【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0058】
<樹脂の合成>
(合成例1:樹脂Q−1)
還流管、窒素ガス導入装置、温度計、及び撹拌装置を取り付けた1Lセパラブルフラスコ(反応容器)に、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BDG)313.6部を入れ、70℃に加温した。一方、メタクリル酸メチル(MMA)79.8部、メタクリル酸ブチル(BMA)68.1部、メタクリル酸ベンジル(BzMA)56.4部、メタクリル酸(MAA)27.6部、メタクリル酸ベンジルジメチルアンモニウムクロライドエチル(DMQ−1)68.1部、及びBDG158.9部からなる溶液を500mLビーカーに入れた。さらに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65、和光純薬工業社製)15.0部を入れ、撹拌してV−65を溶解させたモノマー溶液を得た。得られたモノマー溶液の1/3量を反応容器中に投入した後、残りの2/3量を1.5時間かけて滴下ロートにて滴下した。滴下後、70℃で5.5時間重合して樹脂Q−1を含有する樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液の固形分は39.9%であり、重合転化率はほぼ100%であった。また、GPC(展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF))により測定した樹脂Q−1の数平均分子量は6,300であり、分子量分布(分散度(PDI))は1.99であった。さらに、エタノール/トルエンを溶媒とし、0.1N KOHエタノール溶液にて滴定(指示薬:フェノールフタレイン)して測定した樹脂Q−1の酸価は59.9mgKOH/gであり、ほぼ理論値であった。
【0059】
得られた樹脂中の一般式(3)で表されるモノマーに由来する構成単位の含有量X(mmol/g)は、下記式(A)より算出した。なお、下記式(A)より算出した、樹脂Q−1中の一般式(3)で表されるモノマー(DMQ−1)に由来する構成単位の含有量は、0.762mmol/gであった。
X={(W
1/M)/(W
2+P)}×1000 ・・・(A)
X:一般式(3)で表されるモノマーに由来する構成単位の含有量(mmol/g)
W
1:一般式(3)で表されるモノマーの使用量(g)
M:一般式(3)で表されるモノマーの分子量
W
2:全モノマーの使用量(g)
P:重合開始剤の使用量(g)
【0060】
(合成例2:樹脂Q−2)
前述の合成例1で用いたものと同様の反応容器にBDG365.9部を入れ、70℃に加温した。一方、MMA111部、メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)63.1部、メタクリル酸イソボルニル(IBXMA)64部、MAA21部、DMQ−1 40.9部、及びBDG95.4部からなる溶液を500mLビーカーに入れた。さらに、V−65 7.5部を入れ、撹拌してV−65を溶解させたモノマー溶液を得た。得られたモノマー溶液の1/3量を反応容器中に投入した後、残りの2/3量を1.5時間かけて滴下ロートにて滴下した。滴下後、70℃で5.5時間重合して樹脂Q−2を含有する樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液の固形分は40.1%であり、重合転化率はほぼ100%であった。また、GPCにより測定した樹脂Q−2の数平均分子量は15,500であり、PDIは2.11であった。さらに、樹脂Q−2の酸価は45.1mgKOH/gであった。
【0061】
(合成例3:樹脂Q−3)
前述の合成例1で用いたものと同様の反応容器に、BDG409.9部、ヨウ素4.7部、MMA80.8部、メタクリル酸2−エチルヘキシル(2−EHMA)68.1部、IBXMA56.4部、MAA60.7部、ジフェニルメタン(DPM)0.5部、及び2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−70、和光純薬工業社製)20.2部を入れ、窒素を流しながら40℃で5.5時間重合してBブロックを形成し、樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液の固形分は41.3%であり、重合転化率はほぼ100%であった。また、GPCにより測定したBブロックの数平均分子量は5,200であり、PDIは1.25であった。得られた樹脂溶液の一部を水に添加したところ、樹脂が析出した。このことから、得られた樹脂(Bブロック)は水不溶性であることがわかる。
【0062】
次に、以下に示す手順により、得られた樹脂(Bブロック)にAブロックのプレブロック(APブロック)を導入した。まず、得られた樹脂溶液に、DMQ−1 34部及びBDG79.3部を予め混合して均一化させた溶液を添加した。さらに、V−70 0.7部を添加し、40℃で4時間重合してAPブロックを形成し、樹脂Q−3を含有する樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液の固形分は40.1%であり、重合転化率はほぼ100%であった。また、GPCにより測定した樹脂Q−3の数平均分子量は6,700であり、PDIは1.32であった。さらに、樹脂Q−3の酸価は130.2mgKOH/gであった。
【0063】
得られた樹脂溶液の一部を水に添加したところ、若干白濁したが溶解した。APブロックの構成成分である第4級アンモニウム塩は水溶性であるため、第4級アンモニウム塩に由来する構成単位が導入されたことで、APブロックが水に溶解し、水不溶性のBブロックが微粒子となって分散したと考えられる。このことから、樹脂Q−3は、BブロックにAPブロックが導入されたB−APブロックコポリマーであることがわかる。
【0064】
(合成例4:樹脂Q−4)
前述の合成例1で用いたものと同様の反応容器に、BDG488.9部、ヨウ素4.7部、MMA79.8部、BMA85.9部、2−EHMA64部、MAA47.6部、DPM0.5部、及びV−70 20.2部を入れ、窒素を流しながら40℃で5.5時間重合してBブロックを形成し、樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液の固形分は38.0%であり、重合転化率はほぼ100%であった。また、GPCにより測定したBブロックの数平均分子量は4,600であり、PDIは1.28であった。
【0065】
次いで、得られた樹脂溶液に、メタクリル酸トリメチルアンモニウムクロライドエチル(DQ−100、共栄社化学社製)22.7部、及びV−70 0.5部を添加し、40℃で4時間重合してAPブロックを形成し、樹脂Q−4を含有する樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液の固形分は40.2%であり、重合転化率はほぼ100%であった。また、GPCにより測定した樹脂Q−4の数平均分子量は5,600であり、PDIは1.31であった。さらに、樹脂Q−4の酸価は102.9mgKOH/gであった。得られた樹脂溶液の一部を水に添加したところ、若干白濁したが溶解した。このことから、樹脂Q−4は、BブロックにAPブロックが導入されたB−APブロックコポリマーであることがわかる。
【0066】
(比較合成例1:樹脂R−1)
前述の合成例1で用いたものと同様の反応容器にBDG315部を入れ、70℃に加温した。一方、MMA20部、CHMA60部、BzMA90部、MAA30部、V−65 10部を500mLビーカーに入れ、撹拌してV−65を溶解させたモノマー溶液を得た。得られたモノマー溶液の1/3量を反応容器中に投入した後、残りの2/3量を1.5時間かけて滴下ロートにて滴下した。滴下後、70℃で5.5時間重合して樹脂R−1を含有する樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液の固形分は40.1%であり、重合転化率はほぼ100%であった。また、GPCにより測定した樹脂R−1の数平均分子量は12,300であり、PDIは2.04であった。さらに、樹脂R−1の酸価は97.3mgKOH/gであった。28%アンモニア水22.2部及びイオン交換水152.8部を得られた樹脂溶液に添加してカルボキシ基を中和し、透明な樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液の固形分は30.1%であった。
【0067】
(比較合成例2:樹脂R−2)
還流管、窒素ガス導入装置、温度計、及び撹拌装置を取り付けた2Lセパラブルフラスコ(反応容器)に、BDG490.2部、ヨウ素4.7部、MMA54.8部、BMA85.9部、2−EHMA43.6部、MAA47.6部、DPM0.5部、V−70 20.2部を入れ、窒素を流しながら40℃で5.5時間重合してBブロックを形成し、樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液の固形分は34.1%であり、重合転化率はほぼ100%であった。また、GPCにより測定したBブロックの数平均分子量は4,700であり、PDIは1.28であった。
【0068】
得られた樹脂溶液に、メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル(DMAEMA)68.1部を添加した。さらにV−70 1.4部を添加し、40℃で4時間重合してCブロックを形成し、樹脂R−2を含有する樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液の固形分は40.0%であり、重合転化率はほぼ100%であった。また、GPCにより測定した樹脂R−2の数平均分子量は5,900であり、PDIは1.36であった。さらに、樹脂R−2の酸価は102.8mgKOH/gであり、アミン価は80.9mgKOH/gであった。酢酸27.3部及びイオン交換水245部を得られた樹脂溶液に添加してアミノ基を中和し、透明な樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液の固形分は30.0%であった。
【0069】
合成例1〜4及び比較合成例1、2で得た樹脂の組成及び物性を表1及び2に示す。
【0070】
【0071】
【0072】
(合成例5:樹脂B−1)
前述の合成例1で用いたものと同様の反応容器に、12−ヒドロキシステアリン酸30部、ε−カプロラクトン239.4部、オクチル酸第一錫0.2部、及び酸化防止剤(商品名「イルガノックス1010」、BASF社製)0.2部を入れ、窒素を流しながら40分間かけて180℃まで昇温し、3時間重合してポリエステル(PES−1)を得た。得られたPES−1の酸価は19.8mgKOH/gであり、GPCにより測定した数平均分子量は5,500であり、PDIは1.86であった。
【0073】
還流管、水分分取管、窒素ガス導入装置、温度計、及び撹拌装置を取り付けた500mLセパラブルフラスコにPES−1 100部を入れ、30分間かけて150℃まで昇温してPES−1を溶融させた。ポリエチレンイミン(商品名「エポミンSP−006」、日本触媒製)3.5部を溶解させたプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)溶液を添加し、180℃まで昇温して3時間反応させた。この間、溶剤として用いたPGM以外にも水が留出しており、反応が進行していることが確認された。反応後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc)を添加して希釈し、主鎖にアミノ基を有するとともに、側鎖にポリエステルを有する櫛形樹脂である樹脂B−1を含有する樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液の固形分は40.3%であった。GPCにより測定した樹脂B−1の数平均分子量は6,500であり、PDIは2.23であった。
【0074】
(合成例6:樹脂B−2)
前述の合成例1で用いたものと同様の反応容器に、BDG206部、ヨウ素3.2部、MMA44部、BMA44部、2−EHMA22部、ポリ(n=2〜4)エチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート(商品名「PME200」、日油社製)34.0部、BzMA15部、DPM0.5部、及びV−70 20.2部を入れ、窒素を流しながら40℃で5.5時間重合してBブロックを形成し、樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液の固形分は46.8%であり、重合転化率はほぼ100%であった。また、GPCにより測定したBブロックの数平均分子量は5,500であり、PDIは1.27であった。
【0075】
得られた樹脂溶液に、DMQ−1 85.1部及びBDG198.6部を予め混合して均一化させた溶液を添加した。さらに、V−70 1.7部を添加し、40℃で4時間重合してAPブロックを形成し、樹脂B−2を含有する樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液の固形分は40.1%であり、重合転化率はほぼ100%であった。また、GPCにより測定した樹脂B−2の数平均分子量は7,500であり、PDIは1.35であった。
【0076】
<樹脂処理顔料の調製>
(顔料の微細化処理)
カラーフィルター用の顔料として、PB15:6、PR254、PR177、PY138を準備し、以下に示す方法で微細化処理を行なった。顔料100部、塩化ナトリウム400部、及びジエチレングリコール130部を、加圧時に使用する密閉用の蓋を装着したニーダー(モリヤマ社製加圧ニーダー)に仕込んだ。ニーダー内に均一に湿潤された塊ができるまで予備混合した。加圧蓋を閉じて、圧力6kg/cm
2で内容物を押さえ込みながら、7時間混練及び摩砕処理して摩砕物を得た。得られた摩砕物を2%硫酸3,000部に投入して1時間撹拌した。ろ過して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除去した後、十分水洗して、微細化した顔料を得た。透過型電子顕微鏡観察により解析した顔料の数平均粒子径は、約30nmであった。
【0077】
(調製例1:処理ブルー顔料−1)
微細化したPB15:6(顔料)の水ペースト347.2部(顔料100部)、及び下記式(A)で表される銅フタロシアニンモノスルホン酸(MS、分子量656.1)5.0部を5Lのビーカーに入れ、顔料の濃度が5%となるように水を添加して希釈した。上記のMSは、顔料のシナジストとして作用する、スルホン酸基を有する色素である。ホモジナイザーで撹拌しながら10%NaOH水溶液を添加して、MSのスルホン酸基をナトリウム塩に置き換えるとともに、pHを約10.5に調整した。合成例1で得た樹脂Q−1を含有する樹脂溶液25.1部(樹脂Q−1 10部)を添加した後、5000rpmで1時間撹拌して解膠した。これにより、MSと樹脂Q−1との反応生成物である樹脂A−1を形成させ、樹脂処理顔料のスラリーを得た。
【0078】
【0079】
10%酢酸水溶液を添加してpHを約5に調整した後、スラリーをろ過及び洗浄して顔料ペーストを得た。得られた顔料ペーストを80℃で24時間乾燥した後、粉砕して樹脂処理顔料(処理ブルー顔料−1)を得た。得られた処理ブルー顔料−1に含まれる樹脂A−1は、MSに対し、樹脂Q−1が理論的に100%反応して形成された樹脂である。すなわち、MSと樹脂Q−1が反応した後、塩化ナトリウムが脱離して形成された樹脂A−1によって顔料が処理され、樹脂処理顔料が形成されている。上記の例では、MSと樹脂Q−1の第4級アンモニウム塩とを、ほぼ等モル反応させている。また、この樹脂A−1は、構成単位(1)を48.4%含有する共重合体である。
【0080】
処理ブルー顔料−1の一部を過剰のTHFと混合して十分撹拌し、樹脂A−1のTHF抽出物を得た。エバポレーターを使用してTHF抽出物からTHFを留去し、物性測定用の樹脂A−1を得た。得られた物性測定用の樹脂A−1を用いて、樹脂A−1の重量平均分子量及び酸価を測定した。以下、樹脂Aの重量平均分子量及び酸価は、同様の方法で抽出した樹脂Aを用いて測定した。
【0081】
(調製例2〜4)
表3に示す配合としたこと以外は、前述の調製例1と同様にして各色の樹脂処理顔料を得た。
【0082】
【0083】
表3中、「245S」、「DATTS」、及び「YS」は、それぞれ下記式(B)、(C)、及び(D)で表されるシナジストである。
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
(調製例5:処理ブルー顔料−2)
微細化したPB15:6(顔料)の水ペースト347.2部(顔料100部)、及びシナジスト(MS)5.0部を5Lのビーカーに入れ、顔料の濃度が5%となるように水を添加して希釈した。ホモジナイザーで撹拌しながら10%NaOH水溶液を添加して、MSのスルホン酸基をナトリウム塩に置き換えるとともに、pHを約10.5に調整した。合成例1で得た樹脂Q−1を含有する樹脂溶液25.1部(樹脂Q−1 10部)を添加した後、5000rpmで1時間撹拌して解膠した。これにより、MSと樹脂Q−1との反応生成物である樹脂A−1を形成させ、樹脂処理顔料のスラリーを得た。直径1mmφのジルコニアビーズをメディアとして用いた横型ビーズミルに、得られた樹脂処理顔料のスラリーを入れ、十分に水性分散した。10%酢酸水溶液を添加してpHを約5に調整した後、スラリーをろ過及び洗浄して顔料ペーストを得た。得られた顔料ペーストを80℃で24時間乾燥した後、粉砕して樹脂処理顔料(処理ブルー顔料−2)を得た。
【0088】
(比較調製例1:処理ブルー顔料−3)
微細化したPB15:6(顔料)の水ペースト347.2部(顔料100部)、及びMS5.0部を5Lのビーカーに入れ、顔料の濃度が5%となるように水を添加して希釈した。ホモジナイザーで撹拌しながら、比較合成例1で得た樹脂R−1を含有する樹脂溶液33.3部(樹脂R−1 10部)を添加した後、5000rpmで1時間撹拌して解膠し、顔料スラリーを得た。得られた顔料スラリーに10%水酸化ナトリウム水溶液をpH10以上になるまで添加した。添加途中、顔料スラリーが増粘し、樹脂及び顔料が析出していることを確認した。顔料スラリーをろ過及び洗浄して顔料ペーストを得た。得られた顔料ペーストを80℃で24時間乾燥した後、粉砕して樹脂処理顔料(処理ブルー顔料−3)を得た。
【0089】
(比較調製例2:処理レッド顔料−3)
微細化したPR254(顔料)の水ペースト392.2部(顔料100部)、及びシナジスト(254S)5.0部を5Lのビーカーに入れ、顔料の濃度が5%となるように水を添加して希釈した。ホモジナイザーで撹拌しながら樹脂R−1を含有する樹脂溶液133.3部(樹脂R−1 40部)を添加した後、5000rpmで1時間撹拌して解膠し、顔料スラリーを得た。得られた顔料スラリーに10%水酸化ナトリウム水溶液をpH10以上になるまで添加した。添加途中、顔料スラリーが増粘し、樹脂及び顔料が析出していることを確認した。顔料スラリーをろ過及び洗浄して顔料ペーストを得た。得られた顔料ペーストを80℃で24時間乾燥した後、粉砕して樹脂処理顔料(処理レッド顔料−3)を得た。
【0090】
(比較調製例3:処理イエロー顔料−2)
微細化したPY138の水ペースト332.2部(顔料100部)、及びシナジスト(YS)5.5部を5Lのビーカーに入れ、顔料の濃度が5%となるように水を添加して希釈した。ホモジナイザーで撹拌しながら樹脂R−2を含有する樹脂溶液100部(樹脂R−2 30部)を添加した後、5000rpmで1時間撹拌して解膠し、顔料スラリーを得た。得られた顔料スラリーに10%酢酸水溶液をpH5以下になるまで添加した。添加途中、顔料スラリーが増粘し、樹脂及び顔料が析出していることを確認した。顔料スラリーをろ過及び洗浄して顔料ペーストを得た。得られた顔料ペーストを80℃で24時間乾燥した後、粉砕して樹脂処理顔料(処理イエロー顔料−2)を得た。
【0091】
調製した樹脂処理顔料に含まれる樹脂Aの物性をまとめたものを表4に示す。
【0092】
【0093】
樹脂A−1、A−4の組成及び物性をまとめたものを表5に示す。また、樹脂A−2、A−3の組成及び物性をまとめたものを表6に示す。
【0094】
【0095】
【0096】
<顔料分散液(CF用着色剤)>
(実施例1〜5、比較例1〜4)
表7に示す組成となるように各成分を配合し、ディゾルバーで2時間撹拌した。顔料の塊がなくなったことを確認した後、横型メディア分散機(商品名「ダイノミル0.6リットルECM型」、シンマルエンタープライゼス社製、ジルコニア製ビーズ:径0.65mm)を使用し、周速10m/sで分散処理して顔料分散液(実施例1〜5、比較例1〜3)を調製した。また、銅フタロシアニンモノスルホン酸5%で処理されたPB−15:6(比較ブルー顔料)を、市販の顔料分散剤(商品名「BYKLPN−21116」、BYK社製、固形分濃度40%)を用いて分散させて顔料分散液(比較例4)を調製した。表7中の「アクリル樹脂」は、モノマー組成がBzMA/MAA=80/20(質量比)であり、GPCにより測定される数平均分子量(Mn)が5,500、PDIが2.02であるもの(固形分濃度30%のPGMAc溶液で測定)を用いた。
【0097】
【0098】
調製した顔料分散液中の顔料の数平均粒子径の測定結果を表8に示す。また、調製した顔料分散液の初期の粘度、及び45℃で10日間放置した後の粘度(保存後の粘度)の測定結果を表8に示す。なお、顔料の数平均粒子径は、粒度測定器(商品名「NICOMP 380ZLS−S」、インターナショナル・ビジネス社製)を使用して測定した。
【0099】
【0100】
表8に示す結果から、いずれの顔料分散液についても、顔料分散性及び保存安定性が良好であることがわかる。
【0101】
<疑似CF用レジスト(CF用着色剤)>
(実施例6〜10、比較例5〜8)
実施例1〜5及び比較例1〜4で得た顔料分散液を用い、表9に示す組成となるように各成分を配合し、混合機を使用して十分混合して、疑似カラーフィルター用顔料着色剤(疑似CF用レジスト)を調製した。表9中の「感光性アクリル樹脂ワニス」は、BzMA/MAA共重合体にメタクリル酸グリシジルを反応させて得たアクリル樹脂を含むワニスである。このアクリル樹脂のMnは6,000であり、PDIは2.38であり、酸価は110mgKOH/gであった。また、表9中、「TMPTA」はトリメチロールプロパントリアクリレートを示し、「HEMPA」は2−ヒドロキシエチル−2−メチルプロピオン酸を示し、「DEAP」は2,2−ジエトキシアセトフェノンを示す。
【0102】
【0103】
<カラーガラス基板の製造及び評価>
(カラーガラス基板の製造)
シランカップリング剤で処理したガラス基板をスピンコーターにセットした。そして、ガラス基板上に300rpm、5秒間の条件で、調製した疑似CF用レジストをスピンコートした。120℃で10分間プリベイクした後、超高圧水銀灯を用いて100mJ/cm
2の光量で露光してカラーガラス基板を製造した。製造したカラーガラス基板は、いずれも優れた分光カーブ特性を有していた。
【0104】
(カラーガラス基板の評価)
(a)光学特性評価−1(コントラスト(CR)、Y値)
コントラスト測定機(商品名「コントラストテスター CT−1」、壺坂電機社製)を使用して、プリベイク後及びポストベイク後のガラス基板のコントラスト(CR)、及び透明性の指標となるY値を測定した。なお、青色ガラス基板についてはy=0.074、赤色(PR254)ガラス基板についてはx=0.650、赤色(PR177)ガラス基板についてはx=0.620、及び黄色ガラス基板についてはx=0.426として測定した。また、青色ガラス基板については、比較例5のCR及びY値を100%とする相対値で表し、赤色ガラス基板については、比較例6のCR及びY値を100%とする相対値で表し、黄色ガラス基板については、比較例7のCR及びY値を100%とする相対値で表した。CR及びY値の測定結果を表10に示す。
【0105】
【0106】
表10に示すように、実施例6、7、9、及び10の疑似CF用レジストを用いて製造したカラーガラス基板は、比較例5〜7の疑似CF用レジストを用いて製造したカラーガラス基板と比較して、いずれも、CRが5%以上、Y値が10%以上上昇していることが分かる。すなわち、実施例の疑似CF用レジストに用いた樹脂処理顔料は、比較例の疑似CF用レジストに用いた樹脂処理顔料と比較して、より微細化されていたことがわかる。なお、比較例8の疑似CF用レジスト(未処理顔料を用いたもの)を用いて製造したカラーガラス基板は、比較例5の疑似CF用レジストを用いて製造したカラーガラス基板と比べて、ほとんど差異はなかった。
【0107】
(b)光学特性評価−2(耐熱性評価)
プリベイク後及びポストベイク後のガラス基板について、CIE表色系における色度(x、y)、CR、Y値、色度(x、y)を測定した。そして、プリベイク後とポストベイク後のコントラスト差(ΔCR、ΔY値)、及び色差(ΔEab
*)を算出し、疑似CF用レジスト(CF用着色剤)の耐熱性を評価した。なお、ΔCR及びΔY値は、プリベイク後のガラス基板のCR及びY値をそれぞれ100%とする相対値で表したものである。また、ΔEab
*は、色差を絶対値で表したものであり、下記式にしたがって算出した。結果を表11に示す。
ΔEab
*={(L2
*−L1
*)
2+(a2
*−a1
*)
2+(b2
*−b1
*)
2}
1/2
プリベイク後の色差1 :(L1
*,a1
*,b1
*)
ポストベイク後の色差2 :(L2
*,a2
*,b2
*)
【0108】
【0109】
表11に示すように、実施例6〜10の疑似CF用レジストを用いて製造したカラーガラス基板は、いずれも、ΔCRの変動が5%以内、ΔY値の変動が3%以内、ΔEab
*が1.0以下であった。すなわち、プリベイク後とポストベイク後で物性値がほとんど変化しておらず、疑似CF用レジスト(CF用着色剤)の耐熱性が良好であることがわかる。これに対して、比較例5〜8の疑似CF用レジストを用いて製造したカラーガラス基板は、ΔCRの変動が約10〜15%、ΔY値の変動が約10〜15%、ΔEab
*は1.1以上であり、ポストベイク後に物性値がかなり低下したことがわかる。すなわち、比較例5〜8の疑似CF用レジストには「樹脂A」を用いていないため、形成された塗膜が熱に弱く、塗膜の表面状態が熱で変化したと考えられる。
【0110】
以上のように、実施例のCF用着色剤は、分散性、保存安定性、光学特性、及び耐熱性に優れていることがわかる。このため、本発明の顔料分散液は、カラーフィルター用の着色剤として非常に有用であることがわかる。
【0111】
<油性インクジェット用インクの調製>
(a)微細化顔料の調製
PR122 100部、塩化ナトリウム400部、及びジエチレングリコール130部を、加圧時に使用する密閉用の蓋を装着したニーダー(モリヤマ社製の加圧ニーダー)に仕込んだ。ニーダー内に均一に湿潤された塊ができるまで予備混合した後、加圧蓋を閉じて、圧力6kg/cm
2で内容物を押さえ込みながら7時間混練及び摩砕処理して摩砕物を得た。得られた摩砕物を2%硫酸3,000部に投入し、1時間撹拌した。ろ過して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除去した後、十分水洗し、顔料の水ペーストを得た。透過型電子顕微鏡観察により解析した、得られた水ペースト中の顔料(PR122)粉末の数平均粒子径は、約100nmであった
【0112】
(b)樹脂処理顔料の調製
顔料(PR122)の水ペースト337.8部(顔料分100部)、及び下記式(E)で表されるシナジストQS 4部を5Lのビーカーに入れ、顔料濃度が5%となるように水で希釈した。ホモジナイザーで撹拌しながら、10%NaOH水溶液を添加してpHを約10.5に調整した。シナジスト中のスルホン酸基をナトリウム塩に置き換えた後、合成例3で得た樹脂Q−3を含有する樹脂溶液24.9部(樹脂Q−3 10部)を添加した後、5000rpmで1時間撹拌して解膠した。これにより、シナジストと樹脂Q−3で造塩した樹脂処理顔料のスラリーを得た。
【0113】
【0114】
10%酢酸水溶液を添加してpHを約5に調整した後、スラリーをろ過及び洗浄して顔料ペーストを得た。得られた顔料ペーストを80℃で24時間乾燥した後、ミルにて粉砕して、樹脂処理顔料(処理マゼンタ顔料−1)を得た。得られた処理マゼンタ顔料−1に含まれる樹脂A−5は、構成単位(1)を34.0%含有する共重合体である。樹脂A−5の組成及び物性を表12に示す。
【0115】
【0116】
(c)顔料分散液の調製
処理マゼンタ顔料−1 16.4部、樹脂B−2 14.9部、アクリル樹脂15部、及びジエチレングリコールモノメチルエーテル53.7部、ディゾルバーで2時間撹拌した。なお、アクリル樹脂としては、モノマー組成がBzMA/MAA=80/20(質量比)であり、GPCにより測定される数平均分子量(Mn)が5,500、PDIが2.02であるもの(固形分濃度30%のPGMAc溶液で測定)を用いた。顔料の塊がなくなったことを確認した後、横型メディア分散機を使用して分散処理して、マゼンタ色の顔料分散液を得た。得られた顔料分散液を10μmのフィルター及び5μmのフィルターに通過させたところ、いずれのフィルターにも詰りは全く生じなかった。
【0117】
(d)顔料分散液の評価
得られたマゼンタ色の顔料分散液中の顔料の数平均粒子径は102nmであった。また、顔料分散液の粘度は11.3mPa・sであった。70℃で1週間保存後における顔料分散液中の顔料の数平均粒子径、及び顔料分散液の粘度に変化はなく、非常に安定していた。
【0118】
得られたマゼンタ色の顔料分散液を用いて、油性インクジェット用インクを調製した。調製したインクを充填したインクカートリッジをインクジェットプリンターに装着し、表面処理された厚さ50μmのPETフィルムにベタ印刷して印刷物を得た。得られた印刷物は、高い光学濃度及びグロス値を有していた。また、印字ヨレがなく、耐擦過性も良好であった。さらに、ウェザオメーターにて耐候性試験を行ったところ、十分な耐候性を有していることがわかった。