特許第6789162号(P6789162)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6789162可視光通信システムおよび可視光通信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6789162
(24)【登録日】2020年11月5日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】可視光通信システムおよび可視光通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/116 20130101AFI20201116BHJP
   H04B 10/27 20130101ALI20201116BHJP
   H04L 12/28 20060101ALI20201116BHJP
   H04L 1/16 20060101ALI20201116BHJP
【FI】
   H04B10/116
   H04B10/27
   H04L12/28 200Z
   H04L1/16
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-62602(P2017-62602)
(22)【出願日】2017年3月28日
(65)【公開番号】特開2018-166256(P2018-166256A)
(43)【公開日】2018年10月25日
【審査請求日】2020年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233295
【氏名又は名称】株式会社日立情報通信エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】特許業務法人湘洋内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】押見 匡貢
(72)【発明者】
【氏名】高橋 徹也
【審査官】 佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−152627(JP,A)
【文献】 特開2013−219814(JP,A)
【文献】 特開2016−126355(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0353350(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/116
H04B 10/27
H04L 1/16
H04L 12/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバー装置と、複数の可視光送信装置と、無線受信装置と、を備える可視光通信システムであって、
前記サーバー装置は、
データを送信する対象となる移動体の可視光受信装置を特定する情報と、送信される連続データを分割した分割データを識別する情報と、前記分割データを前記可視光受信装置に送信する前記可視光送信装置を識別する情報と、を対応付けて記憶する記憶部と、
前記記憶部において前記分割データを対応付けられた前記可視光送信装置に対して、前記分割データを配信する配信部と、
前記配信部から配信された前記分割データごとに、前記可視光送信装置から前記可視光受信装置への送信の成否を、前記無線受信装置から受信する受信部と、
分割データ準備処理部と、を備え、
前記分割データ準備処理部は、
配信された前記分割データの送信が成功である場合には、前記可視光受信装置を特定する情報と、前記分割データに後続する第二の分割データを特定する情報と、前記第二の分割データを前記可視光受信装置に送信する第二の可視光送信装置を識別する情報と、を対応付けて前記記憶部を更新し、配信された前記分割データの送信が失敗である場合には、前記可視光受信装置を特定する情報と、前記分割データを特定する情報と、前記分割データを前記可視光受信装置に送信する前記第二の可視光送信装置を識別する情報と、を対応付けて前記記憶部を更新する、
ことを特徴とする可視光通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の可視光通信システムであって、
前記サーバー装置は、
前記可視光受信装置と共に移動する移動体が移動する予定の経路の情報と、前記可視光送信装置から送出される可視光データを受信可能な位置であるスポットを特定する情報と、を前記記憶部に記憶しており、
前記スポットを特定する情報を参照して、前記経路付近の前記スポットまでの前記移動体の移動に係る所要時間を推定する移動時間推定部と、
前記配信に係る時間より長い前記所要時間となる前記スポットに係る可視光送信装置を、前記第二の可視光送信装置として決定する送信装置決定部と、
を備えることを特徴とする可視光通信システム。
【請求項3】
請求項2に記載の可視光通信システムであって、
前記サーバー装置は、
統計情報を用いて前記スポットの信頼性を特定するスポット評価部を備え、
前記送信装置決定部は、前記送信される連続データの種類に必要な信頼性を有する前記スポットを対象として前記第二の可視光送信装置を決定する、
ことを特徴とする可視光通信システム。
【請求項4】
請求項3に係る可視光通信システムであって、
前記スポット評価部は、前記統計情報とともに、前記スポットへの進入角度に応じた通信の成否の情報を用いて前記信頼性を特定する、
ことを特徴とする可視光通信システム。
【請求項5】
請求項3に係る可視光通信システムであって、
前記スポット評価部は、前記統計情報とともに、前記スポットの周囲の天候に応じた通信の成否の情報を用いて前記信頼性を特定する、
ことを特徴とする可視光通信システム。
【請求項6】
請求項3に係る可視光通信システムであって、
前記スポット評価部は、前記統計情報とともに、前記スポットへ前記移動体が到着する時刻に応じた通信の成否の情報を用いて前記信頼性を特定する、
ことを特徴とする可視光通信システム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の可視光通信システムであって、
前記可視光送信装置は、前記可視光受信装置の水平高度より高い位置に備えられた発光装置である、
ことを特徴とする可視光通信システム。
【請求項8】
請求項2〜6のいずれか一項に記載の可視光通信システムであって、
前記送信装置決定部は、前記第二の可視光送信装置が、前記記憶部に既に対応付けられて記憶されている場合には、当該可視光送信装置と異なる可視光送信装置を前記第二の可視光送信装置として決定する、
ことを特徴とする可視光通信システム。
【請求項9】
可視光通信システムを用いた可視光通信方法であって、
前記可視光通信システムには、サーバー装置と、複数の可視光送信装置と、無線受信装置と、を含み、
前記サーバー装置は、
データを送信する対象となる移動体の可視光受信装置を特定する情報と、送信される連続データを分割した分割データを識別する情報と、前記分割データを前記可視光受信装置に送信する前記可視光送信装置を識別する情報と、を対応付けて記憶する記憶部と、制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記記憶部において前記分割データを対応付けられた前記可視光送信装置に対して、前記分割データを配信する配信ステップと、
前記配信ステップにて配信された前記分割データごとに、前記可視光送信装置から前記可視光受信装置への送信の成否を、前記無線受信装置から受信する受信ステップと、
分割データ準備処理ステップと、を実施し、
前記分割データ準備処理ステップでは、
前記制御部は、
配信された前記分割データの送信が成功である場合には、前記可視光受信装置を特定する情報と、前記分割データに後続する第二の分割データを特定する情報と、前記第二の分割データを前記可視光受信装置に送信する第二の可視光送信装置を識別する情報と、を対応付けて前記記憶部を更新し、配信された前記分割データの送信が失敗である場合には、前記可視光受信装置を特定する情報と、前記分割データを特定する情報と、前記分割データを前記可視光受信装置に送信する前記第二の可視光送信装置を識別する情報と、を対応付けて前記記憶部を更新する、
ことを特徴とする可視光通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光通信システムおよび可視光通信方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、可視光通信装置において何らかの異常が発生して送信するデータが書き換わった場合に、誤った通信信号を送信し続けるのを防止することを目的として、発光素子で構成される光源部に直列に接続されるインピーダンス要素と、前記インピーダンス要素に並列に接続されて前記インピーダンス要素を前記光源部に接続するか否かを切り替えるスイッチ要素と、前記スイッチ要素のオン/オフを制御することで前記光源部の出力する照明光の光強度を変調して2値の通信信号を重畳させる可視光通信を行う制御回路とを備え、前記制御回路は、前記通信信号で送信するデータに基づく第1誤り検出符号を予め記憶する記憶装置と、前記データに基づいて第2誤り検出符号を演算する演算装置とを備え、前記制御回路は、少なくとも起動時に、前記演算装置により前記第2誤り検出符号を演算し且つ前記第1誤り検出符号と前記第2誤り検出符号とを比較し、一致すれば正常、一致しなければ異常と判定する第1処理と、前記第1処理で異常と判定すると異常を外部に報知する第2処理とを実行すること、が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−225790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
送信する可視光データが通信の帯域に比して大きい場合には、一般的になされる各種通信のように、所定の大きさのデータに分割して送信することが考えられる。しかし、可視光データを受信する端末が移動体である場合には、各々の分割された可視光データの送信後にその続きの通信信号を送信しても端末が受信できないおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、可視光データを受信する端末が移動体である場合に大容量の可視光通信を可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は、上記課題の少なくとも一部を解決する手段を複数含んでいるが、その例を挙げるならば、以下の通りである。上記課題を解決すべく、本発明の一態様に係る可視光通信システムは、サーバー装置と、複数の可視光送信装置と、無線受信装置と、を備える可視光通信システムであって、前記サーバー装置は、データを送信する対象となる移動体の可視光受信装置を特定する情報と、送信される連続データを分割した分割データを識別する情報と、上記分割データを上記可視光受信装置に送信する上記可視光送信装置を識別する情報と、を対応付けて記憶する記憶部と、上記記憶部において上記分割データを対応付けられた上記可視光送信装置に対して、上記分割データを配信する配信部と、上記配信部から配信された上記分割データごとに、上記可視光送信装置から上記可視光受信装置への送信の成否を、上記無線受信装置から受信する受信部と、分割データ準備処理部と、を備え、上記分割データ準備処理部は、配信された上記分割データの送信が成功である場合には、上記可視光受信装置を特定する情報と、上記分割データに後続する第二の分割データを特定する情報と、上記第二の分割データを上記可視光受信装置に送信する第二の可視光送信装置を識別する情報と、を対応付けて上記記憶部を更新し、配信された上記分割データの送信が失敗である場合には、上記可視光受信装置を特定する情報と、上記分割データを特定する情報と、上記分割データを上記可視光受信装置に送信する上記第二の可視光送信装置を識別する情報と、を対応付けて上記記憶部を更新する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、可視光データを受信する端末が移動体である場合に大容量の可視光通信が可能となる。上記した以外の課題、構成、および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態に係る可視光通信システムの例を示した図である。
図2】可視光通信データ構造を説明する図である。
図3】送信データ割当記憶部に格納されるデータ構造の例を示す図である。
図4】経路記憶部に格納されるデータ構造の例を示す図である。
図5】スポット記憶部に格納されるデータ構造の例を示す図である。
図6】スポットランク記憶部に格納されるデータ構造の例を示す図である。
図7】送信統計記憶部に格納されるデータ構造の例を示す図である。
図8】サーバー装置のハードウェア構成例を示す図である。
図9】可視光送信装置のハードウェア構成例を示す図である。
図10】可視光受信装置のハードウェア構成例を示す図である。
図11】スポット配信処理のフロー例を示す図である。
図12】可視光通信処理のフロー例を示す図である。
図13】信頼度ランク算出のしくみと例を示す図である。
図14】信頼度別の取扱データ種類の例を示す図である。
図15】再送信例のイメージを示した図である。
図16】競合回避例のイメージを示した図である。
図17】飛行体への送信例のイメージを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、実施の形態に係る可視光通信システムの例を示した図である。図1に示すように、可視光通信システム1は、サーバー装置100と、サーバー装置100とネットワーク50を介して通信可能に接続される可視光送信装置200と、可視光送信装置200から可視光により送信されたデータを受信する可視光受信装置300と、可視光受信装置300とDSRC(Dedicated Short Range Communications)等により通信可能に接続する無線受信装置60と、を有している。サーバー装置100と、可視光送信装置200と、可視光受信装置300と、無線受信装置60とは、それぞれ必要に応じて一つまたは複数存在する。なお、ネットワーク50は、公衆送信網であるインターネットや携帯電話網、あるいはWAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)等のネットワークである。
【0011】
なお、無線受信装置60は、ネットワーク50を介してサーバー装置100に通信可能に接続される。また、図1では、無線受信装置60はDSRCを用いた狭域通信を行うものとしているが、これに限られず、可視光受信装置300と無線で通信可能であれば、無線LANや携帯電話網を用いるものであってもよい。あるいは、無線受信装置60は可視光受信装置300が備える可視光送信装置からデータを受信する可視光受信装置であってもよい。
【0012】
サーバー装置100は、ネットワーク50を介して可視光送信装置200にデータを送信する。また、サーバー装置100は、ネットワーク50を介して無線受信装置60からデータを受信する。本実施形態においては、サーバー装置100は、可視光送信装置200に対して、可視光受信装置300へ送信する対象のデータを所定長で分割した分割データを配信する。そして、分割データを可視光送信装置200から受信した可視光受信装置300は、無線受信装置60へその受信に係る可視光通信の成否をDSRC等により送信する。無線受信装置60は受信した可視光通信の成否をサーバー装置100へ送信する。
【0013】
可視光送信装置200は、表示パネルに広告等を表示するとともに、可視光受信装置300に対し、可視光データを送信する。可視光データは、例えば、表示パネルに表示されている広告に関する情報等である。可視光送信装置200は、ネットワーク50に接続されており、ネットワーク50に接続されたサーバー装置100から、発光装置である表示パネルに表示する広告の画像データや、可視光受信装置300に送信する可視光データの配信を受ける。
【0014】
可視光送信装置200は、発光装置である表示パネルを構成しているLED(Light Emitting Diode)を高速点滅させ、その高速点滅にデジタル情報を乗せることにより、可視光データを可視光受信装置300に送信する。表示パネルは、例えば、信号機、デジタルサイネージである。なお、可視光送信装置200は、可視光受信装置300の水平高度より高い位置に備えられた発光装置に対して接続され、発光を制御するのが望ましい。より高い位置にある方が、その受光範囲の障害物が減ることが考えられ、受光範囲が広くなる傾向にあると考えられるためである。また、可視光送信装置200は、スポットと呼ばれる照射範囲と関連付けて管理される。通常は、スポットは表示パネルから発光された可視光を視認できる範囲となる。スポットを多地点に設けることで可視光通信がよりスムーズなものとなるため、スポットは複数設けられることが望ましい。
【0015】
可視光受信装置300は、例えば、カメラを備えたスマートフォンやナビゲーション装置、飛行体の制御装置等である。可視光受信装置300には、カメラで撮影された表示パネルから、可視光データを復調するプログラムがインストールされている。すなわち、可視光受信装置300は、可視光受信装置300が備えるカメラで可視光送信装置200の表示パネルを撮影することにより、表示パネルから映像に重畳して送信される広告等の情報(可視光データ)を受信することができる。可視光受信装置300は、自動車、自動二輪車、自転車、三輪車、一輪車、ベビーカー、モデルカー等の移動体に搭載される。なお、移動体は陸上に限られるものではなく、可視光受信装置300は、ホバークラフトやドローン、飛行機やヘリコプター等を含む飛行体であっても搭載されうる。
【0016】
可視光受信装置300は、表示パネルの表示エリアから送信される可視光データを受信し、通信エラーが発生したか(適切に可視光データを受信できたか)否か判定する。可視光受信装置300は、通信エラーの発生を判定した場合には、通信の失敗の結果を、無線受信装置60へ送信する。可視光受信装置300は、通信エラーの発生を判定しなかった場合には、通信の成功の結果を、無線受信装置60へ送信する。
【0017】
なお、可視光受信装置300は、通信の成功の結果をサーバー装置100へ送信する際に、必ずしも無線受信装置60を介する必要はない。例えば、可視光受信装置300または可視光受信装置300が備えられた移動体の発光部(例えば、車両のヘッドライト等)を可視光送信装置の表示パネルと同様に制御して通信の成否を可視光送信装置200へ応答として返し、可視光送信装置200に受光部を設けて可視光受信装置300と同様に制御して応答を受け取り、可視光送信装置200がサーバー装置100へ通信の成否を通知するようにしてもよい。
【0018】
可視光送信装置200は、表示パネルの表示エリアから、可視光受信装置300が通信エラー判定を行えるように、可視光データを送信する。例えば、可視光送信装置200は、表示エリアから送信する可視光データである実データ単位Xごとに、保障コードPとしてCRC(Cyclic Redundancy Check)を付加する。
【0019】
図2は、可視光通信データ構造を説明する図である。図2には、可視光受信装置300が受信した表示エリアの可視光データの例を用いて、可視光通信データ構造250が示してある。
【0020】
図2に示す枠251は、表示エリアから送信されたデータが重畳されている実データ単位Xを示す。点線枠252は、表示エリアから送信された実データ単位Xに対して付加された保障コードPのデータを示している。CRC等の保障コードPを設けることにより、表示エリアから送信された可視光データに通信エラーが発生したか否か判定することができる。
【0021】
なお、可視光データの通信エラー検出には、CRC以外の他の方式を用いてもよい。例えば、可視光データの通信エラー検出には、チェックサムやパリティチェックを用いてもよい。
【0022】
図1の説明に戻る。図1に示すように、可視光受信装置300は可視光送信装置200から分割データを受信するが、可視光受信装置300は可視光送信装置200の受光が可能な空間的範囲に存在する必要がある。受光可能な範囲に存在しない場合には可視光送信装置200が分割データを送信しても可視光受信装置300は受信できない。
【0023】
データを受信するためには、可視光受信装置300は、可視光送信装置200の表示パネルを視認できる空間的範囲に存在する必要が有る。そのため、サーバー装置100は、可視光受信装置300が受信可能な範囲に到達できるように、送信する分割データを複数の可視光送信装置200から選択し、分割データを予め配信する必要が有る。
【0024】
また、可視光データの通信の成否をサーバー装置100が受信すると、サーバー装置100は、送信対象のデータから所定長で分割した次のデータを特定し、可視光受信装置300の次の移動先付近のスポットへ配信する。これにより、サーバー装置100は、通信エラーが発生した可視光データを、別のスポットで再送信するか、別のスポットで続きのデータを送信するか、を制御することができる。
【0025】
例えば、上記例の場合、サーバー装置100は、可視光受信装置300が搭載されている移動体の位置と移動予定の経路情報を用いて、次に経路上で送信可能なスポットを検索して当該スポットに関連付けられた可視光送信装置200に次のデータを配信する。
【0026】
このように、図1に示す可視光通信システムは、可視光受信装置300が移動体であっても、その移動先にあるスポットから同じデータを再送信、あるいは次の分割データを送信することができるため、適切に可視光通信を行うことができる。
【0027】
なお、可視光送信装置200は、サーバー装置100から配信された送信対象データの分割データを、所定の時間帯(送信時刻帯)において表示パネルの画像に重畳させて表示する。すなわち、送信時刻帯の間は、可視光送信装置200は、送信に成功したことを検知したサーバー装置100から送信終了の指示を受けない限りは、分割データを送信し続ける。
【0028】
サーバー装置100は、制御部110と、記憶部120と、通信部130と、を備える。制御部110は、配信部111と、受信部112と、分割データ準備処理部113と、移動時間推定部114と、送信装置決定部115と、スポット評価部116と、を備える。
【0029】
記憶部120には、送信データ割当記憶部121と、経路記憶部122と、スポット記憶部123と、スポットランク記憶部124と、送信統計記憶部125と、地図情報記憶部126と、が格納される。
【0030】
図3は、送信データ割当記憶部に格納されるデータ構造の例を示す図である。送信データ割当記憶部121には、送信装置識別子121aと、送信時刻帯121bと、データ識別子121cと、受信装置識別子121dと、が対応付けて格納される。
【0031】
送信装置識別子121aは、可視光送信装置200を識別する情報である。送信時刻帯121bは、送信装置識別子121aで識別される可視光送信装置200から分割データの送信を行う時刻帯を特定する情報である。データ識別子121cは、送信する分割データを特定する情報である。受信装置識別子121dは、分割データを送信する対象となる可視光受信装置300を特定する情報である。なお、本実施形態においては、一つの可視光送信装置200からは、同一の時刻帯において、一つの可視光受信装置300宛の一つの分割データを送信するものであるが、これに限られない。例えば、表示パネルを領域に分割して、各領域が一つの可視光受信装置300宛ての一つの分割データを送信するものであってもよい。その場合には、送信データ割当記憶部121には、送信領域を特定する情報が含まれているのが望ましい。
【0032】
図4は、経路記憶部に格納されるデータ構造の例を示す図である。経路記憶部122には、受信装置識別子122aと、経路識別子122bと、経路詳細情報122cと、が対応付けて格納される。
【0033】
受信装置識別子122aは、分割データを送信する対象となる可視光受信装置300を特定する情報である。経路識別子122bは、受信装置識別子122aで識別される可視光受信装置300が備えられる移動体の移動予定を含む経路を特定する情報である。経路詳細情報122cは、経路識別子122bで特定される経路の詳細を特定する情報である。例えば、移動する位置、移動する方向、通過の予想時刻等の情報が含まれる。
【0034】
図5は、スポット記憶部に格納されるデータ構造の例を示す図である。スポット記憶部123には、スポット識別子123aと、送信装置識別子123bと、座標123cと、受信可能エリア123dと、が対応付けて格納される。
【0035】
スポット識別子123aは、可視光送信装置200により送信される情報を受信する領域であるスポットを特定する情報である。送信装置識別子123bは、スポット識別子123aで特定されるスポットにおいて送信を担う可視光送信装置200を特定する情報である。座標123cは、送信装置識別子123bで特定される可視光送信装置200が配置される座標である。受信可能エリア123dは、送信装置識別子123bで特定される可視光送信装置200により送信されたデータが受信可能な範囲を特定する情報である。
【0036】
図6は、スポットランク記憶部に格納されるデータ構造の例を示す図である。スポットランク記憶部124には、スポット識別子124aと、信頼度ランク124bと、が対応付けて格納される。スポット識別子124aは、可視光送信装置200により送信される情報を受信する領域であるスポットを特定する情報である。信頼度ランク124bは、スポット識別子124aで特定されるスポットにおける送信信頼性の評価を特定する情報である。
【0037】
図7は、送信統計記憶部に格納されるデータ構造の例を示す図である。送信統計記憶部125には、スポット識別子125aと、総送信回数125bと、時刻帯別成功率125cと、天候別成功率125dと、進入方向別成功率125eと、が対応付けて格納される。
【0038】
スポット識別子125aは、可視光送信装置200により送信される情報を受信する領域であるスポットを特定する情報である。総送信回数125bは、スポット識別子125aで特定されるスポットから可視光送信がなされた回数を特定する情報である。なお、可視光送信がなされた回数は、可視光受信装置300により受信された回数をいうものとする。
【0039】
時刻帯別成功率125cは、可視光送信装置200により送信された時刻帯ごとに、総送信回数に占める受信成功結果の受信回数を割合で示す統計情報である。例えば、朝(5時〜10時)、昼(10時〜15時)、夕方(15時〜20時)、夜(20時〜翌5時)等の所定の時刻帯ごとに、その時刻帯において送信が成功した割合を特定する情報が格納される。
【0040】
天候別成功率125dは、可視光送信装置200により送信された天候ごとに、総送信回数に占める受信成功結果の受信回数を割合で示す統計情報である。例えば、晴、曇、雨、雪等の所定の天候ごとに、その天候において送信が成功した割合を特定する情報が格納される。
【0041】
進入方向別成功率125eは、スポットへの可視光受信装置300の進入方向(進入時の進行方向)ごとに、総送信回数に占める受信成功結果の受信回数を割合で示す統計情報である。例えば、北(誤差−45度〜45度以内)、東、南、西等の所定の方向ごとに、その方向に進入時において送信が成功した割合を特定する情報が格納される。
【0042】
地図情報記憶部126には、所定のフォーマットによる地図情報が格納される。この地図情報は、経路記憶部122に格納される経路詳細情報122cと対応付けられた地図情報であり、経路詳細情報122cの情報と突合することで詳細な位置関係を矛盾なく取得できるものであればよい。
【0043】
配信部111は、送信データ割当記憶部121において送信対象のデータを所定長で分割した分割データを対応付けられた可視光送信装置200に対して、分割データを配信する。
【0044】
受信部112は、配信部111から配信された分割データごとに、可視光送信装置200から可視光受信装置300への送信の成否を、無線受信装置60から受信する。
【0045】
分割データ準備処理部113は、配信された分割データの送信が成功である場合には、可視光受信装置300を特定する情報と、分割データに後続する第二の分割データを特定する情報と、第二の分割データを可視光受信装置300に送信する第二の可視光送信装置200を識別する情報と、を対応付けて送信データ割当記憶部121を更新する。配信された分割データの送信が失敗である場合には、分割データ準備処理部113は、可視光受信装置300を特定する情報と、送信に失敗した分割データを特定する情報と、分割データを可視光受信装置300に送信する第二の可視光送信装置200を識別する情報と、を対応付けて送信データ割当記憶部121を更新する。
【0046】
移動時間推定部114は、スポット記憶部123の座標123cを参照して、可視光受信装置300が備えられた移動体の、経路近傍のスポットまでの移動体の移動に係る所要時間を推定する。この推定は、当該移動体の移動速度の平均等により行われるものであってもよいし、統計処理された一般的な推定時間であってもよいし、経路詳細に含まれる到着時刻予測を用いて算出するものであってもよい。
【0047】
送信装置決定部115は、可視光送信装置200への配信に係る時間より長い所要時間となるスポットに係る可視光送信装置200を、第二の可視光送信装置として決定する。すなわち、送信装置決定部115は、次に可視光送信を行う可視光送信装置の決定に際して、到着時刻までに配信が完了する見込みが高いスポットを選別して決定する。なお、送信装置決定部115は、送信される連続データの種類に必要な信頼性を有するスポットを対象として第二の可視光送信装置を決定する。
【0048】
また、送信装置決定部115は、配信先となるべき第二の可視光送信装置の送信予定の時刻帯が、送信データ割当記憶部121に既に対応付けられて記憶されている場合、すなわちその時刻帯には別のデータの送信が割り当てられていて競合する場合には、当該可視光送信装置200と異なる可視光送信装置200を第二の可視光送信装置として決定する。例えば、経路上次に通過する予定のスポットに係る可視光送信装置を第二の可視光送信装置として決定する。
【0049】
スポット評価部116は、統計情報を用いてスポットの信頼性を特定する。スポット評価部116は、スポットの信頼性の評価において、スポットへの進入角度と、スポットの周囲の天候と、スポットへ移動体が到着する時刻と、に応じた通信の成否の統計情報を用いて信頼性を特定する。
【0050】
通信部130は、ネットワーク50に通信可能に接続される他の装置と通信を行う。
【0051】
可視光送信装置200は、表示制御部210と、送信データ重畳部220と、計時部230と、通信部240と、を備える。
【0052】
表示制御部210は、表示パネルに表示する内容に応じて信号を生成し、表示を制御する。送信データ重畳部220は、可視光で送信する分割データの重畳を行う。具体的には、送信データ重畳部220は、表示制御部210により生成される信号に対して、分割データに応じた点滅周波数を重畳させる。
【0053】
計時部230は、時刻の特定、時間の算出、経過時間の測定等、計時に関する処理を行う。通信部240は、ネットワーク50に通信可能に接続される他の装置と通信を行う。
【0054】
可視光受信装置300は、撮像部310と、受信データ抽出部320と、エラー検知部330と、DSRC通信部340と、位置検出部350と、を備える。
【0055】
撮像部310は、所定の画角にて可視光の撮像を行い、画像データを生成する。受信データ抽出部320は、撮像部310が生成した画像データから、可視光通信による受信データを抽出する。例えば、受信データ抽出部320は、表示パネルの光の点滅から、受信データを抽出する。
【0056】
エラー検知部330は、抽出した受信データの通信エラーを検出する。例えば、受信データにはCRCが付加されていることから、CRCに基づいて、抽出した受信データの通信エラーを検出する。
【0057】
なお、エラー検知部330は、抽出した受信データの通信エラーを検出すると、DSRC通信部340を介して通信の失敗情報を無線受信装置60に送信する。通信エラーを検出しなかった場合には、エラー検知部330は、DSRC通信部340を介して通信の成功情報を無線受信装置60に送信する。
【0058】
DSRC通信部340は、無線受信装置60との間で、DSRC通信を行う。
【0059】
位置検出部350は、GPS(Global Positioning System)やGLONASS(Global Navigation Satellite System)を用いた測位を行い、座標を位置情報として検出する。
【0060】
図8は、サーバー装置のハードウェア構成例を示す図である。サーバー装置100は、NIC(Network Interface Card)等の通信装置101と、メモリ等の主記憶装置102と、キーボードやマウス等の入力装置103と、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置104と、ハードディスクやSSD(Solid State Drive)等の外部記憶装置105と、ディスプレイやスピーカー、プリンタ等の表示装置106と、これらをつなぐバス109と、を含んで構成される。
【0061】
通信装置101は、ネットワークケーブルを介して有線通信を行う有線の通信装置、又はアンテナを介して無線通信を行う無線通信装置である。通信装置101は、ネットワークに接続される他の装置との通信を行う。
【0062】
主記憶装置102は、例えばRAM(Random Access Memory)などのメモリである。
【0063】
入力装置103は、キーボードやマウス等のポインティングデバイス、タッチパネル、あるいは音声入力装置であるマイク等を含む入力情報を受け付ける装置である。
【0064】
外部記憶装置105は、デジタル情報を記憶可能な、いわゆるハードディスクやSSD、あるいはフラッシュメモリなどの不揮発性記憶装置である。
【0065】
表示装置106は、ディスプレイやプリンタ、あるいは音声出力装置であるスピーカー等を含む出力情報を生成する装置である。
【0066】
上記した配信部111と、受信部112と、分割データ準備処理部113と、移動時間推定部114と、送信装置決定部115と、スポット評価部116とは、演算装置104に処理を行わせるプログラムによって実現される。このプログラムは、主記憶装置102、または外部記憶装置105内に記憶され、実行にあたって主記憶装置102上にロードされ、演算装置104により実行される。
【0067】
また、記憶部120に格納される送信データ割当記憶部121と、経路記憶部122と、スポット記憶部123と、スポットランク記憶部124と、送信統計記憶部125と、地図情報記憶部126とは、主記憶装置102及び外部記憶装置105により実現される。
【0068】
また、WANやLAN、インターネット等に通信可能に接続する通信部130は、通信装置101により実現される。
【0069】
以上が、本実施形態におけるサーバー装置100のハードウェア構成例である。しかし、これに限らず、その他のハードウェアを用いて構成されるものであってもよい。例えば、カーナビゲーション装置や、テレビジョン装置等の、各種の情報処理装置であってもよい。
【0070】
なお、サーバー装置100は、図示しないが、OS(Operating System)、ミドルウェア、アプリケーションなどの公知の要素を有し、特にディスプレイなどの入出力装置にGUI画面を表示するための既存の処理機能を備える。
【0071】
図9は、可視光送信装置のハードウェア構成例を示す図である。可視光送信装置200は、NIC等の通信装置201と、メモリ等の主記憶装置202と、CPU等の演算装置203と、ビデオカード等の表示制御装置204と、ディスプレイやスピーカー等の表示装置205と、これらをつなぐバス209と、を含んで構成される。
【0072】
通信装置201は、ネットワークケーブルを介して有線通信を行う有線の通信装置、又はアンテナを介して無線通信を行う無線通信装置である。通信装置201は、ネットワークに接続される他の装置との通信を行う。
【0073】
主記憶装置202は、例えばRAMなどのメモリである。
【0074】
表示装置205は、LEDディスプレイ、有機ELディスプレイ等を含む出力情報を生成する装置である。
【0075】
上記した計時部230は、演算装置203に処理を行わせるプログラムによって実現される。このプログラムは、主記憶装置202内に記憶され、実行にあたって主記憶装置102上にロードされ、演算装置203により実行される。
【0076】
また、表示制御部210と、送信データ重畳部220とは、表示制御装置204により実現される。
【0077】
また、WANやLAN、インターネット等に通信可能に接続する通信部240は、通信装置201により実現される。
【0078】
以上が、本実施形態における可視光送信装置200のハードウェア構成例である。しかし、これに限らず、その他のハードウェアを用いて構成されるものであってもよい。例えば、カーナビゲーション装置や、デジタルサイネージ装置、テレビジョン装置等の、各種の情報処理装置であってもよい。
【0079】
図10は、可視光受信装置のハードウェア構成例を示す図である。可視光受信装置300は、DSRC通信装置301と、メモリ等の主記憶装置302と、GPS装置303と、CPU等の演算装置304と、カメラ等の撮像装置305と、これらをつなぐバス309と、を含んで構成される。
【0080】
DSRC通信装置301は、アンテナを介して5.8GHz(ギガヘルツ)帯等の帯域で無線通信を行う無線通信装置である。DSRC通信装置301は、他のDSRC通信装置との通信を行う。
【0081】
主記憶装置302は、例えばRAMなどのメモリである。
【0082】
GPS装置303は、衛星波を受信し、衛星間の距離と距離の変化率とを3個以上の衛星に対して測定することで可視光受信装置300の現在地、進行速度および進行方位および時刻を特定するとともに、位置等を特定した年月日時刻に関連付けて主記憶装置302に記録する。
【0083】
撮像装置305は、所定の画角で可視光を撮像し、画像データを生成するデジタルカメラである。なお、撮像装置305は、可視光送信装置200から発せられた可視光通信による分割データを受信するため、一定時間の同一画素の点滅の頻度を取得する必要が有る。そのために、撮像装置305の受光素子にはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の常時受光する素子を採用し、ローリングシャッター方式のカメラが望ましい。
【0084】
上記した受信データ抽出部320と、エラー検知部330とは、演算装置304に処理を行わせるプログラムによって実現される。このプログラムは、主記憶装置302内に記憶され、実行にあたって主記憶装置302上にロードされ、演算装置304により実行される。
【0085】
また、DSRC通信部340は、DSRC通信装置301により実現される。位置検出部350は、GPS装置303により実現される。撮像部310は、撮像装置305により実現される。
【0086】
以上が、本実施形態における可視光受信装置300のハードウェア構成例である。しかし、これに限らず、その他のハードウェアを用いて構成されるものであってもよい。例えば、カーナビゲーション装置や、移動体の移動制御装置等の、各種の情報処理装置であってもよい。
【0087】
図11は、スポット配信処理のフロー例を示す図である。スポット配信処理は、周期的に(例えば、30秒ごと)実行される。
【0088】
サーバー装置100の配信部111は、稼動中の移動体ごとにステップS001〜ステップS006を実施する。
【0089】
まず、配信部111は、移動体の位置と経路を特定する(ステップS001)。具体的には、配信部111は、地図情報記憶部126の地図情報上に、経路記憶部122に格納されている経路詳細情報122cを重ね合わせて、経路を特定する。そして、移動体すなわち可視光受信装置300の位置検出部350が検出した座標を所定の方法(例えば、無線受信装置60経由、あるいはその移動体が通信装置を備える場合にはネットワーク50経由)で取得する。
【0090】
そして、配信部111は、経路付近のスポットであって、準備時間が移動所要時間より短く、到着予定時刻帯に配信先のないスポットを特定する(ステップS002)。具体的には、配信部111は、経路付近(例えば、経路から所定距離内)にあるスポットをリストアップする。そして、移動時間推定部114は、移動体の位置から経路上の通過順に、移動所要時間を特定する。そして、配信部111は、送信対象のデータを所定長で分割した分割データの長さに応じた配信に要する準備時間を決定する。これは、データ長が固定であれば略一定の時間でよい。そして、配信部111は、準備時間よりも長い移動所要時間であるスポットを特定する。配信部111は、当該スポットへの到着時刻帯を算出し、到着時刻帯に送信対象のデータが送信データ割当記憶部121に対応付けられていないスポットを移動体の経路上の通過順に並べ、最も早期に到着するスポットを特定する。
【0091】
そして、配信部111は、特定したスポットへの移動体の到着状況に応じ信頼性を特定する(ステップS003)。具体的には、配信部111は、スポット評価部116へ、到着時刻帯、スポットの天候、スポットへの進入方向等の到着状況を受け渡して信頼性ランクを取得する。スポット評価部116は、送信統計記憶部125を参照して、スポットごとに進入方向、天候、時間帯別の成功率に基づく重み付けを行い、所定の指標値を算出する。スポット評価部116は、指標値が最も高いスポット、すなわちより成功率が高いと想定されるスポットの信頼度ランクを高く算出し、配信部111へ受け渡す。図13にて、例を後述する。
【0092】
そして、配信部111は、次に送信するデータを生成する(ステップS004)。具体的には、配信部111は、分割データ準備処理部113に処理を依頼し、分割データ準備処理部113は、送信対象のデータが先頭データ、すなわち初回送信の場合には、先頭から所定長の分割データを送信するデータとして生成する。一方、分割データ準備処理部113は、送信対象のデータが先頭データでない場合、すなわち二回目以降の送信の場合には、前回の送信結果を無線受信装置60から取得して送信失敗であれば送信に失敗した分割データを送信するデータとして生成する。分割データ準備処理部113は、前回の送信結果が送信成功であれば、送信した分割データに続くデータを送信対象のデータから所定長で分割して、送信するデータとして生成する。
【0093】
そして、配信部111は、ステップS003で特定したスポットが次に送信するデータの種類に必要な信頼性を有するか否か判定する(ステップS005)。具体的には、配信部111は、ステップS004で生成した送信するデータの種類を、制御情報、重要情報、通常データ、ログデータ等の所定の取扱別のデータに分類し、ステップS003で特定したスポットの信頼度ランクが当該送信データの種類において要求される信頼度ランクに達しているか否かを判定する。図14にて、例を後述する。
【0094】
ステップS003で特定したスポットが次に送信するデータの種類に必要な信頼性を有しない場合(ステップS005にて「No」の場合)には、配信部111は、制御をステップS002へ戻す。あるいは、配信部111は、ステップS002において特定した経路上の通過順において次に到着するスポットを対象としてステップS003から再処理するようにしてもよい。
【0095】
ステップS003で特定したスポットが次に送信するデータの種類に必要な信頼性を有する場合(ステップS005にて「Yes」の場合)には、配信部111は、当該スポットへデータの配信を行う(ステップS006)。具体的には、配信部111は、ステップS005において信頼性を有すると判定されたスポットと、送信するデータと、送信先の移動体の可視光受信装置300の情報と、送信する時刻帯(移動体の到着時刻を中心とする前後5分程度)と、を対応づけて送信データ割当記憶部121へ格納し、所定のタイミングにおいて、送信するデータをスポットの可視光送信装置200へ送信する。
【0096】
以上が、スポット配信処理のフロー例である。スポット配信処理によれば、送信済みのスポットでの可視光通信の成否に応じて次に送信するデータを特定しつつ、移動体の移動先の可視光送信装置200へ送信するデータを配信することができる。また、一つの可視光送信装置200から同時に、異なる複数の可視光受信装置300へ情報を送信する競合が発生するおそれを回避することも可能となる。配信後は、可視光送信装置200は当該データを送信時刻帯において表示パネルに重畳させて表示する。なお、送信時刻帯に属する時刻であっても、可視光で送信した結果、可視光受信装置300が受信に成功した場合には、サーバー装置100から送信終了の指示を受け取り、可視光送信装置200は送信を終了する。
【0097】
図12は、可視光通信処理のフロー例を示す図である。可視光通信処理は、移動体に備えられた可視光受信装置300の位置がスポットの受信可能エリア内に入ると開始される。
【0098】
可視光受信装置300の撮像部310は、スポットの受信可能エリア内にある間、可視光によるデータを受信する(ステップS101)。具体的には、撮像部310は、スポットの可視光送信装置200の表示パネルを撮像する。そして、受信データ抽出部320が撮像した画像データから画素ごとの点滅が示す情報を特定し、受信データを抽出する。
【0099】
そして、エラー検知部330は、エラー検出処理を行う(ステップS102)。エラー検知部330は、抽出した受信データに含まれるCRC等の保障コードPを用いて実データ単位Xごとに受信エラーの発生を検知する。
【0100】
そして、DSRC通信部340は、受信エラーの検知有無に応じて、受信結果をDSRCにより無線受信装置60へ送信する(ステップS103)。なお、DSRC通信部340は、DSRC通信に失敗する場合等送信できない場合には、受信結果を携帯電話網を介してサーバー装置100へ送信するようにしてもよい。
【0101】
そして、サーバー装置100の受信部112は、受信結果を受信するとその成否と受信状況とを特定し、統計に反映させる(ステップS104)。具体的には、受信部112は、受信結果を受信するとその成否と、時刻帯、スポットへの進入方向(スポットへの進入角度ともいう)、天候等の受信状況と、を特定し、送信統計記憶部125に反映させる。
【0102】
以上が、可視光通信処理のフロー例である。可視光通信処理によれば、移動体が受信エリアに進入するとエリア内で受信を行い、エラーの発生に応じて通信の失敗を判定し、サーバー装置100へ無線受信装置60を介して報告する。サーバー装置100は、報告の都度統計情報を更新できる。
【0103】
図13は、信頼度ランク算出のしくみと例を示す図である。信頼度ランクは、スポット配信処理において、移動体の経路に応じて、また移動体の到着状況別の統計情報を用いることで、都度変化しうる。すなわち、移動体の到着時刻や受信エリアへの進入方向、天候等により、スポットの信頼度ランクは変化する。
【0104】
例えば、スポット「A」は経路上、「南」向きに進入(すなわち、北方向から移動してきて南へ向いて進入)する場合には、「7」の指標値を得られるが、経路が逆向きすなわち「北」向きに進入する場合には「1」の指標値を得るに留まる。
【0105】
移動体にスポットA、B、C、Dの順に移動する経路が設定されている場合には、スポット評価部116は、それぞれの進入方向に応じて「7」、「1」、「7」、「1」の指標値を得て、それぞれの天候に応じて5段階評価の「2」、「2」、「5」、「2」の指標値を得る。またそれぞれの到着時刻帯に応じて5段階評価の「4」、「4」、「4」、「4」の指標値を得る。指標値をスポットごとに合計すると、スポットA、B、C、Dはそれぞれ「13」、「7」、「16」、「7」の指標値を得る。そして、スポット評価部116は、スポットごとの指標値に応じて所定の信頼度ランクを算出することができる。
【0106】
図14は、信頼度別の取扱データ種類の例を示す図である。図14では、信頼度ランクごとに、取扱可能なデータの種類と、取扱不可能なデータの種類と、の割り当てが示されている。例えば、信頼度ランク「1」に相当するスポットでは、全ての種類のデータの送信が可能となっており、信頼度ランクが「1」よりも劣る「2」に相当するスポットでは、制御情報については取扱が不可とされている。さらに信頼度ランクが劣る「3」に相当するスポットでは、制御情報と重要情報とについては取扱が不可とされ、通常データ、ログデータに関しては取扱が可能とされている。
【0107】
図15は、再送信例のイメージを示した図である。可視光受信装置300が設けられた移動体が車両である場合に、スポット配信処理および可視光通信処理によれば、その経路上にスポットX、Y、Zが含まれるとした場合に、一つのスポットYで受信に失敗すると、サーバー装置100は次のスポットZに同じデータを配信するため、スポットZでは受信に失敗したデータの再受信が可能となる。
【0108】
図16は、競合回避例のイメージを示した図である。可視光受信装置300が設けられた移動体が車両である場合に、スポット配信処理によれば、複数の車両への異なるデータの配信を行う競合を避けることができる。具体的には、車Aの経路上にスポットX、Y、Zが含まれ、他の車Bの経路上にスポットYが含まれるとした場合に、スポットYにおいて車Aの到着時刻帯と同時刻帯に他の車Bへ所定のデータB1の送信がなされるとする。スポット配信処理のステップS002においては、車AへデータA2を送信するスポットをスポットYから次に通過するスポットZへ変更して競合を回避することができる。
【0109】
図17は、飛行体への送信例のイメージを示した図である。飛行体(例えば、ドローン等)には、空中を飛行する経路が設定されており、可視光受信装置300が備えられている。そして、例えばビルの屋上等に設置されたデジタルサイネージ等の広告パネルがその正面方向に送信可能範囲(スポット)を設けて可視光送信装置200として動作するものとする。サーバー装置100は、飛行体の飛行経路上に送信可能範囲を有する広告パネルを地図情報と位置情報とを用いて特定し、その飛行経路に沿って送信データの分割データを順に配信し、飛行体は飛行経路を飛行しながら広告パネルを撮影することにより、必要なデータの受信が実現される。
【0110】
上述した可視光通信システムの機能構成は、その構成を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分類したものである。構成要素の分類の仕方や名称によって、本願発明が制限されることはない。例えば、サーバー装置100、可視光送信装置200および可視光受信装置300の構成は、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。また、各構成要素の処理は、1つのハードウェアで実行されてもよいし、複数のハードウェアで実行されてもよい。
【0111】
また、上述したフローチャートの各処理単位は、サーバー装置100、可視光送信装置200および可視光受信装置300の処理を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものである。処理単位の分割の仕方や名称によって、本願発明が制限されることはない。サーバー装置100、可視光送信装置200および可視光受信装置300の処理は、処理内容に応じて、さらに多くの処理単位に分割することもできる。また、1つの処理単位がさらに多くの処理を含むように分割することもできる。また、本発明は、サーバー装置100、可視光送信装置200および可視光受信装置300の機能を実現するプログラム、および当該プログラムを記憶したコンピューター読取可能な記憶媒体として提供することもできる。
【0112】
また、上記の各構成、機能、処理部等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0113】
1…可視光通信システム、50…ネットワーク、60…無線受信装置、100…サーバー装置、110…制御部、111…配信部、112…受信部、113…分割データ準備処理部、114…移動時間推定部、115…送信装置決定部、116…スポット評価部、120…記憶部、121…送信データ割当記憶部、122…経路記憶部、123…スポット記憶部、124…スポットランク記憶部、125…送信統計記憶部、126…地図情報記憶部、130…通信部、200…可視光送信装置、210…表示制御部、220…送信データ重畳部、230…計時部、240…通信部、300…可視光受信装置、310…撮像部、320…受信データ抽出部、330…エラー検知部、340…DSRC通信部、350…位置検出部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17