(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、電磁波による検査対象内部検査を目的とし、検査対象に対し電磁波を照射し、検査対象内部からの反射光を検出する検査装置及び検査方法に係わるものであり、検査実用に向けて課題となる、検査対象表面からの反射光の影響を低減し、検査精度を向上するものである。
【0011】
まずは、課題をより明確化するため、検査対象表面からの反射光の影響について述べる。
図2は、図上面から検査対象に対し、電磁波を照射した様子を示したものである。ここで、照射する電磁波は、検査対象を一定量透過する特性の波長帯であるとする。200は検査対象を、201は検査対象内部に存在する異物を示す。202、203、204は照射した電磁波ビームを示し、それぞれ検査対象の異なる場所に照射した様子を示す。205、206、207は、照射した電磁波ビームの反射光を受光する受光部である。たとえば、201に示すような異物が検査対象の内部に入っていた場合に、照射した電磁波の波長帯に対する検査対象の屈折率と異物の屈折率が異なれば、光は、屈折率が異なる物質間の界面に入射すると、一部は反射し、一部は透過(屈折)することが知られており、照射した電磁波は検査対象と異物との間で反射する。よって、検査対象内に異物が存在する場合は、異物からの反射光を検出することが出来れば、検査対象内の異物がある場所に電磁波を照射した場合と、異物が無い場所に電磁波を照射した場合とで、検出する光量が異なるため異物の有無を確認することが可能である。
図2では、電磁波ビーム203を照射した位置に異物201があるため、異物201の表面で、電磁波ビーム203が反射し受光部206にて反射光を受光することができる。
【0012】
しかしながら、反射光を検出する際には、異物からの反射光の他に、検査対象表面からの反射光も発生する。
図3は前記検査対象表面からの反射光も同時に示した図である。検査対象200の表面からの反射光を208、209、210で示す。検査対象表面からの反射光発生原理は、前述のとおりで、空気と検査対象との屈折率が異なるからである。よって、反射光検出時には、検査対象を透過させ内部検査するために照射した電磁波が反射した反射光(以下、表面反射光)と、異物が存在した時の反射光(異物反射光)とが混在した反射光を検出することとなる。たとえば、異物201が存在する位置に照射した電磁波ビームは、異物201と、検査対象200の表面からとで反射し、反射光203と反射光209が発生する。これら複合した反射光を受光部206が検出することとなる。
【0013】
表面反射光と異物反射光との光量の関係性を考えると、検査対象内部まで侵入し異物で反射した後に再び検査対象内部を透過し検出される異物反射光の方が、表面反射光と比べて一般的に検出される光量は少ない。その程度は検査対象によって媒質がどの程度の光を吸収するのかを示す定数である吸収係数が異なるため異なる。但し、吸収係数による光量低下効果は検査対象の厚みに応じて指数関数的に反映されるため、表面反射光に対し、異物反射光の光量は小さく、両方の反射光を同時に検出した場合に、異物反射光が表面反射光に埋もれ、異物を検出しにくいことが問題となる。
【0014】
たとえば、検査対象表面の凹凸が激しい場合を考えると、異物反射光変化がより検出しにくくなる。
図4を用いて説明する。400は、検査対象を示しており表面に起伏がある対象物を示す。白線で示す401は、検査対象を透過する電磁波成分を示し、黒線で示す402は、検査対象表面で反射する電磁波成分を示す。表面反射成分402は、表面での起伏の影響を受け様々な方向に反射するため、検査対象に対する電磁波ビーム出射方向に受光部がある場合は、受光量が起伏に応じ変化する。404は、検査対象400の位置に対し、検査対象の位置に沿ってライン状に並べた反射光受光部が受光した光量を示した図である。405は、検査対象を透過する光による反射成分の光量を示し、406は検査対象表面で反射したビームの光量を示す。405を見ると、異物403が存在する位置では、反射光が受光部に戻るため、受光量に変化が見られる。しかしながら、前述したように、405は406に対し受光部にて受光される光量が小さい。さらには、406の揺らぎ成分が大きい。実際は、405と406の光量を同時に受光部が検出するため、異物403が存在することによる反射光の光量変化分が検査対象表面の光量変化に埋もれ、異物403が存在する位置を特定することが困難となる。更には、これに光の干渉効果が絡むと光量変化はより複雑になり、異物の検出が更に困難になる。以上のように、検査対象に対し電磁波を照射し、検査対象内部からの反射光を検出する検査においては、表面反射光の影響が検査精度を低下させることが課題となる。
【0015】
前述の課題を解決するための本発明の概念を述べる。本発明は、検査対象に照射する電磁波を複数用意する。第一の電磁波は、検査対象に対し透過性が高い周波数の電磁波であり、第二の電磁波は、検査対象に対し透過性が低い、もしくは透過性が無い周波数の電磁波である。前記、第一の電磁波及び第二の電磁波をそれぞれ検査対象に照射し、照射したそれぞれの電磁波から、第一の反射光及び第二の反射光を別々に検出する。検出した第一の反射光と第二の反射光を演算することで、表面反射光成分の影響を低減し、検査対象内部の異物反射光による変化を取り出す。
【0016】
図5を使って、前記概念を説明する。
図5aは、
図5a上部から第一の電磁波を検査対象500に照射した時の反射光の様子を示している。第一の電磁波は、前述のように検査対象500に対し透過性が高い周波数の電磁波であるため、検査対象500の内部に侵入し、対象内部に異物501があれば、屈折率の違いにより異物反射光502を発生する。また、第一の電磁波は検査対象表面でも反射が発生するため表面反射光503も同時に発生する。
図5bは、
図5b上部から第二の電磁波を検査対象に照射した時の反射光の様子を示している。第二の電磁波は検査対象を透過しないため、検査対象内部に侵入しない。よって、第二の電磁波から得られる反射光は、表面反射光503だけとなる。
図5cは、
図5aと
図5bで得られた情報を演算した結果を示している。本例の場合、たとえば第一の電磁波により得られた反射光情報と第二の電磁波により得られた反射光情報との差分を取れば、表面反射光503の影響が相殺され、第一の電磁波により得られた異物反射光502を抽出することができる。このように、透過率の異なる2種類の電磁波で検査対象を測定することで、表面反射光があった場合においても、異物を検出することが可能となる。
【0017】
さらに、前述の概念を数式で表すと以下のように理解できる。式1は、検査対象に電磁波を照射した際に得ることができる“反射光の強度”を数式にて表したものである。Iは、反射光受光部で得られる反射光強度を示し、E
1は、異物反射光振幅、E
2は、表面反射光振幅を示す。光の強度Iは、振幅の2乗に比例することが知られているので式1で表される。
【0019】
概念の説明では、光の干渉効果について触れなかったが、電磁波のコヒーレンシーが高い場合には表面反射光と異物反射光との干渉も発生するため、コサインで示す項が存在する。θは、異物反射光と表面反射光との位相差を示す。第一の電磁波を照射した場合には、E
1、E
2共に値を持つが、第二の電磁波においては、異物反射光E
1の成分が発生しない。よって、第一の電磁波における反射光強度をI
1、第二の電磁波における反射光強度をII
2とすると、それぞれ式2、式3で表される。
【0022】
ここで、I
1とI
2の差分を取ると、式4で表される。
【0024】
式4では、表面反射光E
2の主成分である2乗項が除去され、異物反射光E
1の成分と異物反射光と表面反射光との干渉成分である2E
1E
2cosθの項が残る。ここで、検査対象物に異物が有る場合と無い場合を考慮すると、異物が有る場合にはE
1の成分及び干渉成分の項が残るが、異物が無い場合は、異物反射光の振幅成分E
1は0であるため、E
1の成分及び干渉項が共に0となり、式4に示す値が0となる。すなわち、式4に示す値が0以外の場合には、測定範囲において、検査対象内部に異物が存在することがわかる。
以上により、検査対象の表面反射光があった場合においても、異物を検出することが可能となる。
【実施例1】
【0025】
以下、前述した概念を実現するための実施例を示す。
図1を使って本発明を実現するための構成例を示す。
【0026】
図1は、検査対象に対し二種類の電磁波を照射し、その反射光から検査対象内部の異物を検査する装置の一例である。101は対象物を透過する波長帯の第一の電磁波発生部、102は対象物を透過しない波長帯の第二の電磁波発生部、103は第一の電磁波及び第二の電磁波のビーム、104、105はハーフミラー、106、107は放物面鏡、108は検査対象から反射された光を受光する検出部、109は検査対象、110は検査対象内部の異物、111は検査対象駆動用のステージ、112はシステム制御部である。
システム制御部112は、第一の電磁波発生部101及び第二の電磁波発生部102の出射及び停止を制御可能であり、検出部108で受光した光強度の情報を蓄えることができ、蓄えた光強度の情報を演算する機能を有する。さらには、ビーム103の照射位置を変更させるため、検査対象109を移動させるためのステージを制御する機能を有する。
【0027】
第一の電磁波発生部101または、第二の電磁波発生部から照射されたビーム103は、ハーフミラー104及び放物面鏡106を介し平行光に成形され、ハーフミラー105を介し検査対象109に照射される。検査対象109に照射されたビーム103は、ビーム103の照射範囲において、検査対象109の表面や、検査対象109の内部に異物110があった場合には異物110の境界で反射する。前記反射光はハーフミラー105と放物面鏡107を介し、検出部108に照射される。検出部108で検出された反射光強度は、システム制御部112に情報として蓄えられる。
【0028】
電磁波発生部の光源としては、第一の電磁波が検査対象を透過する周波数帯であること、第二の電磁波が検査対象を透過しない周波数または第一の電磁波と比べて検査対象の透過率が極めて低い周波数帯であれば、どのような光源を利用しても構わない。たとえば、ミリ波やテラヘルツ波の波長帯を発生させたい場合は、ガンダイオードやインパット、タンネット、トランジスタ、共鳴トンネルダイオードなどのデバイスが存在するため、これらを利用すれば良い。また、電磁波発生部としては、電磁波の照射方向を持たせるため、前記したデバイスに、レンズやホーンアンテナを組合せて用いても良い。また、本実施例のように、レンズ等の光学部品によってビームを集光したり、ビーム形状を成形したりしたい場合は、光の特性が強い波長帯を選択すると、ビーム制御がし易い。
【0029】
検出部は、電磁波発生部に使用した周波数帯の強度を検出できるデバイスであればどのようなデバイスを使用しても構わない。たとえば、ミリ波やテラヘルツ波を検出したいのであれば、一例としてショットキーバリアダイオードなどのデバイスを使用すれば良い。
本実施例では、一例として電磁波発生部より照射された電磁波をビーム成形し、集光したり、平行光にしたりし、電磁波発生部より照射した電磁波を効率良く検査対象に照射し、効率よく反射光を検出する例を示したが、照射した電磁波の強度が十分強かったり、反射光の強度が十分強い場合で且つ、検査対象を検査する際に必要とされる分解能によっては、必ずしもビーム成形をする必要は無い。従って、本実施例での構成の放物面鏡や、ハーフミラーなどの光学素子は用途や必要性に応じて適宜選択し、必要な素子を使用すれば良い。
【0030】
本実施例では、検査対象109に対する測定領域を変更する手段として、検査対象109の位置を移動するためのステージ111を使用した例を示したが、目的は、検査対象109の全範囲を検査するために、検査対象に照射する電磁波ビームの照射位置を変動させることにあるため、ステージ111は、検査対象側ではなく電磁波発生部が存在する光学系側に備えても構わないし、ステージ111の変わりに、電磁波発生部が照射したビームを光学的に動かし、検査対象109にビームが照射する位置を制御できる仕組みであっても構わない。
【0031】
図1に示す構成にて、検査対象内部の異物検査方法の一例を
図6に示すフローチャートを用い説明する。検査開始すると、測定領域位置づけ処理(S601)では、検査対象109における測定したい領域にビーム103が照射されるよう、システム制御部112が、ステージ111を駆動させ位置づけを実施する。次に第一の電磁波出射処理(S601)に移行し、システム制御部112が、第一の電磁波発生部101を制御し、第一の電磁波を検査対象109に照射する。次に、第一の反射光検出処理(S602)に移行し、検査対象109の表面と、検査対象109の内部に異物110があった場合には、異物110の境界とで反射する第一の電磁波の反射光を検出部108で受光し、受光した光強度情報をシステム制御部112に蓄える。次に、第一の電磁波停止処理(S603)に移行し、システム制御部112は第一の電磁波発生部を制御し、電磁波の発生を停止する。次に、第二の電磁波出射処理(S605)に移行し、システム制御部112は、第二の電磁波発生部102を制御し、第二の電磁波を検査対象109に照射する。
【0032】
次に、第二の反射光検出処理(S606)に移行し、検査対象109を透過しない波長帯である第二の電磁波は、検査対象109の表面のみで反射する第二の電磁波の反射光を検出部108で受光し、受光した光強度情報をシステム制御部112に蓄える。次に、第二の電磁波停止処理(S607)に移行し、システム制御部112は第二の電磁波発生部を制御し、電磁波の発生を停止する。次に、検出反射光演算処理(S608)に移行し、システム制御部112は、第一の反射光検出処理(S603)で検出した第一の電磁波による反射光の光強度情報と第二の反射光検出処理(S606)で検出した第二の電磁波による反射光の光強度情報とを演算する。たとえば、第一の反射光の光強度情報と第二の反射光の光強度情報の差分を計算し、計算結果を情報として蓄える。次に、測定領域判定処理(S609)に移行し、まだ測定する領域がある場合には、次回測定領域決定処理(S610)に移行し、システム制御部112は、次回測定領域を決定し、再び測定領域位置づけ処理(S601)に移行する。検査対象109において測定したい領域を全て測定し終わったら、測定領域判定処理(S609)にて検査終了処理に移行して検査が終了する。以上の流れにより、検査対象の異物検査を実施する。
【0033】
本フローチャートの例は一例であり、たとえば第一の電磁波と第二の電磁波を照射・検出・停止する順番は入れ替わっても構わない。
検査が終了すると、測定した全領域における演算結果がシステム制御部112に格納されているため、前記情報を確認することで、検査対象に異物が存在したか、さらには検査対象のどの領域に異物が存在したかを確認することができる。
【実施例2】
【0034】
実施例1では、第一の電磁波及び第二の電磁波を発生させるための光源を2つ使う例を示したが、たとえば周波数を変化させることができる信号発生器等を利用すれば光源を2つ用意する必要がなくなり、光学系を小型化できる。又、信号発生器を用い電磁波を生成する場合における別の利点として、検査対象の物性に合わせて適した周波数帯を選んで電磁波を発生させることができるため、発生周波数帯が固定されている電磁波発生部に比べて柔軟な使い方ができる。構成の一例を
図7で説明する。
図7は、
図1の構成において、電磁波を発生させる光源部を変更した構成となる。本構成の電磁波発生部は、発生信号周波数を変更することが可能な信号発生器113と信号発生器で生成した信号周波数を照射もしくは逓倍化して照射する可変電磁波出射部114にて構成される。電磁波発生の際には、システム制御部112が信号発生器113を制御し、所望の周波数の信号を発生させ、さらにシステム制御部112は、可変電磁波出射部114を制御し逓倍機能を有効、もしくは無効にする。
【0035】
以上により、所望の電磁波を照射することができる。本構成では、信号発生器113の周波数を制御することにより、検査対象を透過する第一の電磁波と、検査対象を透過しない第二の電磁波を、一つの電磁波発生部で発生させることが可能となる。
【0036】
本実施例での検査対象内部の異物検査方法の一例を
図8に示すフローチャートを用い説明する。
図6のフローチャートと同様の点の説明は省き、異なる点を説明する。異なる点は、第一の電磁波出射処理(S602)の前段に追加された、第一の電磁波周波数設定処理(S611)と、第二の電磁波出射処理(S605)の前段に追加された、第二の電磁波周波数設定処理(S612)である。第一の電磁波周波数設定処理(S611)では、システム制御部112が、信号発生器113を制御し、照射したい所望の周波数を信号発生器113に設定する。次に第一の電磁波出射処理(S602)で、システム制御部112は、信号発生器113の発振を有効化し、可変電磁波射出部114を制御し電圧を印加することで、可変電磁波射出部114から第一の電磁波を照射する。第二の電磁波周波数設定処理(S612)及び第二の電磁波射出処理(S605)も第一の電磁波照射と同様であり、システム制御部112が信号発生器113に設定する周波数が、照射する周波数の電磁波が検査対象109を透過しない周波数に設定することが異なり、後は同様の処理となる。追加処理以外の処理は
図6に示すフローチャートと同様となる。以上の流れにより、検査対象の異物検査を、電磁波を発生させる光源1つで実施することができる。
【0037】
また、本実施例のように、検査対象109に照射する電磁波の周波数を任意に変更できることで、別の効果も産む。式4で表された数式は、異物が無い場合は0以外の値になることが多く、異物検査を実際に実施する際には特には問題にならないが、厳密には表面反射光と異物反射光の位相差θが式5に示す条件を満たした場合にのみ、異物を検出できなくなる状況が生まれる。
【0038】
【数5】
【0039】
位相差θは、検査対象表面と異物境界面との厚さに応じて変化する値であるが、電磁波の周波数によっても変化を受ける。よって、式5の条件を除外し、厳密に異物検査を実施したい場合においては、第一の電磁波の周波数を2種類以上用意し、それぞれの周波数の電磁波において、複数反射光を検出すれば良い。そして第二の電磁波により取得した反射光と演算をした時に、式5の条件を満たさないものを採用することで、厳密に異物検査を実施することができる。この際、複数設定する第一の電磁波の周波数は、基準とする第一の電磁波の周波数の波長を基準に、1波長以内の位相差が発生する周波数帯を選択すれば良い。
以上により、検査対象の異物検査を、電磁波を発生させる光源1つで実施することができ、光学系の小型化が狙える上に、測定の厳密性向上が狙える。
【実施例3】
【0040】
実施例1及び実施例2で、第一の電磁波及び第二の電磁波による反射光を順番に取得する例を挙げたが、検査速度高速化のため、第一の電磁波による反射光と第二の電磁波による反射光を同時に取得可能な実施例について述べる。
【0041】
通常、第一の電磁波と第二の電磁波を同時に検査対象に照射した場合に第一の電磁波と第二の電磁波を別々に検出することは、電磁波検出部の周波数帯域特性に依るところがあるが難しい。たとえば第一の電磁波の検出部の周波数帯域が第二の電磁波の周波数帯域の電磁波を検出する周波数特性であった場合に、本来検出したい第一の電磁波と共に第二の電磁波も検出するため、正確な測定が困難となる。以下の実施例は、上記問題を解決する実施例であり、
図9と
図10を使って説明する。
【0042】
図9では、電磁波を発生させる光源部と、反射光を受光する検出部を変更した構成となる。電磁波を発生させる光源部である複合電磁波発生部115は、第一の電磁波発生部と第二の電磁波発生部とを複数使って構成される。反射光を受光する検出部である複合電磁波検出部116は、複合電磁波発生部115と対になる構成であり、複数の検出部を使って構成された検出部である。前記構成にし、複合電磁波発生部115の第一の電磁波発生部によって照射される第一の電磁波と第二の電磁波発生部によって照射される第二の電磁波に光の偏光方向を持たせ照射する。この際、第一の電磁波と第二の電磁波とは互いに異なる偏光方向を持たせ照射する。電磁波複合検出部116は、同時に照射される第一の電磁波の反射光と第二の電磁波の反射光を区別して検出するために、第一の電磁波に付加した偏光方向のみ検出する検出部と、第二の電磁波に付加した偏光方向のみ検出するための検出部をそれぞれ用意し構成される。
【0043】
図10を使って、複合電磁波発生部115と複合電磁波検出部116の構成例を示す。複合電磁波発生部115は、複数の電磁波発生部で構成される。ここで、たとえば電磁波を発生させるためのホーンアンテナを長方形にすれば、長辺の配置方向に依存し、発生させる電磁波の偏光方向を変えられることが知られており、第一の電磁波を発生させるホーンを117のように横長に配置し、第二の電磁波を発生させるホーンを118のように縦長に配置すれば、照射される電磁波の偏光は互いに異なる偏光方向となる。又、複合電磁波検出部116においても、ホーンアンテナの方向と一致した偏光方向の電磁波のみ検出するアンテナ特性を利用すれば、第一の電磁波の反射光の偏光方向と第二の電磁波の反射光の偏光方向に合わせ119と120のようにアンテナ方向を直交して配置すれば、検出部ではどちらか一方の電磁波の反射光を検出することが可能である。
【0044】
複合電磁波発生部115や複合電磁波検出部116の個々の電磁波発生部及び個々の検出部に使用する素子は小型である方が、1回の検査対象領域を小さくできるため対象物検査の際の分解能が向上する。例として、半導体の素子で電磁波を発生するものや、電磁波を受光できる素子が存在するため、これらを利用すれば小型化が図れる。たとえば、電磁波発生部及び電磁波検出部を半導体化したものを複数個並べることで複合電磁波発生部115と複合電磁波検出部116を構成する方法もある。電磁波発生部及び電磁波検出部を半導体素子として生成する際に、予め偏光方向を制御して生成することができる。よって、第一の電磁波を発生させる半導体素子と、第二の電磁波を発生させる半導体素子の偏光方向を互いに異なるものとし、検出部もそれぞれの偏光方向に揃えて配置すればホーンアンテナを使わずとも第一の電磁波と第二の電磁波の偏光方向を異なる偏光方向にすることが可能である。仮に、半導体で生成された第一の電磁波発生部と、半導体で生成された第二の電磁波発生部が同一の偏光方向であった場合においても、第二の電磁波発生部と第二の電磁波検出部を、第一の電磁波発生部及び第一の電磁波検出部の配置方向に対して90度傾けて配置すれば同様のことが実現可能である。
【0045】
以上により、複合電磁波検出部116は、複合電磁波発生部115が照射した第一の電磁波と第二の電磁波の複合波を別々に検出することが可能となるため、検査対象を検査する際には、同一領域で2回の照射及び検出工程をすることなく、1回の照射及び検出工程で次の領域の検査に移行することができ、検査速度の高速化が実現できる。
【0046】
図10に示す、電磁波発生部及び検出部の配置の仕方は一例であるため、
図10の配置にしなくても良いし、少なくとも第一の電磁波と第二の電磁波が別偏光で同時に照射され、同時に検出できれば良いので、少なくとも2つ以上であれば構成個数はいくらでも構わない。又、電磁波発生部側と電磁波検出部側で素子の個数を揃える必要も無い。
【0047】
本実施例での検査対象内部の異物検査方法の一例を
図11に示すフローチャートを用い説明する。検査開始すると、第一の偏光電磁波及び第二の変更電磁波出射処理(S613)では、システム制御部112が、複合電磁波発生部115を制御し、複合電磁波発生部115を構成する第一の電磁波発生部及び第二の電磁波発生部からそれぞれ異なる偏光状態で、第一の電磁波及び第二の電磁波を同時に照射する。次に、測定領域位置づけ処理(S601)では、検査対象109における測定したい領域にビーム103が照射されるよう、システム制御部112が、ステージ111を駆動させ位置づけを実施する。
【0048】
次に、第一の偏光反射光及び第二の偏光反射光検出処理(S614)では、検査対象109の表面で反射する第一の電磁波の反射光及び第二の電磁波の反射光と、検査対象109の内部に異物110があった場合には、異物110の境界とで反射する第一の電磁波の反射光とを、複合電磁波検出部116で受光し、複合電磁波検出部116を構成する第一の電磁波の偏光を受光する検出部で受光した光強度情報と、第二の電磁波の偏光を受光する検出部で受光した光強度情報を、それぞれ別々の情報としてシステム制御部112に蓄える。
【0049】
次に、検出反射光演算処理(S608)では、システム制御部112が、前記蓄えた第一の電磁波による反射光の光強度情報と第二の電磁波による反射光の光強度情報とを演算する。たとえば、第一の反射光の光強度情報と第二の反射光の光強度情報の差分を計算し、計算結果を情報として蓄えておく。次に、測定領域判定処理(S609)に移行し、まだ測定する領域がある場合には、次回測定領域決定処理(S610)に移行し、システム制御部112は、次回測定領域を決定し、再び測定領域位置づけ処理(S601)に移行する。検査対象109において測定したい領域を全て測定し終わったら、第一の偏光電磁波及び第二の偏光電磁波停止処理に移行し、システム制御部112は、複合電磁波発生部115を制御し、第一の電磁波及び第二の電磁波の照射を停止し、検査終了となる。以上の流れにより、第一の電磁波及び第二の電磁波を同時に検査対象に照射し、第一の電磁波及び第二の電磁波の反射光を同時に別々に検出することができるため、異物検査の検査速度を高速化することができる。
【0050】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。