(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6789056
(24)【登録日】2020年11月5日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】歌詞消去
(51)【国際特許分類】
G10K 15/04 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
G10K15/04 302D
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-196943(P2016-196943)
(22)【出願日】2016年10月5日
(65)【公開番号】特開2018-36615(P2018-36615A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年8月8日
(31)【優先権主張番号】特願2016-167556(P2016-167556)
(32)【優先日】2016年8月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】511043437
【氏名又は名称】株式会社コシダカホールディングス
(72)【発明者】
【氏名】腰▲高▼ 博
【審査官】
大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−218674(JP,A)
【文献】
特開2005−258241(JP,A)
【文献】
特開2008−145932(JP,A)
【文献】
特開2008−058724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歌を抜いた伴奏と、
歌詞情報と、
歌詞情報と紐づいた歌唱タイミング情報を保持し、
歌詞を表示する機能を持つカラオケシステムにおいて、
歌唱タイミングの一定時間前に歌詞を画面上に表示し、
歌唱タイミングの直前に当該歌詞部分が画面上から消去されることを特徴とするカラオケシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歌唱中カラオケモニタ画面に表示される歌詞テロップを、歌唱直前に消去するカラオケに関する。
【背景技術】
【0002】
我々が通常行っているカラオケで「歌う」という行為は、予め記憶された旋律の音程の推移に、表示された歌詞を割り付けて発声する作業であり、脳としては意外に複雑な作業を行っているものである。
カラオケが脳機能の活性化に一定の効果があることが一部で注目されてきている。
歌うことで認知症のリスク軽減!カラオケで認知症を予防しよう | 健康生活
http://health-to-you.jp/dementia/karaokeyobou0219/
[介護予防事業]「脳トレ元気塾」をスタート〜カラオケと運動で脳トレ
https://www.city.kiyose.lg.jp/s004/050/060/140/20141008170143.html
カラオケを活用した脳トレで地域の絆の強化へ…東京都清瀬市の試みとは ...
http://www.minnanokaigo.com/news/N44585595/
【0003】
カラオケの普及前は、歌唱者は楽曲の旋律と歌詞をすべて記憶して、旋律に歌詞を割り当てるという脳の作業を行っていた。現在のプロの歌手の歌唱もそうであろう。しかし、こうした歌い方は、仕事としての歌唱であり、娯楽としてのカラオケに求められるものとは違っている。
【0004】
また、最近のカラオケ機器では、前記プロの歌手の歌唱に近づけたいわゆる「プロ仕様」として歌詞をすべて覚えていることを前提に歌詞を表示しない演奏形態も存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-215255号公報
【特許文献2】特開2015-051124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、カラオケ演奏に伴ってテロップ表示を行う場合にアプリケーション再生も同時に行う場合であっても、テロップの視認性を確保しながら、アプリケーション表示とテロップ表示とが重なり合うことを回避することを課題とし、ユーザに選曲された楽曲に対応する楽曲データに基づきカラオケ演奏を行い、カラオケ演奏に合わせて歌詞テロップを表示手段の表示領域に表示させる。
また、アプリケーションの使用が選択された場合には、アプリケーションの処理結果も同時に表示手段の表示領域に表示させる。このとき、歌詞テロップの表示領域とアプリケーションの表示領域とが重複する場合には、歌詞テロップの表示領域を移動させる。そして、アプリケーションの表示領域と重複するために移動させたテロップの表示領域と他のテロップの表示領域とが重複する場合には、先に表示が開始されるテロップを後に表示が開始されるテロップの表示開始時期までに消去する。
【0007】
特許文献2は、患者が楽しみながら認知症の改善を支援する認知症改善装置を提供する。
認知症改善装置は、患者の自宅またはリハビリセンターと通信するための通信部と、神経心理検査の結果の入力を受け付ける入力部と、患者の歌唱能力を評価するための能力段階評価部と、神経心理検査の結果と歌唱能力の評価結果に基づいて患者用の歌唱メニューを作成するメニュー作成部と、検査結果を格納するための検査結果データベースと、患者の情報を格納するための個人データベースと、歌唱メニューのテンプレートおよび作成されたメニューを格納するためのメニューデータベースと、配信対象として予め準備された楽曲を格納するための楽曲データベースとを備える。
【0008】
特許文献1は通常のカラオケにおける歌詞テロップ表示の標準的な例である。通常はこのように、次のフレーズの歌詞を表示するために歌唱が終了した部分から表示を消去するのが一般的である。
【0009】
特許文献2は、カラオケにおいて歌唱者に課題を与えて歌唱力を評価することによって認知症を診断し、医師も介在してトレーニングをすすめるというもので、カラオケを楽しむというよりはやや本格的な認知症改善システムであり、カラオケとしては一般的なカラオケを想定している。
【0010】
このように、前記特許文献2は一般的なカラオケの使用による脳機能への改善を指摘するものであって、脳機能の改善により効果的なカラオケの使用を提案するものは見られない。
現在の一般的なカラオケの仕様では、歌唱時には歌詞が表示され歌唱の進行に合わせて「塗り」表示があるなど歌唱者へのサポートが充実しており、旋律を覚えていればカラオケ歌唱における脳の作業は限定的である。
【0011】
一方前記「プロ仕様」はプロの歌手のようにすべての歌詞を覚えて歌唱するため、長期間記憶を保持するいわゆる「長期記憶」が要求され、これはこれで脳トレとしての効果がある。
しかし脳の負荷としてはこのような「長期記憶」よりも、今見た歌詞を、歌詞を見ないですぐにそのフレーズを歌唱するという「短期記憶」の方が高く、いわゆる「脳トレ」にも「短期記憶」を刺激することが効果的と言われている。
【0012】
上記のように今のカラオケには短期記憶を刺激する要素が少ない。
そこで今あるカラオケ機器の機能を活用して、短期記憶を刺激するカラオケが欲しい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために本発明の請求項1は、
歌を抜いた伴奏と、
歌詞情報と、
歌詞情報と紐づいた歌唱タイミング情報を保持し、
歌詞を表示する機能を持つカラオケシステムにおいて、
歌唱タイミングの一定時間前に歌詞を画面上に表示し、
歌唱タイミングの直前に当該歌詞部分が画面上から消去されることを特徴とするカラオケシステムである。
【発明の効果】
【0014】
これによりカラオケ歌唱者は、歌唱時に一旦表示された歌詞が直前で消去されるため、表示された歌詞を短時間覚えておくことが必要であり、これにより「短期記憶」が刺激される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例に係る歌唱前のイメージ図である。
【
図2】本発明の実施例に係る歌唱中のイメージ図である。
【
図3】本発明の他の実施例に係るタイムシーケンス図である。
【
図4】本発明の他の実施例に係るフレーズ歌唱3秒前のイメージ図である。
【
図5】本発明の他の実施例に係るフレーズ歌唱1秒前のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1、
図2は本発明の実施の一例である。
【0017】
本発明の請求項1において、歌唱前には
図1のようにカラオケモニタ画面2には歌唱前歌詞テロップ3が表示されている。通常のカラオケでは、このまま歌唱に入るため歌唱者は当該画面を見ながら歌唱するのが普通であり、この表示された歌詞が消えるのは当該フレーズの歌唱が終了した時であるのが一般的である。
【0018】
本発明においては1行目の歌唱が始まると、カラオケ画面は
図2のようにこれから歌うフレーズの行の歌唱部分が、消去され歌唱中歌詞テロップ4のような表示になる。本実施例では歌唱タイミングの0.8秒前に当該歌詞を消去している。このため歌唱者は消去されてから歌唱が始まるまでの間消去された歌詞を覚えておく必要があり、この繰り返しが短期記憶を刺激し脳トレになる。
【0019】
図3は、
図1、
図2とは異なるより効果的な実施例に係るタイムチャートのイメージである。
本実施例では、
図4のような歌詞「真っ白な 雪道に 春風香る」を歌唱する3秒前に当該歌詞が順次表示され、0.8秒前には消去され、歌唱中は
図5の5のようなテロップ表示となる。
前述の実施例では、表示された歌詞テロップ(
図1の例では2行)が
図2のように歌唱順に消去されるため、例えば2行目の後半などは比較的長い時間表示されることになり、フレーズとしての記憶が容易となるため、本実施例の方が短期記憶の負荷としては効果的である。
【産業上の利用可能性】
【0020】
カラオケが脳トレに効果があることは従前より指摘されてきたが、本発明は単なるカラオケよりも脳トレ効果を際立たせることができる。
【符号の説明】
【0021】
1・・・カラオケ端末装置
2・・・カラオケモニタ
3・・・歌唱前歌詞テロップ
4・・・歌唱中歌詞テロップ1
5・・・歌唱中歌詞テロップ2