特許第6789050号(P6789050)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6789050床暖房システム、建物、ユニット建物および建物ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6789050
(24)【登録日】2020年11月5日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】床暖房システム、建物、ユニット建物および建物ユニット
(51)【国際特許分類】
   F24D 3/14 20060101AFI20201116BHJP
   E04B 1/348 20060101ALI20201116BHJP
   F24D 7/00 20060101ALN20201116BHJP
【FI】
   F24D3/14
   E04B1/348 V
   E04B1/348 D
   !F24D7/00 C
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-190572(P2016-190572)
(22)【出願日】2016年9月29日
(65)【公開番号】特開2018-54221(P2018-54221A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 玄規
(72)【発明者】
【氏名】相良 峰雄
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−008764(JP,A)
【文献】 特開2012−122656(JP,A)
【文献】 特開2002−005464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 3/14
E04B 1/348
F24D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下階と上階との間において床部の下の密閉された床下空間に設けられる長尺な放熱器を備え、
前記床部は、並列された複数の床小梁に床板が支持されて構成されて、前記床板の下に2つの前記床小梁に挟まれた長尺な小梁間空間が複数形成され、
前記放熱器は、細長い筒状を呈して折り返されて並列された放熱管を収納する長尺な直方体形状を呈するとともに前記床部に形成された複数の前記小梁間空間を並べたものよりも小さくされ、前記放熱管の両端が熱媒体配管を介してヒートポンプに接続され、前記ヒートポンプから一端に送られた熱媒体を通して他端から前記ヒートポンプへと送り返して熱媒体を循環させ、
前記放熱器は、単一の前記床下空間に複数用いられて個別に前記ヒートポンプに接続され、それぞれが2つ以上の前記各床小梁を横切って3つ以上の前記小梁間空間をわたすとともに、それぞれが少なくとも一部が異なる前記小梁間空間をわたして設けられていることを特徴とする床暖房システム。
【請求項2】
前記放熱器は、長尺方向が前記各床小梁に対して傾斜されて設けられていることを特徴とする請求項1に記載の床暖房システム。
【請求項3】
前記放熱器は、長尺方向が前記各床小梁に直交されて設けられていることを特徴とする請求項1に記載の床暖房システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の床暖房システムの前記放熱器を前記床下空間に備えていることを特徴とする建物。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の床暖房システムの前記放熱器を下階の建物ユニットと上階の建物ユニットとの間の前記床下空間に備えていることを特徴とするユニット建物。
【請求項6】
請求項5に記載のユニット建物を構成する建物ユニットであって、上方に組み付けられる建物ユニットの前記床部の前記各床小梁の位置に対応させて、工場で予め天井部の上面に前記放熱器が設けられていることを特徴とする建物ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建物の床下空間を利用する床暖房システム、それが設けられた建物、ユニット建物および建物ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
建物において、床下空間を利用して室内や床を暖める床暖房システムが考えられている(特許文献1、2参照)。これらの床暖房システムは、床下空間に放熱器を設け、放熱器からの輻射熱や床を構成する部材を介する伝導熱や暖められた床下空間の空気の熱により、床を暖める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−122656号公報
【特許文献2】特開2002−61854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した各床暖房システムは、床をムラなくかつ効率良く暖める観点から改良の余地がある。
【0005】
本開示は、上記の事情に鑑みて為されたもので、床をムラなくかつ効率良く暖めることのできる床暖房システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、本開示の床暖房システムは、床部の下の床下空間に設けられる長尺な放熱器を備え、前記床部は、並列された複数の床小梁に床板が支持されて構成されて、前記床板の下に2つの前記床小梁に挟まれた長尺な小梁間空間が複数形成され、前記放熱器は、3つ以上の前記小梁間空間をわたして設けられていることを特徴とする。
【0007】
ここで、前記放熱器は、複数用いられ、それぞれが少なくとも一部が異なる前記小梁間空間をわたして設けられている構成とすることができる。また、前記放熱器は、長尺方向が前記各床小梁に対して傾斜されて設けられている構成とすることができる。さらに、前記放熱器は、長尺方向が前記各床小梁に直交されて設けられている構成としてもよい。加えて、前記床下空間は、密閉されている構成とすることができる。
【0008】
また、上記した床暖房システムの前記放熱器を前記床下空間に備えている建物としてもよい。さらに、上記した床暖房システムの前記放熱器を下階の建物ユニットと上階の建物ユニットとの間の前記床下空間に備えているユニット建物としてもよい。その場合、上方に組み付けられる建物ユニットの前記床部の前記各床小梁の位置に対応させて、工場で予め天井部の上面に前記放熱器が設けられている構成としてもよい。
【発明の効果】
【0009】
このように構成された本開示の床暖房システムは、1台の放熱器で3つ以上の小梁間空間の中で対流を生じさせることができるので、床をムラなくかつ効率良く暖めることができる。
【0010】
ここで、前記放熱器は、複数用いられ、それぞれが少なくとも一部が異なる前記小梁間空間をわたして設けられている構成であれば、より多くの小梁間空間の中で対流を生じさせることができるので、床部をより広範囲に亘りムラなく暖めることができる。また、前記放熱器は、長尺方向が前記各床小梁に対して傾斜されて設けられている構成であれば、効率良く3つ以上の小梁間空間をわたして各放熱器を設けることができ、広範囲に亘り暖めることができる。さらに、前記放熱器は、長尺方向が前記各床小梁に直交されて設けられている構成であれば、最も効率良く3つ以上の小梁間空間をわたして各放熱器を設けることができ、広範囲に亘り暖めることができる。加えて、前記床下空間は、密閉されている構成であれば、暖めた空気を床下空間の外部に逃がすことなく各小梁間空間で対流させることができ、その各小梁間空間の空気を効率良く暖めることができる。
【0011】
また、上記した床暖房システムの前記放熱器を前記床下空間に備えている建物であれば、床部をムラなくかつ効率良く暖めることができる。さらに、上記した床暖房システムの前記放熱器を下階の建物ユニットと上階の建物ユニットとの間の前記床下空間に備えているユニット建物であれば、床部をムラなくかつ効率良く暖めることができる。上方に組み付けられる建物ユニットの前記床部の前記各床小梁の位置に対応させて、工場で予め天井部の上面に前記放熱器が設けられている構成であれば、放熱器を設けた建物ユニットの上に対応する建物ユニットを組み付けるだけで、各床小梁に対して上記した位置関係として各放熱器を床下空間内に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示に係る床暖房システムの一実施形態に係る一例としての床暖房システムの構成を模式的に示す説明図である。
図2】2階リビングに対応させて2つの放熱器を設けた様子を示す説明図である。
図3】2階床下空間における各距離を示す説明図である。
図4】2つの放熱器と各床小梁(各小梁間空間)との位置関係を示す説明図である。
図5】比較例における2つの放熱器と各床小梁(各小梁間空間)との位置関係を示す説明図である。
図6】2つの放熱器と各床小梁(各小梁間空間)との他の例の位置関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本開示に係る床暖房システムの一例としての実施例1の床暖房システム10について図面を参照しつつ説明する。なお、図1は、1階床下空間56や2階床下空間57に各放熱器11を設ける様子を模式的に示したものであり、各放熱器11の配置関係は他の図面と必ずしも一致しない。また、図4から図6では、各放熱器11により暖められた空気が広がる範囲を一点鎖線で示しているが、当該一点鎖線は模式的に示すものであり、必ずしも実際の態様とは一致しない。
【実施例1】
【0014】
本開示に係る床暖房システムの一実施形態に係る実施例1の床暖房システム10を、図1から図6を用いて説明する。床暖房システム10は、建物の床下空間を利用して室内や床を暖めるものであり、実施例1では、建物の一例としてのユニット建物30に適用した例を示している。
【0015】
そのユニット建物30は、図1に示すように、基礎31の上に建物ユニット32が設けられて構成される。その基礎31は、土台となる基礎底盤コンクリート33と、その側縁から立ち上がる基礎側壁コンクリート34と、を有する。建物ユニット32は、基礎側壁コンクリート34の上に設けられた1階部分を形成する1階建物ユニット35と、その上に組付けられた2階部分を形成する2階建物ユニット36と、を有する。
【0016】
その1階建物ユニット35は、工場で予め形成された箱状を呈する。1階建物ユニット35は、基礎側壁コンクリート34の上で立ち上がりつつ外周面となる1階外壁部37と、上端面となる1階天井部38と、下端面となる1階床部39と、で1階居室空間41を形成する。その1階居室空間41は、複数の内壁部42により複数の1階居室43に区画され、図1の例では4つの1階居室43が形成されている。
【0017】
また、2階建物ユニット36は、工場で予め形成された箱状を呈する。この2階建物ユニット36は、外周面となる2階外壁部44と、上端面となる2階天井部45と、下端面となる2階床部46と、で2階居室空間47を形成する。その2階居室空間47は、複数の内壁部48により複数の2階居室49に区画され、図1の例では3つの2階居室49が形成されて、図1を正面視して最も右側が2階リビング51とされている。その2階床部46は、図2から図4に示すように、鉛直方向の上側(上方)から見て(以下では平面視するともいう)矩形状に設けられた床梁52(図4参照)と、その内側に設けられた複数の床小梁53と、それらに支持された床板54と、で構成される。その各床小梁53は、金属材料から為る長尺な棒状を呈し、平面視して矩形状の床梁52の内側で短辺方向に架け渡して設けられている。2階床部46では、各床小梁53が長さ寸法よりも小さな間隔で長辺方向に並列されて、床板54の下方に各床小梁53に挟まれるとともに平面視して短辺方向に伸びる長方形状を呈する小梁間空間55が複数形成されている。
【0018】
このユニット建物30では、1階建物ユニット35の下方に1階床部39と基礎31とに囲まれた1階の1階床下空間56が形成されている。また、ユニット建物30では、1階建物ユニット35と2階建物ユニット36との間に2階床部46と1階天井部38と2階外壁部44と1階外壁部37とに囲まれた2階の2階床下空間57が形成されている。この1階床下空間56および2階床下空間57を利用して床暖房システム10が設けられる。
【0019】
床暖房システム10は、1階床下空間56および2階床下空間57に設けられた複数の放熱器11と、その熱源としてのヒートポンプ12と、を備える。各放熱器11は、図3に示すように、全体に長尺な直方体形状を呈し、細長い筒状を呈し折り返されて並列された放熱管11aと、それが伸びる方向に並列されつつ当該放熱管11aが貫通された複数の放熱フィン11bと、を有する。その放熱管11aは、熱媒体配管13を介してヒートポンプ12に接続され、ヒートポンプ12から一端に送られた熱媒体を通して他端からヒートポンプ12へと送り返して熱媒体を循環させる。そのヒートポンプ12は、図1に示すように、空気中の熱エネルギーを吸収させた熱媒体を、熱媒体配管13を通して各放熱器11に供給する。これにより、各放熱器11は、設置された箇所の周辺に向けて放熱することができる。この各放熱器11は、基礎31や1階天井部38に配置されて、1階床下空間56および2階床下空間57に設けられる。このとき、各放熱器11は、基礎31や1階天井部38との間に断熱材を介在させて設けることで、放出した熱を効率良く利用できる。また、1階床下空間56や2階床下空間57における1階床部39や2階床部46を除く箇所に適宜断熱材を設けることで、1階床部39や2階床部46をより効率良く暖めることができる。
【0020】
床暖房システム10は、温度設定等の所望の運転を設定するためのコントローラを有し、そのコントローラが1階居室空間41または2階居室空間47に適宜設けられる。なお、実施例1では、各放熱器11を個別にヒートポンプ12に接続(並列に接続)しているが、各放熱器11を直列に接続させてもよく、並列と直列とを組み合わせて接続してもよく、実施例1の構成に限定されない。また、単一のヒートポンプ12を用いているが、複数のヒートポンプ12を用いてもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0021】
実施例1の床暖房システム10は、1階床下空間56に4つの放熱器11を設けるとともに、2階床下空間57に2つの放熱器11を設けている。そして、床暖房システム10は、1階居室空間41に対しては、各放熱器11で暖めた1階床下空間56の空気を送ることで、1階床部39に加えて各1階居室43を積極的に暖める。これに応じて、1階床部39には、1階床下空間56と1階居室空間41とを繋ぐ通気口58が適宜設けられている。この通気口58には、ブラインド状の羽根板を平行に取り付けたガラリが設けられている。
【0022】
また、実施例1の床暖房システム10は、2階居室空間47に対しては、2階リビング51のみを暖める対象としており、2階床下空間57の空気を送ることなく2階リビング51の2階床部46を暖めて、間接的に2階リビング51も暖める。これに応じて、2階床部46には通気口58が設けられてなく、2階床下空間57は密閉されている。そして、2階床下空間57では、図2および図4に示すように、2階リビング51の2階床部46における各床小梁53すなわち小梁間空間55の位置に応じて、2つの放熱器11を配置している。具体的には、各放熱器11は、平面視して、2つ以上の床小梁53を横切り3つ以上の小梁間空間55をわたして設けられている。そして、実施例1では、2階床下空間57に設けた2つの放熱器11を、互いに異なる床小梁53を横切る位置関係とし、わたす小梁間空間55が2つ以上は重複しないものとしている。詳細には、左側の放熱器11は、平面視して、左から2番目から同5番目までの4つの床小梁53を横切り、左から2番目から同6番目までの5つの小梁間空間55をわたして設けられている。また、右側の放熱器11は、平面視して、左から6番目から同9番目までの4つの床小梁53を横切り、左から6番目から右端までの5つの小梁間空間55をわたして設けられている。さらに、実施例1では、各床小梁53が伸びる方向における2つの放熱器11の位置を異ならせている。
【0023】
実施例1では、床暖房システム10をユニット建物30に適用しているので、上方に組み付けられる2階建物ユニット36の2階床部46の各床小梁53の位置に上述したように対応させて、1階建物ユニット35の1階天井部38の上面に工場で予め各放熱器11を設けている。なお、各放熱器11は、2階建物ユニット36を組み付ける際に設置してもよく、実施例1に限定されない。
【0024】
次に、実施例1の床暖房システム10の動作について説明する。
【0025】
まず、コントローラにより設定温度を設定して駆動させると、熱源としてのヒートポンプ12が熱媒体配管13を介して熱媒体を各放熱器11に供給して、各放熱器11から放熱させる。その熱は、輻射により1階床部39や2階床部46に伝わるとともに、同じく暖められた金属製の各床小梁53からの熱伝導により各床部に伝わり、かつ各放熱器11の周囲の空気を介する対流により各床部に伝わる。そして、1階居室空間41は、上記した作用に加えて、暖められた1階床下空間56の空気が通気口58から送られることで、1階床部39とともに各1階居室43の空気が暖められる。
【0026】
また、2階リビング51は、2階床部46に通気口58が設けられていないので、暖められた2階床下空間57の空気が逃げることなく2階床部46を暖める。ここで、2階床下空間57は、図3に示すように、各放熱器11から2階床部46や各床小梁53までが近いので、各床小梁53により遮られて大きな対流が生じ難く、暖められた空気が各放熱器11の上方に位置する小梁間空間55に向かい、その中で対流を生じさせる。実施例1では、2階床下空間57の高さD1が約330mmであり、小梁間空間55の長さD2が約125mmであり、各放熱器11の高さD3が約110mmである。このような位置関係において2階床下空間57に各放熱器11を設置すると、各放熱器11から2階床部46までの距離D4が170mm前後となり、その距離では上記した作用が生じる。
【0027】
このことを考慮して、本開示に係る床暖房システム10では、各放熱器11を2つ以上の床小梁53を横切り3つ以上の小梁間空間55をわたして設けている。このため、図2に矢印で示すように、平面視して左側の放熱器11は、左から2番目から同6番目までの5つの小梁間空間55の空気を暖め、平面視して右側の放熱器11は、同6番目から右端までの5つの小梁間空間55の空気を暖める。すると、各小梁間空間55では、空気の対流を妨げる突起物等が存在しないので、図4に矢印で示すように、暖められた空気は各小梁間空間55内で対流し、一点鎖線で示す範囲に拡がる。このため、2階リビング51の2階床部46は、殆ど全ての領域が暖かくなり、2階リビング51を暖めることができる。これにより、1階床部39および各1階居室43や2階床部46および2階リビング51を所望の設定温度とする床暖房が行われる。
【0028】
この作用を比較するための比較例として、各放熱器11を配置した例を図5に示す。この比較例は、ユニット建物30および各放熱器11の構成は実施例1と等しいものとし、各放熱器11の配置のみが異なるものとしている。比較例では、左側の放熱器11が左から3番目の床小梁53の下方でそれと並列に設けられ、右側の放熱器11が右から2番目の小梁間空間55の下方でそれと並列に設けられている。すなわち、左側の放熱器11が1つの床小梁53を横切り2つの小梁間空間55をわたして設けられ、右側の放熱器11が1つも床小梁53を横切ることなく1つの小梁間空間55内に設けられている。すると、左側の放熱器11は、左から2番目と同4番目の床小梁53に遮られて、左から3番目から同4番目までの2つの小梁間空間55の空気しか暖められない。また、右側の放熱器11は、右から2番目と同3番目の床小梁53に遮られて、右から2番目の1つの小梁間空間55の空気しか暖められない。すると、この比較例では、2階リビング51の2階床部46において、左から3番目、4番目および9番目の小梁間空間55に相当する箇所のみが暖かくなり、他の7つの小梁間空間55に相当する箇所が冷たいままとなる。このことは、長尺方向が各床小梁53の伸びる方向に傾斜させて放熱器11を設けた場合であっても、1つ以下の床小梁53を横切り2つ以下の小梁間空間55をわたして設けられている場合には同様である。
【0029】
この比較例と比べて明らかなように、床暖房システム10は、平面視して対象とする床部(実施例1では2階床部46)よりも小さい放熱器11を用いた場合であっても、比較例のように暖かい箇所と冷たい箇所とが存在することのようなムラを生じさせることなく、当該床部をより広範囲に亘り暖めることができる。このため、床暖房システム10は、対象とする床部をムラなく暖めることができ、その床部の上の居室(実施例1では2階リビング51)の主要な暖房や補助的な暖房として用いることができる。
【0030】
本開示に係る床暖房システムの一実施例の床暖房システム10は、以下の各作用効果を得ることができる。
【0031】
床暖房システム10は、2つ以上の床小梁53を横切り3つ以上の小梁間空間55をわたして、放熱器11を設けている。このため、床暖房システム10は、放熱器11の上方に位置する3つ以上の小梁間空間55の中で対流を生じさせることができ、その各小梁間空間55の上端を規定する床板54すなわち2階床部46をより広範囲に亘りムラなく暖めることができる。また、床暖房システム10は、各床小梁53(各小梁間空間55)に対する位置関係を設定することで広範囲に亘り暖めることを可能とするので、対象とする2階リビング51の2階床部46よりも小さな放熱器11であっても効率良く当該2階床部46を暖めることができる。これにより、床暖房システム10は、大きな放熱器を用いることと比較して、自身の製造および設置のコストを抑制できるとともに、ランニングコストも抑制できる。
【0032】
また、床暖房システム10は、互いに少なくとも一部が異なる床小梁53を横切り互いに異なる小梁間空間55をわたすように、複数の放熱器11を設けている。このため、床暖房システム10は、より多くの小梁間空間55の中で対流を生じさせることができるので、2階床部46をより広範囲に亘りムラなく暖めることができる。また、床暖房システム10は、対象とする2階リビング51の2階床部46よりも小さな放熱器11を複数設けることで、2階床部46を広範囲に亘り暖めているので、様々な大きさや形状の居室にも効率良く対応することができ、汎用性を持たせることができる。さらに、床暖房システム10は、各床小梁53が伸びる方向における2つの放熱器11の位置を異ならせているので、2階リビング51の2階床部46をより広範囲に亘り暖めることができる。
【0033】
さらに、床暖房システム10は、長尺方向を各床小梁53の伸びる方向に直交させて各放熱器11を設けている。このため、床暖房システム10は、最も効率良く2つ以上の床小梁53を横切り3つ以上の小梁間空間55をわたして各放熱器11を設けることができ、広範囲に亘り暖めることができる。
【0034】
床暖房システム10は、密閉した2階床部46において、2つ以上の床小梁53を横切り3つ以上の小梁間空間55をわたして各放熱器11を設けている。このため、床暖房システム10は、暖めた空気を2階床下空間57の外部に逃がすことなく各小梁間空間55で対流させることができ、各小梁間空間55の空気を効率良く暖めることができる。
【0035】
ユニット建物30は、床暖房システム10を設けているので、床部(実施例1では2階リビング51の2階床部46)をムラなくかつ効率良く暖めることができる。
【0036】
1階建物ユニット35は、上方に組み付けられる2階建物ユニット36の2階床部46の各床小梁53に対応させて、工場で予め天井部の上面に各放熱器11を設けている。このため、1階建物ユニット35の上に2階建物ユニット36を組み付けるだけで、各床小梁53に対して上記した位置関係として各放熱器11を2階床下空間57内に設けることができる。これにより、ユニット建物30は、工期が延びることを抑制しつつ床暖房システム10を設けることができる。
【0037】
したがって、本開示に係る床暖房システムとしての実施例1の床暖房システム10では、床(実施例1では2階リビング51の2階床部46)をムラなくかつ効率良く暖めることができる。
【0038】
以上、本開示の床暖房システムおよび床暖房システムを実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0039】
例えば、実施例1では、適用する建物としてユニット建物30を例示していたが、並列された複数の床小梁に床板が支持されて構成される床部を有するものであれば、軸組建物に適用してもよく、他の構成の建物に適用してもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0040】
また、実施例1では、長尺方向を各床小梁53の伸びる方向に直交させて各放熱器11を設けていたが、2つ以上の床小梁53を横切り3つ以上の小梁間空間55をわたしていれば、長尺方向を各床小梁53の伸びる方向に傾斜させて各放熱器11を設けてもよく、実施例1の構成に限定されない。この一例を図6に示す。この図6の例では、平面視して左側の放熱器11は、左から2番目から同5番目までの4つの小梁間空間55の空気を暖め、平面視して右側の放熱器11は、同6番目から同9番目までの4つの小梁間空間55の空気を暖める。このように、図6の例では、実施例1と同様に、ムラを生じさせることなく広範囲に亘り暖めることができる。また、このような構成とすると、放熱器11は、実施例1の構成と比較して、各小梁間空間55に対応する面積を大きくできるので、各小梁間空間55の空気をより暖めることができる。このため、放熱器11の性能および長さ寸法と、対象とする2階床部46の大きさと、求められる暖房性能と、を適宜考慮して、各床小梁53の伸びる方向に対する長尺方向の傾斜を設定して各放熱器11を設けることで、ムラなくかつより効率良く床を暖めることができる。
【0041】
さらに、実施例1では、各床小梁53と放熱器11との位置関係を2階リビング51のみに対応させていたが、他の2階居室49に対応させてもよく、2階居室空間47の全体に対応させてもよく、1階居室空間41(その1階居室43)に対応させてもよく、実施例1の構成に限定されない。なお、1階居室空間41(その1階居室43)に対応させる場合には、上記した効果を最大限得るためには1階床部39に各通気口58を設けないことが望ましい。加えて、ユニット建物30を2階建てとしていたが、平屋でもよく3階建て以上でもよく、実施例1の構成に限定されない。その場合であっても、いずれの階の居室空間(居室)に対応させてもよい。
【0042】
実施例1では、上記した構成の放熱器11を用いていたが、2つ以上の床小梁53を横切り3つ以上の小梁間空間55をわたすことのできる長尺な形状を呈し熱を放出できるものであれば、例えば、放熱管を剥き出しにしたものや、電熱線を用いたものや、レンガ等の蓄熱体を組み合わせたものでもよく、実施例1の構成に限定されない。
【符号の説明】
【0043】
10 床暖房システム
11 放熱器
30 ユニット建物
32 建物ユニット
46 (床部の一例としての)2階床部
53 床小梁
54 床板
55 小梁間空間
57 (床下空間の一例としての)2階床下空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6