特許第6789087号(P6789087)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6789087
(24)【登録日】2020年11月5日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】シールド機
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20201116BHJP
   E21D 13/04 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   E21D9/06 301Z
   E21D13/04
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-237472(P2016-237472)
(22)【出願日】2016年12月7日
(65)【公開番号】特開2018-91101(P2018-91101A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2019年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(73)【特許権者】
【識別番号】516308364
【氏名又は名称】JIMテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】宮元 克洋
(72)【発明者】
【氏名】足立 邦靖
(72)【発明者】
【氏名】屋代 勉
(72)【発明者】
【氏名】磐田 吾郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 直弘
(72)【発明者】
【氏名】内村 裕之
(72)【発明者】
【氏名】杉山 雅彦
【審査官】 松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−201909(JP,A)
【文献】 特開2010−106592(JP,A)
【文献】 特開平04−277296(JP,A)
【文献】 実開平05−014295(JP,U)
【文献】 特開2001−336387(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104695975(CN,A)
【文献】 特開2002−174091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/06
E21D 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非円形トンネルを掘削するシールド機であって、
前記非円形トンネルと略同一の断面形状を有する筒状の前胴部スキンプレートを備え、前部先端に配置されたカッタードラムで切羽の掘削を行う前胴部と、
前記前胴部スキンプレートの断面を分割した複数の分割領域をそれぞれの断面形状とした複数のテール部スキンプレートを備えたテール部と、
複数の前記テール部スキンプレートのそれぞれの内周にセグメントを組み立てて内壁体を構築するエレクターと、
前記前胴部スキンプレートと同じ断面形状を有する中胴部スキンプレートを備え、前記前胴部と前記テール部とを接続する中胴部と、を具備することを特徴とするシールド機。
【請求項2】
前記前胴部スキンプレートの断面は、長方形状であり、
複数の前記テール部スキンプレートは、前記前胴部スキンプレートの断面の長手方向を分割した複数の分割領域をそれぞれの断面形状としていることを特徴とする請求項1記載のシールド機。
【請求項3】
前記中胴部スキンプレートの内周には、推進時に既設の前記セグメントから反力を得る複数のシールドジャッキが取付けられていると共に、前記中胴部スキンプレートの内部に架け渡された柱には、推進時に既設のセグメントを押さえるセグメント押さえ用ジャッキが取付けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のシールド機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非円形トンネルを掘削するシールド機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、シールド機は、進行方向前部で切羽の掘削を行う前胴部と、後部でセグメントの組み立てによって覆工を行うテール部と、前胴部及びテール部を結ぶと共に推進設備であるシールドジャッキ等を内方に装備する中胴部とからなる。このようなシールド機で大断面のトンネルを非開削で構築する場合、シールド機によって複数回掘削し、それらを相互に連結する工法が採用されている(例えば、特許文献1参照)。シールド機による掘削回数は、少ないほど工期が短縮されることになる。従って、シールド機を大きくして、1度に掘削するトンネルの断面積を大きくすることで、掘削回数を減らすことが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−73685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シールド機を大きくした場合は、外部から作用する荷重が大きくなるため、外殻部であるスキンプレートの強度を大きくする必要がある。この場合、前胴部及び中胴部では、鋼製のリング状部材であるリングガータ等によってスキンプレートの強度を補強することができるが、テール部では、スキンプレートの内壁にセグメントを組み立てる必要があるため、スキンプレート自体の厚みによって強度を大きくしなければならない。特に、矩形等の非円形のシールド機は、円形のシールド機に比べて発生する応力及びたわみ量が大きくなり、テール部におけるスキンプレートの厚みが増大する。そのため、テールボイドが大きくなり、裏込注入量が多くなってしまうという問題点があった。なお、高水圧化で施工する場合にも、スキンプレートの強度を確保する必要があるため、同様の問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、テールボイドを小さくすることができ、裏込注入量を少なくすることができるシールド機を提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、非円形トンネルを掘削するシールド機であって、前記非円形トンネルと略同一の断面形状を有する筒状の前胴部スキンプレートを備え、前部先端に配置されたカッタードラムで切羽の掘削を行う前胴部と、前記前胴部スキンプレートの断面を分割した複数の分割領域をそれぞれの断面形状とした複数のテール部スキンプレートを備えたテール部と、複数の前記テール部スキンプレートのそれぞれの内周にセグメントを組み立てて内壁体を構築するエレクターと、前記前胴部スキンプレートと同じ断面形状を有する中胴部スキンプレートを備え、前記前胴部と前記テール部とを接続する中胴部と、を具備することを特徴とする。
さらに、本発明において、前記前胴部スキンプレートの断面は、長方形状であり、複数の前記テール部スキンプレートは、前記前胴部スキンプレートの断面の長手方向を分割した複数の分割領域をそれぞれの断面形状としても良い。
さらに、本発明において、前記中胴部スキンプレートの内周には、推進時に既設の前記セグメントから反力を得る複数のシールドジャッキが取付けられていると共に、前記中胴部スキンプレートの内部に架け渡された柱には、推進時に既設のセグメントを押さえるセグメント押さえ用ジャッキが取付けられても良い。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、テール部を分割することにより、前胴部と同じ断面形状で構成した場合に比べて、スキンプレートの厚さを薄くすることができる。これにより、シールド機を大きくして、1度に掘削するトンネルの断面積を大きくしても、テールボイドを小さくすることができ、裏込注入量を少なくすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係るシールド機の実施形態の構成を示す図である。
図2図1に示すテール部を後方側から見た図である。
図3図1に示す前胴部とテール部との幅方向のスパンを示す図である。
図4図1に示す中胴部を後方側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るシールド機の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0010】
本実施形態は、断面が幅方向(水平方向)に長くされた矩形状(長方形状)の非円形トンネルを掘削し、その内壁体をセグメントSによって構築するシールド機1である。シールド機1は、図1を参照すると、前部で切羽の掘削を行う前胴部2と、後部でセグメントSによる覆工を行うテール部3と、前胴部2とテール部3とを結ぶと共に、推進設備を内方に装備する中胴部4とからなる。
【0011】
前胴部2は、掘削する非円形トンネルと略同一の断面形状を有する、断面が幅方向で長くされた矩形筒状の鋼殻からなるスキンプレート21を備えている。そして、前胴部2の前部先端には、複数のディスクカッターに備えた4台のカッタードラム22が幅方向に並んでそれぞれ回転可能に配置されている。カッタードラム22は、例えば、放射状に突設された3本のアームを偏芯回転させることで、ルーロの三角形の動作原理を利用して、断面が正方形状のトンネルを掘削する。
【0012】
カッタードラム22の後部側に位置するスキンプレート21の内部には、隔壁23によって仕切られたチャンバ24が形成されている。チャンバ24内には、カッタードラム22の回転に伴って掘削ズリが取込まれる。掘削ズリは、図示しないスクリュコンベア等によりチャンバ24から取り出され、後方に排出される。
【0013】
テール部3は、図1及び図2を参照すると、第1分割テール部3aと第2分割テール部3bとに分割されている。第1分割テール部3a及び第2分割テール部3bは、矩形筒状の鋼殻からなるスキンプレート31をそれぞれ備えている。第1分割テール部3aと第2分割テール部3bのそれぞれのスキンプレート31は、前胴部2のスキンプレート21の断面を分割した複数の分割領域をそれぞれの断面形状としている。本実施形態において、スキンプレート31は、前胴部2のスキンプレート21を左右に2分割(長手方向である幅方向を2分割)した断面形状を有している。そして、第1分割テール部3aのスキンプレート31と第2分割テール部3bのスキンプレート31とは、幅方向に並んで配置され、相対する面が溶接等によって接合され、一体化されている。
【0014】
図3(a)に示すように、スキンプレート21(前胴部2)の幅方向のスパンをWとすると、第1分割テール部3a及び第2分割テール部3b(スキンプレート31)のスパンは、図3(b)に示すように、W/2となる。従って、図3(c)に示すように、テール部3を分割することなく、スキンプレート21(前胴部2)と同じスパンWでスキンプレート31aを構成した場合に比べて、第1分割テール部3a及び第2分割テール部3bに作用する外力が小さくなる。これにより、第1分割テール部3a及び第2分割テール部3bにおけるスキンプレート31の厚さT1は、スパンWのスキンプレート31の厚さT0に比べて薄くすることができ、テールボイドを小さくすることができる。
【0015】
なお、本実施形態において、スキンプレート31の断面形状は、セグメントSの組み立てを考慮して角丸矩形になっている。従って、第1分割テール部3aと第2分割テール部3bとの接合部において角丸部が対向する箇所に、前後方向に延びる凹部32が形成される。そこで、この凹部32への土砂の侵入を防止する板状部材33が設けられている。板状部材33は、例えば、溶接によってスキンプレート31の角丸部に接合される。
【0016】
中胴部4は、図1及び図4を参照すると、前胴部2のスキンプレート21と同じ断面形状を有する矩形筒状の鋼殻からなるスキンプレート41を備えている。スキンプレート41の内周には、全周に亘ってリングガータ42が設けられている。リングガータ42は、鋼製のリング状部材であり、スキンプレート21の強度を補強する補強部材として機能する。リングガータ42には、複数の小室が設けられ、この小室内に推進設備であるシールドジャッキ43が収容されている。シールドジャッキ43は、既設のセグメントSから反力を得て、収縮状態から伸長することでシールド機1を推進させる。また、シールドジャッキ43は、セグメントSからの反力がスキンプレート41全周に均等に作用するように、スキンプレート41の内周に等間隔に複数個が取付けられている。
【0017】
リングガータ42の内周側空間には、第1分割テール部3aの内周にセグメントSを組み立てて内壁体を構築するエレクター44aと、第2分割テール部3bの内周にセグメントSを組み立てて内壁体を構築するエレクター44bとが設けられている。エレクター44a及びエレクター44bは、設置前のセグメントSを把持し、所定の角度位置まで移送する機構である。
【0018】
また、スキンプレート41(リングガータ42)の幅方向略中央には、スキンプレート41(リングガータ42)の強度を補強する鋼製の補強柱45が上下方向に架け渡されている。補強柱45には、シールド機1の推進時に、既設のセグメントSのズレを防止するセグメント押さえ用ジャッキ46a、46bが取付けられている。
【0019】
本実施形態では、シールド機1の推進に必要な力は、複数のシールドジャッキ43によって得られるように構成されている。このシールドジャッキ43は、スキンプレート41の内周に等間隔に取付けられているため、第1分割テール部3a及び第2分割テール部3bの内周にそれぞれ組み立てられたセグメントSの3辺のみから反力を得ることになり、既設のセグメントSには、不均一に力が作用することになる。そこで、セグメント押さえ用ジャッキ46a、46bは、収縮状態から伸長することで、既設のセグメントSのシールドジャッキ43の力が作用しない1辺を押さえる。これにより、シールド機1の推進時に、既設のセグメントSのズレを防止することができる。
【0020】
なお、セグメント押さえ用ジャッキ46a、46bの押圧力は、シールドジャッキ43の押圧力に比べて小さくなるように設定されている。これは、セグメント押さえ用ジャッキ46a、46bの押圧力は、セグメントSからの反力として補強柱45に作用することに起因する。すなわち、補強柱45は、上下方向に架け渡され、前後方向に加わる力に対して弱い構造になっているため、補強柱45に対して過大な反力が作用しないようにしてある。
【0021】
また、本実施形態では、前胴部2に4台のカッタードラム22を設ける例について説明したが、前胴部2に設けるカッタードラム22の形式及び台数は適宜設定することができる。さらに、本実施形態では、テール部3を2つに分割する例について説明したが、テール部3の分割数は適宜設定することができる。さらに、本実施形態では、前胴部2のスキンプレート21と、中胴部4のスキンプレート31とを別構成としたが、スキンプレート21とスキンプレート31とを一体化しても良い。
【0022】
以上説明したように、本実施形態は、非円形トンネルを掘削するシールド機1であって、前記非円形トンネルと略同一の断面形状を有する筒状のスキンプレート21(前胴部スキンプレート)を備え、前部先端に配置されたカッタードラム22で切羽の掘削を行う前胴部2と、スキンプレート21の断面を分割した複数の分割領域をそれぞれの断面形状とした複数のスキンプレート31(テール部スキンプレート)を備えたテール部3と、複数のスキンプレート31のそれぞれの内周にセグメントSを組み立てて内壁体を構築するエレクター44a、44bと、スキンプレート21と同じ断面形状を有するスキンプレート41(中胴部スキンプレート)を備え、前胴部2とテール部3とを接続する中胴部4と、を具備する。
この構成により、テール部3を分割することにより、前胴部2と同じ断面形状で構成した場合に比べて、スキンプレート31の厚さを薄くすることができる。これにより、シールド機1を大きくして、1度に掘削する非円形トンネルの断面積を大きくしても、テールボイドを小さくすることができ、裏込注入量を少なくすることができる。
【0023】
さらに、本実施形態は、スキンプレート21の断面は、長方形状であり、複数のスキンプレート31は、スキンプレート21の断面の長手方向を分割した複数の分割領域をそれぞれの断面形状としている。
この構成により、外力によるスキンプレート31の応力及びたわみ量を小さくすることができる。
【0024】
さらに、本実施形態は、スキンプレート41の内周には、推進時に既設のセグメントSから反力を得る複数のシールドジャッキ43が取付けられていると共に、スキンプレート41の内部に架け渡された補強柱45には、推進時に既設のセグメントSを押さえるセグメント押さえ用ジャッキ46a、46bが取付けられている。
この構成により、推進時における既設のセグメントSのズレを防止することができる。
【0025】
なお、本発明が上記各実施形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施形態は適宜変更され得ることは明らかである。
【符号の説明】
【0026】
1 シールド機
2 前胴部
3 テール部
4 中胴部
21 スキンプレート
22 カッタードラム
23 隔壁
24 チャンバ
3a 第1分割テール部
3b 第2分割テール部
31 スキンプレート
32 凹部
33 板状部材
41 スキンプレート
42 リングガータ
43 シールドジャッキ
44a、44b エレクター
45 補強柱
46a、46b セグメント押さえ用ジャッキ
S セグメント
図1
図2
図3
図4