(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態に係るワーク加工装置を、実施例であるタレットパンチプレス機械51(以下、プレス機械51とも称する)により説明する。
【0014】
まず、
図1〜
図3を参照してプレス機械51の構成を説明する。
図1は、プレス機械51の全体構成を説明するための平面図である。
図2は、プレス機械51が備えるワークテーブル装置52におけるワーク支持部WSとしてのブラシ6の配列を説明するための部分平面図である。
図3は、ブラシ6の支持構造を説明するための、
図2におけるS3−S3位置での断面図である。
説明の便宜上、
図1に示されるように、前後左右方向を規定する。そして、左右方向をX軸方向、前後方向をY軸方向とも称する。また、
図1の紙面表方が上方、裏方が下方となる(Z軸方向)。
【0015】
図1及び
図2に示されるように、プレス機械51は、ワークWを支持するための複数のワーク支持部WSを有するワークテーブル装置52を備えている。
また、プレス機械51は、ワークテーブル装置52の上方に位置し、左右方向のほぼ中央位置において前後方向に延びて固定されたフレーム1と、フレーム1に固定されたタレット部2を含むブランク加工部BKと、を有する。
ブランク加工部BKは、ワークテーブル装置52上のワークWに対しブランク加工を施す部分である。
【0016】
また、プレス機械51は、フレーム1とワークテーブル装置52との上下間において前後方向に移動可能とされ左右方向に延びるキャリッジベース3と、キャリッジベース3において左右方向に移動可能に支持されたワークキャリッジ4と、を有する。
【0017】
ワークキャリッジ4には、複数のクランパ5が備えられている。クランパ5は、その斜視図である
図8に示されるように、前方に突出して板状のワークWを厚さ方向(上下方向)に把持する上ジョー5a及び下ジョー5b(
図8参照)を有する
図1では、ワークWの後縁部を二つのクランパ5で把持した状態が示されている。
上述の構成により、プレス機械51は、ワークWを、クランパ5で把持すると共にワーク支持部WSに支持させた状態で、クランパ5の動きに伴い二次元移動させる。
また、プレス機械51は、ワークWが二次元移動する毎に、又は二次元移動中に、ブランク加工部BKがワークWに対しブランク加工を行うようになっている。
【0018】
NC制御装置CTは、プレス機械51におけるプレス動作,キャリッジベース3及びワークキャリッジ4の移動動作,並びに、クランパ5のワーク把持動作と、ワークテーブル装置52の動作と、を制御する。
【0019】
図2は
図1のA部拡大図である。
図2に示されるように、ワークテーブル装置52の上部に配置されたトッププレート52aには、ワーク支持部としてのブラシ6を、先端が上方を向く起立姿勢で支持するブラシ取付部BTが複数取り付けられている。
複数のブラシ取付部BTは、例えば、
図2のように、上方視で千鳥配列となるように取り付けられている。
トッププレート52aにおいて、ブラシ取付部BTは、タレット部2におけるパンチ加工に供する部分に対応した範囲(不図示)を除く部分に取付られている。
【0020】
図3は、
図2におけるS3−S3位置での断面図であり、ブラシ取付部BTを説明するための図である。
【0021】
図3に示されるように、ブラシ取付部BTは、ブラシ6及びブラシ6の束ねられた根本部に連結された超音波駆動部7(以下、駆動部7)と、を含むブラシ体6Tと、ブラシ体6Tを支持するホルダ8と、を有する。
駆動部7は、圧電素子などによって超音波領域の高周波で振動する超音波駆動素子7aを含み構成されている。振動方向は、例えば上下方向(
図3における矢印DRa方向)とされる。
【0022】
駆動部7が発生する振動の周波数は、例えば50kHz〜250kHzである。
駆動部7は、信号線7bを介して駆動電源装置7cに接続されており、駆動電源装置7cによって駆動される。また、駆動電源装置7cの動作は、NC制御装置CTによって制御される。
駆動電源装置7cは、複数のブラシ取付部BTそれぞれに対応して、例えばワークテーブル装置52に備えられている。
【0023】
ホルダ8は、ブラシ体6TがねじN1で固定された基部8aと、基部8aの左右両端から上方に向け対向延出した腕部8b,8cと、腕部8b,8cの先端から屈曲し左右方向に互いに離れるよう延在する固定部8d,8eと、を有する。
固定部8d,8eには、それぞれボルトN2のねじ部を挿通させる取付孔8d1,8e1が形成されている。
【0024】
ワークテーブル装置52におけるトッププレート52aには、ホルダ8の基部8a及び腕部8b,8cが進入可能な貫通孔である取付孔52a1が、ブラシの配列パターンに応じて形成されている。この例では、千鳥配列で形成されている。
ブラシ取付部BTは、取付孔52a1にホルダ8の基部8a及び腕部8b,8cを進入させ、固定部8d,8eを、取付孔8d1,8e1に挿通したボルトN2によりトッププレート52aに締め付けることで、トッププレート52aに取り付けられる。
【0025】
以上の構成において、複数のブラシ取付部BTそれぞれの駆動部7は、NC制御装置CTによって、超音波域の周波数でそれぞれ独立して駆動制御される。
これにより、ブラシ6も、駆動部7の振動と同期して上下方向に振動する。詳しくは、ブラシ6の先端面であるワークWを支持する支持部Pt6は、上下方向に超音波域の振動数で振動する。
【0026】
NC制御装置CTにより、駆動部7の振動、すなわち、ブラシ6の振動動作のON/OFFが制御される。また、NC制御装置CTは、動作のON/OFF以外に、例えば、振動の周波数,位相,及び振幅のいずれかを制御してもよい。
駆動部7の超音波駆動素子7aの種類は限定されるものではなく、市販のものを使用できる。
【0027】
ワークテーブル装置52に板状のワークWを載置させた状態、すなわち、複数のブラシ6がワークWを支持した状態で、駆動部7を動作させると、ブラシ6が超音波域の周波数で振動する。
既述の特許文献4にも示されるように、一般に、被支持部材を支持台で支持する際に、支持面又は被支持部材を超音波域の周波数で振動させることで、摩擦係数が低減することが知られている。
【0028】
従って、駆動部7の動作のON/OFFにより、複数の支持部材(ここでは複数のブラシ6)に支持されたワークWの摩擦係数を低減させた状態と低減させない状態との2段階で制御することができる。
すなわち、駆動部7の動作をONにしてブラシ6を振動させることで、ワークWとブラシ6との間で第1の摩擦力が生じるように維持し、駆動部7の動作をOFFにしてブラシ6を振動させず、第1の摩擦力よりも大きい第2の摩擦力が生じるように維持できる。
【0029】
これにより、NC制御装置CTは、ワークWを移動させる場合には、駆動部7をONにして摩擦係数を低減し摩擦力を小さくすることで、小さい動力でのワークWの移動が可能となるよう制御する。
一方、ワークWを停止維持させたい場合には、駆動部7をOFFにして摩擦係数をONよりも高くし摩擦力を大きくすることで、ワークWの移動に大きな動力が必要となるよう(動きにくくなるよう)制御する。
【0030】
図4は、NC制御装置CTによって、ワークテーブル装置52に支持されたワークWを移動させる際の、ワークWの速度Vと駆動部7のON/OFF動作との関係を説明するためのタイミングチャートである。
【0031】
図4(a)は、ワークテーブル装置52上を、クランパ5でクランプしたワークWを移動させる際の、速度Vの変化を示した速度プロファイル図である。
図4(b)は、NC制御装置CTによる駆動部7のONとOFFとの遷移を示した図である。
図4(c)は、
図4(b)の駆動部7の遷移に伴い、ワークWと支持部材(ブラシ6)との間の摩擦力Fの大小の変化を示した図である。
【0032】
図4(a)に実線で示された速度プロファイルP1のように、NC制御装置CTは、時刻t1でワークWの移動を開始し、時刻t2まで一定加速度で加速させ、時刻t2から時刻t3まで一定の速度V1で移動させ、時刻t3から一定加速度で減速させて時刻t4で停止させる。
【0033】
NC制御装置CTは、
図4(a)の速度プロファイルP1に対応して、
図4(b)に示されるように、時刻t1までOFFとし、時刻t1から時刻t4まで、駆動電源装置7cによって超音波駆動素子7aを動作させる。すなわち、駆動部7をONとする。そして、時刻t4以降は、再びOFFとする。この駆動部7のON/OFFの遷移を駆動プロファイルP7と称する
【0034】
これにより、
図4(c)に示されるように、ワークWの移動を開始する時刻t1からワークWが停止する時刻t4まで、ワークWとそれを支持するブラシ6との間の摩擦力Fは小さい状態のまま維持される。
従って、ワークWの移動開始後、ワークWの速度Vを増加させる加速度を大きくでき、時刻t1から時刻t2に達するまでの時間が短くなる。
【0035】
これに対し、仮に時刻t1から時刻t2まで駆動部7をOFFで維持したとすると、摩擦力Fが大きくなって同じ動力でワークWを移動させた際の加速度が小さくなる。
図4(a)には、この場合の速度プロファイルPP1のみが一点鎖線で示されている。ワークWの移動速度が速度V1に達する時刻t21は、当然ながら時刻t2よりも後となる。
【0036】
また、駆動プロファイルP7は、時刻t3から時刻t4までのワークWの停止動作時に、摩擦力Fが小さくなるため、ワークWの減速移動及び停止の位置決めをより小さい動力で行うことができる。
そのためワークWの停止位置を、高精度に決めることができる。
【0037】
このように、駆動プロファイルP7によれば、ワークWの移動開始から移動終了までの間、駆動部7をONに維持する。これにより、ワークWの移動時間が短縮されると共に、停止位置を高精度に決めることができる。
【0038】
図4で示した駆動プロファイルP7に対し、位置決め精度よりも停止時間の短縮を優先する場合には、速度プロファイルP1における時刻t3から時刻4までOFFとしていた駆動部7を、ONにする駆動プロファイルP7aを採用してもよい。
【0039】
この駆動プロファイルP7aでのワークWの速度変化例が
図5(a)に速度プロファイルP1aとして示されている。
図5(a)において、時刻t3から時刻td4までの速度プロファイルP1のみが一点鎖線で示されている。
【0040】
駆動プロファイルP7aでは、NC制御装置CTは、時刻t3で駆動部7をONからOFFに切り換え、時刻t3以降OFFで維持する。
これにより、
図5(c)に示されるように、ワークWの移動速度を減速させる時刻t3以降の摩擦力Fが大きい状態で維持され、ワークWの移動抵抗が増加して移動速度は急減する。すなわち、時刻t3からワークWが停止する時刻t41に達するまでの時間が短くなる。
【0041】
このように、駆動プロファイルP7aによれば、ワークWの移動開始から減速開始まで駆動部7をONにし、減速開始後、駆動部7をOFFにする。
これにより、ワークWの移動開始から一定の速度V1に達するまでの時間〔
図5(a)におけるt1〜t2〕と、速度V1から停止するまでの時間〔
図5(a)におけるt3〜t41〕を短縮して、移動効率を向上することができる。
【0042】
ワークテーブル装置52が備えるワーク支持部WSは、上述のブラシ6としたものに限らず、
図6に示されるように、フリーベアリング(ボールトランスファ)16としたワーク支持部WSAであってもよい。
【0043】
すなわち、ワークテーブル装置52は、
図6に示されるように、上頂点の高さ位置がパスラインPLに位置するワーク支持部WSAとしてのフリーベアリング16と、フリーベアリング16の下部に連結された超音波駆動部17(以下、駆動部17)と、含むフリーベアリング体16Tを有する。
フリーベアリング体16Tは、ワークテーブル装置52のトッププレート52aに、ねじN3で取り付けられている。
【0044】
駆動部17は、圧電素子などによって超音波領域の高周波で振動する超音波駆動素子17aを含み構成されている。
駆動部17は、信号線17bを介して駆動電源装置7cに接続されており、駆動電源装置7cによって駆動される。また、駆動電源装置7cの動作は、NC制御装置CTによって制御される。
【0045】
駆動部17の振動方向は、例えば上下方向(
図6における矢印DRb方向)とされる。
従って、フリーベアリング16の上頂点であるワークWを支持する支持部Pt16は、上下方向に超音波領域の振動数で振動する。駆動部17が発生する振動の周波数は、例えば50kHz〜250kHzである。
【0046】
駆動部17の動作は、駆動部7と同様に、NC制御装置CTによって駆動プロファイルP7や駆動プロファイルP7aで制御される。駆動部17のこの制御された動作により、駆動部7と同様の効果が得られる。
【0047】
上述のワークテーブル装置52は、ワーク支持部WS,WSAを振動させるものとして説明したが、複数のワーク支持部WS又はワーク支持部WSAを有するトッププレート52a自体を、超音波域の振動数で振動させるワークテーブル装置52Aであってもよい。
【0048】
図7は、ワークテーブル装置52Aの概略構成を説明する側面図である。
ワークテーブル装置52Aは、ベースフレーム52Mと、ベースフレーム52Mの上方に配置されたトッププレート52Aaと、ベースフレーム52Mに対し、トッププレート52Aaを支持する複数の超音波駆動部27(以下、駆動部27)と、を有して構成されている。
トッププレート52Aaには、ワークWを支持するブラシ26が複数取付られている。複数のブラシ26の先端部の上下方向位置(高さ位置)は、パスラインPLにある。
【0049】
複数の駆動部27それぞれは、圧電素子などによって超音波域の高周波で振動する超音波駆動素子27aを含み構成されている。
各駆動部27は、信号線27bを介して駆動電源装置7cに接続されており、駆動電源装置7cによって駆動される。また、駆動電源装置7cの動作は、NC制御装置CTによって制御される。
【0050】
この構成により、ワークテーブル装置52Aは、複数のブラシ26を含むトッププレート52Aaの全体が、上下方向に超音波域の振動数で振動する。
すなわち、ブラシ26の先端面であるワークWを支持する支持部Pt26は、上下方向に超音波領域の振動数で振動する。駆動部27が発生する振動の周波数は、例えば50kHz〜250kHzである。
【0051】
駆動部27の動作は、駆動部7及び駆動部17と同様に、NC制御装置CTによって駆動プロファイルP7や駆動プロファイルP7aで制御される。駆動部27のこの制御された動作により、駆動部7と同様の効果が得られる。
【0052】
ワークとワーク支持部との間の摩擦力低減には、それらのいずれか一方、又は両方が振動していればよい。
従って、上述の各構成は、ワーク支持部側を超音波域の振動数で振動させる例であるが、ワーク側を振動させる構成であってもよい。
【0053】
例えば、クランパ5において、ワークWをその厚さ方向に把持する上ジョー5a及び下ジョー5bのいずれかに、駆動部37を設けてもよい。
図8は、クランパ5の斜視図であり、駆動部37を上ジョー5aの内部に設けた例が示されている。
これにより、クランパ5に把持され、ワークテーブル装置52(52A)に支持されたワークWを、駆動部37の動作により超音波域の振動数で振動させることができる。駆動部37が発生する振動の周波数は、例えば50kHz〜250kHzである。
【0054】
駆動部37の動作は、駆動部7などと同様にNC制御装置CTによって駆動プロファイルP7や駆動プロファイルP7aで制御される。駆動部37のこの制御された動作により、駆動部7と同様の効果が得られる。
【0055】
本発明の実施例は、上述した構成及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよい。
【0056】
実施例では、駆動部7,17,27,37の駆動を、ワークWのワークテーブル52(52A)上の移動の際に行う例を説明したが、ワークWに対する他の動作中に駆動すると、それぞれにおいて効果が得られる。
以下、駆動部7を、駆動部7,17,27,37の代表として、駆動例を説明する。
【0057】
この場合、NC制御装置CTは、動作判定部CTaと駆動周波数設定部CTbとを有するものとする。
動作判定部CTaは、駆動部7を動作させるか否かを判定する。
駆動周波数設定部CTbは、動作判定部CTaで動作させると判定した場合に、その動作の種類に応じて、駆動部7が発生する振動の周波数を設定する。
【0058】
まず、ワーク加工装置の加工動作に連動して駆動部7を駆動させる場合がある。
例えば、市場に流通するワーク加工装置がブランク加工を行う装置の場合に、特許文献1に示されるようにワークシュータを備えたものがある。
このワークシュータを備えたワーク加工装置では、加工で生じたスクラップや加工で得られた製品を、ワークシュータの排出扉を閉状態から開状態にして下方に落下させ回収できるようになっている。
【0059】
この場合、例えばワークWから打ち抜かれたスクラップや製品が、抜き残しの部材に引っ掛かるなどして偶発的に落下しないことがあり得る。
そこで、駆動部7を、ブランク加工動作の内のワークシュータの動作に連動したシュータ連動手順で駆動させる(
図9参照)。
【0060】
動作判定部CTaは、ワークシュータによる排出動作であることを判定し、駆動部7をシュータ連動手順で駆動させる。
図9に示されるシュータ連動手順の例では、駆動周波数設定部CTbは、駆動部7の振動周波数を、実施例で説明した超音波域の周波数よりも低く設定する。例えば可聴域の振動数とする。
【0061】
シュータ連動手順において、まず、NC制御装置CTは、ワークWが複数のブラシ6で支持され加工が終了した状態で、ワークシュータにおいて閉じていた排出扉を開く(Step1)。
【0062】
次いでNC制御装置CTは、上述の動作判定部CTaの判定に基づいて駆動部7を駆動し(Step2)、ブラシ6を振動させる。振動周波数は、駆動周波数設定部CTbの設定に基づき、例えば可聴域の周波数とする。
これにより、複数のブラシ6で支持されたワークWも振動する。
【0063】
NC制御装置CTは、内蔵タイマにより駆動部7の駆動時間を計測して所定の時間taが経過したか否かを判定し(Step3)、経過するまで駆動を継続する。
NC制御装置CTは、所定の時間taが経過したと判定したら、駆動部7の駆動を停止し(Step4)、排出扉を閉じる(Step5)。
【0064】
上述のシュータ連動手順例で駆動部7を駆動することで、落下させるべきスクラップや製品を、抜き残しの部材との引っ掛かりを解除して、より確実に排出口内に落下させることができる。
【0065】
駆動部7の駆動は、排出扉を開けるのと同時、又は開ける前に開始していてもよい。駆動部7を、ブランク加工の終了後の所定の時間ta、駆動させればよい。
所定時間は、任意に設定してよい。例えば、切断長の長短に応じて時間の長短を設定するのが好ましい。
駆動部7の駆動は、連続的であっても断続的であってもよい。従って、所定の時間taは、ブランク加工終了時点から次のブランク加工開始時点までの累積駆動時間を計測するのがよい。
【0066】
次に、製品又は加工中の半製品の、スケルトンとの分離及び分離後の移送を行うテイクアウトローダの動作に連動して駆動部7を駆動させる場合がある。
例えば、ワークテーブル装置として既述の特許文献2に示されるようなテイクアウトローダを備えたものがある。
【0067】
テイクアウトローダは、ワークテーブル装置に載置されたワークにおける製品又は半製品部分を、吸引後の上昇により残りのスケルトンと分離し、他の位置へ移送する。
この動作において、製品又半製品とスケルトンとの引っ掛かりが生じ、分離がスムースに行われないことが偶発的に起こり得る。
そこで、駆動部7を、テイクアウトローダの動作に連動したTK連動手順で駆動させる(
図10参照)。
動作判定部CTaは、テイクアウトロードの動作であることを判定し、駆動部7をTK連動手順で駆動させる。
【0068】
TK連動手順においても、駆動周波数設定部CTbは、駆動部7の振動周波数を、実施例で説明した超音波域の周波数よりも低く設定する。例えば可聴域の振動数とする。
以下の説明において、吸着移送する部材は半製品とする。
【0069】
TK連動手順において、まず、NC制御装置CTは、テイクアウトローダを、対象となるワークWの上方に位置させてから下降させ、半製品となる部分に吸着させる(Step21)。
【0070】
次いで、NC制御装置CTは、上述の動作判定部CTaの判定に基づいて駆動部7を駆動し(Step22)、ブラシ6を振動させる。振動周波数は、駆動周波数設定部CTbの設定に基づき、例えば可聴域の周波数とする。
これにより、複数のブラシ6で支持されたワーク(スケルトン及び半製品)も振動する。
【0071】
NC制御装置CTは、半製品はスケルトンから分離させるべくテイクアウトローダを上昇させる(Step23)。
ここで、半製品がスケルトンに引っ掛かっていても、駆動部7の駆動により半製品及びスケルトンが振動しているので、引っ掛かりが解除され易く、分離(抜き取り)がより確実に行われる。
【0072】
NC制御装置CTは、抜き取った半製品を、所定の位置に移送し(Step24)、駆動部7を停止する(Step25)。
【0073】
上述のTK連動手順例で駆動部7を駆動することで、抜き取るべき半製品又は製品の抜き残しのスケルトンとの引っ掛かりがあったとしてもその引っ掛かりが駆動部7から伝達された振動によって解除され易くなる。そのため、抜き取り(分離)が確実に実行される。
【0074】
シュータ連動手順及びTK連動手順で得られる効果は、駆動部7に限らず、駆動部17,27,37のいずれを駆動させても同様に得られる。
【0075】
ブランク加工部BKは、タレット部2を含みプレスによりブランク加工を行うよう構成されたものに限定されない。例えば、レーザにより加工を施すレーザヘッドなどを含み構成された加工部であってもよい。
【0076】
駆動プロファイルP7,P7aにおける駆動部7,17,27,37の振動周波数は、超音波域に限定されるものではなく、可聴域であってもよい。ただし、摩擦力Fの低減量の観点から、できるだけ高い周波数であることが望ましい。
【0077】
上述のシュータ連動手順によれば、次のワークの加工方法が提供される。
すなわち、ワークをクランパで把持すると共にワーク支持部で支持した状態で加工を行い、前記ワークから抜いた部材を、排出開口部から下方へ排出させるワークの加工方法であって、
前記ワーク支持部又は前記クランパを振動させる駆動部を設け、
前記加工の終了後の所定時間、前記駆動部を駆動させることを特徴とするワークの加工方法である。
【0078】
上述のTK連動手順によれば、次のワーク移送方法が提供される。
すなわち、ワーク支持部で支持した加工後のワークの一部分を、テイクアウトローダによって吸着した後に上昇させて残りの部分から分離し、所定の位置に移送するワークの移送方法であって、
前記ワーク支持部を振動させる駆動部を設け、
少なくとも前記テイクアウトローダが前記一部分を吸着してから上昇するまでの間に、前記駆動部を駆動させる期間を含むことを特徴とするワークの移送方法である。
【0079】
動作判定部CTa及び駆動周波数設定部CTbがそれぞれ行う判定及び設定の上述の実施例及び変形例に沿った手順の一例が
図11に示される。
【0080】
図11に示されるように、動作判定部CTaは、ワーク加工装置51(ワークテーブル装置52を含む)においてこれから実行する動作内容が、ブランク加工か否かを判定する(Step31)。
【0081】
ブランク加工であると判定した場合(Yes)、ワークシュータが動作するか否かを判定する(Step32)。
【0082】
ワークシュータが動作しない(No)場合、駆動周波数設定部CTbは、駆動部7の振動周波数を、第1の周波数(ここでは超音波域)に設定する(Step33)。
動作する(Yes)の場合、駆動周波数設定部CTbは、駆動部7の振動周波数を、第1の周波数よりも低い第2の周波数(ここでは可聴域)に設定する(Step34)。
【0083】
動作判定部CTaは、(Step31)でブランク加工ではない(No)と判定したら、次にテイクアウトローダの動作か否かを判定する(Step35)。
テイクアウトローダの動作である(Yes)と判定したら、駆動周波数設定部CTbは、(Step34)に移行し、駆動周波数設定部CTbにより駆動部7の振動周波数を、第1の周波数よりも低い第2の周波数(ここでは可聴域)に設定する。
否(No)と判定したら、駆動部7の動作は実行させずに手順を終了する。
【0084】
この手順は、ワーク加工装置51及びワークテーブル装置52の動作中、繰り返し実行される。すなわち、ブランク加工において、ワークシュータが非動作のときはStep33が実行され、動作するときにはStep34が実行される。
【0085】
NC制御装置CTには、振幅設定部(不図示)を設けてもよい。
振幅設定部は、
図11の(Step32)で、ワークシュータ動作と判定された(Yes)場合、及び(Step35)で、テイクアウトローダ動作と判定された(Yes)場合に、駆動部7の振幅(第2の振幅)を、それぞれ否(No)と判定した場合の振幅(第1の振幅)よりも大きく設定する。
駆動部7で発生させる振動を第1の振幅よりも大きい第2の振幅とすることで、排出する部材や抜き取る部材の他部材への引っ掛かりが良好に解除でき、排出及び抜き取りをより確実に実行することができる。