特許第6789097号(P6789097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6789097
(24)【登録日】2020年11月5日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】風止め部材及び建具枠体
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20201116BHJP
   E06B 7/26 20060101ALI20201116BHJP
   E06B 3/46 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   E06B5/16
   E06B7/26
   E06B3/46
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-249348(P2016-249348)
(22)【出願日】2016年12月22日
(65)【公開番号】特開2017-120022(P2017-120022A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2019年7月3日
(31)【優先権主張番号】特願2015-254774(P2015-254774)
(32)【優先日】2015年12月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390033112
【氏名又は名称】積水テクノ成型株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢野 秀明
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 秀康
(72)【発明者】
【氏名】秋山 尚文
(72)【発明者】
【氏名】宮田 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】島本 倫男
【審査官】 鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−202186(JP,A)
【文献】 特開2004−169454(JP,A)
【文献】 特開2015−094172(JP,A)
【文献】 特開2014−043690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/16
E06B 3/46
E06B 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の開口部を構成する窓枠のうちの上枠及び下枠と、窓の外周縁部に取り付けられ前記上枠及び前記下枠に取り付けられた外周枠体のうちの召合せ部と、の間の隙間を封止する風止め部材であって、
前記風止め部材の前記召合せ部と対向する側の面に、直に熱膨張性樹脂組成物層が形成されていると共に、複数の薄板状のヒレ部が形成されている、
風止め部材。
【請求項2】
前記熱膨張性樹脂組成物層が、熱可塑性樹脂と、熱膨張性黒鉛と、無機充填材と、を含む樹脂組成物を成型させてなる、
請求項1に記載の風止め部材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の風止め部材が用いられている、
建具枠体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建築物などの構造物の開口部に設置される窓、扉などの建具の枠体を構成する建具枠体用の部品及び建具枠体に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅などの建築物の開口部に使用する窓、障子、扉、戸、ふすま及び欄間などの建具に要求される性能の一つに防火性能があり、防火性能を高めるために防火構造が施されている。例えば、建築物の開口部に設置される窓の外周枠体には、火災時の火炎や熱が貫通しないように、熱膨張性耐火材が装着されており、特許文献1では、外周枠体の内部の複数の中空部に、シート状の熱膨張性耐火材が粘着テープなどで貼り付けられた金属製の補強材が挿入されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4691324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、窓を取り付けるために構造物の開口部に固定される窓枠と外周枠体との間には、隙間があり、その隙間から火災時の火炎や熱が火災発生場所から漏洩するおそれがある。また、この隙間を埋めるために、窓枠や外周枠体を構成する部品にシート状の熱膨張性耐火材を貼り付けるのでは、コスト及び手間が掛かる。
【0005】
本発明は、上記課題に着目してなされたもので、防火性能の向上を図ることができるうえ、コスト及び手間の低減が可能な建具枠体用の部品及び建具枠体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、構造物の開口部に設置される建具の枠体を構成する建具枠体用の部品であって、少なくとも一部に直に熱膨張性樹脂組成物層が形成されている、建具枠体用の部品によって達成される。
【0007】
上記構成の建具枠体用の部品は、窓の建具枠体を構成するものであり、窓の外周縁部に取り付けられる外周枠体の召合せ部と、前記外周枠体を前記開口部に取り付けるための窓枠の上枠及び下枠との間の隙間を封止する風止め部材とすることができ、この場合、前記風止め部材の前記外周枠体の召合せ部と対向する側の面に前記熱膨張性樹脂組成物層が形成されていることが好ましい。
【0008】
また、上記構成の建具枠体用の部品は、窓の建具枠体を構成するものであり、窓の外周縁部に取り付けられる外周枠体の召合せ框に取り付けられるクレセントとすることができ、この場合、前記クレセントの表面の一部及び/又は前記クレセントを構成する摘み部の内面に前記熱膨張性樹脂組成物層が形成されていることが好ましい。
【0009】
また、上記構成の建具枠体用の部品は、窓の建具枠体を構成するものであり、窓の外周縁部に取り付けられる外周枠体の下框に取り付けられる戸車とすることができ、この場合、前記戸車の側面に前記熱膨張性樹脂組成物層が形成されていることが好ましい。
【0010】
また、上記構成の建具枠体用の部品は、窓の建具枠体を構成するものであり、窓の外周縁部に取り付けられる外周枠体の上框、下框及び戸先框の少なくともいずれかに取り付けられる振れ止め部材とすることができ、この場合、前記振れ止め部材の側周面に前記熱膨張性樹脂組成物層が形成されていることが好ましい。
【0011】
また、上記構成の建具枠体用の部品は、窓の建具枠体を構成するものであり、窓の外周縁部に取り付けられる外周枠体を前記開口部に取り付けるための窓枠の下枠に形成された水抜き穴に嵌め込まれる水抜き部材とすることができ、この場合、前記水抜き部材の内周面に前記熱膨張性樹脂組成物層が形成されていることが好ましい。
【0012】
また、上記構成の建具枠体用の部品は、窓の建具枠体を構成するものであり、窓の外周縁部に取り付けられる外周枠体の召合せ框の上端及び/又は下端の開口を塞ぐキャップとすることができ、この場合、前記キャップの前記開口に嵌め込まれる部分の表面に前記熱膨張性樹脂組成物層が形成されていることが好ましい。
【0013】
また、上記構成の建具枠体用の部品は、窓の建具枠体を構成するものであり、窓の外周縁部に取り付けられる外周枠体を前記開口部に取り付けるための下枠に形成された取付穴に嵌め込まれるサブロック部材とすることができ、この場合、前記サブロック部材の前記取付穴の内周面と対向する面に前記熱膨張性樹脂組成物層が形成されていることが好ましい。
【0014】
また、上記構成のいずれのサッシ部品においても、前記熱膨張性樹脂組成物層を、熱可塑性樹脂と、熱膨張性黒鉛と、無機充填材とを含む樹脂組成物を成型させて形成することもできる。
【0015】
また、本発明の上記目的は、上記構成のいずれの建具枠体用の部品が用いられている建具枠体によっても達成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、防火性能を向上できるうえ、コスト及び手間の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る建具枠体用の部品が用いられる引違い窓の正面図である。
図2】風止め部材の概略構成を示す(a)正面図であり、(b)底面図である。
図3】クレセントの概略構成を示す側面図である。
図4】戸車の概略構成を示す(a)正面図であり、(b)側面図である。
図5】振れ止め部材の概略構成を示す(a)平面図であり、(b)正面図である。
図6】水抜き部材の概略構成を示す(a)斜視図であり、(b)背面図であり、(c)平面図であり、(d)側面図である。
図7】キャップの概略構成を示す斜視図である。
図8】サブロック部材の概略構成を示す(a)斜視図であり、(b)背面図である。
図9】引違い窓の斜視図である。
図10】引違い窓の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明の建具枠体用の部品は、例えば、一戸建住宅、集合住宅、高層住宅、高層ビル、商業施設、公共施設などの建築物、客船、輸送船、連絡船などの船舶などの構造物の開口部に設置される窓、障子、扉、戸、ふすま、欄間等の建具の枠体を構成するものである。なお、建具枠体は、構造物の開口部に固定される窓枠や扉枠の開口枠体の他、窓や扉の外周縁部を補強する外周枠体も建具枠体として含まれる。また、以下の説明では、建具として窓、具体的には引違い窓の例で説明しているが、本発明の建具枠体用の部品及び建具枠体の範囲は引違い窓用に限定されるものではない。
【0019】
図1は、引違い窓1の正面図を示している。建築物などの構造物の矩形状の開口部には窓枠10が固定されている。引違い窓は、外周枠体2が固定された2つの窓20が窓枠10にスライド可能に取り付けられ、左右の外周枠体2のそれぞれ中央側の召合せ框23,23が前後に重なって召合せ部となっている。
【0020】
窓枠10は、平面視矩形状であり、上枠11と、下枠12と、左右の縦枠13,14とにより構成され、各枠11〜14に囲まれた内部が開口部となっている。窓枠10の材質は、ポリ塩化ビニルなどの塩素含有樹脂、ポリエチレン・ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート・ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂などの合成樹脂製の他、アルミニウム、ステンレス、鋼、合金などの金属製、アルミニウム及び合成樹脂の複合製などを挙げることができ、その材質は限定されるものではない。
【0021】
窓枠10の各枠11〜14は、長手方向に延びる長尺状であり、内部に空洞を有している。また、窓枠10の各枠11〜14は、外周枠体2付きの窓20が突き当たる本体部の両端から一対の側壁部が突き出るコ字形状であり、本体部の幅は、2つの外周枠体2付きの窓20を並列配置できる大きさに形成されている。なお、窓枠10の構成は、特に限定されるものではなく、周知のいずれの形態であってもよい。
【0022】
外周枠体2は、平面視矩形状であり、上框21と、下框22と、召合せ框23と、戸先框24とにより構成されている。召合せ框23は、図1の2つの外周枠体2のそれぞれ左右の縦框のうち、各外周枠体2の互いに重なる側の縦框であり、左側の外周枠体2では右側の縦框が召合せ框23となり、右側の外周枠体2では左側の縦框が召合せ框23となる。また、戸先框24は、図1の2つの外周枠体2のそれぞれ左右の縦框のうち、窓枠10の左右の縦枠13,14に突き当たる側の縦框であり、左側の外周枠体2では左側の縦框が戸先框24となり、右側の外周枠体2では右側の縦框が戸先框24となる。
【0023】
各框21〜24は、長手方向に延びる長尺状であり、内部に長手方向に延びる空洞(図示せず)を有している。また、各框21,22,24の窓枠10の各枠11〜14と対向する端面には、長手方向に延びる凹溝(図示せず)が形成されている。
【0024】
外周枠体2の材質は、ポリ塩化ビニルなどの塩素含有樹脂、ポリエチレン・ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート・ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂などの合成樹脂製の他、アルミニウム、ステンレス、鋼、合金などの金属製、アルミニウム及び合成樹脂の複合製などを挙げることができ、その材質が限定されるものではない。
【0025】
各框21〜24に窓20が、例えばゴムシール材やシーリング材(図示せず)等で固定されている。なお、外周枠体2の構成は、特に限定されるものではなく、周知のいずれの形態であってもよい。
【0026】
外周枠体2の各框21〜24には、引違い窓1に操作性や気密性、安全性、排水性などの機能性を付与する複数の構成部品が設けられている。例えば、外周枠体2の召合せ部と窓枠10の上枠11及び下枠12との間(図1で(1)で示す領域)には風止め部材3が設けられている。また、外周枠体2の召合せ框23(図1で(2)で示す領域)にはクレセント4が取り付けられている。また、外周枠体2の下框22内の空洞(図1で(3)で示す領域)には戸車5が取り付けられている。また、外周枠体2の戸先框24の凹溝(図1で(4)で示す領域)には振れ止め部材6が取り付けられている。また、窓枠10の下枠12に形成された水抜き穴(図1で(5)で示す領域、図示せず)には水抜き部材7が嵌め込まれている。また、外周枠体2の召合せ框23の空洞の出入口となる上端及び/又は下端の開口(図1で(6)で示す領域、図示せず)にはキャップ8が取り付けられている。また、窓枠10の下枠12に形成された取付穴(図1で(7)で示す領域、図示せず)にはサブロック部材15が嵌め込まれている。その他にも、サッシ(窓枠10及び外周枠体2)の各枠11〜14及び各框21〜24には、各種の機能性を引違い窓1に付与する構成部品が設けられている。
【0027】
風止め部材3は、召合せ部から風が進入することを防ぐために、窓枠10の上枠11及び下枠12に例えばネジ等を用いて固定される。なお、風止め部材3は、窓枠10の上枠11に嵌合させることで固定されてもよい。風止め部材3は、合成樹脂等の弾性材からなり、図2に示すように、上枠11及び下枠12への固定に用いられる平板状のベース部30と、ベース部30の外周枠体2の召合せ部と対向する側の面(一方面)から突き出て外周枠体2の召合せ部との間の隙間を封止する複数の薄板状のヒレ部31とを備えている。
【0028】
風止め部材3の表面の一部には、直に熱膨張性樹脂組成物層9(図示では把握しやすいようにハッチングで示している。)が形成されている。例えば、ベース部30の一方面に熱膨張性樹脂組成物層9が形成されている。なお、「直に」とは、ベース部30の一方面に、粘着テープや粘着剤、接着剤などが用いられることなく、熱膨張性樹脂組成物層9が積層されていることを指す。
【0029】
熱膨張性組成物層9の寸法及び形状、すなわち長さ、幅、厚みは、特に限定されず、風止め部材3の寸法及び形状に応じて適宜設定される。熱膨張性樹脂組成物層9は、ベース部30の一方面において、その全部に形成されている必要はなく、一部にだけ形成されていてもよい。なお、熱膨張性樹脂組成物層9は、ベース部30の他方面(窓枠10の上枠11及び下枠12と対向する側の面)に形成されていてもよいし、風止め部材3のその他の部分の表面に形成されていてもよい。
【0030】
上述した熱膨張性樹脂組成物層9が積層された風止め部材3が、窓枠10の上枠11及び下枠12と外周枠体2の召合せ部との間に配置されていると、火災時に熱膨張性樹脂組成物層9が熱膨張して、窓枠10の上枠11及び下枠12と外周枠体2の召合せ部との間の隙間を埋めるので、火炎が当該隙間を通って延焼することを防止でき、良好な防火性能を発揮できる。
【0031】
なお、風止め部材3の構成は、特に限定されるものではなく、周知のいずれの形態であってもよい。
【0032】
次に、クレセント4は、引違い窓1を施錠するために、一方の外周枠体2の召合せ框23にネジ等を用いて取り付けられる。他方の外周枠体2の召合せ框23にはクレセント受け44が取り付けられる。クレセント4は、例えば金属や合成樹脂等からなり、図3に示すように、召合せ框23への固定に用いられる本体部40と、本体部40に回動可能に取り付けられるベース部41と、ベース部41に一体に設けられ回動によりクレセント受け44に係合する三日月形状のフック部42と、ベース部41に一体に設けられフック部42を回動させる摘み部43とを備えている。
【0033】
クレセント4の表面の一部には、直に熱膨張性樹脂組成物層9(図示では把握しやすいようにハッチングで示している。)が形成されている。例えば、クレセント4を構成する本体部40、ベース部41、フック部42及び摘み部43の他方の外周枠体2側(後ろ側つまりは外側)の面に熱膨張性樹脂組成物層9が形成されている。また、図示は省略するが、摘み部43の内面(摘み部43内の空洞を形成する面)に熱膨張性樹脂組成物層9が形成されている。なお、「直に」とは、摘み部43の内面やクレセント4の後ろ側の面に、同様に、粘着テープや粘着剤、接着剤などが用いられることなく、熱膨張性樹脂組成物層9が積層されていることを指す。
【0034】
熱膨張性組成物層9の寸法及び形状、すなわち長さ、幅、厚みは、特に限定されず、クレセント4の寸法及び形状に応じて適宜設定される。熱膨張性樹脂組成物層9は、摘み部43の内面やクレセント4の後ろ側の面において、その全部に形成されている必要はなく、一部にだけ形成されていてもよい。なお、熱膨張性樹脂組成物層9は、本体部40の内面(本体部40内の空洞を形成する面)に形成されていてもよし、クレセント4のその他の部分の表面に形成されていてもよい。
【0035】
上述した熱膨張性樹脂組成物層9が積層されたクレセント4が、外周枠体2の召合せ框23に配置されていると、火災時に熱膨張性樹脂組成物層9が熱膨張することで、クレセント4が合成樹脂製であるとクレセント4の燃焼を防ぎ、クレセント4が金属製であると温度上昇による変形を防止できるので、外周枠体2の加熱に対して良好な防火性能を発揮できる。
【0036】
なお、クレセント4の構成は、特に限定されるものではなく、周知のいずれの形態であってもよい。
【0037】
次に、戸車5は、各外周枠体2付きの窓20を窓枠10に対してスムーズにスライドさせるために、各外周枠体2の下框22内の空洞(図示せず)にネジ等を用いて取り付けられる。戸車5は、例えば合成樹脂等からなり、図4に示すように、下框22への固定に用いられる下端が開口したケーシング50と、ケーシング50の両側面の間に軸52により回動可能に取り付けられる車輪51とを備え、車輪51の一部がケーシング50の下端から露出している。この車輪51が窓枠10の下枠12のレール(図示せず)上を走行するようになっている。
【0038】
戸車5の表面の一部には、直に熱膨張性樹脂組成物層9(図示では把握しやすいようにハッチングで示している。)が形成されている。例えば戸車5(ケーシング50)の2つの側面(図示例では、側面のうち、下框22の垂直な2つの側面と対向する外側の面)に熱膨張性樹脂組成物層9が形成されている。なお、「直に」とは、戸車5(ケーシング50)の側面に、同様に、粘着テープや粘着剤、接着剤などが用いられることなく、熱膨張性樹脂組成物層9が積層されていることを指す。
【0039】
熱膨張性組成物層9の寸法及び形状、すなわち長さ、幅、厚みは、特に限定されず、戸車5の寸法及び形状に応じて適宜設定される。熱膨張性樹脂組成物層9は、戸車5(ケーシング50)の側面において、その全部に形成されている必要はなく、一部にだけ形成されていてもよい。なお、熱膨張性樹脂組成物層9は、戸車5(ケーシング50)の2つの側面の車輪51と対向する内側の面)や戸車5(ケーシング50)の上面(外側面及び/又は内側面)に形成されていてもよいし、戸車5のその他の部分の表面に形成されていてもよい。
【0040】
上述した熱膨張性樹脂組成物層9が積層された戸車5が、外周枠体2の下框22内に配置されていると、火災時に熱膨張性樹脂組成物層9が熱膨張して、下框22内の空洞を埋めるので、火炎が当該空洞を通って延焼することを防止でき、良好な防火性能を発揮できる。
【0041】
なお、戸車5の構成は、特に限定されるものではなく、周知のいずれの形態であってもよい。
【0042】
次に、振れ止め部材6は、各外周枠体2付きの窓20の前後方向(室内外方向)の振れ(揺動)を抑制するために、各外周枠体2の上框21、下框22及び戸先框24の少なくともいずれかの凹溝内にネジ等を用いて取り付けられる。振れ止め部材6は、例えば合成樹脂等からなり、図5に示すように、各框21,22,24への固定に用いられる本体部60と、本体部60に一体に設けられる一対の挟持部61とを備えおり、一対の挟持部61で窓枠10の各枠11〜14のレールを挟むようになっている。
【0043】
振れ止め部材6の表面の一部には、直に熱膨張性樹脂組成物層9(図示では把握しやすいようにハッチングで示している。)が形成されている。例えば振れ止め部材6の側周面(平面視において振れ止め部材6を形作る面)に熱膨張性樹脂組成物層9が形成されている。なお、「直に」とは、振れ止め部材6の側周面に、同様に、粘着テープや粘着剤、接着剤などが用いられることなく、熱膨張性樹脂組成物層9が積層されていることを指す。
【0044】
熱膨張性組成物層9の寸法及び形状、すなわち長さ、幅、厚みは、特に限定されず、振れ止め部材6の寸法及び形状に応じて適宜設定される。熱膨張性樹脂組成物層9は、振れ止め部材6の側周面において、その全部に形成されている必要はなく、一部にだけ形成されていてもよい。なお、熱膨張性樹脂組成物層9は、振れ止め部材6(本体部60及び各挟持部61)の上面及び/又は下面に形成されていてもよいし、振れ止め部材6のその他の部分の表面に形成されていてもよい。
【0045】
上述した熱膨張性樹脂組成物層9が積層された振れ止め部材6が、外周枠体2の上框21や下框22、戸先框24の凹溝内に配置されていると、火災時に熱膨張性樹脂組成物層9が熱膨張して、各框21,22,24の凹溝を埋めるので、火炎が当該凹溝を通って延焼することを防止でき、良好な防火性能を発揮できる。
【0046】
なお、振れ止め部材6の構成は、特に限定されるものではなく、周知のいずれの形態であってもよい。
【0047】
次に、水抜き部材7は、窓枠10の下枠12に貯まった雨水や結露水等を排水するために、下枠12に形成された水抜き穴(図示せず)に嵌め込まれる。水抜き部材7は、例えば合成樹脂等からなり、例えば図6に示すように、開口72を有する本体部70と、本体部70に一体に設けられ水抜き穴(図示せず)に挿入されて下枠12への固定に用いられる固定部(本実施形態では一対の脚部)71とを備えている。
【0048】
水抜き部材7の表面の一部には、直に熱膨張性樹脂組成物層9(図示では把握しやすいようにハッチングで示している。)が形成されている。例えば水抜き部材7(本体部70)の開口72を形作る内周面及び固定部71の表面に熱膨張性樹脂組成物層9が形成されている。なお、「直に」とは、水抜き部材7(本体部70)の内周面及び固定部71の表面に、同様に、粘着テープや粘着剤、接着剤などが用いられることなく、熱膨張性樹脂組成物層9が積層されていることを指す。
【0049】
熱膨張性組成物層9の寸法及び形状、すなわち長さ、幅、厚みは、特に限定されず、水止め部材7の寸法及び形状に応じて適宜設定される。熱膨張性樹脂組成物層9は、水抜き部材7(本体部70)の内周面及び固定部71の表面において、その全部に形成されている必要はなく、一部にだけ形成されていてもよい。なお、熱膨張性樹脂組成物層9は、水抜き部材7のその他の部分の表面に形成されていてもよい。
【0050】
上述した熱膨張性樹脂組成物層9が積層された水抜き部材7が、窓枠10の下枠12の水抜き穴に配置されていると、火災時に熱膨張性樹脂組成物層9が熱膨張して、下枠12の水抜き穴を埋めるので、火炎が当該水抜き穴を通って延焼することを防止でき、良好な防火性能を発揮できる。
【0051】
なお、水抜き部材7の構成は、特に限定されるものではなく、周知のいずれの形態であってもよい。
【0052】
次に、キャップ8は、外周枠体2の召合せ框23内の空洞に埃などが混入したり、当該空洞の結露水が空洞から流出したりしないようにするために、召合せ框23の上端及び/又は下端の開口に嵌め込まれる。キャップ8は、例えば合成樹脂等からなり、図7に示すように、召合せ框23の上下の開口に嵌め込まれる角柱状又は角筒状の本体部80と、本体部80に一体に設けられる蓋部81と、蓋部81の一側縁から垂下する舌片部82とを備えている。
【0053】
キャップ8の表面の一部には、直に熱膨張性樹脂組成物層9(図示では把握しやすいようにハッチングで示している。)が形成されている。例えば本体部80の表面(外周面及び/又は内周面)に熱膨張性樹脂組成物層9が形成されている。なお、「直に」とは、本体部70の表面に、同様に、粘着テープや粘着剤、接着剤などが用いられることなく、熱膨張性樹脂組成物層9が積層されていることを指す。
【0054】
熱膨張性組成物層9の寸法及び形状、すなわち長さ、幅、厚みは、特に限定されず、キャップ8の寸法及び形状に応じて適宜設定される。熱膨張性樹脂組成物層9は、本体部80の表面において、その全部に形成されている必要はなく、一部にだけ形成されていてもよい。なお、熱膨張性樹脂組成物層9は、キャップ8のその他の部分の表面に形成されていてもよい。
【0055】
上述した熱膨張性樹脂組成物層9が積層されたキャップ8が、召合せ框23の上端及び/又は下端の開口に配置されていると、火災時に熱膨張性樹脂組成物層9が熱膨張して、召合せ框23内の空洞を埋めるので、火炎が当該空洞を通って延焼することを防止でき、良好な防火性能を発揮できる。
【0056】
なお、キャップ8の構成は、特に限定されるものではなく、周知のいずれの形態であってもよい。
【0057】
次に、サブロック部材15は、引違い窓1を補助的に施錠するために、下枠12に形成された取付穴(図示せず)に嵌め込まれる。サブロック部材15は、例えば金属等からなり、例えば図8に示すように、ロック部17を有する本体部16と、本体部16に一体に設けられ取付穴(図示せず)に挿入されて下枠12への固定に用いられる固定部18とを備えている。
【0058】
サブロック部材15の表面の一部には、直に熱膨張性樹脂組成物層9(図示では把握しやすいようにハッチングで示している。)が形成されている。例えばサブロック部材15の取付穴の内周面と対向する面(図示例では、固定部18の表面)に熱膨張性樹脂組成物層9が形成されている。なお、「直に」とは、サブロック部材15の固定部18の表面に、同様に、粘着テープや粘着剤、接着剤などが用いられることなく、熱膨張性樹脂組成物層9が積層されていることを指す。
【0059】
熱膨張性組成物層9の寸法及び形状、すなわち長さ、幅、厚みは、特に限定されず、サブロック部材15の寸法及び形状に応じて適宜設定される。熱膨張性樹脂組成物層9は、サブロック部材15の固定部18の表面において、その全部に形成されている必要はなく、一部にだけ形成されていてもよい。なお、熱膨張性樹脂組成物層9は、サブロック部材15のその他の部分の表面に形成されていてもよい。
【0060】
上述した熱膨張性樹脂組成物層9が積層されたサブロック部材15が、窓枠10の下枠12の取付穴に配置されていると、火災時に熱膨張性樹脂組成物層9が熱膨張して、下枠12の取付穴を埋めるので、火炎が当該取付穴を通って延焼することを防止でき、良好な防火性能を発揮できる。
【0061】
なお、サブロック部材15の構成は、特に限定されるものではなく、周知のいずれの形態であってもよい。
【0062】
次に、上記した熱膨張性樹脂組成物層9を形成する熱膨張性樹脂組成物について説明する。熱膨張性樹脂組成物は、樹脂成分に、熱膨張性層状無機物と無機充填剤とを含有させたものである。
【0063】
樹脂成分としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム物質、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0064】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ(1−)ブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイソブチレンなどの合成樹脂類が挙げられる。
【0065】
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミドなどが挙げられる。
【0066】
ゴム物質としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多加硫ゴム、非加硫ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴムなどのゴム物質などが挙げられる。
【0067】
これらの合成樹脂類及び/又はゴム物質は、一種もしくは二種以上を使用することができる。これらの合成樹脂類及び/又はゴム物質の中でも、柔軟でゴム的性質を持っているものが好ましい。このような性質を持つものは無機充填剤を高充填することが可能であり、得られる熱膨張性樹脂組成物が柔軟で扱い易いものとなる。より柔軟で扱い易い熱膨張性樹脂組成物を得るためには、ブチルなどの非加硫ゴムやポリエチレン系樹脂が好適に用いられる。さらに、樹脂自体の難燃性を上げて防火性能を向上させるという観点からは、エポキシ樹脂が好ましい。
【0068】
次に、熱膨張性層状無機物は、加熱時に膨張するものであるが、かかる熱膨張性層状無機物は特に限定されるものではなく、例えば、バーミキュライト、カオリン、マイカ、熱膨張性黒鉛などを挙げることができる。熱膨張性黒鉛は、従来から公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイトなどの粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸などの無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素などの強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものであり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。
【0069】
上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、さらにアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物などで中和したものを使用するのが好ましい。
【0070】
熱膨張性黒鉛の粒度は、20メッシュ〜200メッシュが好ましい。粒度が200メッシュより小さくなると、黒鉛の膨張度が小さく、十分な膨張断熱層が得られず、また粒度が20メッシュより大きくなると、黒鉛の膨張度が大きいという利点はあるが、樹脂に配合する際に分散性が悪くなり、物性が低下する。熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、東ソー社製「GREP−EG」、GRAFTECH社製「GRAFGUARD」などが挙げられる。
【0071】
次に、無機充填剤は、膨張断熱層が形成される際、熱容量を増大させ伝熱を抑制するとともに、骨材的に働いて膨張断熱層の強度を向上させるものである。かかる無機充填剤としては特に限定されるものではなく、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類などの金属酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイトなどの含水無機物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウムなどの金属炭酸塩などが挙げられる。
【0072】
また、無機充填剤としては、上記した他に、硫酸カルシウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウムなどのカルシウム塩;シリカ、珪藻土、ドーソナイト、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム「MOS」(商品名)、チタン酸ジルコン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥などが挙げられる。これらの無機充填剤は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0073】
無機充填剤の粒径としては、0.5μm〜100μmが好ましく、より好ましくは1μm〜50μmであるが、特に限定されるものではない。無機充填剤は、添加量が少ないときは、分散性が性能を大きく左右するため、粒径の小さいものが好ましいが、0.5μm未満になると二次凝集が起こり、分散性が悪くなる。粒径が100μmを超えると、成形体の表面性、樹脂組成物の力学的物性が低下する。
【0074】
なお、無機充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウムでは、粒径18μmの「ハイジライトH−31」(昭和電工社製)、粒径25μmの「B325」(ALCOA社製)、炭酸カルシウムでは、粒径1.8μmの「ホワイトンSB赤」(備北粉化工業社製)、粒径8μmの「BF300」(備北粉化工業社製)などが挙げられる。
【0075】
さらに、熱膨張性樹脂組成物は、膨張断熱層の強度を増加させて防火性能を向上させるために、上述した各成分に加えて、さらにリン化合物を含んでもよい。リン化合物としては、特に限定されず、例えば、赤リン;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェートなどの各種リン酸エステル;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウムなどのリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム類;下記化学式(1)で表される化合物などが挙げられる。これらのうち、防火性能の観点から、赤リン、ポリリン酸アンモニウム類、及び、下記化学式(1)で表される化合物が好ましく、性能、安全性、コストなどの点においてポリリン酸アンモニウム類がより好ましい。
【0076】
【化1】
【0077】
化学式(1)中、R1及びR3は、水素、炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、又は、炭素数6〜16のアリール基を表す。R2は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、又は、炭素数6〜16のアリールオキシ基を表す。
【0078】
赤リンとしては、市販の赤リンを用いることができるが、耐湿性、混練時に自然発火しないなどの安全性の点から、赤リン粒子の表面を樹脂でコーティングしたものなどが好適に用いられる。ポリリン酸アンモニウム類としては特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウムなどが挙げられるが、取り扱い性などの点からポリリン酸アンモニウムが好適に用いられる。市販品としては、例えば、クラリアント社製「AP422」、「AP462」、Budenheim Iberica社製「FR CROS 484」、「FR CROS 487」などが挙げられる。
【0079】
化学式(1)で表される化合物としては特に限定されず、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸などが挙げられる。中でも、t−ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点において好ましい。前記のリン化合物は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0080】
また、熱膨張性樹脂組成物には、その物性を損なわない範囲で、さらにフェノール系、アミン系、イオウ系などの酸化防止剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料などが添加されてもよい。また、一般的な難燃剤を添加してもよく、難燃剤による燃焼抑制効果により防火性能を向上させることができる。
【0081】
熱膨張樹脂組成物は、熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂などの樹脂成分100重量部に対し、熱膨張性層状無機物を10〜350重量部及び無機充填材を5〜400重量部の範囲で含むものが好ましい。
【0082】
また、熱膨張性層状無機物及び無機充填剤の合計は、樹脂成分100重量部に対し、25重量部〜600重量部の範囲が好ましい。
【0083】
かかる熱膨張性樹脂組成物は、加熱によって膨張して耐火性の膨張断熱層を形成する。この配合によれば、熱膨張性樹脂組成物層は火災などの加熱によって膨張し、必要な体積膨張率を得ることができ、膨張後は所定の断熱性能を有するとともに所定の強度を有する残渣を形成することもでき、安定した防火性能を達成することができる。
【0084】
熱膨張性樹脂組成物における熱膨張性層状無機物及び無機充填材の合計量は、50重量部以上では燃焼後の残渣量を満足して十分な耐火性能が得られ、600重量部以下であると機械的物性が維持される。
【0085】
さらに、熱膨張性樹脂組成物は、必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系などの酸化防止剤の他、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂、成型補助材などの添加剤、ポリブテン、石油樹脂などの粘着付与剤を含むことができる。
【0086】
上記した熱膨張性樹脂組成物の各成分を、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、混練ロール、ライカイ機、遊星式撹拌機、ディスパーなど公知の装置を用いて混練することにより、熱膨張性樹脂組成物を得ることができる。
【0087】
熱膨張性樹脂組成物は、火災時などの高温にさらされた際に、その膨張断熱層により断熱し、かつその膨張断熱層の強度があるものであれば特に限定されないが、好ましくは、50kW/mの加熱条件下で30分間加熱した後の体積膨張率が3倍〜50倍の範囲であり、より好ましくは、体積膨張率が5倍〜40倍の範囲であり、さらに好ましくは8倍〜35倍の範囲である。
【0088】
熱膨張性樹脂組成物層9は、例えば、熱可塑性樹脂をバインダーとして熱膨張性黒鉛及び無機充填剤を少なくとも配合してなる樹脂組成物を、溶融して流動化させた後、所定の金型を用いた射出成形により構成部品の所望の面に供給し、これを固化して構成部品と一体化することで、構成部品の所望の面に直に形成することができる。
【0089】
上述した建具枠体用の部品3〜8を用いた建具枠体(窓枠10や外周枠体2)では、建具枠体を構成する構成部品が熱膨張性樹脂組成物層9を有しているので、一般の建具枠体に簡便にさらなる防火性能を付与することができる。よって、防火地域などで使用することができる。また、建具枠体用の部品3〜8に熱膨張性樹脂組成物層9を、熱可塑性樹脂組成物を射出成形により供給することで、直に形成しているので、シート状の熱膨張性耐火材を粘着テープなどを用いて建具枠体用の部品3〜8に貼り付ける場合と比べて、正確にかつ簡易に熱膨張性樹脂組成物層9を各建具枠体用の部品3〜8に形成することができるので、建具枠体に確実な防火性能を具備させることができるうえ、コスト及び手間の低減を図ることができる。
【0090】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、建具枠体用の部品の例として、風止め部材3、クレセント4、戸車5、振れ止め部材6、水抜き部材7、キャップ8及びサブロック部材15を示しているが、その他にも、建具枠体(窓枠10及び外周枠体2)の各枠11〜14及び各框21〜24に取り付けられている構成部品の表面(外側面、内側面を問わない)の一部に熱膨張性樹脂組成物層9を形成することができる。
【0091】
また、上記実施形態では、建具枠体として、引違い窓の枠体(サッシ)を例にして説明しているが、例えば図9図10に示すような縦すべり出し窓1´の枠体(サッシ)など、様々な種類の窓の枠体(サッシ)に対して本発明を適用することができる。例えば図9図10に示す縦すべり出し窓1´の枠体(サッシ)には、縦すべり出し窓1´に各種の機能性を付与する複数の構成部品として、カムラッチハンドルやグレモンハンドル等のハンドル25やオペレータハンドル26等が設けられているが、各構成部品の表面(外側面、内側面を問わない)の一部、例えば、ハンドル25やオペレータハンドル26では、これらを構成する部材の外側面の他、内部に空洞を有する部材であれば内側面の少なくとも一部に、熱膨張性樹脂組成物層9を形成することができる。
【0092】
さらに、本発明は、様々な種類の扉の枠体の構成部品に対しても適用することができる。
【0093】
1 引違い窓(建具)
1´ 縦すべり出し窓(建具)
2 外周枠体(建具枠体)
3 風止め部材(建具枠体用の部品)
4 クレセント(建具枠体用の部品)
5 戸車(建具枠体用の部品)
6 振れ止め部材(建具枠体用の部品)
7 水抜き部材(建具枠体用の部品)
8 キャップ(建具枠体用の部品)
9 熱膨張性樹脂組成物層
10 窓枠(建具枠体)
11 上枠
12 下枠
13,14 縦枠
15 サブロック部材(建具枠体用の部品)
20 窓
21 上框
22 下框
23 召合せ框
24 戸先框
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10