(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記算出工程において、n番目の加工ステージでの金型の金型面積とn番目の加工ステージにおける機械的特性であるF(n)とに基づきn番目の加工ステージにおける金型への面圧力を算出すると共に、前記n番目の加工ステージにおける金型の圧縮強さと前記面圧力との比である負荷率を算出し、
前記表示工程において、前記n番目の加工ステージにおける負荷率を指標する負荷率情報を表示する、請求項2に記載の加工情報表示方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、複数の加工ステージを有して加工対象を加工ステージに順次搬送しながら複数の加工を一連に行う、いわゆる順送式の加工装置がある。従来の加工装置では、プレス荷重等の加工に関する機械的特性を加工装置全体として把握しているので、複数の加工ステージごとの機械的特性を把握することができない。そのため、複数の加工ステージごとの機械的特性に関する加工情報を把握したり表示したりすることができない。
【0006】
順送式の加工装置では、加工ステージごとに異なる金型を設置することがあり、加工ステージごとに金型の使用環境が異なる場合がある。そのため、簡易な構造で、コストやセンサを増大させずに、加工ステージごとのプレス圧等の機械的特性を把握する手法が望まれていた。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたもので、複数の加工ステージを有する加工装置において、簡易な構造で、加工ステージごとの金型と加工対象との間で生じる機械的特性に関連する加工情報を表示することのできる加工情報表示方法、及び、金型プレス装置を提供することを例示的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の趣旨を有する。
【0009】
[趣旨1]
加工装置により、金型を用いて加工対象に対して加工を行う際の前記金型と前記加工対象との間で生じる機械的特性に関する加工情報を表示する加工情報表示方法であって、
前記加工装置は、
各々に金型が設置可能であって設置された金型ごとの加工を実現する複数の加工ステージと、
前記加工対象を前記複数の加工ステージに順次搬送する搬送手段と、
前記加工対象に加工を行う際の前記金型と前記加工対象との間で生じる機械的特性を検出する検出手段と、を有しており、
前記検出手段により前記複数の加工ステージ全体での前記機械的特性を検出する検出工程と、
前記検出手段による検出結果に基づき前記複数の加工ステージごとの前記機械的特性に関する加工情報を表示する表示工程と、を有する、加工情報表示方法。
【0010】
[趣旨2]
n番目の加工ステージにおける機械的特性をF(n)、k番目の加工ステージにおける機械的特性をF(k)としたときに、前記複数の加工ステージごとの前記機械的特性を以下式(1)に基づき算出する算出工程を更にしてもよい。
【数1】
【0011】
[趣旨3]
前記加工装置がプレス加工装置であり、
前記加工がプレス加工であり、かつ、
前記機械的特性が圧縮力であってもよい。
【0012】
[趣旨4]
前記算出工程において、n番目の加工ステージでの金型の金型面積とn番目の加工ステージにおける機械的特性であるF(n)とに基づきn番目の加工ステージにおける金型への面圧力を算出すると共に、前記n番目の加工ステージにおける金型の圧縮強さと前記面圧力との比である負荷率を算出し、
前記表示工程において、前記n番目の加工ステージにおける負荷率を指標する負荷率情報を表示してもよい。
【0013】
[趣旨5]
各々に金型が設置可能であって設置された金型ごとのプレス加工を実現する複数の加工ステージと、
加工対象を前記複数の加工ステージに順次搬送する搬送手段と、
前記加工対象にプレス加工を行う際の前記金型と前記加工対象との間で生じる圧縮力を検出する検出手段と、
記憶手段と、
演算処理手段と、
表示手段と、を有しており、
前記記憶手段には、前記金型ごとの金型面積と、前記金型ごとの圧縮強さとが記憶されており、
前記演算処理手段は、前記検出手段により検出された圧縮力と前記金型面積とに基づき前記金型ごとの面圧力を算出すると共に、前記金型ごとの面圧力と前記金型ごとの圧縮強さとの比率を指標する負荷率を算出し、
前記表示手段は、前記金型ごとの負荷率を指標する負荷率情報を表示する、金型プレス装置。
【0014】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下添付図面を参照して説明される好ましい実施の形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の加工ステージを有する加工装置において、簡易な構造で、加工ステージごとの金型と加工対象との間で生じる機械的特性に関連する加工情報を表示することのできる加工情報表示方法、及び、金型プレス装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施形態1]
<金型プレス装置の説明>
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
図1は、実施形態1に係る加工装置としての金型プレス装置(以下、プレス装置と略称する。)Sの概略図である。プレス装置Sは、筐体2の内外に、駆動モータ4、伝達機構6、クランク軸8、コンロッド10、スライド12を有して構成される。また、プレス装置Sは、制御部14、表示画面(表示手段)16、入力部(入力手段)18、センサ(検出手段)24を有している。本実施形態1のプレス装置Sは、順送式のプレス装置であり、複数の加工ステージ5と、搬送機構(搬送手段)28とを更に有している。
【0018】
駆動モータ4は、例えばサーボ制御されるサーボモータであり、回転量及び回転方向を制御しつつ伝達機構6、クランク軸8、コンロッド10を介して後述する金型3を上下移動させるものである。伝達機構6は、例えばギアやベルト等の伝達部材を有して構成され、駆動モータ4のモータ軸の回転をクランク軸8へと伝達するものである。駆動モータ4への制御信号は制御部14から送られるようになっている。
【0019】
クランク軸8及びコンロッド10は、伝達機構6により伝達されたモータ軸の回転移動を往復移動(本実施形態1では、上下移動。)に変換するためのものである。モータ軸の回転によりクランク軸8が回転し、クランク軸8に一端近傍が連結されたコンロッド10にその回転が伝達されてコンロッド10が上下移動(昇降移動)するようになっている。
【0020】
コンロッド10の他端近傍にはスライド12が連結されている。コンロッド10の上下移動に伴いスライド12がガイド(不図示)に沿って上下移動するようになっている。
図2にその概略図を示すように、スライド12は、ボルスタ22と対面している。プレス装置Sにおいては、スライド12と対向するようにボルスタ22が配置されている。スライド12のボルスタ22と対向する側の面(本実施形態1では下面。)に金型3の一部としての上型3aが装着される。ボルスタ22のスライド12と対向する側の面(本実施形態1では上面。)に金型3の一部としての下型3bが装着される。
【0021】
上型3aと下型3bとの間に加工対象としてのワークWを配置し、上型3aと下型3bとで押圧することにより、プレス装置SによるワークWに対するプレス加工が行われる。詳しくは、制御部14により制御されて駆動モータ4が回転する。駆動モータ4の回転が伝達機構6、クランク軸8を介してコンロッド10へと伝達され、スライド12が上下移動する。スライド12の下方移動によって上型3aと下型3bとが押圧され、ワークWのプレス加工が行われる。すなわち、プレス装置Sにおいて、駆動モータ4、伝達機構6、クランク軸8、コンロッド10、スライド12がプレス部を構成する。
【0022】
このプレス装置Sは、複数の加工ステージ5を有している。複数の加工ステージ5は、例えば、加工ステージ(第1加工ステージ)51、加工ステージ(第2加工ステージ)52、加工ステージ(第3加工ステージ)53を有している。プレス装置Sは、更に多くの加工ステージ(第4加工ステージ以降)を有していてもよい。
【0023】
複数の加工ステージ5には、各々加工ステージ5ごとの金型3が設置されている。例えば、加工ステージ51には、上型(第1上型)31aと下型(第1下型)31bとで構成される金型(第1金型)31が設置される。例えば、加工ステージ52には、上型(第2上型)32aと下型(第2下型)32bとで構成される金型(第2金型)32が設置される。例えば、加工ステージ53には、上型(第3上型)33aと下型(第3下型)33bとで構成される金型(第3金型)33が設置される。プレス装置Sが更に多くの加工ステージを有する場合は、それらの加工ステージごとに金型が設置される。上型31a〜33aは同じスライド12に装着され、下型31b〜33bは同じボルスタ22に装着されているので、プレス部の1回のプレス動作(1回の上下移動)により、複数の加工ステージ51〜53における加工が並行して実行されるようになっている。
【0024】
複数の加工ステージ51〜53の各々に設置された金型31〜33は、ワークW(加工対象)に対し、各々異なる加工を実現する。例えば、金型31では絞り加工、金型32では曲げ加工、金型33では抜き加工が実現される。複数の加工ステージ51〜53は、プレス装置Sにおいて一連に配置される。例えば、
図2に示すように、複数の加工ステージ51〜53は直線的に列状配置されてもよい。また、他の例として複数の加工ステージ51〜53が円弧状に一連配置されてもよい。
【0025】
搬送機構28は、ワークWを複数の加工ステージ51〜53に向けて順次搬送するためのものである。搬送機構28は、例えば、駆動モータ、駆動伝達機構等を有している。ワークWの原反としてのロール状又はシート状の金属材料WSが搬送機構28によりプレス装置Sへと引き込まれ、加工ステージ51へと送られる。加工ステージ51で一旦停止されたワークWは、金型31により加工され、搬送機構28により加工ステージ52へと送られる。加工ステージ52で一旦停止されたワークWは、金型32により加工され、搬送機構28により加工ステージ53へと送られる。加工ステージ53で一旦停止されたワークWは、金型33により加工され、搬送機構28によりそれ以降の加工ステージへと送られるか、又はプレス装置S外へと排出される。
【0026】
表示画面16は、プレス装置Sの動作状況や設定パラメータ等の表示を行うためのものである。表示画面16は、例えば、液晶モニタ、LED表示装置、CRT等により構成される。入力部18は、プレス装置Sの動作指令(例えば、オン、オフ等。)や設定パラメータの入力等を行うためのものである。入力部18は、例えば、キーボード、ボタン、スイッチ、タッチパネル等により構成される。表示画面16及び入力部18は、いずれも制御部14に接続されている。入力部18から入力された情報は制御部14へと送られ、制御部14から送られた表示情報に基づき表示画面16が情報表示を行う。
【0027】
表示画面16には、複数の加工ステージ51〜53ごとの金型31〜33とワークWとの間で生じる機械的特性に関する加工情報も表示される。本実施形態1では、機械的特性は、金型31〜33とワークWとの間で生じる圧縮力である。表示画面16には、圧縮力に関する加工情報として、加工ステージ51〜53ごとの面圧力や負荷率に関する情報が表示されるが、詳細は後述する。もちろん機械的特性や加工情報は、これらのものに限られない。
【0028】
センサ24は、プレス装置SがワークWにプレス加工を行う際の金型3とワークWとの間で生じる機械的特性(本実施形態1では圧縮力)を検出するためのものである。センサ24は、加工ステージ51〜53ごとの圧縮力を検出するのでなく、プレス装置Sによる1回のプレス加工の複数の加工ステージ全体での圧縮力を検出する。つまり、複数の加工ステージ51〜53の各々に複数のワークWが配置されている状態で、プレス装置Sがプレス加工を行った際の圧縮力の合計を検出する。センサ24は、例えば、筐体2に設置された歪ゲージであってもよい。また、機械的特性として圧縮力以外のものを検出する場合には、検出すべき各々の機械的特性に応じたセンサが用いられる。センサ24は、コンロッド10のいずれかの位置(例えば、中央近傍位置)に設置されていてもよい。
【0029】
制御部14は、
図3に示すように、内部に演算処理手段としてのCPU14a、記憶手段としてのメモリ14bを有している。CPU14aは、駆動モータ4、表示画面16、入力部18と接続されている。制御部14は、センサ24による検出結果に基づき、各加工ステージ51〜53ごとの圧縮力を算出する機能を有する。また、各加工ステージ51〜53ごとの金型31〜33の金型面積と上記の圧縮力とに基づき、各加工ステージ51〜53ごとの金型31〜33への面圧力を算出する機能を有する。また、各加工ステージ51〜53ごとに、金型31〜33の圧縮強さと面圧力との比である負荷率を算出する機能を有する。これらの詳細について後述する。
【0030】
<検出工程>
プレス装置Sでは、ワークWの原反としてのロール状又はシート状の金属材料WSが搬送機構28によって加工ステージ51へと送られる。このとき、加工ステージ51において上型3aと下型3bとは開放状態であり、それらの間にワークWが搬送されて載置される。この加工開始時の先頭のワークWをワークW1と呼ぶこととする。ワークW1が加工ステージ51の所定位置に停止したら、プレス部が動作し、上型3aと下型3bとが閉鎖され、ワークW1に対する加工ステージ51での加工が実行される。
【0031】
ワークW1に対する加工は、プレス部による高圧でのプレス加工により実現される。そのプレス加工時のワークW1に対する圧縮力(プレス荷重ともいう)は、筐体2に設置されたセンサ24によって検出される。センサ24が歪ゲージである場合は、センサ24がプレス加工時の筐体2の歪み(伸び)を検出する(検出工程)。そして検出結果が制御部14へと送られ、CPU14aによりその検出結果に基づく金型3とワークW1との間で生じる圧縮力が算出される。CPU14aによる圧縮力の算出プロセスを含めて、「センサ24により圧縮力が検出される」と言うこととする。ワークW1が加工ステージ51にのみ存在する場合は、この圧縮力は加工ステージ51における金型31とワークW1との間での圧縮力である。
【0032】
加工ステージ51でのワークW1に対する加工が完了したら、プレス部が金型3を開放する。搬送機構28がワークW1を加工ステージ52へと搬送すると共に、次のワークW2を加工ステージ51へと搬送する。ワークW1が加工ステージ52の上下金型32間に載置され、ワークW2が加工ステージ51の上下金型31間に載置されて搬送が停止すると、プレス部が動作し、上型3aと下型3bとが閉鎖される。それにより、ワークW1に対する加工ステージ52でのプレス加工とワークW2に対する加工ステージ51でのプレス加工とが実行される。
【0033】
ワークW1、W2に対する加工は、プレス部による高圧でのプレス加工により実現される。そのプレス加工時のワークW1、W2に対する圧縮力は、上記説明と同様に、筐体2に設置されたセンサ24により検出される。ワークW1が加工ステージ52に存在し、ワークW2が加工ステージ51に存在する場合は、この圧縮力は加工ステージ52における金型32とワークW1との間での圧縮力と加工ステージ51における金型31とワークW2との間での圧縮力との合計である。
【0034】
加工ステージ52、51でのワークW1、W2に対する加工が完了したら、プレス部が金型3を開放する。搬送機構28がワークW1、W2を各々加工ステージ53、52へと搬送すると共に、次のワークW3を加工ステージ51へと搬送する。ワークW1が加工ステージ53の上下金型33間に載置され、ワークW2が加工ステージ52の上下金型32間に載置され、ワークW3が加工ステージ51の上下金型31間に載置されて搬送が停止すると、プレス部が動作し、上型3aと下型3bとが閉鎖される。それにより、ワークW1に対する加工ステージ53でのプレス加工とワークW2に対する加工ステージ52でのプレス加工とワークW3に対する加工ステージ51でのプレス加工とが実行される。
【0035】
ワークW1〜W3に対する加工は、プレス部による高圧でのプレス加工により実現される。そのプレス加工時のワークW1〜W3に対する圧縮力は、上記説明と同様に、筐体2に設置されたセンサ24により検出される。ワークW1が加工ステージ53に存在し、ワークW2が加工ステージ52に存在し、ワークW3が加工ステージ51に存在する場合は、この圧縮力は加工ステージ53における金型33とワークW1との間での圧縮力と52における金型32とワークW2との間での圧縮力と加工ステージ51における金型31とワークW3との間での圧縮力との合計である。
【0036】
以下、搬送機構28によって金属材料WSが次々と下流側の加工ステージ5に搬送されるごとに、センサ24によって金型3とワークWとの間で生じる圧縮力が検出される。センサ24による金型3とワークWとの間で生じる圧縮力は、複数の加工ステージ5に複数のワークWが存在する場合も、それらの合計値として検出される。センサ24により検出される圧縮力Fは、加工ステージ51での圧縮力をF(1)、加工ステージ52での圧縮力をF(2)、加工ステージ53での圧縮力をF(3)としたときに、
・加工ステージ51にワークW1のみが存在する場合:F=F(1)
・加工ステージ52にワークW1が存在し、加工ステージ51にワークW2が存在する場合:F=F(1)+F(2)
・加工ステージ53にワークW1が存在し、加工ステージ52にワークW2が存在し、加工ステージ51にワークW3が存在する場合:F=F(1)+F(2)+F(3)
となる。
【0037】
書き換えると、
・n番目の加工ステージ5までワークWが存在する場合:
F=F(1)+F(2)+F(3)+・・・+F(n−1)+F(n)
【数2】
である。ここで、F(n)は、n番目の加工ステージでの圧縮力である。
【0038】
なお、各加工ステージ5には、型開きの際に金型3からワークWを離型させるためのコイルスプリング(不図示)が配置される場合がある。この場合、センサ24では、各加工ステージ5でのコイルスプリングによる圧縮力(離型力)も含めた圧縮力(プレス加重)が検出される。
【0039】
<算出工程>
センサ24からの圧縮力が制御部14へと送られると、CPU14aは、加工ステージ5ごとの圧縮力を算出する(算出工程)。加工ステージ5ごとの圧縮力は、センサ24により検出された圧縮力の現在値とセンサ24により検出された圧縮力の直前値との差分で求められる。具体的には、ワークWが存在する加工ステージ5の圧縮力の合計値に基づいて、以下式(1)により各加工ステージ5での個別の圧縮力が算出される。
【0040】
F(n)=F−{F(1)+F(2)+F(3)+・・・+F(n−1)}
【数3】
となる。
【0041】
図4は、制御部14のメモリ14b内に記憶された金型情報データベース(以下、単にデータベースという。)Dのデータ構造図である。データベースDは、例えば入力部18を介しての情報入力により予めメモリ14b内に格納されたものである。データベースDには、各加工ステージ5に装着された金型3ごとの金型面積Aの情報、金型3ごとの圧縮強さTの情報が格納されている。例えば、
図4では、加工ステージ51の金型31の金型面積がA(1)であり、圧縮強さがT(1)である。加工ステージ52の金型32の金型面積がA(2)であり、圧縮強さがT(2)である。加工ステージ53の金型33の金型面積がA(3)であり、圧縮強さがT(3)である。
【0042】
ここで、金型3の金型面積Aは、金型3でワークWをプレスする際に、当該金型3とワークWとの間でプレス荷重が加わる面積である。一般的には、金型面積Aは、金型3全体の面積を意味するのでなく、当該金型3で加工するワークWの面積に近い値となる。金型3の圧縮強さTは、金型3の材質に固有の機械的性質である。圧縮強さTを超える圧縮力Fを当該金型3に加重した場合に、金型3は所定の変形、歪み、又は破断を生じ得る。
【0043】
CPU14aは、センサ24により検出された圧縮力FとデータベースDの金型面積Aの値とに基づき、各加工ステージ5の金型3ごとの面圧力(圧縮応力)Pを算出する。面圧力Pは、金型に加わるプレス加重による圧力であり、(金型へのプレス加重F)/(金型面積A)で与えられる。例えば、
図5にその算出例を示すように、n番目の加工ステージ5の金型3における面圧力P(n)は、P(n)=F(n)/A(n)である。
【0044】
CPU14aは、金型3の面圧力PとデータベースDの圧縮強さTの値とに基づき、各加工ステージ5の金型3ごとの負荷率Rを算出する。負荷率Rは、金型への面圧力Pと圧縮強さTとの比(面圧力P/圧縮強さT)で与えられ、金型3の圧縮強さTが、それに加わるプレス加重Fに対してどの程度マージンがあるかを示す値である。例えば、
図5にその算出例を示すように、n番目の加工ステージ5の金型3における負荷率R(n)は、R(n)=P(n)/T(n)である。
【0045】
ここで、プレス荷重が加わっていない(F=P=0)場合が、負荷率R=0の状態である。プレス荷重Fが大きくなり、負荷率R≧1(=100%)の場合が、面圧力Pが圧縮強さT以上の状態である。このとき、圧縮強さTはプレス荷重Fに対してマージンがなく、金型3に所定の変形、歪み、又は破断を生じ得る。
【0046】
<表示工程>
センサ24により検出された検出結果や制御部14により算出された算出結果に基づき、加工ステージ5ごとの加工情報11が表示画面16に表示される(表示工程)。
図6は、プレス装置Sの表示画面16における表示例を示す図である。
図6においては、加工ステージ51、52、53・・・ごとに圧縮力(プレス荷重)F、金型面積A、面圧力P、圧縮強さT、負荷率Rがリスト表示されている。プレス装置Sの利用者が表示画面16を視認することにより、加工ステージ5ごとのプレス荷重Fに対する金型3の圧縮強さTのマージンを容易に把握することができる。ここでは、圧縮力Fが加工情報11である。もちろん、圧縮力Fと共に表示画面16に表示される面圧力Pや負荷率Rも加工情報11である。負荷率Rは負荷率情報でもある。
【0047】
どの加工ステージ5における金型3の圧縮強さTがプレス荷重Fに対してマージンが少ないのか、が容易に把握できるので、加工ステージ5ごとに金型3の材料を適切に選定することができる。例えばマージンが少ないか又はない場合に、その加工ステージ5における金型3を、より高い圧縮強さTの材料に変更することができる。
【0048】
図7(a)は、プレス装置Sの表示画面16における他の表示例を示す図である。
図7(a)では、金型3ごと(加工ステージ5ごと)に、負荷率Rが負荷率メーターとしてバー表示13により表示されている。この
図7(a)では、バー表示13が加工情報11としての負荷率情報である。バー表示13は、負荷率100%のときの全長に対する長さの比で負荷率Rの程度を視覚的に表示するものである。
【0049】
例えば、負荷率0〜50%の範囲は、プレス荷重Fに対して金型3が充分な圧縮強さTを持ち、負荷プレス荷重Fによっても金型3が変形したり破断したりするおそれのない領域(安全領域)である。負荷率51%〜74%の範囲は、金型3がプレス荷重Fによって弾性変形する可能性のある領域(弾性変形領域)である。負荷率75%〜90%の範囲は、金型3が塑性変形を生じるおそれのある領域(塑性変形領域)である。負荷率91%以上の範囲は、金型3が塑性変形、破断等深刻なダメージを受けるおそれのある領域(危険領域)である。
【0050】
図7(a)では、負荷率Rが0〜50%に対応する範囲ではバー表示13は緑色、51%〜74%に対応する範囲ではバー表示13は黄色、75%〜90%に対応する範囲ではバー表示13は赤色で表示される。負荷率Rが91%以上の場合は、バー表示13は赤色で表示され、かつ、バー表示13内に「Danger!!」の文字が表示される。このようなバー表示13による負荷率Rの提示により、利用者は直感的に、容易に加工ステージ5ごとの金型3のプレス荷重Fに対するマージンを把握することができる。
【0051】
図7(b)は、プレス装置Sの表示画面16における更に他の表示例を示す図である。
図7(b)では、金型3ごと(加工ステージ5ごと)に、負荷率Rが負荷率メーターとして回転針によるメーター表示15により表示されている。この
図7(b)では、メーター表示15が加工情報11としての負荷率情報である。メーター表示15は、負荷率0から負荷率100%までの中心角度に対する回転針の回転角度の比で負荷率Rの程度を視覚的に表示するものである。
【0052】
メーター表示15においては、例えば、負荷率0〜50%の範囲が「安全領域」、負荷率51%〜74%の範囲が「弾性変形領域」、負荷率75%〜90%の範囲が「塑性変形領域」、負荷率91%以上の範囲が「危険領域」に対応することが文字表示されている。このようなメーター表示15による負荷率Rの提示により、利用者は直感的に、容易に加工ステージ5ごとの金型3のプレス荷重Fに対するマージンを把握することができる。
【0053】
[実施形態2]
以上、本発明の好ましい実施の形態1を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨の範囲内で様々な変形や変更が可能である。例えば、
図8に示すように、プレス装置SとコンピュータCとが接続され、コンピュータC側の表示画面16に
図6、
図7(a)又は
図7(b)に示す加工情報11が表示されるようになっていてもよい。ここで、コンピュータCは、例えばパーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、携帯情報端末、携帯電話機、スマートフォン、タブレット端末等の、制御部14と表示画面16と入力部18とを含むハードウェアである。
【0054】
データベースDがコンピュータCのメモリ14b内に記憶され、コンピュータC内のCPU14aがセンサ24からの検出結果に基づいて演算処理を行って面圧力P、負荷率Rを算出し、コンピュータCの表示画面16に、負荷率情報がバー表示13又はメーター表示15されるようになっていてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、金型3とワークWとの間で生じる機械的特性が「圧縮力」である場合について説明した。したがって、センサ24は圧縮力(プレス荷重)Fを検出し、表示画面16には圧縮力(プレス荷重)Fに関する加工情報11としての「プレス荷重F」、「面圧力P」、「負荷率R」が表示される場合について説明した。表示画面16には、更に負荷率Rを指標する負荷率情報としてのバー表示13やメーター表示15が表示される場合について説明した。
【0056】
しかしながら、機械的特性は、必ずしも圧縮力に限定される必要はなく、加工装置の種類に応じて、例えば、せん断力、引張力、衝撃力等の種々の機械的特性を本発明に適用することが考えられる。