(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6789066
(24)【登録日】2020年11月5日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】電磁弁、及び飲料供給装置
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20201116BHJP
B67D 1/07 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
F16K31/06 305K
B67D1/07
【請求項の数】20
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-212416(P2016-212416)
(22)【出願日】2016年10月31日
(65)【公開番号】特開2018-71663(P2018-71663A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100098523
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100141025
【弁理士】
【氏名又は名称】阿久津 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】高橋 時夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 隆治
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】柄崎 英夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一司
【審査官】
北村 一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−207604(JP,A)
【文献】
特開2016−113177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06−31/11
B67D 1/00− 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁箱と、前記弁箱に飲料を流入する入口ポートと、前記弁箱から飲料を流出する出口ポートと、前記入口ポート及び前記出口ポートの間で前記弁箱に収容される可動心部と、前記可動心部の一端側に設けられ前記出口ポートを閉鎖するシール部と、前記可動心部の他端側に設けられ前記出口ポートを閉鎖するように前記シール部を付勢する付勢部材とを備える、電磁弁であって、
前記電磁弁は、前記入口ポートから前記出口ポートまでの間で飲料を流すポート間流路と、前記出口ポート側で前記ポート間流路に接続される循環ポートとを備え、
前記シール部が前記出口ポートを閉鎖した状態で、前記入口ポート及び前記循環ポートの間で、前記ポート間流路を介して殺菌媒体が流通し、
前記弁箱は、前記可動心部を進退自在に収容する大径管部を備え、前記大径管部の直径は、前記入口ポート及び/又は前記出口ポートの直径より大きい、電磁弁。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁弁において、前記ポート間流路は、前記弁箱の内面または前記可動心部の外面に形成された1又は複数の溝部であるか、前記ボディ部の内面及び前記可動心部の外面の間に形成された空間である、電磁弁。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電磁弁において、前記循環ポートは、前記出口ポートに隣接する前記弁箱の側壁に設けられる、電磁弁。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電磁弁において、前記循環ポートは、前記電磁弁の長手方向に対して所定の角度をなして配置される、電磁弁。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の電磁弁において、前記可動心部が可動鉄心部であり、前記電磁弁は前記可動鉄心部を磁力で移動するためのコイル部を備える、電磁弁。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の電磁弁において、前記付勢部材はスプリングであり、前記電磁弁は前記スプリングを収容する収容部を備える、電磁弁。
【請求項7】
請求項6に記載の電磁弁において、前記収容部は、前記可動心部の前記他端側に設けられた凹状収容部であり、前記入口ポート及び前記凹状収容部の間に前記スプリングが収容される、電磁弁。
【請求項8】
請求項7に記載の電磁弁において、前記凹部状収容部には1つまたは複数のスリットが設けられ、前記スリットを介して前記ポート間流路及び前記入口ポートが連通される、電磁弁。
【請求項9】
請求項6に記載の電磁弁において、前記電磁弁は、前記入口ポートから前記弁箱内に延長する延長管部を備え、前記収容部は、前記延長管部と前記弁箱との間に形成される環状収容部である、電磁弁。
【請求項10】
請求項9に記載の電磁弁において、前記延長管部には1つまたは複数のスリットが設けられ、前記スリットを介して前記ポート間流路及び前記入口ポートが連通される、電磁弁。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の電磁弁において、前記延長管部はその末端に開口が設けられ、前記開口を介して前記ポート間流路及び前記入口ポートが連通される、電磁弁。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の電磁弁において、前記循環ポートは前記弁箱の下部に設けられる、電磁弁。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の電磁弁において、前記殺菌媒体は、熱水である、電磁弁。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の電磁弁を備える、飲料供給装置。
【請求項15】
請求項14に記載の飲料供給装置において、前記循環ポート又は前記入口ポートに接続される管路に加熱部材を備える、飲料供給装置。
【請求項16】
請求項15に記載の飲料供給装置において、前記シール部が前記出口ポートを閉鎖した状態で、前記加熱部材の加熱により生成した殺菌媒体が、前記循環ポート又は前記入口ポートを介して、前記電磁弁内に供給される、飲料供給装置。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の飲料供給装置において、前記殺菌媒体が前記加熱部材に加熱されて生じた対流により、前記循環ポート又は前記入口ポートを介して、前記電磁弁内に供給される、飲料供給装置。
【請求項18】
請求項14〜17のいずれか一項に記載の飲料供給装置において、前記電磁弁に殺菌媒体を循環させる循環管路を備える、飲料供給装置。
【請求項19】
請求項14〜18のいずれか一項に記載の飲料供給装置であるウォータサーバ。
【請求項20】
請求項19に記載のウォータサーバは、冷水供給部側に前記電磁弁を備える、ウォータサーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉鎖状態でシール部を殺菌可能な電磁弁、及びこの電磁弁を備えたウォータサーバ等の飲料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料供給装置であるウォータサーバは、配管系統中に飲料水を貯留するタンクを有し、前記配管系統を殺菌処理する手段として、前記タンクの飲料水を殺菌可能な温度に加熱するための加熱手段と、前記タンク内の高温水を前記配管系統に向けて供給させるポンプと、前記ポンプによって前記配管系統に送られた前記高温水を再び前記タンクに戻すための循環管路とを備えるものが提案されている。
【0003】
このようなウォータサーバは、上記ポンプや、自然循環(対流)によって高温水を配管系統に供給させる形態の殺菌処理を定期的に実施させることで、配管系統を微生物の繁殖していない状態に維持するものである。
【0004】
上記ウォータサーバの一例を
図7を用いて説明する。ウォータサーバ100は、飲料水容器102と、飲料水容器102から落下した飲料水を受け入れる冷水タンク103と、冷水タンク103から飲料水を受け入れる温水タンク105と、冷水タンク103内の冷水を飲料容器等に注水する冷水注水部107と、温水タンク105内の温水を飲料容器等に注水する温水注水部120とを備える。なお、温水タンク105には図示しないヒータが設けられ、冷水タンク103には図示しない冷却機が設けられている。ウォータサーバ100の冷水注水部107には、次の
図8に示す電磁弁110が設けられる。
【0005】
図8に示すように、電磁弁110はボディ部111を備え、このボディ部111は、飲料水が流入する入口ポート111aと、入口ポート111aに接続される弁箱111dと、弁箱111dに接続される出口ポート111bとを備える。
【0006】
電磁弁110は、弁箱111d内に配置され入口ポート111aと出口ポート111bとの間の管路を開閉するダイヤフラム(弁体)119と、ダイヤフラム119に接続される可動鉄心部113と、可動鉄心部113を磁力で移動するためのコイル部115と、可動鉄心部113及びダイヤフラム119を弁座111eに向けて付勢するスプリング117と、出口ポート111bに接続される注水口部118とを備える。
【0007】
図8に示すように電磁弁110が閉鎖すると、ダイヤフラム119のシール面119aが弁座111eに着座して、弁座111eの前後の流れを遮断する。この状態で、殺菌用の熱水が電磁弁110の循環ポート111cから入口ポート111aに流れる。しかし、このような電磁弁110の構造では、循環水洗浄時に熱水がダイヤフラム119のシール面119aの近傍まで流入しないため、電磁弁の殺菌に必要な温度まで上昇するのに時間がかかっていた。さらに、熱水が直接接触しないダイヤフラム119の外周部119bの下方には空間が形成されており、特にこの空間における殺菌に必要な温度まで上昇するのに時間がかかっていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2012/165775号
【特許文献2】特開2013−180803号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図8に示したように、熱水洗浄時の流路が電磁弁主要部(ダイヤフラム119のシール面119a、外周部119b)を通過しないため、電磁弁の殺菌に時間を要するため、エネルギー効率が悪くなっている。さらに、熱水が直接接触しないダイヤフラムの外周部には空間を有しており、特にこの空間における殺菌のためのエネルギー効率が悪かった。
【0010】
本発明は、電磁弁の内部が十分に殺菌可能で、かつ、殺菌効率の良い電磁弁及び飲料供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、次の通り構成される。
(態様1)弁箱と、前記弁箱に飲料を流入する入口ポートと、前記弁箱から飲料を流出する出口ポートと、前記入口ポート及び前記出口ポートの間で前記弁箱に収容される可動心部と、前記可動心部の一端側に設けられ前記出口ポートを閉鎖するシール部と、前記可動心部の他端側に設けられ前記出口ポートを閉鎖するように前記シール部を付勢する付勢部材とを備える、電磁弁であって、前記電磁弁は、前記入口ポートから前記出口ポートまでの間で飲料を流すポート間流路と、前記出口ポート側で前記ポート間流路に接続される循環ポートとを備え、前記シール部が前記出口ポートを閉鎖した状態で、前記入口ポート及び前記循環ポートの間で、前記ポート間流路を介して殺菌媒体が流通する、電磁弁。(態様2)態様1に記載の電磁弁において、前記ポート間流路は、前記弁箱の内面または前記可動心部の外面に形成された1又は複数の溝部であるか、前記ボディ部の内面及び前記可動心部の外面の間に形成された空間である、電磁弁。(態様3)態様1または2に記載の電磁弁において、前記循環ポートは、前記出口ポートに隣接する前記弁箱の側壁に設けられる、電磁弁。(態様4)態様1〜3のいずれか一項に記載の電磁弁において、前記循環ポートは、前記電磁弁の長手方向に対して所定の角度をなして配置される、電磁弁。
【0012】
(態様5)態様1〜4のいずれか一項に記載の電磁弁において、前記弁箱には、前記可動心部を進退自在に収容する大径管部を備え、前記大径管部の直径は、前記入口ポート及び/又は前記出口ポートの直径より大きい、電磁弁。(態様6)態様1〜5のいずれか一項に記載の電磁弁において、前記可動心部が可動鉄心部であり、前記電磁弁は前記可動鉄心部を磁力で移動するためのコイル部を備える、電磁弁。(態様7)態様1〜6のいずれか一項に記載の電磁弁において、前記付勢部材はスプリングであり、前記電磁弁は前記スプリングを収容する収容部を備える、電磁弁。(態様8)態様7に記載の電磁弁において、前記収容部は、前記可動心部の前記他端側に設けられた凹状収容部であり、前記入口ポート及び前記凹状収容部の間に前記スプリングが収容される、電磁弁。(態様9)態様8に記載の電磁弁において、前記凹部状収容部には1つまたは複数のスリットが設けられ、前記スリットを介して前記ポート間流路及び前記入口ポートが連通される、電磁弁。(態様10)態様7に記載の電磁弁において、前記電磁弁は、前記入口ポートから前記弁箱内に延長する延長管部を備え、前記収容部は、前記延長管部と前記弁箱との間に形成される環状収容部である、電磁弁。(態様11)態様10に記載の電磁弁において、前記延長管部には1つまたは複数のスリットが設けられ、前記スリットを介して前記ポート間流路及び前記入口ポートが連通される、電磁弁。
【0013】
(態様12)態様10又は11に記載の電磁弁において、前記延長管部はその末端に開口が設けられ、前記開口を介して前記ポート間流路及び前記入口ポートが連通される、電磁弁。(態様13)態様1〜12のいずれか一項に記載の電磁弁において、前記循環ポートは前記弁箱の下部に設けられる、電磁弁。(態様14)態様1〜13のいずれか一項に記載の電磁弁において、前記殺菌媒体は、熱水である、電磁弁。(態様15)態様1〜14のいずれか一項に記載の電磁弁を備える、飲料供給装置。(態様16)態様15に記載の飲料供給装置において、前記循環ポート又は前記入口ポートに接続される管路に加熱部材を備える、飲料供給装置。(態様17)態様16に記載の飲料供給装置において、前記シール部が前記出口ポートを閉鎖した状態で、前記加熱部材の加熱により生成した殺菌媒体が、前記循環ポート又は前記入口ポートを介して、前記電磁弁内に供給される、飲料供給装置。(態様18)態様16又は17に記載の飲料供給装置において、前記殺菌媒体が前記加熱部材に加熱されて生じた対流により、前記循環ポート又は前記入口ポートを介して、前記電磁弁内に供給される、飲料供給装置。(態様19)態様15〜18のいずれか一項に記載の飲料供給装置において、前記電磁弁に殺菌媒体を循環させる循環管路を備える、飲料供給装置。(態様20)態様15〜19のいずれか一項に記載の飲料供給装置であるウォータサーバ。(態様21)態様20に記載のウォータサーバは、冷水供給部側に前記電磁弁を備える、ウォータサーバ。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、電磁弁の閉鎖状態で電磁弁内部を確実に殺菌できる。さらに、本発明は、電磁弁の閉鎖状態で、シール部周囲、溝部、及び付勢部材も確実に殺菌できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る電磁弁の閉鎖状態の断面図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る電磁弁の閉鎖状態の断面図である。
【
図5】第1の実施形態の電磁弁を有する第1の循環管路を示す構造図である。
【
図6】第1の実施形態の電磁弁を有する第2の循環管路を示す構造図である。
【
図7】従来のウォータサーバの給水構造を示す模式図である。
【
図8】従来のウォータサーバに用いる電磁弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の電磁弁及び飲料供給装置を、ウォータサーバ用電磁弁及びウォータサーバに適用した各実施形態を以下説明する。なお、本発明の各実施形態のウォータサーバの給水構造は、
図7のウォータサーバと同様であるが、
図7のウォータサーバの電磁弁に換えて、後述する各実施形態の電磁弁を備える。本発明の各実施形態の電磁弁及びウォータサーバは、流路の殺菌時に電磁弁のシール部の周囲を殺菌できる電磁弁を有する。
【0017】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るウォータサーバ用電磁弁を、
図1及び2を用いて説明する。電磁弁10は、後述のシール部19等の弁体を収容すると共にシール部19により開閉される流路を構成する弁箱11を備え、弁箱11は、飲料水が流入する入口ポート11aと、飲料水が流出する出口ポート11bと、殺菌媒体(熱水、温水または殺菌剤)が循環する循環ポート11cと、各ポートに連通する大径管部11dとをそれぞれ備える。弁箱11において、入口ポート11a、大径管部11d、及び出口ポート11bは直線状に配置され、循環ポート11cは、出口ポート11b側で、電磁弁10の長手方向に対して所定の角度をなして大径管部11dに接続される。所定の角度は、好ましくは、45度から135度の範囲、より好ましくは80度から100度の範囲、さらに好ましくはほぼ直角とすることができる。大径管部11dの内径は、各ポートの内径より大きく形成される。
図1及び2に示すように、循環ポート11cは、出口ポート11bに隣接する弁箱11の側壁に設けられる。
【0018】
また、電磁弁10は、大径管部11dの内面に当接しつつ、その長手方向に沿って進退可能な可動鉄心部13と、大径管部11d内で可動鉄心部13の一端(左端)に設けられ、出口ポート11bを閉鎖可能なシール部19と、可動鉄心部13を出口ポート11bに向けて付勢するリターンスプリング(付勢部材)17と、大径管部11dの外側に配置され、可動心部13を磁力で移動するためのコイル部15とを備える。なお、スプリング17は、可動心部13の他端(右端)と入口ポート11aとの間に設けられる。
【0019】
シール部19はゴム等の可撓性部材から円盤状に形成される。シール部19の直径は、可動鉄心部13の直径よりも小さく、出口ポート11bの開口直径よりも大きい。可動鉄心部13は、細長い円柱状であり、その外周曲面上に長手方向に沿って水が流通可能な1つまたは複数の溝部13aが形成される。溝部13aによって、入口ポート11a及び出口ポート11bの間を接続するポート間流路が構成される。また、溝部は、可動鉄心部13の外面でなく、大径管部11dの内面に、その長手方向に沿って1つまたは複数形成してもよい。さらに、溝部を形成せずに、弁箱11の内面と可動鉄心部13の外面との間に、入口ポートから出口ポートまで空間を形成することにより、ポート間流路を構成してもよい。可動鉄心部13の他端(
図1の右端)には、スプリング17を収容する凹状の収容部13bが形成される。可動鉄心部13の、溝部13a及び収容部13bが重なる部分には、水を流通可能とする複数のスリット13cが形成される。
【0020】
電磁弁10の閉鎖状態における殺菌媒体の流れを説明する。
図1に示すように、電磁弁10は、可動鉄心部13及びシール部19が前進してシール部19が出口ポート11bを閉鎖した閉鎖状態にある。この閉鎖状態で、順流や逆流で殺菌媒体(熱水、温水または殺菌剤)を流すことができる。具体的には、順流として、殺菌媒体が電磁弁10の入口ポート11aに流入すると、殺菌媒体は、収容部13b、複数のスリット13c、複数の溝部13a、シール部19の周囲、循環ポート11cの順に流れ、電磁弁10の外部に流出して、後述する循環管路を通って循環する。また、逆流として、殺菌媒体が電磁弁10の循環ポート11cに流入すると、殺菌媒体は、シール部19の周囲、複数の溝部13a、複数のスリット13c、収容部13b、入口ポート11aの順に流れ、電磁弁10の外部に流出して、後述する循環管路を通って循環する。第1実施形態においては、殺菌媒体を、順流のみで流すか、逆流のみで流すか、または、順流及び逆流を交互に切換えて流すことができる。
【0021】
次に、電磁弁10の開放状態における飲料水の流れを説明する。
図2に示すように、電磁弁10は、可動鉄心部13及びシール部19が後退してシール部19が出口ポート11bを開放した開放状態にある。この開放状態で、図示しない冷水タンクから飲料水(冷水)が電磁弁10の入口ポート11aに流入すると、飲料水は、収容部13b、複数のスリット13c、複数の溝部13a、シール部19の周囲を順に通って、出口ポート11bから電磁弁10の外部(冷水注水部)に流出する。なお、循環ポート11cに接続される管路は図示しない弁により閉鎖等されるため、飲料水は循環ポート11c側には流出しない。
【0022】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る電磁弁20を
図3及び4を用いて説明する。電磁弁20は、後述のシール部29等の弁体を収容すると共にシール部29により開閉される流路を構成する弁箱(ボディ部)21を備え、弁箱21は、飲料水が流入する入口ポート21aと、飲料水が流出する出口ポート21bと、殺菌媒体(熱水、温水または殺菌剤)が循環する循環ポート21cと、各ポートに連通する大径管部21dとをそれぞれ備える。弁箱21において、入口ポート21a、大径管部21d、及び出口ポート21bは直線状に配置され、循環ポート21cは、出口ポート21b側で、電磁弁10の長手方向に対して前記所定の角度をなして大径管部21dに接続される。さらに、
図3及び4に示すように、循環ポート21cは、出口ポート21bに隣接する弁箱21の側壁に設けられる。
【0023】
また、電磁弁20は、大径管部21dの内面に当接しつつ、その長手方向に沿って進退可能な可動鉄心部23と、大径管部21d内で可動鉄心部23の一端(左端)に設けられ、出口ポート21bを閉鎖可能なシール部29と、可動鉄心部23を出口ポート21bに向けて付勢するリターンスプリング(付勢部材)27と、大径管部21dの外側に配置され、可動心部23を磁力で移動するためのコイル部25とを備える。なお、スプリング27は、大径管部21d内で可動心部23の他端(右端)及び入口ポート21aの間に設けられる。
【0024】
シール部29はゴム等の可撓性部材から円盤状に形成される。シール部29は、さらにフランジ部29aを有し、フランジ部29aの直径は、可動鉄心部23の直径よりも小さく、出口ポート21bの直径よりも大きい。可動鉄心部23は、細長い円柱状であり、その外周曲面上に長手方向に沿って水が流通可能な1つまたは複数の溝部23aが形成される。溝部23aによって、入口ポート21a及び出口ポート21bの間を接続するポート間流路が構成される。なお、溝部は、可動鉄心部23の外面でなく、大径管部21dの内面に1つまたは複数形成してもよい。さらに、溝部を形成せずに、弁箱21の内面と可動鉄心部23の外面との間に、入口ポートから出口ポートまで空間を形成することにより、ポート間流路を構成してもよい。可動鉄心部23の他端(
図3の右端)側では、入口ポート21aの管路を大径管部21d内まで延長した延長管部21a1が設けられる。入口ポート21aの延長管部21a1の外面と、大径管部21dの内面との間に形成された環状空間がスプリング27を収容する収容部21eを構成する。可動鉄心部23に対向する延長管部21a1の端面には、開口21a2が形成される。延長管部21a1の周囲には、大径管部21dの長手方向に平行に1つまたは複数のスリット21a3が形成される。開口21a2及びスリット21a3により、入口ポート21aと大径管部21d内部との間で水が流通可能となる。
【0025】
電磁弁20の閉鎖状態における殺菌媒体の流れを説明する。
図3に示すように、電磁弁20は、可動鉄心部23及びシール部29が前進してシール部29が出口ポート21bを閉鎖した閉鎖状態にある。この閉鎖状態で、順流や逆流で殺菌用の殺菌媒体(熱水、温水または殺菌剤)を流すことができる。具体的には、順流として、殺菌媒体が電磁弁20の入口ポート21aに流入すると、殺菌媒体は、開口21a2及び複数のスリット21a3、収容部21e、複数の溝部23a、シール部29の周囲の順に流れ、電磁弁20の外部に流出して、後述する循環管路を通って循環する。また、逆流として、殺菌媒体が電磁弁20の循環ポート21cに流入すると、殺菌媒体は、シール部29の周囲、複数の溝部23a、収容部21e、開口21a2及び複数のスリット21a3、入口ポート21aの順に流れ、電磁弁20の外部に流出して、後述する循環管路を通って循環する。第2実施形態においても、殺菌媒体を、順流のみで流すか、逆流のみで流すか、または、順流及び逆流を交互に切換えて流すことができる。
【0026】
次に、電磁弁20の開放状態における飲料水の流れを説明する。
図4に示すように、電磁弁20は、可動鉄心部23及びシール部29が後退してシール部29が出口ポート21bを開放した開放状態にある。この開放状態で、図示しない冷水タンクから飲料水(冷水)が電磁弁20の入口ポート21aに流入すると、飲料水は、延長管部21a1、複数のスリット21a3、収容部12e、複数の溝部23a、シール部29の周囲を順に通って、出口ポート21bから電磁弁20の外部に流出する。なお、循環ポート21cに接続される循環路は図示しない弁により閉鎖等されるため、飲料水は循環ポート21c側には流出しない。
【0027】
(循環管路)
次に、第1の実施形態の電磁弁10を循環管路に接続した状態を
図5及び6を用いて説明する。
図5及び6において、電磁弁10はいずれも閉鎖状態とされている。なお、
図5及び6では、各循環管路に第1の実施形態の電磁弁10を配置したが、各循環管路に第2の実施形態の電磁弁20を同様に配置することも可能である。
【0028】
図5(a)を用いて循環管路30を説明する。循環管路30には、循環ポート11cに接続される管路の下方にヒータ(加熱部材)31が設けられる。電磁弁10は横型に配置されるため、入口ポート11a及び出口ポート11bが横方向に並び、循環ポート11cが下方向を向いている。循環管路30で殺菌を行う際は、ヒータ31が管路内の水を加熱すると、水が加熱されて殺菌媒体(熱水)となり対流により管路を上昇して、循環ポート11c、電磁弁10の内部、入口ポート11aの順に循環する。
【0029】
図5(b)を用いて循環管路40を説明する。循環管路40には、循環ポート11cに接続される管路の下方にヒータ41(加熱部材)が設けられる。電磁弁10は縦型に配置されるため、入口ポート11a及び出口ポート11bが縦方向に並び、循環ポート11cが横方向を向いている。循環管路40で殺菌を行う際は、ヒータ41が管路内の水を加熱すると、水が加熱されて殺菌媒体(熱水)となり対流により管路を上昇して、循環ポート11c、電磁弁10の内部、入口ポート11aの順に循環する。
【0030】
図6(a)を用いて循環管路50を説明する。循環管路50には、入口ポート11aに接続される管路から下方に分岐する管路にヒータ(加熱部材)51が設けられる。電磁弁10は横型に配置されるため、入口ポート11a及び出口ポート11bが横方向に並び、循環ポート11cが下方向を向いている。循環管路50で殺菌を行う際は、ヒータ51が管路内の水を加熱すると、水が加熱されて殺菌媒体(熱水)となり対流により管路を上昇して、入口ポート11a、電磁弁10の内部、循環ポート11cの順に循環する。
【0031】
図6(b)を用いて循環管路60を説明する。循環管路60には、入口ポート11aに接続される管路から下方に分岐する管路にヒータ(加熱部材)61が設けられる。電磁弁10は縦型に配置されるため、入口ポート11a及び出口ポート11bが縦方向に並び、循環ポート11cが横方向を向いている。循環管路60で殺菌を行う際は、ヒータ61が管路内の水を加熱すると、水が加熱されて殺菌媒体(熱水)となり対流により管路を上昇して、入口ポート11a、電磁弁10の内部、循環ポート11cの順に循環する。
【0032】
本発明の第1及び第2の実施形態の電磁弁は、出口ポート及び出口ポートを閉鎖する側のシール部の表面を除く、電磁弁の内部表面の全てにおいて、殺菌媒体を循環することができるため、短い時間で効率良く電磁弁全体を殺菌温度に加熱することができ、適切な殺菌効果を得ることとともに、殺菌に必要なエネルギーを従来よりも削減することができる。
なお、本発明の第1及び第2の実施形態において、電磁弁10または20を備える飲料供給装置として、水を供給するウォータサーバを記載したが、本発明はウォータサーバに限定されず、例えば、清涼飲料水を供給する飲料供給装置に適用してもよい。さらに、本発明の第1及び第2の実施形態において、電磁弁10または20が飲料供給装置に設けられたが、これに限定されず、当該電磁弁を飲料でない任意の液体を供給する液体供給装置に設けることもできる。
【符号の説明】
【0033】
10 電磁弁
11 弁箱
11a 入口ポート
11b 出口ポート
11c 循環ポート
11d 大径管部
13 可動鉄心部
13a 溝部(ポート間流路)
13b スリット
15 コイル部
17 スプリング(付勢部材)
19 シール部(弁体)
20 電磁弁
21 弁箱
21a 入口ポート
21b 出口ポート
21c 循環ポート
21d 大径管部
21a1 延長管部
21a2 開口
21a3 スリット
23 可動鉄心部
25 コイル部
27 スプリング(付勢部材)
29 シール部(弁体)
29a フランジ部
30 循環管路
31 ヒータ(加熱部材)
40 循環管路
41 ヒータ(加熱部材)
50 循環管路
51 ヒータ(加熱部材)
60 循環管路
61 ヒータ(加熱部材)