(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリアミド材質の逆浸透膜を有する第1膜分離部で被処理水を膜分離して得られた濃縮水を、ポリアミド材質の逆浸透膜を有する第2膜分離部で膜分離する膜分離工程を備え、
前記膜分離工程は、塩素系酸化剤と、スライムコントロール剤とを含む前記被処理水を前記第1膜分離部で膜分離することを含み、
前記膜分離工程は、前記被処理水又は前記濃縮水における前記塩素系酸化剤又は前記スライムコントロール剤の濃度を制御する濃度制御工程を有し、
前記濃度制御工程は、前記濃縮水における遊離塩素濃度を指標にして、前記被処理水における前記塩素系酸化剤の濃度を調整することによって、前記濃縮水における前記塩素系酸化剤の濃度を制御することを含み、
前記スライムコントロール剤は、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(CMIT)、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(MIT)、2,2−ジブロモ−3−ニトロプロピオンアミド(DBNPA)、及び、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール(ブロノボール)からなる群より選択された少なくとも1種である、水処理方法。
前記濃度制御工程では、前記濃縮水における前記塩素系酸化剤の濃度を遊離塩素濃度換算で0.01mg/L以上0.10mg/L以下に制御する、請求項1に記載の水処理方法。
前記膜分離工程は、前記第1膜分離部又は前記第2膜分離部におけるバイオファウリングの発生量に応じて、前記被処理水又は前記濃縮水における前記塩素系酸化剤又は前記スライムコントロール剤の濃度を制御する濃度制御工程を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の水処理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、水処理方法においては、例えば、上流側の膜分離部で膜分離した濃縮水を、下流側の膜分離部でさらに膜分離することがある。このような水処理方法では、微生物の栄養源となる成分を含む被処理水を膜分離する上流側の膜分離部において、下流側の膜分離部よりも、バイオファウリングが生じやすい。これに対し、例えば特許文献1に記載の方法のように、塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを被処理水に添加すると、主に上記の安定な化合物によって、上流側の膜分離部及び下流側の膜分離部の両方においてバイオファウリングを抑制することとなる。上記の安定な化合物は、上述したように、被処理水における濃度を高めるといった非効率的なことをしなければ、特に上流側の膜分離部においてバイオファウリングを抑制できない。そこで、被処理水を逆浸透膜で膜分離する上流側の膜分離部と、該膜分離部の濃縮水を逆浸透膜で膜分離する下流側の膜分離部とにおいて、バイオファウリングを効率よく抑制できる水処理方法が要望されている。
【0006】
本発明は、上記の問題点、要望点等に鑑み、被処理水を逆浸透膜で膜分離する上流側の第1膜分離部と、該膜分離部の濃縮水を逆浸透膜で膜分離する下流側の第2膜分離部とにおいて、バイオファウリングを効率よく抑制できる水処理方法を提供することを課題とする。また、該水処理方法を行うように構成された水処理設備を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明に係る水処理方法は、逆浸透膜を有する第1膜分離部で被処理水を膜分離して得られた濃縮水を、逆浸透膜を有する第2膜分離部で膜分離する膜分離工程を備え、
膜分離工程は、塩素系酸化剤と、スライムコントロール剤とを含む被処理水を第1膜分離部で膜分離することを含み、
スライムコントロール剤は、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(CMIT)、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(MIT)、2,2−ジブロモ−3−ニトロプロピオンアミド(DBNPA)、及び、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール(ブロノボール)からなる群より選択された少なくとも1種である。
【0008】
上記の水処理方法においては、被処理水において塩素系酸化剤とスライムコントロール剤とが混在した状態で、反応速度が速い塩素系酸化剤は、微生物を酸化して比較的早く消費され得る一方で、反応速度が遅いスライムコントロール剤は、微生物に作用して消費されるまで比較的時間を要する。従って、バイオファウリング抑制能が比較的高い塩素系酸化剤の酸化力によって、バイオファウリングが生じやすい第1膜分離部におけるバイオファウリングを効率よく抑制できる。また、第1膜分離部における膜分離によって、第2膜分離部で膜分離する濃縮水におけるスライムコントロール剤の濃度が高まる。バイオファウリング抑制能が比較的低いスライムコントロール剤であっても、濃度が高まった分、第2膜分離部におけるバイオファウリングを効率よく抑制できる。
従って、上記の水処理方法によれば、被処理水を逆浸透膜で膜分離する第1膜分離部と、該膜分離部の濃縮水を逆浸透膜で膜分離する第2膜分離部とにおいて、バイオファウリングを効率よく抑制できる。
【0009】
上記の水処理方法では、膜分離工程は、被処理水又は濃縮水における塩素系酸化剤又はスライムコントロール剤の濃度を制御する濃度制御工程を有し、
濃度制御工程は、濃縮水における塩素系酸化剤の濃度を制御することを含んでもよい。
これにより、塩素系酸化剤の酸化力によって逆浸透膜が劣化することを抑制しつつバイオファウリングを効率よく抑制できる。
【0010】
上記の水処理方法では、膜分離工程は、被処理水又は濃縮水における塩素系酸化剤又はスライムコントロール剤の濃度を制御する濃度制御工程を有し、
濃度制御工程は、被処理水におけるスライムコントロール剤の濃度を制御することを含んでもよい。これにより、より確実にバイオファウリングを効率よく抑制できる。
【0011】
上記の水処理方法では、膜分離工程は、第1膜分離部又は第2膜分離部におけるバイオファウリングの発生量に応じて、被処理水又は濃縮水における塩素系酸化剤又はスライムコントロール剤の濃度を制御する濃度制御工程を有してもよい。これにより、塩素系酸化剤又はスライムコントロール剤を必要以上に使わなくてもバイオファウリングを効率よく抑制できる。
【0012】
本発明の水処理設備は、逆浸透膜を有する第1膜分離部と逆浸透膜を有する第2膜分離部とを備え、
塩素系酸化剤と、スライムコントロール剤とを含む被処理水を第1膜分離部で膜分離して得られた濃縮水を、第2膜分離部で膜分離できるように構成されており、
スライムコントロール剤は、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(CMIT)、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(MIT)、2,2−ジブロモ−3−ニトロプロピオンアミド(DBNPA)、及び、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール(ブロノボール)からなる群より選択された少なくとも1種である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水処理方法及び水処理設備は、被処理水を逆浸透膜で膜分離する第1膜分離部と、該膜分離部の濃縮水を逆浸透膜で膜分離する第2膜分離部とにおいて、バイオファウリングを効率よく抑制できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る水処理設備の一実施形態について、図面を参照しつつ詳しく説明する。
【0016】
本実施形態の水処理設備1は、例えば
図1に示すように、逆浸透膜を有する最も上流側の第1膜分離部10と、逆浸透膜を有する下流側の第2膜分離部20とを備える。本実施形態の水処理設備1は、上記の第2膜分離部20よりも下流側に配置された第3膜分離部30をさらに備える。
本実施形態の水処理設備1は、被処理水を貯める貯水部4と、貯水部4から供給された被処理水を加圧する加圧ポンプPと、貯水部4から第1膜分離部10に被処理水を供給する被処理水供給経路8と、を備える。膜分離部のうち第1膜分離部10が最も上流側に配置されている。
【0017】
本実施形態の水処理設備1は、被処理水を貯水部4に貯めるように構成されている。また、貯水部4に貯められた被処理水を、被処理水供給経路8を経由させて第1膜分離部10へ供給し、供給された被処理水を第1膜分離部10によって膜分離して、第1濃縮水及び第1透過水を得るように構成されている。また、得られた第1濃縮水を、第2膜分離部20で膜分離して、第2濃縮水及び第2透過水を得るように構成されている。また、第2膜分離部20で膜分離して得られた第2濃縮水を、さらに下流側の第3膜分離部30で膜分離するように構成されている。
本実施形態の水処理設備1においては、水処理に伴って逆浸透膜に微生物が付着し、逆浸透膜の目詰まり(バイオファウリング)が生じ得る。
【0018】
被処理水としては、特に限定されず、例えば、電子部品製造工場などから排出される工場排水、又は、海水、工業用水、水道水、井水、河川水などが採用される。
【0019】
第1膜分離部10、第2膜分離部20、及び第3膜分離部30を経た第3濃縮水Bは、例えば、水分が蒸発されて、残分が廃棄処理されることとなる。あるいは、第3濃縮水Bは、例えば、下水へ放流されたり、他の処理水と混合されて河川へ放流されたりする。あるいは、第3濃縮水Bは、再処理して利用されてもよい。
一方、第1膜分離部10、第2膜分離部20、及び第3膜分離部30でそれぞれ得られた透過水Aは、集められて、例えば、純水、生産用水、飲料水、工業用洗浄水などの用途で使用される。
【0020】
貯水部4は、被処理水槽を有する。貯水部4は、
図1に示すように、被処理水供給経路8を介して被処理水を第1膜分離部10へ供給すべく、被処理水槽の内部に被処理水を貯めるように構成されている。貯水部4は、後述する塩素系酸化剤(第1薬剤)とスライムコントロール剤(第2薬剤)とを含む被処理水を内部に貯めることができるように構成されている。
【0021】
被処理水供給経路8は、貯水部4から第1膜分離部10へ被処理水を供給するように構成されている。
被処理水供給経路8には、例えば
図1に示すように、被処理水を加圧する加圧ポンプPが取り付けられている。該加圧ポンプPにより、加圧された被処理水を第1膜分離部10へ供給することができる。
【0022】
第1膜分離部10、第2膜分離部20、及び第3膜分離部30は、それぞれ、逆浸透膜を有する膜ユニットを有する。膜ユニットは、逆浸透膜によって、被処理水供給経路8から供給された被処理水を濃縮水と透過水とに膜分離するように構成されている。なお、膜ユニットとしては、従来公知の一般的なものが採用される。各膜分離部において、例えば複数の膜ユニットが並列に接続されている。
なお、逆浸透膜は、濃度にも依存するが、塩素系酸化剤によって劣化し得る。逆浸透膜の材質がポリアミドである場合、塩素系酸化剤による劣化を比較的受けやすい。本実施形態の水処理設備1においては、後述するように、塩素系酸化剤による逆浸透膜の劣化を抑制できることから、逆浸透膜の材質がポリアミドであってもよい。
【0023】
本実施形態の水処理設備1は、被処理水における塩素系酸化剤及びスライムコントロール剤の濃度を制御する濃度制御部5をさらに備える。
濃度制御部5は、
図1に示すように、膜分離前の被処理水に塩素系酸化剤(第1薬剤)を添加できる第1薬剤添加部51と、膜分離前の被処理水にスライムコントロール剤(第2薬剤)を添加できる第2薬剤添加部52と、を備える。本実施形態の水処理設備1は、第1薬剤添加部51及び第2薬剤添加部52によって、塩素系酸化剤とスライムコントロール剤とを含む被処理水を第1膜分離部10へ供給できるように構成されている。なお、本実施形態の水処理設備1は、塩素系酸化剤及びスライムコントロール剤のいずれも含まない被処理水を膜分離する水処理を行うこともできるように構成されている。
【0024】
濃度制御部5は、第1膜分離部10で得られた第1濃縮水における遊離塩素濃度を測定する遊離塩素測定部53を備える。そして、本実施形態の水処理設備1は、例えば、第1膜分離部10で得られた第1濃縮水における遊離塩素濃度が所定濃度未満となったときに、第1薬剤添加部51によって、塩素系酸化剤の添加量を増やすように構成されている。
また、濃度制御部5は、第1膜分離部10の圧力損失を測定する圧力損失測定部54を備える。そして、本実施形態の水処理設備1は、例えば、逆浸透膜に付着した微生物によって逆浸透膜の目詰まりが生じ、圧力損失測定部54で測定した第1膜分離部10の圧力損失が基準値以上になったときに、第1薬剤添加部51によって、被処理水に塩素系酸化剤を添加し始めたり、塩素系酸化剤の添加量を増やしたりするように構成されている。
【0025】
第1薬剤添加部51は、塩素系酸化剤含有液体を被処理水に添加できるように構成されている。第1薬剤添加部51は、塩素系酸化剤含有液体の添加量を変えることによって、被処理水における塩素系酸化剤の濃度を調整できるように構成されている。第1薬剤添加部51は、貯水部4の被処理水槽内に塩素系酸化剤含有液体を添加するように構成されてもよい。なお、第1薬剤添加部51が被処理水に塩素系酸化剤を添加しない場合もある。
【0026】
塩素系酸化剤は、例えば、塩素のオキソ酸塩である。塩素のオキソ酸塩は、例えば、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、塩素酸塩、及び、過塩素酸塩からなる群より選択された少なくとも1種である。
次亜塩素酸塩としては、例えば、次亜塩素酸カルシウム(さらし粉)、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウムなどが挙げられる。次亜塩素酸塩としては、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。
【0027】
本実施形態の水処理設備1は、例えば第1膜分離部10で得られた第1濃縮水における遊離塩素濃度を指標にして、膜分離される前の被処理水における塩素系酸化剤の濃度を制御するように構成されてもよい。例えば、本実施形態の水処理設備1は、第1濃縮水における遊離塩素濃度が0.01mg/L以上0.10mg/L以下の範囲となるように、被処理水に添加する塩素系酸化剤の量を調整するように構成されてもよい。
なお、本実施形態の水処理設備1は、第1濃縮水における遊離塩素濃度が0.01mg/L以上0.10mg/L以下、好ましくは0.05mg/L以下となるように、被処理水に添加する塩素系酸化剤の量を調整して、第2膜分離部20における逆浸透膜の劣化を抑制するように構成されてもよい。
【0028】
第2薬剤添加部52は、スライムコントロール剤含有液体を被処理水に添加できるように構成されている。第2薬剤添加部52は、添加するスライムコントロール剤含有液体の量を変えることによって、被処理水におけるスライムコントロール剤(第2薬剤)の濃度を調整できるように構成されている。第2薬剤添加部52は、貯水部4の被処理水槽内にスライムコントロール剤含有液体を添加するように構成されてもよい。なお、第2薬剤添加部52が被処理水にスライムコントロール剤を添加しない場合もある。
【0029】
スライムコントロール剤は、チアゾリン系化合物としての5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(CMIT)、及び、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(MIT)、並びに、有機臭素系化合物としての2,2−ジブロモ−3−ニトロプロピオンアミド(DBNPA)、及び、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール(ブロノボール)からなる群より選択された少なくとも1種である。
【0030】
本実施形態の水処理設備1においては、被処理水において塩素系酸化剤とスライムコントロール剤とが混在した状態で、反応速度が速い塩素系酸化剤(第1薬剤)は、微生物を酸化して比較的早く消費され得る一方で、反応速度が遅いスライムコントロール剤(第2薬剤)は、微生物に作用して消費されるまで比較的時間を要する。塩素系酸化剤は、酸化力を有するため、バイオファウリング抑制能が比較的高い。従って、塩素系酸化剤の酸化力によって、バイオファウリングが生じやすい第1膜分離部10におけるバイオファウリングを効率よく抑制できる。特に、塩素系酸化剤とスライムコントロール剤とが混在している場合、スライムコントロール剤よりも塩素系酸化剤の方が反応性が高いため、第1膜分離部10において塩素系酸化剤が優先的に反応し消費され、十分に塩素系酸化剤の濃度が低下する。また、第1膜分離部10における膜分離によって、透過水が得られた分、第2膜分離部20で膜分離する第1濃縮水におけるスライムコントロール剤の濃度が高まる。即ち、被処理水よりも第1濃縮水でスライムコントロール剤の濃度が高まる。濃度が高まった分、バイオファウリング抑制能が比較的低いスライムコントロール剤であっても、第2膜分離部20におけるバイオファウリングを効率よく抑制することができる。一方で、塩素系酸化剤については十分に低濃度となっているため、第1濃縮水中の塩素濃度は第2膜分離部20及び第3膜分離部30において膜を劣化させることが無い濃度まで低減される。なお、第1膜分離部10において、塩素系酸化剤の酸化力は、逆浸透膜を劣化させることよりも、殺菌することに対して優先的に作用して弱まる。酸化力が弱まる分、逆浸透膜が劣化することを抑制できる。
従って、本実施形態の水処理設備1においては、逆浸透膜処理設備において塩素系酸化剤とスライムコントロール剤とを、逆浸透膜を通過する前の被処理水に混合添加するだけでも、被処理水を逆浸透膜で膜分離する第1膜分離部10と、該膜分離部の濃縮水を逆浸透膜で膜分離する第2膜分離部20とにおいて、バイオファウリングを効率よく抑制できる。また、第1膜分離部10や第2膜分離部20における逆浸透膜の劣化を抑制できる。
【0031】
本実施形態の水処理設備1は、膜分離される前の被処理水におけるスライムコントロール剤(第2薬剤)の濃度を3ppm以上50ppm以下、好ましくは5ppm以上25ppm以下に制御するように構成されてもよい。上記のスライムコントロール剤は、通常、10ppm以上50ppm以下、好ましくは15ppm以上35ppm以下の濃度でバイオファウリングを抑制できるが、上述したように、第1膜分離部10の膜分離によって、被処理水よりも第1濃縮水や第2濃縮水において上記スライムコントロール剤の濃度が高まるため、被処理水における上記スライムコントロール剤の濃度が比較的低くても、第2膜分離部20及び第3膜分離部30におけるバイオファウリングを効率よく抑制できる。なお、以下に説明するように、第1膜分離部10又は第2膜分離部20におけるバイオファウリングの発生量に応じて、被処理水における上記スライムコントロール剤の濃度を制御してもよい。
【0032】
本実施形態の水処理設備1において、濃度制御部5は、第2膜分離部20及び第3膜分離部30におけるバイオファウリングの発生量を予測するために、第2膜分離部20及び第3膜分離部30の逆浸透膜に付着した微生物と反応させる試薬を第1濃縮水に添加できる試薬添加部55を有する。試薬は、微生物と反応することによって、検知用物質へと変化する。
また、濃度制御部5は、第2濃縮水又は第3濃縮水における検知用物質の濃度を測定する検知用物質測定部56を有する。
そして、本実施形態の水処理設備1は、例えば、膜分離された被処理水の総量が所定量に達したとき、運転時間が所定時間に達したとき、又は、第1透過水乃至第3透過水のいずれかの導電率が設定値を上回ったときに、試薬添加部55によって第1濃縮水に試薬を添加し、試薬を含む第1濃縮水を第2膜分離部20で膜分離しつつ、逆浸透膜に付着した微生物と試薬とを反応させて検知用物質を生成させ、第2濃縮水又は第3濃縮水における検知用物質の濃度を検知用物質測定部56によって測定するように構成されている。
【0033】
試薬添加部55は、試薬を含む試薬含有液体を第1濃縮水に添加できるように構成されている。
【0034】
試薬としては、水中で生育する微生物と反応することにより検知用物質を生成するものであれば、特に限定されない。試薬としては、例えば、微生物と反応することにより蛍光を発する検知用物質を生成する蛍光試薬が挙げられる。試薬としては、検知用物質が蛍光を発して検知しやすくなるという点で、レザズリンなどの蛍光試薬が好ましい。
【0035】
次に、本発明に係る水処理方法の一実施形態について説明する。
【0036】
本実施形態の水処理方法は、逆浸透膜を有する上流側の第1膜分離部10で被処理水を膜分離して得られた濃縮水を、逆浸透膜を有する下流側の第2膜分離部20で膜分離する膜分離工程を備える。
膜分離工程は、塩素系酸化剤(第1薬剤)とスライムコントロール剤(第2薬剤)とを含む被処理水を第1膜分離部10で膜分離することを含む。
膜分離工程は、塩素系酸化剤(第1薬剤)及びスライムコントロール剤(第2薬剤)のいずれも含まない被処理水を膜分離することを含んでもよい。
【0037】
本実施形態の水処理方法は、例えば、上述した水処理設備1を用いて実施することができる。
【0038】
本実施形態の水処理方法では、膜分離工程において、塩素系酸化剤(第1薬剤)及びスライムコントロール剤(第2薬剤)を含む被処理水を最も上流側の第1膜分離部10に供給して、膜分離を行うことができる。一方、膜分離工程において、塩素系酸化剤やスライムコントロール剤を含まない被処理水を最も上流側の第1膜分離部10に供給して、膜分離を行うこともできる。本実施形態の水処理方法においては、塩素系酸化剤及びスライムコントロール剤のいずれも含まない被処理水を膜分離することに伴って、特に第1膜分離部10の逆浸透膜に微生物が付着して、逆浸透膜の目詰まり(バイオファウリング)が生じ得る。
【0039】
本実施形態の水処理方法は、被処理水又は濃縮水(第1濃縮水等)における塩素系酸化剤(第1薬剤)又はスライムコントロール剤(第2薬剤)の濃度を制御する濃度制御工程を備える。
濃度制御工程は、第1濃縮水における塩素系酸化剤の濃度を制御すること、又は、被処理水におけるスライムコントロール剤の濃度を制御することを含む。
【0040】
濃度制御工程では、第1薬剤添加部51から被処理水に添加する塩素系酸化剤の量を変えることによって、第1濃縮水における塩素系酸化剤の濃度を制御できる。濃度制御工程では、第1濃縮水における塩素系酸化剤の濃度を遊離塩素濃度換算で0.01mg/L以上0.10mg/L以下、好ましくは0.05mg/L以下の範囲内(即ち、第1濃縮水における遊離塩素濃度を0.01mg/L以上0.10mg/L以下、好ましくは0.05mg/L以下)に制御することが好ましい。塩素系酸化剤は、酸化力を有するため、比較的高いバイオファウリング抑制能を有するが、逆浸透膜を劣化させ得る。塩素系酸化剤は、膜に付着した微生物を取り除くために優先的に消費されるため、ある程度の低い濃度であれば、逆浸透膜を劣化させることが少ない。従って、遊離塩素濃度が上記の範囲内であることによって、塩素系酸化剤の酸化力によって逆浸透膜が劣化することを抑制しつつバイオファウリングを効率よく抑制できる。
【0041】
例えば、濃度制御工程では、第1濃縮水における遊離塩素濃度が所定濃度未満となったとき(例えば0.01mg/L以上0.10mg/L以下の範囲、好ましくは0.01mg/L以上0.05mg/L以下の範囲における1つの所定濃度よりも低くなったとき)に、被処理水に添加する塩素系酸化剤の量を増やして、第1濃縮水における遊離塩素濃度を制御することができる。
【0042】
また、濃度制御工程では、第1膜分離部10におけるバイオファウリングの発生量に応じて、第1濃縮水における塩素系酸化剤の濃度を所定範囲内に制御できる。例えば、濃度制御工程では、第1膜分離部10の圧力損失をバイオファウリング発生量の指標として、圧力損失測定部54で測定した第1膜分離部10の圧力損失が第1基準値(例えば初期圧との差が0.10MPa以上の1つの基準値)にまで上がったときに、被処理水に添加する塩素系酸化剤の量を増やすことができる。塩素系酸化剤の量を増やした後、上記の圧力損失が第2基準値(例えば初期圧との差が0.10MPa未満の1つの基準値)にまで下がったときに、被処理水に添加する塩素系酸化剤の量を減らすか又は添加を止めることができる。なお、第1基準値は第2基準値よりも大きい。第1基準値と第2基準値との差は、0.10MPa以下であってもよい。
また、濃度制御工程では、第1膜分離部10における差圧(上記の初期値との差)に応じて、第1濃縮水における遊離塩素濃度を変えることが好ましい。例えば差圧が0.10MPa以上0.20MPa未満の場合、第1濃縮水における遊離塩素濃度を0.01mg/L以上0.05mg/L未満となるように制御する。また、例えば差圧が0.20MPa以上となった場合、第1濃縮水における遊離塩素濃度を0.05mg/L以上0.10mg/L未満となるように制御する。差圧が高いと、膜に付着した有機物(微生物など)の量が多いため、遊離塩素濃度を高く設定しても塩素系酸化剤によって膜を劣化させるおそれが低い。一方、差圧が低いと、膜に付着した有機物(微生物など)の量が少ないため、遊離塩素濃度を低く設定することで膜の劣化を抑えることができる。例えばこのようにして、第1濃縮水における遊離塩素濃度を0.01mg/L以上0.10mg/L以下、好ましくは0.05mg/L以下に制御することができる。このように制御することによって、塩素系酸化剤を必要以上に使わなくてもバイオファウリングを効率よく抑制できる。
【0043】
濃度制御工程では、第2薬剤添加部52から被処理水に添加するスライムコントロール剤(第2薬剤)の量を変えることによって、被処理水におけるスライムコントロール剤(第2薬剤)の濃度を制御できる。
濃度制御工程では、被処理水におけるスライムコントロール剤(第2薬剤)の濃度を3ppm以上50ppm以下、好ましくは5ppm以上25ppm以下の範囲内に制御することが好ましい。これにより、より確実にバイオファウリングを効率よく抑制できる。
【0044】
濃度制御工程では、下記のようにして、第1膜分離部10又は第2膜分離部20におけるバイオファウリングの発生量に応じて、被処理水又は濃縮水における塩素系酸化剤又はスライムコントロール剤の濃度を制御してもよい。
【0045】
例えば、濃度制御工程では、第2膜分離部20及び第3膜分離部30におけるバイオファウリングの発生量を知るために、第1濃縮水に試薬添加部55から試薬を添加して、試薬が添加された第1濃縮水を第2膜分離部20及び第3膜分離部30において膜分離することができる。そして、第3膜分離部30における膜分離によって得られた第3濃縮水における検知用物質の濃度を、検知用物質測定部56によって測定することができる。例えば、測定された検知用物質の濃度が増加しつつあれば、第2薬剤添加部52によって添加するスライムコントロール剤の量を増加し、一方、測定された検知用物質の濃度が低下しつつあれば、第2薬剤添加部52によって添加するスライムコントロール剤の量を減少させる。このように制御することによって、スライムコントロール剤を必要以上に使わなくてもバイオファウリングを効率よく抑制できる。
【0046】
本実施形態の水処理方法では、第1膜分離部10、又は、第2膜分離部20や第3膜分離部30におけるバイオファウリングの発生量に応じて、膜分離工程において、塩素系酸化剤又はスライムコントロール剤の少なくとも一方を含む被処理水を第1膜分離部10で膜分離することと、塩素系酸化剤及びスライムコントロール剤のいずれも含まない被処理水を第1膜分離部10で膜分離することと、を交互に繰り返して行うこともできる。これにより、塩素系酸化剤やスライムコントロール剤を必要以上に使用することが抑制され、塩素系酸化剤やスライムコントロール剤の使用量を抑えることができる。塩素系酸化剤やスライムコントロール剤の使用量(特にスライムコントロール剤の使用量)が抑えられる分、水処理方法の実施に要するコストを抑えることができる。
【0047】
本実施形態では、バイオファウリングの発生量に応じてスライムコントロール剤の添加量を制御したが、このような実施形態に限定されない。下記のようにして、濃縮水における生菌量、又は、生物活性度などに基づいて、スライムコントロール剤の添加量を制御してもよい。
【0048】
例えば、他の実施形態では、最も下流側の膜分離部で膜分離された濃縮水中のATP量を測定し、この測定値に応じてスライムコントロール剤の添加量を制御してもよい。具体的には、上記の濃縮水中のATP量の測定値が高い場合、濃縮水中に微生物が存在している(又はその痕跡がある)と判断できるため、スライムコントロール剤の添加量を増やす。一方、ATP量の測定値が低い場合、濃縮水中の微生物が少ないと判断できるため、スライムコントロール剤の添加量を減らす。
【0049】
例えば、他の実施形態では、季節ごとに生菌数とスライムコントロール剤の添加量との関係式をあらかじめ取得しておき、該当する季節の関係式に基づいて、生菌数が例えば0となるスライムコントロール剤の添加量を決定してもよい。また、同一の排水を利用して各温度における生菌数とスライムコントロール剤の添加量との関係式をあらかじめ取得しておき、各温度における最適な添加量を求め、温度に応じてスライムコントロール剤の添加量を決定してもよい。
【0050】
また、添加するスライムコントロール剤の量については、下記のようにして制御できる。最も下流側の膜分離部(本実施形態では第3膜分離部30)で膜分離された最後段濃縮水(本実施形態では第3濃縮水B)中のスライムコントロール剤濃度を、添加時の濃度と濃縮倍率とを基にして計算し、最後段濃縮水(第3濃縮水B)中におけるスライムコントロール剤濃度が10ppm以下、好ましくは0ppmよりも高く5ppm以下となるように、スライムコントロール剤の添加量を制御することがより好ましい。具体的には、本実施形態においては、第3膜分離部における膜分離後の濃縮水中のスライムコントロール剤の濃度が上記の範囲に入るように、上記添加量を制御することが好ましい。
最後段濃縮水中のスライムコントロール剤濃度が10ppm以下となるように制御することによって、スライムコントロール剤の添加量を従来よりも削減(例えば2/5以下)することができる。
なお、水処理設備1が、膜分離部として第1膜分離部10及び第2膜分離部20のみを備える場合、最も下流側の膜分離部は、第2膜分離部20であり、最後段濃縮水は、第2濃縮水である。
【0051】
本実施形態の水処理方法では、逆浸透膜の目詰まりの程度を低減させるために、例えば、NaOHやKOHなどの無機アルカリ、又は、塩酸や硫酸などの無機酸を被処理水に添加することによって、被処理水を強アルカリ性(例えばpH10よりも大)又は強酸性(例えばpH4よりも小)にすることができる。これにより、逆浸透膜に付着した微生物の少なくとも一部を膜から取り除くことができる。
【0052】
上記実施形態の水処理設備及び水処理方法は、上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示の水処理設備及び水処理方法に限定されるものではない。
また、一般の水処理設備及び水処理方法において用いられる種々の態様を、本発明の効果を損ねない範囲において、採用することができる。