特許第6789300号(P6789300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6789300
(24)【登録日】2020年11月5日
(45)【発行日】2020年11月25日
(54)【発明の名称】ワーク測定方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/22 20060101AFI20201116BHJP
【FI】
   B23Q17/22 A
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-537964(P2018-537964)
(86)(22)【出願日】2016年9月9日
(86)【国際出願番号】JP2016076700
(87)【国際公開番号】WO2018047312
(87)【国際公開日】20180315
【審査請求日】2018年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】石井 一成
(72)【発明者】
【氏名】葛西 恒二
(72)【発明者】
【氏名】スタンク, アレクサンドラ フロレンティナ
【審査官】 村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−198047(JP,A)
【文献】 特開2008−111770(JP,A)
【文献】 特開2016−018255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/22
B23Q 17/20
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送り軸で測定子とワークとを相対移動させ、前記測定子と前記ワークが接触したときの送り軸の座標に基づいて、ワークの位置を求める工作機械上でワークを測定する方法において、
前記工作機械は、X軸、Y軸、Z軸の直交3軸方向に相対移動する送り軸と、前記ワークを取り付けるワーク取付面とを有し、
手動操作により、前記複数の送り軸のうち1つの送り軸を所望の測定位置に移動させ、
前記所望の測定位置にあるときに前記1つの送り軸の座標値を記憶し、
手動操作により、前記1つの送り軸を前記測定子と前記ワーク取付面が離反する方向に移動させ、前記1つの送り軸と他の送り軸とにより前記測定子と前記ワークとを相対的に移動し、
手動操作により、前記1つの送り軸を前記測定子と前記ワーク取付面が接近する方向に移動させ、記憶した前記座標値に達したときに、前記1つの送り軸による移動を停止し、
1つの送り軸を前記座標値に停止させた状態で、手動操作により、他の送り軸を用いて測定子を移動させて複数の測定点においてワークを測定することを特徴としたワーク測定方法。
【請求項2】
前記工作機械は、所定の軸線を中心として回転可能に支持された主軸と、該主軸に対面するように配置され記ワーク取付面を有したテーブルを有し、
前記測定子は前記主軸の先端に装着され、前記1つの送り軸が前記主軸の軸線に平行なZ軸である請求項1に記載のワーク測定方法。
【請求項3】
前記測定子が前記テーブルへ接近する方向にオペレータが前記Z軸送り装置を手動操作するとき、前記Z軸送り装置が記憶された座標値に到達すると、前記直交3軸の送り軸および主軸を制御するNC装置によって、前記Z軸送り装置が前記座標値を超えて前記テーブルへ接近できないようにされる請求項に記載のワーク測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械のテーブルに固定したワークを簡単な操作で測定可能にしたワーク測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械では、加工プログラムを実行してワークを加工する前に、ワークの基準位置を工作機械に設定するために機上においてワークを測定したり、加工済ワークの寸法を機上において測定することがある。そうした場合、主軸先端に測定プローブを装着して工作機械の送り軸装置を用いてワークを測定している。こうした機上においてワーク測定する方法が、特許文献1、2に記載されている。
【0003】
特許文献1のNC装置は、手動で送り軸装置を操作して主軸に装着したタッチプローブをワークの一端面に接触させて、該端面位置を芯出し位置として原点設定し、手動で送り軸装置を操作してタッチプローブでワーク上にある円柱状の凹部の内面または円柱状の凸部の外面を3箇所または対向している2つの端面を測定して、該凹部または凸部の中心位置を演算し、或いは、該2つの端面の中間位置を演算し、演算した中心位置または中間位置を前記芯出し位置として原点設定するようになっている。
【0004】
特許文献2の工作機械では、手動で送り軸装置を操作して、測定ヘッドの測定子をワークに接触させ、そのとき測定ヘッドから送信されるスキップ信号と、送り軸の位置読取り手段が読み取った現在位置データとから、測定子が接触したときの機械座標を取得し、その機械座標を表示部の画面に表示するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平01−301042号公報
【特許文献2】特開2008−111770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2に記載されているように、手動で送り軸を操作して主軸に装着した測定プローブをワーク側面の複数の測定点に接触させる場合、1つの測定点から他の測定点へ測定プローブを移動させるときに、Z軸方向の高さが個々の測定点で異なることがある。測定すべきワークの側面がZ軸に平行な形状のワークでは、実際の測定点の高さが異なっていても、X軸、Y軸方向に正確にワークを測定できるが、そうでない場合、測定点の高さは一定であることが必要である。また、Z軸の送り軸の真直度誤差を考慮する場合、同じZ軸座標で測定した方がZ軸送り軸の真直度誤差の影響を避けることができ、測定精度が向上する。然しながら、ジョグダイヤルやハンドルによる手動操作でZ軸の位置を正確に停止させることは非常に難しく、時間の要する作業である。また、その位置に送り軸が到達したことを座標値で確認する必要がある。
【0007】
本発明は、こうした従来技術の問題を解決することを技術課題としており、オペレータが迅速、容易かつ正確にワークの測定を行うことができるようにした測定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明によれば、複数の送り軸で測定子とワークとを相対移動させ、前記測定子と前記ワークが接触したときの送り軸の座標に基づいて、ワークの位置を求める工作機械上でワークを測定する方法において、前記工作機械は、X軸、Y軸、Z軸の直交3軸方向に相対移動する送り軸と、前記ワークを取り付けるワーク取付面とを有し、手動操作により、前記複数の送り軸のうち1つの送り軸を所望の測定位置に移動させ、前記所望の測定位置にあるときに前記1つの送り軸の座標値を記憶し、手動操作により、前記1つの送り軸を前記測定子と前記ワーク取付面が離反する方向に移動させ、前記1つの送り軸と他の送り軸とにより前記測定子と前記ワークとを相対的に移動し、手動操作により、前記1つの送り軸を前記測定子と前記ワーク取付面が接近する方向に移動させ、記憶した前記座標値に達したときに、前記1つの送り軸による移動を停止し、1つの送り軸を前記座標値に停止させた状態で、手動操作により、他の送り軸を用いて測定子を移動させて複数の測定点においてワークを測定するワーク測定方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、加工プログラムを実行してワークを加工する前の段取り時に、或いは、加工後に、オペレータが機上においてワークを測定する際、迅速、容易かつ正確に測定子を1つの送り軸に沿ってワークに対して同じ位置に停止させることが可能となり、測定に要する時間が短縮され、かつ、測定結果の信頼性が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明を適用する工作機械の一例を示す側面図である。
図2】制御盤の斜視図である。
図3】ジョグコンソールの平面図である。
図4図2の制御盤の表示部に表示される本発明の測定方法を実施するための測定ウィンドウの一例を示す図である。
図5図2の制御盤の表示部に表示される本発明の測定方法を実施するための測定ウィンドウの一例を示す図である。
図6】本発明の方法を説明するフローチャートである。
図7】本発明の方法を説明するためのワークに対する測定プローブの相対的な位置を示す略図である。
図8】本発明の方法を説明するためのワークに対する測定プローブの相対的な位置を示す略図である。
図9】本発明の方法を説明するためのワークに対する測定プローブの相対的な位置を示す略図である。
図10】本発明の方法を説明するためのワークに対する測定プローブの相対的な位置を示す略図である。
図11】本発明の方法を説明するためのワークに対する測定プローブの相対的な位置を示す略図である。
図12】本発明の方法を説明するためのワークに対する測定プローブの相対的な位置を示す略図である。
図13】本発明の方法を説明するためのワークに対する測定プローブの相対的な位置を示す略図である。
図14】本発明の方法を説明するためのワークに対する測定プローブの相対的な位置を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態を説明する。
図1を参照すると、本発明を適用する工作機械の一例が示されている。図1において、本発明の好ましい実施の形態による工作機械100は、立形マシニングセンタを構成しており、工場の床面に固定された基台としてのベッド102、ベッド102の前方部分(図1では左側)の上面で前後方向またはY軸方向(図1では左右方向)に移動可能に設けられワークWが固定されるテーブル106、ベッド102の後端側(図1では右側)で同ベッド102の上面に立設、固定されたコラム104、該コラム104の前面で左右方向またはX軸方向(図1では紙面に垂直な方向)に移動可能に設けられたX軸スライダ108、X軸スライダ108の前面で上下方向またはZ軸方向に移動可能に取り付けられ主軸112を回転可能に支持する主軸頭110を具備している。工作機械100は、また、オペレータが工作機械100を操作するための操作盤200を備えている。
【0012】
主軸112の先端には、テーブル106に固定されたワークWを加工する工具(図示せず)が装着される。図1では、主軸112の先端には、工具に代えて、ワークWを測定するための測定子として測定プローブ114が装着されている。測定プローブ114は、工作機械100のオペレータが手動操作によって装着したり、或いは、工作機械100のNC装置150によって自動的に装着するようにできる。
【0013】
テーブル106は、ベッド102の上面において水平なY軸方向(図1の左右方向)に延設された一対のY軸案内レール(図示せず)に沿って往復動可能に設けられており、ベッド102には、テーブル106をY軸案内レールに沿って往復駆動するY軸送り装置として、Y軸方向に延設されたボールねじ(図示せず)と、該ボールねじの一端に連結されたY軸サーボモータ(図示せず)が設けられており、テーブル106には、前記ボールねじに係合するナット(図示せず)が取り付けられている。テーブル106には、また、テーブル106のY軸方向の座標位置を測定するY軸スケール120が取り付けられている。
【0014】
X軸スライダ108は、コラム104の上方部分の前面においてX軸方向に延設された一対のX軸案内レール(図示せず)に沿って往復動可能に設けられている。コラム104には、X軸スライダ108をX軸案内レールに沿って往復駆動するX軸送り装置として、X軸方向に延設されたボールねじ(図示せず)と、該ボールねじの一端に連結されたX軸サーボモータ(図示せず)が設けられており、X軸スライダ108には、前記ボールねじに係合するナット(図示せず)が取り付けられている。コラム104には、また、X軸スライダ108のX軸方向の座標位置を測定するX軸スケール116が取り付けられている。
【0015】
主軸頭110は、X軸スライダ108の前面においてZ軸方向(図1では上下方向)に延設された一対のZ軸案内レールに沿って往復動可能に設けられている。X軸スライダ108には、主軸頭110をZ軸案内レールに沿って往復駆動するZ軸送り装置として、Z軸方向に延設されたボールねじ(図示せず)と、該ボールねじの一端に連結されたZ軸サーボモータ(図示せず)が設けられており、主軸頭110には、前記ボールねじに係合するナット(図示せず)が取り付けられている。X軸スライダ108には、また、主軸頭110のZ軸方向の座標位置を測定するZ軸スケール118が取り付けられている。
【0016】
X軸サーボモータ、Y軸サーボモータ、Z軸サーボモータおよびX軸スケール116、Y軸スケール118、Z軸スケール120は、工作機械100を制御するNC装置150(図4)に接続されている。測定プローブ114は、ワークと接触したときに、NC装置150に信号を送信する。NC装置150によって、X軸サーボモータ、Y軸サーボモータ、Z軸サーボモータへ供給される電力(電流値)が制御される。
【0017】
図2、3を参照して、操作盤200を説明する。操作盤200は、画面を接触することにより所望の部分の選択が可能なタッチパネルのような表示パネル202と、キー入力部204を含む。キー入力部204には、複数のキースイッチが配置されている。キー入力部204のキースイッチを押すことにより、所定の数字や文字を入力することができる。また、操作盤200は、所定の操作の選択を行う操作スイッチ部206、オーバライド値の設定を行うオーバライド設定部208〜212および非常停止ボタン214を含む。オーバライド設定部208〜212は、例えば、主軸の回転速度のオーバライド値や加工の送り速度のオーバライド値等を設定することができる。
【0018】
操作盤200は、更に、下端部分から前方へ棚状に伸びるボード222を有したジョグコンソール220を備えている。ジョグコンソール220のボード222には、X軸、Y軸、Z軸の各送り軸を個別にジョグ送り操作するジョグボタン224、ジョグ送りの速度を設定するオーバーライドスイッチ226、自動測定開始ボタン228および測定停止ボタン230が配置されている。
【0019】
図4、5は表示部202に表示される本発明の測定方法を実施するための測定ウィンドウの一例を示している。該測定ウィンドウは、送り軸の座標表示領域10、測定タイプを示すアイコン12、測定プローブ114の移動方向(矢印AX-、矢印AX+)をワークWと共に示す測定プローブ移動方向表示領域14、測定結果としての座標値を表示する座標表示領域16、測定結果としての寸法値を表示する寸法表示領域18、X軸に対するワークWの傾斜角を表示する傾斜角表示領域20、および、測定プローブ114のZ軸方向の危険領域を設定するボタン22を含んでいる。また、測定した座標を工作機械のワーク座標系に設定するための座標設定ボタン24を備える。
【0020】
更に、該測定ウィンドウは、Z(-)制限ボタン30を含んでいる。オペレータがZ(-)制限ボタン30をタップまたはクリックすると、そのときのZ座標値がZ軸スケール118から読取られ、その座標値が、主軸112がテーブル106へ接近する方向へのZ軸のストロークリミットLSに設定される。Z軸のストロークリミットLSが設定されると、該ストロークリミットLSが解除されるまで、主軸112は該ストロークリミットLSであるZ座標値を超えてテーブル106へ接近することができなくなる。
【0021】
また、Z(-)制限ボタン30は、状態に応じて色が変化する。Z(-)制限ボタン30がグレーのときは、ストロークリミットLSが解除されており、新たにストロークリミットLSを設定することが可能な状態であることを表している。Z(-)制限ボタン30が青色のときは、ストロークリミットLSが設定されているが、現在のZ軸の座標値がストロークリミットLSの設定値に達していないことを表している。Z(-)制限ボタン30が緑色のときは、ストロークリミットLSが設定されており、かつZ軸の座標値がストロークリミットLSの設定値に達していることを表している。Z(-)制限ボタン30がグレーで、かつボタンに表示される文字が薄いグレーになっているときは、ストロークリミットLSが解除されており、新たにストロークリミットLSを設定することが不可能な状態を表している。これにより、オペレータは、現在の状態を一目で確認することができる。
【0022】
図5、6を参照して、本実施形態によるワークWの測定方法を説明する。
オペレータが工作機械100の操作盤200の表示パネル202や、キー入力部204のキースイッチを操作することによって、ワークWの測定を開始する(ステップS10)と、図5に示す測定ウィンドウが表示パネル202に表示される(ステップG10)。このとき測定ウィンドウのZ(-)制限ボタン30はグレー表示されている(ステップG12)。
【0023】
次いで、主軸112を測定開始位置に配置する。これは、例えばオペレータが、ジョグコンソール220のジョグボタン224を操作することによって実行することができる。或いは、操作盤200、ジョグコンソール220或いは測定ウィンドウ内に測定開始位置ボタン(図示せず)設け、該測定開始位置ボタンを押下、タップまたはクリックすることによって主軸112を測定開始位置へ移動させるNCプログラムを実行するようにしてもよい。この測定開始位置は、例えば、測定プローブ114の先端がワークWよりも上方で、かつ、測定プローブ114をZ軸に沿って下動させたときに、ワークWに衝接しない位置で、かつ、測定プローブ114をX軸とZ軸のみを使ってその先端をワークWの測定点へ移動させることが可能な位置とすることができる(図7参照)。
【0024】
次いで、オペレータが、ジョグボタン224を操作することによって、測定プローブ114の先端が、ワークWの側面の測定点の高さに配置されるように、図7において矢印AZ-で示すように、主軸112をZ軸方向に下動させる(ステップS12)。主軸112が測定点の高さに位置決めされた(図8参照)とき、オペレータが測定ウィンドウのZ(-)制限ボタン30をタップまたはクリックする(図9参照)と、現在のZ座標値がストロークリミットLSに設定される(ステップC10)(図10参照)と共に、Z(-)制限ボタン30の色がグレーから緑色に変化して(ステップG14)、Z軸にストロークリミットLSが設定されていることが示される。
【0025】
次に、主軸112をX軸に沿って負の方向に移動させワークWの側面のX座標が測定される。図11を参照すると、オペレータがジョグコンソール220のジョグボタン224操作して(ジョグ送り操作)、測定プローブ114をX軸に沿って矢印Ax-の方向にワークWへ接近させる。NC装置150は、X軸の動作指令から、測定プローブ114がX座標値が減少する方向に送られていることを判定する。これによって、測定プローブ移動方向表示領域14には、矢印Ax-によって測定プローブ114がX軸に沿って負の方向に移動している状態が示される。
【0026】
測定プローブ114がワークWの側面に接触すると、測定プローブ114からスキップ信号がNC装置150へ出力される。NC装置150は、測定プローブ114からのスキップ信号によって、その時のX軸、Y軸、Z軸の各送り軸の座標が記憶される。NC装置150は、またスキップ信号を受信したときに、図11において矢印Ax+で示すように、X軸の送りを反転して測定プローブ114をワークWから離反させる。測定プローブ114が、所定距離移動して測定開始位置の直下に移動すると、測定プローブ114の反転動作が停止する。こうして第1の測定点においてワークWが測定される(ステップS16)。
【0027】
次いで、反対側の側面を測定するために、オペレータは、X軸、Y軸、Z軸の送り軸を駆動して、測定プローブ114をワークWの反対側に移動させる(ステップS18)。そのとき、X−Y平面内で移動させて測定プローブ114をワークWの反対側へ移動させることもできるが、移動経路が長くなるので、図12において弧状の矢印Aで示すように、測定プローブ114をZ軸に沿って上下動させつつワークWの反対側に移動させることが好ましい場合がある。本実施形態では、NC装置150は、Z軸送り装置がテーブル106から離反する方向、本実施形態ではZ軸に沿って上動またはZ軸の正の方向に移動すると、それまで緑色を呈していたZ(-)制限ボタン30が青色に変化して(ステップG16)、Z軸がストロークリミットLSの上方にあることが示される。
【0028】
次いで、主軸112をX軸に沿って負の方向に送る間、Z軸送り装置がテーブル106に接近する方向、本実施形態ではZ軸に沿って下動またはZ軸の負の方向に移動し(ステップS20)、図13に示すように、従前に測定を行ったZ座標であるZ軸のストロークリミットLSに到達すると、NC装置150はZ軸送り装置を停止する(ステップC12)。そのとき、Z(-)制御ボタン30が青色から再び緑色に変化する(ステップG18)。
【0029】
次に、主軸112をX軸に沿って正の方向に移動させワークWの側面のX座標が測定される。図14において、オペレータがジョグコンソール220のジョグボタン224操作して(ジョグ送り操作)、測定プローブ114をX軸に沿って矢印Ax+の方向にワークWへ接近させる。NC装置150は、X軸の動作指令から、測定プローブ114がX座標値が増加する方向に送られていることを判定する。これによって、測定プローブ移動方向表示領域14には、矢印Ax+によって測定プローブ114がX軸に沿って正の方向に移動している状態が示される。
【0030】
測定プローブ114がワークWの側面に接触すると、測定プローブ114からスキップ信号がNC装置150へ出力される。NC装置150は、測定プローブ114からのスキップ信号によって、その時のX軸、Y軸、Z軸の各送り軸の座標が記憶される。NC装置150は、またスキップ信号を受信したときに、図14において矢印Ax-で示すように、X軸の送りを反転して測定プローブ114をワークWから離反させる。こうして第2の測定点においてワークWが測定される(ステップS22)。次いで、オペレータが、Z(-)制限ボタン30をタップまたはクリックすると、Z軸ストロークリミットLSが解除され(ステップC14)、Z(-)制限ボタン30の色が緑からグレーに変化する(ステップG20)。
【0031】
既述の実施形態では、ワークWの測定は、オペレータが全てジョグボタンを操作する手動操作によって行われていたが、オペレータのジョグ操作による上記のX軸方向への測定プローブ114の送り操作を測定教示操作としてNC装置150に記憶させ、以下のように、記憶した教示操作に沿って自動測定を行うようにしてもよい。
【0032】
オペレータが、教示操作の後に、ジョグコンソール220の自動測定開始ボタン228を押下すると、NC装置150に格納されている自動測定プログラムが実行され、NC装置150に記憶されている測定点の座標(測定プローブ114がワークWに接触したときのX軸、Y軸、Z軸の各送り軸の座標)へ向けて、測定プローブ114がX軸に沿って矢印AX-で示す負の方向に送られる。測定プローブ114の先端がワークWの側面に接触すると、スキップ信号が測定プローブ114からNC装置150へ出力される。スキップ信号を受信すると、その時のX軸、Y軸、Z軸の各送り軸の座標がNC装置150に記憶される。また、NC装置150は、スキップ信号を受信すると、矢印AX+で示す正の方向にX軸の送りを反転し、測定プローブ114をワークWから離反させ、所定距離移動したところで、測定プローブ114の反転動作を停止する。自動測定が完了すると、ワークWの側面のX座標が表示される。ワークWの反対側の側面の第2の測定点を測定する際には、これと反対のプロセスが実行される。
【0033】
このように、NC装置150に格納されている測定プログラムに従って測定を行うことにより、ワークWへの測定プローブ114の接近速度を最適化することが可能となり、測定プローブ114による測定誤差を小さくすることができる。
【0034】
既述の実施形態では、複数の送り軸としてX軸、Y軸、Z軸の直交3軸の送り軸のうち1つの送り軸であるZ軸を所望の測定位置に移動させるようにしたが、本発明はこれに限定されず、X軸またはY軸を所望の測定位置に移動させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
10 座標表示領域
12 アイコン
14 測定プローブ移動方向表示領域
16 座標表示領域
18 寸法表示領域
20 傾斜角表示領域
24 座標設定ボタン
30 Z(-)制限ボタン
100 工作機械
110 主軸頭
114 測定プローブ
150 NC装置
200 操作盤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14