特許第6789063号(P6789063)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6789063
(24)【登録日】2020年11月5日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】手摺装置
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/18 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
   E04F11/18
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-210520(P2016-210520)
(22)【出願日】2016年10月27日
(65)【公開番号】特開2018-71143(P2018-71143A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【弁理士】
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 京子
(72)【発明者】
【氏名】小林 亘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 武
【審査官】 前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0151760(US,A1)
【文献】 登録実用新案第3202675(JP,U)
【文献】 特開2005−054419(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3043149(JP,U)
【文献】 実開昭48−007956(JP,U)
【文献】 特許第5945646(JP,B1)
【文献】 特開2015−206231(JP,A)
【文献】 特開2009−191601(JP,A)
【文献】 特開平08−093167(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3181313(JP,U)
【文献】 特開2012−210884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/18
E04H 17/00−17/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立設されると共に上下に延びる第1内部空間を有する第1支柱と、該第1支柱に対して所定の間隔を隔てた位置に立設されると共に上下に伸びる第2内部空間を有する第2支柱と、該第1支柱と該第2支柱との間に張設された可撓性を有する少なくとも1本の長尺部材と、を備えた手摺装置において、
前記第1内部空間にて少なくとも下方に移動自在となるように配置されてなる第1重りと、
前記第2内部空間にて少なくとも上方に移動自在となるように配置されてなる第2重りと、
前記第1支柱の内外を貫通するように該第1支柱に形成される第1孔部と、
前記第2支柱の内外を貫通するように該第2支柱に形成される第2孔部と、
前記第1孔部に挿通された状態の前記長尺部材の一端部近傍が前記第1内部空間内の前記第1重りに連結されると共に前記第2孔部に挿通された状態の前記長尺部材の他端部近傍が前記第2内部空間内の前記第2重りに連結されると共に、
前記長尺部材を介して前記第2重りに作用する上方向の力が所定未満の場合には該第2重りを保持して該第2重りの上方向への移動を阻止し、前記長尺部材を介して該第2重りに作用する上方向の力が所定以上の場合には該第2重りを解放して該第2重りの上方向への移動を許容する第2重り保持手段、を備え、
前記第1重りは前記第1内部空間の上端部近傍に配置されてなる、
ことを特徴とする手摺装置。
【請求項2】
立設されると共に上下に延びる第1内部空間を有する第1支柱と、該第1支柱に対して所定の間隔を隔てた位置に立設されると共に上下に伸びる第2内部空間を有する第2支柱と、該第1支柱と該第2支柱との間に張設された可撓性を有する少なくとも1本の長尺部材と、を備えた手摺装置において、
前記第1内部空間にて少なくとも下方に移動自在となるように配置されてなる第1重りと、
前記第2内部空間にて少なくとも上方に移動自在となるように配置されてなる第2重りと、
前記第1支柱の内外を貫通するように該第1支柱に形成される第1孔部と、
前記第2支柱の内外を貫通するように該第2支柱に形成される第2孔部と、
前記第1孔部に挿通された状態の前記長尺部材の一端部近傍が前記第1内部空間内の前記第1重りに連結されると共に前記第2孔部に挿通された状態の前記長尺部材の他端部近傍が前記第2内部空間内の前記第2重りに連結されると共に、
揺動自在となるように前記第1支柱に取り付けられた第1ボールジョイントに前記第1孔部が形成されることに基づき、前記長尺部材は該第1ボールジョイントにより揺動自在及び出入り自在に支持され、
揺動自在となるように前記第2支柱に取り付けられた第2ボールジョイントに前記第2孔部が形成されることに基づき、前記長尺部材は該第2ボールジョイントにより揺動自在及び出入り自在に支持されてなる、
ことを特徴とする手摺装置。
【請求項3】
前記第2重りは前記第1重りよりも重くなるように設定された、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の手摺装置。
【請求項4】
前記長尺部材は、複数本であって前記第1支柱と前記第2支柱との間においては上下に所定の間隔を隔てて配置され、
前記第1孔部は上下に所定の間隔を隔てて前記第1支柱に複数形成され、
前記第2孔部は上下に所定の間隔を隔てて前記第2支柱に複数形成され、
前記第1内部空間の上端部近傍には、前記複数の第1孔部から侵入してきた前記複数本の長尺部材がそれぞれ摺動自在に巻き掛けられて下方に垂下せしめる第1ガイド手段が配置され、
前記第2内部空間の上端部近傍には、前記複数の第2孔部から侵入してきた前記複数本の長尺部材がそれぞれ摺動自在に巻き掛けられて下方に垂下せしめる第2ガイド手段が配置され、
前記第1ガイド手段から垂下されてきた前記複数本の長尺部材の下端部近傍は1つの前記第1重りに連結され、
前記第2ガイド手段から垂下されてきた前記複数本の長尺部材の下端部近傍は1つの前記第2重りに連結されてなる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の手摺装置。
【請求項5】
前記長尺部材は、樹脂や繊維やワイヤで形成されたロープ又は帯体である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の手摺装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の間隔を隔てた状態で立設される2本の支柱を備えた手摺装置に関する。
【背景技術】
【0002】
相対的に変位するおそれがある2つの床部にそれぞれ支柱を立設させて手摺装置(防護柵)を構築しなければならない場合がある。例えば、免震装置を有する建物において、該免震装置により支持される部分と支持されない部分との間に手摺装置を構築する場合である。そして、そのような箇所に使用する手摺装置については種々の構造のものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図5は、手摺装置の従来構造の一例を示す正面図であり、図中の符号101,102は、支柱としての機能を果たす壁部を示し、符号F1は、一方の壁部101が立設されてなる床部を示し、符号F2は、他方の壁部102が立設されてなる床部を示す。そして、符号103Aは、一方の壁部101に支持された柵部を示し、符号103Bは、他方の壁部102に支持された柵部を示している。該柵部103Aは該柵部103Bには固定されてはおらず、該柵部103Aと該柵部103Bとは±x方向に相対移動できるように構成されている。したがって、地震等によって前記床部F1とF2とが±x方向に相対移動したとしても、前記柵部103A,103Bは該方向にそれぞれ自由に移動することとなり、該柵部103A,103Bが壊れないという特徴を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−303649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図5に例示する手摺装置の場合、x方向以外の揺れ(つまり、z方向の揺れや紙面垂直方向の揺れ)に対しては十分な対策が取られていなかった。
【0006】
本発明は、上述の問題を解消することのできる手摺装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点は、図1乃至図4に例示するものであって、立設されると共に上下に延びる第1内部空間(B1)を有する第1支柱(1)と、該第1支柱(1)に対して所定の間隔(D12)を隔てた位置に立設されると共に上下に伸びる第2内部空間(B2)を有する第2支柱(2)と、該第1支柱(1)と該第2支柱(2)との間に張設された可撓性を有する少なくとも1本の長尺部材(3A,…)と、を備えた手摺装置(A1)において、
前記第1内部空間(B1)にて少なくとも下方に移動自在となるように配置されてなる第1重り(W1)と、
前記第2内部空間(B2)にて少なくとも上方に移動自在となるように配置されてなる第2重り(W2)と、
前記第1支柱(1)の内外を貫通するように該第1支柱(1)に形成される第1孔部(1a1,…)と、
前記第2支柱(2)の内外を貫通するように該第2支柱(2)に形成される第2孔部(2a1,…)と、
前記第1孔部(1a1,…)に挿通された状態の前記長尺部材(3A,…)の一端部近傍(3A1,…)が前記第1内部空間(B1)内の前記第1重り(W1)に連結されると共に前記第2孔部(2a1,…)に挿通された状態の前記長尺部材(3A,…)の他端部近傍(3A2,…)が前記第2内部空間(B2)内の前記第2重り(W2)に連結されてなることを特徴とする。
【0008】
本発明の第2の観点は、前記第2重り(W2)が前記第1重り(W1)よりも重くなるように設定されたことを特徴とする。
【0009】
本発明の第3の観点は、前記長尺部材(3A,…)を介して前記第2重り(W2)に作用する上方向の力が所定未満の場合には該第2重り(W2)を保持して該第2重り(W2)の上方向への移動を阻止し、前記長尺部材(3A,…)を介して該第2重り(W2)に作用する上方向の力が所定以上の場合には該第2重り(W2)を解放して該第2重り(W2)の上方向への移動を許容する第2重り保持手段(4)、を備え、
前記第1重り(W1)は前記第1内部空間(B1)の上端部近傍に配置されてなることを特徴とする。
【0010】
本発明の第4の観点は、前記長尺部材(3A,…)が、複数本であって前記第1支柱(1)と前記第2支柱(2)との間においては上下に所定の間隔(D)を隔てて配置され、
前記第1孔部(1a1,…)は上下に所定の間隔(D)を隔てて前記第1支柱(1)に複数形成され、
前記第2孔部(2a1,…)は上下に所定の間隔(D)を隔てて前記第2支柱(2)に複数形成され、
前記第1内部空間(B1)の上端部近傍には、前記複数の第1孔部(1a1,…)から侵入してきた前記複数本の長尺部材(3A,…)がそれぞれ摺動自在に巻き掛けられて下方に垂下せしめる第1ガイド手段(G1)が配置され、
前記第2内部空間(B2)の上端部近傍には、前記複数の第2孔部(2a1,…)から侵入してきた前記複数本の長尺部材(3A,…)がそれぞれ摺動自在に巻き掛けられて下方に垂下せしめる第2ガイド手段(G2)が配置され、
前記第1ガイド手段(G1)から垂下されてきた前記複数本の長尺部材(3A,…)の下端部近傍は1つの前記第1重り(W1)に連結され、
前記第2ガイド手段(G2)から垂下されてきた前記複数本の長尺部材(3A,…)の下端部近傍は1つの前記第2重り(W2)に連結されてなることを特徴とする。
【0011】
本発明の第5の観点は、揺動自在となるように前記第1支柱(1)に取り付けられた第1ボールジョイント(1b1,…)に前記第1孔部(1a1,…)が形成されることに基づき、前記長尺部材(3A,…)は該第1ボールジョイント(1b1,…)により揺動自在及び出入り自在に支持され、
揺動自在となるように前記第2支柱(2)に取り付けられた第2ボールジョイント(2b1,…)に前記第2孔部(2a1,…)が形成されることに基づき、前記長尺部材(3A,…)は該第2ボールジョイント(2b1,…)により揺動自在及び出入り自在に支持されてなることを特徴とする。
【0012】
本発明の第6の観点は、前記長尺部材(3A,…)が、樹脂や繊維やワイヤで形成されたロープ又は帯体であることを特徴とする。
【0013】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0014】
上記した第1及び6の観点によれば、地震やその他の何らかの影響により前記第1支柱と前記第2支柱との間の支柱間隔が狭くなったり広くなったりしても、該第1支柱と該第2支柱との間の前記長尺部材はぴんと張られた状態が維持され、手摺(防護柵)としての機能が維持される。この効果は、前記第1支柱及び/又は前記第2支柱がx方向、y方向及びz方向のいずれの方向に移動した場合にも得ることができる。
【0015】
上記した第2の観点によれば、前記第2重りは前記第2内部空間にて定位置に配置されることとなる。そして、該第2重りの位置がその定位置よりも低くなった場合には前記長尺部材が伸びている等の要因が考えられ、該第2重りが定位置にあるか否かをチェックすることによって前記手摺装置が正常な状態かどうかを確かめることができる。
【0016】
上記した第3の観点によれば、前記第1支柱と前記第2支柱との間に張設された前記長尺部材に人が寄りかかった程度では該長尺部材は弛まずに安全性を確保できる。また、地震等により前記支柱間隔が広がろうとした場合には前記長尺部材は切断されることなく前記各支柱の移動を許容することができる。
【0017】
上記した第4の観点によれば、複数本の長尺部材の伸び代や縮み代を大きく取ることができる。
【0018】
上記した第5の観点によれば、前記長尺部材は、前記第1ボールジョイント及び前記第2ボールジョイントによって揺動自在及び出入り自在に支持されることとなり、前記第1支柱や前記第2支柱の様々な方向の移動にも前記長尺部材を追随させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明に係る手摺装置の全体構成の一例を示す分解斜視図である。
図2図2は、第1支柱の内部構造の一例を示す分解斜視図である。
図3図3は、第2支柱の内部構造の一例を示す分解斜視図である。
図4図4は、図3のE−E断面図である。
図5図5は、手摺装置の従来構造の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1乃至図4に沿って、本発明の実施の形態について説明する。
【0021】
本発明に係る手摺装置(防護柵装置)は、図1に符号A1で例示するものであって、所定の間隔D12を隔てた位置に立設されてなる2本の第1及び第2支柱1,2と、それらの2本の支柱1,2の間に張設された長尺部材3A,…と、を備えている。そして、これらの支柱1,2は上下に延びる内部空間B1,B2を有している。なお、本明細書においては、説明の便宜上、前記第1支柱1の内部空間B1を“第1内部空間”と称することとし、前記第2支柱2の内部空間B2を “第2内部空間”と称することとする。また、前記第1支柱1と前記第2支柱2との間の間隔D12を“支柱間隔”と称することとする。
【0022】
ところで、前記長尺部材3A,…は、可撓性を有するものであり、具体的には、樹脂や繊維やワイヤ(例えば、ステンレス製のワイヤ)で形成されたロープ又は帯体を挙げることができる。なお、図1に示す例では、長尺部材3A,…の数は4本であるが、もちろんこれに限られるものではなく、4本以外の複数本であっても、或いは、複数本ではなく1本であってもよい。
【0023】
一方、前記第1内部空間B1には、上方及び下方の両方に(或いは少なくとも下方に)移動自在となるように第1重りW1が配置されており、前記第2内部空間B2には、上方及び下方の両方に(或いは少なくとも上方に)移動自在となるように第2重りW2が配置されている。これらの第1及び第2重りW1,W2の移動を円滑にするために、前記第1支柱1の内壁には該第1重りW1をガイドする第1重りガイドG3を配置しておけばよく、前記第2支柱2の内壁には前記第2重りW2をガイドする第2重りガイドG4を配置しておけばよい。図1、2及び4に例示する重りガイドG3,G4は、支柱1,2の内壁から突出する突条部であるが、もちろんこれに限られるものではなく、その他の形状(例えば、溝状部)であってもよい。なお、これらの重りW1,W2の移動ストロークは、例えば、500mm以上にすると良い。また、これらの重りW1,W2の移動ストロークを十分に確保したい場合には、前記支柱1,2の下端部を床部や地面に埋め込むようにすると良い。
【0024】
また、前記第1支柱1には、該第1支柱1の内外を貫通する第1孔部1a1,…が形成されており、前記第2支柱2には、該第2支柱2の内外を貫通する第2孔部2a1,…が形成されている。そして、前記長尺部材3A,…は、これらの第1孔部1a1,…及び第2孔部2a1,…にそれぞれ挿通されており、該長尺部材3A,…の一端部近傍3A1,…は前記第1内部空間B1内の前記第1重りW1に連結され、前記長尺部材3A,…の他端部近傍3A2,…は前記第2内部空間B2内の前記第2重りW2に連結されている。なお、前記第1孔部1a1,…は、前記第1支柱1の側壁であって前記第2支柱2に対向する側の側壁に配置することが好ましいが、他の側壁(つまり、該第2支柱2に対向しない側壁)に配置する実施態様を排除するものではない。また、前記第2孔部2a1,…も同様であって、前記第2支柱2の側壁であって前記第1支柱1に対向する側の側壁に配置することが好ましいが、他の側壁(つまり、該第1支柱1に対向しない側壁)に配置する実施態様を排除するものではない。
【0025】
本発明によれば、地震やその他の何らかの影響により前記第1支柱1と前記第2支柱2とが近づいて支柱間隔D12が狭くなるような場合には、前記第1内部空間B1内の前記第1重りW1は下方に移動するため、該第1支柱1と該第2支柱2との間の前記長尺部材3A,…はぴんと張られた状態が維持される。また、逆に、地震やその他の何らかの影響により前記第1支柱1と前記第2支柱2とが離れて支柱間隔D12が広くなるような場合には、前記第2内部空間B2内の前記第2重りW2は上方に移動するため、前記長尺部材3A,…は切断されることが無く、張設状態(つまり、前記第1支柱1と前記第2支柱2との間においてぴんと張られた状態)も維持されることとなる。したがって、いずれの場合においても、該第1支柱1と該第2支柱2との間の前記長尺部材3A,…はぴんと張られた状態が維持され、手摺(防護柵)としての機能が維持される。この効果は、前記第1支柱及び/又は前記第2支柱がx方向、y方向及びz方向のいずれの方向に移動した場合にも得ることができる。また、上方へ移動自在となるように配置されている重りの重量(つまり、上方へ移動自在となるように配置されている重りが前記第2重りW2のみである場合には該第2重りW2の重量であり、上方へ移動自在となるように配置されている重りが前記第1重りW1及び前記第2重りW2の両方である場合にはそれらの重りW1とW2の合計重量)を適切な値(例えば、20〜100kg程度)に設定しておくことによって、該第1支柱1と該第2支柱2との間の前記長尺部材3A,…を人が押したり引いたりしても容易に撓まないようにでき、該長尺部材3A,…に手摺としての機能を果たさせることができる。
【0026】
ここで、前記第1重りW1と前記第2重りW2とは同じ重さにしておいても良いが、該第2重りW2が該第1重りW1よりも重くなるように設定しておいても良い。そのようにした場合には、該第2重りW2は前記第2内部空間B2にて定位置に配置されることとなる。そして、該第2重りW2の位置がその定位置よりも低くなった場合には前記長尺部材3A,…が伸びている等の要因が考えられ、該第2重りW2が定位置にあるか否かをチェックすることによって前記手摺装置A1が正常な状態かどうかを確かめることができる。なお、前記第2支柱2の側壁部に小窓部(透明なのぞき窓)を設けておいて、前記第2重りW2が定位置にあるか否かを外部から容易にチェックできるようにすると良い。
【0027】
ところで、前記長尺部材3A,…を介して前記第2重りW2に所定未満の引き上げ力(つまり、上方向の力)が作用したとしても該重りW2を保持して該重りW2の上方向への移動を阻止し、該重りW2に所定以上の引き上げ力が作用した場合には該重りW2を解放して該重りW2の上昇を許容するようなもの(以下、“第2重り保持手段”とする)4を該第2重りW2に取り付けておくと良い。この第2重り保持手段4としては種々の構造のものを挙げることができる。例えば、前記第2支柱2の第2内部空間B2の下端部近傍の壁(下壁や側壁)と前記第2重りW2とを連結するロープやその他の係止部材であって、該重りW2に所定以上の引き上げ力が作用した場合には破断や破壊が起きるようにしたものを挙げることができる。また、前記第2支柱2の側に配置した磁石であって、前記第2重りW2に作用する引き上げ力が所定未満の場合には該第2重りW2を吸着した状態であり該引き上げ力が所定以上の場合には該第2重りW2を解放するようなものを挙げることができる。なお、この場合、前記第1重りW1は、前記第1内部空間B1の上端部近傍に配置しておくと良い。また、前記第2重り保持手段4が前記第2重りW2の上昇を許容する際の閾値(前記引き上げ力の閾値)は、地震等により前記支柱間隔D12が広がろうとした場合に前記長尺部材3A,…に作用する張力の最小値(例えば、100kg)にすれば良い。そのようにした場合には、前記第1支柱1と前記第2支柱2との間に張設された前記長尺部材3A,…に人が寄りかかった程度では該長尺部材3A,…は弛まず、安全性を確保できる。また、地震等により前記支柱間隔D12が広がろうとした場合には前記長尺部材3A,…は切断されることなく前記各支柱1,2の移動を許容することができる。
【0028】
ところで、図1に例示するように、上述した長尺部材3A,…は、複数本とし、前記第1支柱1と前記第2支柱2との間においては上下に所定の間隔Dを隔てて配置すると良い。また、前記第1孔部1a1,…は、上下に所定の間隔Dを隔てて前記第1支柱1に複数形成され、前記第2孔部2a1,…は、上下に所定の間隔Dを隔てて前記第2支柱2に複数形成されていると良い。さらに、前記複数本の長尺部材3A,…をそれぞれ摺動自在に支持する第1ガイド手段G1を前記第1内部空間B1の上端部近傍(つまり、前記第1内部空間B1の最上端や、最上端の近傍)に配置し、該複数本の長尺部材3A,…をそれぞれ摺動自在に支持する第2ガイド手段G2を前記第2内部空間B2の上端部近傍(つまり、前記第2内部空間B2の最上端や、最上端の近傍)に配置しておくと良い。そして、該第1ガイド手段G1は、前記複数の第1孔部1a1,…から侵入してきた前記複数本の長尺部材3A,…が摺動自在に巻き掛けられて下方に垂下せしめるようにすると良く、該第2ガイド手段G2は、前記複数の第2孔部2a1,…から侵入してきた前記複数本の長尺部材3A,…が摺動自在に巻き掛けられて下方に垂下せしめるようにすると良い。またさらに、前記第1ガイド手段G1から垂下されてきた前記複数本の長尺部材3A,…の下端部近傍は1つの前記第1重りW1に連結し、前記第2ガイド手段G2から垂下されてきた前記複数本の長尺部材3A,…の下端部近傍は1つの前記第2重りW2に連結すると良い。そのようにした場合には、各長尺部材3A,…の伸び代や縮み代を大きく取ることができる。なお、図1に示す例では、各長尺部材3A,…や各第1孔部1a1,…や各第2孔部2a1,…はそれぞれ等間隔に配置されているが、もちろんこれに限られるものではなく、異なる間隔で配置されていても良い。また、前記第1ガイド手段G1や前記第2ガイド手段G2は、前記長尺部材3A,…を急に湾曲(つまり、小さな曲率半径で湾曲)させるのではなく緩やかに湾曲(つまり、大きな曲率半径で湾曲)させるような形状であると良い。ここで、図2及び3に例示する第1及び第2ガイド手段G1,G2は、フック状の部材を1本の長尺部材3A,…に対して2個ずつ設けたものであるが、もちろんこれに限られるものではない。例えば、各ガイド手段として滑車を用いても良く、各長尺部材3A,…が挿通される略U字状のパイプ部材を用いても良い。
【0029】
ところで、前記第1支柱1の側壁に1つ又は複数のボールジョイント(以下、“第1ボールジョイント”と称する)1b1,…を揺動自在に取り付けると共に前記第1孔部1a1,…を該第1ボールジョイント1b1,…に形成しておき、前記第2支柱2の側壁に1つ又は複数のボールジョイント(以下、“第2ボールジョイント”と称する)2b1,…を揺動自在に取り付けると共に前記第2孔部2a1,…を該第2ボールジョイント2b1,…に形成しておいて、前記長尺部材3A,…が、該第1ボールジョイント1b1,…及び該第2ボールジョイント2b1,…によって揺動自在及び出入り自在に支持されるようにしておくと良い。そのようにした場合には、前記第1支柱1及び/又は前記第2支柱2がx方向、y方向及びz方向のいずれに移動したとしても、その方向に前記長尺部材3A,…を追随させることができる。
【0030】
なお、上述した第1支柱1及び第2支柱2は、柱状の形状に限るものではなく、壁状やその他の形状のものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係る手摺装置は、免震装置を有する建物だけでなく、一方の床部が他方の床部に対して相対的に移動する可能性がある箇所であれば使用でき、そのような箇所としては、例えば、他方の床部が移動するような遊具、岸壁と該岸壁に係留されている船などを挙げることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 第1支柱
1a1,… 第1孔部
1b1,… 第1ボールジョイント
2 第2支柱
2a1,… 第2孔部
2b1,… 第2ボールジョイント
3A,… 長尺部材
3A1,… 長尺部材の一端部近傍
3A2,… 長尺部材の他端部近傍
4 第2重り保持手段
A1 手摺装置
B1 第1内部空間
B2 第2内部空間
12 間隔(支柱間隔)
G1 第1ガイド手段
G2 第2ガイド手段
W1 第1重り
W2 第2重り
図1
図2
図3
図4
図5