特許第6789072号(P6789072)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6789072
(24)【登録日】2020年11月5日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】建物給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 9/04 20060101AFI20201116BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20201116BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20201116BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20201116BHJP
   F25D 23/00 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   H02J9/04
   H02J13/00 301B
   H02J13/00 311R
   H02J7/00 A
   F25D11/00 101B
   F25D23/00 301K
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-217916(P2016-217916)
(22)【出願日】2016年11月8日
(65)【公開番号】特開2018-78689(P2018-78689A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2019年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 桂一
【審査官】 右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−023377(JP,A)
【文献】 特開2011−166972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 9/04
F25D 11/00
F25D 23/00
H02J 7/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を冷蔵する冷蔵庫が設けられた複数の所定の建物に適用され、
前記所定の建物は、給電機能を有する車両と電気的に接続可能であり、該接続状態で前記車両から前記冷蔵庫に給電が可能とされている建物給電システムであって、
前記所定の建物で停電が発生した場合に、前記各所定の建物の前記冷蔵庫に給電を行う前記車両として予め定められた給電車両と、
前記各所定の建物で停電が発生した場合に、前記各所定の建物ごとに、前記冷蔵庫の庫内又は周辺の温度に関する情報、及び前記冷蔵庫に保管されている食品の在庫量に関する情報のうち少なくともいずれかを冷蔵庫情報として取得する冷蔵庫情報取得手段と、
前記冷蔵庫情報取得手段により取得した前記各所定の建物の前記冷蔵庫情報に基づき、前記給電車両より前記各所定の建物の前記冷蔵庫へ給電を行う際の優先順位を設定する優先順位設定手段と、
前記設定された優先順位にしたがって、前記各所定の建物の前記冷蔵庫に給電を行うよう前記給電車両のユーザに給電指示を出す給電指示手段と、
を備えることを特徴とする建物給電システム。
【請求項2】
前記冷蔵庫情報取得手段は、前記各所定の建物ごとに、前記冷蔵庫情報として前記冷蔵庫の庫内温度を取得するものであり、
前記優先順位設定手段は、前記取得された前記各所定の建物の前記冷蔵庫の庫内温度に基づいて、前記優先順位を設定することを特徴とする請求項に記載の建物給電システム。
【請求項3】
前記冷蔵庫情報取得手段は、前記各所定の建物ごとに、前記冷蔵庫情報として前記冷蔵庫内の食品の在庫量を取得するものであり、
前記優先順位設定手段は、前記取得された前記各所定の建物の前記冷蔵庫内の在庫量に基づいて、前記優先順位を設定することを特徴とする請求項又はに記載の建物給電システム。
【請求項4】
前記各所定の建物で停電が生じた場合に、前記各建物ごとに居住者が在宅しているか否かを判定する在宅判定手段を備え、
前記優先順位設定手段は、前記在宅判定手段の判定結果に基づいて、前記優先順位を設定することを特徴とする請求項乃至のいずれか一項に記載の建物給電システム。
【請求項5】
前記給電車両は複数設けられており、
前記各給電車両の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記位置情報取得手段により取得された前記各給電車両の位置情報に基づいて、それら各給電車両のうちいずれの給電車両のユーザに前記給電指示を出すかを決定する給電車両決定手段とを備えることを特徴とする請求項乃至のいずれか一項に記載の建物給電システム。
【請求項6】
前記各所定の建物はいずれも所定地域内に設けられており、
前記各所定の建物における前記車両がそれぞれ前記給電車両として定められており、
前記給電車両決定手段は、前記位置情報取得手段により取得された前記各給電車両の位置情報に基づき、前記各給電車両が前記所定地域内にあるか否かを判定し、判定の結果、前記所定地域内にあると判定された前記給電車両のユーザに前記給電指示を出すことを決定することを特徴とする請求項に記載の建物給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に設けられた冷蔵庫に車両より給電が可能とされている建物給電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、地震等の災害に伴い建物で停電が生じた場合に、建物に設けられた蓄電池の蓄電電力を冷蔵庫に供給する技術が開示されている。この特許文献1の技術によれば、建物で停電が発生しても、冷蔵庫内の食品を長期間保存することが可能となるため、災害時において食を確保するのに有効となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−148433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ハイブリッド自動車や電気自動車に搭載された車載バッテリを用いて車両から建物側に電力を供給する技術が提案されている。そこで、建物において停電が生じた場合に、かかる車両から建物内の冷蔵庫に電力を供給するようにすることが考えられる。この場合、建物に蓄電池が設けられていない場合でも、車載バッテリを用いて冷蔵庫を運転させることで庫内の食品を長期に亘り保存することが可能となる。
【0005】
しかしながら、建物において停電が発生した際に、車両が使用中である等して建物の近くにない場合には、車両から建物内の冷蔵庫に電力を供給することができなくなってしまう。そのため、その場合には、冷蔵庫内の食品が傷んでしまう等、食の確保が困難になることが考えられる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、停電発生時において食の確保を確実に行うことができる建物給電システムを提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、第1の発明の建物給電システムは、食品を冷蔵する冷蔵庫が設けられた所定の建物に適用され、前記所定の建物は、給電機能を有する車両と電気的に接続可能であり、該接続状態で前記車両から前記冷蔵庫に給電が可能とされている建物給電システムであって、前記所定の建物で停電が発生した場合に、前記冷蔵庫に給電を行う前記車両として予め定められた給電車両と、前記所定の建物で停電が発生した場合に、前記給電車両のユーザに対し当該給電車両より前記冷蔵庫に給電を行うよう給電指示を出す給電指示手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、所定の建物で停電が発生した場合には、その建物の冷蔵庫に給電を行う車両として予め定められた給電車両のユーザに同車両より冷蔵庫に給電を行うよう給電指示が出される。これにより、建物で停電が発生した場合に、その建物の(居住者等が所有する)車両が使用中である等して建物付近にない場合でも、給電車両のユーザに同車両を用いて冷蔵庫への給電を行わせることができる。そのため、停電発生時において冷蔵庫内の食品を確実に保存させることができ、ひいては食の確保を確実に行うことができる。
【0009】
第2の発明の建物給電システムは、第1の発明において、複数の前記所定の建物に対して適用される建物給電システムであって、前記給電車両は、前記各所定の建物の前記冷蔵庫に給電を行う車両として予め定められており、前記各所定の建物で停電が生じた場合に、前記各所定の建物ごとに、前記冷蔵庫の庫内又は周辺の温度に関する情報、及び前記冷蔵庫に保管されている食品の在庫量に関する情報のうち少なくともいずれかを冷蔵庫情報として取得する冷蔵庫情報取得手段を備え、前記給電指示手段は、前記冷蔵庫情報取得手段により取得した前記各所定の建物の前記冷蔵庫情報に基づき、前記各所定の建物の前記冷蔵庫に前記給電車両より給電を行うよう給電指示を出すことを特徴とする。
【0010】
本発明では、複数の建物で停電が発生した場合に、それら各建物の冷蔵庫に給電車両より給電が行われる。具体的には、停電発生時には、各建物の冷蔵庫情報が取得され、それら取得された冷蔵庫情報に基づき各建物への給電指示が給電車両のユーザに出される。この場合、例えば各建物の冷蔵庫のうち庫内温が高くなっている冷蔵庫や、食品在庫量の多い冷蔵庫等、給電の求められる度合いの高い冷蔵庫ほど優先させて給電を行うよう給電指示を出すことができる。そのため、給電車両から複数の建物の冷蔵庫に給電を行うにあたり、好適に給電を行うことができる。
【0011】
第3の発明の建物給電システムは、第2の発明において、前記冷蔵庫情報取得手段により取得した前記各所定の建物の前記冷蔵庫情報に基づき、前記給電車両より前記各所定の建物の前記冷蔵庫へ給電を行う際の優先順位を設定する優先順位設定手段を備え、前記給電指示手段は、前記設定された優先順位にしたがって、前記各所定の建物の前記冷蔵庫に給電を行うよう給電指示を出すことを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、停電発生時に、各建物の冷蔵庫情報に基づき、各建物の冷蔵庫へ給電車両より給電を行う際の優先順位が設定され、その設定された優先順位にしたがって各建物の冷蔵庫に給電を行うよう給電車両のユーザに給電指示が出される。この場合、例えば各建物の冷蔵庫のうち庫内温が高い冷蔵庫ほど給電の優先順位を高く設定したり、保管されている食品の在庫量が多い冷蔵庫ほど給電の優先順位を高く設定したりすることができる。これにより、各建物の冷蔵庫に給電の求められる度合いの高い順で給電を行わせることが可能となるため、各冷蔵庫への給電をより好適に行うことができる。
【0013】
第4の発明の建物給電システムは、第3の発明において、前記冷蔵庫情報取得手段は、前記各所定の建物ごとに、前記冷蔵庫情報として前記冷蔵庫の庫内温度を取得するものであり、前記優先順位設定手段は、前記取得された前記各所定の建物の前記冷蔵庫の庫内温度に基づいて、前記優先順位を設定することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、停電発生時に各建物の冷蔵庫の庫内温度が取得され、それら取得された各冷蔵庫の庫内温度に基づいて、各建物の冷蔵庫へ給電を行う際の優先順位が設定される。この場合、各建物の冷蔵庫のうち庫内温度が高い冷蔵庫ほど給電の優先順位を高く設定することで、庫内温度が高く食品の保存が困難な冷蔵庫に優先させて給電を行うことができる。これにより、停電発生時に各冷蔵庫内の食品を好適に保存させることができる。
【0015】
第5の発明の建物給電システムは、第3又は第4の発明において、前記冷蔵庫情報取得手段は、前記各所定の建物ごとに、前記冷蔵庫情報として前記冷蔵庫内の食品の在庫量を取得するものであり、前記優先順位設定手段は、前記取得された前記各所定の建物の前記冷蔵庫内の在庫量に基づいて、前記優先順位を設定することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、停電発生時に各建物の冷蔵庫内の食品在庫量が取得され、それら取得された各冷蔵庫内の食品在庫量に基づいて、各建物の冷蔵庫へ給電を行う際の優先順位が設定される。この場合、各建物の冷蔵庫のうち食品在庫量が多い冷蔵庫ほど優先順位を高く設定することで、食品在庫量が多く食の確保に有効な冷蔵庫に優先させて給電を行うことができる。これにより、停電発生時に食の確保を好適に行うことができる。また、この場合、多くの食品を確保することで、停電時にその食品を各建物の居住者に分け与えるといったことも可能となるため、その点を踏まえても好適な構成といえる。
【0017】
第6の発明の建物給電システムは、第3乃至第5のいずれかの発明において、前記各所定の建物で停電が生じた場合に、前記各建物ごとに居住者が在宅しているか否かを判定する在宅判定手段を備え、前記優先順位設定手段は、前記在宅判定手段の判定結果に基づいて、前記優先順位を設定することを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、各建物で停電が生じた場合に、各建物ごとに居住者の在不在が判定され、その判定結果に基づいて、各建物の冷蔵庫へ給電車両より給電を行う際の優先順位が設定される。この場合、居住者が在宅している建物の冷蔵庫ほど給電の優先順位を高く設定することで、居住者が在宅していることで食の確保が必要となる建物の冷蔵庫に優先して給電を行うことができる。これにより、停電発生時において好適に居住者の食の確保を行うことができる。
【0019】
第7の発明の建物給電システムは、第2乃至第6のいずれかの発明において、前記給電車両は複数設けられており、前記各給電車両の位置情報を取得する位置情報取得手段と、前記位置情報取得手段により取得された前記各給電車両の位置情報に基づいて、それら各給電車両のうちいずれの給電車両のユーザに前記給電指示を出すかを決定する給電車両決定手段とを備えることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、停電発生時に各給電車両の位置情報に基づいて、それら各給電車両のうちいずれの給電車両のユーザに給電指示を出すかが決定される。この場合、例えば各給電車両のうち建物近くに存在する給電車両のユーザに給電指示を出すことで、給電車両による建物内の冷蔵庫への給電を速やかに行わせることが可能となる。そのため、冷蔵庫内の食品の保存を好適に行うことができる。
【0021】
第8の発明の建物給電システムは、第7の発明において、前記各所定の建物はいずれも所定地域内に設けられており、前記各所定の建物における前記車両がそれぞれ前記給電車両として定められており、前記給電車両決定手段は、前記位置情報取得手段により取得された前記各給電車両の位置情報に基づき、前記各給電車両が前記所定地域内にあるか否かを判定し、判定の結果、前記所定地域内にあると判定された前記給電車両のユーザに前記給電指示を出すことを決定することを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、所定地域内に設けられた各建物の車両がそれぞれ給電車両として定められており、停電発生時にはこれら各給電車両のうち所定地域内に存在する給電車両のユーザに給電指示が出される。この場合、所定地域内における各建物の車両のうちいずれかの車両が使用中である等して所定地域外にある場合でも、所定地域内にある他の車両(給電車両)を用いて各建物の冷蔵庫に給電を行うことができる。かかる構成では、地域内における各建物の車両を用いてそれら各建物の冷蔵庫への給電を行うこととしているため、冷蔵庫への給電を速やかに開始させることができるとともに、給電車両として専用の車両を別途用意する必要がないという利点を得ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】建物給電システムの概略を示す図。
図2】建物の概略構成を示す図。
図3】建物給電システムの電気的構成を示す図。
図4】建物給電処理を示すフローチャート。
図5】給電指示処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、建物給電システムの概略を示す図である。
【0025】
図1に示すように、建物給電システムは、所定の地域X内に設けられた複数(本実施形態では3つ)の建物11(所定の建物に相当)を給電対象としたシステムとなっている。これらの建物11は、いずれも戸建ての住宅からなり、例えば同じ住宅分譲地又は同じ団地内に設けられている。各建物11にはそれぞれ屋外側に駐車スペース12が設けられている。駐車スペース12には建物11に居住する居住者の車両13が駐車されている。これらの車両13はいずれもプラグインハイブリッド自動車(PHV)又は電気自動車(EV)からなり、外部からの給電により充電を行うことが可能な充電機能を有している。また、これらの車両13は、充電等で蓄えられた電力を外部に供給可能な外部給電機能を有している。
【0026】
各建物11には、駐車スペース12に駐車された車両13に充電を行う充電装置15が設けられている。この充電装置15は車両13と接続可能とされており、その接続状態で建物11側から車両13に充電装置15を介して電力(商用電力)を供給することが可能となっている。この場合、その供給された電力により車両13が充電されるようになっている。
【0027】
また、充電装置15は、車両13との接続状態で、車両13側から建物11側に充電装置15を介して電力を供給する機能を有している。つまり、車両13(詳しくは、後述する車載バッテリ27)に蓄えられた(充電された)電力を建物11側に供給する(放出する)機能を有している。このため、地震等の災害により建物11において停電が発生した場合には、車両13から建物11側に電力を供給することで、建物11内の電気機器を作動(運転)させることが可能となっている。
【0028】
続いて、各建物11の構成について図2を用いながら説明する。図2は、建物11の概略構成を示す図である。なお、各建物11はいずれも同様の構成となっており、このため、図2では一の建物11のみを示している。
【0029】
図2に示すように、建物11には、分電盤21が設けられている。分電盤21には、図示しない電柱等から送電線22を介してAC100V/200Vの商用電力が供給される。分電盤21には、複数の電気機器E(照明機器や家電機器など)が接続されている。これらの電気機器Eには、分電盤21より商用電力が供給される。また、これらの電気機器Eには、食品を冷蔵するための冷蔵庫24が含まれている。
【0030】
分電盤21には、電力線25を介して充電装置15が接続されている。充電装置15には、分電盤21より電力線25を介して商用電力が供給される。充電装置15は、車両13に設けられた接続口13a(インレット)に接続可能な充電ケーブル15aを有している。この充電ケーブル15aが接続口13aに接続されると、車両13と充電装置15とが電気的に接続される。そして、この接続状態で充電装置15から車両13に電力が供給されると、その電力により車両13の充電が行われる。詳しくは、車両13には、高圧二次電池からなる車載バッテリ27が搭載され、その車載バッテリ27に充電装置15から電力が供給され同バッテリ27が充電される。
【0031】
また、上述したように、車両13には外部給電機能が設けられており、車両13と充電装置15との接続状態にて、車載バッテリ27に蓄えられた電力(蓄電電力)を充電ケーブル15aを介して充電装置15に取り込むことが可能となっている。この場合、充電装置15に取り込まれた電力は同装置15より分電盤21に電力線25を介して供給され、その供給された電力は分電盤21より冷蔵庫24を含む各電気機器Eに供給されるようになっている。
【0032】
このように、本建物給電システムでは、建物11で停電が発生した場合に、車両13の車載バッテリ27を用いて、同バッテリ27より蓄電電力を建物11側の電気機器Eに供給することが可能となっている。また、この際、冷蔵庫24にも電力を供給することが可能となっているため、停電発生時において車載バッテリ27(ひいては車両13)からの電力により冷蔵庫24を作動(運転)させることが可能となっている。そのため、停電発生時において冷蔵庫24内の食品を長時間保存させることが可能となっている。
【0033】
ところで、建物11において停電が生じた場合に、車両13が使用中である等して車両13が建物11の近くにないときには、車両13(車載バッテリ27)を用いて建物11側に電力を供給することができないため、建物11内の冷蔵庫24にも電力を供給することができなくなってしまう。そのため、冷蔵庫24内の温度が高くなってしまい、冷蔵庫24内に保管されている食品が傷む等、食品の保存が困難となるおそれがある。
【0034】
そこで、本建物給電システムでは、そのような場合を想定して、停電発生時に建物11の近くに車両13(つまり自車両)がない場合でも、他の車両13から建物11(ひいては建物11内の冷蔵庫24)に電力の供給を受けられるようにするための構成を有している。本システムでは、その点に特徴を有しており、以下においてはその特徴的な構成について説明する。
【0035】
各建物11の車両13はいずれも、それら建物11で停電が発生した場合に、それら建物11を給電対象として給電を行う給電車両として予め登録されている。これにより、各建物11で停電が発生した場合に、各建物11の車両13のうちいずれかの車両13が建物11の近く(地域X内)にないときでも、地域X内にある他の車両13を用いて当該建物11、ひいては建物11内の冷蔵庫24へ給電を行うことができるようになっている。
【0036】
各建物11の冷蔵庫24にはそれぞれ、庫内の温度を検知する庫内温センサ31と、庫内に保管されている食品の在庫量を検知する在庫量センサ32とが設けられている。これら各センサ31,32はいずれも冷蔵庫24の内部(庫内)に設けられている。
【0037】
在庫量センサ32は、庫内に設けられた棚の上に載せられる食品の重量を検知する重量センサを有して構成される。重量センサは各棚ごとに設けられ、それら各重量センサにより各棚上に載せられた食品の重量がそれぞれ検知される。そして、在庫量センサ32は、それら検知される各棚上の食品重量の総和を冷蔵庫24内に保管されている食品の在庫量として検知する。
【0038】
なお、庫内温センサ31はバッテリを内蔵しており、建物11で停電が発生した場合にも、そのバッテリに蓄えられた蓄電電力によりセンサ31を作動させ庫内温の検知をすることが可能となっている。
【0039】
各建物11には、建物11内に人がいることを検知する人検知センサ33が設けられている。また、各建物11には、ホームサーバ35が設けられている。ホームサーバ35は、パソコン等の周知のコンピュータを用いて構成されている。
【0040】
次に、本建物給電システムの電気的構成について図3に基づいて説明する。図3は建物給電システムの電気的構成を示す図である。なお、図3では便宜上、一の車両13のみ図示している。
【0041】
図3に示すように、各建物11ではそれぞれ、ホームサーバ35に庫内温センサ31と在庫量センサ32と人検知センサ33とが接続されている。ホームサーバ35には、これら各センサ31〜33よりそれぞれ検知情報が入力される。
【0042】
各建物11のホームサーバ35はそれぞれインターネット38を介して管理サーバ40と接続されている。管理サーバ40は、本建物給電システムを統括管理するものであり、例えば住宅販売会社の管理者により管理されている。管理サーバ40は、パソコン等の周知のコンピュータを用いて構成され、記憶部41と通信部42とを有している。なお、管理サーバ40はクラウドを利用して構成してもよい。
【0043】
各建物11のホームサーバ35は、各センサ31〜33から検知情報が入力されると、その入力された検知情報を都度管理サーバ40に対して出力する。したがって、管理サーバ40には、各建物11のホームサーバ35より都度、センサ31〜33の検知情報が入力されるようになっている。
【0044】
管理サーバ40は、各建物11のホームサーバ35から入力される庫内温センサ31の検知情報、つまり庫内温センサ31により検知された庫内温の情報を都度記憶部41に記憶する。この場合、記憶部41には最新の庫内温情報のみが記憶される。つまり、最新の庫内温情報が記憶部41に記憶されると、記憶部41に記憶されている以前の庫内温情報が上書されて消去される。したがって、管理サーバ40では、各建物11の冷蔵庫24における今現在(最新)の庫内温を都度把握することが可能となっている。
【0045】
また、管理サーバ40は、各建物11のホームサーバ35から入力される在庫量センサ32の検知情報、つまり在庫量センサ32により検知された食品在庫量の情報を都度記憶部41に記憶する。この場合、記憶部41には、上記庫内温情報と同様、最新の食品在庫量情報のみが記憶される。したがって、管理サーバ40では、各建物11の冷蔵庫24に保管されている今現在(最新)の食品在庫量を都度把握することが可能となっている。
【0046】
また、管理サーバ40は、各建物11のホームサーバ35から入力される人検知センサ33の検知情報、つまり人検知センサ33により建物11内にて人が検知されたか否かを示す人検知情報に基づき、各建物11ごとに居住者の在不在を判定する。そして、管理サーバ40は、その判定した各建物11における在不在に関する在不在情報を都度記憶部41に記憶する。この場合、記憶部41には、上記庫内温情報等と同様、最新の在不在情報のみが記憶される。したがって、管理サーバ40では、各建物11に居住者が今現在在宅しているか否かを都度把握することが可能となっている。
【0047】
通信部42は、各車両13との間で無線通信が可能とされている。各車両13はいずれもコントローラ45と、上述した車載バッテリ27と、GPS端末46とを備える。コントローラ45は、周知のマイクロコンピュータを有してなり、管理サーバ40の通信部42との間で無線通信可能な通信部45aを有している。この場合、コントローラ45は、各通信部42,45aを介して管理サーバ40と無線通信が可能となっている。
【0048】
コントローラ45は、車載バッテリ27の蓄電量を算出する算出機能を有している。コントローラ45は、管理サーバ40側からの要求に応じて、その算出した蓄電量情報を通信部45aを通じて管理サーバ40側に送信する。
【0049】
GPS端末46は、GPS衛星から発信される電波を受信することで自身(車両13)の位置情報を生成(取得)するものである。コントローラ45は、管理サーバ40側からの要求に応じて、GPS端末46で生成された車両13の位置情報を通信部45aを通じて管理サーバ40側に送信する。
【0050】
各建物11における車両13のユーザ(所有者)はそれぞれ携帯端末48を所持している。携帯端末48は、管理サーバ40の通信部42との間で無線通信が可能となっている。なお、図3では、便宜上、一の携帯端末48のみ図示している。携帯端末48は、例えばスマートフォンや携帯電話器等からなり、ディスプレイ部を有している。携帯端末48には、停電発生時に管理サーバ40から通信部42より建物11への給電指示が送信される。給電指示は例えばメールで送信され、その給電指示が携帯端末48により受信されると、携帯端末48のディスプレイ部に給電指示の内容が表示される。なお、給電指示をメールに代えて音声情報で送信し、その音声情報を受信した携帯端末48が給電指示の内容を音声で出力するようにしてもよい。
【0051】
次に、管理サーバ40によって実行される建物給電処理について説明する。図4は、建物給電処理を示すフローチャートである。なお、本処理は、地震等の災害により地域X内(つまり各建物11)で停電が発生したことをトリガとして開始される。例えば、管理サーバ40に、電力会社等から停電発生情報が入力されたことに基づき開始される。
【0052】
まずステップS11では、各建物11における冷蔵庫24の庫内温情報及び食品在庫量情報を記憶部41より読み出す。これにより、停電発生時、詳しくは停電発生直前の各冷蔵庫24の庫内温情報及び食品在庫量情報が取得される。なお、庫内温情報及び食品在庫量情報が冷蔵庫情報に相当する。
【0053】
続くステップS12では、各建物11における在不在情報を記憶部41より読み出す。これにより、停電発生時における各建物11の在不在情報が取得される。次のステップS13では、取得した各建物11の在不在情報に基づき、各建物11ごとに居住者が在宅しているか否かを判定する在宅判定処理を行う。
【0054】
ステップS14では、上記のステップで取得した各建物11における冷蔵庫24の庫内温情報及び食品在庫量情報と、在宅判定処理の判定結果とのうち少なくともいずれかに基づき、各建物11の冷蔵庫24に車両13より給電を行う際の優先順位を設定する優先順位設定処理を行う。優先順位設定処理では、例えば以下の(a)〜(c)に示す処理を行うことが考えられる。
【0055】
(a)まず、各建物11における冷蔵庫24の庫内温情報に基づき、各建物11の冷蔵庫24(つまりは各建物11)に車両13より給電する際の優先順位を設定することが考えられる。この場合、庫内温が高い冷蔵庫24ほど給電の優先順位を高く設定することが考えられる。
【0056】
(b)また、各建物11における冷蔵庫24の食品在庫量情報に基づき、各建物11の冷蔵庫24に給電する際の優先順位を設定するようにしてもよい。この場合、食品在庫量が多い冷蔵庫24ほど給電の優先順位を高く設定することが考えられる。
【0057】
(c)また、在宅判定処理の判定結果、つまり各建物11に居住者が在宅しているか否かに基づき、各建物11の冷蔵庫24に給電する際の優先順位を設定するようにしてもよい。この場合、居住者が在宅している建物11の冷蔵庫24ほど給電の優先順位を高く設定することが考えられる。
【0058】
ステップS15では、各車両13の位置情報及び蓄電量情報を取得する。これら各情報の取得に際しては、通信部42より各車両13にリクエスト信号を送信する。このリクエスト信号が各車両13のコントローラ45により受信されると、各車両13のコントローラ45はその応答として車両13の位置情報及び蓄電量情報を通信部45aより送信する。そして、これら送信される各車両13の位置情報及び蓄電量情報をそれぞれ通信部42を介して受信することで、各車両13の位置情報及び蓄電量情報を取得する。
【0059】
ステップS16では、上記ステップS15で取得した各車両13の位置情報及び蓄電量情報のうち少なくともいずれかの情報に基づき、各車両13のうちいずれの車両13により各建物11の冷蔵庫24へ給電を行うかを決定する給電車両決定処理を行う。この決定処理では、例えば以下の処理を行うことが考えられる。
【0060】
(d)まず、各車両13の位置情報に基づいて、各建物11の冷蔵庫24に給電を行う車両13を決定することが考えられる。この場合、各車両13の位置情報に基づいて、各車両13が地域X内にあるか否かを判定し、判定の結果、地域X内にあると判定された車両13を給電用の車両13として決定することが考えられる。
【0061】
(e)また、各車両13の蓄電量情報に基づいて、各建物11の冷蔵庫24に給電を行う車両13を決定することが考えられる。この場合、各車両13の蓄電量情報に基づいて、各車両13ごとに車両13の蓄電量が所定量以上あるか否かを判定し、判定の結果、蓄電量が所定量以上ある車両13を給電用の車両13として決定することが考えられる。この際、所定量は、例えば車両13により各建物11の冷蔵庫24に電力を供給する際に必要となる蓄電量(必要蓄電量)よりも大きな値として設定される。また、所定量は、上記必要蓄電量に、車両13が所定距離走行するのに必要な蓄電量(走行可能蓄電量)を加えた値よりも大きな値として設定されてもよい。
【0062】
また、本実施形態では、給電車両決定処理にて、各車両13のうちいずれか一の車両13が給電用の車両13として決定されることを想定している。但し、各車両13のうちいずれか2つの車両13が給電用の車両13として決定されるようにしてもよい。なお、給電車両決定処理にて、例えば各車両13のすべてが地域X内にあると判定された場合には、各車両13によりそれぞれ自建物11の冷蔵庫24に給電が可能であるため、この場合には本建物給電処理を終了することとする。
【0063】
ステップS17では、給電車両決定処理で決定された車両13のユーザの携帯端末48に各建物11の冷蔵庫24へ給電を行うよう給電指示を出す給電指示処理を行う。この給電指示処理では、上記ステップS14で設定された各建物11の冷蔵庫24へ給電を行う際の優先順位にしたがって、それら各建物11の冷蔵庫24に給電を行うようユーザに対して給電指示を出す。以下においては、この給電指示処理の詳細について図5を用いながら説明する。図5は給電指示処理の流れを示すフローチャートである。なお、ステップS17の給電指示処理が終了した後、本建物給電処理を終了する。
【0064】
図5に示すように、給電指示処理では、まずステップS21にて、優先順位カウンタiを1に設定する(i←1)。次のステップS22では、給電の優先順位がi番目(詳しくは1番目)の冷蔵庫24、つまり給電の優先順位が最も高い冷蔵庫24に車両13より給電を行うようユーザの携帯端末48に指示を出す。この場合、通信部42よりユーザの携帯端末48に指示の内容をメールで送信する。例えば、「○○宅に移動して給電を行ってください」といったメッセージを送信する。また、この際、給電先の建物11の所在地に関する情報(住所情報や地図情報等)を上記のメッセージと併せて送信するようにしてもよい。
【0065】
なお、上記のメッセージを携帯端末48が受信した際に携帯端末48よりブザー音等の音声を出力したり、携帯端末48を内蔵のバイブレーション機能を用いて振動させたりするようにしてもよい。そうすれば、給電の指示に関するメッセージが携帯端末48に送信されたことをユーザは確実に気づくことができる。
【0066】
冷蔵庫24への給電の指示を受けたユーザはその冷蔵庫24(つまり給電の優先順位が1番目の冷蔵庫24)のある建物11へ車両13を移動させ、その建物11に設けられた充電装置15の充電ケーブル15aを車両13に接続する。そして、その接続状態で、車両13(車載バッテリ27)に蓄えられた蓄電電力を車両13より建物11側の冷蔵庫24に充電装置15を介して供給する。これにより、停電発生により運転が停止されていた冷蔵庫24が作動し(運転され)、冷蔵庫24による食品の冷蔵が行われる。
【0067】
次のステップS23では、給電の優先順位がi番目の冷蔵庫24、つまり給電の指示にしたがい車両13からの給電が行われている冷蔵庫24について庫内温度が所定値α以下であるか否かを判定する。この判定は、当該冷蔵庫24の庫内温情報を記憶部41より読み出し、その読み出した(現時点の)庫内温情報に基づいて行う。なお、この場合、所定値αは、例えば冷蔵庫24の庫内設定温度に設定されている。但し、所定値αは必ずしも庫内設定温度とする必要はなく、庫内設定温度よりも高い温度に設定する等、任意としてよい。
【0068】
冷蔵庫24の庫内温度が所定値αよりも高くなっている場合には、庫内温度が所定値α以下となるまで本ステップS23の判定を繰り返す。一方、庫内温度が所定値α以下となっている場合、つまり冷蔵庫24の庫内が十分に冷却されたとみなせる場合にはステップS24に進み、ユーザの携帯端末48に冷蔵庫24への給電を終了するよう給電終了指示を出す給電終了指示処理を行う。この処理では、通信部42よりユーザの携帯端末48に給電終了指示の内容をメールで送信する。例えば、「冷蔵庫への給電を終了して下さい」等のメッセージを送信する。
【0069】
なお、このメッセージを携帯端末48が受信した際にも、携帯端末48よりブザー音等の音声を出力したり、携帯端末48を内蔵のバイブレーション機能を用いて振動させたりするようにしてもよい。
【0070】
冷蔵庫24への給電終了の指示を受けたユーザは車両13から冷蔵庫24への給電を終了させ、充電装置15の充電ケーブル15aを車両13から取り外す。
【0071】
続くステップS25では、優先順位カウンタiが3に設定されているか否かを判定する。優先順位カウンタiが1又は2に設定されている場合にはステップS26に進み、優先順位カウンタiを1だけインクリメントした後(i←i+1)、ステップS22〜S25の各処理を再び行う。つまり、給電の優先順位が1番目の冷蔵庫24への給電終了の指示が出された後は、給電の優先順位が2番目の冷蔵庫24への給電の指示と給電終了の指示とが出され、その後、給電の優先順位が3番目の冷蔵庫24への給電の指示と給電終了の指示とが出されるようになっている。
【0072】
このように、本給電指示処理では、ステップS14で設定された給電の優先順位にしたがって各建物11の冷蔵庫24へ給電を行うよう車両13のユーザに給電の指示が出されるようになっている。これにより、ユーザは、給電の優先順位にしたがって各建物11に車両13を移動させ、それら各建物11の冷蔵庫24に順に車両13より給電を行うことが可能となっている。
【0073】
一方、優先順位カウンタiが3に設定されている場合、つまり給電の優先順位が3番目の冷蔵庫24(換言すると給電の優先順位が最も低い冷蔵庫24)への給電終了指示が出されている場合には本処理を終了する。
【0074】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0075】
建物11で停電が発生した場合に、建物11内の冷蔵庫24に給電を行う車両として予め定められた給電車両13のユーザの携帯端末48に当該車両13より冷蔵庫24への給電を行うよう給電指示を出すこととした。これにより、建物11で停電が発生した場合に、その建物11の車両13が使用中である等して建物11付近にない場合でも、給電車両13のユーザに同車両13を用いて冷蔵庫24への給電を行わせることができる。そのため、停電発生時において冷蔵庫24内の食品を確実に保存させることができ、ひいては食の確保を確実に行うことができる。
【0076】
複数の建物11で停電が発生した場合に、それら各建物11の冷蔵庫24に給電を行うための給電車両13を定めた。そして、各建物11での停電発生時には各建物11ごとに冷蔵庫24の庫内温度を取得し、それら取得した各冷蔵庫24の庫内温度に基づき、車両13より各冷蔵庫24へ給電を行う際の優先順位を設定した。そして、その設定した優先順位にしたがって各建物11の冷蔵庫24へ給電を行うよう車両13のユーザに給電指示を出すこととした。具体的には、各建物11の冷蔵庫24のうち庫内温度が高い冷蔵庫24ほど給電の優先順位を高く設定した。これにより、各建物11の冷蔵庫24に給電の求められる度合いの高い順で給電を行わせることが可能となるため、各冷蔵庫24への給電を好適に行うことができる。また、庫内温度が高く食品の保存が困難な冷蔵庫24に優先させて給電を行うことで、停電発生時に各冷蔵庫24内の食品を好適に保存させることが可能となる。
【0077】
また、各建物11での停電発生時には各建物11ごとに冷蔵庫24内の食品在庫量を取得し、それら取得した各冷蔵庫24の食品在庫量に基づき、車両13より各冷蔵庫24へ給電を行う際の優先順位を設定した。具体的には、各建物11の冷蔵庫24のうち食品在庫量が多い冷蔵庫24ほど優先順位を高く設定した。これにより、各建物11の冷蔵庫24に給電の求められる度合いの高い順で給電を行わせることが可能となるため、各冷蔵庫24への給電を好適に行うことができる。また、食品在庫量が多く食の確保に有効な冷蔵庫24に優先させて給電を行うことで、停電発生時に食の確保を好適に行うことができる。また、多くの食品を確保することで、停電時にその食品を各建物11の居住者に分け与えるといったことも可能となるため、その点を踏まえても好適な構成といえる。
【0078】
各建物11で停電が生じた場合に各建物11ごとに居住者の在不在を判定し、その判定結果に基づき車両13より各建物11の冷蔵庫24へ給電を行う際の優先順位を設定した。具体的には、居住者が在宅している建物11の冷蔵庫24ほど給電の優先順位を高く設定した。この場合、居住者が在宅していることで食の確保が必要となる建物11の冷蔵庫24に優先して給電を行うことができるため、停電発生時において好適に居住者の食の確保を行うことができる。
【0079】
各建物11で停電が生じた場合に各車両13の位置情報を取得し、それら取得した各車両13の位置情報に基づいて、それら各車両13のうちいずれの車両13のユーザに給電指示を出すかを決定した。具体的には、各車両13ごとに車両13が地域X内にあるか否かを判定し、判定の結果、地域Xにあると判定された車両13のユーザに給電指示を出すこととした。この場合、車両13による建物11内の冷蔵庫24への給電を速やかに行わせることができるため、冷蔵庫24内の食品の保存を好適に行うことができる。
【0080】
各建物11で停電が生じた場合に各車両13の蓄電量情報を取得し、それら取得した各車両13の蓄電量情報に基づいて、それら各車両13のうちいずれの車両13のユーザに給電指示を出すかを決定した。具体的には、各車両13のうち蓄電量が所定量以上ある車両13のユーザに給電指示を出すこととした。この場合、車両13から冷蔵庫24への給電をある程度長期に亘って行うことができるため、冷蔵庫24内を好適に冷却することができ、食品の保存を好適に行うことが可能となる。
【0081】
地域X内に設けられた(給電対象である)各建物11の車両13をそれぞれ停電時にそれら建物11の冷蔵庫24へ給電を行う給電車両として定め、停電発生時にはこれら各車両13のうち地域X内に存在する車両13のユーザに給電指示を出すことした。この場合、地域X内における各建物11の車両13を用いてそれら各建物11の冷蔵庫24への給電を行うこととしているため、冷蔵庫24への給電を速やかに開始させることができるとともに、給電車両として専用の車両を別途用意する必要がないという利点を得ることもできる。
【0082】
管理サーバ40の記憶部41に各建物11における冷蔵庫24の庫内温情報及び食品在庫量と、各建物11の在不在情報とを都度記憶するようにし、停電発生時には記憶部41からこれら各情報を読み出して取得し、その取得した情報に基づき、各冷蔵庫24へ給電する際の優先順位を設定するようにした。建物11での停電発生時には各センサ31〜33に電力が供給されなくなりセンサ31〜33が作動しなくなることが想定されるが、上記のように記憶部41に記憶した情報を読み出して取得するようにしたことで、停電発生時にもこれらの情報に基づき優先順位を設定することが可能となる。
【0083】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0084】
・上記実施形態では、停電発生時に各建物11の冷蔵庫24の庫内温情報に基づき、車両13より各建物11の冷蔵庫24へ給電を行う際の優先順位を設定したが、これを変更してもよい。例えば、停電発生時に各建物11の冷蔵庫24の周囲温度を取得し、それら取得した各冷蔵庫24の周囲温情報に基づき、給電の優先順位を設定するようにしてもよい。具体的には、周囲温度が高い冷蔵庫24ほど給電の優先順位を高く設定することが考えられる。停電発生時には冷蔵庫24の周囲温度が高いほど冷蔵庫24の庫内温が高くなり易いと考えられるため、この場合、庫内温度が高くなり易く食品の保存が困難な冷蔵庫24に優先させて給電を行うことができる。
【0085】
・上記実施形態では、各建物11の冷蔵庫24へ給電を行う際の優先順位を設定し、その優先順位にしたがって各建物11の冷蔵庫24へ給電を行うよう車両13のユーザに給電指示を出したが、各冷蔵庫24への給電指示の出し方は必ずしもこれに限らない。例えば、各建物11の冷蔵庫24のうち、庫内温が所定値以上となっている冷蔵庫24にのみ又は在庫量が所定量以上となっている冷蔵庫24にのみ、冷蔵庫24への給電を行うよう給電指示を出すことが考えられる。
【0086】
また、給電指示を出すに際しては必ずしも各冷蔵庫24に対してどのように給電を行うかに関する指示を出す必要はない。つまり、各冷蔵庫24にそれぞれ給電を行うよう指示を出すだけでもよい。
【0087】
・上記実施形態では、停電発生時に記憶部41より冷蔵庫24の庫内温情報を読み出して取得したが、これを変更して、停電発生時に庫内温センサ31からの検知信号に基づき冷蔵庫24の庫内温を取得してもよい。庫内温センサ31はバッテリを内蔵し、停電発生時にもバッテリの電力で作動させることが可能であるため、このような構成とすることも可能である。また、在庫量センサ32や人検知センサ33に関しても、バッテリ内蔵型とすることで、上記同様、停電発生時にセンサ32,33からの検知信号に基づき、食品在庫量等を取得することが可能である。
【0088】
・上記実施形態では、給電指示処理において、一の冷蔵庫24への給電終了指示を出してから次の優先順位の冷蔵庫24への給電の指示を出すようにすることで、設定された給電の優先順位にしたがって各冷蔵庫24に給電を行うよう指示を出すこととしたが、給電の優先順位にしたがって各冷蔵庫24に給電を行うよう指示を出す方法は必ずしもこれに限らない。例えば、給電指示処理において、各建物11の冷蔵庫24に給電を行う際の順序(優先順位に沿った順序)を1回の指示で行うようにしてもよい。
【0089】
・上記実施形態では、(給電対象である)各建物11における車両13をそれぞれ停電発生時にそれら各建物11に給電を行う給電車両として登録したが、各建物11の車両13以外の車両を給電車両として登録するようにしてもよい。但しその場合でも、その給電車両は地域X内の車両とするのが望ましい。
【0090】
また、上記実施形態では、給電対象として登録された車両13(給電車両)が3台であったが、給電車両は1台又は2台であってもよいし、4台以上であってもよい。
【0091】
・上記実施形態では、給電対象である建物11(の冷蔵庫24)が3つの場合を例として本建物給電システムを説明したが、例えば給電対象の建物11が2つ又は4つ以上の場合に本建物給電システムを適用してもよい。また、給電対象である建物11が1つしかない場合に本建物給電システムを適用するようにしてもよい。この場合、給電対象の建物11が1つしかないため、車両13により建物11への給電を行う際の優先順位を設定する優先順位設定処理等は不要となる。
【符号の説明】
【0092】
11…所定の建物としての建物、13…給電車両としての車両、24…冷蔵庫、40…管理サーバ、48…携帯端末、X…所定地域としての地域。
図1
図2
図3
図4
図5