炭素数が6以上であることが好ましく、炭素数が12以上であることがより好ましく、炭素数が24以上であることが特に好ましい。また、この脂肪族炭化水素基はマレイミド基に直接結合していることが好ましい。
【0019】
このようなビスマレイミド樹脂を含有することで、耐熱性に優れるとともに、低応力で耐リフロー性の良好な封止用樹脂組成物が得られる。
【0020】
この(B)成分としては、次の一般式(1)で表されるイミド拡張型のビスマレイミド化合物(B1)が好ましいものとして挙げられる。
【化1】
(式中、nは1〜10の整数である。)
【0021】
このビスマレイミド化合物(B1)としては、例えば、BMI−3000(デジグナーモレキュールズ社製、商品名;分子量 3000)、BMI−5000(デジグナーモレキュールズ社製、商品名;分子量 5000)、等が挙げられる。
【0022】
このビスマレイミド化合物(B1)はポリスチレン換算による数平均分子量が500以上8000以下であることが好ましく、1500以上5000以下であることがより好ましい。数平均分子量が500未満では耐熱性が低下し、5000を超えると成形性が低下する傾向にあるため好ましくない。
【0023】
また、この(B)成分としては、次の一般式(2)で表されるビスマレイミド化合物(B2)が好ましいものとして挙げられる。
【化2】
(式中、Qは炭素数6以上の2価の直鎖状、分枝鎖状又は環状の脂肪族炭化水素基を示し、Pは2価の原子又
は基であって、O、CO、COO、CH
2、C(CH
3)
2、C(CF
3)
2、S、S
2、SO及びSO
2から選ばれる2価の原子又
は基を少なくとも1つ以上含む基であり、mは1〜10の整数を表す。)
【0024】
ここで、Qで表される基は、炭素数6〜44が好ましく、Pで表される2価の原子は、O、S等が挙げられ、2価
の基は、CO、COO、CH
2、C(CH
3)
2、C(CF
3)
2、S
2、SO、SO
2等、また、これらの原子又
は基を少なくとも1つ以上含む有機基が挙げられる。上記した原子又
は基を含む有機基としては、上記以外の構造として、炭素数1〜3の炭化水素基、ベンゼン環、シクロ環、ウレタン結合等を有するものが挙げられ、その場合のPとして次の化学式で表される基が例示できる。
【0026】
このビスマレイミド化合物(B2)としては、BMI−1500(デジグナーモレキュールズ社製、商品名;分子量 1500)、等が挙げられる。
【0027】
この(B)成分は1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。(B)成分の配合比率が高いほど、吸水率が小さくなり、耐リフロー性の良好な封止用樹脂組成物が得られる。
【0028】
また、(B)成分の2種以上を混合する際、上記ビスマレイミド化合物(B1)とビスマレイミド化合物(B2)とを併用することが好ましい。このとき、ビスマレイミド化合物(B1)と(B2)とを、質量基準で、(B1)/(B2)が50/50〜95/5の比率で組み合わせて用いることが好ましい。上記比率で(B1)が50以上であると、耐熱性が向上し、95以下であると成形性が良好であり好ましい。すなわち、(B1)/(B2)が上記範囲にあると、耐熱性が高く、成形性の良好な封止用樹脂組成物が得られる。
【0029】
また、上記した(A)エポキシ樹脂と(B)ビスマレイミド樹脂の配合比(A):(B)は、質量比で95:5〜50:50が好ましく、85:15〜60:40がより好ましい。このような範囲とすることで、耐熱性に優れるとともに、低応力で耐リフロー性の良好な封止用樹脂組成物とすることができる。
【0030】
本発明の封止用樹脂組成物において、(C)フェノール硬化剤は、主として成形性を高める作用を有する。(C)フェノール硬化剤は、上記(A)成分のエポキシ樹脂のエポキシ基と反応し得るフェノール性水酸基を一分子中に2個以上有するものであれば、特に制限なく使用することができる。
【0031】
具体的には、例えば、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、置換又は非置換のビフェノール等の、1分子中に2個のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物;フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;上記フェノール類及び/又はナフトール類と、ジメトキシパラキシレン、ビス(メトキシメチル)ビフェニル等とから合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;パラキシリレン変性フェノール樹脂、メタキシリレン変性フェノール樹脂、メラミン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂等の変性樹脂;フェノール類及び/又はナフトール類と、ジシクロペンタジエンとから共重合により合成される、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂;ビフェニル型フェノール樹脂;トリフェニルメタン型フェノール樹脂等が挙げられる。さらに、上記フェノール樹脂の2種以上を共重合して得られるフェノール樹脂であってもよい。(C)フェノール硬化剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
(C)フェノール硬化剤としては、なかでもアラルキル型フェノール樹脂が好ましく、特に、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂が好ましい。
【0033】
(C)フェノール硬化剤の配合量は、(A)エポキシ樹脂及び(B)主鎖に脂肪族炭化水素基を有するビスマレイミド樹脂の合計量100質量部に対して、通常1〜30質量部、好ましくは5〜20質量部である。(C)フェノール硬化剤の配合量が1質量部未満であるか、又は30質量部を超えると成形性が低下するおそれがある。
【0034】
本発明の封止用樹脂組成物において、(D)硬化促進剤は、エポキシ樹脂の硬化促進剤として一般に使用されているものであれば特に制限なく使用される。具体的には、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7,1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5,5,6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等のシクロアミジン化合物;これらのシクロアミジン化合物に無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合を持つ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン化合物及びこれらの誘導体;2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン等のイミダゾール環を有するジアミノ−s−トリアジン化合物等のイミダゾール化合物及びこれらの誘導体;トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン化合物;これらの有機ホスフィン化合物に無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合を持つ化合物を付加してなる分子内分極を有するリン化合物;テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムエチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムテトラブチルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート;2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩及びこれらの誘導体等が挙げられる。(D)硬化促進剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
(D)硬化促進剤としては、なかでもイミダゾール系硬化促進剤が好ましく、特に上述したイミダゾール化合物が好ましい。
【0036】
(D)硬化促進剤の配合量は、(A)エポキシ樹脂及び(B)主鎖に脂肪族炭化水素基を有するビスマレイミド樹脂の合計量100質量部に対して、通常0.2〜8.0質量部、好ましくは1.0〜5.0質量部の範囲である。(D)硬化促進剤の配合量が0.2質量部未満では、硬化性の向上にあまり効果がなく、また8.0質量部を超える場合には、組成物の流動性が低下し、未充填等の成形不具合が発生するおそれがある。
【0037】
本発明の封止用樹脂組成物において、(E)無機充填剤は、封止用樹脂組成物に一般に使用されているものであれば特に制限なく使用される。具体的には、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ジルコン、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、これらを球形化したビーズ、単結晶繊維、ガラス繊維等を用いることができる。(E)無機充填剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
(E)無機充填剤としては、熱膨張係数を低減する観点からは溶融シリカが好ましく、また高熱伝導性を高める観点からは、アルミナが好ましい。また、無機充填剤の形状は、成形時の流動性を向上させ、金型の摩耗を抑える観点からは、球形であることが好ましい。特に、コストと性能のバランスを考慮すると、(E)無機充填剤としては溶融シリカを用いることが好ましく、球状溶融シリカを用いることがより好ましい。
【0039】
(E)無機充填剤の配合割合は、封止用樹脂組成物の全量に対して70〜95質量%であり、82〜91質量%であることが好ましい。(E)無機充填剤の配合割合が70質量%未満では、線膨張係数が増大して成形品の寸法精度、耐湿性、機械的強度等が低下する。一方、95質量%を超えると、溶融粘度が増大して流動性が低下し、成形性が不良となる。
【0040】
本発明の封止用樹脂組成物は、必須成分である上記(A)〜(E)成分の他に、本発明の効果を阻害しない範囲で、電子部品封止用樹脂組成物に一般に配合されるその他の添加剤を必要に応じて添加してもよい。その他の添加剤としては、難燃剤;カップリング剤;合成ワックス、天然ワックス、高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩等の離型剤;カーボンブラック、コバルトブルー等の着色剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム等の改質剤;ハイドロタルサイト類等の安定剤、イオン捕捉剤等が挙げられる。これらの各添加剤はいずれも、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
難燃剤の具体例としては、ハロゲン系難燃剤、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛等の金属元素を含む難燃剤や、リン酸エステル等のリン系難燃剤等が挙げられる。
【0042】
カップリング剤の具体例としては、エポキシシラン系、アミノシラン系、ウレイドシラン系、ビニルシラン系、アルキルシラン系、有機チタネート系、アルミニウムアルコレート系等のカップリング剤が挙げられる。硬化性を向上させる観点からは、なかでも、アミノシラン系カップリング剤が好ましく、特に、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0043】
本発明の封止用樹脂組成物において、上記の任意成分の配合量は、組成物の全量に対して、0.05〜3質量%であることが好ましく、0.1〜1.5質量%であることがより好ましい。
【0044】
本発明の封止用樹脂組成物を調製するにあたっては、(A)エポキシ樹脂、(B)主鎖に脂肪族炭化水素基を有するビスマレイミド樹脂、(C)フェノール硬化剤、(D)硬化促進剤、(E)無機充填剤及び前述した必要に応じて配合される各種成分をミキサー等によって十分に混合(ドライブレンド)した後、熱ロールやニーダ等の混練装置により溶融混練し、冷却後、適当な大きさに粉砕するようにすればよい。
【0045】
本発明の封止用樹脂組成物は、各種電気部品、又は半導体素子等の各種電子部品の、被覆、絶縁、封止等に用いることができる。半導体素子としては、トランジスタ、集積回路、ダイオード、サイリスタ等が例示される。本発明の封止用樹脂組成物によって半導体素子等の電子部品を封止する方法としては、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の成形方法が用いられる。成形は、例えば、温度120〜200℃、圧力2〜20MPaで行うことができる。このような条件で半導体素子等の電子部品を成形封止することにより、耐リフロー性に優れ、かつ高温動作時の信頼性に優れた樹脂封止型の電子部品装置、半導体装置を得ることができる。
【実施例】
【0046】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
(A)成分として、ビフェニル型エポキシ樹脂(商品名:YX−4000H、三菱化学(株)製、エポキシ当量192、融点105℃)3.0質量部及びビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(商品名:NC−3000、日本化薬(株)製、エポキシ当量276、軟化点57℃)5.5質量部、(B)成分として、上記式(1)の主鎖に脂肪族炭化水素基を有する固形ビスマレイミド樹脂(商品名:BMI−5000、デジグナーモレキュールズ社製;数平均分子量5000)2.0質量部、(C)成分として、ビフェニルアラルキル樹脂(商品名:HE200C−10、エア・ウォーター(株)製、水酸基当量205、軟化点70℃)1.0質量部、(D)成分として、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル(1’)]−エチル−s−トリアジン(商品名:2MZA、四国化工業(株)製)0.3質量部、(E)無機充填剤として球状溶融シリカ(商品名:FB−105、電気化学工業(株)製、平均粒径11μm)87.0質量部、シランカップリング剤として3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(商品名:Z−6883、東レ・ダウコ―ニング(株)製)0.4質量部、離型剤として、カルナバワックス(商品名:カルナバワックス1号、東洋アドレ(株)製)0.2質量部、安定剤として、合成ハイドロタルサイト(商品名:DHT−4C、協和化学工業(株)製)0.3質量部、及び着色剤として、カーボンブラック(商品名:MA−100、三菱化学(株)製)0.3質量部を常温でミキサーを用いて混合した後、熱ロールを用いて70℃〜110℃に加熱混練し、冷却後粉砕して、封止用樹脂組成物を得た。
【0048】
(実施例2)
(C)成分として、ビフェニルアラルキル樹脂(HE200C−10)の代わりに、フェノールアラルキル樹脂(商品名:HE100C−10、エア・ウォーター(株)製、水酸基当量168、軟化点68℃)1.0質量部を用いた他は実施例1と同様にして、封止用樹脂組成物を得た。
【0049】
(実施例3)
(D)成分として、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル(1’)]−エチル−s−トリアジン(2MZA)の代わりに、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(商品名:2P4MHZ、四国化成工業(株)製)0.3質量部を用いた他は実施例1と同様にして、封止用樹脂組成物を得た。
【0050】
(実施例4)
(A)成分のビフェニル型エポキシ樹脂(YX−4000H)の配合量を1.0質量部、(B)成分のビスマレイミド樹脂の配合量を4.0質量部とした他は、実施例1と同様にして、封止用樹脂組成物を得た。
【0051】
(比較例1)
(A)成分のビフェニル型エポキシ樹脂(YX−4000H)の配合量を1.5質量部、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC−3000)の配合量を3.0質量部、(B)成分のビスマレイミド樹脂の配合量を6.0質量部とした他は、実施例1と同様にして、封止用樹脂組成物を得た。
【0052】
(比較例2)
(B)成分のビスマレイミド樹脂を配合せず、(A)成分のビフェニル型エポキシ樹脂(YX−4000H)の配合量を4.0質量部、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC−3000)の配合量を6.5質量部とした他は、実施例1と同様にして、電子部品封止用樹脂組成物を得た。
【0053】
上記各実施例及び比較例で得られた封止用樹脂組成物について、下記に示す方法で各種特性を評価した。結果を組成とともに表1に示す。
【0054】
[評価方法]
(1)ガラス転移温度(Tg)
封止用樹脂組成物を、金型温度180℃、成形圧力8.0MPa、成形時間2分間の条件でトランスファー成形して、長さ15mm×幅4mm×厚さ3mmの成形品を作製し、さらに、175℃、8時間の後硬化を行って、試験片を得た。得られた試験片について、熱機械分析装置(商品名:TMA/SS150、(株)島津製作所製)を用いて、昇温速度5℃/min、空気中で圧縮測定により分析を行い、熱機械分析(TMA)曲線を得た。得られたTMA曲線の60℃及び240℃の接線の交点における温度を読み取り、この温度をガラス転移温度(単位:℃)とした。
【0055】
(2)熱時弾性率
封止用樹脂組成物を、金型温度180℃、成形圧力8.0MPa、成形時間2分間の条件でトランスファー成形して、長さ45mm×幅4mm×厚さ3mmの成形品を作製し、さらに、175℃、8時間の後硬化を行って、試験片を得た。得られた試験片について、動的粘弾性試験装置(商品名:DMA Q800、ティーエーインスツルメント社製)を用いて、昇温速度5℃/min、周波数10Hz、空気中で分析を行い、260℃における弾性率を求めた。この値を、熱時弾性率(単位:GPa)とした。
【0056】
(3)プレッシャークッカー(PC)吸水率
封止用樹脂組成物を、金型温度180℃、成形圧力8.0MPa、成形時間2分間の条件でトランスファー成形して、直径50mm、厚さ3mmの円板状の成形品を作製し、さらに、175℃、8時間の後硬化を行って、試験片を得た。得られた試験片のPC試験前(吸湿処理前)の質量と、PC試験後(吸湿処理後)の質量を測定し、試験片のPC吸水率(単位:%)を下記式によって算出した。なお、PC試験は、温度:127℃、圧力:2気圧(約0.2MPa)、相対湿度:100%RHの条件で、24時間処理することで行った。
【0057】
PC吸水率
={(吸湿処理後の質量−吸湿処理前の質量)/吸湿処理前の質量}×100(%)
【0058】
(4)成形性
ICパッケージVQFP80(パッケージサイズ:14mm×14mm×1.4mm、銅(Cu)フレーム、銀(Ag)リングメッキ有り)を、封止用樹脂組成物によって、金型温度180℃、成形圧力12.0MPa、成形時間2分間の条件でトランスファー成形した。得られた成形品3ショット分(6フレーム)の外観を目視で観察するとともに、超音波探傷装置(日立建機ファインテック(株)社製、商品名:FS300II)により内部及び外部におけるボイドの発生状況を観察した。また、カル・ランナー折れの発生の有無を調べた。これらを、以下の基準により判定した。
【0059】
<外観異常・ボイド発生>
○:外観異常及びボイドの発生なし
△:直径0.5mm以下のボイドが発生
×:直径0.5mm超のボイドが発生
【0060】
<カル・ランナー折れ>
○:あり
×:なし
【0061】
(5)耐リフロー性
上記(4)で作製したパッケージ(VQFP80)の成形品32個に、175℃で、8時間の後硬化を行った後、30℃、相対湿度60%RH、192時間の吸湿処理を行った。その後、260℃の赤外線リフロー炉内で加熱し、冷却後、上記超音波探傷装置により、樹脂硬化物とフレームとの界面、及び樹脂硬化物と半導体チップとの界面における剥離の有無を調べ、剥離が発生した数を計数した。
【0062】
(6)温度サイクル試験
QFP208(パッケージサイズ:28mm×28mm×2.7mm、銅(Cu)フレーム、銀(Ag)スポットメッキ有り)用のフレームに、8mm角の評価用チップ(TEGチップ)をマウントし、直径25μmの、パラジウム(Pd)でコーティングされたCuワイヤをボンディングした。次いで封止用樹脂組成物によって、金型温度180℃、成形圧力12.0MPa、成形時間2分間の条件でトランスファー成形し、さらに、175℃、8時間も後硬化を行って試験用半導体装置を作製した。得られた試験用半導体装置を−65〜150℃の温度範囲で1000サイクルのテストを行い、OPEN不良(配線の断線による不良)の発生数を調べた(試料総数=16個)。
【0063】
【表1】
【0064】
表1より、実施例1〜4の封止用樹脂組成物は、成形性に優れ、高いTg、低い熱時弾性率及び低吸湿性を有していることが分かる。また、実施例1〜4の封止用樹脂組成物は耐リフロー性に優れ、温度サイクル試験の結果も良好であり、これを用いることにより信頼性の高い半導体装置が得られることが分かる。これに対し、比較例は、成形性、Tg、弾性率、吸湿性、耐リフロー性および温度サイクル試験のいずれかの特性評価結果が不良であり、信頼性の高い半導体装置が得られないことが分かる。