特許第6789098号(P6789098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6789098
(24)【登録日】2020年11月5日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】落下防止装置
(51)【国際特許分類】
   A62B 99/00 20090101AFI20201116BHJP
   B60S 5/00 20060101ALN20201116BHJP
【FI】
   A62B99/00 A
   !B60S5/00
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-250204(P2016-250204)
(22)【出願日】2016年12月23日
(65)【公開番号】特開2018-102444(P2018-102444A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000196587
【氏名又は名称】西日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391039173
【氏名又は名称】株式会社JR西日本テクノス
(74)【代理人】
【識別番号】100113712
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 裕弘
(72)【発明者】
【氏名】柚木 庄司
(72)【発明者】
【氏名】松谷 義和
(72)【発明者】
【氏名】林田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】大村 幸輝
【審査官】 森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−329003(JP,A)
【文献】 特開2014−136892(JP,A)
【文献】 特開平11−269900(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0067669(US,A1)
【文献】 特開2000−095099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 99/00
B61B 1/00−1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の検修を行う場所における屋根上点検足場と車両屋根との隙間からの人又は物の落下を防止するための落下防止装置であって、
屋根上点検足場の車両側端部に沿って設けられた長尺状のエアチューブと、
前記エアチューブ内に設けられた長尺状の芯材と、
前記エアチューブを充気及び排気するための充排気装置とを備え、
前記エアチューブは、充気されたとき、径方向に膨張して前記隙間を塞ぎ、前記充排気装置によって排気されたとき、径方向に収縮して前記隙間を生じさせ、
前記芯材は、前記充排気装置によらずに前記エアチューブ内の空気が抜けたとき、前記隙間を縮小することを特徴とする落下防止装置。
【請求項2】
前記エアチューブは、膨張したときに円筒形であり、前記充排気装置によって車両から遠い側から充排気され、
前記芯材は、一方向に長い断面形状を有し、
前記エアチューブが前記充排気装置によって充気されるとき、断面視で、前記芯材は、膨張した前記エアチューブ内で倒れ、
前記エアチューブが前記充排気装置によって排気されるとき、前記芯材は、前記エアチューブ内で起立し、
前記充排気装置によらずに前記エアチューブ内の空気が抜けるとき、前記芯材は、前記エアチューブ内で倒れたままであることを特徴とする請求項1に記載の落下防止装置。
【請求項3】
前記芯材は、楕円の断面形状を有し、
前記エアチューブが前記充排気装置によって充気されたとき、前記芯材は、前記楕円の長径方向が略水平になり、
前記エアチューブが前記充排気装置によって排気されたとき、前記芯材は、前記長径方向が略鉛直になり、
前記充排気装置によらずに前記エアチューブ内の空気が抜けたとき、前記芯材は、前記長径方向が略水平のままであることを特徴とする請求項2に記載の落下防止装置。
【請求項4】
前記エアチューブは、ゴム製であり、
前記芯材は、発泡樹脂製であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の落下防止装置。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の検修を行う場所における屋根上点検足場と車両屋根との隙間からの人又は物の落下を防止するための落下防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図5に示すように、鉄道車両の検修(検査・修繕)を行う場所には、車両3(鉄道車両)の屋根上を点検するための屋根上点検足場2が設けられている。作業員は、屋根上点検足場2から車両屋根31の上に乗り移って検修作業を行う。屋根上点検足場2は、車両3との接触を避けるために建築限界外に設けられる。建築限界とは、車両限界の外側に必要最小限の余裕空間を加えた、建築物に対する限界である(非特許文献1の番号12102)。車両限界とは、車両が平たん直線軌道上に停止しているとき、車両のどの部分も超えてはならない車両に対する限界である(非特許文献1の番号12101)。屋根上点検足場2は、建築限界を遵守するため、車両屋根31との間に隙間Gがある。この隙間Gの大きさは、車両3によって異なり、隙間Gを最適化することは困難である。このため、屋根上点検足場2と車両屋根31との隙間Gから作業員が落下するおそれがある。また、この隙間Gから工具等の物が落下して、下にいる作業員に当たるおそれがある。
【0003】
このような隙間を塞ぐための車両用点検作業装置が知られている(特許文献1参照)。この装置では、屋根上点検足場は、可動式の足場板(通路形成体及び転落防止体)を有し、その足場板で車両屋根との隙間を塞ぐ。しかしながら、このような装置では、足場板の収納を忘れ、車両が動いた時に足場板が車両屋根や屋根上機器に当たって損傷するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−329003号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】JIS E 4001:2011「鉄道車両−用語」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するものであり、屋根上点検足場と車両屋根との隙間からの人又は物の落下を防止するとともに、車両を損傷し難い落下防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の落下防止装置は、鉄道車両の検修を行う場所における屋根上点検足場と車両屋根との隙間からの人又は物の落下を防止するためのものであって、屋根上点検足場の車両側端部に沿って設けられた長尺状のエアチューブと、前記エアチューブ内に設けられた長尺状の芯材と、前記エアチューブを充気及び排気するための充排気装置とを備え、前記エアチューブは、充気されたとき、径方向に膨張して前記隙間を塞ぎ、前記充排気装置によって排気されたとき、径方向に収縮して前記隙間を生じさせ、前記芯材は、前記充排気装置によらずに前記エアチューブ内の空気が抜けたとき、前記隙間を縮小することを特徴とする。
【0008】
この落下防止装置において、前記エアチューブは、膨張したときに円筒形であり、前記充排気装置によって車両から遠い側から充排気され、前記芯材は、一方向に長い断面形状を有し、前記エアチューブが前記充排気装置によって充気されるとき、断面視で、前記芯材は、膨張した前記エアチューブ内で倒れ、前記エアチューブが前記充排気装置によって排気されるとき、前記芯材は、前記エアチューブ内で起立し、前記充排気装置によらずに前記エアチューブ内の空気が抜けるとき、前記芯材は、前記エアチューブ内で倒れたままであることが好ましい。
【0009】
この落下防止装置において、前記芯材は、楕円の断面形状を有し、前記エアチューブが前記充排気装置によって充気されたとき、前記芯材は、前記楕円の長径方向が略水平になり、前記エアチューブが前記充排気装置によって排気されたとき、前記芯材は、前記長径方向が略鉛直になり、前記充排気装置によらずに前記エアチューブ内の空気が抜けたとき、前記芯材は、前記長径方向が略水平のままであることが好ましい。
【0010】
この落下防止装置において、前記エアチューブは、ゴム製であり、前記芯材は、発泡樹脂製であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の落下防止装置によれば、エアチューブは、充気されたとき、車両屋根との隙間を塞ぐので、人及び物の落下が防止される。エアチューブは、空気で膨張するものであるので、万一、車両と接触した状態で車両が動いても車両を損傷し難い。また、エアチューブは、充排気装置によって排気されたとき、車両屋根との隙間を生じさせるので、車両が動いても車両を損傷しない。さらに、充排気装置によらずにエアチューブ内の空気が抜けたとき、芯材が車両屋根との隙間を縮小するので、人及び大きな物の落下が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る落下防止装置におけるエアチューブを充気したときの断面構成図。
図2】同装置のエアチューブの斜視図。
図3】同装置におけるエアチューブを排気したときの断面構成図。
図4】同装置におけるエアチューブ内の空気が抜けたときの断面構成図。
図5】鉄道車両の検修を行う場所における屋根上点検足場と車両屋根との隙間を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係る落下防止装置を図1乃至図4を参照して説明する。図1に示すように、落下防止装置1は、鉄道車両3の検修を行う場所における屋根上点検足場2と車両屋根31との隙間Gからの人又は物の落下を防止するためのものである。落下防止装置1は、エアチューブ4と、芯材5と、充排気装置6とを備える。図2に示すように、エアチューブ4は長尺状である。このエアチューブ4は、屋根上点検足場2の車両側端部21に沿って設けられる(図1参照)。芯材5は、長尺状であり、エアチューブ4内に設けられる(図2参照)。充排気装置6は、エアチューブ4を充気(空気充填)及び排気(空気排出)するための装置である(図1参照)。
【0014】
上記の各構成をさらに詳述する。エアチューブ4の材料は、例えば、ゴムであり、より具体的には一般的なゴムボートの素材である。エアチューブ4は、内部の空気圧に応じて、径方向に膨張・収縮する。エアチューブ4は、膨張したときに円筒形である(図2参照)。在来鉄道で用いる場合、エアチューブ4の直径は、膨張したとき、約350mmである。エアチューブ4の長さは、例えば、約1700mmである。エアチューブ4は、充排気カプラ41と、点検用充排気バルブ42と、取付金具43とを有する。充排気カプラ41は、充排気装置6からの配管61が接続される。エアチューブ4は、充排気装置6によって車両から遠い側から充排気される。点検用充排気バルブ42は、エアチューブ4の点検時に充排気装置6を介さずに充排気するためのバルブである。取付金具43は、エアチューブ4を所定位置に取り付けるための金具である。エアチューブ4は、取付金具43を介して鋼材22に取付けられる(図1参照)。鋼材22は、屋根上点検足場2の車両側端部21の下側に設けられている。
【0015】
芯材5は、それ自身が軽量で、人の体重程度の荷重に耐えるものが望ましい。芯材5の材料は、例えば、発泡樹脂であり、より具体的には発泡スチロールである。芯材5は、一方向に長い断面形状を有し、例えば、楕円の断面形状を有する楕円柱形である。芯材5は、長手方向に複数に分割して構成してもよい。
【0016】
充排気装置6は、圧縮空気が外部から供給されるとともに、真空発生器(真空ポンプ)、3位置電磁弁、減圧弁、スピードコントローラ等を有する。圧縮空気は、エアチューブ4の充気に用いられる。真空発生器は、エアチューブ4を排気する。3位置電磁弁は、充気、停止、排気の動作を切り替える。減圧弁は、エアチューブ4の充気圧力を調整する。スピードコントローラは、エアチューブ4の排気時における真空引き量(真空圧)を調整する。
【0017】
上記のように構成された落下防止装置1の動作について説明する。作業員が屋根上点検足場2から車両屋根31の上に乗り移って検修作業を行う場合、エアチューブ4が充気される。エアチューブ4は、充気されたとき、径方向に膨張して隙間Gを塞ぐ(図1参照)。エアチューブ4が充排気装置6によって充気されるとき、断面視で、芯材5は、膨張したエアチューブ4内で倒れる。矢印で示すように、エアチューブ4が、充排気装置6によって車両から遠い側から充気されるので、芯材5が充気の気流によって押されるからである。芯材5は、一方向に長い断面形状を有するので、倒れた状態が物理的に安定な状態である。芯材5が楕円の断面形状を有する場合、芯材5は、その楕円の長径方向が略水平になる。
【0018】
車両3が動く場合、その前にエアチューブ4が排気される。図3に示すように、エアチューブ4は、充排気装置6によって排気されたとき、径方向に収縮して隙間Gを生じさせる。このとき、芯材5は、エアチューブ4内で起立する。矢印で示すように、エアチューブ4が、充排気装置6によって車両3から遠い側から排気されるので、芯材5が排気の気流によって引かれるからである。芯材5が楕円の断面形状を有する場合、芯材5は、楕円の長径方向が略鉛直になる。
【0019】
落下防止装置1において、充排気装置6によらずにエアチューブ4内の空気が抜けることは、異常動作であり、例えば、エアチューブ4がパンクしたときに起きる。図4に示すように、エアチューブ4は、充排気装置6によらずにエアチューブ4内の空気が抜けたとき、隙間Gを縮小する。芯材5は、一方向に長い断面形状を有し、倒れた状態が物理的に安定な状態であるので、充排気装置6によらずにエアチューブ4内の空気が抜けたとき、倒れたままである。芯材5が楕円の断面形状を有する場合、芯材5は、楕円の長径方向が略水平のままである。なお、芯材5は、エアチューブ4内で倒れた状態で隙間Gを塞ぐように長径が設定されることがさらに望ましい。
【0020】
このように、本実施形態の落下防止装置1によれば、エアチューブ4は、充気されたとき、車両屋根31との隙間Gを塞ぐので、人及び物の落下が防止される。エアチューブ4は、空気で膨張するものであるので、万一、車両3と接触した状態で車両3が動いても車両3を損傷し難い。また、エアチューブ4は、充排気装置6によって排気されたとき、車両屋根31との隙間Gを生じさせるので、車両3が動いても車両3を損傷しない。さらに、充排気装置6によらずにエアチューブ4内の空気が抜けたとき、芯材5が車両屋根31との隙間Gを縮小するので、人及び大きな物の落下が防止される。
【0021】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、芯材5の断面形状は、楕円に限定されず、八角形等の多角形であってもよい。
【符号の説明】
【0022】
1 落下防止装置
2 屋根上点検足場
3 車両(鉄道車両)
31 車両屋根
4 エアチューブ
5 芯材
6 充排気装置
G 屋根上点検足場と車両屋根との隙間
図1
図2
図3
図4
図5